「一実施形態」
「フィルム延伸装置の概要」
図1に示すように、フィルム延伸装置は、2つの循環経路(例えば、左循環経路、右循環経路)を有している。左循環経路は、往路1aと復路1bを無端状に接続させた一連の左レール構造体1によって構成されている。右循環経路は、往路2aと復路2bを無端状に接続させた一連の右レール構造体2によって構成されている。
ここで、左循環経路(左レール構造体1)において、往路1aは、後述する入口側スプロケット36aから後述する出口側スプロケット36bに至るまでの領域に構成されている。復路1bは、出口側スプロケット36bから入口側スプロケット36aに至るまでの領域に構成されている。一方、右循環経路(右レール構造体2)において、往路2aは、入口側スプロケット36aから出口側スプロケット36bに至るまでの領域に構成されている。復路2bは、出口側スプロケット36bから入口側スプロケット36aに至るまでの領域に構成されている。
左レール構造体1及び右レール構造体2は、延伸対象となるフィルム(図示しない)の両側に、互いに対向させて配置されている。左レール構造体1と右レール構造体2とが対向する領域において、双方の往路1a,2aは、互いに対向するように配置されている。なお、延伸対象となるフィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂を一定の方向(例えば、後述する搬送方向4)に沿ってシート状に連続させた長尺物を想定することができる。
2つの往路1a,2aが対向する領域には、一連のフィルム搬送エリア3が構成されている。フィルム搬送エリア3は、予め設定された一定の方向(以下、搬送方向4という)に沿って連続して構成されている。フィルム搬送エリア3は、入口部3pと、出口部3tとを有している。上記した搬送方向4は、入口部3pから出口部3tに向かって真っ直ぐに連続している。フィルム搬送エリア3において、入口部3pに送り込まれたフィルムは、搬送方向4に沿って連続して搬送された後、出口部3tから送り出される。
なお、フィルム延伸装置において、前後方向、左右方向、上下方向は、それぞれ、図1を平面視した状態で、以下のように規定される。即ち、前後方向は、図1の紙面と同一平面上において、入口部3pから出口部3tに向かう方向に沿って規定される。入口部3pは、手前(前方)側に位置付けられる。出口部3tは、奥(後方)側に位置付けられる。左右方向は、図1の紙面と同一平面上において、搬送方向4を直交する方向に沿って規定される。上下方向は、図1の紙面に垂直な方向(例えば、重力方向)において、搬送方向4を直交する方向に沿って規定される。
入口部3pと出口部3tとの間の領域において、フィルム搬送エリア3には、予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3cが設けられている。フィルム搬送エリア3において、手前(前方)側から奥(後方)側に向かって、入口部3p、予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3c、出口部3tが、この順番で配置されている。予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3cは、互いに連続して構成されている。
更に、図1〜図3に示すように、左循環経路には、左レール構造体1に沿って移動可能な複数のクリップ13(後述する)が設けられている。右循環経路には、右レール構造体2に沿って移動可能な複数のクリップ13(後述する)が設けられている。対向する往路1a,2aにおいて、各々のクリップ13は、互いに向かい合って移動する。
かかる構成によれば、入口部3pに送り込まれたフィルムは、その両縁部が複数のクリップ13で把持される。クリップ13で把持されたフィルムは、予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3cを搬送される。この間、当該フィルムは、縦横に同時に延伸される。かくして、延伸済みフィルムは、クリップ13による把持状態が解除された後、出口部3tから送り出される。
予熱ゾーン3aにおいて、双方の往路1a,2aは、互いに平行に配置されている。往路1a,2a相互の左右方向の幅間隔(width interval)は、延伸される前の状態のフィルム(以下、初期フィルムと言う)の左右方向の幅相当に設定されている。予熱ゾーン3aでは、初期フィルムを延伸可能な温度に予熱する処理が行われる。
延伸ゾーン3bにおいて、往路1a,2a相互の左右方向の幅間隔は、搬送方向4に沿って、徐々に拡大されている。即ち、延伸ゾーン3bにおいて、往路1aと往路2aとは、予熱ゾーン3aから熱処理ゾーン3cに向かうに従って末広がり状に離間している。延伸ゾーン3bでは、上記した初期フィルムを延伸する処理が行われる。即ち、初期フィルムを搬送方向4(縦方向)に延ばす処理と同時に、初期フィルムを左右方向(横方向)に延ばす処理が行われる。これにより、縦横に延ばされた延伸済みフィルムが構成される。
熱処理ゾーン3cにおいて、双方の往路1a,2aは、互いに平行に配置されている。往路1a,2a相互の左右方向の幅間隔は、上記した延伸済みフィルムの左右方向の幅相当に設定されている。かかる熱処理ゾーン3cの幅間隔は、上記した予熱ゾーン3aの幅間隔よりも大きく設定されている。熱処理ゾーンで3cでは、延伸済みフィルムに対して熱処理による各種の微調整が行われる。
なお、フィルム搬送エリア3には、加熱装置(図示しない)が設けられている。加熱装置は、複数の加熱炉と、加熱炉の温度を制御する温度制御部と、を備えている。上記した3つのゾーン(予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3c)は、それぞれ、加熱炉によって覆われている。
かかる構成において、各々の加熱炉を温度制御部で制御する。これにより、ゾーン3a,3b,3c毎に、加熱炉の内部を、予め設定された温度まで加熱したり、一定の温度に保持したりすることができる。この結果、3つのゾーン3a,3b,3cを搬送されるフィルムに対する加熱ないし保温を行うことができる。
更に、上記した左循環経路及び右循環経路において、左レール構造体1及び右レール構造体2は、復路1b,2bと往路1a,2aとが、互いに交差することなく、かつ、フィルム搬送エリア3の出口部3tから入口部3pに帰還するように、構成されている。
