JP6335876B2 - マラリアに対するマイクロ粒子ワクチン - Google Patents

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Description

[関連出願の相互参照]
本願は、2012年3月30日に出願された米国仮出願第61/617,998に基づく優先権を主張し、この米国仮出願はその全体が本明細書に組み入れられる。
本開示は、マラリア感染の予防のための組成物および方法に関し、特に、抗原性エピトープを含有する多層フィルム組成物に関する。
マラリアは、世界中の熱帯および亜熱帯地域において最も広く見られる感染症のひとつである。マラリア感染は、全世界で何億もの人々に重度な病気を引き起こし、毎年、主に発展途上国および新興国において、何百万もの人々の死亡をもたらしている。マラリアの広範な発生および発生率の上昇は、薬剤耐性の寄生体および殺虫剤耐性の寄生体ベクターの数の上昇の結果である。他の要因としては、環境的および気候的な変化、国内紛争、ならびに人口移動の増加が含まれる。
マラリアは、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する、蚊媒介の血性原生動物(hematoprotozoan)寄生体により引き起こされる。4種のプラスモディウム原生動物(P. falciparum(熱帯熱マラリア原虫)、P. vivax(三日熱マラリア原虫)、P. ovale、およびP. malariae)が、ヒトにおける疾患の原因となる。例えばマウスにおけるP. yoeliiおよびP. bergheiのように、他の多くの種が動物において疾患を引き起こす。P. falciparumは、感染の大部分を占め、最も致死的な種類であり、「熱帯マラリア」と呼ばれることもある。マラリア寄生体は、いくつかの段階からなる生活環を有する。各段階は、対応して生じる段階特異的抗原に対する特異的免疫応答を誘導することができる。
マラリアに対する免疫応答を刺激することに適した、改善された抗原性組成物の必要性が存在する。
一側面において、組成物は、
複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第1の多層フィルムを含み、前記多層フィルム中の高分子電解質層の1つは、第1の抗原性高分子電解質を含み、
前記第1の抗原性高分子電解質は、第1の高分子電解質に共有結合により連結されたPlasmodium falciparumスポロゾイト周囲(CS)のT1、B、またはT*エピトープを含み、
前記多層フィルム中の高分子電解質は、1,000より大きい分子量、および、分子あたり少なくとも5個の電荷を有する、ポリカチオン性材料またはポリアニオン性材料を含む。
別の実施態様において、組成物は、
複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第1の多層フィルムを含み、前記多層フィルム中の高分子電解質層の1つは、第1の抗原性ポリペプチドを含み、
前記第1の抗原性ポリペプチドは、第1のポリペプチドに共有結合により連結されたPlasmodium falciparumスポロゾイト周囲のT1、B、およびT*エピトープを含み、
前記多層フィルム中の高分子電解質は、1,000より大きい分子量、および、分子あたり少なくとも5個の電荷を有する、ポリカチオン性材料またはポリアニオン性材料を含む。
図1は、スポロゾイト周囲ペプチド含有ナノ粒子のためのエピトープおよび設計されたペプチドを示す。(上部パネル)T1、B、およびT*エピトープの位置および配列を示す、P. falciparum CSタンパク質の概略図。(下部パネル)ポリリジン尾部に融合されたCSサブユニットペプチドの設計。
図2および3は、マラリアCSエピトープを含有するナノ粒子を用いた免疫後の抗体応答を示す。BALB/c(図2)およびC57BL/6(図3)マウス(3匹/群、5〜6週齢)を、第0日、第21日、および第42日に免疫化した。第28日にマウスから採血し、プールした血清を、ELISAによってT1BT*特異的IgG力価について試験した。 図2および3は、マラリアCSエピトープを含有するナノ粒子を用いた免疫後の抗体応答を示す。BALB/c(図2)およびC57BL/6(図3)マウス(3匹/群、5〜6週齢)を、第0日、第21日、および第42日に免疫化した。第28日にマウスから採血し、プールした血清を、ELISAによってT1BT*特異的IgG力価について試験した。
図4は、マラリアナノ粒子の抗原性を示す。図中に示すナノ粒子でELISAプレートをコーティングし、NANP特異的mAb 2A10の段階希釈でプローブした。HRPコンジュゲート化二次抗体とともにインキュベートした後、Ultra TMB基質を用いて発色を行った。結果は、3つの複製試料のOD450の平均±SDを反映させている。
図5および6は、BALB/c(図5)およびC57BL/6(図6)マウスにおいてCS LbLナノ粒子により誘導されたT細胞応答を示す。表示されているようにマウスを免疫化した。第49日に脾臓細胞を採取し、CD4+またはCD8+細胞について濃化し、ELISPOTプレート中でT*またはT1を用いて再刺激した。結果は、群あたり3匹のマウスについての平均±SDを示している。 図5および6は、BALB/c(図5)およびC57BL/6(図6)マウスにおいてCS LbLナノ粒子により誘導されたT細胞応答を示す。表示されているようにマウスを免疫化した。第49日に脾臓細胞を採取し、CD4+またはCD8+細胞について濃化し、ELISPOTプレート中でT*またはT1を用いて再刺激した。結果は、群あたり3匹のマウスについての平均±SDを示している。
図7は、マラリアCSエピトープを含有するナノ粒子により誘導されたT細胞応答を示す。T1BT*ペプチドまたはナノ粒子で免疫化された後PfPbで攻撃(challenge)されたマウスからの脾臓を、IL-5およびIFNγのELISPOTにおいて、T1BT*(パネルA)またはT1(パネルB)ペプチドに対して試験した。データは、群あたり7匹のマウスの平均±SDを表している。
図8は、攻撃を受けたマウスの肝臓における寄生体RNAレベルを示す。図7で示した、PfPbで攻撃されたマウスの肝臓からRNAを抽出し、qPCRによって寄生体負荷について分析した。結果は、個々のマウスにおける肝臓RNA試料あたりの寄生体rRNAコピー数を示している。灰色の棒は、7匹のPBS処置マウスの平均との比較における寄生体rRNAコピー数の>90%(1-log)の減少を表す。点模様の明るい灰色の棒は、PBS平均との比較における>80%の減少を表す。
図9は、マラリアT1BT*エピトープを含有するLbLマイクロ粒子の免疫原性および効力を示す。C57BL/6マウスを、第0日および第21日において、表示されているように免疫化した。第28日に血清を採取し、ELISAによりT1B特異的IgG力価について、そしてTSNAにより機能的抗体について、試験した。結果は、抗体価(灰色の棒)および%阻害(赤色の棒)について、群あたり5匹のマウスの平均±SDを示している。5匹の疑似免疫化(PBS)マウスからプールされた血清を、両方のアッセイに関して使用した。*は、ELISAに関して、1140との比較においてP<0.05。**は、ELISAおよびTSNAに関して、1140との比較においてP<0.05。
図10は、図9に示したマウスのT細胞応答を示す。脾臓細胞を第28日に採取し、IFNγおよびIL-5のELISPOTプレート中でT1BT*ペプチドによって再刺激し、各プレートにおけるスポット形成細胞の数をAID ViruSpotリーダー中で計測した。結果は、群あたり3匹のマウスの平均±SDを示している。
図11は、T1BT*エピトープを含有するLbLマイクロ粒子で免疫化したマウスにおける保護効力を示す。C57BL/6マウスを、第0日、第21日、および第42日に免疫化し、第56日に攻撃を与えた。攻撃の2日後、qPCRによって、肝臓における寄生体負荷を測定した。結果は、個々のマウスの寄生体rRNAコピー数(灰色の丸)および各群についての平均値(赤い棒)を示している。図中の表記は、群あたりの保護された(寄生体rRNAの≧90%減少)マウスの数、群としての寄生体rRNAの%減少、および*P<0.05を、全てPBS対照群との比較において示している。NS=有意性なし。
図12は、MP-1141群に関して図11から無作為に選びだされた8つの個別の血清について、寄生体の攻撃に対するインビボ保護とインビトロ中和活性との比較を示す。
図13は、MP-1142群に関して図11から無作為に選びだされた8つの個別の血清について、寄生体の攻撃に対するインビボ保護とインビトロ中和活性との比較を示す。
図14は、図11に示したマウスのT細胞応答を示す。マウスは、第0日、第21日および第42日に、表示されている処置によって免疫化された(ペプチド2062はそれぞれCFAおよびIFA中)。脾臓細胞を第49日に採取し、IFNγおよびIL-5のELISPOTプレート中でT1BT*ペプチドによって再刺激した。データは、群あたり3匹のマウスの平均±SDを表している。
図15は、マラリアT1BT*エピトープを含有するLbLマイクロ粒子により誘導された細胞性免疫を示す。BALB/cマウスを、PBSによって疑似(mock)免疫化するか、またはMP-1141によって免疫化し、7日後、CD4+もしくはCD8+細胞またはその両方について枯渇させた。枯渇の翌日にインビボCTL活性を測定した。結果は、群あたり3匹のマウスにおけるペプチド特異的致死のパーセントの平均±SDを示している。X軸は、攻撃を与えた日にマウスに残存したT細胞の表現型を示している。
図16は、マラリアP. bergheiのCSエピトープを含有するLbLマイクロ粒子により誘導された細胞性免疫を示す。第0日および第28日に、BALB/cマウスを、表示されているように、フロイントのアジュバント中のDP 2147(Pb CD4+:CD8+ 融合ペプチド)、またはPb CD4+ ペプチド(MP-1182)、CD8+ ペプチド(MP-1183)、もしくはCD4+:CD8+ 融合ペプチド(MP-1184)が積載されたMPで免疫化した(各投与量中10μgのDP)。第35日に、群あたり3匹のマウスにおいてインビボCTL活性を測定した。結果は、標的ペプチドでパルスした細胞の特異的致死のパーセントの平均±SDを示している。
図17は、PfPb感染蚊への暴露による攻撃を受けた、図16の各群の残りの10匹のマウスにおける効力を示し、40時間後の肝臓における寄生体負荷をqPCRによって測定した。結果は、図11の説明文に記述したように示している。
図18は、C57BL/6マウスにおいてマラリアPam3Cys.T1Bマイクロ粒子によって誘導された抗体応答を示す。マウスは、第0日および第21日に免疫化され、第28日に採血した。血清を、ELISAにおいてT1Bペプチドに対して試験した。結果は、群あたり10匹のマウスの抗T1B IgG抗体価の平均±SDを示している。§は、MP-1167群との比較においてP < 0.05。
図19は、図18からの血清における抗体応答のアイソタイプ分布を示す。1:250希釈の個々の血清を用いてT1B ELISAを繰り返し、各血清を、アイソタイプ特異的検出抗体でプローブした。結果は、群あたり10匹のマウスの平均±SDを示している。
図20は、図18に示したマウスにおける効力を示す。C57BL/6マウスを、第0日、第21日、および第42日にPam3Cys.T1Bマイクロ粒子で免疫化し、第56日に、PfPb感染蚊に晒すことによって攻撃した。攻撃の40時間後の肝臓における寄生体負荷をqPCRによって測定した。
上記およびその他の特徴は、以下の詳細な説明、図面、および添付された特許請求の範囲から、当業者によって認識され理解されるであろう。
プラスモディウム原生動物由来のポリペプチドエピトープを含む多層フィルムが本明細書において開示され、この多層フィルムは、宿主に投与すると、その宿主において免疫応答を誘導することができる。具体的には、このフィルムは1つ以上の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)スポロゾイト周囲(circumsporozoite)タンパク質抗原を含み、このスポロゾイト周囲タンパク質抗原はT1エピトープ、Bエピトープ、および/またはT*エピトープを含有する。2つ以上の異なる多層フィルムを含む組成物も包含される。
本明細書において使用される場合、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲タンパク質抗原は、
T1: DPNANPNVDPNANPNV (配列番号1)
B: NANP (配列番号2)
T*: EYLNKIQNSLSTEWSPCSVT (配列番号3)
である。
いくつかの実施態様において、T1、B、またはT*エピトープ、特にBエピトープは、2回以上反復される。
具体的には、多層フィルムは、反対に荷電した高分子電解質の交互の層を含む。任意で、1つ以上の高分子電解質はポリペプチドである。いくつかの実施態様において、多層フィルムは、プラスモディウム原生動物に由来する複数のエピトープを含む。例えば、第1および第2のプラスモディウム原生動物ポリペプチドエピトープを、同一のもしくは異なる高分子電解質に取り付けることができ、および/または、同一のもしくは異なる多層フィルム中に存在させることができる。一実施態様では、第1および第2のプラスモディウム原生動物ポリペプチドエピトープは、同じ高分子電解質に共有結合により取り付けられ、従って同じ多層フィルム中にある。別の実施態様では、第1および第2のプラスモディウム原生動物ポリペプチドエピトープは、異なる高分子電解質に共有結合により取り付けられるが、同じ多層フィルム内で積層される。さらに別の実施態様では、第1および第2のプラスモディウム原生動物ポリペプチドエピトープは、異なる高分子電解質に共有結合により取り付けられるが、異なる多層フィルムにおいて積層され、続いてこれら異なる多層フィルムが投与に先立って混合される。
