JP6340813B2 - 水処理膜の洗浄剤及び洗浄方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水処理分野で使用される逆浸透膜等の水処理膜、特に芳香族ポリアミド系逆浸透膜が汚染されて透過流束(フラックス)、場合によって更に脱塩率が低下した際に、その性能を効果的に回復させる洗浄剤及び洗浄方法に関する。
本発明はまた、この洗浄剤及び洗浄方法で排出される洗浄排水を、水処理膜供給水の前処理工程の凝集剤として有効利用する水処理方法と水処理装置に関する。
本発明で洗浄対象とする水処理膜としては、逆浸透膜(以下「RO膜」と記す。)に限らず、ナノ濾過膜(以下「NF膜」と記す。)、限外濾過膜(以下「UF膜」と記す。)、精密濾過膜(以下「MF膜」と記す。)が挙げられる。
近年、全世界的な水供給不足の対策として、RO膜を用いた、海水、かん水の淡水化、排水回収が広く行われるようになった。
RO膜としては、開発当初はテトラ酢酸セルロース素材のRO膜(以下「TCA膜」と記す。)が用いられていたが、最近では、低圧運転が可能で、脱塩性能も優れる芳香族ポリアミドを素材とするRO膜(以下「ポリアミド膜」と記す。)が主流のRO膜となっている。
TCA膜では、膜汚染、特に微生物増殖に伴うファウリング(スライム汚染)を防止するため、モジュール内に低濃度の塩素を残留させて、汚染防止を図っている。
一方、ポリアミド膜は、微量の塩素の酸化力でも耐性に欠ける。このため、微生物増殖に伴うスライム汚染の防止のために、酸化力の比較的小さい各種のスライムコントロール剤が使用されている。
しかしながら、これらのスライムコントロール剤で、完全にスライム汚染を防止することは困難である。このため、フラックスが基準値を下回ったら、あるいは、数ヶ月の運転毎に化学洗浄を行ってフラックスを回復させている。
スライム汚染したポリアミド膜の洗浄には、一般的に水酸化ナトリウム(NaOH)の希薄水溶液が用いられている。洗浄液のpHとしては高い方が洗浄効果に優れるが、ポリアミド膜のアルカリ耐性から、ポリアミド膜の種類にもよるが、通常pH11〜13の範囲で洗浄が行われている。
pHの理論計算上、pH11,12,13はそれぞれ、NaOH濃度として40mg/L、400mg/L、4000mg/Lに相当する。
ポリアミド膜の汚染物質としては、微生物スライムの他に、界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、電子工場の排水や下水処理水に含まれ、RO膜分離処理に先立ち前処理を行っても除去し難いため、その前処理水をRO膜分離処理する際に汚染物質となる。
一方、無機系の汚濁成分としては、RO膜に供給される水(以下「RO膜給水」と記す。)の前処理で使用される鉄塩やアルミニウム塩等の凝集剤に起因する鉄、アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウムスケールがある。
鉄、アルミニウム、炭酸カルシウムのスケール除去には、塩酸、あるいはシュウ酸などの酸が用いられ、この場合、アルカリ洗浄と酸洗浄の両方を行うことになる。
ただし、炭酸カルシウムスケールはRO膜給水の水質から、事前に予測計算できることから、必要なスケール防止剤の使用と濃縮率(回収率)を適正化した運転を行うことで防止することができる。
また、無機凝集剤に起因する鉄やアルミ、及びシリカは、前処理の適正化により、ポリアミド膜への持ち込みそのものを防止することができる。
従って、ポリアミド膜の洗浄剤には、第一に生物代謝物(スライム)による汚染に対応できるものが、第二に界面活性剤による汚染に対応できるものが必要とされる。
前述のように、従来、ポリアミド膜の洗浄には、NaOHが使用されている。
NaOHは、RO膜汚染物質である多糖類のカルボキシル基を乖離させ、その溶解性を増加させて、洗浄を推進する。
従って、多糖類がカルボキシル基を有しない、あるいは微量しか有しない、中性多糖類の場合は、NaOHの洗浄能力は少ないか、又は殆ど期待できない。
その他、洗浄効果を助力する薬剤としては、以下の物質が知られており、実際に使用されている。
・界面活性剤(アニオン性のアルキルベンゼンスルホン酸など)
・キレート剤
・ヘキサメタリン酸ナトリウム(鉄分散効果)
・エリソルビン酸などの鉄還元剤
・プロピレングリコール等のポリオール類(ポリアミド膜を劣化させることのない界面活性剤の溶剤)
しかし、NaOH洗浄液に上記の各種の洗浄薬剤を組み合わせて用いても、汚染が進んだポリアミド膜では、十分な洗浄効果が得られず、場合によっては殆どフラックスが回復しないこともあり、有効な洗浄剤及び洗浄方法が求められているのが現状である。
なお、微生物代謝物、いわゆるスライムによる膜汚染の場合は、フラックスの低下と脱塩率の悪化は同時に進行する。この場合の脱塩率の悪化は、いわゆるポーラリゼーションによるものである。
一方、界面活性剤単独あるいは界面活性剤主体による膜汚染では、フラックスは低下するが、脱塩率は良くなる。この脱塩率の向上は、界面活性剤による汚染が、RO膜面に薄膜状態で均一且つ緻密に付着するため、透過抵抗が増加する一方で、塩類の排除効果がRO膜での排除効果に加算されるためと考えられる。しかし、脱塩率が良くなっても、設備運転上、フラックスの低下は大きな問題となる。
本発明において、水処理膜の洗浄剤の有効成分として用いるフェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液については、特許文献1,2に、膜分離処理に先立つ前処理工程での水処理凝集剤として用いることが提案されているが、水処理膜の洗浄剤として用いることは知られていない。
特開2011−56496号公報 特開2010−131469号公報
本発明は、水処理膜(水処理に使用されている透過膜)、特に芳香族ポリアミド系RO膜(ポリアミド膜)が、スライムに代表される微生物代謝物、あるいは界面活性剤で汚染され、従来の洗浄剤、洗浄方法では十分に除去できない問題を解決するものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行う過程で、従来の洗浄剤では洗浄効果が不十分な理由として、汚染物質がポリアミド膜に付着している結合力が大きく、従来の洗浄薬剤(汚染物の酸化分解能力のある塩素を除く)での汚染物質に対する親和力では、この付着結合力に打ち勝つことができず、このため、洗浄効果が不十分になると考えた。
そして、更に検討を重ね、次のような知見を得た。
スライム汚染構成物質の主体は多糖類と考えられる。
この多糖類と非常に大きな結合力を有し、無機凝集剤では凝集除去困難な中性多糖類を、凝集、不溶化、除去する凝集剤として、本発明者らは、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液が有効であることを発見し、また、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液は、非イオン界面活性剤に対しても、凝集、不溶化、除去効果を示すことを見出し、本出願人より先に特許出願した(特許文献1,2)。
凝集効果が大きいということは、凝集対象物質との結合力が大きく、このような物質が、ポリアミド膜に強固に結合していても、これに打ち勝つ可能性が高いと言え、この機能は、洗浄剤としても有効であると考えた。
そして、更に検討の結果、本発明者らは、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液をアルカリ性に保った状態でRO膜の洗浄剤として使用することで、生物代謝物系及び界面活性剤系のRO膜の汚染を、標準仕様のNaOH洗浄と比較して、効率良く洗浄除去できることを見出した。
本発明者らはさらに、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液による洗浄排水には、汚染対象物質と反応していない、凝集剤として有効な成分を多く含むため、当該RO透過設備に供給される原水の前処理凝集工程で再使用が可能であることを見出した。
