JP6352723B2 - セメント系硬化体の診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント系硬化体の診断方法に関する。
石灰石骨材や石灰石フィラー等の石灰石を含むセメント系硬化体は、硫酸塩の存在下かつ低温環境下において、タウマサイト硫酸塩劣化(Thaumasaite form of sulfate attack)と称される、セメント系硬化体の組織がマッシュ状に変化する劣化現象が生じる場合がある。
従来、タウマサイト硫酸塩劣化は、硫酸塩土壌の多い欧州において多くの事例が認められていた。しかし、硫酸塩は海水にも含まれるものであり、セメント系硬化体の材料として、石灰石骨材や石灰石フィラーの使用が拡大するに伴って、日本においてもタウマサイト硫酸塩劣化の発生が確認されつつあり、タウマサイト硫酸塩劣化の対策技術の確立が求められている。
タウマサイト硫酸塩劣化は、以下の過程によって発生すると推定されている。具体的には、セメント系硬化体に硫酸塩が浸透することで、セメント系硬化体中にエトリンガイト(Ca3Al26・3CaSO4・32H2O)が生成し、次いで、セメント系硬化体中の石灰石等から供給される炭酸イオンの存在下において、セメント水和物の主要鉱物である珪酸カルシウム水和物(C−S−H)の分解を伴って、表層付近やひび割れ部においてタウマサイト(CaSiO3・CaCO3・CaSO4・15H2O)が生成し、セメント系硬化体の組織が脆弱化すると推定されている。
タウマサイト硫酸塩劣化の過程において生成されるエトリンガイトについては、様々な分析方法が知られている。
例えば、特許文献1には、無機酸化物系材料を5mm以下の粒度に粗粉砕して全質量を測定する工程と、前記粗粉砕した無機酸化物系材料から150μm以下の粒度の無機酸化物系材料を篩い取る工程と、前記150μm以下の粒度の無機酸化物系材料の質量を測定する工程と、前記無機酸化物系材料の全量に対する前記150μm以下の粒度の無機酸化物系材料の質量割合を算出する工程と、前記150μm以下の粒度の無機酸化物系材料中に含まれるエトリンガイトを定量分析する工程と、前記エトリンガイトの定量値から前記150μm以下の粒度の無機系酸化物材料に対する前記エトリンガイトの質量割合を算出する工程と、前記無機系酸化物材料の全量に対する前記エトリンガイトの質量割合を算出する工程と、を有し、前記無機系酸化物材料の全量に対する前記エトリンガイトの質量割合を算出する工程は、前記150μm以下の粒度の無機酸化物系材料中のエトリンガイトの質量割合に、前記150μm以下の粒度の無機酸化物系材料の質量割合を乗算した値を、前記無機酸化物材料の全量に存在するエトリンガイトの質量割合とすることを特徴とする無機酸化物系材料中のエトリンガイトの定量分析方法が記載されている。
特許第5429058号公報
タウマサイト硫酸塩劣化の対策に係る基盤技術として、セメント系硬化体中のタウマサイトの有無を確認する方法が必要である。
しかし、タウマサイトは、セメントの主要水和生成物であるエトリンガイトと共に生成し、かつ、その結晶構造や熱分解の際の挙動がエトリンガイトと非常に似ているため、セメント系硬化体の構成相の分析に一般的に用いられるX線回折法や熱分析法等の分析方法ではエトリンガイトと区別して、その有無、さらにはその生成量を確認することは困難であった。
セメント系硬化体中のタウマサイトの有無等を分析する方法としては、Na2CO3溶液を用いてエトリンガイトを溶解してタウマサイトを確認する方法や、SEM−EDXによる針状結晶の組成分析から確認する方法や、固体NMRを用いてSi(OH)6 2−を分析する方法や、特殊な分析条件での熱分析による方法や、赤外分光分析による方法や、光学顕微鏡による方法等が挙げられる。しかし、これらの方法は、タウマサイトとエトリンガイトを区別して分析する能力が不十分である、前処理や分析に時間がかかる、特殊な装置やスキルが必要となる等の問題があり、汎用技術とは成りえていない。
そこで、本発明の目的は、コンクリート等のセメント系硬化体中のタウマサイトの有無を、簡便かつ高い精度で判定して劣化原因を診断することができ、さらに、必要に応じて、タウマサイトの生成量を明らかにすることで、該セメント系硬化体のタウマサイト硫酸塩劣化の進行程度を診断することができるセメント系硬化体の診断方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント系硬化体を粉砕する粉砕工程と、セメント系硬化体の粉粒物を減圧処理する減圧処理工程と、減圧処理した前記セメント系硬化体の粉粒物を分析して、タウマサイトの有無の判定、および必要に応じてタウマサイトの生成量を測定する分