JP6352083B2 - 逆入力防止クラッチユニット - Google Patents

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本発明は、逆入力防止機能を有するクラッチを2つ並べて配置した逆入力防止クラッチユニットに関する。
逆入力防止クラッチは、逆入力防止機能、すなわち入力部材に入力トルクが加えられたときは、その回転を出力部材に伝達し、出力部材に逆入力トルクが加えられたときは、入力部材が回転しないようにする機能を有するクラッチである。例えば、特許文献1、2には、入力部材の回転を僅かな角度遅れをもって出力部材に伝達するトルク伝達手段と、逆入力トルクに対して出力部材をロックする手段を設け、入力トルクが加えられたときは、出力部材のロック状態を解除した後、トルク伝達手段によって入力部材から出力部材に回転が伝達されるようにしたロック式の逆入力防止クラッチが提案されている。このような逆入力防止クラッチは、1つの入力部材に対して1つの出力部材を持つ機能部品として使用されている。
特許第4806264号公報 特開2013−096468号公報
ところで、入力側から出力側への回転伝達を2系統で行う装置において、各回転伝達系統で逆入力防止機能が必要とされる場合は、2つの逆入力防止クラッチを同軸に組み込むことが多い。このとき、同じ構造の2つの逆入力防止クラッチを軸方向に並べて配置すると、1つだけを配置する場合に比べて、2倍のスペースが必要となって軸方向寸法がかなり大きくなるし、入力部材と出力部材が軸方向に交互に配置されることになり、操作性が低下するおそれがある。
そこで、本発明は、2つの逆入力防止クラッチをコンパクトにかつ操作性よく同軸に配置できる逆入力防止クラッチユニットを提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、同一軸心のまわりに回転する入力部材と出力部材を備え、前記入力部材に入力トルクが加えられたときは入力部材の回転を前記出力部材に伝達し、前記出力部材に逆入力トルクが加えられたときは前記入力部材が回転しないようにする逆入力防止機能を有するクラッチ(逆入力防止クラッチ)を2つ同軸に配置した逆入力防止クラッチユニットにおいて、前記2つのクラッチは、一方のクラッチの入力部材または出力部材と一体に回転する軸部材が他方のクラッチの入力部材および出力部材を貫通し、両クラッチの入力部材どうしおよび出力部材どうしが軸方向で隣り合うように配置されている構成とした。この構成によれば、同じ構造の2つの逆入力防止クラッチを軸方向に並べる場合よりもコンパクトになるし、入力部材と出力部材を2つずつまとめた配置となって操作性が向上する。
前記クラッチとしては、前記入力部材と出力部材との間に、入力部材の回転を僅かな角度遅れをもって出力部材に伝達するトルク伝達手段を設け、固定部材に固定した外輪の内側に配される内輪を前記出力部材と一体回転するように連結し、前記内輪の外周面にカム面を周方向に複数設けて、前記外輪の内周円筒面と内輪の各カム面との間に周方向で次第に狭小となる楔形空間を形成し、これらの各楔形空間にころとそのころを楔形空間の狭小部へ押し込む弾性部材を組み込み、前記各楔形空間の周方向両側に挿入される柱部を有する保持器を前記入力部材と一体回転するように連結したロック式のものを採用することができる。
前記両クラッチを上述のロック式のものとする場合、前記両クラッチの外輪を共通の固定部材に固定するようにすれば、部品点数が減るうえ、一層のコンパクト化が図れる。このとき、前記固定部材は、前記両クラッチの入力部材の間または出力部材の間に配するとよい。そして、前記固定部材を、前記両クラッチの内輪、ころ、弾性部材および保持器を互いに隔離するものとすることにより、両クラッチ間でのこれらの部品どうしの干渉を防止することができる。
また、前記両クラッチの外輪を一体に形成すれば、部品点数を少なくして組み立てやすくすることができる。
