JP6345221B2 - 一軸二舵システム - Google Patents

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Description

本発明は、一軸一枚のプロペラあるいは二枚のプロペラを同軸の前後に配置してそれぞれのプロペラを逆方向に回す二重反転プロペラの後方に、船体中心線から離れた位置に二枚の舵を配置した一軸二舵システムに関し、特に船舶の港内操船を容易に実現する舵形状に関する。
従来の一軸二舵システムとして特許文献1に開示された技術がある。特許文献1の技術は、一基の前進単一作動プロペラ推進器の後方に二枚の固定幾何学的断面の高揚力舵が用いられたシステムである。
特許文献1の技術では、プロペラ回転方向が変更されずに、二枚の高揚力舵の舵角が適宜組合せられることにより、船尾に360度の全方向に推力、すなわち、前進力、後進力、斜め力、真横力が出せる。また、バウスタスターが併用されると、真横移動、その場回頭といった港内での着岸、離岸に必要な操船ができる。
ここで、特許文献1には、高揚力舵の形状に関する詳細な記述はない。しかし、特許文献1の段落[0014]および図2、図3の実施例に開示されているように、高揚力舵が舵後端部の片側に、一般に「魚尾部」と言われる突起部分を備えていることが確認できる。
従来の一軸二舵システムとして特許文献2に開示された技術がある。特許文献2の技術は、請求項1に、「・・・魚尾後縁部からなる形状」と形状を限定した高揚力舵を採用したシステムである。
特許文献2の技術では、各舵の内側にフィンが適切な角度で設けられ、プロペラ旋回流がそのフィンに当たることで発生する揚力の前進方向成分を補助推進力として馬力低減が図られている。すなわち、特許文献2の請求項1では、魚尾部を持つ高揚力舵に内側フィンが設置されたものである。
なお、高揚力舵の形状は、特許文献2の段落[0003]で記述されている。魚尾後縁部は、「内舷側の魚尾後縁部(16、17)ほぼ直線」(特許文献2の図8参照)との記述から、片側魚尾部を備えている。このため、高揚力舵の形状は、非対称である。燃料消費量の削減効果を図る内側フィンは、特許文献2の図1の符号18、20を参照すると、一軸二枚プロペラにおいて、プロペラ回転流が舵間を素通りし、回転エネルギーのロスが一舵船に比べ大きくなることから、このようなフィンが必要であった。
従来の一軸二舵システムとして特許文献3、4に開示された技術がある。特許文献3、4の技術は、共に大型船用であり、魚尾形状を舵後端に持つ高揚力舵が用いられるシステムである。特許文献3、4の技術では、内側フィンおよびプロペラボスキャップに複数枚のフィンが付加され、燃料消費量の削減が図られている。
なお、特許文献3の技術は、舵が吊り舵型である。一方、特許文献4の技術は、舵がマリナー型である。特許文献3、4では、このような舵型の違いがある。
特開平06−064589号公報 特開2002−193187号公報 特開2003−26096号公報 特開2007−326502号公報
特許文献1〜4で使用する舵の水平断面形状は、舵後縁に魚尾部と称される外側に張り出した三角形状の張り出し部を設けていた。これにより、舵は、大きな舵力を出し、船舶の港内における着岸、離岸操船に必要な推力を二枚の舵における舵角の組合せで出している。しかしながら、航海中で舵角を取らない状態あるいは針路保持のために微小な当舵を取る状態においては、この舵後縁部に設けた三角形状の張り出し部により、前方から舵表面に沿って流れてくる流体に剥離現象が起こる。このため、この様な張り出し部を持たない従来の滑らかな後端形状を持つ通常舵に較べて非常に大きな舵抵抗が発生し、推進性能が悪化する要因となる。つまり、同一船速を出すための主機馬力が通常舵より大きくなり、燃料消費量が増加することになる。
つまり、一軸二舵システムは、港内にて、着岸、離岸時に必要な前後進の瞬時の切り替え、真横移動、その場での回頭といった優れた操船性能を発揮する。しかし、特許文献1〜4で使用される高揚力舵は、航海中の燃料消費量を犠牲にした技術と言える。
そこで、同程度の港内操船が可能な推力が船の全方位に対して出せ、かつ、航海中の燃料消費量が小さい舵形状、すなわち、航海中の燃料消費量が犠牲にならない優れた港内操船ができる舵が望まれている。
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、航海中の燃料消費量が犠牲にならずに優れた港内操船ができる一軸二舵システムを得ることを目的とする。
本発明の一軸二舵システムは、一基のプロペラと、前記プロペラの後方に船体中心線から離れた位置に配置された二枚の舵と、を備えた一軸二舵システムであって、前記舵の水平断面において、舵先端と前記舵先端の反対に位置する舵後端とを前記舵の中央部を通って結ぶ線を舵中心線と定義し、前記舵中心線の所定点と前記所定点から舵輪郭に至る前記舵中心線と直交する直線を引いたときの前記舵輪郭に交差する交点との2点間の距離を前記所定点における舵幅と定義したとき、前記舵輪郭のうち二枚の前記舵の非対面側である外舷舵輪郭は、前記外舷舵輪郭の前縁部が円弧状であり、前記前縁部からの前記舵幅が後方に向かって前記外舷舵輪郭を外方向に凸となる形状で増加して最大舵幅に達し、前記最大舵幅に達した前記舵幅が後方に向かって緩やかに減少しながら前記外舷舵輪郭を徐々に逆の曲率へと変化させて舵後端付近の点まで続き、前記舵後端付近の点から前記舵幅が後方に向かって増大せずに前記外舷舵輪郭を直線状で前記舵後端まで続き、前記舵後端の前記舵幅が有限幅を有し、前記舵中心線は、前記外舷舵輪郭が前記最大舵幅の位置から前方で二枚の前記舵の対面側である内側に向かうように、前記最大舵幅の位置から前方を前記内側に向かって偏倚させたものである。
