図1は、実施形態に係るMRI装置の構成を示すブロック図である。図1に示すMRI装置は、ガントリ10(概略断面で示す)と、これに接続される種々の関連システムコンポーネント20を備える。通常、少なくともガントリ10はシールドルームに設置される。図1に示すMRI装置の構成では、静磁場B0磁石12と、Gx,Gy及びGzの傾斜磁場コイルセット14と、大型の全身用RF(Radio Frequency)コイル(Whole Body Coil:WBC)16とが、実質的に同軸の円筒形に配置される。この円筒形に配列された要素の水平軸に沿って、患者寝台11に支持された患者9の頭部を実質的に取り囲むものとして示されるイメージングボリューム18が形成される。小型のアレイRFコイル(Array Coil:AC)19は、イメージングボリューム18内の患者頭部(本明細書では、例えば、「スキャン対象の被検体」又は「被検体」と呼ぶ)に、より近接して結合されてもよい。当業者には自明であるように、表面コイル等のように、全身用RFコイルと比較して小さいRFコイルやアレイRFコイルは、特定の身体部分(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、背骨等)に合わせて設計されることが多い。そのような小型のRFコイルを、本明細書ではアレイRFコイル又はフェーズドアレイコイルと呼ぶ。これらのコイルには、イメージングボリューム内にRF信号を送信するように構成された少なくとも1つの送信コイル、及び、イメージングボリューム内において前述の例における患者頭部等の被検体からRF信号を受信するよう構成された複数の受信コイルが含まれてもよい。
MRIシステム制御部22は、ディスプレイ24、キーボード26、及びプリンタ28に接続される入出力ポートを有する。当業者には自明であるように、ディスプレイ24は、制御のための入力もできるように、タッチスクリーン型であってもよい。
MRIシステム制御部22は、Gx,Gy及びGzの傾斜磁場コイルドライバ32、並びにRF送信部34及び送受信スイッチ36(同じRFコイルが、送信と受信の両方に使用される場合)を制御するMRIシーケンス制御部30に接続される。MRIシーケンス制御部30は、パラレルイメージング等のMRI装置によるイメージング(核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)イメージングとしても知られる)手法を実行するための適切なプログラムコード構造を記憶した記憶部38を有する。パラレルイメージング等のイメージング技術によっては、MRIシーケンス制御部30は、RFコイル16や19の感度マップの決定に使用されるプレスキャン(準備スキャン)のシーケンス及び診断画像を取得するためのスキャンのシーケンスを容易に行うことができる。
MRI装置の関連システムコンポーネント20は、ディスプレイ24に送る処理画像データを作成するためにMRIデータ処理部42へ入力を送るRF受信部40を有する。また、MRIデータ処理部42は、コイル校正データ又はプレスキャンによって収集されるような他の基準データやシステム校正パラメータを記憶したマップ/MRI画像記憶部46、並びに、MRI画像を再構成するためのプログラムコード構造等を記憶したプログラム記憶部44及び50にもアクセスできるように構成されている。
また、図1には、MRI装置のプログラム記憶部50を一般化した形で示している。プログラム記憶部50では、所定のプログラムコード構造(ゴーストアーチファクトが低減された画像を再構成するためのプログラムコード構造や、グラフィカルユーザーインターフェースを規定し、それに対する操作者の入力を受け取るためのプログラムコード構造など)が、MRI装置の種々のデータ処理コンポーネントへアクセス可能な、非一時的コンピュータ可読の記憶媒体に記憶される。当業者には自明であるように、プログラム記憶部50を分割し、少なくともその一部分を、関連システムコンポーネント20の処理コンピュータのうちの異なる処理コンピュータであって、通常の動作においてかかる格納プログラムコード構造を最優先で必要とするものに、直接接続してもよい(すなわち、共有した形で格納し、MRIシステム制御部22に直接接続するのではない)。
実際に、当業者には自明であるように、図1の図示は、後述する例示的な実施形態を実施するためにいくつか変更が加えられた典型的なMRI装置の非常に高度な概略図である。システムのコンポーネントは、様々な論理集合の「ボックス」に分割することができ、通常、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)、マイクロプロセッサ、専用処理回路(例えば、高速A/D変換用、高速フーリエ変換用、アレイ処理用等)を数多く備える。通常、これらのプロセッサの各々はクロック制御される「ステートマシン」であり、物理的データ処理回路は、クロックサイクル(又は所定数のクロックサイクル)ごとに、ある物理的状態から別の物理的状態に移行する。
処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、演算ユニット等)の物理的状態が、動作過程においてあるクロックサイクルから別のクロックサイクルに進行的に変化するだけでなく、関連のデータ記憶媒体(例えば、磁気記憶媒体のビット記憶部位)の物理的状態も、かかるシステムの動作中に、ある状態から別の状態に変換される。例えば、画像再構成プロセスや補正マップ生成プロセスの終了時に、物理的記憶媒体内のコンピュータ可読アクセス可能データ値の記憶部位の配列は、ある前の状態(例えば、全てが一様に「0」値、又は全てが「1」値)から新しい状態に変換されうる。ここで、かかる配列の物理的部位における物理的状態が最小値と最大値の間で変化して、現実の物理的事象及び状態(例えば、イメージングボリューム空間にわたる患者内部の物理的構造、又はデータ収集手順の部分間のシステム感度の相違)を表す。当業者には自明であるように、このように記憶されたデータ値の配列は物理的構造を表し、更にはそれを構成する。これは、連続的に命令レジスタに読み込まれMRIシステムの関連システムコンポーネント20の1以上のCPUによって実行されるときに、特定の動作状態のシーケンスを発生させMRIシステム内で遷移させる、特定の構造のコンピュータ制御プログラムコードの場合と同様である。
以下に例示する実施形態は、MRI画像を生成して表示するための改良された手段を提供するものである。この実施形態によれば、例えば、EPI法等のイメージング技術において発生するゴーストアーチファクトが除去されるか大幅に低減される。