本発明の逆入力防止クラッチユニットは、上述したように、2つの逆入力防止クラッチを同軸に配置する際に、その一方のクラッチの入力部材または出力部材と一体に回転する軸部材が他方のクラッチの入力部材および出力部材を貫通し、両クラッチの入力部材どうしおよび出力部材どうしが軸方向で隣り合うようにしたものであるから、同じ構造の2つの逆入力防止クラッチを軸方向に並べる場合よりもコンパクトになり、良好な操作性が得られる。
第1実施形態の逆入力防止クラッチユニットの縦断正面図 図1の分解斜視図 図1のIII−III線に沿った断面図 図3に対応してクラッチ動作を説明する断面図 第2実施形態の逆入力防止クラッチユニットの縦断正面図 第3実施形態の逆入力防止クラッチユニットの縦断正面図
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図4は第1の実施形態を示す。この逆入力防止クラッチユニットは、図1に示すように、それぞれ逆入力防止機能を有する2つのクラッチ(第1クラッチAと第2クラッチB)を同軸に配置したものである。そして、各クラッチA、Bは、図1乃至図3に示すように、円筒状の入力部材1a、1bと、入力部材1a、1bの内周に一端部を嵌合固定された中空の入力軸2a、2bと、入力軸2a、2bと一体に回転する保持器3と、プーリ状の出力部材4と、出力部材4の内周に外側円筒部を嵌合固定された二重円筒状の出力軸5と、出力軸5と一体に回転する内輪6と、内輪6の径方向外側に配される外輪7と、両方の外輪7が固定される固定部材8とを備えている。また、各保持器3は内輪6と外輪7との間に挿入される複数の柱部9を有しており、その周方向で隣り合う柱部9どうしの間に、複数のころ10およびコイルばね(弾性部材)11が配されている。
前記各クラッチA、Bの入力部材1a、1bは、それぞれ外周に図示省略した入力歯車が嵌合固定され、その入力歯車を介してトルクが入力されるようになっている。そして、両クラッチA、Bの入力部材1a、1bどうしが軸方向で隣り合う状態で、第1クラッチAの入力軸2aの外周に第2クラッチBの入力軸2bが回転自在に嵌め込まれている。
前記各入力軸2a、2bは、それぞれの他端に係合部12を有し、この係合部12が内輪6中央に設けられた係合穴13に挿入されて内輪6と同一軸心のまわりに回転するようになっている。ここで、内輪6の係合穴13は、入力軸2a、2bの係合部12外形とほぼ同じ断面形状であるが、係合部12外周の凸部との間に僅かな回転方向の隙間が生じるように凹部が形成されている(図3参照)。一方、前記出力軸5は、その内側円筒部の一端に形成された嵌合部14が内輪6の係合穴13の凹部に隙間なく嵌まり込んでいる。これにより、入力部材1a、1bの回転が僅かな角度遅れをもって内輪6および出力軸5と一体の出力部材4に伝達されるようになっている。また、入力軸2a、2bの係合部12は一部が内輪6の係合穴13からはみ出しており、そのはみ出し部の外周に保持器3が隙間なく嵌め込まれて、保持器3が入力軸2a、2bおよび入力部材1a、1bと一体回転するようになっている。
前記外輪7は、その一端に固定部材8に固定される外向きフランジが設けられ、他端には、保持器3とともに内輪6、ころ10およびコイルばね11を軸方向に抜け止めするための内向きフランジが設けられている。
前記固定部材8は、外周から2つの舌状部が張り出す略円板状の部材で、両クラッチA、Bの出力部材4の間に配されており、両クラッチA、Bの入力軸2a、2bの係合部12の間で第1クラッチAの入力軸2aを回転自在に支持して、両クラッチA、Bの内輪6、ころ10、コイルばね11および保持器3を互いに隔離し、軸方向で隣り合う保持器3どうしの干渉を防止している。そして、その両面のそれぞれに各クラッチA、Bの外輪7の外向きフランジが複数の共通のリベット15で固定され、各舌状部にあけられた取付孔16で外部部品に取り付けられるようになっている。