従来の洗浄剤では、洗浄排水を廃液として別途処理を行う必要があるのに比較して、本発明によれば洗浄排水を有効利用できるという利点も有する。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 汚染された水処理膜の洗浄剤であって、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液からなり、該水処理膜がポリアミド系逆浸透膜であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] [1]において、前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液が、融点130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] [1]において、前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液が、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液に、アルデヒド類を添加してアルカリ触媒の存在下にレゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂のアルカリ溶液であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] []において、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂の融点が130〜220℃であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] []又は[]において、前記フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂が、フェノール類2核体を3重量%以上含み、重量平均分子量2000以上のフェノール樹脂であって、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂が、フェノール類2核体含有率3重量%未満であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] []において、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂の、分子量624以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] []又は[]において、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂の、分子量624を超え1200以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] []又は[]ないし[]のいずれかにおいて、前記融点130〜220℃のフェノール樹脂の重量平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
] []において、前記融点130〜220℃のフェノール樹脂の分子量1000以下の低分子量成分の含有率が15重量%以下であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
10] 汚染された水処理膜の洗浄方法であって、該水処理膜に[1]ないし[]のいずれかに記載の水処理膜の洗浄剤を接触させることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
11] [10]において、前記水処理膜のモジュール内に前記洗浄剤を含む洗浄液を循環させる循環洗浄工程と、該モジュール内に該洗浄液を静置する浸漬洗浄工程とを備えることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
12] [11]において、前記洗浄液は、前記洗浄剤を水で希釈して調製された、前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物の濃度が500〜10000mg/Lで、pHが11.5〜12.5のアルカリ溶液であることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
13] [11]又は[12]において、更に前記モジュール内の前記洗浄液を逆浸透膜透過水又はpH10以上のアルカリ水溶液で押し出す押出洗浄工程を備えることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
14] [13]において、前記押出洗浄工程において、前記モジュールから排出される排水中の前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物の濃度が2mg/L以下となった時点で洗浄を終了することを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
15] [10]ないし[14]のいずれかにおいて、前記水処理膜の洗浄排水を水処理用凝集剤として利用することを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
16] 原水を凝集処理する前処理工程と、前処理工程で得られた凝集処理水を水処理膜で膜分離処理する膜分離工程と、該膜分離処理により汚染された水処理膜を[1]ないし[]のいずれかに記載の水処理膜の洗浄剤を用いて洗浄する洗浄工程とを有する水処理方法であって、該洗浄工程の洗浄排水を前記前処理工程の凝集剤として利用することを特徴とする水処理方法。
17] 原水を凝集処理する前処理工程と、前処理工程で得られた凝集処理水を水処理膜で膜分離処理する膜分離工程と、該膜分離処理により汚染された水処理膜を[10]ないし[15]のいずれかに記載の水処理膜の洗浄方法により洗浄する洗浄工程とを有する水処理方法であって、該洗浄工程の洗浄排水を前記前処理工程の凝集剤として利用することを特徴とする水処理方法。
18] 原水に凝集剤を添加して凝集処理する前処理手段と、該前処理手段からの凝集処理水を水処理膜で膜分離処理する膜分離モジュールと、該膜分離モジュールに[1]ないし[]のいずれかに記載の水処理膜の洗浄剤を含む洗浄液を供給する洗浄手段とを有する水処理装置であって、該膜分離モジュールから排出される洗浄排水を前記前処理手段の凝集剤として前記原水に添加する凝集剤添加手段を有することを特徴とする水処理装置。
本発明によれば、スライムで汚染され、フラックスが低下すると共に、脱塩率も低下した水処理膜を、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液で洗浄することにより、従前のNaOH洗浄に比較して、格段に優れた洗浄効果で、フラックスと脱塩率を大きく回復させることができる。
また、界面活性剤、特に非イオン系界面活性剤で汚染され、フラックスが低下した水処理膜についても、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液で洗浄することにより、従前のNaOH洗浄に比較して、格段に優れた洗浄効果でフラックスを大きく回復させることができる。
本発明による洗浄効果は、アルカリ耐性のある透過膜であれば、RO膜、NF膜、UF膜、MF膜といったすべての水処理膜に対して有効に得ることができるが、特に本発明は芳香族ポリアミド系RO膜(ポリアミド膜)の洗浄に有効である。
また、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液による水処理膜の洗浄で排出される洗浄排水は、当該水処理膜分離設備の前処理工程で、水処理膜給水の膜汚染性低減のための凝集剤として再利用することができ、排水処理コストの低減と共に、凝集剤使用量の低減を図ることもできる。
実施例で用いた平膜試験装置の構成を示す模式図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明において分子量又は重量平均分子量は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出した値である。
[フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液]
まず、本発明において、洗浄剤の有効成分となるフェノール性水酸基を有する高分子化合物(以下「フェノール系ポリマー」と称す場合がある。)のアルカリ溶液について説明する。
フェノール系ポリマーは、フェノール性水酸基を有し、アルカリ可溶性のものであり、その重量平均分子量は、洗浄効果の面で、2000以上であることが好ましく、より好ましくは5000以上である。また、経時的に安定したアルカリ溶液が得られる点において、重量平均分子量の上限は、通常50000程度である。
また、フェノール系ポリマーは、洗浄排水を、凝集剤として再利用するために、凝集処理に関与せずに残留し、新たな膜汚染物質となる、分子量が概ね600以下の低分子量成分の含有量が10重量%以下であることが好ましい。
なお、本発明の洗浄剤には、フェノール系ポリマーの1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
本発明で用いるフェノール系ポリマーのアルカリ溶液のフェノール系ポリマーとしては、例えば、以下に示すポリビニルフェノール系重合体が挙げられる。
(1) ビニルフェノールの単独重合体
(2) 変性ビニルフェノールの単独重合体
(3) ビニルフェノール及び/又は変性ビニルフェノールと疎水性ビニルモノマーとの共重合体
上記(2)の変性ビニルフェノールとしては、例えば、アルキル基やアリル基等で置換されたビニルフェノール、ハロゲン化ビニルフェノール等、フェニル基が何らかの化合物で化学修飾されたビニルフェノールが挙げられる。
また、(3)の疎水性ビニルモノマーとしては、例えばエチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル等の水不溶性又は水難溶性のビニルモノマーが挙げられる。このような疎水性ビニルモノマーと、ビニルフェノール及び/又は変性ビニルフェノールとの共重合体中のビニルフェノール及び/又は変性ビニルフェノールの割合は、モル比で0.5以上、特に0.7以上であることが好ましい。
また、本発明で用いるフェノール系ポリマーのアルカリ溶液としては、融点が130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液も好ましく用いることができる。
以下に、本発明において、洗浄剤として好ましく用いられる融点が130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液について、その製造方法に従って説明する。
融点が130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液の製造方法には特に制限はないが、好ましくは、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させてノボラック型フェノール樹脂を得、該ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液に、アルデヒド類を添加してアルカリ触媒の存在下にレゾール型の2次反応を行う方法が挙げられる。
即ち、ノボラック型フェノール樹脂をアルカリ溶液とし、含有フェノール環1モル当たり0.2〜0.4モルのホルムアルデヒド類を添加し、80〜100℃で1〜12時間反応せしめる。この反応で、フェノール2核体を含む低分子量成分のフェノール環にホルムアルデヒド類が付加し、反応活性基のメチロール基が生成し、これが既存のフェノール縮合物に反応することで、低分子量成分が、高分子量の凝集有効成分に変換する。
同時に既存の縮合高分子成分のフェノール環でも、ホルムアルデヒド類の付加、メチロール基生成、他の縮合高分子成分への付加反応が起こり、樹脂全体の平均分子量が、元の樹脂の2000〜6000から、数倍程度の5000〜30000に増加する。
この反応では、フェノール環は、2つの手で繋がった二次構造(線状)から、3つの手で繋がった三次構造になり、高分子鎖の自由度が減少し、その結果、融点が上昇する。
融点上昇が小さい場合は、低分子量成分の低減が不十分である。逆に、融点が上昇しすぎる、さらには、融点が計測されない(230℃以上では、分解が始まり、融点があるかわからなくなる)程になると、フェノール樹脂の分子量は100万オーダー以上、極端に言えば、塊全部がすべて1分子に繋がった状態に上昇しており、樹脂は溶解できず、析出、固化する。また、液体を保っていても、粘度が上昇し、数日、数十日を経ると固化が始まり、水処理剤として実用に供することはできないものとなる。
従って、後述の方法で測定される樹脂の融点が130〜220℃、好ましくは150〜200℃であるものが洗浄成分として好適である。
レゾール型2次反応の原料となるノボラック型フェノール樹脂は、常法に従って、反応釜において、フェノール類及びアルデヒド類を、酸性触媒の存在下で重縮合反応させた後、常圧及び減圧下で、脱水と未反応フェノールの除去を行って製造される。
ノボラック型フェノール樹脂の製造に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、o,m,pの各クレゾール、o,m,pの各エチルフェノール、キシレノール各異性体などのアルキルフェノール類、α,βの各ナフトールなどの多芳香環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ピロガロール、レゾルシン、カテコールなどの多価フェノール類、ハイドロキノンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。これらのフェノール類は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
これらのうち、実用的な物質は、フェノール、クレゾール類、キシレノール類、カテコールである。
一方、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、グリオキザールなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。これらのアルデヒド類は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
これらのうち、実用的な物質は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドである。
ノボラック型フェノール樹脂を製造する際の酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸類、蓚酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛等の有機酸塩類が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。これらの酸触媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
レゾール型2次反応の原料となるノボラック型フェノール樹脂の融点に制限はないが、融点が65℃以上と高い樹脂の方が、レゾール型2次反応の対象としている低分子量成分が少なく、2次反応後の樹脂融点を目的とする130〜220℃にするためのレゾール型2次反応の条件幅が広くなり有利である。
また、同組成のノボラック型フェノール樹脂では、融点が高い程、この原料ノボラック型フェノール樹脂の分子量が大きく、レゾール型2次反応後の樹脂の分子量もこれに応じて高くなり、洗浄剤としての洗浄効果も向上する。同時に、洗浄排水を凝集剤として利用する場合の凝集効果も向上する。
原料ノボラック型フェノール樹脂の融点の上限に制限はないが、ノボラック型フェノール樹脂は、加熱して融解、軟化させて成形し、熱硬化して使用するものであり、前述のように、工業的に融点120℃以上のものはほとんど生産されていない。
なお、融点120℃を超えると、軟化・流動温度は概ね150℃以上となり、ノボラック型フェノール樹脂の反応釜中の局部温度は200℃を大きく超える。そのため、樹脂の分解や焦げ付きが発生し、安定した品質のものが得られない。また、溶融粘度が高くなりすぎるためにその取り出しが工業的には困難になる問題が生じる。