析工程を含む方法によれば、本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] セメント系硬化体中のタウマサイトの有無を判定して、該セメント系硬化体の劣化原因を診断するための方法であって、前記セメント系硬化体を粉砕して、セメント系硬化体の粉粒物を得る粉砕工程と、前記セメント系硬化体の粉粒物を減圧処理して、前記セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの結晶を分解する減圧処理工程と、減圧処理した前記セメント系硬化体の粉粒物を分析して、タウマサイトの有無を判定する分析工程を、含むことを特徴とするセメント系硬化体の診断方法。
[2] 前記減圧処理工程において、2,500Pa以下の気圧で減圧処理を行う、前記[1]に記載のセメント系硬化体の診断方法。
[3] 前記減圧処理工程において、20〜2,000Paの気圧で減圧処理を行い、かつ、前記分析工程において、減圧処理した前記セメント系硬化体の粉粒物中のタウマサイトを定量することで、前記セメント系硬化体のタウマサイト硫酸塩劣化の進行程度をも診断する、前記[2]に記載のセメント系硬化体の診断方法。
[4] 前記減圧処理工程前のセメント系硬化体の粉粒物と、前記減圧処理工程後のセメント系硬化体の粉粒物のX線回折のピーク強度の測定値の差から、セメント系硬化体中のエトリンガイトを定量し、エトリンガイトによる硫酸塩劣化の進行程度をも診断する、前記[3]に記載のセメント系硬化体の診断方法。
[5] 前記減圧処理工程において、前記減圧処理を50℃以下の温度下で行う、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のセメント系硬化体の診断方法。
[6] 前記セメント系硬化体は、セメントペースト、モルタル、コンクリート、または固化改良土からなる、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のセメント系硬化体の診断方法。
本発明のセメント系硬化体の診断方法によれば、コンクリート等のセメント系硬化体中のタウマサイトの有無を、簡便かつ高い精度で判定して、該セメント系硬化体の劣化原因を診断することができる。
また、本発明によれば、タウマサイトの生成量を測定した場合、該セメント系硬化体のタウマサイト硫酸塩劣化の進行程度をも診断することができる。さらに、エトリンガイトの生成量を求めた場合、エトリンガイトによる硫酸塩劣化の進行程度をも診断することができる。
本発明のセメント系硬化体の診断方法の結果から、有効な補修や補強方法を選択する等のセメント系硬化体の維持管理対策を確実に進めることができる。
本発明の実施例1におけるX線回折の結果を示す図である。
本発明のセメント系硬化体の診断方法は、セメント系硬化体中のタウマサイトの有無を判定して、該セメント系硬化体の劣化原因を診断するための方法であって、セメント系硬化体を粉砕して、セメント系硬化体の粉粒物を得る粉砕工程と、前記セメント系硬化体の粉粒物を減圧処理して、前記セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの結晶を分解する減圧処理工程と、減圧処理した前記セメント系硬化体の粉粒物を分析して、タウマサイトの有無を判定する分析工程を、含むものである。
以下、各工程について詳しく説明する。
[粉砕工程]
本工程は、セメント系硬化体を粉砕して、セメント系硬化体の粉粒物を得る工程である。
ここで、本発明の診断方法の対象物であるセメント系硬化体としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、または固化改良土等からなるものが挙げられる。
粉砕前の上記セメント系硬化体の状態は、特に限定されるものではなく、セメント系硬化体の塊状物や、セメント系硬化体を破砕した破砕物や、セメント系硬化体を粉砕した粉粒物(粒状物または粉末状物)や、セメント系硬化体を含む懸濁液等であってもよい。
これらのセメント系硬化体は、所望の粒度となるまで粉砕され、得られたセメント系硬化体の粉粒物は、後述する減圧処理工程において減圧処理される。セメント系硬化体を粉砕する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ディスクミル等を用いて粉砕する方法が挙げられる。また、セメント系硬化体が懸濁液の状態である場合、粉砕を行う前に遠心分離や乾燥によって水分を除去してもよい。