MRI画像は、k空間内の各点に対応するRF応答値(例えば、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)エコーデータ)を収集することにより形成される。RF応答値は、設定されたデータ収集用のパルスシーケンスに従って2次元又は3次元のk空間を走査することにより生成される。リードアウト傾斜磁場Groの軸(例えば、X軸)に沿った方向(リードアウト方向)では、通常、エコーデータの収集は高速であり、約数ミリ秒である。しかし、位相エンコード傾斜磁場Gpeの軸(例えば、Y軸)に沿った方向(位相エンコード方向)では、各点をサンプリングするために、異なる値の位相エンコード傾斜磁場Gpeが印加される。したがって、通常は、MRI画像の収集時間は、主に位相エンコードのステップ数によって決定される。
EPI法は、高速イメージング技術である。EPI法を適用する利点は、完全な2次元画像を1回のショットで(すなわち、1つのTR(repetition time)間隔で)撮ることができることである。1回の励起の後、k空間の少なくとも半分又は全体を充填するために、選択された高速な傾斜磁場のシーケンスで磁化を繰り返しエンコードする。1回のショットで完全な画像を収集することは、例えば、拡散画像撮像法(diffusion、例えば、DWI(Diffusion Weighted Imaging)法)、fMRI(Functional MRI)法、及び灌流画像撮像法(perfusion、例えば、DSC(Dynamic Susceptibility Contrast)法、又はASL(Arterial Spin Labeling)法)を適用する場合に、大変望ましい。
しかし、EPI法では、k空間の交互のラインが、リードアウト傾斜磁場の極性を交互に変えながら収集される。したがって、EPI法が使用される際には、2次元のk空間データが1回又は2、3回のショットで収集され、各ショットは、リードアウト傾斜磁場の極性を交互に変えたシーケンスによってk空間の複数のラインを網羅する。
k空間を正確に充填するために、生データがフーリエ変換によって画像に変換される前に、各ラインが1つおきに時間的に反転される。したがって、k空間内の生データのラインには、2セットのライン、すなわち、第1の方向(例えば左から右方向)で読まれるラインのセットと、第2の方向(例えば右から左方向)で読まれるラインのセットがある。これについて、k空間内における原点を通るラインを含む方のセットを「偶数」ラインのセットと呼び、他方のセットを「奇数」ラインのセットと呼ぶ。通常、奇数ライン上よりも、偶数線上に、種々の不完全な信号変調又は誤差項が現れる。これにより、よく知られたゴーストアーチファクトである「N/2ゴースト」すなわち「ナイキストゴースト」が発生する。ナイキストゴーストは、画像の位相エンコード方向に画像再構成領域(Field of View:FOV)の半分だけずれたゴーストアーチファクトであり、位相エンコード方向に沿って変化する偶数ラインのデータと奇数ラインのデータとの変調差(例えば、ky軸に沿った交互変調)によって発生する。このゴーストが画像化された被検体に重なると、診断を正確に行うことが困難になる。
MRデータの収集において、様々な原因で信号の不一致が生じ得る。そのため、現在、ナイキストゴーストを低減するために多くの補正法が用いられている。それらの補正法は、いずれもある程度はゴーストを低減できるが、完全に補正できるものはない。1回のMRI画像の収集及び再構成で、複数の補正法が用いられる場合もある。
通常、EPI法は、速度が重要である場合や複数のエンコードが重要である場合(DWI法でb値が多く用いられる場合、fMRI法で時間的な反復が多い場合、ASL法で生理的な流れを平均化するショットが多く用いられる場合など)に使用されるため、一般的に、ゴーストを低減するために反復回数を増やすことは適切でない。したがって、一般に、1回の励起パルス(例えば、1つのTR間隔)で1つの未処理画像を生成する(おそらく、数回の事前の校正ショットを伴う)EPI法を使用するが望ましい。
また、通常、エンコードのレートはハードウェアの制約、生理的制約、及び安全上の制約によって制限されるため、EPI法によるスキャンは、位相エンコード方向の歪みを伴う。こういった歪みを小さくするため、読み出しの時間は一般に短くなくてはならない。
イメージングショットの回数の効率化と読み出し時間の短縮化との間にはこのようなトレードオフがあるため、提案されている多くの補正法は、人間の臨床応用には実用的でない。1つのTR間隔で、読み出しを交互に高速に行い、かつ、パラレルイメージングを用いて効率化しつつ、ゴーストを効果的に補正することが非常に重要である。
従来のEPI法で用いられているゴーストの補正法では、ゴーストアーチファクトの強度は、有利な例でも、正しい画像の強度の約5〜10%であるのが普通である。それよりも有利でない状況では、画像内のゴーストは、少なくとも局所的に、大幅に増える。
位相補正を利用した比較的新しい2次元補正には、ゴーストのレベルが大半の従来技術よりも良好となるものがある。こういった2次元補正は、撮像断面上で空間的に依存する位相補正パラメータを活用する。複素信号のうち位相を生成する成分は、奇数ラインのデータと偶数ラインのデータとの間の変調に関連する。2次元の補正マップ又は補正値は、特に、リードアウト方向及び位相エンコード方向に単純に分離して補正することができない場合に、2次元の断面上で空間的に変化する補正を提供する。非特許文献1及び2は、このような技術を記載しており、その内容は本明細書において参照することにより全体として援用される。非特許文献1及び2では、偶数エコーと奇数エコーとの間の主な差異を信号位相差項によるものとして特徴付けており、このことは、空間的に変化する位相マップとともに記載されている。
通常、EPI法でのゴーストアーチファクトの低減を目的とする基本的な2次元位相補正では、上述したように、有利な状況でも約2%のゴーストアーチファクトが残る。本明細書に記載の実施形態は、広い範囲でスキャン条件を妥協せずに、例えば2%の閾値を下回るレベルにまで、ゴーストを更に低減する。
例示的な実施形態では、多くのゴースト補正技術において行われる位相補正に加え、偶数画像と奇数画像との間の強度(マグニチュード、振幅)差が特に補正される。強度差の補正は、例えば、その他の側面でも、多くのMRIシステムで観測される周波数応答の非平坦性を除去又は低減し、その結果、ナイキストゴーストの除去が更に向上する。
