以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る送風装置1について図面を用いて説明する。
(構成)
図1は、本実施形態に係る送風装置1の構成を示す概念図である。送風装置1は、送風部10と、ファン制御部20とを備える。
送風部10は、同一スペックの複数のファン11を含む。図1は、5台のファン11を一列に並べて送風部10を構成する例である。なお、送風部10は、5台に限らず何台のファン11を含んでいてもよい。
複数のファン11は、図1のように一列に並べて配置してもよいし、2次元アレイ状に並べて配置してもよい。また、複数のファン11の送風面は、同一面上に並ぶように配置させてもよいし、異なる面上に配置させてもよい。すなわち、複数のファン11の配置には限定を加えない。
個々のファン11は、ファン制御部20の制御に応じて動作する。ファン11は、電圧値や、パルス波のデューティー比を制御することによって回転数を変えることができる可変速ファンである。送風部10からの送風量は、各ファン11からの送風量を合計した総風量に相当する。各ファン11は、ファン11ごとに設定された制御条件を組み合わせた制御パラメータを用いて制御される。
本実施形態において、回転数とは、単位時間当たりの回転数のことをいう。例えば、回転数は、1分当たりの回転数(rpm:revolution per minute)で定義することができる。また、回転数は、1時間や1日などの単位時間当たりの回転数で定義することもできる。ただし、本実施形態においては、異なる単位時間当たりの回転数を比較せず、同じ単位時間当たりの回転数を比較するものとする。
本実施形態において、単位時間は、2分や3分、10分、100分などの単位ではなく、1分や1時間、1日などの単位で定義することができる。なお、1分よりも短い単位時間を回転数に設定することを含めると、回転数に差をつけても周波数に換算すると差がなくなるため、1分よりも短い単位時間を回転数に設定することは好ましくない。また、1時間以上の単位を時間を回転数に設定すると、回転数の数値が大きくなるために好ましくない。そのため、本実施形態においては、特に断りがない限り、回転数とは1分間当たりの回転数を示すものとする。
ファン11には、遠心ファンや軸流ファン、斜流ファン、横断流ファンなど任意の構造のファンを用いることができる。例えば、シロッコファンやターボファン、プロペラファン、ラインフローファンなどをファン11として用いることができる。
ファン制御部20は、制御パラメータに含まれる制御条件を用いて各ファン11の回転数を設定し、送風部10から送風される風量を制御する。すなわち、ファン制御部20は、複数のファン11の回転数を設定する制御条件を組み合わせた制御パラメータを用いて複数のファン11を制御する。本実施系形態では、一つの制御パラメータを選択すれば、全てのファン11の回転数が一意に設定される。
また、送風装置1は、送風装置1を搭載する機器に接続されるコネクタ30を有する。コネクタ30は、ケーブル31によってファン制御部20に接続される。なお、本実施形態においては、コネクタ30およびケーブル31の形状や有無に関しては限定を加えない。
コネクタ30は、図示しない上位装置と送風装置1とを接続するための接続部である。通常、コネクタ30は、電源や信号を入出力するための端子をまとめた構造を有する。例えば、コネクタ30は、上位装置のボード上のコネクタと脱着させることができる。なお、コネクタ30は、パルス幅変調信号(以下、PWM信号)を入出力するための端子を含んでいてもよい(PWM:Pulse Width Modulation)。
各ファン11が一般的な3pinファンである場合、コネクタ30は、電源端子(プラス、マイナス)および回転数信号の端子を含む。また、各ファン11が一般的な4pinファンである場合、コネクタ30は、電源端子(プラス、マイナス)、回転数信号およびPWM信号の端子を含む。なお、コネクタ30は、回転数信号やPWM信号の端子、電源端子以外の信号線や電源線に接続されていてもよい。
ケーブル31は、コネクタ30の端子に接続された配線をまとめたものである。例えば、ケーブル31は、回転数信号を伝送するための信号線や電源線を含む。また、ケーブル31は、回転信号を伝送するための信号線に加えて、PWM信号を伝送するための信号線を含んでいてもよい。
(ファン制御部)
ここで、ファン制御部20の詳細な構成について図面を用いて説明する。図2は、ファン制御部20の構成例を示すブロック図である。ファン制御部20は、制御回路21、記憶装置22、第1のインターフェース23および第2のインターフェース24を備える。