また、レゾール型2次反応の原料となるノボラック型フェノール樹脂の分子量に制限はないが、分子量のより高い樹脂の方が、2次反応終了後に、フェノール類2核体及び分子量624程度以下の洗浄ないしは凝集に関与しないだけでなく、凝集処理水中に残留して、処理水を汚染する低分子量成分含有率が少なくなるため、好ましい。このため、用いるノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量で1000以上であることが好ましく、特に2000以上であることが好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂の分子量の上限に制限はないが、前記のように用途上、及び生産上の制約があり、通常、重量平均分子量で6000程度である。
このようなノボラック型フェノール樹脂には、重量平均分子量が2000程度以上の樹脂であっても、分子量200程度のフェノール類2核体が3重量%以上、さらに、分子量624以下の、洗浄ないしは凝集に関与せず、凝集処理水中に残留しやすい低分子量成分が合計で15重量%以上含まれる。そして、例えば原料にフェノールとホルムアルデヒドを使用したノボラック型フェノール樹脂の場合には、分子量200程度のフェノール類2核体が一般的には3〜20重量%程度含まれ、分子量624以下の、洗浄ないしは凝集に関与せず、凝集処理水中に残留しやすい低分子量成分が合計で一般的には15〜40重量%程度含まれ、分子量1000以下の凝集効果を示さない低分子量成分が合計で25〜50重量%程度含まれる。
このようなノボラック型フェノール樹脂をアルカリ溶液とする際に、ノボラック型フェノール樹脂を溶解する溶剤としては、NaOH、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物の1種又は2種以上を含む水溶液が挙げられ、これが、同時に次工程のレゾール型2次反応のアルカリ触媒となる。
また、その他、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどのセルソルブ類及びセルソルブ類のエステル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテートなどのカルビトール類及びカルビトール類のエステル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などに、トリエチルアミン、トリメチルアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)などの有機塩基を溶解した塩基性溶剤も、レゾール型2次反応のアルカリ触媒を兼ねるアルカリ溶液として用いることができる。
ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液のpHには特に制限はないが、pHが低過ぎるとノボラック型フェノール樹脂の溶解性が悪く、高過ぎると添加するアルカリ物質が無駄になることから、pH11〜13程度であることが好ましい。
また、ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液中のノボラック型フェノール樹脂濃度には特に制限はないが、濃度が高過ぎると溶液粘性が上昇し、アルデヒド類を添加する2次反応の均一性の保持、更には、最終製品のポンプ薬注などの取り扱いに不都合であり、低過ぎると生産効率の低下や最終製品の梱包、輸送費用の増加があることから、5〜50重量%、特に10〜30重量%程度であることが好ましい。
レゾール型2次反応のために、ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液に添加するアルデヒド類としては、前述のノボラック型フェノール樹脂原料としてのアルデヒド類と同様のものを1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができ、これらのうち特にホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが実用的であるが、これらに限定されるものではない。
ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液へのアルデヒド類の添加量は、特に限定されるものではないが、添加量が少な過ぎると2核体をはじめとする低分子量成分の低下が不十分であり、レゾール型2次反応により得られるフェノール樹脂(以下、「2次反応フェノール樹脂」と称す場合がある。)の融点上昇も少ない。逆に、多過ぎると得られる2次反応フェノール樹脂の融点が測定不能な分解温度に近づき、架橋が進み、不溶化、固化してしまう。適正なアルデヒド類の添加量は、原料ノボラック型フェノール樹脂中の2核体を含む分子量1000以下の低分子量成分の含有率や、構成するフェノール類の種類により異なるが、概ね、ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール環1モル当たり0.2〜0.4モルとなる。ただし、実際には、事前にアルデヒド類添加量と2次反応フェノール樹脂の融点との関係を確認する予備試験を行い、その結果に基いて、所望の融点の2次反応フェノール樹脂が得られるように、その添加量を決定することが好ましい。
レゾール型の2次反応の方法には特に制限はないが、例えば、攪拌機、蒸気吹き込み設備、還流器、及び温度制御機構を有する反応設備で、所定の樹脂濃度及びpHのノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液を、蒸気吹き込み等で所定温度、例えば40〜70℃程度に上昇させた後、アルデヒド類を添加し、80〜100℃で1〜12時間、この温度を保ちながら、アルカリ触媒下のレゾール型反応を行う。
反応終了後は反応液を冷却し、融点が130〜220℃、好ましくは150℃〜200℃であり、フェノール類2核体をはじめとする分子量1000以下の低分子量成分含有量の少ない、また重量平均分子量が高められた2次反応フェノール樹脂のアルカリ溶液を得る。
なお、上記2次反応における樹脂濃度、pH、アルデヒド類添加量、反応温度や反応時間は何ら制約されるものではなく、所望とする融点の2次反応フェノール樹脂が得られるように適宜設定される。
このようにして得られる2次反応フェノール樹脂の融点は130〜220℃であり、好ましくは150〜200℃である。
また、この2次反応フェノール樹脂の重量平均分子量は2000以上が好ましく、さらに好ましくは5000以上である。一方、重量平均分子量が50000を超える場合は、一部分子量100万以上の分子が生成し、粘度が高く、時間経過でさらに架橋し、不溶物が発生する可能性が高いため、2次反応フェノール樹脂の重量平均分子量は50000以下、特に30000以下であることが好ましい。
また、この2次反応フェノール樹脂の重量平均分子量は、反応前、即ち、レゾール型2次反応の原料であるノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量の2〜5倍程度となることが好ましい。
また、2次反応フェノール樹脂は、フェノール類2核体含有率が3重量%未満、特に2重量%以下であることが好ましく、また、分子量624以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、分子量624以下の低分子量成分の含有率は5重量%以下である。また、分子量624を超え1200以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下、特に7重量%以下であることが好ましい。
また、この2次反応フェノール樹脂は、レゾール型2次反応の原料であるノボラック型フェノール樹脂に対して、2核体を含む概ね分子量1000以下の低分子量成分が通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下と大きく減少し、洗浄効果が高く、また、洗浄排水の凝集剤として用いた場合、凝集処理水側に残留する未凝集物が著しく少なく、TOC、CODMnが著しく低減された、膜分離処理の給水として好ましい凝集処理水が得られる。