一実施態様において、組成物は、複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第1の多層フィルムを含み、その多層フィルム中の高分子電解質の層の1つは、第1の抗原性高分子電解質を含み、その第1の抗原性高分子電解質は、第1の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含み、その多層フィルム中の高分子電解質は、1,000より大きい分子量、および、分子あたり少なくとも5個の電荷を有する、ポリカチオン性材料またはポリアニオン性材料を含む。
第1の抗原性高分子電解質は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープのうちの少なくとも1つを含む。一実施態様において、第1の抗原性高分子電解質は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、およびT*エピトープのうちの2つ(例えば、T1T*、T1B、あるいはBT*)を、いずれかの順序で含む。さらに別の実施態様では、第1の抗原性高分子電解質は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、およびT*エピトープの3つすべてを含む。
一実施態様において、第1の高分子電解質は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープのうちの少なくとも1つを含むポリペプチドである。一実施態様において、第1の抗原性ポリペプチドは、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、およびT*エピトープのうちの2つ(例えば、T1T*、T1B、あるいはBT*)を、いずれかの順序で含む。複数のエピトープは、ポリペプチド鎖上で連続していてもよいし、スペーサー領域によって間隔がおかれていてもよい。同様に、エピトープは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはそれらの間の何処にでも位置し得る。さらに別の実施態様において、第1の高分子電解質は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、およびT*エピトープの3つすべてを含むポリペプチドである。T1、B、およびT*エピトープは、ポリペプチドの連続的な部分の中にあってもよいし、または、これらのエピトープのいずれかもしくはすべてが、スペーサー領域によって隔てられていてもよい。
第1の抗原性高分子電解質がポリペプチドである場合には、そのポリペプチドは、ポリペプチド多層フィルムへの堆積のために十分な電荷を含むことが特記される。一実施態様では、本明細書において説明されるように、ポリペプチドの残基あたりの実効電荷が、pH 7.0において0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、または0.5以上である。
別の実施態様では、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、およびT*エピトープが同一の高分子電解質上にある代わりに、2つあるいは3つのエピトープが別々の高分子電解質上に存在して、同一の多層フィルムに積層され得る。一実施態様では、第1の多層フィルムは、第2の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含む第2の抗原性高分子電解質をさらに含み、ここで、第1および第2の抗原性高分子電解質は、異なる熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲エピトープを含む。さらなる一実施態様では、第1の多層フィルムは、第3の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含む第3の抗原性高分子電解質をさらに含み、ここで、第1、第2、および第3の抗原性高分子電解質は、異なる熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲エピトープを含む。一実施態様において、第1、第2、および/または第3の高分子電解質は、ポリペプチドである。
一実施態様において、第1、第2、および任意で第3の高分子電解質は、別々の多層フィルム中に存在し、例えば、被覆コアの2つあるいは3つの個別の群において存在し、各群が異なる多層フィルムを含有する。従って、一実施態様では、組成物は、上記のような第1の多層フィルム、および、複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第2の多層フィルムを含み、ここで、その第2の多層フィルム中の層の1つは、第2の抗原性高分子電解質を含み、その第2の抗原性高分子電解質は、第2の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含み、これら第1および第2の抗原性高分子電解質は、異なる熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲エピトープを含む。さらなる一実施態様では、組成物は、複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第3の多層フィルムをさらに含み、ここで、その第3の多層フィルム中の層の1つは、第3の抗原性高分子電解質を含み、その第3の抗原性高分子電解質は、第3の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含み、これら第1、第2、および第3の抗原性高分子電解質は、異なる熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲エピトープを含む。いくつかの実施態様では、第1、第2、または第3の高分子電解質は、ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、組成物が2つあるいは3つの個別の粒子群を含むように、第1、第2、および第3の多層フィルムがコア粒子上に積層される。
いくつかの実施態様では、多層フィルムは、toll様受容体リガンドをさらに含む。本明細書において使用される場合、toll様受容体リガンドあるいはTLRリガンドとは、TLRに結合してTLR受容体を活性化するかあるいは抑制する分子である。病原体関連分子パターン(PAMP)および模倣物の認識を通じたTLRシグナル伝達の活性化は、炎症性サイトカイン、ケモカイン、および共刺激分子をコードする遺伝子の転写活性化へとつながり、これが抗原特異的適応免疫応答の活性化を制御し得る。TLRは、様々な炎症性疾患および癌についての潜在的治療標的として追及されてきた。活性化されると、TLRは、炎症性サイトカイン、I型インターフェロン、およびケモカインを含む多数のタンパク質ファミリーの発現を誘導する。TLR受容体リガンドは、免疫応答のためのアジュバントとして機能し得る。
代表的なTLRリガンドとしては、TLR1リガンド、TLR2リガンド、TLR3リガンド、TLR4リガンド、TLR5リガンド、TLR6リガンド、TLR 7リガンド、TLR8リガンド、TLR9リガンド、およびこれらの組合せが挙げられる。
代表的なTLR1リガンドとしては、細菌のリポペプチドが挙げられる。代表的なTLR2リガンドとしては、Pam3Cys([N-パルミトイル-S-[2,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロピル]システイン])およびPam2Cys(Pam2Cys [S-[2,3-ビス(パルミトイルオキシ) プロピル]システイン])のようなリポペプチドが挙げられる。代表的なTLR6リガンドは、ジアシルリポペプチドである。TLR1およびTLR6は、リガンドを認識するために、TLR2とのヘテロ二量体形成を必要とする。TLR1/2はトリアシルリポタンパク質(またはPam3Cysのようなリポペプチド)により活性化されるのに対し、TLR6/2は、ジアシルリポタンパク質(例えばPam2Cys)によって活性化されるが、いくらかの交差認識もあり得る。
代表的なTLR3リガンドはポリ(I:C)である。代表的なTLR4リガンドはリポ多糖(LPS)およびモノホスホリピドA(MPL)である。代表的なTLR5リガンドはフラジェリンである。代表的なTLR 7リガンドはイミキモドである。代表的なTLR8リガンドは一本鎖RNAである。代表的なTLR9リガンドは非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチドDNAである。
一実施態様において、第1、第2、または第3の抗原性高分子電解質(例えば抗原性ポリペプチド)は、共有結合により取り付けられたTLRリガンドを有する。例えば、標準的なポリペプチド合成化学により、Pam3Cysをポリペプチド鎖に共有結合によって結合させることができる。
別の実施態様では、鋳型コアのような基質が、高分子電解質層の堆積に先立ってそこに堆積された、TLRリガンドを有する。別の実施態様では、TLRリガンドは、多層フィルムの構築の際に1つ以上の高分子電解質層と一緒に堆積される。
一実施態様では、例えばCaCO3ナノ粒子、ラテックス粒子、または鉄粒子のような、コア粒子上に多層フィルムが堆積される。直径およそ 5ナノメートル(nm)から500マイクロメートル(nm)の粒子サイズが特に有用であり、例えば直径3μmの粒子のように、1μm以上の直径を有する、より大きな粒子も有用である。他の素材でできた粒子も、生体適合性であり、制御可能なサイズ分布を有し、高分子電解質ペプチドと結合するために十分な表面電荷(正または負)を有することを条件として、コアとして使用することができる。例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、キトサン、ヒアルロン酸、ゼラチン、またはそれらの組合せのような素材からできたナノ粒子およびマイクロ粒子が含まれる。コア粒子は、ヒトでの使用には不適切だと考えられている材料からできていてもよいが、ただし、これらの材料をフィルム製造後に溶解してその多層フィルムから分離できることが条件である。この鋳型コア物質の例としては、ラテックスのような有機高分子、または、シリカのような無機材料が挙げられる。
高分子電解質多層フィルムは、交互に反対の電荷を帯びた高分子電解質の層から構成される、薄いフィルム(例えば厚さ数ナノメートルから数マイクロメートル)である。そのようなフィルムは、適当な基質上に一層一層を積層させることによって形成し得る。静電気的交互積層法(「LBL」)では、高分子電解質の会合の物理的原理は静電引力である。層が順次加層されるごとにフィルムの表面電荷密度の符号が逆になるので、フィルムの集積が可能となる。LBLフィルムプロセスの一般性および相対的な単純性は、多くの異なる種類の表面に多くの異なる種類の高分子電解質を堆積させることを可能にする。ポリペプチド多層フィルムは高分子電解質多層フィルムの一態様であり、荷電したポリペプチド(本明細書では、設計されたポリペプチドと呼ぶ)を含む少なくとも1つの層を含む。他の高分子でできたフィルムと比較して、ポリペプチド多層フィルムの鍵となる利点は、その生体適合性である。LBLフィルムはカプセル化のためにも使用できる。ポリペプチドフィルムとマイクロカプセルの応用例としては、例えば、ナノリアクター、バイオセンサー、人工細胞、および薬物送達ベヒクルが含まれる。
「高分子電解質」という用語は、1,000より大きい分子量を有し、分子あたり少なくとも5つの電荷を有する、ポリカチオン性材料およびポリアニオン性材料を包含する。適切なポリカチオン性材料としては、例えば、ポリペプチドおよびポリアミンが挙げられる。ポリアミンとしては例えば、ポリ-L-リシン(PLL)またはポリ-L-オルニチンのようなポリペプチド、ポリビニルアミン、ポリ(アミノスチレン)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(N-メチルアミノアクリレート)、ポリ(N-エチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリ(N-メチルアミノメタクリレート)、ポリ(N-エチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノメタクリレート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(N,N,N-トリメチルアミノアクリレートクロライド)、ポリ(メチルアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、キトサン、および上記ポリカチオン性材料の1つ以上を含む組合せが挙げられる。適切なポリアニオン性材料としては、例えば、ポリ-L-グルタミン酸(PGA)およびポリ-L-アスパラギン酸のようなポリペプチド、DNAおよびRNAのような核酸、アルジネート、カラギーナン、ファーセレラン、ペクチン、キサンタン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸(またはポリメタクリル酸)、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、酸性ポリサッカライド、およびクロスカルメロース、ペンダントカルボキシル基を含む合成ポリマーおよびコポリマー、ならびに上記ポリアニオン性材料の1つ以上を含む組合せが挙げられる。一実施態様では、プラスモディウム原生動物エピトープと高分子電解質とは同じ符号の電荷を有する。
一実施態様では、任意でプラスモディウム原生動物エピトープ含有高分子電解質を含む、上記フィルムの1つ以上の高分子電解質層は、設計されたポリペプチドである。一実施態様では、静電気的交互積層法に適したポリペプチドのための設計原理は、米国特許公開公報第2005/0069950号に記述されているものであり、この公報は、そのポリペプチド多層フィルムの教示について、引用により本明細書に組み入れられる。簡潔に述べると、設計における主たる検討事項はポリペプチドの長さおよび電荷である。静電気はLBLの原理をなすものであるから、設計の最も重要な検討事項である。適切な荷電特性を有していないと、ポリペプチドはpH 4〜10の水溶液に実質的に不溶となり得、LBLによる多層フィルム製造のためには容易に使用できなくなる。他の設計検討事項としては、ポリペプチドの物理的構造、ポリペプチドから形成されるフィルムの物理的安定性、ならびに、フィルムおよび構成ポリペプチドの生体適合性および生理活性が含まれる。
