JP6354051B2 - 波力発電タービン - Google Patents

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Description

本発明は、波浪エネルギーを利用して発電を行う波力発電装置、特に振動水柱形波力発電装置に利用されるタービンに関するものである。
振動水柱形波力発電装置は、下部が海面に開放され、上部が大気への空気通路を有する外部密閉室からなる空気室と、空気通路内に設けられたタービンと、タービンの回転により発電を行う発電機とから構成される。海面の上下運動により空気室内外の圧力差が生じると、その圧力差によって空気通路内に空気流が発生し、この空気流を利用してタービンを回し、発電が行われるようになっている。
この発電装置は、可動部が波浪エネルギーを直接受けないため、構造上強度の問題が少ないという特徴があり、メインテナンス上も有利であることから、離島などの電力供給源として有望視されている。
従来から、振動水柱形発電装置のタービンとしては、主にウェルズタービンが用いられてきた(特許文献1)。
ウェルズタービンは、零揚力面が回転軸に対して垂直となるように取付けられた複数の対称翼型のタービンブレードを有するロータハブを備え、空気流の流れ方向にかかわらず同一方向に回転するように構成されたタービンである。ウェルズタービンは、往復流に対して一方向に駆動力を発生するため、構造が簡単であるという特徴を有する。
その一方で、ウェルズタービンは、駆動力が揚力に比べて小さく出力トルクが小さいため、起動時間がかかる。また、迎え角の大きい範囲では失速域が存在する。すなわち、海面の上下運動エネルギーから変換された空気流の流量が増加した場合、タービンブレードが失速して、タービントルクの大幅な降下が発生するため、タービン効率が低下するという問題がある。
上記ウェルズタービンの有する課題を解決するために、従来からさまざまな改善策が講じられてきた。
例えば、特許文献2には、タービンブレード21の上流側および下流側に、タービンブレードから隔てられた案内羽根22,23が組み込まれたタービンが開示されている(図6参照)。特許文献2に記載されたタービンでは、案内羽根22,23が、タービンブレード流を減少させあるいは消失させるように傾斜させて配設されているため、タービンブレードの失速を低減することができる。しかしながら、特許文献2に開示されたタービンでは、構造が複雑になり、しかも案内羽根22,23の形状の最適化など設計上の問題もある。
また、特許文献3には、出力軸32に2個のロータハブ33を互いに平行に離間するように固着し、このロータハブ33の周囲に複数のタービンブレード31をロータハブ33の軸線方向に交差する方向で同軸に二列に整列するように配設されており、二列の対称翼型タービンブレード31を互いに後縁が向かい合うように取付け角度γで対称に配設した対称翼型複葉式ウェルズタービンが開示されている(図7参照)。特許文献3に記載されたタービンでは、タービンブレード31を互いに後縁が向かい合うように取付けられているため、起動特性および平均効率を向上させることが可能である。しかしながら、特許文献3に記載されたタービンにおいても、構造が複雑になるとともに、取付け角度γの最適化など設計上の問題がある。
さらに、特許文献4には、回転翼43をその取付け軸周りに同時に回転可能に設け、気体の流速および回転翼43の回転数に応じて、複数の回転翼43の軸周りの回動角度を制御する波力発電タービンが開示されている(図8参照)。特許文献4に記載されたタービンによれば、脈動する気体の流速に応じて、タービンの翼を適正な角度に制御できるので、高いタービン効率で運転できる範囲が拡大され、発電効率の向上を図ることができる。しかしながら、特許文献4に記載されたタービンにおいても、気体の往復流を検知する手段や、回転翼43の回転数を検知する手段が必要となり、構造がさらに複雑になる。しかも、回転翼43を回動させるための動力源などが必要となり、発電した電力を消費してしまうため、装置全体としての発電効率が低下するという問題もある。
以上の通り、従来の波力発電タービンでは、いずれも構造が複雑になる。特に、離島で設置される波力発電装置では、メンテナンスフリーであることが要求され、構造の複雑化によって故障頻度が高くなることは、極力避けなければならない。
特開昭53−92060号公報 特開昭54−59538号公報 特公平6−89645号公報 特開平9−287546号公報
本発明は、波力発電装置に利用される波力発電タービンにおいて、構造が簡単であるという長所を活かしつつ、タービンブレードの失速を低減して、タービン効率を向上させることを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、円筒風洞内に配置され、円筒風洞と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸と、回転軸に固着され、半径方向に向かって延在する偶数個のタービンブレードを有するロータハブとを備え、タービンブレードの回転方向に対して、右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードと、左側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、交互に配置され、円弧翼は、タービンブレードの前方を通過した空気流が、タービンブレードと円弧翼との間に流れるように湾曲状に形成されたことたことを特徴とする。
また、本発明は、右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードと、左側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、千鳥状に配置されたことを特徴とする。
本発明による波力発電タービンは、タービンブレードの回転方向に対して、右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードと、左側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、交互に配置され、円弧翼は、タービンブレードの前方を通過した空気流が、タービンブレードと円弧翼との間に流れるように湾曲状に形成されているので、空気流の剥離を防止することができる。また、右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードと、左側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、千鳥状に配置されているので、後方のタービンブレードについても、空気流の剥離を低減することができる。したがって、タービンブレードの失速を低減して、タービン効率を向上させることができる。