制御回路21は、記憶装置22に記憶された制御パラメータを用いて各ファン11を制御する。すなわち、制御回路21は、所望の総風量に対応させて設定された制御パラメータのいずれか一つを選択して複数のファン11を制御する。例えば、制御回路21は、制御用のマイクロコンピュータによって実現される。例えば、制御回路21は、各ファン11に印加する電圧やPWM信号を制御することによって、各ファン11の回転数を設定する。なお、制御回路21は、PWM信号を用いて各ファン11を制御するようにしてもよい。
記憶装置22は、送風部10から送風する総風量に対応させて設定された制御パラメータを記憶する。例えば、記憶装置22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)によって実現できる。記憶装置22は、複数のファン11のうち少なくとも一組において干渉を低減させる制御条件の組み合わせを含む制御パラメータを記憶する。
制御パラメータは、送風部10から送風する総風量に対応させて、複数のファン11の回転数が干渉を低減させるように設定された制御条件を含む。例えば、ファン11の回転数を電圧によって制御する場合、送風部10から送風する総風量に対応させて、各ファン11に印加する電圧値を制御条件として設定しておけばよい。また、例えば、PWM信号を用いてファン11の回転数を制御する場合、送風部10から送風する総風量に対応させて、各ファン11に設定するパルス波のデューティー比を制御条件として設定しておいてもよい。
第1のインターフェース23は、ファン制御部20に複数のファン11を接続するためのインターフェースである。第1のインターフェース23は、各ファン11に対して電力を供給するための端子を含む。また、第1のインターフェース23は、各ファン11の回転数をモニターするための端子やPWM信号などの信号を入出力するための端子を含んでいてもよい。
第2のインターフェース24は、送風装置1を搭載する機器からの電力供給を受け付けるインターフェースである。また、第2のインターフェース24は、送風装置1を搭載する装置を上位装置とし、その装置からの制御信号を受け付けるようにしてもよい。例えば、上位装置によって送風装置1をモニター・制御させ、上位装置からの制御信号を制御回路21で受け付け、その制御信号に従った制御条件で制御回路21が各ファン11を制御するようにしてもよい。
(制御パラメータ)
ここで、制御パラメータの詳細について説明する。制御パラメータは、送風部10からの総風量に対応させて、各ファン11の制御条件を組み合わせたものである。制御パラメータは、事前に記憶装置22に記憶させておく。以下の例では、送風部10をn個のファン11で構成する例を示す(n:2以上の自然数)。
図3は、複数のファン11を制御するための制御パラメータを含む制御テーブル211である。制御テーブル211は、送風部10からの総風量に対応させて設定された制御パラメータを含む。図3においては、それぞれの制御パラメータを一意に特定するためのID(Identifier)が各制御パラメータに付与されている。
制御テーブル211においては、ファンAの電圧値をA1ボルトに設定する制御条件と、ファンBの電圧値をB1ボルトに設定する制御条件と、・・・、ファンNの電圧値をN1に設定するという制御条件とをまとめたものが制御パラメータである。図3の制御テーブル211は、各ファン11を電圧値によって制御する例である。各ファン11をPWM制御する場合は、電圧値の替わりに、パルス波のデューティー比を設定しておけばよい。
図3の制御テーブル211の1行目は項目名であり、2行目以降の各行が制御パラメータである。制御テーブル211中の各制御パラメータは、各ファン11の回転数が異なるように設定されたファン11ごとの制御条件を含む。
送風装置1からの総風量を所望の値に設定するためには、制御テーブル211の二列目の総風量を参照し、所望の総風量に対応する制御パラメータを選択して各ファン11の電圧値を設定すればよい。なお、PWM信号を用いる場合は、制御パラメータとして、総風量に対応させたパルス波のデューティー比の制御条件をファン11ごとに設定しておけばよい。
ここでは、ファンAの電圧値をA1ボルトに設定すれば、ファンAから毎分q1立方メートルの風量で送風される。同様に、ファンBの電圧値をB1ボルトに設定すればファンBから毎分q2立方メートルの風量で送風され、・・・、ファンNの電圧値をN1ボルトに設定すればファンNから毎分qn立方メートルの風量で送風される。送風部10から毎分Q(=q1+q2+・・・+qn)立方メートルの総風量で送風させるには、ファンAをA1ボルト、ファンBをB1ボルト、・・・、ファンNをN1ボルトに設定すればよい。