「左レール構造体1及び右レール構造体2の2つのレール5,6」
図1〜図4に示すように、左レール構造体1は、ベース1sと、ベース1s上に敷設された2つのレール5,6と、を有している。ベース1sは、複数のベースブロック1pを備えている。各々のベースブロック1pには、それぞれ、2つのレールエレメント5p,6pが配置されている。この場合、2つのレールエレメント5p,6pをそれぞれベースブロック1pとは別体で形成し、かつ、当該双方のレールエレメント5p,6pをベースブロック1pに後付けで取り付けるようにしてもよい。或いは、いずれか一方のレールエレメント5pをベースブロック1pと一体的に形成すると共に、他方のレールエレメント6pをベースブロック1pとは別体で形成し、かつ、当該他方のレールエレメント6pをベースブロック1pに後付けで取り付けるようにしてもよい。更に、2つのレールエレメント5p,6pをベースブロック1pと一体的に成形してもよい。
かかる構成において、複数のベースブロック1pを左循環経路に沿って並べる。隣り合うベースブロック1pのレールエレメント5p,6pが2列に並ぶ。このとき、レールエレメント5p,6pの相互間に隙間が介在する場合、連結レール(図示しない)によって、その隙間を補完(complement)する。これにより、一方列の複数のレールエレメント5pは、連結レールを介して無端状に連結される。この結果、無端状に連続した一連のレール5が構成される。また、他方列の複数のレールエレメント6pも、連結レールを介して無端状に連結される。この結果、無端状に連続した一連のレール6が構成される。
更に、右レール構造体2は、ベース2sと、ベース2s上に敷設された2つのレール5,6と、を有している。ベース2sは、複数のベースブロック2pを備えている。各々のベースブロック2pには、それぞれ、2つのレールエレメント5p,6pが配置されている。
この場合、2つのレールエレメント5p,6pをそれぞれベースブロック2pとは別体で形成し、かつ、当該双方のレールエレメント5p,6pをベースブロック2pに後付けで取り付けるようにしてもよい。或いは、いずれか一方のレールエレメント5pをベースブロック2pと一体的に形成すると共に、他方のレールエレメント6pをベースブロック2pとは別体で形成し、かつ、当該他方のレールエレメント6pをベースブロック2pに後付けで取り付けるようにしてもよい。更に、2つのレールエレメント5p,6pをベースブロック2pと一体的に成形してもよい。
かかる構成において、複数のベースブロック2pを右循環経路に沿って並べる。隣り合うベースブロック2pのレールエレメント5p,6pが2列に並ぶ。このとき、レールエレメント5p,6pの相互間に隙間が介在する場合、連結レール(図示しない)によって、その隙間を補完(complement)する。これにより、一方列の複数のレールエレメント5pは、連結レールを介して無端状に連結される。この結果、無端状に連続した一連のレール5が構成される。また、他方列の複数のレールエレメント6pも、連結レールを介して無端状に連結される。この結果、無端状に連続した一連のレール6が構成される。
上記した2つのレール5,6は、基準レール5と、ピッチ設定レール6と、から構成されている。基準レール5と、ピッチ設定レール6とは、互いに対向し、かつ、交差することなく、環状に連続した循環経路を構成している。かかる構成によれば、基準レール5は、ピッチ設定レール6の外側に配置される。換言すると、基準レール5の内側にピッチ設定レール6が配置される。この場合、ベース1s,2s上において、ピッチ設定レール6は、基準レール5に接近させたり、基準レール5から離間させたりすることが可能に構成されている。
予熱ゾーン3aにおいて、図1、図2に示すように、基準レール5と、ピッチ設定レール6とは、互いに平行に配置されている。基準レール5と、ピッチ設定レール6との左右方向の幅間隔(width interval)は、当該予熱ゾーン3aで最も広くなるように設定されている。換言すると、予熱ゾーン3aの往路1a,2aに沿って移動する複数のクリップ13において、前後方向(移動方向17)に沿って隣り合うクリップ13相互の間隔は、当該予熱ゾーン3aで最も狭まるように設定されている。これにより、予熱ゾーン3aにおいて、複数のクリップ13は、前後方向(移動方向17)に沿って互いに接近した状態で整列する。
延伸ゾーン3bにおいて、図1に示すように、基準レール5と、ピッチ設定レール6とは、相互の左右方向の幅間隔が徐々に狭まるように配置されている。即ち、延伸ゾーン3bにおいて、基準レール5と、ピッチ設定レール6とは、予熱ゾーン3aから熱処理ゾーン3cに向かうに従って先細り状に接近するように配置されている。
換言すると、延伸ゾーン3bの往路1a,2aに沿って移動する複数のクリップ13において、前後方向(移動方向17)に沿って隣り合うクリップ13相互の間隔は、徐々に広がるように設定されている。更に、上記したように、左右方向に対向する往路1a,2a相互の幅間隔は、搬送方向4に沿って徐々に拡大されている。これにより、延伸ゾーン3bの往路1a,2aに沿って移動する複数のクリップ13において、左右方向に対向するクリップ13相互の幅間隔が徐々に広がりつつ、同時に、前後方向(移動方向17)に沿って隣り合うクリップ13相互の間隔が徐々に広がる。
熱処理ゾーン3cにおいて、図1、図3に示すように、基準レール5と、ピッチ設定レール6とは、互いに平行に配置されている。基準レール5と、ピッチ設定レール6との左右方向の幅間隔は、当該熱処理ゾーン3cで最も狭くなるように設定されている。即ち、熱処理ゾーン3cにおける2つのレール5,6相互の左右方向の幅間隔は、予熱ゾーン3aにおける2つのレール5,6相互の左右方向の幅間隔よりも狭くなるように設定されている。換言すると、熱処理ゾーン3cの往路1a,2aに沿って移動する複数のクリップ13において、前後方向(移動方向17)に沿って隣り合うクリップ13相互の間隔は、当該熱処理ゾーン3cで最も広がるように設定されている。これにより、予熱ゾーン3aにおいて、複数のクリップ13は、前後方向(移動方向17)に沿って互いに離間した状態で整列する。
更に、図1〜図4に示すように、基準レール5、及び、ピッチ設定レール6には、それぞれ、1本の凹状溝7が設けられている。凹状溝7は、後述するガイド機構の構成として適用される。即ち、凹状溝7は、当該レール5,6に沿って連続的に配置されている。凹状溝7は、2つの側壁8,9と、底部10と、を備えている。
