JP6362979B2 - X線源及びこれを用いるx線照射装置並びにx線光電子分光装置 - Google Patents
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Description
また、X線強度をできるだけ大きくするために、タ−ゲットを水冷することにより、電子ビ−ム照射によって発生した熱を除去し、タ−ゲットの損傷を防いでいる。従って、水冷タ−ゲットの損傷による電子ビ−ム励起の上限が、このタイプのXPS装置から得られる信号強度の最も主要な制限要因になっている。
よって、物質本来の電子状態や化学結合状態を調べる手段、また組成や状態分析手段としてはこれらの問題点に十分な注意を払いながら使わねばならない。
この考えに立って、物質のバルクの電子状態や化学状態を見る方法として、アンジュレーター放射光を使った硬X線光電子分光法(HXPESもしくはHAXPES)が開発され、成功を納めている。この方法においては、よりエネルギの高いX線(4〜10keV)を励起に使うことで、光電子の運動エネルギを大きくし、より深い内部から放出される光電子の分析を可能にする。この手法はすでにSPring−8をはじめとする世界の放射光施設で利用に供され、広い分野のユ−ザ利用が多くの成果を輩出している。
以上のことから、タ−ゲット上でのX線励起用の電子ビ−ムは100μmφ以下であることが望ましい。ローランド型分光器では光源を倍率1で試料上に収束させるので、タ-ゲット上の電子線のスポットサイズがそのまま試料上でのX線スポットサイズの最小値となる。
一方で、Crは基板のAgに比べて熱伝導率が小さく、従ってCr層で発生した熱はCr層の厚さが大きくなるに従って、逃げにくくなる。X線強度を増加させるために電子線の加速電圧を増加させると、Cr層の必要な厚さが増加し、Cr層内に熱が蓄積し、その結果Cr層の温度上昇がより大きくなってしまう。Crの昇華が無視できる温度として760℃をCr層の温度の上限としてシミュレ−ションを行うと、ビ−ム径が100μmの場合には、X線の強度は加速電圧が30kV程度以上に増加させても意味はなく、そのときの電子ビ−ムの出力は高々35〜40W程度であることがわかる。すなわち、照射領域のCrの温度上昇によって昇華が始まってしまうため、X線強度は電子線出力を上げても増加しない。
この回転対陰極X線発生装置とは、内部に冷却媒体を流通させた円柱状の対陰極(ターゲット)を高速で回転させながら、その外周表面に電子線を照射してX線を発生させるものである。対陰極を回転させることによって、ターゲット上の電子線の照射位置が変化し、これにより冷却効率を高めることが可能となる。従って、ターゲットに大電流の電子線を照射することができ、高強度なX線を発生させることができる。この時、対陰極の回転数を高く、また回転ターゲットの径を大きくするほど、ターゲットの温度上昇は抑えられるが、一方で真空中におかれた水冷対陰極を真空外の駆動装置により回転させるためには、回転軸および冷却媒体のシールが必要で、このために回転数には技術的な制限がある。X線回折用の回転対陰極では3000RPM前後の回転数のものが通常に市販されている。この回転対陰極においても、ターゲット材の蒸発、昇華を抑えることにより、技術的に可能な範囲の回転数で、より小さい径の回転対陰極によってより高い出力の電子線励起が可能となる。
また、特許文献3には、ターゲット表面のひび割れを防止することを目的として、Cuからなる基体上にAlN厚膜を具備するターゲットを用いることが開示されている。
しかしながら、特許文献2及び3に記載の技術は、ターゲットの構成材料がCuやCoであるものしか開示しておらず、ターゲットがCrであるもの及びそれに好適な被膜については開示されていない。また、特許文献3記載の技術は、上記したようにターゲット表面のひび割れを防止することを目的とするものであって、高強度のX線を得ることを目的とするものではない。
XPS装置(1)は、チャンバ(10)と、X線照射装置(101)と、ステージ(14)と、分析器(15)と、コントローラ(20)とを有する。
アノード(12)は、アノード体(12a)と、アノード体(12a)を支持する基板(12b)とを有する。アノード体(12a)は、電子ビームの照射を受けることで固有の波長を有するX線(特性X線)を発生するX線源として機能する。基板(12b)は、銀(Ag)や銅(Cu)などの熱伝導性に優れた金属材料で構成されており、内部には冷却水が循環する冷却水路(12e)が形成されている。
特に、ターゲット層(12c)としてCrを用いる場合、コーティング層(12d)としてはクロム系窒化物(CrN、Cr2N、CrNとCr2Nとの混合物)およびWを好適に用いることができ、この組み合わせにより特に高強度のKα線を得ることができる。