一般に、ファン11などの回転体の振動は回転運動に起因する。ファン11が回転することによって発生する振動は、羽やベアリングの数、モータの駆動極数など様々な要因によって発生する。本実施形態においては、羽の数を要因とする振動を抑制する例について説明する。
ファン11の回転数をN[rpm]とすると、回転周波数f[Hz]は式1から求められる。
f=N/60・・・(1)
また、羽の枚数をB[枚]とすると、下記の式2で示す基本周波数F[Hz]の倍数の周波数で、回転に起因するファン11の振動が大きくなる。
F=Bf・・・(2)
これ以降、ファン11の振動が大きくなる基本周波数Fの倍数(1、2、・・・、n倍)に対応する周波数(Bf、2Bf、・・・、nBf)を基本振動数の倍数成分と呼ぶ(nは自然数)。
図4は、6枚の羽(B=6)を有する複数のファン11を異なる回転数で制御する場合の基本振動数の倍数成分(1〜10次)をまとめたテーブルである。図4において、白抜きの数字は、基本振動数の倍数成分に同じ数値のものがあることを示す。なお、図4の基本振動数の倍数成分は、小数点以下を四捨五入した値を示している。
以下においては、回転数を整数値で設定する例について説明する。ただし、回転数は、電圧値やデューティー値で設定する場合、必ずしも整数値にはならない。回転数が小数点以下の桁を含む場合は、小数点以下を四捨五入や切捨て・切り上げした整数部で設定すればよい。
例えば、全てのファン11を同じ回転数で制御すると、各次数の倍数成分は同じになる。その場合、全てのファン11の基本振動数の倍数成分が重なることになる。一方、図4のように異なる回転数を組み合わせれば、基本振動数の倍数成分の重なりは低減する。
しかしながら、単に回転数をずらしただけでは、図4のように、基本振動数の倍数成分の重なりが何箇所かあらわれる可能性がある。その原因は、各回転数の公約数に同じ数が含まれるためである。回転数さえ異なれば基本振動数の倍数成分の重なりが減るためにファン11同士の干渉は低減するが、できれば基本振動数の倍数成分の重なりまで低減することが望ましい。そのためには、異なる回転数の公約数に1以外の数字が含まれないように、各ファン11の回転数が互いに素になるような制御条件を選択すればよい。すなわち、本実施形態においては、複数のファン11のうち少なくとも一組の回転数の整数部が互いに異なる値に設定される制御条件の組み合わせを含む制御パラメータを記憶装置22に記憶しておく。なお、本実施形態においては、異なるファン11同士の回転数が同じであることをファン11同士が干渉すると表現する。
制御パラメータは、ファン11のうち少なくとも一組の回転数の整数部が互いに素である整数値に設定される制御条件の組み合わせを含むことが好ましい。さらに、制御パラメータは、ファン11のうち少なくとも一組の回転数の整数部が互いに異なる素数に設定される制御条件の組み合わせを含むことがより好ましい。なお、ファン11の回転数は、電圧値やパルス幅のデューティー比などを用いて設定されるため、厳密に整数になるとは限らない。そのため、本実施形態においては、回転数が小数点以下の桁数を含むことも考慮し、回転数の整数部によって回転数を規定する。また、回転数の単位が異なると比較できないため、本実施形態においては「1分間当たりの回転数」を「回転数」と定義して説明する。
図5は、各ファン11の回転数が互いに素になるような制御条件を組み合わせた例である。図5においては、各ファン11の回転数に互いに異なる素数を割り当てている。図4の回転数の組み合わせと同じ程度の風量を得るためには、図4の各回転数に近い素数(997、1103、1201、1301、1399)を選択すればよい。例えば、回転数の制御範囲が500〜2000rpm程度であれば、その制御範囲内の有限個の素数(約200個)から回転数に設定する数字を選択すればよい。なお、図5においては、各ファン11の回転数に素数を割り当てたが、互いに素の関係にある数字を組み合わせれば、基本振動数の倍数成分の重なりを低減することができる。また、図5において、基本周波数の倍数成分は、小数点以下第2位を四捨五入した数値を示している。
なお、ファン11の回転数に素数を設定しても基本振動数の倍数成分が近ければ、ファン11の個体差によっては、干渉が発生する可能性もある。このような場合は、基本振動数の倍数成分が重なり合うファン11のうちいずれかの回転数を変更すればよい。例えば、図5のようなファン11の組み合わせにおいて、997rpmで回転するNo.1のファン11と、1103rpmで回転するNo.2のファン11との間で干渉が発生したものとする。このような場合、No.1のファン11の回転数を991rpmに変更したり、No.2のファン11の回転数を1109rpmに変更したりして、回転数の差を広げればよい。このような変更は、複数のファン11の組み合わせをシミュレーションして検証したり、実際に組み上げて検証してもよい。