底部10は、2つの側壁8,9の下部側において、側壁8,9の相互間に亘って構成されている。2つの側壁8,9は、内側壁8と、外側壁9と、を有する。内側壁8は、フィルム搬送エリア3に近接した側の壁面を指す。外側壁9は、フィルム搬送エリア3から離間した側の壁面を指す。これら2つの側壁(内側壁8、外側壁9)は、互いに平行に対向しつつ、レール5,6に沿って構成されている。
なお、左レール構造体1及び右レール構造体2において、双方の往路1a,2aは、予め設定された一定の設計条件に基づいて構成される。例えば、各往路1a,2aにおいて、2つのレール5,6を無端状に連続させる。これに対して、双方の復路1b,2bは、自由な設計条件に基づいて構成することができる。例えば、各復路1b,2bにおいて、2つのレール5,6のうち、一方のレール(例えば、基準レール5)を無端状に連続させ、他方のレール(例えば、ピッチ設定レール6)を断続させてもよい。基準レール5が無端状に連続している限り、複数のクリップ13を、復路1b,2bから往路1a,2aに亘って連続的に循環させることができる。
「フィルム延伸装置の主要な構成(把持機構、ガイド機構、リンク機構)」
「把持機構11」
図1〜図4に示すように、フィルム延伸装置は、複数の把持機構11を有している。複数の把持機構11は、上記した左レール構造体1及び右レール構造体2に沿って移動可能に構成されている。各々の把持機構11は、ホルダ12と、上記したクリップ13と、を備えている。
ホルダ12は、左レール構造体1及び右レール構造体2において、上記した2つのレール5,6の上を跨ぐように配列されている。ホルダ12は、中抜きされた矩形状のフレーム構造を有している。ホルダ12は、一端部12aと、他端部12bと、上方ビーム部12cと、下方ビーム部12dと、を矩形状に接続させて構成されている。かかるフレーム構造を採用することで、ホルダ12の強度を一定に維持しつつ、当該ホルダ12の軽量化が図られている。
上方ビーム部12c及び下方ビーム部12dは、一端部12aと他端部12bとの間に設けられている。上方ビーム部12cと下方ビーム部12dとは、上下方向に沿って互いに平行に対向させて配置されている。上方ビーム部12cは、2つの端部12a,12bの上部に配置されている。上方ビーム部12cによって、双方の端部12a,12bの上部が相互に連結されている。下方ビーム部12dは、2つの端部12a,12bの下部に配置されている。下方ビーム部12dによって、双方の端部12a,12bの下部が相互に連結されている。
また、ホルダ12の一端部12aには、第1支持ローラ14が回転可能に設けられている。ホルダ12の他端部12bには、第2支持ローラ15が回転可能に設けられている。更に、上記したベース1sには、2つの走行部(第1走行部16a、第2走行部16b)が設けられている。2つの走行部16a,16bは、上記した2つのレール5,6の両外側に1つずつ配置されている。
第1走行部16aは、基準レール5の外側において、当該基準レール5に沿って平行かつ無端状に連続している。第1走行部16aは、第1支持ローラ14が走行可能に構成されている。一方、第2走行部16bは、ピッチ設定レール6の内側において、基準レール5に沿って平行かつ無端状に連続している。第2走行部16bは、第2支持ローラ15が走行可能に構成されている。
かかる構成によれば、ホルダ12の両端部12a,12bにおいて、第1及び第2支持ローラ14,15は、第1及び第2走行部16a,16bに接触しつつ、当該走行部16a,16bに沿って走行する。これにより、ホルダ12は、重力方向に支持されつつ、左レール構造体1及び右レール構造体2に沿って移動可能となる。なお、ホルダ12(把持機構11)の移動方向17は、左循環経路(左レール構造体1)及び右循環経路(右レール構造体2)に沿って無端状に連続し、かつ、循環している。
更に、ホルダ12(把持機構11)は、左レール構造体1及び右レール構造体2において、左右反転させた配置構成となっている。かかる構成において、複数のホルダ12(把持機構11)を左レール構造体1及び右レール構造体2に沿って配列させる。このとき、上記したフィルム搬送エリア3(予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3c)の両側には、ホルダ12の一端部12aが、互いに対向して位置付けられる。
上記したクリップ13は、ホルダ12の一端部12aに1つずつ設けられている。よって、当該クリップ13も、フィルム搬送エリア3の両側に、互いに対向して位置付けられる。この状態において、クリップ13は、一端部12aから更に外側に向かって突出するように配置されている。
そうすると、フィルム搬送エリア3(対向する往路1a,2a)において、双方のクリップ13は、互いに接近する方向に突出した状態で搬送方向4に沿って移動可能となる。かくして、入口部3pに送り込まれたフィルムは、その両縁部が複数のクリップ13で把持された状態で、フィルム搬送エリア3を搬送方向4に沿って搬送される。なお、かかる把持状態が実現可能であれば、クリップ13の構造について何ら限定されることはない。
「ガイド機構」
図2〜図4に示すように、フィルム延伸装置は、複数のガイド機構を有している。ガイド機構は、ホルダ12(把持機構11)に連結されている。ガイド機構は、上記した2つのレール5,6相互の幅間隔の変化に追従可能に構成されている。これにより、ガイド機構は、ホルダ12(把持機構11)を、左レール構造体1及び右レール構造体2に沿って案内可能に構成されている。
このような機能を実現すべく、ガイド機構は、2つのガイドピン18,19と、偏心軸ユニット25と、2つの転動体20,21と、上記した凹状溝7と、スライド機構と、を備えている。ここで、ガイド機構は、左レール構造体1及び右レール構造体2において、左右反転させた配置構成となっている。
「2つのガイドピン18,19、スライド機構」
2つのガイドピン18,19は、基準ガイドピン18と、可動ガイドピン19と、から構成されている。基準ガイドピン18及び可動ガイドピン19は、それぞれ、回転中心となる軸線18t,19tを有している。基準ガイドピン18及び可動ガイドピン19は、ホルダ12(把持機構11)に対して回転可能に連結されている。