設計されたポリペプチドとは、反対に荷電した表面に安定的に結合するために十分な電荷を有するポリペプチド、すなわち、フィルム形成の原動力が静電気である多層フィルムの一層として、堆積できるポリペプチドを意味する。短期安定(short stable)フィルムとは、いったん形成してPBS中で37℃で24時間インキュベートすると、その構成要素を半分より多く保持するフィルムである。特定の実施態様では、設計されたポリペプチドは少なくとも15アミノ酸の長さであり、pH 7.0においてポリペプチドの残基あたりの実効電荷の大きさが0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、または0.5以上である。pH 7.0において正に荷電した(塩基性である)天然アミノ酸は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、オルニチン(Orn)、およびリジン(Lys)である。pH 7.0において負に荷電した(酸性である)天然アミノ酸残基は、グルタミン酸(Glu)およびアスパラギン酸(Asp)である。反対の電荷のアミノ酸残基の混合物も、全体的な電荷の実効比率が所定の基準に適合する限り利用できる。一実施態様では、設計されたポリペプチドはホモポリマーではない。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは分岐していない。
一つの設計検討事項は、ポリペプチドLBLフィルムの安定性を調節することである。イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、および疎水性相互作用が、多層フィルムの安定性に貢献する。加えて、同一の層内または隣接する層にあるポリペプチドの、スルフヒドリル含有アミノ酸同士の間に形成されるジスルフィド共有結合も、構造的強度を増加させ得る。スルフヒドリル含有アミノ酸としてはシステインおよびホモシステインが含まれ、これらの残基は、合成の設計されたペプチド中に容易に組み入れることができる。さらに、スルフヒドリル基は、文献に詳しく記述されている方法によって、ポリ-L-リシンまたはポリ-L-グルタミン酸のような高分子電解質ホモポリマーに組み入れることもできる。スルフヒドリル含有アミノ酸は、酸化電位の変化によって、多層ポリペプチドフィルムの層を「ロック」する(共に結合させる)ことおよび「ロック解除」することに使用できる。また、スルフヒドリル含有アミノ酸を、設計されたポリペプチドに組み入れることにより、分子間ジスルフィド結合形成のおかげで、薄フィルム製造において比較的短いペプチドを使用することが可能となる。
一実施態様では、設計されたスルフヒドリル含有ポリペプチドは、化学的に合成されたか宿主生物体において生成されたかに関わらず、早まったジスルフィド結合形成を防ぐために還元剤の存在下で、LBLにより会合される。フィルムが会合した後に、還元剤を除去し、酸化剤を加える。酸化剤の存在下で、スルフヒドリル基間でジスルフィド結合が形成し、チオール基が存在する層内および層間でポリペプチドをまとめて「ロック」する。適切な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール(BME)、還元型グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド(TCEP)、およびこれらの複数の化学物質の組合せが挙げられる。適切な酸化剤としては、酸化型グルタチオン、tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、チメロサール、ジアミド、5,5'-ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、4,4'-ジチオジピリジン、臭素酸ナトリウム、過酸化水素、テトラチオン酸ナトリウム、ポルフィリンジン(porphyrindin)、オルトヨードソ安息香酸ナトリウム、およびこれらの複数の化学物質の組合せが挙げられる。
ジスルフィド結合に代わるものとして、他の共有結合を生成する化学作用も、LBLフィルムを安定化させるのに使用できる。ポリペプチドで構成されるフィルムでは、アミド結合を生成する化学作用が特に有用である。適切なカップリング試薬の存在下では、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸のように、カルボン酸基を含む側鎖を有するもの)は、アミン基を含む側鎖を有するアミノ酸(例えばリジンおよびオルニチン)と反応しアミド結合を形成する。アミド結合は、生物学的条件下でジスルフィド結合よりも安定であり、交換反応も起こさない。多くの試薬が、アミド結合のためにポリペプチド側鎖を活性化させることに使用され得る。水溶性1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のようなカルボジイミド試薬は、わずかに酸性であるpHにおいてアスパラギン酸またはグルタミン酸と反応して中間産物を形成し、この中間産物がアミンと非可逆的に反応してアミド結合を生成する。N-ヒドロキシスクシンイミドのような添加剤がしばしば反応に加えられ、アミド形成の速度と効率を促進させる。反応後、遠心分離および吸引によって、ナノ粒子またはマイクロ粒子から可溶性の試薬を除去する。他のカップリング試薬の例としては、ジイソプロピルカルボジイミド、HBTU、HATU、HCTU、TBTU、およびPyBOPが挙げられる。他の添加剤の例としては、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、および1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾールが挙げられる。アミド架橋の程度は、カップリング試薬の化学量論性、反応時間、または反応温度を調節することにより調節することができ、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)等の技術によってモニターすることができる。
共有結合により架橋されたLBLフィルムは、例えば向上した安定性のような、望ましい特性を有する。安定性の向上により、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノカプセル、またはマイクロカプセルの製造において、よりストリンジェントな条件を使用することが可能となる。ストリンジェントな条件の例としては、高温、低温、極低温、高遠心速度、高塩濃度バッファー、高pHバッファー、低pHバッファー、フィルターろ過、および長期間貯蔵が挙げられる。
高分子電解質多層フィルムを製造する方法は、反対に荷電した化学種の複数の層を基質上に堆積させることを含む。一実施態様では、少なくとも1つの層が、設計されたポリペプチドを含む。順次加層される高分子電解質は、反対の実効電荷を有する。一実施態様では、高分子電解質の堆積は、LBLのための適切な実効電荷を生ずるpHにおいて高分子電解質を含む水溶液に、基質を曝すことを含む。他の実施態様では、高分子電解質の基質への堆積は、反対に荷電したポリペプチドの溶液を順次噴きつけることによって達成される。さらに別の実施態様では、基質への堆積は、反対に荷電した高分子電解質の溶液を同時に噴きつけることによって達成される。
多層フィルムを形成するLBL法においては、隣接する層の反対電荷が、会合の原動力を提供する。相対する層の高分子電解質が、同じ実効線電荷密度を有することは重要ではなく、重要なのは、相対する層が反対の電荷を有することだけである。標準的な堆積によるフィルム会合の手順は、ポリイオンがイオン化されるpH(すなわち、pH 4〜10)においてポリイオンの水溶液を形成すること、表面電荷を帯びた基質を提供すること、および、上記荷電した高分子電解質の溶液に上記基質を交互に浸漬することを含む。層を交互に加層する間に基質を洗浄してもよい。
高分子電解質の堆積にとって適切な高分子電解質濃度は、当業者ならば容易に決定することができる。一つの典型的な濃度は0.1〜10 mg/mLである。ポリ(アクリル酸)やポリ(アリルアミン塩酸塩)のような典型的な非ポリペプチド高分子電解質では、典型的な層の厚さは、溶液のイオン強度に依存して、約3Å〜約5Åである。短い高分子電解質は通常、長い高分子電解質よりも薄い層を形成する。フィルムの厚さについては、高分子電解質フィルムの厚さは湿度に依存し、層の数およびフィルムの組成にも依存する。例えば、50 nm厚のPLL/PGAフィルムは、窒素で乾燥させると1.6 nmに縮小する。一般的に、フィルムの水和状態、および会合に利用される高分子電解質の分子量に依存して、1 nm〜100 nmあるいはそれ以上の厚さのフィルムを形成することができる。
加えて、安定な高分子電解質多層フィルムを形成するために必要な層数も、フィルム中の高分子電解質によるであろう。低分子量ポリペプチド層のみを含むフィルムでは、反対に荷電したポリペプチドの二重層を、1つのフィルムが通常4つ以上有する。ポリ(アクリル酸)やポリ(アリルアミン塩酸塩)のような分子量の大きい高分子電解質を含むフィルムでは、反対に荷電した高分子電解質の二重層を1つ含むフィルムが安定であり得る。高分子電解質フィルムは動的であることが研究によって示されている。フィルム中に含まれている高分子電解質は、層間を移動することができ、高分子電解質溶液中に懸濁させると、同じように荷電した可溶性高分子電解質と交換され得る。高分子電解質フィルムはまた、懸濁バッファーの温度、pH、イオン強度、または酸化電位のような環境の変化に応じて、分解あるいは溶解し得る。従ってある種の高分子電解質、特にペプチド高分子電解質は、一時的安定性を示す。ペプチド高分子電解質フィルムの安定性は、制御された条件下で一定の時間にわたってフィルムを適切なバッファーに懸濁した後に、適切なアッセイ(例えばアミノ酸分析、HPLCアッセイ、または蛍光アッセイ)を用いてフィルム中のペプチド量を測定することによって、モニターすることができる。ペプチド高分子電解質フィルムは、ワクチンとしての貯蔵および使用にかかる条件下(例えば、4℃〜37℃というような周囲温度における中性バッファー中)で最も安定である。これらの条件下では、安定なペプチド高分子電解質フィルムは、少なくとも24時間、多くの場合は14日間以上にわたって、その構成ペプチドのほとんどを保持する。
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つ以上のプラスモディウム原生動物エピトープに共有結合により連結された、1つ以上の表面吸着領域を含み、ここで、上記設計されたポリペプチドと上記1つ以上の表面吸着領域とは電荷の符号が同じであり、換言すれば、それらは両方とも全体として正に荷電しているか、または両方とも全体として負に荷電しているか、である。本明細書でいう表面吸着領域とは、例えばプラスモディウム原生動物由来のエピトープを含むペプチドが多層フィルムへと堆積できるように十分な電荷を都合よく提供する、設計されたポリペプチドの荷電領域である。一実施態様では、上記1つ以上の表面吸着領域と、上記1つ以上のプラスモディウム原生動物エピトープとは、正味で同じ極性を有する。別の実施態様では、pH 4〜10における設計されたポリペプチドの可溶性は約0.1 mg/mL以上である。別の実施態様では、pH 4〜10における設計されたポリペプチドの可溶性は約1 mg/mL以上である。可溶性は、水溶液からのポリペプチドの堆積を促進させる上で、実際的な限定事項となる。抗原性ポリペプチドの重合の程度についての実際的な上限は、約1,000残基である。しかしながら、適切な合成法によってもっと長い合成ポリペプチドを実現し得ることも考えられる。
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、2つの表面吸着領域、すなわちN末端表面吸着領域とC末端表面吸着領域とに隣接した、単一の抗原性プラスモディウム原生動物エピトープを含む。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つの表面吸着領域に隣接した、単一の抗原性プラスモディウム原生動物エピトープを含み、この表面吸着領域は、プラスモディウム原生動物エピトープのN末端に連結する。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つの表面吸着領域に隣接した単一の抗原性プラスモディウム原生動物エピトープを含み、この表面吸着領域は、プラスモディウム原生動物エピトープのC末端に連結する。
設計されたポリペプチドのそれぞれの独立領域(例えばプラスモディウム原生動物エピトープおよび表面吸着領域)は、液相ペプチド合成、固相ペプチド合成、または適切な宿主生物体の遺伝子工学によって、別々に合成することができる。液相ペプチド合成は、今日市場に出回っている認可されたペプチド医薬のほとんどを製造するために使用されている方法である。液相ペプチド合成法と固相ペプチド合成法との組合せを使用して、比較的長いペプチド、さらには、小さなタンパク質さえも合成することができる。ペプチド合成業者は、個別料金制に基づいて難しいペプチドを合成する、専門的技術と経験とを有している。合成は、優良製造規範(GMP)条件下において、臨床試験および商業的な薬剤発売に適した規模で実施される。
あるいは、上記さまざまな独立領域は、液相ペプチド合成、固相ペプチド合成、または適切な宿主生物体の遺伝子工学によって、単一のポリペプチド鎖として一緒に合成することもできる。特定の場合ごとのアプローチの選択は便宜性または経済性の問題である。