また、図3に示すように、前記内輪6の外周面にはカム面17が周方向に複数設けられ、これらの各カム面17と外輪7の内周円筒面との間に周方向両側で次第に狭小となる楔形空間18が形成されている。そして、各楔形空間18の周方向両側には保持器3の柱部9が挿入され、各楔形空間18には、一対のころ10が各ころ10を楔形空間18の狭小部に押し込むコイルばね11を挟んだ状態で配されている。
各クラッチA、Bは、上記のように各ころ10がコイルばね11の弾力で楔形空間18の狭小部に押し込まれているので、出力部材4に逆入力トルクが加えられても、回転方向後側のころ10が固定部材8に固定された外輪7および出力部材4と一体の内輪6に係合することにより出力部材4がロックされ、入力軸2a、2bおよび入力部材1a、1bも回転しない。
一方、入力部材1a、1bに入力トルクが加えられたときには、図4に示すように、入力部材1a、1bおよび入力軸2a、2bと一体に回転する保持器3の柱部9が回転方向後側のころ10をコイルばね11の弾力に抗して楔形空間18の広大側へ押し出すことにより、そのころ10と外輪7および内輪6との係合が解除されて、出力部材4がロック状態から解放される。そして、入力部材1a、1bおよび入力軸2a、2bがさらに回転して、入力軸2a、2bの係合部12と内輪6の係合穴13とが係合すると、入力軸2a、2bの回転が内輪6を介して出力軸5および出力部材4に伝達されるようになる(このとき、回転方向前側のころ10は楔形空間18の広大部に相対移動するので、外輪7および内輪6と係合することはない)。
この逆入力防止クラッチユニットは、上記の構成であり、第1クラッチAの入力部材1aと一体に回転する入力軸(軸部材)2aが第2クラッチBの入力部材1bおよび出力部材4を貫通し、両クラッチA、Bの入力部材1a、1bどうしおよび出力部材4どうしが軸方向で隣り合うようにしたうえ、両クラッチA、Bの外輪7を共通の固定部材8に固定したので、同じ構造の2つの逆入力防止クラッチを軸方向に並べる場合よりもコンパクト化することができ、良好な操作性が得られる。
また、固定部材8を両クラッチA、Bの出力部材4の間に配して、軸方向で隣り合う保持器3どうしの干渉を防止しているので、各クラッチA、Bの回転伝達動作もスムーズに行うことができる。
図5は第2の実施形態を示す。この実施形態は、第1実施形態の両クラッチA、Bの外輪7に代えて共通の外輪7’を用い、それに合わせて各クラッチA、Bの出力軸5および第1クラッチAの出力部材4の形状、固定部材8の形状と位置を変更したものである。
すなわち、前記外輪7’は、両クラッチA、Bの内輪6と径方向で対向する軸方向長さを有し、一端の外向きフランジがリベット15で固定部材8に固定され、他端の内向きフランジで第2クラッチBの内輪6、ころ10およびコイルばね11を軸方向に抜け止するようになっている。これに伴い、固定部材8は、単一の円筒状とされた第1クラッチAの出力軸5を回転自在に支持し、第1クラッチAの内輪6、ころ10およびコイルばね11を軸方向に抜け止するものとされている。また、第1クラッチAの出力部材4は出力軸5の外周に嵌まり込む内径を有するものに変更され、第2クラッチBの出力軸5は外側円筒部が軸方向に延長されたものとなっている。
この第2実施形態では、両クラッチA、Bの保持器3どうしの干渉のおそれはあるが、第1実施形態に比べて部品点数が少なく、組み立てやすいという利点がある。
図6は第3の実施形態を示す。この実施形態は、第1実施形態の入力側と出力側をほぼ入れ替えた構造としたものである。
すなわち、第1実施形態の両クラッチA、Bのプーリ状の出力部材4を円環状の入力部材21に代え、円筒状の入力部材1a、1bをプーリ状の出力部材24a、24bに代えるとともに、第1実施形態の入力軸2a、2bおよび出力軸5を出力軸25a、25bおよび入力軸22としている。そして、図示は省略するが、入力軸22の係合部26は内輪6の係合穴13の凹部に僅かな回転方向隙間をもって挿入され、出力軸25a、25bの嵌合部27は内輪6の係合穴13に隙間なく嵌まり込んでいる。また、第1実施形態と同じ保持器3が、入力軸22との連結のために第1実施形態と逆向きに配されている。その他の部分の構造および機能は第1実施形態と同じである。