本発明においては、これらの従来から実用化されている機能を利用するのではなく、真空中に置かれたCrタ−ゲットの電子線照射による温度上昇に伴うCrの昇華を防ぐために、Crタ−ゲットの表面にクロム系窒化物コ−ティング層やWコーティング層を設ける。クロム系窒化物の1つであるCrNの融点は1770℃と十分に高く、その熱膨張係数が7.5x10−6で金属Crの6.2〜6.8x10−6に近く、高温での膜中の熱ひずみは大きくない。
本発明において、電子銃(11)及びアノード(12)が、本発明に係る「X線発生機構」を構成する。
100μm×1mmの開口を持つアモルファスシリコン(a−Si)薄膜の窓を挟む2つの真空タイトな部屋の片方を真空に保ち、もう一方に気体を導入して当該窓材の耐えうる差圧を実験的に測定した。結果を図3に示す。
図3に示す如く、10nm厚のアモルファス膜で1気圧の耐圧があることがわかる。したがって融点が高く高温で安定な材料からなる10nm程度以上の薄膜をCrターゲット層上に形成してCrの昇華を抑えることが可能である。
図2に示す如く、Ag製の水冷基板上に厚さ5μmのCr層を蒸着によって形成し、その上にイオンプレーティング法により50nmのクロム系窒化物層を形成した。
このタ−ゲットアセンブリに3 l/minの流速で冷却水を流しながらビーム径が100μmの収束電子線を照射して、Ag基板の温度がAgの融点(961.93℃)を超えないように電子ビーム電流と加速電圧を変えながら、X線強度を測定した。
基板を無酸素銅製とし、基板の温度が無酸素銅の融点(1085℃)を超えないように電子ビーム電流と加速電圧を変えながら、その他の条件は実施例1と同じ条件でX線強度を測定した。
Ag製の水冷基板上に厚さ5μmのCr層を蒸着によって形成し、その上にスパッタリング法によって20nmのW膜を形成し、昇華防止膜とした。実施例1と同じ条件でX線強度を測定した。
Agの水冷基板上に厚さ5μmのCr層を蒸着によって形成した。
このタ−ゲットアセンブリに5 l/minの流速で冷却水を流しながらビーム径が100μmの収束電子線を照射して、Ag基板の温度がAgの融点(961.93℃)を超えないように電子ビーム電流と加速電圧を変えながら、X線強度を測定した。
また、実施例2においては、比較例1に比べて約3.5倍程度のX線強度が得られた。
図9に簡略化して示す通り、Ag製の水冷基板112上に3つの領域A1〜A3を設定し、その3つの領域の全てに厚さ3μmのCr層(ターゲット層)をスパッタリングにより形成した。そして、領域A1のターゲット層は窒化クロムからなる20nmのコーティング層により覆い、領域A3のターゲット層はタングステンからなる20nmのコーティング層により覆い、領域A2のターゲット層はコーティング層により覆うことなくむき出しのままとした。以上のようにして実施例4のターゲットアセンブリを作成した。
実施例4のターゲットアセンブリにアニール処理を施し、領域A1のコーティング層のほとんどを窒酸化クロムから形成し、領域A3のコーティング層のほとんどを酸化タングステンから形成した。窒化クロムのほとんどが窒酸化クロムに変わり、タングステンのほとんどが酸化タングステンに変わったことは、上述のバルク敏感光電子分光により確かめることができた。以上のようにして実施例5のターゲットアセンブリを作成した
10 チャンバ
11 電子銃
12 アノード
12a アノード体(X線源)
12b 基板
12c ターゲット層
12d コーティング層
13 集光体
14 ステージ
15 分析器
17 電子照射源
20 コントローラ
101 X線照射装置
131 鏡面
S 試料
e 電子ビーム
p 光電子
x1 X線
Claims (4)
- 基板上に形成されたターゲット層と、該ターゲット層を被覆するコーティング層とを備えるX線源であって、
前記ターゲット層は、Crからなり、
前記コーティング層は、高融点化合物を含む薄膜であり、
前記高融点化合物は、クロム系窒化物、及び該クロム系窒化物に由来するクロム系酸窒化物の少なくとも一方を含む薄膜であることを特徴とするX線源。 - 電子ビームを発射する電子銃と該電子銃から発射された電子ビームによりX線を発生するX線源とを有するX線発生機構と、
該X線発生機構から発せられたX線を所定の焦点位置に集光する集光機構とを備え、
前記X線源が、請求項1に記載のX線源であることを特徴とするX線照射装置。 - 前記集光機構は、X線を単色化する分光機能をさらに備えたものであることを特徴とする請求項2記載のX線照射装置。
- 電子ビームを発射する電子銃と該電子銃から発射された電子ビームによりX線を発生するX線源とを有するX線発生機構と、
該X線発生機構から発せられたX線を所定の焦点位置に集光する集光機構と、
前記焦点位置に対応する位置に試料を載置するためのステージと、
前記集光されたX線が前記試料に照射されることにより該試料から放出された光電子運動エネルギー分布を分析するための分析器と、を備え、
前記X線源が、請求項1に記載のX線源であることを特徴とするX線光電子分光装置。
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