もし様々なプラスモディウム原生動物エピトープおよび表面吸着領域を別々に合成するのであれば、例えばイオン交換クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーによっていったん精製し、ペプチド結合合成によって連結する。すなわち、表面吸着領域のN末端とプラスモディウム原生動物エピトープのC末端とを共有結合で連結して、設計されたポリペプチドを産生する。あるいは、表面吸着領域のC末端とプラスモディウム原生動物エピトープのN末端とを共有結合で連結して、設計されたポリペプチドを産生する。個々の断片を固相法により合成し、完全に保護された、または完全に無保護の、または部分的に保護された、セグメントとして得ることができる。上記セグメントは、液相反応または固相反応において、共有結合で連結させることができる。もし1つのポリペプチド断片がN末端残基としてシステインを含み、他方のポリペプチド断片がC末端残基としてチオエステルまたはチオエステル前駆体を含む場合には、これら2つの断片は、一般的にネイティブライゲーションとして(当業者の間では)知られる特異的反応により、溶液中で自発的にカップリングする。ネイティブライゲーションは、完全に脱保護された、または部分的に保護されたペプチド断片を用いて、水溶液中で、希釈された濃度において実行することができるので、設計されたペプチドの合成のためには特に魅力的な選択肢である。
一実施態様では、プラスモディウム原生動物エピトープおよび/または表面吸着領域は、米国特許第7,723,294号に記載されているように、ペプチド結合または非ペプチド結合で連結され、この米国特許は、多層フィルムで使用するためのポリペプチドのセグメントを連結するために非ペプチド結合を使用する教示について、引用により本明細書に組み入れられる。適切な非ペプチド性リンカーとしては、例えば、-NH-(CH2)s-C(O)-のようなアルキルリンカーが挙げられ、ここでs=2〜20である。アルキルリンカーは、任意で、例えば低級アルキル(例えばC1〜C6)、低級アシル、ハロゲン(例えばCl、Br)、CN、NH2、フェニル等の非立体障害性の基で置換される。もう1つの典型的な非ペプチド性リンカーは、-NH-(CH2-CH2-O)n,-C(O)-のようなポリエチレングリコールリンカーであり、ここでnは、リンカーの分子量が100〜5000 Daとなり、特に100〜500 Daとなるような数字である。本明細書に記載されるリンカーの多くは、固相ペプチド合成に適した形態で、販売会社から入手できる。
一実施態様では、プラスモディウム原生動物由来の1つ以上のポリペプチドエピトープが、共有結合を介して、1つ以上の高分子電解質(例えばポリペプチドまたはその他の高分子電解質)に共有結合的に連結する。適切な共有結合の例としては、アミド、エステル、エーテル、チオエーテル、およびジスルフィドが挙げられる。当業者は、エピトープペプチド中に見られる様々な官能基を利用して、適切な電解質への結合を作ることができる。例えば、エピトープペプチド中には、C末端において、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸といったアミノ酸の側鎖において、カルボン酸を見出すことができる。カルボン酸は、ポリ-L-リシンのようなペプチド高分子電解質に見られる一級アミンまたは二級アミンと反応させるために、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような適切なペプチドカップリング試薬で活性化させることができる。結果として生じるアミド結合は、周囲条件下で安定である。逆に、エピトープペプチド中のアミン基と反応させるために、ペプチド高分子電解質中の酸性基をEDCで活性化させることもできる。有用なアミン基は、エピトープペプチドのN末端において、またはリジン残基の側鎖において、見出すことができる。
エピトープペプチドは、ジスルフィド結合を介して高分子電解質に連結させることもできる。PGAまたはPLLのような高分子電解質は、その側鎖の一部がスルフヒドリル基を含むように、化学的に修飾することができる。適切な酸化体の存在下では、これらのスルフヒドリルは、エピトープペプチド中に含まれるシステイン残基のスルフヒドリル基と反応する。このシステインは、プラスモディウム原生動物のような病原体のタンパク質配列由来の固有のシステインであってもよいし、または、ペプチド合成の際にエピトープに意図的に組み入れられた非固有のシステインであってもよい。適切な酸化体としては、DTNB、2,2’-ジチオピリジン、過酸化水素、シスチン、および酸化型グルタチオンが挙げられる。ジスルフィド結合を介したエピトープペプチドの高分子電解質への連結は、特に有用である。ジスルフィドは、フィルムの製造および貯蔵の通常条件下で安定であるが、細胞中に自然に見出される還元剤により容易に断裂し、このことにより、エピトープペプチドが免疫的プロセシングのために自由に使われるようになる。
エピトープペプチドは、チオエーテル結合を介して高分子電解質に連結させることもできる。ハロアセチル基のような、スルフヒドリルと特異的に反応する適切な求電子種を伴った合成エピトープペプチドを合成することができる。例えば、N末端にクロロアセチルを含むエピトープペプチドは、上述のPGA-SHのようなスルフヒドリル含有高分子電解質に対して、安定な結合を形成する。
エピトープペプチドは、二官能性リンカー分子を介して高分子電解質に共有結合により連結させることもできる。二官能性リンカーは通常、エピトープペプチドまたは高分子電解質分子に存在する求核種と反応することができる、2つの求電子性基を含む。ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーという、2種類のリンカー分子が市販されている。ホモ二官能性リンカーは、非反応性のスペーサーでつなげられた2つのコピーの求電子性基を含む。多くの場合、求電子種は、求核性アミンと反応する、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルまたはスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド(スルホNHS)のような活性エステルである。ホモ二官能性NHSエステルの例としては、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)、グルタル酸ジスクシンイミジル、プロピオン酸ジチオビス(スクシンイミジル)、スベリン酸ジスクシンイミジル、酒石酸ジスクシンイミジルが挙げられる。求電子種は、エピトープおよび高分子電解質分子上にある求核性アミンと共にイミドを形成する、アルデヒド基である場合もある。イミド結合は安定性が一時的であるが、水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤、または触媒による水素化によって、安定な構造に変換させることができる。最も一般的に使用されるホモ二官能性アルデヒドリンカーは、グルタルアルデヒドである。
一般的に使用される他のホモ二官能性リンカーは、求核性チオールと特異的に反応する求電子種を含み、これを使用して、上記のように、システイン含有エピトープペプチドをスルフヒドリル含有高分子電解質と連結させることができる。スルフヒドリル特異的ホモ二官能性リンカーの例としては、1,4-ビスマレイミドブタン、1,4ビスマレイミジル-2,3-ジヒドロキシブタン、ビスマレイミドへキサン、ビス-マレイミドエタン、1,4-ジ-[3´-(2´-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ブタン、ジチオ-ビスマレイミドエタン、1,6-へキサン-ビス-ビニルスルホンが挙げられる。
ヘテロ二官能性のクラスに属する架橋剤のメンバーは、2つの異なる反応基を含み、これらの反応基は、常にではないが多くの場合、求電子種であり、基質分子中の異なる官能基と特異的に反応する。特に有用なのは、スルフヒドリルに特異的な1つの求電子基とアミンに特異的なもう1つの求電子種とを含むリンカーである。これらの試薬の例としては、N-スルホスクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノ安息香酸、N-スクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノ安息香酸、スクシンイミジル3-[ブロモアセトアミド]プロピオン酸、N-スクシンイミジルヨード酢酸、スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボン酸、スクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボン酸、([N-e-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオン酸、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)へキサン酸、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-a-[2-ピリジルジチオ]トルエンが挙げられる。
エピトープペプチドおよび高分子電解質の両方に通常存在するか、またはそれらの分子のいずれかに容易に導入することができる、広範な官能基により、所望の基質に最も適した連結戦略を選ぶことが可能となる。想定しやすい一例としては、システイン含有エピトープペプチドをPLLに連結させることがある。
非ペプチド性リンカーの化学に依存して、ポリペプチドセグメントは多様な方法で連結させることができる。例えば、第一のポリペプチドセグメントのN末端を第二のポリペプチドセグメントのC末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのN末端を第二のポリペプチドセグメントのN末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのC末端を第二のポリペプチドセグメントのC末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのC末端を第二のポリペプチドセグメントのN末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのC末端もしくはN末端を第二のポリペプチドセグメントのペンダント側鎖に連結させること、または、第二のポリペプチドセグメントのC末端もしくはN末端を第一のポリペプチドセグメントのペンダント側鎖に連結させること、ができる。しかしながら、どの位置に連結されるかに関わらず、第一および第二のセグメントが非ペプチド性リンカーによって共有結合的に連結されることになる。
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、共有結合された1つ以上の表面吸着領域と1つ以上のプラスモディウム原生動物エピトープとの特有の組合せである。プラスモディウム原生動物エピトープは長さについて特に限定はなく、直線状エピトープであっても立体構造性エピトープであってもよい。エピトープが含有するアミノ酸残基の数は、3つほどものから、複雑な立体構造性エピトープでは数百アミノ酸残基のものまで、様々であり得る。
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つのプラスモディウム原生動物エピトープと1つの表面吸着領域とを含む。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つのプラスモディウム原生動物エピトープと2つの表面吸着領域とを含み、これら2つの表面吸着領域の内の1つはプラスモディウム原生動物エピトープのN末端に連結し、もう1つはプラスモディウム原生動物エピトープのC末端に連結する。表面吸着領域の目的は、多層フィルムを形成するために、ポリペプチドを、反対に荷電した表面に吸着できるようにすることである。
プラスモディウム原生動物エピトープの数および/または長さに対する、設計されたポリペプチド中の表面吸着領域の数は、可溶性についての要求に関係する。例えば、もしプラスモディウム原生動物エピトープが(例えば)3アミノ酸残基という短いアミノ酸配列である場合、設計されたポリペプチドを適切に荷電した表面に吸着させるためには、少なくとも8つのアミノ酸残基を有する表面吸着領域が1つ要求されるだけである。対照的に、もしプラスモディウム原生動物エピトープが(例えば)120アミノ酸残基を含む、タンパク質の可溶性フォールド構造ドメインである場合は、設計されたポリペプチドを水溶性にして吸着に適するようにするために十分な電荷を付与するためには、2つの表面吸着領域が必要となり得る。表面吸着領域は、切れ目なく上記ドメインのN末端に位置するか、切れ目なく上記ドメインのC末端に位置するか、または、分断されてN末端に1つC末端に1つ存在し得る。それに加えて、プラスモディウム原生動物エピトープが、その本来の配列中に、表面吸着領域として作用し得る荷電セグメント(負に荷電または正に荷電)を含んでいてもよい。
ポリペプチドまたは抗原は、1つ以上の個別の抗原決定基を含み得る。抗原決定基とは、複数鎖タンパク質の免疫原性部分を意味することもあり得る。
特異的抗体にかかる抗原決定基またはエピトープの位置および組成を決定するための方法および技術は、当該技術分野においてよく知られている。これらの技術は、プラスモディウム原生動物エピトープとして使用するためのエピトープを同定および/または解析するために使用することができる。一実施態様では、抗原特異的抗体にかかるエピトープのマッピング/解析方法は、その抗原性タンパク質において露出したアミン/カルボキシルの化学修飾を使用したエピトープ「フットプリント法」により決定することができる。そのようなフットプリント法技術の一例は、HXMS(質量分析で検出される水素-重水素交換)の使用であり、そこでは、レセプターおよびリガンドタンパク質アミドプロトンの水素/重水素交換、結合、ならびに逆交換が起こり、タンパク質結合に関与している骨格アミド基は逆交換から保護されるので、重水素化されたままになる。この時点で、ペプチド分解、高速マイクロボア液体クロマトグラフィー分離、および/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析により、関連する領域を同定することができる。