厳密にいうと、ファン11同士の干渉は、回転数を変えることによって減少させることはできても、解消することができるとは限らない。回転数に対応する基本振動数の倍数成分は、横軸を周波数、縦軸を振動の大きさとしてプロットすると、周波数方向に分布したピーク形状をもつ。異なる回転数に対応する倍数成分が十分に離れていないと、それらのピークを重ね合わせた成分は、各ピークの振動の大きさよりも大きな値になる。そのため、基本振動数がどの程度離れていればよいかの目安があるとよい。
例えば、ピークの最大値の半分の値における周波数幅を半値幅と定義する。このとき、異なるピーク間の間隔を半値幅よりも大きくなるようにすれば、それらのピークを重ね合わせた際の振動の大きさは、大きい方のピークの振動の大きさよりかは小さくなる。そのため、各ピークの間隔が半値幅よりも大きくなるような回転数を組み合わせれば、ファン11同士の干渉を低減することができる。ここで、異なるファン11同士において、基本周波数に対応するピークの間隔が半値幅に一致する際の回転数の間隔を「所定間隔」と定義する。すなわち、複数のファン11のうち少なくとも一組に関して、単位時間当たりの回転数が所定間隔よりも離れるように設定される制御条件の組み合わせを含む制御パラメータを設定すれば、ファン11同士の干渉を低減することができる。
(回転数の選択)
ファン11の回転数の選択は、以下のような手順で行えばよい。なお、以下の手順は一例であって、本実施形態の送風装置1を構成する複数のファン11の回転数は、以下の方法以外の選択方法で選択してもよい。
まず、送風部10からの総風量をいくつか設定する。そして、設定した総風量が得られるファン11の回転数の組み合わせを設定する。ただし、各ファン11の回転数に対応する風量は、事前に決めておくこととする。
ここでは、ファン11の回転数を全て異なる値に設定してもよいが、ファン11同士の回転数が異なりさえすればよいので、複数のファン11のうち少なくとも一組のファン11の回転数を異なる値に設定すればよい。なお、高次の倍数成分の重なりまで避けるためには、複数のファン11の回転数として互いに素である整数を選択すればよく、さらには互いに異なる素数を選択することがより好ましい。
ところで、ファン11の回転数が1rpm異なると、周波数換算では約0.017Hzだけ異なる。この程度の差では、たとえファン11の回転数が異なるといっても、実質的には回転振動数は同じである。ところで、ファン11の回転数に60rpmの差をつければ、回転振動数の差は10Hzになる。10Hz程度の差があれば、基本振動数の倍数成分の重なりに起因する干渉は抑制できる。通常、ファン11の回転数は、数千rpmに設定されるため、ファン11の回転数の差が数十rpm以上であれば、回転数に起因する干渉を完全になくせないとしても、低減することはできる。なお、ファン11の回転数は、数百rpm以上の差をつけることが好ましい。
すなわち、複数のファン11の回転数の差を所定の数値よりも大きな値に設定することによって、ファン11同士の干渉を低減することができる。しかし、実際には、回転数の差をどれだけにするのかを厳密に定義することは難しい。そのため、実際には、送風部10から所望の総風量を得るためのファン11の組み合わせを事前に検証しておくことが必要となる。
(搭載例)
ここで、電子機器100の内部に送風装置1を搭載する例について図面を用いて説明する。図6は、冷却対象101を実装する電子機器100の内部に送風装置1を搭載する例である。なお、冷却対象101は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、電源などといった発熱量が大きいデバイスである。
送風装置1は、制御パラメータを用いることによって、複数のファン11を含みながらも単一のファンから送風するように総風量を制御する。冷却対象101にとっての受風量には多少の違いはあるかもしれないが、送風装置1からの総風量は所望の風量に制御される。
以上のように、本実施形態においては、所望の総風量で送風する際に、複数のファンのうち少なくとも一組において干渉を低減させる制御条件の組み合わせを含む制御パラメータを選択する。本実施形態によれば、事前に設定しておいた制御パラメータを選択すればよいため、特別な管理モジュールを設けなくても、所望の総風量に対応させて複数のファンの回転数を自律的に設定することができる。