図2は、実施形態に係る画像生成方法を示すフローチャートである。この画像生成方法は、k空間の交互のラインがリードアウト傾斜磁場の極性を交互に変えながら収集されることによって生じるゴーストアーチファクトが低減された画像を生成するための方法である。図示した実施形態では、画像生成方法200は工程202〜218を含む。しかし、実施形態によっては、工程202〜218のうち1以上の操作が実行されなくてもよく、又は、図示した順序以外の順序で実行されてもよい。
工程202では、スキャン対象の被検体がMRI装置に配置される。この工程は、スキャンに適した方法で被検体をMRI装置のガントリ内に配置することに加え、所望の種類の診断画像を収集するのに適したスキャンのパルスシーケンスを実行するためにMRI装置を設定することを含む。この設定には、プレスキャンのパルスシーケンス及び本スキャン(診断スキャン)のパルスシーケンスの定義、傾斜磁場の設定、画像に適用される強度補正及び位相補正に関するパラメータ等が含まれてもよい。
工程204では、MRI装置のガントリ内に配置された被検体に対してプレスキャンを実行することによって、基準データが収集される。多くの実施形態において、基準データは、MRI装置によって、他のアルゴリズム補正に関する各種設定又はハードウェア設定のためや、平衡磁化信号を得やすくするために使用されてもよいので、校正データと呼んでもよい。プレスキャンは、設定した期間、すなわち、通常は約数秒であって実質的に本スキャンよりも短い期間内で実行することが可能である。プレスキャンは、スキャナ内のイメージングボリューム全体(この場合、被検体がその内部に配置されている)について、又は、後続のマルチスライススキャンで画像化される2次元のスライス位置ごとに、1つ以上の低解像度画像を生成してもよい。
対応する本スキャンと同一又は略同一の条件下で確実にプレスキャンが行われるようにするために、プレスキャンのパルスシーケンスは、本スキャンのパルスシーケンスと同一又は略同一に設定されてもよい。
補正及び校正を目的とするためには、基準データにはエイリアシングがないことが一般に望ましい。したがって、1つの実施形態では、プレスキャンにおけるFOVのサイズは、本スキャンにおけるFOVのサイズの少なくとも2倍に設定される。なお、k空間内の傾斜ブリップのサイズは、本スキャン用に設定された対応するブリップのサイズの半分に設定してもよく、又は、パラレルイメージングによって速度を上げる本スキャンの場合は、それより更に小さく設定してもよい。ここで、画像のドメインにおけるFOVの増加因子は、k空間のドメインにおける対応する傾斜ブリップのサイズの減少因子と、数学的に同等である。
実施形態によっては、プレスキャンは1回のショットに基づく。例えば、特定の本スキャンの後処理に関連する全ての基準データが、1回のRF励起から得られる。
他の実施形態によっては、プレスキャンは2回以上のショットに基づいてもよい。プレスキャンでショットを複数回行うと、プレスキャンで生じる幾何学的な歪みを本スキャンで生じる幾何学的な歪みと同じにするのに役立つ場合がある。しかし、強度差の補正では、プレスキャンでショットを複数回行うと、余分な複雑性が生じる可能性がある。なぜなら、例えば、強度差は、EPI法によるスキャンにおいて、大抵は1秒間を超えるTRでショットが2回に分けられた場合に、自然に出現し得るからである。例えば、非特許文献1には、プレスキャンでショットを複数回行う技術が記載されている。
工程206では、基準データから偶数基準画像及び奇数基準画像が生成される。奇数基準画像は、基準データの奇数ラインから得られ、偶数基準画像は、基準データの偶数ラインから得られる。例示的な実施形態では、奇数基準画像は、例えば、偶数ラインに対応するデータ位置をゼロ充填することによって、基準データの奇数ラインから生成される。同様に、偶数基準画像は、例えば、奇数ラインに対応するデータ位置をゼロ充填することによって、偶数ラインから生成される。このように、奇数ラインのセットと偶数ラインのセットとは重ならないため、偶数基準画像及び奇数基準画像は相互に独立して生成される。
偶数基準画像及び奇数基準画像は、k空間データ上での2次元フーリエ変換(2D Fourier Transform:2DFT)を使用して生成されてもよい。
図3A及び3Bは、実施形態に係る偶数基準画像及び奇数基準画像の一例を示す図である。図3Aは、302aの円形で示す被検体に対するプレスキャンによって生成された偶数基準画像300の一例を示し、図3Bは、302bの円形で示す被検体に対するプレスキャンによって生成された奇数基準画像301の一例を示している。なお、ここでは被検体を円形で例示しているが、実際には、一般に脳のスライス画像等の2次元画像である。304a、304b、306a、及び306bは、被検体302a及び302bのナイキストゴーストである。図示されるように、偶数基準画像は、正の被検体と正のナイキストゴーストとを含み、奇数基準画像は、正の被検体と負のナイキストゴーストとを含む。ここで、位相差又は強度差がない状態で偶数基準画像と奇数基準画像とが合成された場合には、正のナイキストゴーストと負のナイキストゴーストとが相殺されて、ナイキストゴーストのない画像が作成され得る。しかし、偶数基準画像及び奇数基準画像は、交互のリードアウト傾斜磁場を用いた収集による強度や位相のずれ、すなわち誤差をいくらか含むので、正のナイキストゴーストと負のナイキストゴーストとは相互に完全に打ち消し合うことができない。図3A及び3Bに示されるように、プレスキャンで生じるナイキストゴースト304a及び306aとナイキストゴースト304b及び306bとは、被検体に重ならない。これは、プレスキャン画像のFOVが診断画像のFOVの少なくとも2倍であるからであり、したがって、ゴーストアーチファクトは、診断画像ではスキャンされる被検体から1/2FOVずれることになり、プレスキャン画像において被検体に重ならない。図3Aを、図10に画像602として示す診断画像と同じ又は類似の被検体の診断画像と比較すると、診断画像では被検体の重なりがあるが、診断画像よりFOVが大きいプレスキャン画像では重なりがなく、ゴーストアーチファクトが分離されていることがわかる。