本発明に係る一軸二舵システムによれば、航海中の推進性能の低下が抑えられ、且つ、停止時にほぼ近い港内操船において自由自在に操船可能な推力が船の全方位に対して与えられる。したがって、航海中の燃料消費量が犠牲にならずに優れた港内操船ができる。
本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの概略構成を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵型の概略構成をまとめて示す側面図であり、図2(a)が吊り舵型を示す図であり、図2(b)がマリナー型を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの一例の概略構成をまとめて示す図であり、図3(a)が一軸二舵システムを示す背面図であり、図3(b)が舵を図3(a)のA−A断面で示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの他の例の概略構成をまとめて示す図であり、図4(a)が一軸二舵システムを示す背面図であり、図4(b)が舵を図4(a)のB−B断面で示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの一例の舵を水平断面でまとめて示す説明図であり、図5(a)が後端偏倚量の最小、すなわち後端偏倚量が無い状態の舵を示す説明図あり、図5(b)が後端偏倚量を設けた状態の舵を示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの他の例の舵を水平断面でまとめて示す説明図であり、図6(a)が後端偏倚量の最小、すなわち後端偏倚量が無い状態の舵を示す説明図あり、図6(b)が後端偏倚量を設けた状態の舵を示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵における後端偏倚量の範囲を示すグラフである。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの一例の舵における舵後端部を示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの一例の舵における異なる舵後端部での舵の揚力計算結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの一例の舵における後端部の製造時の処理方法をまとめて示す説明図であり、図10(a)が舵の全体形状を示す説明図であり、図10(b)が図10(a)のC部の一例である後端部を示す拡大図であり、図10(c)が図10(a)のC部の他の例である後端部を示す拡大図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムのクラムシェル舵角で後進力が働く原理を従来技術と対比してまとめて示す図であり、図11(a)が舵幅を後方に向かって単調に増加させて減少させる対称翼舵である通常の舵形状の場合を示す図であり、図11(b)が後端に魚尾部を有する従来の舵形状の場合を示す図であり、図11(c)が本発明の実施の形態1に係る舵形状の場合を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの航海中の舵の後端部で発生する剥離渦を従来技術と対比してまとめて示す図であり、図12(a)が後端に魚尾部を有する従来の舵形状の場合を示す図であり、図12(b)が本発明の実施の形態1に係る舵形状の場合を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵について一軸一舵船での自航試験における舵抵抗を、通常翼型の左右対称舵と対比して示す図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵の形状を従来技術と対比させて示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵の要目を従来技術と対比させて示す相対比較図である。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵における船体が受けるクラムシェル舵角での後進力を従来技術と対比させて示すグラフである。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵における船体が受ける真横移動力を従来技術と対比させて示すグラフである。 本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システムの舵における船の主機馬力への舵の形状の影響を従来技術と対比させて示すグラフである。 本発明の実施の形態2に係る一軸二舵システムの舵を水平断面で示す説明図である。 本発明の実施の形態2に係る一軸二舵システムの舵に対する自航時の舵前縁への流れをまとめて示す図であり、図20(a)が舵前縁への流れ全体図であり、図20(b)が図20(a)のD部の舵前縁近傍に働く流体力を示す説明図である。
以下に、本発明に係る実施の形態について説明する。なお、図面の形態は一例であり、本発明を限定するものではない。また、各図において同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。さらに、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
[一軸二舵システムの全体構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の概略構成を示す図である。
図1に示すように、一軸二舵システム10は、一基のプロペラ11と、二枚の舵1、2と、を備える。