また、本実施形態においては、複数のファンのうち少なくとも一組の回転数が互いに異なる値に設定される制御条件の組み合わせを含む制御パラメータを記憶装置に記憶させておく。その結果、本実施形態によれば、ファン同士の回転数の重なりを低減することによって、ファン同士の干渉を低減することができる。なお、本実施形態の送風装置は、ファンの回転数の重なりを完全になくすわけではなく、低減させることを可能とするものである。すなわち、本実施形態によれば、複数のファン同士の干渉を低減するように各ファンの回転数を自律的に設定することができる。また、本実施形態に係る送風装置は、汎用的なファンユニットとして構築できるため、本送風装置を搭載する機器側の制約が少なくなるという効果も得られる。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る送風装置2の構成を示す概念図である。送風装置2は、送風部10−1の構成が第1の実施形態の送風部10とは異なる。送風装置2のその他の構成は、第1の実施形態の送風部10と同様であるために詳細な説明は省略する。
送風部10−2は、異なる物理的特性を有する複数のファン11を組み合わせた構成を有する。例えば、図7のファン11−1〜5は、羽の数という物理的特性が異なる。なお、以下の説明において、ファン11−1〜5を区別しない場合は、単にファン11と記載する。
送風部10−1の各ファン11は、ファン制御部20の制御に応じて動作する。送風部10からの送風量は、各ファン11からの送風量を合計した総風量に相当する。各ファン11は、ファン11ごとに設定された制御条件を組み合わせた制御パラメータを用いて制御される。
各ファン11は、それぞれ異なった特性を有する。ファン11の特性は、例えば、羽の状態(枚数や形状など)や大きさ、材質、向きなどの物理的特性を含む。また、複数のファン11は、羽の状態や大きさ、材質、向きなどの物理的特性は同じであっても、設定された風量域における回転速度や回転方向などの回転状態を含む動作特性が互いに異なるように構成してもよい。
図8は、送風装置2を構成する複数のファン11を異なる回転数に設定する場合の基本振動数の倍数成分をまとめた表である。図4と比較すると、図8においては、各回転数は互いに素ではないものの、基本振動数の倍数成分の重なりがないことがわかる。
ところで、ファン11の羽の枚数と回転数との組み合わせによっては、異なるファン11に関して基本振動数の倍数成分の重なりが増える場合もある。例えば、羽が6枚のファン11−3を1000rpmで回転させ、羽が5枚のファン11−1を1200rpmで回転させると、回転周波数が全く同じになる。そのため、羽の数が異なるファン11を組み合わせる場合には、制御パラメータの設定には注意が必要である。また、羽の数が異なっても、高次の倍数成分までみれば、回転周波数の重なりが皆無であるとはいえない。そのため、特性が異なるファン11を組み合わせる場合であっても、回転数が互いに素になるように設定することが好ましい。なお、厳密には、回転数に設定した回転数の高次成分まで考慮すると、回転数が素数であっても同じ公約数をもつ回転周波数があらわれる。しかしながら、本実施形態においては、回転数の重なりに起因する干渉を低減することを目的とするため、基本振動数の倍数成分の重なりが低減しさえすればよい。
ファン11の特性は、任意に組み合わせることができる。なお、複数のファン11の特性は、全てのファン11で異なることが好ましいが、いくつかのファン11が同じ特性を有していてもよい。例えば、同一の特性を持つ二つのファン11の間に、異なる特性のファン11を配置すれば、同一の特性を持つ二つのファン11に関しては基本振動数の倍数成分の重なりを低減することができる。そのため、本実施形態に関しては、複数のファン11のうち一組の基本振動数の倍数成分が重ならなければよい。
以下に、本実施形態の送風装置2の変形例を示す。
図9の送風装置2−2は、10個のファン11(11−1〜10)によって送風部10−2を構成する例である。図9の送風装置2−2の送風部10−2では、ファン11−1〜5のそれぞれの送風面とファン11−6〜10のそれぞれの送風面とを互いに反対側に向けて配置する。この場合、ファン11−1〜5のそれぞれと、ファン11−6〜10のそれぞれとの回転数の差に応じて、送風方向が変わる。
図10は、互いに反対方向に回転するファン11−11およびファン11−12を交互に並べた送風部10−3を有する送風装置2−3である。隣接しあうファン11−11とファン11−12とを互いに反対方向に回転させれば、隣接したファン11間で回転に起因する干渉を打ち消すことができる。ファン11−11とファン11−12とを反対向きに回転させても、送風部10−3からの総風量は、各ファン11からの風量の合計になる。