セメント系硬化体の粉粒物の粒度は、減圧処理工程においてエトリンガイトの結晶を短時間で分解する観点から、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、特に好ましくは0.02mm以下である。また、後述する分析工程において、X線回折法を用いる場合、セメント系硬化体の粉粒物の粒度は、好ましくは0.02mm以下である。
なお、本明細書中、「粒度が2.0mm以下」とは、目開き2.0mmの篩を通過することをいう。
[減圧処理工程]
本工程は、前工程で得られたセメント系硬化体の粉粒物を減圧処理して、前記セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの結晶を分解する工程である。
ここで、エトリンガイトやタウマサイトの結晶は、多量の結晶水を含んでいる。本工程において減圧処理を行うことで、セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの結晶から結晶水を脱離させて、エトリンガイトの結晶を分解することができる。タウマサイトの分析において、ノイズとなるエトリンガイトの結晶が本工程で分解されることで、後述する分析工程において、高い精度でタウマサイトの有無の判定、および必要に応じたタウマサイトの生成量の測定を行うことができる。
減圧処理における気圧は、セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの結晶を分解して、タウマサイトの有無の判定の精度を高める観点から、好ましくは2,500Pa以下、より好ましくは2,000Pa以下、特に好ましくは1,500Pa以下である。
また、減圧処理における気圧の下限は、特に限定されるものではないが、セメント系硬化体の粉粒物中のタウマサイトの結晶を分解せずに、エトリンガイトの結晶のみを分解する観点から、好ましくは20Pa以上、より好ましくは40Pa以上、特に好ましくは80Pa以上である。
特に、減圧処理における気圧を、20〜2,000Paの数値範囲内にすることにより、セメント系硬化体の粉粒物中のタウマサイトの結晶を分解せずに、セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの結晶をほぼ完全に分解することができ、後述する分析工程において、セメント系硬化体中のタウマサイトの定量を高い精度で行うことができる。
本工程において、減圧処理は、加熱によるタウマサイトの結晶の分解を抑制する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下の温度下で行われる。
減圧処理における温度の下限は、特に限定されるものではないが、セメント系硬化体に含まれる水分が氷となってタウマサイトを傷つけるのを防止するなどの観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは15℃以上である。
また、減圧処理を行う時間は、特に限定されるものではなく、粉粒物の粒度、気圧、及び温度を考慮して適宜定めればよい。一般的に、減圧処理を行う時間が長くなるほど、エトリンガイトの結晶の分解量が大きくなり、セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの量が小さくなる。
特に、減圧処理を行う時間は、分析工程においてタウマサイトの定量を高い精度で行う観点から、少なくとも、エトリンガイトの結晶がほぼ完全に分解されるように定めることが好ましい。
[分析工程]
本工程は、前工程で減圧処理したセメント系硬化体の粉粒物を分析して、タウマサイトの有無を判定する工程である。
本工程において、セメント質硬化体中にタウマサイトが存在すると判定された場合、該セメント質硬化体において、タウマサイト硫酸塩劣化が生じていると診断することができる。
セメント系硬化体の粉粒物中のタウマサイトの有無を判定する分析方法としては、X線回折法、熱分析等が挙げられる。中でも、高い精度で判定できる観点から、X線回折法が好ましい。
また、タウマサイトの有無の判定に加えて、タウマサイトの定量(生成量の測定)を行ってもよい。特に、減圧処理工程における気圧を、20〜2,000Paの数値範囲内とすることで、セメント系硬化体中のタウマサイトの定量を高い精度で行うことができる。
タウマサイトの定量の結果から、セメント質硬化体中のタウマサイト硫酸塩劣化の進行程度を診断することができる。
タウマサイトの定量方法としては、X線回折法における検量線法、外部標準法、内部標準法、スパイキング法(標準添加法)、リートベルト法等の通常の定量方法を使用することができる。
本工程において、さらにセメント系硬化体中のエトリンガイトの定量を行ってもよい。