具体的には、基準ガイドピン18は、上記したクリップ13側(即ち、ホルダ12の一端部12a寄り)に配置されている。基準ガイドピン18は、両端(上端、下端)を有している。基準ガイドピン18の両端(上端、下端)は、上下方向(重力方向)に沿って対向させて配置されている。基準ガイドピン18の両端(上端、下端)は、ホルダ12(上方ビーム部12c、下方ビーム部12d)を貫通し、当該ホルダ12から突出している。
基準ガイドピン18の一端(下端)は、下方ビーム部12dから基準レール5の凹状溝7に向かって突出している。基準ガイドピン18の一端(下端)には、後述する2つの転動体20,21が設けられている。これら2つの転動体20,21は、基準レール5の凹状溝7に沿って転動可能に構成されている。
基準ガイドピン18の他端(上端)は、上方ビーム部12cから外部に向かって突出している。基準ガイドピン18の他端(上端)には、駆動ローラ18rが回転可能に設けられている。駆動ローラ18rは、後述するスプロケット36a,36bに係合可能に構成されている。これにより、スプロケット36a,36bから駆動ローラ18rを介して、基準ガイドピン18に牽引力が付与可能となる。
基準ガイドピン18は、2つのブッシュ(上方ブッシュ22a、下方ブッシュ22b)を介してホルダ12(把持機構11)に連結されている。上方ブッシュ22aは、ホルダ12の上方ビーム部12cに連結されている。下方ブッシュ22bは、ホルダ12の下方ビーム部12dに連結されている。この場合、ブッシュ22a,22bと、ホルダ12(ビーム部12c,12d)とは、相対的に回転不能な状態で連結されている。ブッシュ22a,22bと、基準ガイドピン18とは、相対的に回転可能な状態で連結されている。
一方、可動ガイドピン19は、反クリップ13側(即ち、ホルダ12の他端部12b寄り)に配置されている。可動ガイドピン19は、両端(上端、下端)を有している。可動ガイドピン19の両端(上端、下端)は、上下方向(重力方向)に沿って対向させて配置されている。可動ガイドピン19の両端(上端、下端)は、ホルダ12(上方ビーム部12c、下方ビーム部12d)を貫通している。
可動ガイドピン19の一端(下端)は、下方ビーム部12dからピッチ設定レール6の凹状溝7に向かって突出している。可動ガイドピン19の一端(下端)には、後述する2つの転動体20,21が設けられている。これら2つの転動体20,21は、ピッチ設定レール6の凹状溝7に沿って転動可能に構成されている。
可動ガイドピン19は、スライド機構によって、ホルダ12(具体的には、上方ビーム部12c、下方ビーム部12d)に沿って長手方向に移動可能に構成されている。スライド機構は、2つのスライダ(上方スライダ23a、下方スライダ23b)と、2つのガイドユニット24a,24bと、を備えている。
ガイドユニット24a,24bは、ホルダ12(上方ビーム部12c、下方ビーム部12d)の長手方向に沿って配置されている。これにより、ガイドユニット24a,24bは、上方及び下方スライダ23a,23bを、ホルダ12(上方ビーム部12c、下方ビーム部12d)の長手方向に沿ってスライド可能に構成されている。
可動ガイドピン19には、上方スライダ23a、及び、下方スライダ23bが取り付けられている。上方スライダ23aと、ホルダ12(上方ビーム部12c、ガイドユニット24a)とは、相対的に回転不能な状態で連結されている。下方スライダ23bと、ホルダ12(下方ビーム部12d、ガイドユニット24b)とは、相対的に回転不能な状態で連結されている。上方及び下方スライダ23a,23bと、可動ガイドピン19とは、相対的に回転可能な状態で連結されている。
ガイドユニット24a,24bとしては、例えば、ガイドレール、ガイド長孔などを想定することができる。図面には、ガイドユニット24a,24bの一例として、2つのガイド長孔(上方ガイド長孔24a、下方ガイド長孔24b)が示されている。上方ガイド長孔24aは、上方ビーム部12cの一部を長手方向に沿って貫通させて構成されている。下方ガイド長孔24bは、下方ビーム部12dの一部を長手方向に沿って貫通させて構成されている。上方ガイド長孔24aと下方ガイド長孔24bとは、上下方向に沿って互いに平行に対向させて配置されている。
上方スライダ23aは、上方ガイド長孔24aに対向する位置に設けられている。上方スライダ23aは、上方ガイド長孔24aに沿ってスライド可能に構成されている。下方スライダ23bは、下方ガイド長孔24bに対向する位置に設けられている。下方スライダ23bは、下方ガイド長孔24bに沿ってスライド可能に構成されている。
かかる構成において、可動ガイドピン19を、上記した長手方向に移動させる。このとき、可動ガイドピン19に追従して、上方スライダ23aが上方ガイド長孔24aに沿ってスライドすると共に、下方スライダ23bが下方ガイド長孔24bに沿ってスライドする。これにより、可動ガイドピン19を、精度よく安定して、基準ガイドピン18に接近させたり、或いは、基準ガイドピン18から離間させたりすることができる。
「偏心軸ユニット25」
基準ガイドピン18の一端(下端)、及び、可動ガイドピン19の一端(下端)には、それぞれ、偏心軸ユニット25が一体的に設けられている。偏心軸ユニット25は、上部偏心軸部25aと、下部偏心軸部25bと、を備えている。上部偏心軸部25aは、後述する上部転動体20を取り付け可能に構成されている。下部偏心軸部25bは、後述する下部転動体21を取り付け可能に構成されている。
基準ガイドピン18の一端(下端)において、上部偏心軸部25a及び下部偏心軸部25bは、上記した軸線18tに沿って上下方向に高低差を持って配置されている。可動ガイドピン19の一端(下端)において、上部偏心軸部25a及び下部偏心軸部25bは、上記した軸線19tに沿って上下方向に高低差を持って配置されている。なお、上部偏心軸部25a及び下部偏心軸部25bは、円筒形を有している。
ここで、上部偏心軸部25a及び下部偏心軸部25bの上下方向の厚さ(幅)は、上部転動体20及び下部転動体21の上下方向の厚さ(幅)に対応させて設定されるため、特に数値限定はしない。なお、上部偏心軸部25a及び下部偏心軸部25bの上下方向の厚さ(幅)は、ガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の軸線18t,19tに沿った上下方向の厚さ(幅)を指す。