以上のように、本実施形態によれば、異なった特性のファンを組み合わせることによって、回転に起因するファン同士の干渉をさらに低減する送風装置を提供することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る送風装置3について図面を参照しながら説明する。
(構成)
図11は、本実施形態に係る送風装置3の構成を示す概念図である。本実施形態に係る送風装置3には、第1の実施形態に係る送風装置1に振動センサ40が追加されている。振動センサ40は、ケーブル41によってファン制御部20−3に接続される。以下においては、第1の実施形態に係る送風装置1と共通する箇所については説明を省略する。
振動センサ40は、ケーブル41によってファン制御部20−3に接続される。振動センサ40は、検出した振動を検出信号に変換し、その検出信号をファン制御部20−3に出力する。振動センサ40は、振動を検出したタイミングに合わせて1度だけ検出信号を出力するように構成してもよいし、振動を検出している期間に所定のタイミングで検出信号を継続的に出力し続けるように構成してもよい。
振動センサ40は、送風部10の振動を検知する位置に配置することができる。また、振動センサ40は、送風装置3と干渉しうるハードディスクなどのデバイスの振動を検出する位置に配置してもよい。
振動センサ40は、変位や速度、加速度などの物理量を検出対象とする。例えば、周波数が低い場合は変位、周波数が高い場合は加速度を検出対象とすることによって感度よく測定できる。そのため、検出する振動の周波数に応じて、検出対象とする物理量を変えるように設定してもよい。実際には、振動を皆無にすることは難しいので、所定の閾値を超える振動が検出された際に、振動センサ40から検出信号を出力するようにすればよい。
振動センサ40は、検出対象とする物理量に応じて、適切な測定方式を選択することが好ましい。例えば、変位を対象とする場合は静電容量式や渦電流式、速度を対象とする場合はレーザドップラ式や電磁式、加速度を対象とする場合は圧電式を選択することが好ましい。なお、振動センサ40の測定方式は、検出する振動の周波数や振幅、対象物の大きさや周波数範囲、測定環境、温度、清浄度に応じて適宜選択するようにしてもよい。
図12は、本実施形態のファン制御部20−3の構成を示すブロック図である。ファン制御部20−3は、第1の実施形態に係るファン制御部20に、振動センサ40を接続するための第3のインターフェース25を追加した構成を有する。なお、図12のファン制御部20−3は、第3のインターフェース25を一つだけ含んでいるが、振動を検出する対象の数に応じて複数含んでいてもよい。
制御回路21は、第1の実施形態と同様の機能とともに、振動センサ40から出力される検出信号に基づいて、各ファン11の回転数を調整する機能を有する。制御回路21は、振動センサ40の検出信号を第3のインターフェース25経由で取得する。
例えば、送風装置3が総風量Qで送風を行っている際に、振動センサ40がいずれかのファン11同士の干渉に起因する振動を検出すると、制御回路21は振動センサ40から検出信号を受信する。このとき、制御回路21は、回転数が近接するファン11同士の回転数の差が大きくなるような制御パラメータを選択すればよい。
図13は、振動センサ40の検出信号に応じてファン11の回転数を制御する際に使用する制御パラメータをまとめた制御テーブル231である。制御テーブル231は、同じ送風量に対して複数の制御パラメータ(m個)を格納している(mは2以上の自然数)。制御テーブル231の制御パラメータには、それぞれ一意の識別子(ID:Identifier)が付与されている。各IDに対応する制御パラメータの電圧値はファン11ごとに設定され、それぞれの電圧値に応じてファン11の回転数が設定される。
例えば、制御回路21は、あるIDの制御パラメータで制御している際に振動センサ40から検出信号を受信すると、異なるIDの制御パラメータを選択する。
例えば、制御回路21は、ID21の制御パラメータを用いていた場合に振動センサ40からの検出信号を受信した際には、ID22の制御パラメータを選択すればよい。制御回路21は、制御パラメータの変更によって振動が検出されなくなれば、この制御パラメータの使用を継続する。また、制御回路21は、制御パラメータの変更によって振動が検出され続けている場合、ID22の制御パラメータをID23以降の制御パラメータを選択しなおせばよい。なお、制御パラメータを選択しなおしても所定の閾値を超える振動が検出され続けている場合は、振動センサ40によって検出された振動が最小となる制御パラメータを選択するようにすればよい。
(動作)
ここで、図14のフローチャートを用いて、本実施形態に係る送風装置3が有する制御回路21の動作の一例について説明する。