具体的には、前記減圧処理工程前のセメント系硬化体の粉粒物と、前記減圧処理工程後のセメント系硬化体の粉粒物のX線回折のピーク強度の測定値の差から、エトリンガイトのX線回折のピーク強度を間接的に得た後、あらかじめ求めておいたエトリンガイトに関する検量線を用いて、得られたピーク強度からセメント系硬化体中のエトリンガイトの定量を行うことができる。
特に、減圧処理工程における気圧を、20〜2,000Paの数値範囲内とした場合、減圧処理において、セメント系硬化体の粉粒物中のタウマサイトの結晶を分解せずに、エトリンガイトの結晶をほぼ完全に分解することができるため、減圧処理前後のX線回折のピーク強度差から、エトリンガイトに係わるX線回折のピーク強度を高い精度で得ることができ、セメント系硬化体中のエトリンガイトの定量を高い精度で行うことができる。
エトリンガイトの定量の結果、エトリンガイトによる硫酸塩劣化の進行程度をも同時に診断することができる。さらに、タウマサイトが存在していない場合でも、エトリンガイトの量が大きいほど、将来的にタウマサイト硫酸塩劣化の生じる可能性が高い、と診断することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実験例1〜3で使用した材料は、以下に示すとおりである。
(1)天然タウマサイト:米国Virginia州Centerville産
(2)合成エトリンガイト:電気炉において焼成したアルミネート相(3CaO・Al23)と二水石膏を水中で反応させて、ろ過した後、塩化リチウムを調湿剤として用いて相対湿度が11%となるようにして、恒量となるまで静置したもの
(3)シリカ粉末:二酸化ケイ素(和光純薬工業社製、試薬特級)
[実験例1]
上記天然タウマサイトを、ディスクミルを用いて、粒度が0.02mm以下となるまで粉砕した後、表1に示す温度に設定した恒温機に入れて、大気圧下で表1に示す時間静置した。
また、粒度が0.02mm以下となるまで粉砕した天然タウマサイトを、表2に示す気圧に設定した水分トラップを備えた耐圧容器に入れて、表2に示す時間静置した。なお、静置中の耐圧容器の温度は20℃に設定した。
静置前の天然タウマサイトの質量と静置後の天然タウマサイトの質量を、はかり(メトラートレド社製、「AE100」)を用いて秤量して、静置前の天然タウマサイトの質量を100質量%として、静置後の天然タウマサイトの質量から天然タウマサイトの質量減少率を算出した。
なお、天然タウマサイトの質量減少率が増加するということは、タウマサイトを構成する結晶水が脱離して、タウマサイトの結晶が分解したことを意味する。
それぞれの結果を表1および表2に示す。
さらに、粒度が0.02mm以下となるまで粉砕した天然タウマサイトを、気圧の条件を300Pa、200Pa、または0.2Paに設定した水分トラップを備えた耐圧容器に入れて、24時間静置することで減圧処理を行った。なお、静置中の耐圧容器の温度は20℃に設定した。
減圧処理を行った天然タウマサイト、及び、減圧処理を行わなかった天然タウマサイトを、X線回折装置(パナリティカル製、「X’Pert PRO MPD」)を用いて、以下の測定条件でX線回折を行った。
測定条件:Cu−Kα(40mA、45kV)、スリット:1°(DS)−1°(SS)−5.5mm(RS)、スキャン速度:5°/分、サンプリングステップ:0.017°
X線回折の結果、300Pa及び200Paの条件で減圧処理を行った場合、減圧処理を行わなかった天然タウマサイトと同等の回折ピークが生じることがわかった。また、0.2Paの条件で減圧処理を行った場合、減圧処理を行わなかった天然タウマサイトと比較して回折ピークが小さくなっており、タウマサイトの結晶の分解が生じていることがわかった。
[実験例2]
天然タウマサイトの代わりに上記合成エトリンガイトを用いる以外は、実験例1と同様にして、静置前の合成エトリンガイトの質量と静置後の合成エトリンガイトの質量を、はかりを用いて秤量して、静置前の合成エトリンガイトの質量を100質量%として、静置後の合成エトリンガイトの質量から質量減少率を算出した。
なお、合成エトリンガイトの質量減少率が増加するということは、エトリンガイトを構成する結晶水が脱離して、エトリンガイトの結晶が分解したことを意味する。
それぞれの結果を表1および表2に示す。
また、天然タウマサイトの代わりに上記合成エトリンガイトを用いる以外は、実験例1と同様にして、気圧の条件を300Pa、200Pa、または0.2Paに設定して減圧処理を行った合成エトリンガイト、及び、減圧処理を行わなかった合成エトリンガイトを、X線回折装置を用いてX線回折を行った。
X線回折の結果、減圧処理を行った全ての合成エトリンガイトにおいて、減圧処理を行わなかった合成エトリンガイトでは生じる回折ピークが生じず、合成エトリンガイトの結晶が分解されたことがわかった。