更に、上部偏心軸部25aの差渡し径(直径)、並びに、下部偏心軸部25bの差渡し径(直径)は、互いに同一に設定されている。上部偏心軸部25aの中心線T1、並びに、下部偏心軸部25bの中心線T2は、ガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の軸線18t,19t(回転中心)から偏心した位置(即ち、回避した位置)において、軸線18t,19tと平行な位置関係となるように設定されている。
上部偏心軸部25aの中心線T1の上の1点と、下部偏心軸部25bの中心線T2の上の1点とを結んだ仮想線を交差する位置に、ガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の軸線18t,19tが設定されている。上部偏心軸部25aの中心線T1と軸線18t,19tとの間隔は、下部偏心軸部25bの中心線T2と軸線18t,19tとの間隔に等しく設定されている。この場合、上部偏心軸部25aの中心線T1、及び、下部偏心軸部25bの中心線T2は、軸線18t,19tに対して、点対称な位置関係に設定されている。
「上部転動体20、下部転動体21」
上部転動体20及び下部転動体21は、上記した偏心軸ユニット25に取り付けられている。即ち、上部転動体20は、上部偏心軸部25aに取り付けられている。下部転動体21は、下部偏心軸部25bに取り付けられている。ここで、上部転動体20及び下部転動体21は、それぞれ、回転中心となる回転軸(上部回転軸R1、下部回転軸R2)を有している。上部転動体20の差渡し径(直径)と、下部転動体21の差渡し径(直径)とは、互いに同一に設定されている。
上部転動体20及び下部転動体21は、ガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の一端(下端)に回転可能に設けられている。上部転動体20及び下部転動体21は、ガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の軸線18t,19tに沿って上下方向に高低差を持って配置されている。この状態において、上部転動体20の上部回転軸R1は、上部偏心軸部25aの中心線T1に一致していると共に、下部転動体21の下部回転軸R2は、下部偏心軸部25bの中心線T2に一致している。
ところで、上部転動体20及び下部転動体21としては、例えば、ローラ、軸受などを適用することができる。図面には一例として、軸受が示されている。上部転動体20及び下部転動体21に適用可能な軸受は、互いに同一の構成を有している。例えば、各々の軸受は、1つの内輪26と、1つの外輪27と、複数のボール28と、を備えて構成することができる。内輪26は、外輪27の内側に対向して配置されている。複数のボール28は、内輪26と外輪27との間に転動自在に組み込まれている。
この場合、基準ガイドピン18、及び、可動ガイドピン19の一端(下端)において、内輪26は、上部偏心軸部25a、及び、下部偏心軸部25bに非回転状態に固定されている。即ち、内輪26の内周面に対して、上部偏心軸部25a、及び、下部偏心軸部25bが嵌め込まれて固定されている。かかる軸受構造によれば、外輪27が、上部回転軸R1、及び、下部回転軸R2を中心に回転可能となる。
ここで、上部転動体20及び下部転動体21を、基準レール5の凹状溝7、及び、ピッチ設定レール6の凹状溝7に沿って転動させる。このとき、上部転動体20及び下部転動体21の外輪27が、基準レール5、及び、ピッチ設定レール6の各凹状溝7(2つの側壁8,9)に沿って転動する。
更に、上記した軸受構造によれば、上部転動体20の上部回転軸R1と、下部転動体21の下部回転軸R2と、基準ガイドピン18の軸線18tと、可動ガイドピン19の軸線19tとは、以下のような位置関係を満足するように設定されている。
即ち、上部回転軸R1、及び、下部回転軸R2は、軸線18t、及び、軸線19tを回避した位置(換言すると、偏心した位置)において、これら軸線18t,19tと平行な位置関係となるように設定されている。上部回転軸R1上の1点と、下部回転軸R2上の1点とを結んだ仮想線を交差する位置に、軸線18t,19tが設定されている。上部回転軸R1と軸線18t,19tとの間隔は、下部回転軸R2と軸線18t,19tとの間隔に等しく設定されている。上部回転軸R1、及び、下部回転軸R2は、軸線18t,19tに対して、点対称(point symmetry)な位置関係に設定されている。
「リンク機構41の構成」
図1に示すように、フィルム延伸装置は、複数のリンク機構41を有している。複数のリンク機構41は、左レール構造体1及び右レール構造体2において、上記した移動方向17に沿って移動する複数のホルダ12(把持機構11)の相互間に1つずつ設けられている。即ち、移動方向17(レール構造体1,2)に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)に着目すると、これら2つのホルダ12(把持機構11)の相互間に1つのリンク機構41が設けられている。リンク機構41は、上記したガイド機構を相互に連結可能に構成されている。
図2〜図4には、リンク機構41の一例が示されている。リンク機構41は、左レール構造体1及び右レール構造体2において、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)に1つずつ連結された基準ガイドピン18を、相互に連結可能に構成されている。リンク機構41は、左レール構造体1及び右レール構造体2において、左右反転させた配置構成となる。
図2〜図4に示すように、リンク機構41は、少なくとも1つの主リンク29と、少なくとも1つの副リンク30と、を備えている。図面には一例として、1つの主リンク29と、2つの副リンク30とを備えたリンク機構41が示されている。主リンク29及び副リンク30は、上記したホルダ12(把持機構11)において、中抜きされた領域に沿って配置構成されている。
1つの主リンク29、及び、2つの副リンク30は、上下方向に沿って重ねられて配置されている。2つの副リンク30は、主リンク29の上下方向の両側に1つずつ配置されている。2つの副リンク30の配置は、上下方向に沿って互いに平行に対向した位置関係に設定されている。主リンク29、及び、副リンク30は、それぞれ、真っ直ぐに構成されている。主リンク29は、副リンク30の全長を2倍した長さに設定されている。換言すると、副リンク30は、主リンク29の全長を2等分した長さに設定されている。