図2に戻り、工程208では、偶数基準画像と奇数基準画像との間の強度差及び位相差が決定される。強度差及び位相差は、k空間のドメインではなく、画像のドメインにおいて決定される。例えば、強度差及び位相差は、x方向及びy方向のいずれか一方(例えば、xy平面におけるy方向)、又は、x方向及びy方向の両方に対してフーリエ変換を行った後に、対応する点(例えば、画素)に基づいて決定される。1つの奇数基準画像又は1つの偶数基準画像における画素の位置ごとに、差が決定される。被検体からの信号が存在する画素の位置ごと(例えば、被検体の一部に対応する画素ごと)に、強度値及び位相値の両方又は一方が存在する。決定された差は、偶数基準画像と奇数基準画像との間における対応する強度の比率又は差として、メモリに保持可能である。
図4は、図3A及び図3Bに示す偶数基準画像及び奇数基準画像における強度の変化の一例を示す図である。図4は、偶数基準画像と奇数基準画像との間における、被検体を横断する1次元での強度差、例えば、リードアウト方向に沿った1つの線又は狭い幅の細長い範囲における強度差を示すグラフである。なお、このグラフは、1つの受信コイルにおける1つのチャネルによって受信される信号を示してもよい。各画素における偶数基準画像の強度402と奇数基準画像の強度404とのずれは、2つの画像の間における強度差に対応する。なお、図4は、1次元での差を示しているが、当業者によれば、信号が受信された画素ごとの値について、差が多次元であってもよいことは自明であろう。例えば、2次元での差が、面の情報として示されてもよい。
そして、偶数基準画像及び奇数基準画像における強度差及び位相差を用いて、補正マップが生成される。1つの実施形態では、この補正マップは、基準画像における強度差を含む強度補正マップ、及び、基準画像における位相差を含む位相補正マップを含んでもよい。他の実施形態では、1つの補正マップが、強度及び位相の両方の特徴を画素ごとに複素数として含んでもよい。さらに、補正マップは、画素ごとに複素数の比率として、差を含んでもよい。
選択的に、差比率又はその一部を空間関数にフィッティングしてもよい。1つの実施形態では、強度差が1次元の空間関数にフィッティングされる。図5Aは、図3A及び図3Bに示す偶数基準画像及び奇数基準画像における強度の比率の変化の一例を示す図である。図5Aは、一例として、例えば、受信コイルのリードアウト方向に沿った1次元での強度の比率502を示している。また、図5Bは、図3A及び図3Bに示す偶数基準画像及び奇数基準画像における強度の比率の変化に対応するようにフィッティングした関数の一例を示す図である。図5Bは、図5Aに示す比率502を線形関数504にフィッティングしたものを示す。フィッティングは、関係のない値をフィルタリングすることと、適切な多項式を決定することを含んでもよい。フィッティング関数が決定される際に、被検体の信号の外側の領域の比率を推定(外挿)してもよい。実施形態によっては、差比率は、非線形多項式にフィッティングされてもよい。
なお、差比率を空間関数にフィッティングする等によって行われる平滑化は、受信コイル又は受信チャネルごとに行われてもよい。受信チャネルごとに強度差を推定することによって、より正確に補正を行える場合がある。なぜなら、例えば、強度の変調は、部品の耐性や、患者及び近隣のコイルとの電磁的なカップリングなどを含む、各コイルのアナログのコイル特性及びフィルター特性に大きく依存するからである。
各コイルがコイルループから信号を受信する場合、及び、各ループおよび各受信チャネルが著しい周波数依存ゲインの非平坦性を示す場合は、偶数基準画像と奇数基準画像との間の相対強度の非平坦性は、1次元関数でフィッティングされてもよい。非平坦性は、リードアウト方向の位置に依存するが、位相エンコード方向の位置には依存しないため、コイルごとに1次元関数でフィッティングされる。
また、実施形態によっては、強度差は受信チャネルごとに関数でフィッティングし、位相差は基準画像ごとに推定されてもよい。実際には、実施形態によっては、全ての受信チャネルを一緒に用いて位相差を推定することで、1つの共用の位相項が生成される。共用の位相項を用いることによって、良好なSN(Signal to Noise)比が得られる可能性がある。また、位相誤差の発生源は傾斜磁場や渦電流等である場合が多く、受信チャネルに依存するものではないため、共用の位相項を用いることは妥当である。また、位相差も、受信チャネルごとに推定されてもよい。
上述したように、強度差が受信コイル(又は受信チャネル)ごとに推定される場合は、補正マップにおける差比率は、位相項と、受信コイルごとの強度項とを有するように変更することが可能である。1つの実施形態では、コイルごとの強度項は、位相マップに加えられてもよい。非特許文献1及び2には、位相マップの一例が記載されている。
図2に戻って、工程210では、診断画像と同じFOVを有するように補正マップが変換される。この変換は、補正マップの再配置又は伸張を必要としてもよい。また、この変換は、主な画像を維持しつつナイキストゴーストを除去するように、位相エンコード方向に沿って、補正マップの中央部分を選択することを含んでもよい。
工程212では、MRIガントリに配置された被検体に対して本スキャンを実行することによって、診断データが収集される。このとき、本スキャンの種類及び収集される画像のパルスシーケンスが設定されてもよい。1つの実施形態では、例えば、EPI法による本スキャンが、プレスキャンシーケンスと実質的に同様のパルスシーケンスを用いて実行される。この本スキャンによって受信されるデータは、2つの部分を有すると考えてもよい。1つは、正の極性のリードアウト傾斜磁場を使用して収集される部分であり、もう1つは、負の極性のリードアウト傾斜磁場を使用して収集される部分である。プレスキャンの関連で説明したように、正の極性のリードアウト傾斜磁場及び負の極性のリードアウト傾斜磁場は、それぞれ、k空間における交互のラインを収集する。また、プレスキャン画像の関連で説明したように、k空間の原点(例えば、kx,ky=0、0)を通るラインを含む方のセットを偶数ラインのセットとし、他方のセットを奇数ラインのセットとする。
工程214では、診断データから偶数診断画像及び奇数診断画像が生成される。奇数診断画像は、MRデータの奇数ラインから得られ、偶数診断画像は、MRデータの偶数ラインから得られる。例えば、偶数診断画像及び奇数診断画像は、2DFTを使用して生成される。
工程216では、偶数診断画像又は奇数診断画像のいずれか一方が補正マップを用いて補正される。1つの実施形態では、奇数診断画像が補正のために選択される。そして、奇数診断画像内の各点(例えば、画素)が、補正マップ内の対応する差比率に基づいて、乗法的に補正される。例えば、奇数診断画像内の位置(x,y)における画素「a」の値に補正マップ内の画素「a」に対応する値を乗じて、奇数診断画像内の画素「a」の補正値を得る。この乗法的補正は、奇数診断画像の画素ごとに繰り返されてもよい。ここで適用される補正は、奇数診断画像を偶数診断画像に合わせるように調整することを意図している。例えば、補正後は、偶数診断画像と奇数診断画像との間の強度差は、補正前の差と比較すると、解消されるか大幅に減少する。しかし、実施形態によっては、偶数診断画像又奇数診断画像の全画素を、補正マップを使用して補正する必要はない。