プロペラ11は、一軸一枚のプロペラである。なお、図示はしないが、プロペラ11は、二枚のプロペラを同軸の前後に配置してそれぞれのプロペラを逆方向に回す二重反転プロペラでもよい。
二枚の舵1、2は、プロペラ11の後方に、船体中心線C1から離れた位置に並列して配置される。
なお、以下では、舵1、2を説明する場合に、船体中心線C1に対して進行方向左側の舵1を例に挙げて説明する。
[一軸二舵システム10の舵型]
図2は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵型の概略構成をまとめて示す側面図であり、図2(a)が吊り舵型10Aを示す図であり、図2(b)がマリナー型10Bを示す図である。
図2(a)、(b)に示すように、実施の形態1の一軸二舵システム10では、一軸二舵船の舵型は、小型船舶によく用いられる吊り舵型10Aでもよく、大型船舶によく用いられるマリナー型10Bでもよく、舵型を問わず適用できる。すなわち、舵1は、吊り舵型10Aまたはマリナー型10Bとして船舶に取り付けられている。吊り舵型10Aでは、舵1は、舵軸12によって船体13に取り付けられ、プロペラ11の下流側に配置されている。マリナー型10Bでは、舵1は、舵軸12と船体13に取り付けられたラダーホーン14とによってプロペラ11の下流側に配置されている。
また、実施の形態1の一軸二舵システム10では、舵1を真横から見たときの形状が台形の舵あるいは矩形の舵などのように舵形状に依らずに適用できる。
[一軸二舵システム10の舵1の端板]
図3は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の一例の概略構成をまとめて示す図であり、図3(a)が一軸二舵システム10を示す背面図であり、図3(b)が舵1を図3(a)のA−A断面で示す説明図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の他の例の概略構成をまとめて示す図であり、図4(a)が一軸二舵システム10を示す背面図であり、図4(b)が舵1を図4(a)のB−B断面で示す説明図である。
舵1、2には、端板3が設けられている。すなわち、舵1、2の上端または下端のうち少なくとも一方に、舵1、2の外側または内側のうち少なくとも外側に飛び出した端板3を設けている。
図3(a)、(b)に示すように、端板3は、舵1、2の上端および下端の両方に、舵1、2の外側のみに飛び出してもよい。
図4(a)、(b)に示すように、端板3は、舵1、2の上端および下端の両方に、舵1、2の外側および内側の両方に飛び出してもよい。
なお、図3(a)、図4(a)に示す円形の一点鎖線は、プロペラ11の外側端の軌跡を示している。また、一点鎖線の直径は、プロペラ直径Dを示している。
[一軸二舵システム10の舵1]
図5は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の一例の舵1を水平断面でまとめて示す説明図であり、図5(a)が後端偏倚量の最小、すなわち偏倚量が無い状態の舵1を示す説明図あり、図5(b)が後端偏倚量を設けた状態の舵1を示す説明図である。
図6は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の他の例の舵1を水平断面でまとめて示す説明図であり、図6(a)が後端偏倚量の最小、すなわち偏倚量が無い状態の舵1を示す説明図あり、図6(b)が後端偏倚量を設けた状態の舵1を示す説明図である。
図5、図6に示すように、舵1の水平断面において、舵先端とこの舵先端の反対に位置する舵後端を舵1の中央部を通って結ぶ線を舵中心線C2と定義する。ここで、舵中心線C2は、直線、曲線、あるいは直線と曲線を組合せた線のいずれでもよい。舵中心線C2の所定点とこの所定点から舵輪郭に至る舵中心線C2と直交する直線を引いたときの舵輪郭に交差する交点との2点間の距離をこの所定点における舵幅と定義する。このとき、舵輪郭のうち二枚の舵1、2の非対面側を外舷舵輪郭と記す。外舷舵輪郭は、以下の形状を有している。
(1)外舷舵輪郭の前縁部e1が円弧状またはこれに類する形状である。
(2)前縁部e1の下流端P0からの舵幅が後方に向かって外舷舵輪郭を外方向に凸となる形状で増加して最大舵幅に達する増加部e2を有する。また、最大舵幅の位置をP1とする。P1は、舵1が舵軸12に支持された位置の前方、後方を問わない。
(3)P1で最大舵幅に達した舵幅が凸となる形状で後方に向かって緩やかに減少する減少部e3を有する。舵幅が緩やかに減少しながら外舷舵輪郭を徐々に逆の曲率へと変曲点P2を経て凹となる形状で変化させて舵後端付近の点P3まで続く。減少部e3は、最大舵幅の位置P1から変曲点P2までの範囲である。また、変曲点P2から舵後端付近の点P3までの範囲は、凹部e4である。
(4)舵後端付近の点P3から舵幅が後方に向かって増大せずに外舷舵輪郭を直線状またはこれに類する形状で舵後端P4まで続く舵後端部e5を有する。
(5)舵後端P4での舵幅が有限幅Wを有する。
(6)後端偏倚量(de)は、図5(a)、図6(a)に示す舵中心線C2が直線で作られた舵の後半部を図5(b)、図6(b)に示すような後半部を変形させた舵の後端と変形する前の後端との距離である。言い換えれば、図5(b)、図6(b)に示す舵中心線C2の後半部が直線でない舵の後端と、それと舵の各位置における舵幅が同じとなり舵中心線C2が直線である舵の後端(仮想後端と記す)との距離を後端偏倚量(de)とする。つまり、後端偏倚量(de)は、舵中心線C2を船体中心線C1と平行な直線とした場合の仮想後端と、偏倚させた舵中心線C2の後端と、の間の距離である。
一方、舵輪郭のうち二枚の舵1、2の対面側である内舷舵輪郭は、特に規定されない。