波力発電タービンの斜視図である。 本発明の一実施例に係る波力発電タービンにおけるタービンブレードと円弧翼の配置、および空気流の流れを示す概略図である。 本発明の他の実施例に係る波力発電タービンにおけるタービンブレードと円弧翼の配置、および空気流の流れを示す概略図である。 従来の波力発電タービンのタービンブレードおよび空気流の流れを示す概略図である。 従来の波力発電タービンの構成および空気流の流れを示す斜視図である。 従来技術による固定子羽根を備えた波力発電タービンの構成を示す概略図である。 従来技術によるタービンブレードを傾けた複葉式タービンの構成を示す概略図である。 従来技術による回転翼を回動可能とした波力発電タービンの構成を示す概略図である。
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、波力発電タービンの構成を示す斜視図、図2は、本発明の一実施例に係る波力発電タービンにおけるタービンブレードと円弧翼の配置、および空気流の流れを示す概略図、図3は、本発明の他の実施例に係る波力発電タービンにおけるタービンブレードと円弧翼の配置、および空気流の流れを示す概略図、図4は、従来の波力発電タービンのタービンブレードおよび空気流の流れを示す概略図、図5は、従来の波力発電タービンの構成および空気流の流れを示す斜視図である。
図1において、1は、空気室(図示せず)と外気との間で空気が出入りするための円筒風洞(空気通路)、2は、ロータハブ、3は、円筒風洞1内に回転自在に支持されるとともにロータハブ2に固着された回転軸、4は、ロータハブ3から半径方向に延在する対象翼型のタービンブレード、5は、回転軸3に連結され発電機であり、6は、円筒風洞1内に発生する空気流(往復流)、7は、波力発電タービンの回転方向を示している。
海面の上下運動により、空気室(図示せず)の内外で圧力差が生じると、その圧力差によって、円筒風洞1内に空気流6が発生する。空気流6により、タービンブレード4が回転方向7の方向に回転し、さらにロータハブ2、回転軸3が回転することにより、発電機5にて発電が行われるようになっている。
本発明者らは、タービンブレードが失速するメカニズムを解明するために、従来の波力発電タービンにおける空気流の流れ場について解析を行った。その結果を図4、図5に基づいて説明する。
図4は、従来の波力発電タービンにおけるタービンブレードまわり空気流の流れを、図5は、従来の波力発電タービンまわりの空気流の流れを、それぞれ解析した結果を示している。
図4、図5から明らかなように、タービンブレード4の前方を通過した空気流は、タービンブレード4の下流側表面から剥離していることがわかる。さらに、流入する空気流量が大きくなった場合には、空気流の剥離が大きくなることが確認された。
この解析結果から、上記空気流の剥離が、タービンブレードの前縁失速を助長していることがわかる。
本発明は、タービンブレードの下流側表面において、空気流の剥離を防止することによって、タービン効率を向上させるものである。以下、本発明に係る波力発電タービンの一実施例について図2を参照しつつ説明する。
図2に示すように、本発明による波力発電タービンでは、回転方向7に対して左側前方に円弧翼9を備えたタービンブレード4と、回転方向7に対して右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、略同一平面上に、交互に配置されている。円弧翼9は、タービンブレード4の前方を通過した空気流が、タービンブレード4と円弧翼9との間を流れるように、下流側に湾曲して形成されている。
タービンブレード4の前方を通過した空気流は、まず円弧翼9によって、回転方向7の反対方向に転向されて、タービンブレード4と円弧翼9との間にブレード流入流れ10が形成される。このブレード流入流れ10は、タービンブレード4の下流側表面に沿って形成される。すなわち、ブレード流入流れ10は剥離することがないので、タービンブレードの失速を助長することはない。
次に、図3を参照して本発明の他の実施例について説明する。図3の波力発電タービンでは、図2の波力発電タービンと違うのは、回転方向7に対して左側前方に円弧翼9を備えたタービンブレード4と、回転方向7に対して右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、互いにオフセット量11だけずらされて配置されている点である。
図3において、タービンブレード4の前方を通過した空気流は、まず円弧翼9によって、回転方向7の反対方向に転向されて、タービンブレード4と円弧翼9との間にブレード流入流れ10が形成される。ここまでの空気の流れは、図2の実施例と同じである。タービンブレード4の下流側表面に沿って形成されたブレード流入流れ10は、回転方向7の反対方向に流れ、先行翼の後流12が形成される。後方のタービンブレードは、オフセット量11だけ下流側に配置されているので、先行翼の後流12は、後方のタービンブレードの下流側表面に沿って流れる。したがって、後方のタービンブレードについても、失速を助長することはない。
本発明は、波力発電装置に用いられる波力発電タービンに利用することができる。
1 円筒風洞
2 ロータハブ
3 回転軸
4 対称翼型タービンブレード
5 発電機
6 空気流(往復流)
7 回転方向
8 同一半径断面
9 円弧翼
10 ブレード流入流れ
11 タービンブレード4のオフセット量
12 先行翼の後流
13 ブレード前縁失速
14 前縁失速流れ

Claims (2)

  1. 円筒風洞内に配置され、前記円筒風洞と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸に固着され、半径方向に向かって延在する偶数個のタービンブレードを有するロータハブとを備え、
    前記タービンブレードの回転方向に対して、右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードと、左側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、交互に配置され、
    前記円弧翼は、前記タービンブレードの前方を通過した空気流が、前記タービンブレードと前記円弧翼との間に流れるように湾曲状に形成されたことを特徴とする波力発電タービン。
  2. 前記右側前方に円弧翼を備えたタービンブレードと、前記左側前方に円弧翼を備えたタービンブレードとが、千鳥状に配置されたことを特徴とする請求項1記載のタービンブレード。
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