他の実施形態では、補正率を2つの等しい要素に分割して、半分の補正を奇数画像に適用し、残りの半分の補正を偶数画像に適用してもよい。しかし、位相成分の分割には細心の注意が必要である。なぜなら、例えば、複素数の実体の2つの根から正しい値を選択することは、簡単ではない場合があるからである。偶数診断画像及び奇数診断画像のいずれか一方のみに完全な補正を適用し、他方は補正しないようにすると、このような複雑さは避けられる。
工程218では、偶数診断画像及び奇数診断画像のうちの補正された方と補正されなかった方とを合成されることで、最終診断画像が生成される。奇数診断画像が補正された場合には、補正された奇数診断画像が偶数診断画像と合成されて、ナイキストゴーストを含むゴーストアーチファクトが解消されるか低減された、補正済みの最終診断画像が得られる。
なお、前述したように、受信チャネルごとに強度差及び位相差を推定することによって、より正確に補正を行うことができる。そこで、ここでは、受信チャネルごとに強度差及び位相差を推定する場合の例を詳細に説明する。
この場合には、MRIシーケンス制御部30が、励起パルスの印加後、極性を反転させながらリードアウト傾斜磁場を連続的に印加することで複数のエコー信号を連続的に発生させるパルスシーケンスを実行し、複数の受信チャネルからエコー信号を収集する。
具体的には、MRIシーケンス制御部30は、励起パルスの印加後、極性を反転させながらリードアウト傾斜磁場を連続的に印加することで複数のエコー信号を連続的に発生させるパルスシーケンスを実行し、複数の受信チャネルからエコー信号を収集するスキャンとして、プレスキャン及び本スキャンを順に実行する。
また、MRIデータ処理部42が、複数の受信チャネルから連続的に収集された複数のエコー信号のうち、k空間の偶数ラインに対応するエコー信号と奇数ラインに対応するエコー信号との間の位相差に基づいて、全ての受信チャネルのエコー信号を一括して補正するとともに、k空間の偶数ラインに対応するエコー信号と奇数ラインに対応するエコー信号との間の強度差に基づいて、受信チャネルごとにエコー信号を補正することで、診断画像を生成する。
例えば、アレイコイルのように、複数のコイルを有する受信コイルが用いられる場合には、k空間における偶数ラインに対応するエコー信号と奇数ラインに対応するエコー信号との間で生じる強度のずれは、コイルごとに設定されるQ値によって生じるずれの大きさが異なるため、各コイルで一致しない。一方、位相のずれは、主に傾斜磁場の遅れ時間や渦磁場などに起因して生じるものであり、コイルの設定への依存は小さい。したがって、強度差に基づく補正については、受信チャネルごとに分けて行うのが望ましい。
具体的には、MRIデータ処理部42は、プレスキャンによって収集された複数のエコー信号における位相差及び強度差に基づいて、本スキャンによって収集されたエコー信号を補正する。ここで、MRIデータ処理部42は、位相差に基づいて、全ての受信チャネルのエコー信号を一括して補正するとともに、強度差に基づいて、受信チャネルごとにエコー信号を補正することによって、受信チャネルごとに補正画像を生成し、生成した各補正画像を合成することで、診断画像を生成する。
このとき、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに、偶数ラインに対応するエコー信号に基づいて偶数診断画像を生成し、奇数ラインに対応するエコー信号に基づいて奇数診断画像を生成する。そして、MRIデータ処理部42は、位相差及び強度差に基づいて、偶数診断画像及び奇数診断画像のいずれか一方を補正し、補正した方の画像と補正しなかった方の画像とを合成することで、補正画像を生成する。
また、MRIデータ処理部42は、位相差に対応する補正値を含んだ位相補正情報と、強度差に対応する補正値を含んだ強度補正情報とを生成し、位相補正情報に基づいて、全ての受信チャネルのエコー信号を一括して補正するとともに、強度補正情報に基づいて、受信チャネルごとにエコー信号を補正することで、診断画像を生成する。
ここで、例えば、位相補正情報は、2次元の方向に沿った補正値を含む位相補正マップとして生成される。例えば、位相補正マップは、リードアウト方向及び位相エンコード方向の2次元の方向に沿って、位相差を補正値として各画素に割り当てた情報である。例えば、位相補正マップは、各方向における位相差の変化を、前述したように空間関数でフィッティングすることによって、画素ごとに補正値を決定してもよい。
また、例えば、強度補正情報は、2次元の方向に沿った補正値を含む強度補正マップとして生成される。例えば、強度補正マップは、リードアウト方向及び位相エンコード方向の2次元の方向に沿って、強度差を補正値として各画素に割り当てた情報である。例えば、強度補正マップは、各方向における強度差の変化を、前述したように空間関数でフィッティングすることによって、画素ごとに補正値を決定してもよい。
なお、位相補正マップと強度補正マップとは、それぞれ別に生成されてもよいし、それぞれを加味した1つの補正マップとして生成されてもよい。
図6及び7は、実施形態に係る位相補正マップの生成の一例を示す図である。なお、図6に示す基準データ、偶数/奇数ラインデータ、及び偶数/奇数基準画像と、図7に示す基準データ、偶数/奇数ラインデータ、及び偶数/奇数基準画像とは、それぞれ同じものを示している。
例えば、図6に示すように、MRIデータ処理部42は、プレスキャンによって受信チャネルごとに収集された基準データそれぞれについて、k空間の偶数ラインに対応する偶数ラインデータ(図6に示す「偶数/奇数ラインデータ」のうちの左側のデータ)に基づいて、偶数基準画像(図6に示す「偶数/奇数基準画像」のうちの左側の画像)を生成する。
また、MRIデータ処理部42は、プレスキャンによって受信チャネルごとに収集された基準データそれぞれについて、k空間の奇数ラインに対応する奇数ラインデータ(図6に示す「偶数/奇数ラインデータ」のうちの右側のデータ)に基づいて、奇数基準画像(図6に示す「偶数/奇数基準画像」のうちの右側の画像)を生成する。