主リンク29は、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)において、基準ガイドピン18と、可動ガイドピン19と、を相互に連結可能に構成されている。主リンク29は、両端(一端、他端)を有している。
主リンク29の一端は、移動方向17の上流側の基準ガイドピン18に回転可能に連結されている。この基準ガイドピン18は、移動方向17の上流側のホルダ12(把持機構11)に連結されている。主リンク29の一端は、ブッシュ31を介して基準ガイドピン18に連結されている。ブッシュ31と主リンク29の一端とは、相対的に回転不能な状態で連結されている。ブッシュ31と基準ガイドピン18とは、相対的に回転可能な状態で連結されている。
主リンク29の他端は、移動方向17の下流側の可動ガイドピン19に回転可能に連結されている。この可動ガイドピン19は、移動方向17の下流側のホルダ12(把持機構11)に連結されている。主リンク29の他端は、ブッシュ32を介して可動ガイドピン19に連結されている。ブッシュ32と主リンク29の他端とは、相対的に回転不能な状態で連結されている。ブッシュ32と可動ガイドピン19とは、相対的に回転可能な状態で連結されている。
副リンク30は、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)において、基準ガイドピン18と、上記した主リンク29と、を相互に連結可能に構成されている。副リンク30は、両端(一端、他端)を有している。
副リンク30の一端は、移動方向17の下流側の基準ガイドピン18に回転可能に連結されている。この基準ガイドピン18は、移動方向17の下流側のホルダ12(把持機構11)に連結されている。副リンク30の一端は、ブッシュ33を介して基準ガイドピン18に連結されている。ブッシュ33と副リンク30の一端とは、相対的に回転不能な状態で連結されている。ブッシュ33と基準ガイドピン18とは、相対的に回転可能な状態で連結されている。
副リンク30の他端は、主リンク29に回転可能に連結されている。図面では一例として、主リンク29の連結位置(即ち、副リンク30の他端を主リンク29に連結させる位置)は、主リンク29の全長(一端から他端に亘った長さ)を2等分した位置に設定されている。2等分位置に設定することで、リンク機構をスムーズに動作させることが可能となる。
主リンク29の連結位置には、連結ピン34が設けられている。連結ピン34は、主リンク29を貫通させて構成されている。副リンク30の他端は、連結ピン34に回転不能な状態で連結されている。連結ピン34は、ブッシュ35を介して主リンク29に連結されている。ブッシュ35と主リンク29とは、回転不能な状態で連結されている。ブッシュ35と連結ピン34とは、回転可能な状態で連結されている。
「リンク機構41の動作」
左レール構造体1及び右レール構造体2において、回転するスプロケット36a,36bによって、各ホルダ12(把持機構11)に駆動力(例えば、牽引力)が与えられる。即ち、ホルダ12(把持機構11)の基準ガイドピン18の駆動ローラ18r(図4参照)が、回転するスプロケット36a,36bに係合する。このとき、駆動ローラ18rが回転する。これにより、スプロケット36a,36bから駆動ローラ18rに対して円滑に牽引力が与えられる。
かかる牽引力は、駆動ローラ18rから基準ガイドピン18に伝達される。基準ガイドピン18が、当該牽引力によって、移動方向17に沿って牽引される。なお、かかる基準ガイドピン18を、このリンク機構41の動作説明において、仮に、第1係合ガイドピン18と称する。
第1係合ガイドピン18には、副リンク30の一端が連結されている。このため、第1係合ガイドピン18に作用した牽引力は、副リンク30の一端から他端に伝達される。副リンク30の他端には、主リンク29が連結されている。このため、当該牽引力は、副リンク30の他端から連結ピン34を介して、主リンク29に与えられる。
かかる牽引力は、主リンク29の両端(一端、他端)に伝達される。このとき、主リンク29の一端には、牽引力が作用すると同時に、主リンク29の他端には、押圧力が作用する。主リンク29の一端には、基準ガイドピン18が連結されている。主リンク29の他端には、可動ガイドピン19が連結されている。なお、この基準ガイドピン18は、第2係合ガイドピン18である。第2係合ガイドピン18は、上記した第1係合ガイドピン18に対して、移動方向17の上流側に隣り合ったピンである。可動ガイドピン19は、第1係合ガイドピン18と同一のホルダ12(把持機構11)に設けられている。
主リンク29の一端において、第2係合ガイドピン18には、牽引力が与えられる。同時に、主リンク29の他端において、可動ガイドピン19には、押圧力が与えられる。これにより、第2係合ガイドピン18は、当該牽引力によって、移動方向17に沿って牽引される。同時に、可動ガイドピン19は、当該押圧力によって、移動方向17に沿って押圧される。
次に、当該牽引力によって引き寄せられた第2係合ガイドピン18の駆動ローラ18rが、回転するスプロケット36a,36bに係合する。このとき、駆動ローラ18rに与えられた牽引力によって、第2係合ガイドピン18が、移動方向17に沿って牽引される。以下、上記同様のプロセスが繰り返される。
そうすると、第1係合ガイドピン18に与えられた牽引力は、上記したガイド機構(ガイドピン18,19)を介して、無端状に連結された複数のリンク機構41に伝達される。ここで、複数のホルダ12(把持機構11)は、複数のリンク機構41によって、相互に連結されている。更に、各々のホルダ12(把持機構11)は、上記した第1及び第2支持ローラ14,15によって、重力方向に支持されつつ、上記した走行部16a,16bに沿って移動可能である。これにより、複数のホルダ12(把持機構11)は、上記した牽引力によって、左レール構造体1及び右レール構造体2の2つのレール5,6に沿って一斉に移動する。