このレゾール型2次反応で得られるフェノール樹脂のアルカリ溶液は、ポンプ薬注可能な液体であり、製造品をそのまま洗浄剤として使用することができる。
なお、本発明における2次反応フェノール樹脂、又はレゾール型2次反応の原料であるノボラック型フェノール樹脂の融点測定試料調製法、融点測定法、分子量等測定試料調製法、分子量等測定法は次の通りである。
<融点測定試料調製法>
2次反応フェノール樹脂のアルカリ溶液を樹脂濃度として1重量%以下になるようにイオン交換水で希釈し、スターラー等で十分撹拌した状態にして、約1N程度の塩酸を滴下し、pHを5未満に調整する。この操作で析出した樹脂をNo.5A濾紙で濾過した後、イオン交換水で2回洗浄し、この析出樹脂を別の濾紙に移し、水分をよく切る。
水分をよく切った樹脂を、常温にて一晩、真空乾燥するか、或いはデシケーターで重量減少がなくなるまで、数日乾燥させる。
なお、2次反応を行わない、レゾール型2次反応の原料であるノボラック型フェノール樹脂については、アルカリ溶液としてから、再度、前記の方法で試料を調製する。
<融点測定法>
エスアイアイ・ナノテクノロジー製の示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を用いて測定する。
試料2mgをDSC測定器にかけ、10℃/分で昇温を行い、横軸の温度上昇に対して、熱流(Heat Flow/mW)のラインを求め、吸熱ピークのトップ温度を融点とする。
本発明において、ノボラック型フェノール樹脂及び2次反応フェノール樹脂の融点は、前記の試料調整法と融点測定法によって測定した値である。
<分子量等測定試料調製法>
分画を含む分子量測定を行うには、2次反応フェノール樹脂のアルカリ溶液のアルカリ金属イオンの除去と水分除去を、該樹脂中のフェノール類2核体を含む低分子量成分を流出させずに行う必要がある。
そのため、まず、2次反応フェノール樹脂のアルカリ溶液を樹脂濃度0.1重量%(1000mg/L)程度に希釈し、透析膜装置に入れ、次いで予め乖離しているフェノール水酸基の非乖離化のために必要な中性化用塩酸の量を決めておき、これを透析膜装置内の溶液に添加してから、透析を行う。透析完了後の内容物を、付着物を含めその全量を減圧フラスコで40℃程度の低温で濃縮、乾固させる。
これを、常温で真空乾燥し、前記のテトラヒドロフランで溶解し、分画を含む分子量測定試料を得る。
なお、レゾール型2次反応を行う前の原料のノボラック型フェノール樹脂も、同様の操作を行い、前処理で生じる可能性のある、測定値のシフト等、誤差要因を共通化する。
<分子量分画・分子量測定方法>
分子量はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(以下GPCと記す)で測定する。
上述の2次反応フェノール樹脂のテトラヒドロフラン溶液を、クロマトカラムとしてTOSOH製HLC8022、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、流量0.8mL/分、温度40℃で展開し、溶出を行う。樹脂検出は、屈折率及び紫外吸光で行い、最大吸収のある波長254nmとし、検出器はTOSOH製RI−8020及びUV−8020を使用する。
この結果を、分子量の明らかなポリスチレン標準物質を用いた検量線に当てはめ、分子量分画と分画された樹脂成分の分子量及びその含有量を検定する。
低分子量成分の含有量は、GPCの分子量分布曲線により、樹脂全体に対する面積比率(%)から算出する。
本発明におけるフェノール樹脂の重量平均分子量及び低分子量成分の分子量並びにその含有量は、前記の試料調整法と分子量分画・分子量測定法により求めた値である。
本発明において洗浄剤として用いるフェノール系ポリマーのアルカリ溶液は、好ましくは、上述のようにして、ノボラック型フェノール樹脂のレゾール型2次反応を行って得られた、融点が130〜220℃、好ましくは150〜200℃の2次反応フェノール樹脂のアルカリ溶液よりなるものであり、洗浄効果に優れ、また洗浄排水を凝集剤として用いた場合に、凝集処理水側に残留する低分子量成分量が少ないため、膜分離処理、とりわけRO膜分離処理の前処理工程としての凝集処理に好適に用いることができる。
<フェノール系ポリマー濃度>
本発明で用いるフェノール系ポリマーは水不溶性であり、多糖類や界面活性剤の凝集剤として使用する場合、アルカリ溶液として被処理水に添加され、その添加量は、通常0.1〜5mg/L程度である。
この添加量の場合、被処理水のpHは殆ど上昇せず、元の中性域のpHで、フェノール系ポリマーは、被反応物と強く結合するとともに、水不溶性となり、凝集、除去される。
これに対して、本発明において、洗浄剤として使用するフェノール系ポリマーのアルカリ溶液中のフェノール系ポリマー濃度は、洗浄対象の水処理膜の膜面積と汚れの程度、及び洗浄液量によって左右されるが、概ね、フェノール系ポリマー濃度として1000〜10000mg/Lとすることが好ましい。
本発明においては、このようなフェノール系ポリマー濃度の洗浄剤を後述のように希釈水で希釈して洗浄液を調製し、この洗浄液を用いて水処理膜を洗浄することが好ましい。
洗浄液中のフェノール系ポリマーは、膜汚染物と反応し、これを溶解、除去することで消費され、実効濃度が減少する。従って、最初の濃度が低い場合、洗浄効果が不足する可能性がある。よって、洗浄対象の水処理膜の汚染状況にもよるが、実モジュールの洗浄においてはフェノール系ポリマー濃度は3000mg/L程度が好ましい。
一般的な洗浄薬品では、洗浄成分の濃度を高めると、使用量と同時にその処分費用も拡大するため、コスト面で上限があるが、本発明の洗浄剤では、洗浄排水を凝集剤として再使用できるため、適用濃度の上限は、粘度上昇の影響が生ずる10000mg/L程度である。
<pH>
上記のような濃度でフェノール系ポリマーを含む本発明の洗浄剤としてのフェノール系ポリマーのアルカリ溶液のpHは、安定性の面で12.0〜13.5であることが好ましい。アルカリ溶液のアルカリとしては、NaOH、KOHが好ましく、特にNaOHが好ましい。
<洗浄液>
本発明においては、上記のフェノール系ポリマー濃度及びpHの本発明の洗浄剤を希釈して洗浄液を調製して水処理膜の洗浄に用いる。
洗浄液のpHとしては、洗浄液中のアルカリが、洗浄時にカルボキシル基を有する酸性多糖類で消費されてpHが低下するので、ある程度、余力を持った濃度(pH)に設定しておくことが望ましい。
洗浄工程で、アルカリの消費でpHが低下し、pH11以下になると、フェノール系ポリマーが500mg/L以上存在する場合、これが一部析出し、洗浄効果が無くなり、むしろ、水処理膜を汚染する恐れがある。
従って、洗浄液中のフェノール系ポリマー濃度が概ね10000mg/L以下の場合、pHは、11〜12程度を示すが、さらにNaOHを少量添加しpH12程度(本発明において、pH12程度とはpH11.5〜12.5をさす。)とすることが好ましい。
洗浄液のpHを13以上にすると、第一にポリアミド膜等の水処理膜の薬品耐性に問題を生ずる場合があり、第二にpH12程度に対してpH13以上での洗浄効果の向上が得られず、追加添加するNaOH等のアルカリ量が増加するので、好ましくない。
好ましい洗浄液のpHは11.5〜12.5である。
また、水処理膜の汚染物質付着量が多く、洗浄工程期間に洗浄液のpHが11.5を下回る場合は、洗浄工程中でもNaOHを追加添加することが好ましい。特に、pHが11.0以下となる場合には、NaOH等のアルカリを追加し、pH11.5以上にする必要がある。
洗浄液を調製する際の希釈水には、酸性物質やpH緩衝作用のある重炭酸イオンを含まない水を使用すると、洗浄剤のpHを低下させることがなく、好ましい。従って、洗浄対象となるRO膜設備のRO透過水を希釈水として使用することが最も好ましい。
RO透過水が物理的事由などで使用できない場合は、NaOH等のアルカリ量を増加して、上記の好適な洗浄液pH11.5〜12.5を確保するようにする。
本発明で用いられる洗浄液は、例えば以下のようにして調製される。