そして、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに、偶数基準画像と奇数基準画像との間の位相差を用いて、位相補正マップを生成する。さらに、例えば、図7に示すように、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに、偶数基準画像と奇数基準画像との間の強度差を用いて、強度補正マップを生成する。
図8及び9は、実施形態に係る診断画像の生成の一例を示す図である。なお、図8に示す診断データ、偶数/奇数ラインデータ、及び偶数/奇数診断画像と、図9に示す診断データ、偶数/奇数ラインデータ、及び偶数/奇数診断画像とは、それぞれ同じものを示している。
例えば、図8に示すように、MRIデータ処理部42は、本スキャンによって受信チャネルごとに収集された診断データそれぞれについて、k空間の偶数ラインに対応する偶数ラインデータ(図8に示す「偶数/奇数ラインデータ」のうちの左側のデータ)に基づいて、偶数診断画像(図8に示す「偶数/奇数診断画像」のうちの左側の画像)を生成する。
また、MRIデータ処理部42は、本スキャンによって受信チャネルごとに収集された診断データそれぞれについて、k空間の奇数ラインに対応する奇数ラインデータ(図8に示す「偶数/奇数ラインデータ」のうちの右側のデータ)に基づいて、奇数診断画像(図8に示す「偶数/奇数診断画像」のうちの右側の画像)を生成する。
そして、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに生成した位相補正マップに基づいて、偶数診断画像及び奇数診断画像のいずれか一方を一括して補正する。このとき、例えば、MRIデータ処理部42は、サムオブスクエア(Sum Of Square)法などを用いて各位相補正マップを合成し、合成した位相補正マップを用いて、偶数診断画像及び奇数診断画像のいずれか一方を補正する。例えば、図8に示すように、MRIデータ処理部42は、合成した位相補正マップを用いて、受信チャネルごとに生成された奇数診断画像それぞれを一括して補正する。
なお、例えば、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに位相補正マップを生成した後に各位相補正マップを合成するのではなく、受信チャネルごとに収集された複数の基準データ、受信チャネルごとに生成された複数の偶数/奇数ラインデータ、又は、受信チャネルごとに生成された複数の偶数/奇数診断画像から、1つの位相補正マップを生成してもよい。または、例えば、MRIデータ処理部42は、複数の受信チャネルのうち一部の受信チャネルの位相補正マップを用いてもよい。ここでいう一部の受信チャネルは、1つの受信チャネルであってもよいし、複数の受信チャネルであってもよい。
さらに、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに生成した強度補正マップに基づいて、受信チャネルごとに、偶数診断画像及び奇数診断画像のいずれか一方を補正する。例えば、図9に示すように、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに、対応する強度補正マップを用いて、奇数診断画像それぞれを補正する。
その後、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに、補正した奇数診断画像(補正画像)と、補正していない偶数診断画像とを合成して合成診断画像を生成する。そして、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに得られた合成診断画像をサムオブスクエア(Sum Of Square)法などを用いて合成することで、最終診断画像を生成する。
なお、ここでは、奇数診断画像を補正する場合の例を説明したが、偶数診断画像を補正してもよい。その場合には、MRIデータ処理部42は、合成した位相補正マップを用いて、受信チャネルごとに生成された偶数診断画像それぞれを一括して補正する。また、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに、対応する強度補正マップを用いて、偶数診断画像それぞれを補正する。そして、MRIデータ処理部42は、受信チャネルごとに、補正した偶数診断画像と、補正していない奇数診断画像とを合成して合成診断画像を生成し、生成された各合成診断画像を合成することで、最終診断画像を生成する。
また、ここでは、2次元の位相補正マップ及び強度補正マップを生成する場合の例を説明したが、各補正情報は、1次元の補正データであってもよい。すなわち、補正情報は、1次元の方向に沿った補正値を含むデータであってもよい。例えば、位相差の補正データは、リードアウト方向に沿って、位相差を補正値として各画素に割り当てたデータである。また、例えば、強度差の補正データは、リードアウト方向に沿って、強度差を補正値として各画素に割り当てたデータである。この場合には、例えば、図5A及び5Bに示したように、リードアウト方向における位相差の変化を、前述したように空間関数でフィッティングすることによって、画素ごとに補正値を決定してもよい。
なお、位相差の補正データと強度差の補正データとは、それぞれ別に生成されてもよいし、それぞれを加味した1つの補正データとして生成されてもよい。このように、補正データを1次元の方向に沿った補正値とした場合には、その方向に直交する方向については、同じ補正値が用いられる。例えば、補正データをリードアウト方向に沿った補正値とした場合には、位相エンコード方向については、リードアウト方向における位置が同じ画素については同じ補正値が用いられる。
また、ここでは、プレスキャンによって収集された基準データに基づいて位相補正マップ及び強度補正マップを生成する場合の例を説明した。このように、プレスキャンを行って位相補正マップを生成すると、本スキャンで複数の撮像が行われる場合に、各撮像において1つの位相補正マップを使い回すことができ、効率がよい。例えば、EPI法を用いた拡散強調画像の撮像では、通常、b値の大きさ及びMPG(Motion Probing Gradient)パルスの方向の少なくとも一方を異ならせた複数の撮像が連続して実行される。例えば、このような拡散強調画像の撮像が本スキャンで行われる場合には、複数の撮像それぞれにおいて、プレスキャンによって得られた位相補正マップを用いて画像を補正する。