Figure 0006352723
Figure 0006352723
実験例1〜2より、温度が50℃以下であれば、タウマサイトおよびエトリンガイトの結晶がほとんど分解しないことがわかる。
また、減圧処理における気圧が1,000Pa以下である実験例では、エトリンガイトの結晶が分解することがわかる。さらに、減圧処理における気圧が100〜1,000Paである実験例では、エトリンガイトの結晶が分解し、かつ、タウマサイトの結晶がほとんど分解しないことがわかる。
[実験例3]
上記天然タウマサイトと、上記合成エトリンガイトと、上記シリカ粉末とを、混合物中のそれぞれの含有率が10質量%、10質量%、80質量%となるように混合した。
得られた混合物を、ディスクミルを用いて、粒度が0.02mm以下となるまで粉砕した後、表3に示す気圧に設定した水分トラップを備えた耐圧容器に入れて、3時間静置した。なお、静置中の耐圧容器の温度は20℃に設定した。
静置後、実験例1と同様の測定条件でX線回折装置を用いてX線回折を行い、検量線法を用いて減圧処理後の混合物中のタウマサイト及びエトリンガイトの定量分析を行った。なお、定量には、タウマサイト及びエトリンガイト共に、回折角9°付近の第一ピークを使用した。
結果を表3に示す。
Figure 0006352723
表3より、減圧処理における気圧が20〜1,000Paである実験例では、タウマサイトの結晶を分解せずに、エトリンガイトの結晶をほぼ完全に分解することができるため、高い精度でセメント質硬化体中のタウマサイトの定量を行うことができることがわかる。
さらに、減圧処理で生じる回折角9°付近のピーク強度の差は、エトリンガイトの結晶分解に起因したものと解することができるので、タウマサイトと同様の高い精度で、セメント質硬化体中のエトリンガイトの定量をも行うことができることがわかる。
[実施例1]
実施例1で使用した材料は、以下に示すとおりである。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)石灰石微粉末:太平洋セメント社製
(3)二水石膏
(4)水:千葉県佐倉市上水道水
上記普通ポルトランドセメントと上記石灰石微粉末を9:1の質量比となるように混合して石灰石フィラーセメントを調製した。得られた石灰石フィラーセメントと水を1:1の質量比で混合してセメントペーストを作製し、20℃の条件下で28日間封緘養生を行ってセメントペースト硬化体を得た。
封緘養生後、乳鉢を用いてセメントペースト硬化体を粗砕した後、該硬化体の粉砕物の0.3mmふるい通過分と上記二水石膏を76:24の質量比となるように混合した。得られた混合物と水を7:1の質量比となるようにして混練し、混練後に5℃の環境下で封緘養生を行った。
封緘養生を6か月間行った後、混練物をアセトンに浸漬させて、混練物の液相を除去することで水和反応を停止し、塩化リチウムを調湿剤として用いて、相対湿度が11%となるようにして混練物(二水石膏を混合したセメントペースト硬化体)を保存した。
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−7001F」)を用いて、混練物のSEM画像を観察したところ、柱状結晶を確認することができた。また、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(Oxford Instruments社製、「INCAPentaFETx3」)を用いて、柱状結晶のEDSスペクトルを測定したところ、柱状結晶の構成成分として、SiとCの存在を確認することができた。
また、実験例1と同様の測定条件でX線回折装置を用いて、混練物のX線回折を行った。X線回折の結果、タウマサイトの主要ピーク位置に、強い回折ピークが生じていることがわかった。
以上の結果から、二水石膏を混合したセメントペースト硬化体にはタウマサイトが生成していると判断された。
なお、二水石膏を混合しない以外は、上記セメントペースト硬化体と同様にして得られた混練物について、X線回折を行った結果、タウマサイトの主要ピーク位置には回折ピークが生じなかった。
二水石膏を混合したセメントペースト硬化体を、ディスクミルを用いて、粒度が0.02mm以下となるまで粉砕した後、粉砕物を300Paに設定した水分トラップを備えた耐圧容器に入れて、20℃の温度下で24時間静置することで減圧処理を行った。
減圧処理を行う前の試料、及び、減圧処理を行った後の試料について、X線回折を行った。結果を図1に示す。