図5に示すように、内舷舵輪郭は、外舷舵輪郭と同じ舵幅(舵中心線C2からの直交方向の最短距離)でもよい。また、図6に示すように、内舷舵輪郭は、単調に舵幅が増加し、単調に減少する通常舵の形状を採用したもののように外舷舵輪郭と異なってもよい。このように、内舷舵輪郭は、港内操船時の舵力発生には無関係なので、推進性能に悪影響を与えない形状であればどのような形状でも問題ない。
図5(b)、図6(b)の実線で示す舵1のように、舵中心線C2は、外舷舵輪郭が最大舵幅の位置から後方で外舷側に凹となる形状になるように、最大舵幅の位置P1から後方を外側に向かって偏倚させてもよい。
また、図5(a)、図6(a)の実線で示す舵のように、舵中心線C2は、最大舵幅の位置P1から後方を偏倚させなくてもよい。
ここで、図5(a)の実線で示す舵をB0舵1Aと称する。また、図5(b)の実線で示す舵をB1舵1Bと称する。
[後端偏倚量の範囲]
図7は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵1における後端偏倚量の範囲を示すグラフである。図7では、後端偏倚量(de)を、舵先端から舵後端までの全長である舵コード長(c)で除した比であるde/cを後端偏倚比(de/c)として横軸に示す。後端偏倚量(de)の存在する舵の馬力BHPを後端偏倚量(de)が0.0のB0舵の馬力BHP(B0舵)で除した比である馬力比BHP/BHP(B0舵)を縦軸に示す。
このとき、後端偏倚量の範囲は、後端偏倚量(de)を舵コード長(c)で除した比である後端偏倚比(de/c)が、0.0≦de/c≦0.15の範囲を満たすようにする。
ここで、舵コード長(c)は、後述で用いる図8に示すような舵先端から舵後端までの全長である。
B0舵1Aは、後端偏倚比(de/c)が0.0である。B1舵1Bは、後端偏倚比(de/c)が0.08である。後述で用いる図16、図17より、クラムシェル舵角での後進力と真横移動力との流体力は、B0舵1AとB1舵1Bとを対比すると、後端偏倚量が大きい程大きく船体に与える。しかし、後述で用いる図18に示す船の馬力は、B0舵1AとB1舵1Bとを対比すると、1対1.006という比になって0.6%の差があり、後端偏倚量が大きいと悪くなる傾向がある。
図7には、B0舵、B1舵1Bの馬力BHPを、B0舵1Aの馬力BHP(B0舵)を基準として示す。舵1の後端偏倚量の変化がそれ程大きくない場合には、後端偏倚量による船の馬力変化は、プロットした点を線形補間したほぼ図中の実線の直線に沿って動くと考えてよい。船の馬力増は、近年の省エネルギー化傾向に鑑みると、1%程度の悪化でも問題となる場合が多い。この観点に鑑みると、B1舵1BのB0舵1Aに対する馬力増加量の2倍とした1.2%増が推進性能面から考慮される性能劣化の上限と考えられる。そのため、後端偏倚比(de/c)の上限は、図7のB0舵1Aに対する馬力増加量が1.2%増加する値である1.012に基づき、0.15と規定される。これにより、後端偏倚比(de/c)が0.0≦de/c≦0.15の範囲に規定される。
[舵後端部の範囲]
図8は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の一例の舵1における舵後端部e5を示す説明図である。
図8に示すように、外舷舵輪郭において、後半部の舵後端付近の点P3から舵後端P4までの舵後端部e5である直線部を舵後端部長(ds)と定義する。
このとき、舵後端付近の点P3から舵後端P4までの舵後端部e5の範囲は、舵後端部長(ds)を舵コード長(c)で除した比である舵後端部長比(ds/c)が、3%≦ds/c≦12%の範囲を満たすようにする。
なお、図5に示すB0舵1AおよびB1舵1Bでは、舵後端部長比(ds/c)は5%である。
図9は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の一例の舵1における異なる舵後端部e5での舵1の揚力計算結果を示すグラフである。
舵後端部長比(ds/c)が5%のB0舵1Aと同様に、舵後端部長比(ds/c)が0%の舵(B0−0舵)を作成した。また、舵後端部長比(ds/c)が10%の舵(B0−10舵)を作成した。また、ここでは、B0舵1Aを舵後端部長比(ds/c)が5%の舵(B0−5舵)と称する。そして、ある迎角を持った一様流がそれぞれの舵1に当たる場合の揚力をCFD計算で求めた。舵1の一様流が当る側の舵表面の流れは、後半部の凹面形状部(凹部e4)において凸面形状を有する通常翼型より流速が大きく低下するだけでなく、その後に続く舵後端部分の直線部(舵後端部e5)との不連続な境界にさしかかると不連続点とその後の直線部の影響で流れの向きが強制的に偏向され、流速は更に低下する。流速が低下すると流体圧力が上昇し舵表面を押す力が大きくなるため、舵力(すなわち揚力)は増大する。これが、舵後端部分に直線部(舵後端部e5)を設けた理由である。この計算の目的は、直線部(舵後端部e5)の長さと舵力(揚力)の関係を明確にしてその有効性を評価することにある。
図9に揚力係数とその比率の計算結果を示す。図中、B0−5舵はB0舵1Aを示している。直線部(舵後端部e5)の無いB0−0舵の揚力を基準にすると、直線部(舵後端部e5)が5%のB0−5舵は、揚力が4%増となっている。直線部(舵後端部e5)が10%のB0−10舵は、揚力が5%増となっている。この結果から、B0−5舵およびB0−10舵の直線部(舵後端部e5)は、同程度の効果を舵に与える。したがって、港内操船の大舵角時でも、この二種の舵は同等の流体力を船に与えられる。有効な直線部(舵後端部e5)の長さの範囲は、B0−0舵からの揚力増加分がB0−5舵の70%となる長さを下限と考えると、その長さは、舵コード長(c)の3%と算出される。これは、横軸を直線部(舵後端部e5)/舵コード長(c)とし、縦軸を揚力係数/B0−0舵の揚力係数としたグラフにて、上記3種の舵を二次式近似して求められる。上限については、直線部(舵後端部e5)の長さが10%を超えても揚力比は多少上昇する。しかし、舵製作時の構造強度の問題から、10%を大きく上回ることが難しいため、12%を上限と規定した。