別の実施態様では、適切なエピトープ同定技術は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)であり、そこでは通常、遊離の抗原、および、抗原結合ペプチド(例えば抗体)と複合体をなした抗原の、二次元NMRスペクトラムにおけるシグナルの位置が比較される。抗原は通常、選択的に15Nでアイソトープ標識され、NMRスペクトラム中で抗原に相当するシグナルだけが現れて抗原結合ペプチドからはシグナルが現れないようにする。抗原結合ペプチドとの相互作用に関与しているアミノ酸から生ずる抗原シグナルは、複合体のスペクトラムでは、遊離の抗原のスペクトラムと比較して、通常は位置がシフトし、それによって、結合に関与するアミノ酸を同定することができる。
別の実施態様では、エピトープマッピング/解析は、ペプチドスキャニングによって行われ得る。このアプローチでは、抗原のポリペプチド鎖の全長に渡る一連のオーバーラップペプチドを調製して、それらを免疫原性について個々に試験する。相当するペプチド抗原の抗体力価は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ等の標準的な方法によって決定される。それからこれらの多様なペプチドを免疫原性についてランク付けし、ワクチン開発のためのペプチド設計の選択のための経験論的根拠を提供することができる。
別の実施態様では、エピトープのマッピング及び同定との関連において、プロテアーゼ消化技術もまた有用となり得る。例えば、トリプシンを、抗原タンパク質に対して約1:50の比率で使用して、37℃、pH 7〜8で一晩(O/N)消化を行い、その後、ペプチド同定のために質量分析(MS)解析を行うことにより、抗原決定基関連領域/配列をプロテアーゼ消化によって決定することができる。その後、トリプシン消化をしたサンプルと、CD38BPとインキュベートした後に例えばトリプシンによる消化をしたサンプル(それによって結合物のフットプリントが現れる)との比較により、抗原タンパク質によってトリプシン分解から保護されていたペプチドを同定することができる。キモトリプシン、ペプシン等の他の酵素も、追加酵素としてまたは代替酵素として、同様のエピトープ解析方法において使用することができる。さらに、プロテアーゼ消化は、既知の抗体を使用して、既知の抗原タンパク質中における抗原決定基配列である可能性を有する配列の位置を決定するための、迅速な方法を提供することができる。他の実施態様では、エピトープのマッピング及び同定の文脈においても、プロテアーゼ消化技術が有用となり得る。
本明細書ではさらに、免疫原性組成物が開示され、この免疫原性組成物は、高分子電解質の2つ以上の層を含む多層フィルムを含み、ここで、隣接する層は反対に荷電した高分子電解質を含み、1つの層がプラスモディウム原生動物エピトープを含む。この免疫原性組成物は、任意で、設計されたポリペプチドを含む1つ以上の層をさらに含む。
一実施態様では、免疫原性組成物は、複数のプラスモディウム原生動物エピトープを、同じかまたは異なる高分子電解質(例えば設計されたポリペプチド)上に含む。複数の抗原決定基は、同一のまたは異なる感染因子に由来したものであり得る。一実施態様では、免疫原性組成物は、複数の固有な抗原性高分子電解質を含む。別の実施態様では、この免疫原性組成物は、各高分子電解質中に複数のプラスモディウム原生動物エピトープを含む、複数の免疫原性高分子電解質を含む。これらの免疫原性組成物の1つの利点は、単一の合成ワクチン粒子中において、複数の抗原決定基、または、一つのリニアな抗原決定基の複数の立体構造を提示することができることである。複数の抗原決定基を有するこのような組成物は、複数のエピトープに対する抗体を生ずる可能性を有しており、その生物の免疫系によって産生される抗体の少なくともいくつかが、例えば病原体を無力化させたり癌細胞上の特定の抗原を標的にしたりするであろうという見込みを増加させる。
免疫原性組成物の免疫原性は、多くの方法で増強することができる。一実施態様では、多層フィルムは、任意で、1つ以上の追加の免疫原性生理活性分子を含む。必須ではないが、上記1つ以上の追加の免疫原性生理活性分子は、通常、1つ以上の追加の抗原決定基を含む。適切な追加の免疫原性生理活性分子としては、例えば、薬剤、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸、脂質、リン脂質、炭水化物、多糖、リポ多糖、低分子量免疫刺激性分子、または上記生理活性分子の1つ以上を含む組合せが挙げられる。他の種類の追加の免疫増強物質としては、機能性膜断片、膜構造、ウイルス、病原体、細胞、細胞の凝集、細胞小器官、または上記生理活性構造の1つ以上を含む組合せが挙げられる。
一実施態様では、多層フィルムは、任意で、1つ以上の追加の生理活性分子を含む。この1つ以上の追加の生理活性分子は、薬剤であり得る。あるいは、上記免疫原性組成物は、コアを囲む中空の殻またはコーティングの形態をとる。このコアは、多様な異なる封入物、例えば1つ以上の追加の生理活性分子(例えば薬剤)を含む。従って、本明細書に記載されているように設計された免疫原性組成物は、例えば免疫応答の誘導および標的化された薬物送達のような、併用療法のために使用することもできる。「結晶」形態にある適切な治療物質のミクロサイズの「コア」が、抗原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物によって封入されていてもよく、結果として得られるマイクロカプセルを薬剤送達に使用することができる。上記コアは、ある条件(例えば高pHまたは低温度)下では不溶性で、制御された放出が起こる条件下では可溶性であってもよい。結晶上の表面電荷は、ζ電位測定(液状媒体中のコロイド粒子上における電荷を静電単位で決定するために使用される)によって決定することができる。マイクロカプセルの内容物が、マイクロカプセル内部から周囲環境へ放出される速度は、多くの因子に依存し、それらの因子としては、封入しているシェルの厚さ、シェルにおいて使われている抗原性ポリペプチド、ジスルフィド結合の存在、ペプチドの架橋の程度、温度、イオン強度、および、ペプチドを会合させることに使用される方法が挙げられる。一般的に、カプセルが厚いほど、放出時間は長くなる。
別の実施態様では、追加の免疫原性生体分子は、宿主生物による所望の免疫原の合成を誘導することができる、または、病原体からの遺伝情報の発現を妨害することができる、核酸配列である。前者の場合では、そのような核酸配列は、例えば、当業者に知られる方法によって適切な発現ベクター中に挿入される。インビボで高効率遺伝子導入を生じさせる上で適切な発現ベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびワクシニアウイルスベクターが挙げられる。そのような発現ベクターの作動エレメントとしては、少なくとも1つのプロモーター、少なくとも1つのオペレーター、少なくとも1つのリーダー配列、少なくとも1つの終止コドン、ならびに、ベクター核酸の適切な転写およびその後の翻訳にとって必要であるかまたは好ましい、他のあらゆるDNA配列が挙げられる。特に、そのようなベクターは、宿主生物によって認識される少なくとも1つの複製開始点と共に、少なくとも1つの選択可能マーカー、および、核酸配列の転写を開始させることができる少なくとも1つのプロモーター配列を含むことが企図される。後者の場合では、そのような核酸配列の複数のコピーを送達用に(例えば、静脈内送達用のカプセルの形態のポリペプチド多層フィルムにその核酸を封入することによって)調製する。
リコンビナント発現ベクターの構築においては、所望の核酸配列の複数のコピーおよびそれに付随する作動エレメントを各ベクターに挿入し得る、ということにも加えて留意すべきである。そのような実施態様では、宿主生物によるベクターあたりの所望タンパク質の産生量がより大きくなる。ベクターに挿入することができる核酸配列のコピー数は、結果として得られるベクターが、そのサイズのために、適切な宿主微生物中に導入されてそこで複製され転写される能力を有するか否かということだけにより制限される。
さらなる実施態様では、免疫原性組成物は、抗原性高分子電解質/免疫原性生理活性分子の混合物を含む。これらは同じ抗原に由来していてもよいし、同じ感染体もしくは疾患に由来する異なる抗原であってもよいし、または、異なる感染体もしくは疾患由来であってもよい。この複合体または混合物は、従って、送達システムの抗原性ペプチド/タンパク質成分によって特定されるとおり、多数の抗原、および場合によっては多数の感染体もしくは疾患に対して、免疫応答を起こさせる。
一実施態様では、多層フィルム/免疫原性組成物は、病原体に対する応答を免疫系から誘導する。一実施態様では、ワクチン組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わされた免疫原性組成物を含む。従って、病原性疾患に対するワクチン接種の方法は、ワクチン接種を必要としている患者に、有効量の免疫原組成物を投与することを含む。
薬学的に許容される担体としては、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸共重合体、不活性ウイルス粒子等、大きくてゆっくり代謝される巨大分子が挙げられるが、それらに限定されない。薬学的に許容される塩を組成物に使用することもでき、そのような塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩のような無機塩、および、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩のような有機酸の塩がある。組成物は、水、食塩水、グリセロール、およびエタノールのような液体を含んでいてもよいし、湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤のような物質を含んでいてもよい。リポソームを担体として使用することもできる。
脊椎動物において疾患または病原体に対する免疫応答を誘導する方法(例えばワクチン接種)は、プラスモディウム原生動物エピトープを含む多層フィルムを含む免疫原性組成物を投与することを含む。一実施態様では、プラスモディウム原生動物エピトープを含む高分子電解質は、多層フィルムの最も外側の層、または溶媒にさらされる層にある。免疫原性組成物は、経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、舌下投与、皮内投与、肺投与、または経皮投与することができ、ブースター投与を伴っても伴わなくてもよい。一般的に、組成物は、その投与製剤に適合した方法で、かつ、予防上および/または治療上有効であろう量において投与される。投与される免疫原性組成物の正確な量は、実施者の判断に依存し、それぞれの患者に特有の量であり得る。免疫原性組成物の治療上有効な量は、投与スケジュール、投与される抗原の単位投与量、組成物が他の治療剤との組合せで投与されるか否か、ならびに、投与対象の免疫状態および健康状態にとりわけ依存するであろうことは、当業者にとっては明らかであろう。当該技術分野ではよく知られているように、治療上有効な投与量は、患者の特性(年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患、等)に基づいて、通常の技術を有する医療従事者が決定することができる。また、日常的な研究がさらに行われるに従って、多様な患者における多様な状態の治療のための適切な投与レベルに関する、より具体的な情報が明らかとなるであろうし、通常の技術を有する実施者が、投与対象の治療状況、年齢、および全般的な健康状態を考慮して、適切な投与量を確認することができる。
免疫原性組成物は、任意で、アジュバントを含む。アジュバントは、一般的に、非特異的な形で受容者の免疫応答を促進させる物質を含む。アジュバントの選択は、ワクチン接種する対象に依る。好ましくは、薬学的に許容されるアジュバントが使用される。例えば、ヒト用ワクチンでは、完全および不完全フロイントアジュバントを含む、油性または炭化水素性エマルジョンアジュバントは避けるべきである。ヒトに使用するのに適したアジュバントの一例は、ミョウバン(アルミナゲル)である。しかしながら、動物用ワクチンは、ヒトでの使用が不適切なアジュバントを含有し得る。
免疫応答は、そのような応答を誘発する能力を有するあらゆるタンパク質またはペプチドの提示によって誘発し得ることが企図される。一実施態様では、抗原は、感染性疾患の特定の病原に対して強い免疫応答を生じさせる、鍵となる一エピトープ、すなわち免疫優性エピトープである。所望する場合には、免疫応答の見込みを上昇させるために、2つ以上の抗原またはエピトープを免疫原性組成物に含ませてもよい。
一実施態様では、複数のプラスモディウム原生動物ペプチドまたはタンパク質エピトープが、LBLフィルムに組み入れられる。複数の個別のエピトープを、1つの設計されたペプチド分子中で合成または発現することができる。1つの設計されたペプチド中に複数のエピトープを配置することには一定の利点があると予測される。例えば、それによってLBLの製造プロセスが単純化され、再現性が高まるはずである。さらに、1つの設計されたペプチド中に複数のエピトープを配置することによって、それら個別のエピトープのモル比率が所望の比率(例えば1:1)に固定される。
あるいは、別個の設計されたペプチドにエピトープを組み入れることもできる。それら複数の設計されたペプチドは、1つ以上の加層工程の中でLBLフィルムに組み入れられる。複数別個の設計されたペプチドを使用してフィルムを製造することもまた、一定の利点を提供し得る。それは設計されたペプチドの合成を単純化させてコストを下げるはずである。また、フィルム中の、それぞれの設計されたペプチドの相対的投与量を、変化させ最適化することを可能とする。例えば、理想的なワクチンは、第1のエピトープ5個につき第2のエピトープ1個(比率5:1)を含むべきだ、ということを前臨床または臨床の生物学的データが示していたならば、別個エピトープの設計されたペプチドのアプローチによって、そのようなワクチンの製造が促進されるであろう。