図1より、減圧処理前の試料については、エトリンガイトとタウマサイトの第一ピークが重なり合う2θ=9.1°付近に、半値幅の大きい回折ピークが存在している。一方、減圧処理後の試料については、回折ピークのトップの位置が高角側にシフトし、回折強度も小さくなっている。これは、減圧処理によってエトリンガイトの結晶が分解され、より低角側に存在していた、エトリンガイト由来の回折ピークがなくなったことを意味している。
このことから、減圧処理を行うことで、エトリンガイトの結晶が分解されることがわかる。
減圧処理を行った試料について、外部標準法を用いてタウマサイトの定量分析を行った結果、セメントペースト硬化体中のタウマサイトの含有率は2.1質量%であった。
また、減圧処理を行う前の試料のX線回折の結果(ピーク強度:24,750カウント)から、上記減圧処理を行った試料のX線回折の結果(ピーク強度:5,310カウント)を減じて、得られた結果(ピーク強度:19,440カウント)から、検量線法を用いてエトリンガイトの定量分析を行った結果、セメント系硬化体中のエトリンガイトの含有率は22.1質量%であった。
[実施例2]
実施例2で使用した材料は、以下に示すとおりである。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)細骨材:石灰石(三重県藤原産)
(3)粗骨材:石灰石(埼玉県武甲産)
(4)高性能AE減水剤
(5)水:千葉県佐倉市上水道水
上記材料を、水:167kg/m、セメント:334kg/m、細骨材:736kg/m、粗骨材:1033kg/m、高性能AE減水剤:2kg/mとなるように配合して、「JIS A 1138(試験室におけるコンクリートの作り方)」に準拠してコンクリートの供試体を作製した。
得られたコンクリートの供試体を、北海道網走市鱒浦漁港の干満帯に、2008年1月〜2010年6月の30カ月間曝露した後、大気中において保管した。
なお、2010年6月以降は大気中で保管したため、エトリンガイトの大部分は炭酸化によって分解されているものと考えられる。
曝露後の供試体の表層部を採取した後、骨材を取り除き、次いで、ディスクミルを用いて粒度が0.02mm以下となるまで粉砕した。粉砕後の試料を、塩化リチウムを調湿剤として用いて、相対湿度を11%とした容器中に1週間放置した。
放置後、300Paに設定した水分トラップを備えた耐圧容器に入れて、20℃の条件下で24時間静置することで減圧処理を行った。
減圧処理後、X線回折装置(パナリティカル製、「X’Pert PRO MPD」)を用いて、以下の測定条件でX線回折を行った。
測定条件:Cu−Kα(40mA、45kV)、スリット:1°(DS)−2°(SS)−5.5mm(RS)、スキャン速度:5°/分、サンプリングステップ:0.017°
X線回折の結果から、コンクリートの供試体中にタウマサイトが存在することを確認することができた。
また、X線回折の結果から、外部標準法を用いて、減圧処理を行った試料中のタウマサイトの定量分析を行った結果、コンクリートの供試体中のタウマサイトの含有率は1.6質量%であった。

Claims (5)

  1. セメント系硬化体中のタウマサイトの有無を判定して、該セメント系硬化体の劣化原因を診断するための方法であって、
    前記セメント系硬化体を粉砕して、セメント系硬化体の粉粒物を得る粉砕工程と、
    前記セメント系硬化体の粉粒物を50℃以下の温度下で減圧処理して、前記セメント系硬化体の粉粒物中のエトリンガイトの結晶を分解する減圧処理工程と、
    減圧処理した前記セメント系硬化体の粉粒物を分析して、タウマサイトの有無を判定する分析工程を、
    含むことを特徴とするセメント系硬化体の診断方法。
  2. 前記減圧処理工程において、2,500Pa以下の気圧で減圧処理を行う、請求項1に記載のセメント系硬化体の診断方法。
  3. 前記減圧処理工程において、20〜2,000Paの気圧で減圧処理を行い、かつ、前記分析工程において、減圧処理した前記セメント系硬化体の粉粒物中のタウマサイトを定量することで、前記セメント系硬化体のタウマサイト硫酸塩劣化の進行程度をも診断する、請求項2に記載のセメント系硬化体の診断方法。
  4. 前記減圧処理工程前のセメント系硬化体の粉粒物と、前記減圧処理工程後のセメント系硬化体の粉粒物のX線回折のピーク強度の測定値の差から、セメント系硬化体中のエトリンガイトを定量し、エトリンガイトによる硫酸塩劣化の進行程度をも診断する、請求項3に記載のセメント系硬化体の診断方法。
  5. 前記セメント系硬化体は、セメントペースト、モルタル、コンクリート、または固化改良土からなる、請求項1〜のいずれか1項に記載のセメント系硬化体の診断方法。
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