まず、図14において、制御回路21は、振動センサ40から検出信号を受信する(ステップS31)。
すると、制御回路21は、制御パラメータを変更する(ステップS32)。
ここで、制御回路21は、制御パラメータを変更したのにもかかわらず検出信号を受信し続けている場合(ステップS33でYes)、ステップS32に戻って制御パラメータを再度変更する。なお、制御パラメータの変更が反映された状態でステップS33の判定を実行するために、ステップS32の後、振動センサ40から検出信号が出力されるまで待機するように設定してもよい。
一方、制御回路21は、制御パラメータの変更に伴って検出信号を受信しなくなった場合(ステップS33でNo)、使用中の制御パラメータによる制御を継続させる。
以上が、送風装置3が有する制御回路21の動作の一例についての説明である。なお、図14の動作は一例であって、本実施形態に係る送風装置3の動作を限定するものではない。
制御パラメータは、総風量に対応させて事前に設定しておくものであるが、状況に応じて微調整できるように設定値に幅を持たせておいてもよい。例えば、ファンAに対しては毎分r1立方メートル、ファンBに対しては毎分r2立方メートル、・・・、ファンNに対しては毎分rn立方メートルの許容値を設定し、以下の式2を満たすように制御してもよい。
Q=[q1±r1]+[q2±r2]・・・+[qn±rn]・・・(2)
実際には、風量の許容値に対応する電圧値や、パルス波のデューティー比を制御する。たとえば、毎分rn立方メートルの許容値に対応する電圧幅がvnボルトである場合、以下の式3を用いて電圧値を制御すればよい。
V=[V1±v1]+[V2±v2]・・・+[Vn±vn]・・・(3)
例えば、振動センサ40がある周波数の振動を検知した場合、その回転周波数で動作するファン11の回転数を変更する。このとき、制御回路21は、許容幅の範囲内で制御条件を変更し、ファン11同士の干渉の有無を検証すればよい。なお、ファン11同士の干渉が低減した場合、制御回路21は、変更した制御条件で元の制御条件を上書きするようにしてもよい。制御条件を変更してもファン11同士の干渉が低減しない場合、制御回路21は、別の制御パラメータを選択すればよい。
(搭載例)
ここで、電子機器300の内部に送風装置3を搭載する一例について図面を用いて説明する。図15および図16は、冷却対象101を実装する電子機器300の内部に送風装置3を搭載する一例である。図15および図16の例では、送風装置3とデバイス102とが干渉しうる位置関係に配置されているものとする。
図15の例では、振動センサ40によって送風装置3の振動を検出する。実際には、送風装置3の送風部10の振動を振動センサ40によって検出するようにすればよい。図15の構成によれば、送風装置3に含まれる複数のファン11同士の干渉に起因する振動を実際に検出し、制御パラメータを変更することによってファン11同士の干渉を低減させることができる。その結果、デバイス102に対して送風装置3の干渉の影響が及びにくくなる。
図16の例は、送風装置3と干渉しうるハードディスクなどのデバイス102の振動を送風装置3によって検出する。図16の構成によれば、送風装置3のファン11の回転に起因してデバイス102に発生した振動を振動センサ40によって検出し、制御パラメータを変更することによって干渉を低減させることができる。その結果、送風装置3とデバイス102との間の干渉を低減することができる。また、図16の構成によれば、送風装置3自体のファン11同士の干渉に起因してデバイス102側に発生した振動を併せて検出することができる。
以上のように、本実施形態によれば、振動センサが振動を検出した際に制御パラメータを変更することによって、ファンとデバイスとの干渉や、ファン同士の干渉を低減することができる。そのため、本実施形態によれば、他の実施形態と同様にファンの回転状態に起因する干渉を低減することができ、他の実施形態よりもさらに自律的にファンを制御することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る送風装置4について図面を参照しながら説明する。
(構成)
図17は、本実施形態に係る送風装置4の構成を示す概念図である。本実施形態に係る送風装置4には、第3の実施形態に係る送風装置3に温度センサ50が追加されている。温度センサ50は、ケーブル51によってファン制御部20−4に接続される。なお、送風装置4は、振動センサ40を含まない構成としてもよい。以下においては、第1〜第3の実施形態に係る送風装置1〜3と共通する箇所については説明を省略する。