この第3実施形態では、第1クラッチAの出力部材24aと一体に回転する出力軸(軸部材)25aが第2クラッチBの入力部材21および出力部材24bを貫通することになるが、両クラッチA、Bの入力部材21どうしおよび出力部材24a、24bどうしが軸方向で隣り合い、両クラッチA、Bの外輪7が共通の固定部材8に固定されているので、第1実施形態と同様、コンパクトで操作性も良い。
また、固定部材8は両クラッチA、Bの入力部材21の間に配されて、軸方向で隣り合う内輪6どうしおよびころ10どうしの干渉を防止するので、各クラッチA、Bの回転伝達動作も第1実施形態と同じくスムーズに行うことができる。
なお、上述した各実施形態では、径方向の最も内側に配される第1クラッチAの入力軸2a、22および出力軸5、25aも中空軸としている。これは、その中空部に摺動自在に嵌め込まれる支持部材を別の外部部品に固定することにより(図示省略)、この逆入力防止クラッチユニット全体をしっかり支持して、入出力部材に径方向荷重が作用してもスムーズなクラッチ動作が得られるようにするためである。したがって、入出力部材に径方向荷重が作用しないような場合は、第1クラッチの入力軸および出力軸を中実軸としてもよい。
また、出力部材は、各実施形態のようなプーリ状のものに限らず、その形状を用途に合わせて任意に変えられるし、固定部材の外部部品への取付手段も、その外部部品に合わせて任意に変更することができる。
1a、1b、21 入力部材
2a、2b、22 入力軸
3 保持器
4、24a、24b 出力部材
5、25a、25b 出力軸
6 内輪
7、7’ 外輪
8 固定部材
9 柱部
10 ころ
11 コイルばね
12、26 係合部
13 係合穴
14、27 嵌合部
17 カム面
18 楔形空間
A 第1クラッチ
B 第2クラッチ

Claims (6)

  1. 同一軸心のまわりに回転する入力部材と出力部材を備え、前記入力部材に入力トルクが加えられたときは入力部材の回転を前記出力部材に伝達し、前記出力部材に逆入力トルクが加えられたときは前記入力部材が回転しないようにする逆入力防止機能を有するクラッチを2つ同軸に配置した逆入力防止クラッチユニットにおいて、
    前記2つのクラッチは、一方のクラッチの入力部材または出力部材と一体に回転する軸部材が他方のクラッチの入力部材および出力部材を貫通し、両クラッチの入力部材どうしおよび出力部材どうしが軸方向で隣り合うように配置されていることを特徴とする逆入力防止クラッチユニット。
  2. 前記クラッチは、前記入力部材と出力部材との間に、入力部材の回転を僅かな角度遅れをもって出力部材に伝達するトルク伝達手段を設け、固定部材に固定した外輪の内側に配される内輪を前記出力部材と一体回転するように連結し、前記内輪の外周面にカム面を周方向に複数設けて、前記外輪の円筒面と内輪の各カム面との間に周方向で次第に狭小となる楔形空間を形成し、これらの各楔形空間にころとそのころを楔形空間の狭小部へ押し込む弾性部材を組み込み、前記各楔形空間の周方向両側に挿入される柱部を有する保持器を前記入力部材と一体回転するように連結したものであることを特徴とする請求項1に記載の逆入力防止クラッチユニット。
  3. 前記両クラッチの外輪を共通の固定部材に固定するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の逆入力防止クラッチユニット。
  4. 前記固定部材を、前記両クラッチの入力部材の間または出力部材の間に配したことを特徴とする請求項3に記載の逆入力防止クラッチユニット。
  5. 前記固定部材を、前記両クラッチの内輪、ころ、弾性部材および保持器を互いに隔離するものとしたことを特徴とする請求項4に記載の逆入力防止クラッチユニット。
  6. 前記両クラッチの外輪を一体に形成したことを特徴とする請求項3または4に記載の逆入力防止クラッチユニット。
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