まず、洗浄液槽に希釈水と本発明の洗浄剤であるフェノール系ポリマーのアルカリ溶液を入れて、フェノール系ポリマー濃度が500〜10000mg/L、好ましくは1000〜3000mg/Lの所定濃度となるように希釈し、次いで必要に応じてNaOH等のアルカリを添加してpH12程度に調整する。
水処理膜の汚染物質付着量が多いと想定される場合は、フェノール系ポリマー濃度を上記濃度範囲で高めに設定する。また、pH設定を12から12.5程度のやや高めに設定する。
[洗浄方法]
上記の洗浄液による水処理膜の洗浄方法は、従来のNaOH洗浄と同様に行うことができる。
例えば、洗浄液を数時間、例えば2〜5時間、水処理膜モジュール内に循環させ、その後に半日から1日程度浸漬し、次いで再度、数時間、例えば2〜5時間循環させる。
ここで、数時間の循環で洗浄液pHが11.5に下がる場合は、NaOHを追加してpH12程度とすることが好ましい。
なお、洗浄は、水処理膜の汚染膜面、即ち、水処理膜給水が供給され、膜濾過される原水側に対して行われる。
上記の洗浄液による洗浄後は、水処理膜モジュール内の洗浄液を押し出すための押し出し、リンス洗浄を行う。この際、フェノール系ポリマーは、pH10未満では、水中で析出し、水処理膜に付着し、フラックスを低下させる。すなわち膜汚染物質として作用する。
このため、以下のような方法で、洗浄液の押し出し、リンス洗浄を行うことが好ましい。
<方策1>
洗浄液のモジュール内からの押し出し、続いてのリンス洗浄を、RO膜透過水を用いて行う。リンス排水は循環せず排出する。RO膜透過水はpH緩衝性がないので、洗浄液が希釈されてもpH低下を起こし難く、フェノール系ポリマーを殆ど析出させることなく押し出し、リンス洗浄することができる。
<方策2>
RO膜透過水が物理的事由などで使用できない場合は、モジュール内からの押し出し、及びリンスに使用する水にpH10以上となるNaOH等のアルカリ水溶液を用いる。リンス排水は循環せず排出する。
上記のリンス洗浄後は、リンス排水中のフェノール系ポリマー濃度が概ね2mg/L以下となる時点で洗浄終了の判断を行う。
フェノール系ポリマーの紫外線吸光度ピークは、一般の有機物測定波長である260nmより20nm程度長波長側にシフトした280nmにあり、その強度は1mg/L当り約0.100(50mmセル)である。
よって、リンス排水のネットの280nm吸光度(測定値からリンス原水の吸光度を引く)が0.200未満となれば洗浄終了とすることができる。
前記の測定で、リンス条件が検証できれば、以降は、吸光度測定なしに、検証したリンス条件を実行すれば良い。
[洗浄排水の再利用]
上記の水処理膜の洗浄で排出される洗浄排水中には、前述の通り、凝集剤の有効成分となるフェノール系ポリマーを十分な濃度で含有するため、特許文献1,2に記載されるように、膜分離処理の前処理工程の凝集処理で用いる凝集剤として、有効に利用することができる。
この場合、例えば、原水に凝集剤を添加して凝集処理する前処理手段と、この前処理手段からの凝集処理水を水処理膜で膜分離処理する膜分離モジュールとを有する水処理装置に、この膜分離モジュールに前述の洗浄液を供給して洗浄する洗浄手段と、膜分離モジュールから排出される洗浄排水を前処理手段の凝集剤として原水に添加するために、該洗浄排水を前処理手段に送給する配管と、この洗浄排水を原水に添加する手段を設けた構成とすることにより洗浄排水の有効利用を図ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例で用いた平膜試験装置、RO膜の評価方法等は以下の通りである。
(1) 平膜試験装置
図1に示す平膜試験装置を用いた。
この平膜試験装置では、RO膜給水は、配管11より高圧ポンプ4で、密閉容器1のRO膜をセットした平膜セル2の下側の原水室1Aに供給される。原水室1A内はスターラー3で撹拌子5を回転することにより撹拌される。
平膜セル2はRO膜の透過水側が多孔質支持板で支持された構成になっている。
RO膜透過水は平膜セル2の上側の透過水室1Bを経て、配管12より取り出され、濃縮水は配管13より取り出される。
密閉容器1内の圧力は、濃縮水取り出し配管13に設けた圧力計6と圧力調整バルブ7により調整される。
(2) フェノール系ポリマー(FR1)のアルカリ溶液の調製
原料樹脂として群栄化学工業(株)製のレヂトップPSM−6358を使用した。本品はフェノールとホルムアルデヒドを酸触媒の存在下に重縮合を行って得られたノボラック型フェノール樹脂であり、その融点、重量平均分子量、低分子量成分含有率等は以下の通りである。
原体樹脂融点(カタログ値) :67
測定融点(℃) :71
重量平均分子量 :5400
フェノール類2核体含有率(重量%):3.8
分子量1000以下の低分子量成分含有率(重量%):29
なお、上記の測定融点とは、前述の<融点測定試料調製法>に従って調製した試料について、前述の<融点測定法>に従って測定した融点である。
ビーカーに、PSM−6358 41g、イオン交換水146.2g、及び48重量%NaOH水溶液12.8gを入れ、マグネチックスターラーにて撹拌溶解し、PSM−6358を20.5重量%含有するノボラック型フェノール樹脂(PSM−6358)アルカリ溶液200gを得た。この溶液のpHは2.4であった。
200mg/Lの共栓付三角フラスコにPSM−6358アルカリ溶液を100g入れ、約60℃に加温してから37重量%のホルムアルデヒド水溶液4.43gを加え、コンデンサー撹拌用窒素ガス吹き込み管、及び温度計を共栓に取り付け、オイルバスで、液温度85℃で8時間、レゾール型のホルムアルデヒド付加・重縮合反応を進行させた(レゾール型2次反応)。なお、ここで用いたホルムアルデヒド量は、PSM−6358のフェノール環(分子量106)に対する割合として28モル%(PSM−6358:20.5g、20.5÷106=0.193モル、ホルムアルデヒド4.43×0.37=1.64g、1.64÷30=0.055モル、従って、0.055÷0.193=0.28)に相当する。その後、これを冷却し、イオン交換水(濃度調整用イオン交換水)4.46gを加えて、フェノール類2核体を含む低分子量成分含有率を低減し、重量平均分子量を増加させた高融点の2次反応フェノール樹脂(以下「FR1」と称す。)アルカリ溶液を得た。
FR1アルカリ溶液のFR1濃度は19.43重量%で、pHは12.0である。
FR1について、前述の方法で分子量分画を行い、フェノール(モノマー)、フェノール類2核体、及び低分子量成分含有量の検定を行った。
また、前述の方法で融点を測定した。
なお、フェノール(モノマー)については、JIS K−6901−7.22により別途分析した。
融点(℃):183
重量平均分子量:13400
低分子量成分含有率(重量%)
フェノール(モノマー):0.1未満
ポリスチレン換算分子量170超280以下=0.6
ポリスチレン換算分子量280超624以下=3.4
ポリスチレン換算分子量624超1200以下=4.1
ポリスチレン換算分子量624以下の合計=4.0
ポリスチレン換算分子量1000以下=6.9
(3) フェノール系ポリマー(PVPh1)のアルカリ溶液の調製
丸善石油化学(株)製「マルカリンカーM」(物質名:パラヒドロキシスチレン単独重合体、通称名:ポリビニルフェノール)(以下「PVPh1」と称す。)をNaOH水溶液に溶解させてアルカリ溶液を調製した。
PVPh1アルカリ溶液中のPVPh1濃度は20.0重量%で、pHは12.0である。
(4) RO膜の性能評価
洗浄前、洗浄後のRO膜の性能評価は、超低圧膜では500mg/LNaCl水溶液を通水し、入り口圧力0.75MPaで運転して行った。
低圧膜では、2000mg/LNaCl水溶液を通水し、入り口圧力1.55MPaで運転して行った。
(4−1) フラックス
試験は室温25℃から大きく外れない条件で行い、透過水の水温tを実測し、水温25℃に換算して下記式によりフラックス(m/m/day=m/d)を算出した。
フラックス=透過水量×温度補正係数(1.024(25−t))÷平膜面積
洗浄前のRO膜のフラックスをF、洗浄後のRO膜のフラックスをFとして、F/Fを算出し、回復比として評価した。
例えば、洗浄前RO膜のフラックスがF=0.40m/dで洗浄後のRO膜のフラックスがF=0.60m/dの場合、フラックスの回復比F/F=0.60/0.40=1.5で、フラックスは1.5倍となったことを示す。