[舵後端の処理]
図10は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の一例の舵1における舵後端部e5の製造時の処理方法をまとめて示す説明図であり、図10(a)が舵1の全体形状を示す説明図であり、図10(b)が図10(a)のC部の一例である舵後端部e5を示す拡大図であり、図10(c)が図10(a)のC部の他の例である舵後端部e5を示す拡大図である。
図10(b)、(c)に拡大して示すように、舵後端での舵幅は、少なくとも外舷舵輪郭の有限幅Wを有する。舵後端の製造時の処理は、図10(b)のように舵板4と角柱5とを溶接してもよい。また、舵後端の製造時の処理は、図10(c)のように舵板4と円柱6とを溶接してもよい。つまり、舵後端の製造手段(工作法)は選ばない。
[実施の形態1の作用]
[港内操船に必要な流体力発生作用]
まず、港内操船に必要な流体力発生に関して述べる。
一軸二舵船では、一軸一舵船では不可能な操船法がある。
一つ目は、プロペラ11を船が前進方向に進む回転方向のまま、二つの舵1、2が外側に開かれることで、舵角が90度近傍になる角度から、船体13に後進力が与えられる。
二つ目は、舵1、2のうち、一方の舵角が100度程開かれ、もう片方の舵角が70度近傍まで開かれると、船体13に働く前後力がゼロとなり、横力のみが発生する。横力は、船尾部にある舵1、2で発生するため、船体13には回頭モーメントが働く。しかし、船体船首部付近に横推力発生機(バウスラスタ)が設けられて作動することで、回頭モーメントが消え、船は真横に移動する。これによって、着岸、離岸が他の装置に比べてスムーズで迅速な港内操船ができる。
上記二つの操船を可能にするためには、一つ目の操船に必要な流体力が発生できれば、二つ目の港内操船が可能な流体力が発生できる。なぜなら、二つの操船に必要な流体力は、舵後端付近で舵前方から来る流体の流れを大きく変えることが可能かどうかにかかっているからである。
したがって、一つ目の操船時の舵流れについて、次に説明する。
図11は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10のクラムシェル舵角で後進力が働く原理を従来技術と対比してまとめて示す図であり、図11(a)が舵幅を後方に向かって単調に増加させて減少させる対称翼舵である通常の舵101の形状の場合を示す図であり、図11(b)が後端に魚尾部を有する従来の舵102の形状の場合を示す図であり、図11(c)が本発明の実施の形態1に係る舵1の形状の場合を示す図である。
図11(a)〜(c)では、舵角90度で二枚の舵1、2が左右に開かれた状態の舵表面付近の流れが示されている。図11(a)〜(c)では、船体中心線C1より左側のみを表している。
図11(a)に示す通常舵101では、舵後半部は、舵幅が単調に減少して行くため、舵表面に近傍の流れの向きを変化させることができない。このため、後進力は、発生しない。90度以上の舵角にした場合でも、後進力は、微小である。このため、港内操船を目的とした一軸二舵船用舵には向かない。
図11(b)に示す特許文献1〜4の従来技術の舵102では、後端部に魚尾部が形成されているために窪みができる。舵表面の流れは、その窪みで流速が落ち、流体圧力が高くなる、いわゆる、よどみ領域Rができる。この圧力が高いよどみ領域Rは、流体の流れの向きを前方へと押し出す働きがある。この効果と後端部の魚尾部の傾きの効果とが相乗して、舵後端付近で流れが大きく前方へ向かわせられる。このため、船が前進する推力を発生するプロペラ回転においても、船を後進させる流体力が発生させられる。
図11(c)に示す実施の形態1に係る舵1では、舵後半部の舵形状は、前方に向かって凸形状から凹形状へと変わり、舵後端ではほぼ平行な直線部(舵後端部e5)が存在する。舵表面を流れてきた流体は、凹形状の凹面で流速が低下し、滑らかな凹面と不連続に繋がる直線部に差し掛かると、不連続点の効果で流れが急激に遅くなり、よどみ領域Rができる。よどみ領域Rは、上述の通り流れを前方に押し出す効果がある。さらに、舵後半部は、緩やかではあるが前方に凹形状であるため、流れを前方に偏向する効果があり、よどみ領域Rとの相乗効果で流れをより前方に押し出すことになる。
[推進性能の改善作用]
図12は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の航海中の舵1の後端部で発生する剥離渦を従来技術と対比してまとめて示す図であり、図12(a)が後端に魚尾部を有する従来の舵102の形状の場合を示す図であり、図12(b)が本発明の実施の形態1に係る舵1の形状の場合を示す図である。
舵抵抗の大小は、船の推進性能に影響し、馬力増の大きな要因である。
図12(a)に示す特許文献1〜4の従来技術の舵102では、舵後端の魚尾部が突出して舵後端が下流側に広がりを持つ幅になっている。このため、舵前方からの流れが剥離を起こし、舵後端の下流側にて大きな渦が発生し、舵抵抗が大きくなる。