設計されたペプチドは、設計されたペプチドの荷電した表面吸着領域と、反対に荷電したフィルム表面との間の静電引力によって、LBLフィルムの表面に吸着する。吸着の効率は、表面吸着領域の組成に大きく依存する。従って、エピトープは異なるが表面吸着領域が似ている設計されたペプチドは、同様の効率で吸着する。2つの別個の設計されたペプチドをそれぞれ1:1のモル比で有するフィルムを製造するためには、ペプチドをそのモル比で混合して、特定の層で同時に堆積させることができる。あるいは、それぞれのペプチドを別々の層に個別に堆積させることができる。吸着されるペプチドのモル比は、それらが加層される際の相対的濃度、またはそれらが組み入れられる加層工程の回数を大きく反映する。
LBLに組み入れられる設計されたペプチドの量は、様々な方法で測定することができる。定量的アミノ酸分析(AAA)は特にこの目的によく適している。設計されたペプチドを含有するフィルムが、濃縮塩酸(6 M)および加熱(典型的には115℃で15時間)による処理によって、構成アミノ酸に分解される。その後、当業者によく知られたクロマトグラフィー技術を使用して、各々のアミノ酸の量が測定される。フィルム中で1種類の設計されたペプチドだけにあるアミノ酸は、そのペプチドのトレーサーとして使用できる。設計されたペプチドが特有のアミノ酸を欠いている場合には、合成の際に、設計されたペプチドに非天然アミノ酸(例えばアミノ酪酸またはホモバリン)を組み入れることができる。これらのトレーサーアミノ酸は、AAA実験の際に容易に同定され、そのフィルム中のペプチドの量を定量化するために使用できる。
本明細書で使用される場合、特異的T細胞応答とは、所望のエピトープ、具体的にはプラスモディウム原生動物エピトープに対して特異的な応答である。特異的T細胞応答は、IFNγおよび/またはIL-5 T細胞応答である。
本明細書で使用される場合、特異的抗体応答とは、所望のエピトープに対して特異的な応答であり、具体的には、本明細書で開示されるように、プラスモディウム原生動物エピトープに対して特異的な応答である。
本明細書で使用される場合、「層」とは、(例えばフィルム形成の鋳型上における)吸着工程後の厚みの増加単位を意味する。「多層」とは、複数の(すなわち2つ以上の)厚みの増加単位を意味する。「高分子電解質多層フィルム」とは、高分子電解質の厚みの増加単位を1つ以上含むフィルムである。堆積後、多層フィルムの層は、はっきり区別される層としては残らないことがあり得る。事実、特に厚みの増加単位の接触面において、種(species)が著しく混じり合うことがあり得る。混じり合い、あるいはその欠如は、ζ電位測定、X線光電子分光法、および飛行時間型二次イオン質量分析のような分析技術によってモニターすることができる。
「アミノ酸」とは、ポリペプチドの構築ブロックを意味する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、20の通常の天然L-アミノ酸、その他のすべての天然アミノ酸、すべての非天然アミノ酸、およびすべてのアミノ酸模倣物(例えばペプトイド)を含む。
「天然アミノ酸」とは、グリシンと20の通常の天然型L-アミノ酸、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、オルニチン、チロシン、トリプトファン、およびプロリンを意味する。
「非天然アミノ酸」とは、上記20の通常の天然L-アミノ酸以外のアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸は、L-またはD-立体化学のいずれかを有し得る。
「ペプトイド」、あるいはN-置換グリシンとは、対応するアミノ酸モノマーの類似体を意味し、対応するアミノ酸と同じ側鎖を有するが、その残基のα-炭素にではなくて、アミノ基の窒素原子にその側鎖が結合しているものである。従って、ポリペプトイドのモノマー間の化学結合はペプチド結合ではなく、そのことはタンパク質消化を制限する上で有用となり得る。
「アミノ酸配列」および「配列」とは、少なくとも2アミノ酸残基の長さであるポリペプチド鎖の切れ目ない繋がりである。
「残基」とは、ポリマーまたはオリゴマー中のアミノ酸を意味する。それはそのポリマーが形成されたところのアミノ酸モノマーの残基である。ポリペプチド合成には脱水反応が関わり、すなわち、ポリペプチド鎖にアミノ酸が付加されると1つの水分子が「失われる」。
本明細書で使用される場合、「ペプチド」および「ポリペプチド」はいずれも、隣接するアミノ酸のアルファ-アミノ基とアルファ-カルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに連結された一連のアミノ酸を表し、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化等の修飾を含んでも含まなくてもよい(ただし、そのような修飾、またはその欠如が、免疫原性を破壊しないことが条件である)。本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチドとポリペプチドまたはタンパク質との両方を表すことが意図される。
「設計されたポリペプチド」とは、反対に荷電した表面に安定的に結合するために十分な電荷を有するポリペプチド、すなわち、フィルム形成の原動力が静電気であるところの多層フィルムの一層として堆積できるポリペプチドを意味する。特定の実施態様では、設計されたポリペプチドは、少なくとも15アミノ酸の長さであり、pH 7.0におけるポリペプチドの残基あたりの実効電荷の大きさが0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、または0.5以上である。一実施態様では、pH 7.0において、ポリペプチド中の残基の総数に対する、同じ極性の荷電残基数から逆の極性の残基数を引いたものの比が、0.5以上である。別の言い方をすると、ポリペプチドの残基あたりの実効電荷の大きさが0.5以上である。ポリペプチドの長さについて絶対的な上限はないが、一般的には、LBL堆積に適した設計されたポリペプチドの長さの実用的な上限は1,000残基である。設計されたポリペプチドは、プラスモディウム原生動物エピトープのような、自然界に見られる配列を含んでいてもよいし、本明細書で表面吸着領域とも称される荷電領域(これによって、設計されたポリペプチドをポリペプチド多層フィルムに堆積させることが可能となる)のような、ペプチドに機能性を提供する領域を含んでいてもよい。
「一次構造」とは、ポリペプチド鎖中のアミノ酸の切れ目ない直線的配列を意味し、「二次構造」とは、非共有結合性相互作用(通常は水素結合)によって安定化される、ポリペプチド鎖中の多かれ少なかれ決まりきった種類の構造を意味する。二次構造の例としては、α‐へリックス、β‐シート、およびβ‐ターンが挙げられる。
「ポリペプチド多層フィルム」とは、上記で定義された1つ以上の設計されたポリペプチドを含むフィルムを意味する。例えば、ポリペプチド多層フィルムは、設計されたポリペプチドを含む第一の層と、その設計されたポリペプチドとは反対の極性の実効電荷を有する高分子電解質を含む第二の層とを含む。例えば、もし第一の層が正の実効電荷を有するならば、第二の層は負の実効電荷を有する。もし第一の層が負の実効電荷を有するならば、第二の層は正の実効電荷を有する。この第二の層は、別の設計されたペプチド、または別の高分子電解質を含む。
「基質」とは、水溶液からの高分子電解質の吸着に適した表面を有する、固体材料を意味する。基質の表面は、本質的にいかなる形状を有していてもよく、例えば平面状、球状、棒状等であり得る。基質表面は規則的でも不規則的でもよい。基質は結晶であってもよい。基質は生理活性分子であってもよい。基質は、そのサイズに関しては、ナノスケールからマクロスケールまで多様である。さらに、基質は、任意で、いくつかの小さなサブ粒子を含む。基質は、有機材料、無機材料、生理活性材料、またはこれらの組合せから構成され得る。基質の非限定的な例としては、シリコンウェーハ、荷電コロイド粒子(例えば、CaCO3またはメラミンホルムアルデヒドのマイクロ粒子)、生物学的細胞(例えば赤血球、肝細胞、細菌細胞、または酵母細胞)、有機ポリマー格子(例えばポリスチレンまたはスチレン共重合体格子)、リポソーム、細胞小器官、およびウイルスが挙げられる。一実施態様では、基質は、人工ペースメーカー、人工内耳、またはステントのような医療機器である。
フィルムの形成中または形成後に、基質が分解されるか、もしくはその他の方法で除去される場合は、その基質は(フィルム形成のための)「鋳型」と呼ばれる。鋳型粒子は、適切な溶媒に溶解させたり、熱処理したりすることにより、除去することができる。例えば、部分的に架橋されたメラミンホルムアルデヒド鋳型粒子が使用される場合には、その鋳型は、穏やかな化学的方法によって(例えばDMSO中で)、または、pH値の変化によって、分解させることができる。鋳型粒子が溶解した後、交互に堆積された高分子電解質の層から構成される、中空の多層殻が残る。
「カプセル」とは、コアを包囲する中空の殻またはコーティングの形態をとる、高分子電解質フィルムである。コアは、様々に異なる封入物、例えば、タンパク質、薬剤、またはそれらの組合せを含む。直径が約1μmよりも小さいカプセルは、ナノカプセルと呼ばれる。直系が約1μmよりも大きいカプセルは、マイクロカプセルと呼ばれる。
「架橋」とは、2つ以上の分子間で 、1つの共有結合、またはいくつかの結合、または多くの結合が形成することを意味する。
「生理活性分子」とは、生物学的作用を有する分子、巨大分子、または巨大分子集合体を意味する。特定の生物学的作用は、適切なアッセイで、生理活性分子の単位重量あたりまたは分子あたりで標準化することにより、測定することができる。生理活性分子は、カプセル封入されていてもよいし、後方に保持(retained behind)されていてもよいし、または高分子電解質の内部に封入されていてもよい。生理活性分子の非限定的な例は、薬剤、薬剤の結晶、タンパク質、タンパク質の機能性断片、タンパク質の複合体、リポタンパク質、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、リボソーム、活性治療剤、リン脂質、多糖、リポ多糖である。本明細書で使用される場合、「生理活性分子」はさらに、例えば機能性膜断片、膜構造、ウイルス、病原体、細胞、細胞の凝集体、および細胞小器官のような、生物学的活性構造も包含する。カプセル封入することができる、またはポリペプチドフィルムの後方に保持することができるタンパク質の例は、ヘモグロビン、酵素(例えばグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、リゾチーム等)、細胞外マトリックスタンパク質(例えばフィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、およびコラーゲン)、および抗体である。カプセル封入することができるか、または高分子電解質フィルムの後方に保持することができる細胞の例は、移植膵島細胞、真核性細胞、細菌細胞、植物細胞、および酵母細胞である。
「生体適合性」とは、経口摂取、局所適用、経皮適用、皮下注射、筋肉内注射、吸入、移植、または静脈内注射した際に、実質的に健康を害する作用を起こさないことを意味する。例えば、生体適合性フィルムには、(例えばヒトの)免疫系に接したときに、実質的な免疫応答を引き起こさないフィルムが含まれる。
「免疫応答」とは、身体のどこかにおける、ある物質の存在に対する細胞性または液性免疫系の応答を意味する。免疫応答は、例えば、ある抗原を認識する抗体の血流中数の増加等、多くの形で特徴付けられ得る。抗体はB細胞により分泌されるタンパク質であり、免疫原とは免疫応答を誘発させるものである。人体は、血流中およびその他の場所における抗体数を増加させることにより、感染と闘い、再感染を抑制する。
「抗原」とは、感受性の脊椎生物の組織に導入されたときに免疫応答(例えば、特異的抗体分子の産生)を誘発させる、外来物質を意味する。抗原は1つ以上のエピトープを含む。抗原は、純粋な物質、物質の混合物(細胞または細胞断片を含む)であり得る。抗原という用語は、適切な抗原決定基、自己抗原(auto-antigen)、自己抗原(self-antigen)、交差反応性抗原、同種抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテン、および免疫原、またはその部分、ならびにその組合せを包含し、これらの用語は互換的に使用される。抗原は一般的に高分子量であり、通常はポリペプチドである。強い免疫応答を誘発させる抗原は、強く免疫原性であるという。相補的な抗体が特異的に結合し得る、抗原上の部位は、エピトープまたは抗原決定基と称される。
「抗原性」とは、その組成物に特異的な抗体を生じさせる、または、細胞媒介性免疫応答を生じさせる、組成物の能力を表す。
本明細書で使用される場合、「エピトープ」および「抗原決定基」という用語は互換的に使用され、抗体に認識される、抗原(例えばタンパク質または設計されたペプチド)の構造または配列を意味する。普通はエピトープはタンパク質の表面上にある。「連続的エピトープ」とは、切れ目なく繋がるいくつかのアミノ酸残基が関与するものであって、折りたたまれたタンパク質中でたまたま接触していたり、たまたま限られた空間の領域にあったりする複数のアミノ酸残基が関与するものではない。「立体構造性エピトープ」は、タンパク質の三次元構造中で接触するようになる、タンパク質の直線的配列の複数の異なる部分からのアミノ酸残基が関与する。抗原と抗体との間で効率的な相互作用が起こるためには、エピトープがすぐに結合に供され得る状態になければならない。従って、エピトープあるいは抗原決定基は、抗原の本来の細胞環境において存在するか、または、変性された時にだけ露出される。自然の状態ではそれは、細胞質性(可溶性)であるか、膜に付随しているか、または分泌性である。エピトープの数、位置、および大きさは、抗体産生プロセスの間にその抗原がどれだけ提示されるかに依存する。