なお、プレスキャンで実行されるパルスシーケンスは、本スキャンで実行されるパルスシーケンスと、少なくともリードアウト傾斜磁場に関する条件が略同一となるように設定される。また、例えば、プレスキャンで実行されるパルスシーケンスでは、本スキャンと比べて、位相エンコード方向の空間分解能を低分解能に設定する。すなわち、プレスキャンで実行されるパルスシーケンスでは、本スキャンと比べて、位相エンコードの量を小さくする。例えば、位相エンコードの量をゼロにした場合には、リードアウト方向に沿った1次元の補正情報が得られることになる。また、例えば、上述した拡散強調画像の撮像が本スキャンで行われる場合には、プレスキャンでは、MPGパルスを印加しないようにする。MPGパルスは、SN比を低下させる要因となり得るためである。
なお、例えば、本スキャンで複数の撮像が行われない場合には、必ずしもプリスキャンを行わなくてもよい。その場合には、例えば、本スキャンによって収集された診断データに基づいて、位相補正マップや強度補正マップなどの補正情報をを生成すればよい。
また、ここでは、補正情報として、補正マップや補正データを生成する場合の例を説明したが、補正情報は、必ずしも生成されなくてもよい。すなわち、MRIデータ処理部42は、補正値を補正マップや補正データとして生成するのではなく、位相差及び強度差にに基づいて補正関数を生成し、その関数を用いて計算処理を行うことによって、診断画像を補正してもよい。
図10は、従来のナイキストゴースト低減技術によるゴーストアーチファクトの低減の一例を示す図である。図10は、従来のナイキストゴースト低減技術によって得られた偶数診断画像602、奇数診断画像604、及び最終診断画像608の一例を示している。偶数診断画像602では、被検体610aはゴースト成分614a及び616aと重なっている。しかし、強度信号は、偶数診断画像602の少なくとも610a、614a、及び616aの領域全体に、均一、又は、実質的に均一に分布する。奇数診断画像604には、偶数診断画像602と同様に、被検体610b並びにゴースト成分614b及び616bがあり得る。また、図10に示す「+」及び「−」の集まりは、奇数診断画像604全域の相対輝度を示している。図10に示す例では、「+」及び「−」の分布は、奇数診断画像604の画像右側が明るすぎることを示している。
最終診断画像608は、従来技術によって偶数診断画像602と奇数診断画像604とが合成された場合の結果の一例を示している。最終診断画像608において、位相差は従来技術のやり方で補正され得るが、強度差は補正されない。その結果、最終診断画像608では、被検体610cに加えて依然としてゴースト成分614c及び616cが見える場合がある。更に、図10に示す「+」及び「−」の分布によって示されるように、最終診断画像608は依然として、左側と比較して右側が明るい。偶数診断画像と奇数診断画像とが合成されて最終診断画像608が得られる際に、未補正のままである奇数診断画像604における輝度の差に基づいて、輝度の差が生じ得る。したがって、図10に示すように、従来の位相差補正ではゴースト成分が解消されない。
図11は、実施形態に係る画像生成方法によるゴーストアーチファクトの低減の一例を示す図である。図11は、実施形態に係る画像生成方法によって得られた偶数診断画像702、奇数診断画像704、及び最終診断画像708の一例を示している。偶数診断画像702は、偶数診断画像602と同じであり、偶数診断画像602と同じく偶数ラインから生成された画像を表す。したがって、偶数診断画像602の関連で説明したように、被検体710aはゴースト成分714a及び716aと重なり、強度信号は、少なくとも710a、714a、及び716aの領域全体に、均一又は実質的に均一に分布する。奇数診断画像704では、未補正の奇数診断画像604とは対照的に、少なくとも被検体710b並びにゴースト成分714b及び716bの領域において、強度差が空間的に補正されている。図11に示す「+」及び「−」の集まりは、少なくとも710a、714a、及び716aの領域では画像の左から右まで輝度の分布が等しくなるように、奇数診断画像704が補正されたことを示している。もちろん、この単純な説明が正確に当てはまるのは、基本となる画像が均一である実例である。しかし、ここで述べた議論及び結果は、左から右への絶対輝度差等とは対照的に、偶数画像と奇数画像との間の相対輝度差にその説明を適合させれば、空間依存する正確な画素値を有する実際の解剖学的構造等の画像にも、同じように良好に適用することができる。
最終診断画像708は、未補正の偶数診断画像702と強度差が空間的に補正された奇数診断画像704とを合成することにより、強度差が空間的に補正されていない画像608と比較すると、強度差が解消又は大幅に低減された診断画像が得られることを示している。本開示にて既に説明したように、診断画像からゴーストアーチファクトを解消又は大幅に低減するために、1以上のゴーストアーチファクト除去技術を画像に適用してもよい。したがって、当業者には自明であるように、図11に示す例は、ゴーストアーチファクトを低減するために、合成する前及び後の両方又は一方の偶数診断画像及び奇数診断画像に位相差補正技術等のような従来技術を適用することを含んでもよい。本開示の実施形態に係る空間的な強度差の補正では、例えば、ゴーストアーチファクトの出現を更に低減することによって、最終診断画像が更に改善される。
複素数の補正マップは、差比率が正確にはどのように構成されるかに応じて、偶数診断画像と奇数診断画像とを単純に乗算又は除算することによって適用することができる。また、複素数の補正マップを用いることで、比率が単一の値から大きく外れていない場合は、優れた概算が得られる。他の実施形態では、不均一な強度を含んだ比率マップを画素ごと及びエイリアスとなった画素の位置ごとに評価することができ、その比率マップを用いて、非特許文献1の位相マップ補正法と同様に、同時反転の動作を正確に行うことができる。未補正の画素及びそれらのエイリアスから補正済みの画素及びそれらのエイリアスへの同時反転は、偶数信号と奇数信号との間の差が大きいほど、より正確になり得る。
当業者には自明であるように、上述した実施形態は、差の補正マップに明確に強度項を含み、かつ、奇数診断画像と偶数診断画像とが合成される前に、その強度項を用いて奇数診断画像及び偶数診断画像のいずれか一方を補正することによって、ゴーストアーチファクトが低減されたMRイメージングを提供することができる。
他の特徴の中でも、実施形態は、空間的に変動する補正マップに明確に強度項を含むことによって、効果的にかつ別の再構成を行うことなく、受信コイルの中心周波数から受信周波数が離れるにつれて発生する強度の変化のような周波数応答の非平坦性を補正する。