一方、図12(b)に示す実施の形態1に係る舵1では、船の航海中にあっては、舵抵抗が最も小さくなる舵角に設定される。舵1の後端は、少なくとも舵後端の外舷舵輪郭の舵幅として有限幅Wを有している。しかし、舵1は前方から滑らかに形状が変化し、且つ、舵後端部e5は下流側に広がりを持たないため、流れは舵後端で広がることはない。また、図5(b)に示す舵の内舷舵輪郭の舵幅は、外舷舵輪郭と同じため、内舷舵表面に沿う流れも外舷舵表面と同様に舵後端では広がらない。図6(b)に示す舵の内舷舵輪郭は、単調に増減する通常翼形状のため、舵後端で流れが広がることはない。したがって、内舷舵輪郭を適切に選ぶことで舵1の後端下流側に発生する渦は小さいものとなるため、舵抵抗は通常の翼型を持つ舵とほぼ同じになる。
上記のように、実施の形態1に係る舵の抵抗増加が通常の翼型を持つ舵とほぼ同じであることを確認するため、一軸一舵船の自航試験を行った。一軸一舵船の自航試験は、舵幅が後方に向かって単調に増加して減少する通常翼型の左右対称舵と、実施の形態1に係る外舷舵輪郭の舵形状を使用した左右対称舵(図5(a)と同形状舵)と、を作成して行った。
図13は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵1について一軸一舵船での自航試験における舵抵抗を、通常翼型の左右対称舵と対比して示す図である。
図13には、一軸一舵船の自航試験を行い計測された舵抵抗を比較し、結果を示したものである。実施の形態1に係る舵1の舵抵抗は、通常舵と同等かそれ以下となり、船舶の推進性能が劣化しないと分かった。
[実施の形態1の検証]
[港内操船に必要な流体力の検証]
発明者らは、船体13がプロペラ回転方向を変更することなく後進したり、真横移動したりするための船体13に働く流体力を実験によって確認した。港内操船性能が重要視される内航船の模型船に一軸二舵システム10を搭載した。そして、検証する後進力は、模型船が停止状態でプロペラ11を前進方向の推進力を出す回転方向に回したままで、双方の舵における舵角を外舷側に105度開き、この状態で船体13が受ける後進力を計測した。また、検証する真横移動力は、右舷舵を外舷側に105度開き、左舷舵を外舷側65度〜70度の範囲で前進力が発生しない角度に開き、この状態で真横移動力を計測した。この時、舵の上端と下端には外側に張り出した端板3を取り付け従来技術と比較できるようにした。船体13の推進装置は、プロペラ11を同軸上に二枚前後に配置し、それぞれ逆方向に回すことで省エネルギー化を図る二重反転プロペラと呼ばれる装置を使用した。
図14は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵の形状を従来技術と対比させて示す説明図である。
図15は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵の要目を従来技術と対比させて示す相対比較図である。
実験に用いた舵は以下の四種類である。
図14には、四種類の舵の形状が示されている。図15には、四種類の舵における各舵の要目がA0舵102Aの寸法を基準にして相対比較して示されている。
A0舵102A:特許文献1〜4の従来技術の舵形状であり、標準サイズの二舵システム
A1舵102B:特許文献1〜4の従来技術の舵形状であるが、A0舵102Aより短い舵コード長(c)を持つ舵の二舵システム
B0舵1A:実施の形態1に係る舵形状であり、後端偏倚量がゼロ(de/c=0)、舵コード長(c)をA0舵102AとA1舵102Bとの中間の長さに設定した舵を使用した二舵システム
B1舵1B:実施の形態1に係る舵形状であり、後端偏倚量を有しており、後端偏倚比de/c=0.08であり、舵コード長(c)はB0舵1Aと同じ長さに設定した舵を使用した二舵システム
なお、B0舵1AおよびB1舵1Bの舵後端部e5である直線部の長さは、舵コード長(c)の5%に設定している。
図16は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵における船体13が受けるクラムシェル舵角での後進力を従来技術と対比させて示すグラフである。
図17は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵における船体13が受ける真横移動力を従来技術と対比させて示すグラフである。
図16、図17では、横軸は、舵全開幅比、すなわち、左右の舵を舵角90度で外側に開いた時の一方の舵後端から他方の舵後端までの距離をA0舵102Aのその状態の距離で除した比である。縦軸は、船体13が受ける流体力をプロペラ11が発生する推力で除した比をパーセント表示したものである。
また、A1舵102Bについて図中の横軸0.749の位置にプロットされた値は、A1舵102Bが他の舵と較べ舵高さが小さいため、その影響の修正として流体力に他の舵における舵高さとの比、すなわち、1/0.865=1.156を乗じたものを示している。
図16、図17に示すように、図中でA0舵102AとA1舵102Bとを結んだ破線は、破線上に相当する舵全幅を持つ特許文献1〜4の従来技術の舵形状の舵が発生する流体力に当たる。
B0舵1Aは、図16のようにクラムシェル舵角での後進力が破線よりやや上方にあり、図17のように真横移動力が破線よりやや下方にある。このことから、従来技術で同じ舵全開幅を持つ舵と同等の流体力を発生していることになる。B1舵1Bは、図16のようにクラムシェル舵角での後進力が破線およびB0舵1Aよりも上方にあり、図17のように真横移動力がB0舵1Aとは反対に破線より上方にある。このように、B1舵1Bは、従来技術より大きな流体力が発生している。このことから、B0舵1A、B1舵1Bは、従来技術の舵と同等あるいはそれ以上の流体力を発生する優れた舵である。そのため、これらB0舵1A、B1舵1Bを装備した船の港内操船性能は、従来技術の舵を装備した船より向上することになる。
[推進性能の検証]