なお、汚染前の新品のRO膜の初期フラックスはFとし、F/Fを対初期フラックス比とした。
(4−2) 塩透過率
一般的な脱塩率とは逆に「100−脱塩率(%)」の塩透過率(塩類のリーク率)の変化で判定することとし、洗浄前のRO膜の塩透過率をL、洗浄後のRO膜の塩透過率をLとし、L/Lを算出して脱塩効果向上比として評価した。
例えば、洗浄によりRO膜の脱塩率が96.0%から98.0%に回復した場合、洗浄前のRO膜の塩透過率はL=4.0%、洗浄後のRO膜の塩透過率はL=2.0%であり、脱塩効果向上比L/L=4.0/2.0=2.0となる。
なお、汚染前の新品のRO膜の初期塩透過率はLで表す。
(5) 実機膜モジュールからの汚染RO膜サンプルの準備
フラックスが低下したRO膜モジュールを解体し、目視で汚れの大きい部分であって、且つ汚れが均一な場所から、直径37mmφの型抜きで、汚染RO膜を20枚程度切り出し、これを、純水中、5℃で冷蔵保管して、評価に使用した。
(6) RO膜洗浄方法
予め、フラックス、脱塩率を計測した汚染RO膜(洗浄前)を、ホルダーにセットし、汚染面を下にして、調製した洗浄液500mLを入れた500mLビーカー内に吊るした。
洗浄はスタータ撹拌による1時間の循環洗浄、続いて約15時間の浸漬(静置)洗浄を行い、再度1時間の循環洗浄を行った。
洗浄後のRO膜は、純水で洗浄した後、平膜試験を行った。
[実施例1、比較例1]
界面活性剤溶液を通水して、人工的に汚染させたポリアミド系RO膜を作成し、標準のNaOH洗浄と本発明品FR1の洗浄液との洗浄効果の比較を行った。
<界面活性剤での人工汚染RO膜作成>
横浜油脂化学製「セミクリーンKG」を界面活性剤濃度として20mg/Lになるように純水に溶解させたものをRO膜給水として、日東電工(株)製超低圧ポリアミド膜「ES−20」(新膜のフラックス約0.9m/d)に、図1の平膜試験装置を使用して67時間通水し、フラックスの低下したポリアミド膜を作成した。
なお、「セミクリーンKG」は、非イオン界面活性剤とアニオン性界面活性剤の混合品である。
<平膜試験>
人工汚染RO膜を、FR1濃度1800mg/L、pH12.0に調整したFR1アルカリ溶液(実施例1)又はNaOH濃度400mg/L、pH12.0に調製したNaOH水溶液(比較例1)を洗浄液として用い、前記(6)のRO膜洗浄方法で洗浄した後、図1の平膜試験装置を用い、前記(4)の方法でフラックス回復比、脱塩効果向上比を求めた。
平膜試験のRO膜給水は500mg/LNaCl水溶液を用い、入り口圧力は0.75MPa、回収率(透過水量/RO膜給水量比率)は50%を目標に設定した。
結果を表1に示す。
Figure 0006340813
<考察>
(人工膜汚染結果)
人工的な汚染により、RO膜のフラックスは新膜の約0.88m/dから約0.45m/dに大きく低下した。
一方、塩透過率は1.9〜2.8%から1%未満と明らかに減少(脱塩率は向上)した。
この挙動は界面活性剤でのRO膜汚染の特徴を示すものである。
(比較例1)
一般的な洗浄方法であるpH12.0のNaOH洗浄では、フラックス回復比は1.37、新膜に対するフラックス回復比である対初期フラックス比は0.69であった。
(実施例1)
本発明品のFR1アルカリ溶液による洗浄では、フラックス回復比は1.73、新膜に対するフラックス回復比である対初期フラックス比は0.86で、比較例1に比べて顕著な洗浄効果の向上が得られた。
[実施例2,3、比較例2]
S国、C電子工場の、汚染されてフラックスが低下したポリアミド系低圧RO膜の提供を受け、これを解体して、前記(5)の方法で汚染RO膜サンプルを作成し、各種洗浄液を用いて洗浄試験を行った。
C電子工場のRO膜給水は、下水処理水のRO膜透過水に、C電子工場内の固形物を含まない排水を混合したもので、溶解性有機物を含む。
また、RO膜はDOW社製の低圧ポリアミド膜「BW−40」で、運転標準圧力は15MPaで、新膜のフラックスは1.0m/dである。
C電子工場のRO膜給水中に懸濁物質は非検出で、RO膜給水のSDI(ASTM D4189−95に定められているRO膜給水のRO膜汚染指標)は2.0以下と良好である一方、工程排水から有機物が混入するため、C電子工場のRO膜汚染は、スライム汚染、即ち生物代謝の多糖類が主体と想定された。
<平膜試験>
汚染RO膜を、FR1濃度1800mg/L、pH12.0に調整したFR1アルカリ溶液(実施例2)、PVPh1濃度1800mg/L、pH12.0に調整したPVPh1アルカリ溶液(実施例3)、又はNaOH濃度400mg/L、pH12.0に調整したNaOH水溶液(比較例2)を用い、前記(6)のRO膜洗浄方法で洗浄した後、図1の平膜試験装置を用い、前記(4)の方法でフラックス回復比、脱塩効果向上比を求めた。
なお、平膜試験のRO膜給水は、2000mg/LNaCl水溶液を用い、入り口圧力は1.55MPa、回収率(透過水量/RO膜給水比率)は50%を目標に設定した。
結果を表2に示す。
Figure 0006340813
<考察>
(比較例2)
従来の標準的な洗浄仕様であるpH12.0のNaOH洗浄では、フラックス回復比1.01、脱塩効果向上比1.0で、洗浄効果は無いに等しかった。
洗浄により、通常、ある程度のフラックスの回復が得られると思われるのに対して、洗浄効果が得られなかったのは、純水中、5℃の冷蔵保管の時間経過で生物代謝物の膜面への固着が進行したことが推定される。
(実施例2)
本発明品のFR1アルカリ溶液による洗浄では、フラックスは1.46倍に回復し、絶対値としても0.807m/dと新膜に近い値であった。
また、脱塩効果向上比は1.2で有意に上昇しており、ポーラリゼーションが解消、又は緩和されたことが推定される。
(実施例3)
本発明品のPVPh1アルカリ溶液による洗浄では、FR1アルカリ溶液による洗浄と同様にフラックスは1.47倍に回復した。
また、脱塩効果向上比は1.3で有意に上昇した。
[実施例4,5、比較例3〜5]
日本国、D液晶工場の、汚染されてフラックスが低下したポリアミド系低圧膜の提供を受け、これを解体して、前記(5)の方法で汚染RO膜サンプルを作成し、各種洗浄液を用いて洗浄試験を得た。
D液晶工場のRO膜給水は、カラーフィルター製造の濃厚廃液の鉄系凝集剤を使用した凝集沈澱、濾過処理を施した処理水と、同、希釈廃液を、生物処理後、鉄系凝集剤で凝集、加圧浮上、濾過処理した処理水の混合液であり、このRO膜給水には工程起因の界面活性剤を相当量含み、生物処理系からは、生物処理工程で生成した多糖類を主体とする微生物代謝物のうち、凝集処理では取りきれなかったものが含まれる。
また、RO膜は日東電工(株)製の超低圧ポリアミド膜「ES−20」で、運転標準圧力は0.75MPaで、新膜のフラックスは0.9m/dである。
また、比較用の洗浄液として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(「ABS」と略記する。)1500mg/L、ヘキサメタリン酸ナトリウム(「HPNa」と略記する。)(鉄分散効果で鉄系凝集剤の微小リーク物汚染除去に有効)6000mg/L、グルコン酸ナトリウム(「GNa」と略記する。)(同じく鉄キレート効果で鉄系凝集剤の微小リーク物汚染除去に有効)1600mg/Lを水に溶解させてNaOHでpH12.0に調整した洗浄液と、プロピレングリコール(「PrOH」と略記する。)(界面活性剤に対する洗浄除去に有効)40000mg/Lを水に溶解させてNaOHでpH12.0に調整した洗浄液を調製した。
<平膜試験>
汚染RO膜を、FR1濃度1800mg/L、pH12.0に調整したFR1アルカリ溶液(実施例4)、PVPh1濃度1800mg/L、pH12.0に調整したPVPh1アルカリ溶液(実施例5)、NaOH濃度400mg/L、pH12.0に調整したNaOH水溶液(比較例3)、別途調製したpH12.0のABS・HPNa・GNa水溶液(比較例4)、又はpH12.0のPrOH水溶液(比較例5)を用い、前記(6)のRO膜洗浄方法で洗浄した後、図1の平膜試験装置を用い、前記(4)の方法でフラックス回復比、脱塩効果向上比を求めた。