当業者には自明であるように、本明細書に開示された技術は、開示された内容に基づいて、2つの極性のリードアウト傾斜磁場が用いられるEPI法のように、MR信号の3次元(Three Dimensional:3D)収集及び再構成にも拡張することができる。
当業者には自明であるように、別の拡張として、EPI法におけるリードアウト傾斜磁場の1つ以上の部分を利用する収集がある。例えば、GRASE(Gradient and Spin Echo)法のシーケンスは、EPI法におけるリードアウト傾斜磁場のシリーズとみなすこともでき、各リードアウト傾斜磁場がRFリフォーカスパルスによって分けられる。この補正をGRASE法におけるリードアウト傾斜磁場へと拡張するための1つのアプローチとして、位相エンコードが非常に低解像度なプレスキャンデータのセットを、そのデータの交互のグラディエントエコー部分を用いて生成することが挙げられる。例えば、図10と同等のGRASEである本スキャンデータの偶数ライン及び奇数ラインから生成されたサブ画像は、より複雑なエイリアシングのパターンを示し得るが、2つの極性のリードアウト磁場によって生じるゴーストを低減する全体的な能力は残存する。
更に別の拡張としては、非特許文献2における位相補正と同様に、パラレルイメージングで速度を上げた収集である。パラレルイメージングの再構成では、部分的に再構成された中間画像に直接乗法的補正を適用することは必要ない場合がある。その代わりに、SENSEアルゴリズムの基礎である折り返しマトリックス反転の前のコイルの感度マップデータに適用することによって、乗法的補正を間接的に組み込むことができる。このように、乗法的な強度の要素を、折り返される中間画像とは対照的に、コイルの感度マップデータに適用することは、代替可能な実施形態であり、例えば、強度の補正項が真の2次元空間依存性を有する場合に使用され得る。なぜなら、コイルマップはエイリアシングされないからである。本スキャンのデータのアンダーサンプリングから生じるパラレルイメージングのエイリアシングに関係せず、画素ごとに単純に乗算を行うことが可能である。この拡張では、コイルの感度マップは偶数及び奇数のデータのサブセットと関連し、強度情報及び位相情報の両方を含む補正マップが、偶数又は奇数の疑似コイルの片方に適用され、他方には適用されない。
その他の利点の例として、実施形態では、2次元位相補正で既に用いられたもの以外の新しい情報が、被検体又はスキャナから収集される必要がないことが挙げられる。例えば、実施形態では、受信帯域の情報や、リードアウト方向において中心からずれたFOVが不要な場合がある。同様に、実施形態では、2次元位相補正で用いられるもの以外のハードウェア(例えば、受信チャネル又はコイルエレメント)又はサービスの事前の校正が不要な場合がある。また、実施形態は、より一般的な2次元強度補正などの強度偏差を補償してもよい。この強度偏差は、例えば、各RFコイルが異なるQ値及び解像度を備え得る場合、誘導結合されたコイルから信号を確認した際に、発生するものである。その結果、受信チャネルの結合された感度の合成は真の2次元関数になり得るが、これは各コイルの2次元のRF感度パターンの特徴を含む。
更に、実施形態は、偶発的なスライスのディフェージングによる信号損失、例えば交差傾斜項、マックスウェル項、又は空間依存渦電流項に由来するもの等を、それらが信号の強度に影響を与え得る程度まで補正してもよい。更に、2次元での推定により、実施形態は、k空間のピークで、1次元投影で、又は合成されたコイルデータで、又はDWI法により増感された非剛性体の動きのあるデータ等で見られるような、多くの他の偶発的な形で生じる信号の取り消しを回避する。2次元データからの推定(例えば、後続の1次元へのフィッティングを行う場合と行わない場合とでの、単一の収集からの2次元画像ペアにおける偶数/奇数比率)は、k空間ピークを1次元投影で、又は合成されたコイルデータで、又はDWI法により増感された非剛性体の動きのあるデータでフィッティングするよりもロバストでありうる。
更なる利点には、補正が線形周波数依存項に本質的に限定されないことがある。むしろ、実施形態は、場合によっては受信チェーンにおけるアナログフィルタ又はデジタルフィルタの応答における「バンプ」等の、より一般化された周波数関数を補正してもよい。また、実施形態は、実際のイメージングの実行中に受信コイルの周波数の非平坦性から強度変調を得ることにより、コイルが、ローディングとカップリングの1セットで「校正」され、その後、異なるローディングで、及び、異なるQ値又は異なる効果的調整で、「画像化」(例えば、本スキャン)するために用いられる場合に発生する問題を、回避しうる。
現在では、複数の調整済みのハードウェアの受信コイルのループを単一の有効な受信(RX)チャネルに事前合成することは、一般的である。これは、通常、ハードウェアのコストを低減するためであり、収集、保存、及び再構成を必要とするデータの量を低減するためである(例えば、受信チャネルの数が少なければ、再構成時間の短縮につながる)。複数のコイルが合成される場合、特に、受信信号のデジタル化の前は、周波数の補正を単一の有効な受信チャネルに適用することは最善策でない可能性がある。わずかに異なる共振周波数及びわずかに異なるQ値を示すループの場合、一方のループに最適な周波数補正は、他方のループには適切でないであろう。実際のコイル設計では、合成されたループ間でこのような差異を防ぐことはできない。しかし、本明細書での実施形態は2次元で空間的に変化する補正を可能にするため、及び、(合成前の)個々のコイルがそれぞれ個々の位置に配置されるため、かかる実施形態は、より最適な1つの2次元のサブ領域における補正を1つのコイルループに行い、他の領域では、他のコイルループ等により最適な他の補正値を使用することができるため、最善策により近いコイル補正が可能となる。
特定の実施形態を説明してきたが、これら実施形態は例として示したものに過ぎず、発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際に、本明細書に記載した新規な実施形態を、他の様々な形態で具現化してもよい。更に、本明細書に記載した実施形態の形態において、本発明の要旨から逸脱することなく、様々な省略、置換、及び変更を行うことが可能である。添付した特許請求の範囲とその等価物は、そのような形態又は変形を本発明の範囲及び要旨に該当するものとして包含することを意図したものである。