発明者らは、A0舵102A、A1舵102B、B0舵1A、B1舵1Bを上述の模型船に装備し、推進性能試験を行い、実船相当の主機馬力を算出して比較した。実験に当たっては、各々の舵について推進性能が最良となる最適舵角を調査し、その状態で試験を実施した。B0舵1A、B1舵1Bは、二枚の舵1、2の後端を船体中心側に振るように舵角を3度〜5度切った状態だった。この状態を一般にテーインボードと呼ぶ。A0舵102A、A1舵102Bについても最適舵角を調査したが、推進性能は初期にセットされた舵角0度時と有意な差はなかった。
図18は、本発明の実施の形態1に係る一軸二舵システム10の舵における船の主機馬力に及ぼす舵形状の影響を従来技術と対比させて示すグラフである。
図18では、推定した主機馬力がA0舵102Aの馬力を基準にして主機馬力比として示されている。A1舵102Bは、A0舵102Aと同形状の断面を持つが大きさが小さいため、主機馬力比が0.989となって1.1%馬力減となった。B0舵1A、B1舵1Bは、A0舵102AとA1舵102Bとの中間の大きさにもかかわらず、主機馬力比がそれぞれ0.953、0.959となってこれらA0舵102AおよびA1舵102Bより小さくなり、A0舵102Aよりそれぞれ4.7%、4.1%馬力減となった。これにより、本発明の実施の形態1に係る舵形状は、同一船速で航海するに必要な主機馬力を低減でき、推進性能が従来技術の舵形状より良いことを表している。
[船の推進装置について]
上述の実験結果は、二重反転プロペラを推進器の模型船を使用して計測した結果ではあるが、通常の一枚プロペラを有した船に対しても有効である。
クラムシェル舵角での後進力、真横移動力は、プロペラ11によって増速された船体長手方向、すなわち船体中心線C1に平行な流れが舵表面に当たって偏向されることで発生する。このため、プロペラ後流に後出される旋回流の回転方向における流体運動の影響は、二次的な問題であり結果に対する影響は微小である。ここで、二次的に影響は微小であると述べた理由は、船の舵力と操船性を取り扱う船舶操縦性能分野では、舵力の推定に船体長手方向、すなわち船体中心線C1に平行な方向の流体速度成分のみを考慮して実用上全く問題ない舵力を得ているからである。
推進性能に関しては、二重反転プロペラと通常の一枚プロペラでは、回転流の有無で船としての推進効率が大きく異なり、二重反転プロペラの方が格段に良いことはよく知られている。一枚プロペラによって後出される旋回流の大部分は、二舵の間を素通りする。その結果、旋回流エネルギーのロスが発生する。しかし、旋回流エネルギーのロスが舵断面形状の違いによってそのロス分が大きく変化することはなく、上記した推進性能の改善効果の結果に影響しない。したがって、図12(b)に示すように舵後端での流れの剥離が小さく舵抵抗が小さい本発明の実施の形態1に係る舵形状の優位性は、変わらない。
[実施の形態1の効果]
実施の形態1によれば、一軸二舵システム10は、一基のプロペラ11を備えている。一軸二舵システム10は、プロペラ11の後方に船体中心線C1から離れた位置に配置された二枚の舵1、2を備えている。舵1の水平断面において、舵先端と舵先端の反対に位置する舵後端P4とを舵1、2の中央部を通って結ぶ線を舵中心線C2と定義する。舵中心線C2の所定点とこの所定点から舵輪郭に至る舵中心線C2と直交する直線を引いたときの舵輪郭に交差する交点との2点間の距離をこの所定点における舵幅と定義する。このとき、舵輪郭のうち二枚の舵1、2の非対面側である外舷舵輪郭は、以下のように特定される。外舷舵輪郭の前縁部e1が円弧状またはこれに類する形状である。前縁部e1からの舵幅が後方に向かって外舷舵輪郭を外方向に凸となる形状で増加して最大舵幅に達する。最大舵幅に達した舵幅が後方に向かって緩やかに減少しながら外舷舵輪郭を徐々に逆の曲率へと変化させて舵後端付近の点P3まで続く。舵後端付近の点P3から舵幅が後方に向かって増大せずに外舷舵輪郭を直線状またはこれに類する形状で舵後端P4まで続く。舵後端P4の舵幅が有限幅Wを有する。
この構成によれば、航海中の推進性能の低下が抑えられ、且つ、停止時にほぼ近い港内操船において自由自在に操船可能な推力が船体13の全方位に対して与えられる。したがって、航海中の燃料消費量が犠牲にならずに優れた港内操船ができる。
舵中心線C2は、外舷舵輪郭が最大舵幅の位置P1から後方で外方向に凹となる形状になるように、最大舵幅の位置P1から後方を外側に向かって偏倚させている。
この構成によれば、クラムシェル舵角での後進力と真横移動力とは、後端偏倚量が大きい程大きく船体13に与えられる。
舵中心線C2を持つ舵と同じ舵幅で構成された舵輪郭を持った舵中心線C2を直線とした仮想の舵の後端と、舵中心線C2を持つ舵の後端と、の間の後端偏倚量の範囲は、後端偏倚量(de)を舵コード長(c)で除した比である後端偏倚比(de/c)が、0.0≦de/c≦0.15の範囲を満たしている。
この構成によれば、後端偏倚量の範囲は、クラムシェル舵角での後進力と真横移動力とが最低限船体13に与えられる下限から、後端偏倚量が大きくて流体力が大きく船体13に与えられるが馬力増加量が推進性能面から性能劣化する上限までの範囲に規定できる。
舵後端付近の点P3から舵後端P4までの舵後端部e5の範囲は、舵後端部長(ds)を舵コード長(c)で除した比である舵後端部長比(ds/c)が、3%≦ds/c≦12%の範囲を満たしている。
この構成によれば、舵後端部e5の範囲は、少なくとも揚力増加が得られる下限から、舵製作時の構造強度の問題から制限される上限までの範囲に規定できる。
舵1の上端または下端のうち少なくとも一方に、舵1の外側または内側のうち少なくとも外側に飛び出した端板3を設けている。
この構成によれば、操舵性能が向上できる。
舵1は、吊り舵型10Aまたはマリナー型10Bとして船舶に取り付けられている。
この構成によれば、舵1が従来からのシステムに適用できる。
実施の形態2.