本明細書で使用される場合、「ワクチン組成物」とは、投与を受けた哺乳類において免疫応答を誘発させ、その免疫誘発剤または免疫学的に交差反応性である物質による後発的な攻撃から、その免疫された生物体を防護する、組成物である。防護は、ワクチン非接種生物体と比較した場合の症状または感染の減少という点において、完全でも部分的でもあり得る。免疫学的に交差反応性である物質は、例えば、免疫原として使用するためのサブユニットペプチドが由来するタンパク質全体(例えばグルコシルトランスフェラーゼ)であり得る。あるいは、免疫学的に交差反応性である物質は、上記免疫誘発剤により誘発された抗体によってその全体または部分が認識される、異なるタンパク質であり得る。
本明細書で使用される場合、「免疫原性組成物」とは、投与を受けた生物体において免疫応答を誘発させる組成物を包含することが意図され、その組成物は、その免疫された哺乳類を、その免疫誘発剤による後発的な攻撃から防護してもよいししなくてもよい。一実施態様では、免疫原性組成物はワクチン組成物である。
以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
[試験プロトコール]
マウスおよび免疫:6〜8週齢のC57BL/6JおよびBALB/cのメスのマウスはジャクソン研究所から入手し、ニューヘイブンのノースイーストライフサイエンス社にて収容した。マウスは、使用の前少なくとも1週間、環境に馴化させた。ナノ粒子、マイクロ粒子、またはマイクロカプセルは、PBS中で所望のDP濃度に再懸濁し(例えば10μg/100μl/注射)、注射器への充填と免疫化の直前に10分間超音波処理した。マウスは、第0日、第21日、および第42日に、後足裏(f.p.)において、上記懸濁物を用いて免疫化した。陽性対照マウスは、CFA中(第0日)またはIFA中(第21日、第42日)のDPを用いて皮下(s.c.)において免疫化した。陰性対照マウスは、PBSで疑似免疫化した。
ELISA:マウスは、第28日(第1ブースト後)、第49日(第2ブースト後)、および第58日(攻撃後)に採血し、T1B、T1BT*、またはB反復ペプチドでコーティングしたELISAプレートを用いた抗体応答の分析のために血清を採取した。ナノ粒子上のエピトープ表示の決定のためには、プレートを、示されたナノ粒子でコーティングし、ブロッキングし、MAb 2A10(抗B反復)でプローブした。抗体結合は、HRP標識ヤギ抗マウスIgGで検出した。
ELISPOT:マウスを第28日、第49日、および第58日に犠牲にし、脾臓を採取してバラバラにして単一細胞懸濁物とした。市販の試薬(BDバイオサイエンス社)およびプレート(ミリポア社)を使用し、製造会社の使用説明書に従って、IFNγまたはIL-5のELISPOTプレート中で、示された最小エピトープペプチドを用いて未分画の脾臓細胞を再刺激した。各プレート上のスポットの数をAID Viruspotリーダー中で数えた。
PfPb攻撃:C57BL/6JまたはBALB/cのマウスを、第0日、第21日、および第42日に、図面の説明中に示されているように免疫化した。マウスは第49日に採血し、上述のようにELISAによって抗体価を測定した。抗体測定の後、マウスにPfPb(P. falciparumのCS遺伝子でトランスフェクトしたPlasmodium bergheii)の攻撃を与えた。攻撃は、マウスを麻酔して、PfPb感染蚊に10分間吸血させることによって達成された。攻撃の2日後、攻撃を受けたマウスは採血して犠牲にし、qPCRによる寄生体負荷の分析のために肝臓RNAを抽出した。
トランスジェニックスポロゾイト中和アッセイ(TSNA):TSNAにおける血清の寄生体中和活性は、本技術分野において知られる方法によって行った。手短に述べると、各血清試料の1:5希釈物を、PfPb寄生体(P. falciparumのCS遺伝子でトランスフェクトしたPlasmodium bergheii)とともに氷上で40分間インキュベートした。この混合物を、HepG2細胞を含有するウェルに添加し、37℃にて72時間インキュベートした。各培養物中の寄生体18S rRNAのレベルをqPCRによって測定し、既知量のプラスミド18S cDNAを用いて作成した標準曲線と比較した。PfPbおよびHepG2細胞を含有するが血清を含まない対照ウェルとの比較によって、寄生体増殖のパーセント阻害を計算した。
RNA単離およびqPCR:攻撃後約40時間において、マウスを犠牲にし、肝臓を採取して10 mlの滅菌PBSで2回洗浄した。10 mlのTri試薬(モレキュラーリサーチセンター、カタログ番号TR118)中で、ポリトロンホモジナイザー(フィッシャーサイエンティフィック社PowerGen 500)を使用して最大出力設定で1分間、肝臓をホモジナイズした。ホモジネートを2分間ボルテックス処理し、室温にて10分間静置した。透明なホモジネートを滅菌エッペンドルフチューブに回収し、そこに200μlのクロロホルム(シグマ社C-0549)を添加した。試料を2分間ボルテックス処理し、室温にて15分間静置し、それから4℃で15分間、14,000 rpmにて遠心分離した。水相(450μl)を滅菌1.5 mlエッペンドルフチューブに回収し、そこに同体積のイソプロパノール(シグマ社405-7)を添加した。試料を10秒間ボルテックス処理し、室温にて10分間静置し、それから室温で10分間、14,000 rpmにて遠心分離した。上清を注ぎ出し、ペレットを、1 mlの70% EtOH(シグマ社E7023)で洗浄し、10秒間ボルテックス処理し、室温で10分間、14,000 rpmにて遠心分離した。上清を注ぎ出し、ペレットを室温で乾燥させた。乾燥したペレットを、qPCRのために 200μlのDEPC H2O(インビトロジェン社カタログ番号750023)中に再懸濁した。
RNAはまた、それぞれ製造会社のプロトコールに従って、キアゲンRNeasyミニプレッププロトコール(キアゲン社)を使用してTri試薬ホモジネートから単離し、iScript RTスーパーミックス(バイオラッド社)を使用してcDNAに変換した。CFX96(バイオラッド社)上でPCRを行って、肝臓組織中のP. bergei 18S rRNAのコピー数を決定した。使用したプライマーの配列は、
フォワード 5’-AAGCATTAAATAAAGCGAATACATCCTTAC-3’(配列番号4)
リバース 5’-GGAGATTGGTTTTGACGTTTATGTG-3’(配列番号5)
であった。
iQ SYBRグリーン・スーパーミックス(バイオラッド社)を用いたサイクリング条件は、95℃を3分間の後、[95℃を20秒間、60℃を30秒間、72℃を30秒間]を40回繰り返すというものであった。コピー数を決定するために、P. bergei 18S rRNA配列(NYU)を含む既知濃度のプラスミドを使用して標準曲線を作成した。
[実施例1:代表的なペプチドの設計および合成]
設計されたポリペプチドは、熱帯熱マラリア原虫CSのT1BT*多価ペプチドに基づくものであった。1つ、2つ、または3つすべてのエピトープの各組合せを、C末端においてK20Y(配列番号(SEQ ID NO)6)で修飾して、LbL粒子に組み入れるための設計されたペプチド(DP)を得た(図1)。最小エピトープペプチドおよびDPは、標準的な固相ペプチド化学を用いてACTの科学者によって合成された。ペプチドはRP-HPLCで精製し、アミノ酸分析によって定量化した(データは示していない)。

T1BT*K20Y:(DP-2062)(配列番号7)
DPNANPNVDPNANPNVNANPNANPNANPEYLNKIQNSLSTEWSPCSVTSGNGKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY

T1K20Y:(配列番号8)
DPNANPNVDPNANPNVDPNAKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY

BK20Y:(配列番号9)
NANPNANPNANPNANPKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY

T*K20Y:(配列番号10)
EYLNKIQNSLSTEWSPCSVTSGNGKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY

T1BK20Y:(配列番号11)
DPNANPNVDPNANPNVNANPNANPNANPNANPKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY

T1T*K20Y:(配列番号12)
DPNANPNVDPNANPNVEYLNKIQNSLSTEWSPCSVTSGNGKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY

BT*K20Y:(配列番号13)
NANPNANPNANPEYLNKIQNSLSTEWSPCSVTSGNGKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY
[実施例2:LBLナノ粒子の製造のための手順]
CaCO3コアは、シンガポールのナノマテリアルズテクノロジー社から入手した(50 nm、中実、立方体)。PLLおよびPGAは、米国シグマ・アルドリッチ社から入手した。PLL、PGA、およびDPは、10 mM HEPES、pH 7.4に溶解した。反対に荷電したポリペプチドを、順次的な吸着ステップにて、CaCO3ナノ粒子コア上の多層フィルムへと自己会合させた。手短に述べると、PLL、PGA、およびDP(示されている場合)を、10 mM HEPES、pH 7.4中で1 mg/mlに溶解し、0.22μmフィルターを通してフィルター処理した。CaCO3ナノ粒子コアは、内毒素非含有水、および微量遠心機における1分間、16,000 x gの遠心分離を用いて、3回洗浄した。ナノ粒子コアを、第1層としてのPGA(1 mg/ml)中に、6%(w/v)にて再懸濁した。中性pHにおいては、PGAは負の実効電荷を示す一方で、CaCO3粒子は正の実効電荷を有し、従って、静電気的相互作用および第1層の首尾よい堆積が可能となる。この混合物を室温において10分間インキュベートし、それから、10 mM HEPESバッファーと、48,700 x gで1分間の遠心分離(TL-100超遠心機、ベックマン社)とを用いて2回洗浄した。第2層の堆積のために、ナノ粒子を、1 mg/mlのPLL(正電荷)中に6%(w/v)で再懸濁し、第1層の場合と同様に処理した。PGAとPLLとを交互の層に使用しながら、続く各層を同じ方法によって堆積した。示されている箇所では、DP(正電荷)をその示されている層について使用した。最終層の堆積後、仕上げられた粒子を洗浄し、使用時まで、湿ったペレットとして4℃または室温にて保存した。粒子の完全性および品質管理は表1に記載する方法を用いて監視し、具体的な構築物は表2において特定されている。
Figure 0006335876
Figure 0006335876
[実施例3:ナノ粒子により誘導される抗体応答]
BALB/cマウスは、第0日、第21日、および第42日に、PBS(陰性対照)、CFA中10μgのDP(陽性対照)、または、T*エピトープ(ACT 1051(配列番号7)、ACT-1056(配列番号12)、ACT-1129(配列番号10)およびACT-1132(配列番号13))を含有する10μgのナノ粒子を用いて、f.p.を介して免疫化した。C57BL/6マウスは、第0日、第21日、および第42日に、PBS(陰性対照)、CFA中10μgのDP(陽性対照)、または、Bエピトープ(ACT-1052(配列番号9))もしくはT1エピトープ(ACT-1051(配列番号7)、ACT 1056(配列番号12)、ACT-1130(配列番号8)、およびACT-1131(配列番号11))を含有する10μgのナノ粒子を用いて、f.p.を介して免疫化した。すべてのマウスは第49日(第2ブーストの7日後)に採血し、群あたり3匹のマウスをELISPOT分析のために犠牲にした。ELISAの結果は、ACT 1051(T1BT*K20Y;配列番号7)およびACT-1132(BT*K20Y;配列番号13)が両方のマウスの系統においてT1BT*特異的抗体応答を誘導し、ACT-1131(T1BK20Y;配列番号11)がC57BL/6マウスにおいて控えめなT1BT*特異的抗体応答を誘導した一方で、ACT-1052(BK20Y;配列番号9)は検出可能な抗体応答を誘導することができなかったことを示している(図2および3)。いずれの血清も、ELISAにおいてB反復エピトープを認識しなかった(データは示していない)。
B反復に対する抗体応答の欠如は、粒子においてエピトープの表示が不適切なためである可能性がある。示されているナノ粒子でELISAプレートをコーティングし、(B反復(NANP配列)に特異的なmAb 2A10の段階希釈物でプローブすることによって、この可能性を検証した。図4における結果は、反復特異的mAbが、T1またはB反復エピトープを含有するすべてのナノ粒子と反応したが、T*またはLCMV由来の無関係なエピトープのみを含有するナノ粒子とは反応しなかったことを示している。これらの結果は、B反復抗体応答の欠如が、ナノ粒子上におけるエピトープの不十分な表示には起因しないことを示唆している。
[実施例4:ナノ粒子によるT細胞応答]
図2および3に示されているマウスのCD4+およびCD8+応答の特異性を決定するために、濃化されたCD4+およびCD8+のT細胞の、T1またはT*に対するELISPOT応答を試験した。第49日に、群あたり3匹のマウスを犠牲にし、脾臓細胞を採取して、磁気ビーズ濃縮およびautoMACS細胞選別機を使用してCD4+群またはCD8+群に分画した。各群の純度は90%超であった(データは示していない)。細胞は、IL 5またはIFNγのELISPOTプレート中で、示されているペプチドを用いて再刺激した。図5および6における結果は、ナノ粒子ACT-1056(T1T*K20Y(配列番号12))またはACT-1129(T*K20Y(配列番号10))による3回の免疫化が、BALB/cマウスにおいて強いT*特異的CD4+ T細胞応答を誘導した一方、ナノ粒子ACT 1056(T1T*K20Y(配列番号12))またはACT-1130(T1K20Y(配列番号8))による3回の免疫化が、C57BL/6マウスにおいて強いT1特異的CD4+ T細胞応答を誘導したことを示している。ほとんどの場合において、T細胞応答は、IFNγ(Th1)よりもIL-5(Th2)の方に偏っていた。すべての構築物は、いずれのマウス系統においても弱いCD8+ T細胞応答を誘導した。