なお、平膜試験のRO膜給水は、500mg/LNaCl水溶液を用い、入り口圧力は0.75MPa、回収率(透過水量/RO膜給水比率)は50%を目標に設定した。
結果を表3に示す。
Figure 0006340813
<考察>
(比較例3)
新膜ではフラックス0.9m/d程度のものが、0.2m/d台に大きく低下した汚染膜を、pH12.0のNaOHで洗浄した結果、フラックス回復比は1.44にとどまった。
(比較例4)
界面活性剤に対する洗浄効果があるとされる、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなるアニオン性界面活性剤、及び、凝集工程からの鉄系凝集剤の微小リーク物汚染除去のためのヘキサメタリン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムをあわせて配合し、NaOHでpH12.0とした洗浄液で洗浄を行った結果、フラックス回復率は1.91まで高まった。
(比較例5)
界面活性剤に対する洗浄効果があるとされるポリオールであるプロピレングリコールを使用し、NaOHでpH12.0とした洗浄液で洗浄したが、フラックス回復比は1.51とNaOH単独に対しての改善は軽微であった。
(実施例4)
本発明品のFR1アルカリ溶液では、フラックス回復比2.10が得られ、従来技術では最良の洗浄仕様と考えられている比較例4より好成績であった。
フラックスの絶対値は0.459m/dで、新膜レベル0.9m/dの半分強であるが、繰り返し洗浄や、洗浄時間を長くすることで、フラックスの更なる回復を図ることができる。
(実施例5)
本発明品のPVPh1アルカリ溶液では、フラックス回復比2.24が得られ、FR1アルカリ溶液による洗浄と同様に、従来技術では最良の洗浄仕様と考えられている比較例4より好成績であった。
1 容器
1A 原水室
1B 透過水室
2 平膜セル
3 スターラー

Claims (18)

  1. 汚染された水処理膜の洗浄剤であって、フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液からなり、該水処理膜がポリアミド系逆浸透膜であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  2. 請求項1において、前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液が、融点130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  3. 請求項1において、前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物のアルカリ溶液が、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液に、アルデヒド類を添加してアルカリ触媒の存在下にレゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂のアルカリ溶液であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  4. 請求項において、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂の融点が130〜220℃であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  5. 請求項又はにおいて、前記フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂が、フェノール類2核体を3重量%以上含み、重量平均分子量2000以上のフェノール樹脂であって、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂が、フェノール類2核体含有率3重量%未満であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  6. 請求項において、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂の、分子量624以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  7. 請求項又はにおいて、前記レゾール型の2次反応を行って得られるフェノール樹脂の、分子量624を超え1200以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  8. 請求項又は請求項ないしのいずれか1項において、前記融点130〜220℃のフェノール樹脂の重量平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  9. 請求項において、前記融点130〜220℃のフェノール樹脂の分子量1000以下の低分子量成分の含有率が15重量%以下であることを特徴とする水処理膜の洗浄剤。
  10. 汚染された水処理膜の洗浄方法であって、該水処理膜に請求項1ないしのいずれか1項に記載の水処理膜の洗浄剤を接触させることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
  11. 請求項10において、前記水処理膜のモジュール内に前記洗浄剤を含む洗浄液を循環させる循環洗浄工程と、該モジュール内に該洗浄液を静置する浸漬洗浄工程とを備えることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
  12. 請求項11において、前記洗浄液は、前記洗浄剤を水で希釈して調製された、前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物の濃度が500〜10000mg/Lで、pHが11.5〜12.5のアルカリ溶液であることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
  13. 請求項11又は12において、更に前記モジュール内の前記洗浄液を逆浸透膜透過水又はpH10以上のアルカリ水溶液で押し出す押出洗浄工程を備えることを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
  14. 請求項13において、前記押出洗浄工程において、前記モジュールから排出される排水中の前記フェノール性水酸基を有する高分子化合物の濃度が2mg/L以下となった時点で洗浄を終了することを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
  15. 請求項10ないし14のいずれか1項において、前記水処理膜の洗浄排水を水処理用凝集剤として利用することを特徴とする水処理膜の洗浄方法。
  16. 原水を凝集処理する前処理工程と、前処理工程で得られた凝集処理水を水処理膜で膜分離処理する膜分離工程と、該膜分離処理により汚染された水処理膜を請求項1ないしのいずれか1項に記載の水処理膜の洗浄剤を用いて洗浄する洗浄工程とを有する水処理方法であって、該洗浄工程の洗浄排水を前記前処理工程の凝集剤として利用することを特徴とする水処理方法。
  17. 原水を凝集処理する前処理工程と、前処理工程で得られた凝集処理水を水処理膜で膜分離処理する膜分離工程と、該膜分離処理により汚染された水処理膜を請求項10ないし15のいずれか1項に記載の水処理膜の洗浄方法により洗浄する洗浄工程とを有する水処理方法であって、該洗浄工程の洗浄排水を前記前処理工程の凝集剤として利用することを特徴とする水処理方法。
  18. 原水に凝集剤を添加して凝集処理する前処理手段と、該前処理手段からの凝集処理水を水処理膜で膜分離処理する膜分離モジュールと、該膜分離モジュールに請求項1ないしのいずれか1項に記載の水処理膜の洗浄剤を含む洗浄液を供給する洗浄手段とを有する水処理装置であって、該膜分離モジュールから排出される洗浄排水を前記前処理手段の凝集剤として前記原水に添加する凝集剤添加手段を有することを特徴とする水処理装置。
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