なお、基準ガイドピン18の一端(下端)、及び、可動ガイドピン19の一端(下端)には、それぞれ、上部転動体20及び下部転動体21が設けられている。基準ガイドピン18及び可動ガイドピン19が、移動方向17に沿って移動すると、これに追従して、上部転動体20及び下部転動体21が、凹状溝7に沿って転動する。
例えば、図5(a)に示すように、基準ガイドピン18の上部転動体20及び下部転動体21が、基準レール5の凹状溝7(側壁8,9)に沿って転動する。可動ガイドピン19の上部転動体20及び下部転動体21が、ピッチ設定レール6の凹状溝7(側壁8,9)に沿って転動する。
更に、ホルダ12(把持機構11)の移動方向17は、左レール構造体1と右レール構造体2とで逆向きに設定されている。例えば、延伸対象となるフィルムを、フィルム搬送エリア3(予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3c)に沿って、搬送方向4に搬送させる場合、左レール構造体1のホルダ12(把持機構11)の移動方向17は、左回り(逆時計回り)に設定される。右レール構造体2のホルダ12(把持機構11)の移動方向17は、右回り(時計回り)に設定される。
予熱ゾーン3aにおいて、基準レール5と、ピッチ設定レール6との左右方向の幅間隔(width interval)は、最も広くなっている。このとき、可動ガイドピン19が、基準ガイドピン18から最も遠くに離間する(図2参照)。
この場合、リンク機構41は、ホルダ12(把持機構11)において、中抜きされた領域に収容された状態となる。かかる状態において、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)の間隔は、最も狭まる。この結果、複数のホルダ12(把持機構11)は、移動方向17に沿って互いに近接した状態で整列する。
延伸ゾーン3bにおいて、基準レール5と、ピッチ設定レール6との左右方向の幅間隔は、徐々に狭くなっている。このとき、2つのレール5,6相互の幅間隔に対応して、可動ガイドピン19が、基準ガイドピン18に対して徐々に接近する。
この場合、リンク機構41は、ホルダ12(把持機構11)の中抜き領域から徐々に突出する。このとき、主リンク29及び副リンク30が、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)の相互間に徐々に出っ張った状態となる。かかる状態において、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)の間隔は、徐々に広がる。この結果、複数のホルダ12(把持機構11)は、移動方向17に沿って徐々に離間した状態で整列する。
熱処理ゾーン3cにおいて、基準レール5と、ピッチ設定レール6との左右方向の幅間隔は、最も狭くなっている。このとき、可動ガイドピン19が、基準ガイドピン18に最も近くに接近する(図3参照)。
この場合、リンク機構41は、ホルダ12(把持機構11)の中抜き領域から最も大きく突出する。このとき、主リンク29及び副リンク30が、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)の相互間に最も出っ張った状態となる。かかる状態において、移動方向17に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)の間隔は、最も広がる。この結果、複数のホルダ12(把持機構11)は、移動方向17に沿って最も離間した状態で整列する。
「フィルム延伸装置の動作」
左レール構造体1及び右レール構造体2において、回転するスプロケット36a,36bから基準ガイドピン18(駆動ローラ18r)に牽引力を付与する。そうすると、上記した「リンク機構41の動作」に従って、複数のホルダ12(把持機構11)が一斉に移動する。
即ち、各ホルダ12(把持機構11)は、走行部16a,16bを走行する第1及び第2支持ローラ14,15によって、重力方向に支持されつつ移動する。同時に、各ホルダ12(把持機構11)のガイド機構(ガイドピン18,19、転動体20,21)は、上記した2つのレール5,6の左右方向の幅間隔の変化に追従する。
これにより、左レール構造体1において、各ホルダ12(把持機構11)は、移動方向17に沿って左回り(逆時計回り)に移動する。右レール構造体2において、各ホルダ12(把持機構11)は、移動方向17に沿って右回り(時計回り)に移動する。
このとき、2つのガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の上部転動体20及び下部転動体21が、2つのレール(基準レール5、ピッチ設定レール6)の凹状溝7(内側壁8、外側壁9)に沿って転動する(例えば、図5(a)参照)。即ち、上部転動体20が、内側壁8に接触しながら転動する。同時に、下部転動体21が、外側壁9に接触しながら転動する。
これにより、複数のホルダ12(把持機構11)が、左レール構造体1及び右レール構造体2に沿って案内される。この場合、2つの往路1a,2aが対向するフィルム搬送エリア3において、複数のクリップ13は、互いに向かい合って移動する。入口部3pに送り込まれたフィルムは、その両縁部が複数のクリップ13で把持された状態で、フィルム搬送エリア3(予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3c)に沿って搬送方向4に搬送される。そして、当該フィルムは、クリップ13による把持状態が解除された後、出口部3tから送り出される。
予熱ゾーン3aにおいて、双方の往路1a,2aを移動する複数のクリップ13は、左右方向に沿って互いに平行に対向して配置される。これら複数のクリップ13相互の左右方向の幅間隔は、上記した初期フィルムの左右方向の幅間隔に相当する。更に、各往路1a,2aにおいて、複数のクリップ13は、移動方向17に沿って相互に最も接近した状態で整列する。
かかる構成によれば、予熱ゾーン3aに送り込まれた初期フィルムは、その両縁部が複数のクリップ13で把持されつつ、搬送方向4に沿って搬送される。この搬送中に、初期フィルムに対して延伸可能な温度に予熱する処理が行われる。
延伸ゾーン3bにおいて、双方の往路1a,2aを移動する複数のクリップ13は、左右方向の幅間隔が搬送方向4に沿って徐々に拡大するように対向して配置される。更に、各往路1a,2aにおいて、複数のクリップ13は、移動方向17に沿って隣り合うクリップ13相互の間隔が徐々に広がるように整列する。