温度センサ50は、ケーブル51によってファン制御部20−4に接続され、測定した温度をファン制御部20−4に出力する。温度センサ50は、送風装置4が冷却対象とするデバイスに接触させたり、近接させたりさせる。例えば、温度センサ50は、サーミスタや測温抵抗体、熱電対などの接触型温度センサによって実現される。また、温度センサ50は、赤外線センサやサーモパイルなどの非接触型温度センサによって実現してもよい。
図18は、本実施形態に係るファン制御部20−4の構成を示すブロック図である。ファン制御部20−4には、第3の実施形態に係るファン制御部20−3に温度センサ50に接続するための第4のインターフェース26が追加されている。なお、送風装置4に振動センサ40を含ませない場合、ファン制御部20−4は、第3のインターフェース25を有していなくてもよい。また、図18のファン制御部20−4は、第4のインターフェース26を一つだけ含んでいるが、振動の検出対象の数に応じて複数含んでいてもよい。
制御回路21は、第3の実施形態と同様の機能とともに、温度センサ50から出力される検出信号に基づいて、送風部10からの送風量を制御するために各ファン11の回転数を調整する。制御回路21は、温度センサ50からの信号を第4のインターフェース26経由で取得する。
制御回路21は、温度センサ50からの信号に基づいて、制御パラメータを選択する。例えば、温度センサ50が冷却対象の表面に設置されていると、制御回路21は、冷却対象の温度が上昇した際には送風量を増やす制御をする。また、例えば、冷却対象の温度が所定の範囲内であったりや温度が下降したりした際には、現状を維持する制御をしたり、送風量を減らす制御をしたりする。
(動作)
ここで、図19のフローチャートを用いて、本実施形態に係る送風装置4が有する制御回路21の動作の一例について説明する。なお、図19には、温度センサ50からの信号に基づいた処理についてのみ示す。振動センサ40からの信号に基づいた処理(図14)は、図19の処理とは独立に実行してもよいし、図19の処理と組み合わせてもよい。
まず、図19において、制御回路21は、温度センサ50が測定した温度に関する情報を受信する(ステップS41)。
ここで、制御回路21は、温度センサ50から受信した温度が所定の閾値を超えているか否かを判定する(ステップS42)。
温度センサ50から受信した温度が所定の閾値を超えている場合(ステップS42でYes)、制御回路21は、制御パラメータを変更する(ステップS43)。ステップS43において、制御回路21は、変更前よりも送風量が大きくなるような制御パラメータを選択する。この後、ステップS41に戻ってもよいし、ステップS44に進んでもよい。
一方、温度センサ50から受信した温度が所定の閾値を超えていない場合(ステップS42でNo)、ステップS44に進む。
ここで、温度センサ50から受信した温度が所定の閾値を下回った場合に送風量を減らすように設定されていれば(ステップS44でYes)、制御回路21は、制御パラメータを変更して総風量を減らす(ステップS45)。
一方、温度センサ50から受信した温度が所定の閾値を下回っても送風量を減らさない場合、制御回路21は、使用中の制御パラメータによる制御を継続させる。
以上が、送風装置4の制御回路21の動作に関する説明である。なお、図19の動作は一例であって、本実施形態に係る送風装置4の動作を限定するものではない。
(搭載例)
ここで、電子機器400の内部に送風装置4を搭載する一例について図面を用いて説明する。図20は、冷却対象101を実装する電子機器400の内部に送風装置4を搭載する一例である。図20の例では、第3の実施形態と同様に、送風装置4とデバイス102とが干渉しうる位置関係に配置されるものとする。
図20の例では、温度センサ50によって冷却対象101の温度を測定する。このとき、温度センサ50は、冷却対象の表面や近傍、内部に配置すればよい。
図20の構成によれば、冷却対象101の温度に応じて、送風装置4からの送風量を適切に設定することができる。冷却対象101の冷却が不十分な場合、送風装置4は、総風量をさらに増やす制御をして冷却対象101を適切な温度に冷却することができる。また、冷却対象101の温度が所定の閾値を下回った場合に送風量を減らす制御を行えば、冷却対象101を過剰に冷却することなく、消費電力を低減できる。
以上のように、本実施形態に係る送風装置によれば、冷却対象の温度を実測することによって、他の実施形態と比べてより自律的に送風装置からの風量を制御することができる。また、本実施形態に係る送風装置によれば、冷却対象の温度をモニターすることによって、デバイスを適切に冷却するため、過剰な消費電力を抑制することができる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。