実施の形態2では、その特徴部分のみを説明し、その他の実施の形態1と同様な構成の説明は省略する。
本発明の実施の形態1に係る舵形状を用いた一軸二舵船は、実施の形態1で述べたように二枚の舵1、2の舵角を3度〜5度のテールインボードにした状態が推進性能のために最も良好だった。つまり、テールインボード状態で舵抵抗が最小になったためである。しかし、舵抵抗を増加させる要因は、図12を用いて説明した舵後端部での流れの剥離の大小の他に、舵1、2に流れ込む流れが舵前縁付近に対して流入角を持った場合に舵前縁付近で発生する揚力、いわゆる前縁揚力の船体中心線C1に平行な船体長手方向成分がある。これが船体後方の向きに働けば舵抵抗が増加し、船体前方に働けば推進力となって舵抵抗が減少する。そのため、舵後端部の流れの剥離を最小にする最適舵角以外を選んだ場合に、舵前縁部の揚力による成分が最小になることがある。そこで、実施の形態2では、舵前縁部への流入角を揚力による舵抵抗成分を最小にするか、あるいは向きを前方に変えて推進力とするために、舵前縁部付近の舵形状を変える。
[一軸二舵システムの舵]
図19は、本発明の実施の形態2に係る一軸二舵システム10の舵1Cを水平断面で示す説明図である。
図20は、本発明の実施の形態2に係る一軸二舵システム10の舵1Cに対する自航時の舵前縁への流れをまとめて示す図であり、図20(a)が舵前縁への流れ全体図であり、図20(b)が図20(a)のD部の舵前縁近傍に働く流体力を示す説明図である。
図19には、実線で示すB2舵1Cとして、破線で示すB0舵1Aの最大幅位置P1より前方にある舵形状の舵中心線C2を舵後半部と逆に偏倚させた舵形状が示されている。舵前縁における舵中心線C2の偏倚量を先端偏倚量(df)と定義する。B2舵1Cの舵後半部は、B1舵1Bと同様である。図20(a)には、プロペラ11の後方に置かれた舵1Cの前縁付近に流れ込む流れの全体が示されている。図20(a)には、破線で示すB1舵1Bと実線で示す前半部を変更したB2舵1Cとが示されている。図20(b)には、図20(a)のD部の舵前縁付近を拡大したものが示されている。
B1舵1Bで最適舵角を決定したとしても、船体中心線C1から外れた位置に設置されている一軸二舵システム10の舵前縁に流入する流れの向きは、船尾形状の影響を受けて船型によって変わる。船前縁への流れが舵1Bの内側に当たる場合を想定する。図20(b)に示すように、B1舵1Bの舵中心線C2の延長線l1と流入速との角度は、B1舵1Bへの流入角α1である。B2舵1Cの舵中心線C2の延長線l2と流入速との角度は、B2舵1Cへの流入角α2となる。流入角α1と流入角α2とは、流入速に対して相対的に逆側となり、B1舵1Bでは舵内側に流れが当たり、B2舵1Cでは舵外側に流れが当たる。この時、B1舵1Bの破線で示す揚力L1は、流れと垂直で舵1Bの外側の向きに生じ、その船体中心線C1に沿った長手方向成分D1は、後方への引っ張り力となって舵抵抗となる。
しかし、B2舵1Cは、B1舵1Bの前半部分を偏倚させることで、流入角α2が流入角α1とは流入速に対して逆側となるため、舵1Cに内向きかつ進行方向に成分を持つ実線で示す揚力L2が生じる。揚力L2の船体中心線C1に平行な船体長手方向成分は、前方への引っ張り力となって推力T2となる。
すなわち、舵前半部を適切に内側へ偏倚させることで、舵抵抗が減少させられる。
[実施の形態2の効果]
実施の形態2によれば、舵中心線C2は、外舷舵輪郭が最大舵幅の位置P1から前方で二枚の舵1、2の対面側である内側に向かうように、最大舵幅の位置P1から前方を内側に向かって偏倚させている。
この構成によれば、船体13から下流へ船体中心線C1の方向に傾いて舵前縁への流入する流れが舵1Cの外側に当たり、舵1Cに内向きかつ進行方向成分を持つ揚力が生じ、推進力となる。これにより、舵抵抗が減少させられる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 舵、1A B0舵、1B B1舵、1C B2舵、2 舵、3 端板、4 舵板、5 角柱、6 円柱、10 一軸二舵システム、10A 吊り舵型、10B マリナー型、11 プロペラ、12 舵軸、13 船体、14 ラダーホーン、101 舵、102 舵、102A A0舵、102B A1舵。

Claims (6)

  1. 一基のプロペラと、前記プロペラの後方に船体中心線から離れた位置に配置された二枚の舵と、を備えた一軸二舵システムであって、
    前記舵の水平断面において、舵先端と前記舵先端の反対に位置する舵後端とを前記舵の中央部を通って結ぶ線を舵中心線と定義し、前記舵中心線の所定点と前記所定点から舵輪郭に至る前記舵中心線と直交する直線を引いたときの前記舵輪郭に交差する交点との2点間の距離を前記所定点における舵幅と定義したとき、
    前記舵輪郭のうち二枚の前記舵の非対面側である外舷舵輪郭は、
    前記外舷舵輪郭の前縁部が円弧状であり、
    前記前縁部からの前記舵幅が後方に向かって前記外舷舵輪郭を外方向に凸となる形状で増加して最大舵幅に達し、
    前記最大舵幅に達した前記舵幅が後方に向かって緩やかに減少しながら前記外舷舵輪郭を徐々に逆の曲率へと変化させて舵後端付近の点まで続き、
    前記舵後端付近の点から前記舵幅が後方に向かって増大せずに前記外舷舵輪郭を直線状で前記舵後端まで続き、
    前記舵後端の前記舵幅が有限幅を有し、
    前記舵中心線は、前記外舷舵輪郭が前記最大舵幅の位置から前方で二枚の前記舵の対面側である内側に向かうように、前記最大舵幅の位置から前方を前記内側に向かって偏倚させた一軸二舵システム。
  2. 前記有限幅を有する直線状の部分の前記舵後端は、二枚の舵板を接合した柱部を有し、
    前記柱部は、角柱または円柱である請求項1に記載の一軸二舵システム。
  3. 前記舵中心線は、前記外舷舵輪郭が前記最大舵幅の位置から後方で外方向に凹となる形状になるように、前記最大舵幅の位置から後方を外側に向かって偏倚させた請求項1または2に記載の一軸二舵システム。
  4. 前記舵中心線を持つ前記舵と同じ舵幅で構成された舵輪郭を持った舵中心線を直線とした仮想の舵の後端と、前記舵中心線を持つ前記舵の後端と、の間の後端偏倚量の範囲は、前記後端偏倚量(de)を舵コード長(c)で除した比であるde/cが、0.0≦de/c≦0.15の範囲を満たす請求項に記載の一軸二舵システム。
  5. 前記舵の上端または下端のうち少なくとも一方に、前記舵の前記外側または前記内側のうち少なくとも前記外側に飛び出した端板を設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の一軸二舵システム。
  6. 前記舵は、吊り舵型またはマリナー型として船舶に取り付けられた請求項1〜5のいずれか1項に記載の一軸二舵システム。
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