かかる構成によれば、延伸ゾーン3bに送り込まれた予熱済み初期フィルムは、搬送方向4(縦方向)に延ばされると同時に、左右方向(横方向)に延ばされる。これにより、縦横に延びた延伸済みフィルムが構成される。
熱処理ゾーン3cにおいて、双方の往路1a,2aを移動する複数のクリップ13は、左右方向に沿って互いに平行に対向して配置される。これら複数のクリップ13相互の左右方向の幅間隔は、上記した延伸済みフィルムの左右方向の幅間隔に相当する。更に、各往路1a,2aにおいて、複数のクリップ13は、移動方向17に沿って相互に最も離間した状態で整列する。
かかる構成によれば、熱処理ゾーン3cに送り込まれた延伸済みフィルムは、その両縁部が複数のクリップ13で把持されつつ、搬送方向4に沿って搬送される。かかる搬送中に、延伸済みフィルムに対して予め設定された熱処理が行われる。
以上、フィルム延伸装置によれば、延伸対象となるフィルムを入口部3pに送り込む。フィルムは、その両縁部が複数のクリップ13で把持される。当該フィルムは、クリップ13で把持された状態で、フィルム搬送エリア3(予熱ゾーン3a、延伸ゾーン3b、熱処理ゾーン3c)に沿って搬送方向4に搬送される。この搬送中に、当該フィルムは、縦横に同時に延伸される。そして、かかる延伸済みフィルムは、クリップ13による把持状態が解除された後、出口部3tから送り出される。
「フィルム延伸装置の効果」
本実施形態によれば、上部転動体20の上部回転軸R1、及び、下部転動体21の下部回転軸R2は、基準ガイドピン18及び可動ガイドピン19の軸線18t,19tを回避した位置(偏心した位置)において、これら軸線18t,19tと平行な位置関係となるように設定されている。上部転動体20の上部回転軸R1の上の1点と、下部転動体21の下部回転軸R2の上の1点とを結んだ仮想線を交差する位置に、基準ガイドピン18及び可動ガイドピン19の軸線18t,19tが設定されている。上部転動体20の上部回転軸R1と軸線18t,19tとの間隔は、下部転動体21の下部回転軸R2と軸線18t,19tとの間隔に等しく設定されている。上部転動体20の上部回転軸R1、及び、下部転動体21の下部回転軸R2は、軸線18t,19tに対して、点対称な位置関係に設定されている。
かかる位置関係を満足することで、フィルムの延伸中において、フィルムからの反力が把持機構11(ガイドピン18,19)、即ち、クリップ13(ホルダ12、ガイドピン18,19)に作用したとき、換言すると、クリップ13(ホルダ12、ガイドピン18,19)をフィルム側に引き寄せようとする引っ張り力が生じたとき、ガイドピン18,19を回転させる力のモーメントを発生させることができる。なお、力のモーメントとは、内側壁8に上部転動体20が接触する点37(図5(a)参照)を中心(支点)として、ガイドピン18,19を回転させる能力の大きさを指す。
かかる力のモーメントが発生することで、ガイドピン18,19自身の回転に追従して、下部転動体21を旋回させることができる。これにより、旋回した下部転動体21が、上部転動体20が転動している内側壁8に押し付けられる。この状態で、上部転動体20及び下部転動体21は、内側壁8に接触しながら移動方向17に沿って転動する。
このとき、上部転動体20と内側壁8との接触点38、及び、下部転動体21と内側壁8との接触点39において(図5(b)参照)、上部転動体20が受ける負荷と、下部転動体21が受ける負荷とを、互いに均等化させることができる。これにより、いずれか一方の転動体20,21の早期劣化を防ぐことができる。このため、2つの上部転動体20及び下部転動体21によって、ガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)をバランス良く支持することができる。この結果、クリップ13が取り付けられたホルダ12を安定して移動させることができ、長期に亘り、フィルムを精度よく延伸させることができる。
「変形例」
上記した一実施形態において、上部転動体20の上部回転軸R1と軸線18t,19tとの間隔を、下部転動体21の下部回転軸R2と軸線18t,19tとの間隔に等しく設定した場合を想定したが、これに代えて、双方の間隔が異なるように設定してもよい。
上記した一実施形態において、基準ガイドピン18の一端(下端)及び可動ガイドピン19の一端(下端)に、偏心軸ユニット25を一体的に設けた場合を想定したが、図6に示すように、偏心軸ユニット25を別体として構成してもよい。なお、図6には、基準ガイドピン18の一端(下端)の構成が示されている。可動ガイドピン19の一端(下端)に適用する偏心軸ユニットも同様の構成である。よって、可動ガイドピン19の一端(下端)の構成について、図示は省略する。
かかる構成において、偏心軸ユニット25は、ブッシュ40を介して、2つのガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の一端(下端)に取り外し可能に取り付けられている。これにより、上部転動体20や下部転動体21が劣化した場合、ガイドピン(基準ガイドピン18、可動ガイドピン19)の全体を交換する必要はない。偏心軸ユニット25のみの交換で足りる。この結果、メンテナンスのし易さを向上させることができる。
上記した一実施形態の変形例として、図7に示すように、複数のホルダ12(把持機構11)の相互間に1つずつ設けられている複数のリンク機構41の主リンク29と副リンク30の配置を入れ替えてもよい。ここで、移動方向17(レール構造体1,2)に沿って隣り合う2つのホルダ12(把持機構11)に着目する。2つのホルダ12(把持機構11)は、その一方が移動方向17の上流側に配置され、その他方が移動方向17の下流側に配置された状態で、互いに対向している。これら2つのホルダ12(把持機構11)の相互間に1つのリンク機構41が設けられている。
本変形例に係るリンク機構41の配置は、以下のように構成される。即ち、主リンク29の一端を、移動方向17の上流側の可動ガイドピン19に回転可能に連結する。主リンク29の他端を、移動方向17の下流側の基準ガイドピン18に回転可能に連結する。また、副リンク30の一端を、移動方向17の上流側の基準ガイドピン18に回転可能に連結する。副リンク30の他端を、主リンク29の連結位置に設けられた連結ピン34に連結する。