[実施例5:ナノ粒子を用いたPfPb攻撃]
別の実験において、群あたり7匹のマウスを、ナノ粒子ACT-1051またはその設計されたペプチドACT-2062(T1BT*K20Y(配列番号7))で免疫化し、それからPfPbによる攻撃を与えた。攻撃の2日後にマウスを犠牲にし、qPCRによる寄生体負荷の分析(NYU)のために肝臓RNAを抽出した。それに加えて、脾臓を採取して、IL-5およびIFNγのELISPOTにおいて、T1BT*およびT1のペプチドに対するT細胞応答についてアッセイした。図7は、免疫化されたマウスが、全長T1BT*およびT1エピトープのいずれに対しても弱いINFγ応答を呈したことを示している。驚くべきことに、ナノ粒子で免疫化されたマウスにおいては、強いIL-5応答が検出された。PBS群も2062/CFA群もこの応答を示さないことから、IL-5産生は感染単独によりもたらされた結果ではなく、感染に先立ったナノ粒子免疫化に関連したものだと見られる。
攻撃を受けたマウスから抽出された肝臓RNAは、寄生体負荷のqPCR分析に付された。図8における結果は、PBS処置マウスの平均と比較して寄生体RNAレベルが>90%減少したことによって証明されているように、すべての2062/CFA免疫化マウスがPfPb攻撃から保護されたことを示している。少なくとも3匹の免疫化マウス(f.p.群における1匹およびs.c.群における2匹)が同様のレベルの保護を示し、s.c.群においてさらに2匹がわずかな保護(>80%減少)を示したことは、期待の持てる結果である。しかしながら、個々の寄生体負荷を免疫応答(抗体価およびELISPOT応答)と比較した場合に、保護についての明確な免疫的相関は見出されなかった(データは示していない)。
[実施例6:マイクロ粒子の製造]
標準的な固相ペプチド化学を使用してペプチドACT-2062(T1BT*K20Y(配列番号7))を合成し、RP-HPLCで精製し、アミノ酸分析により定量化した。
CaCO3コアはドイツのプラズマケム社から入手した(3μm、メソ多孔性、球状)。PLLおよびPGAは米国シグマ・アルドリッチ社から入手した。PLL、PGA、およびACT-2062を10 mM HEPES(pH 7.4)に溶解した。LbL粒子は、ナノ粒子の場合と本質的に同じように製造した。PGAおよびPLLを用いて7つの基礎層を会合させた後、200 mMリン酸バッファー(pH 6.5)中の200 mM EDCおよび50 mMスルホ- NHSを使用してフィルムを架橋した。10 mM HEPESバッファーで粒子を2回洗浄して、残余試薬を除去した。DP(ACT-2062、T1BT*K20Y(配列番号7))を第8層として追加して、マイクロ粒子ACT-1140を産生した。マイクロ粒子ACT-1141においては、DPを堆積させる前に7つの基礎層を架橋した。マイクロ粒子ACT-1142は、DPを堆積させる前にCaCO3コアを溶解するために、ACT-1141を0.5 M EDTAで処理することによって調製した。仕上げられた粒子およびカプセルを洗浄し、使用時まで、湿ったペレットとして4℃または室温にて保存した。
[実施例7:マイクロ粒子およびマイクロカプセルの免疫原性]
それぞれDP 2062(T1BT*K20Y;配列番号7)が積載されたMP-1140、MP-1141、またはMC-1142を用いて、C57BL/6Jマウスを免疫化した。抗体応答はELISAおよびTSNAによって試験した一方、T細胞応答はELISPOTによって試験した。MP-1141 およびMC-1142は最も強力なLbL構築物であり、陽性対照マウスに匹敵する抗体価(図9)およびIFNγ+応答(図10)を誘導した。図9はまた、T1B ELISAの結果が、TSNAにおいて測定される機能的抗体活性のレベルと相関することも示しており(両方のアッセイにおける個々の血清力価のピアソン相関係数分析によりr2=0.79、P=0.0004)、機能的抗T1B抗体応答を測定するための迅速なスクリーニング方法としてのELISAの有用性を実証している。
[実施例8:マイクロ粒子およびマイクロカプセルの効力]
マウスをMP-1141またはMC-1142で免疫化し、PfPb感染蚊による吸血に晒すことによって攻撃を与えた。攻撃の40時間後、qPCRを通じてP. berghei 18S rRNAのレベルを定量化することによって、肝臓における寄生体負荷を監視した。未感作で攻撃を受けたマウスとの比較における寄生体負荷の≧90%の低下を保護として定義した。MP-1141による免疫化は、10匹中8匹のマウスを保護して、処置群において平均寄生体負荷の94%の低下をもたらし(P<0.05、ウィルコクソン順位和検定)、これはフロイントアジュバント中のDP 2062で免疫化した対照マウスに匹敵していた(図11)。MC-1142による免疫化は半数のマウスを保護したが、PBS対照と比較して群平均寄生体負荷の有意な低下はもたらさなかった。
攻撃の前にマウスから採取された血清を、TSNAにおいて試験して、インビトロでヒト肝細胞腫細胞へのスポロゾイト侵入を有効に阻止する寄生体中和活性(qPCRにより測定されるHepG2細胞中の寄生体rRNAレベルの>90%の低下として定義される)を測定した。TSNA活性をインビボ有効性と比較すると、効力が、MP-1141免疫化マウスの半数において強力な中和抗体活性に連関することが示された(図12、白丸)。しかしながら、インビボでは寄生体攻撃から保護されながら控えめな中和抗体応答しか呈さなかったマウスが、両方の免疫化群において数匹存在しており(図12および13、黒丸)、保護には細胞性機序も関与し得ることが示唆された。
[実施例9:マイクロ粒子により誘導されるT細胞応答]
ELISAのために血清を採取したのと同日に(図12および13)、脾臓細胞を採取して、IFNγおよびIL-5のELISPOTプレート中においてT1Bペプチドで刺激した。ACT-1141またはACT-1142で免疫化されたマウスは、Th1(IFNγ)応答とTh2(IL-5)応答の両方を生じたのに対し、アジュバント中のDP 2062で免疫化されたマウスは、Th1(IFNγ)の方に偏った応答を生じた(図14)。
[実施例10:LbL粒子の効力における細胞性免疫の役割]
ELISPOTにおけるIFNγ分泌細胞の検出(図10)は、以前見出されたように、LbL粒子免疫化後の細胞傷害性エフェクターT細胞の活性化の可能性を示唆している。C57BL/6JマウスはCSタンパク質に対して強いCTL応答を生ずることができず、T*エピトープに含まれている既知のH 2d拘束性CD8+ T細胞エピトープが存在することから、BALB/cマウスを使用して、インビボCTLアッセイにおいてマラリア特異的細胞傷害性エフェクター細胞応答の発生を調べた。PBSまたはMP-1141を用いてマウスを免疫化し、7日後、関係するモノクローナル抗体の投与により、CD4+、CD8+、または両方のT細胞表現型を枯渇させた。翌日、インビボCTL活性を測定した。図15は、完全なT細胞群を有する免疫化マウスにおいては、T*がロードされた標的細胞の中程度レベルの死滅が検出されたことを示している。CD8+細胞の枯渇はインビボCTL活性を減少させなかったが、CD4+細胞の枯渇はエフェクター活性を完全に阻止し、このことは、T1BT*抗原を有するLbL MPを用いた免疫化はCD4+細胞傷害性エフェクター細胞を誘導することを示しており、ヒトのボランティアにおいてCD4+エフェクター活性を示した文献の結果と一致している。
ELISPOT(図10)およびインビボCTLアッセイ(図15)において検出されたT細胞応答、ならびに、何匹かの免疫化マウスにおける効力とTSNA力価との間の見かけ上の不一致(図12および13)を考慮して、本発明者らは、LbLマイクロ粒子の効力に対する細胞性免疫の貢献を調べた。T1B特異的抗体応答の不在下で、細胞性免疫単独による効力を試験するために、マウス病原体であるP. bergheiのCSタンパク質由来のT細胞エピトープが積載されたMPを構築した(表3)。CD4+およびCD8+ T細胞エピトープは両方ともH-2dマウスにおいて認識されるので、この実験においてはBALB/cを使用した。第0日および第28日に、P. berghei CD4+ T細胞エピトープ(MP-1182)、CD8+ T細胞エピトープ(MP-1183)、もしくは両方のT細胞エピトープを含む融合ペプチド(MP-1184)を含有するMP、または、フロイントアジュバント中のDP融合ペプチドを用いて、マウスを免疫化した。第35日に、免疫化エピトープ(複数可)がロードされた標的細胞を使用して、インビボCTL実験を行った。どちらかのP. berghei T細胞エピトープが積載されたMPを用いた免疫化は、その免疫化ペプチドがロードされた標的細胞に対するエフェクター活性を誘導した(図16)。しかしながら、そのCTL活性は、上記P. berghei T細胞エピトープを発現するPfPbスポロゾイトによる攻撃からマウスを保護するためには十分ではなく(図17)、図11で示された効力は抗体媒介性であったことが示唆された。
Figure 0006335876
配列番号14
LEFVKQIRDSITEEWSQCNVKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY
配列番号15
KNNNNDDSYIPSAEKILEFVKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY
配列番号16
KNNNNDDSYIPSAEKILEFVKQIRDSITEEWSQCNVKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY
[実施例11:Pam3Cys.T1Bマラリアマイクロ粒子の免疫原性]
マラリアペプチドワクチンの臨床治験は、アジュバントが抗体応答および細胞性応答を有意に増加させることができるが、しばしば反応源性の増加という代償を伴うことを示してきた。より精確に自然免疫を標的とするTLRアゴニストの使用は、強力なアジュバントに関連する過剰な炎症応答を回避する助けとなり得る。合成リポペプチドTLR2アゴニストであるPam3Cysは、DPに直接組み入れることができることから、LbLアプローチにとって特に魅力的な自然免疫刺激因子である。様々なT1B構成を含む一連のDPを合成した(表4参照)。熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲タンパク質抗原T1およびBの配列は以下に示す。
T1:DPNANPNVDPNANPNV (配列番号1)
B:NANP (配列番号2)
CaCO3コアはドイツのプラズマケム社から入手した(3μm、メソ多孔性、球状)。PLLおよびPGAは米国シグマ・アルドリッチ社から入手した。PLL、PGA、およびACT-2062(T1BT*K20Y:DPNANPNVDPNANPNVNANPNANPNANPEYLNKIQNSLSTEWSPCSVTSGNGKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY(配列番号7))を10 mM HEPES(pH 7.4)に溶解した。LbL粒子は、ナノ粒子の場合と本質的に同じように製造した。PGAおよびPLLを用いて7つの基礎層を会合させた後、200 mMリン酸バッファー(pH 6.5)中の200 mM EDCおよび50 mMスルホ- NHSを使用してフィルムを架橋した。10 mM HEPESバッファーで粒子を2回洗浄して、残余試薬を除去した。DPを第8層として追加して、表4に列記するマイクロ粒子を産生した。仕上げられた粒子を洗浄し、使用時まで、湿ったペレットとして4℃または室温にて保存した。
液相合成の際にセリン-リジン-リジン-リジン-リジンのスペーサーを追加することによってDP-2163(T13B5 Pf)のN末端を伸長し、その後Pam3修飾システイン残基のN末端カップリングを行うことによって、TLR2リガンドPam3Cysを組み入れてDP-2167(Pam3.T13B5Pf)を生成した。
Figure 0006335876
配列番号17(SKKKK(NANPNVDP)3(NANP)5K20Y)
SKKKKNANPNVDPNANPNVDPNANPNVDPNANPNANPNANPNANPNANPKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKY
MP-1141、MP 1167、またはMP-1164を用いてC57BL/6マウスを免疫化した。PBSを用いて免疫化したマウス、またはCFA中のDP-2062(T1BT*(配列番号6))を用いて免疫化したマウスを陽性対照として含めた。第28日に採取された血清のELISA分析は、Pam3Cys修飾DPを含有するMP-1164が、フロイントアジュバント中のDP 2062(T1BT*)の陽性対照に匹敵しており、Pam3Cysを有さない同じDPを含有するMP-1167と比べて統計学的により強力であること(P=0.02、ウィルコクソン順位和検定)を示している(図18)。MP-1164はまた、MP-1167またはMP-1141(それぞれPam3Cysを欠く)によっては最小限でしか誘導されなかった(図19)Th1関連IgG2cアイソタイプを含め、陽性対照群におけるものと同一の抗体アイソタイププロファイルを生じた。Pam3Cys修飾MP-1164は、DP 2062ペプチド/CFA陽性対照群と同程度に有効であり、90%のマウスを肝臓ステージの感染から保護した(図20)。保護は、MP-1164群において最も強く中和抗体と相関し(データは示していない)、MP-1141群においては中程度に相関し(データは示していない)、MP-1167群においては弱く相関した(データは示していない)。従って、DPの単純なPam3Cys修飾が、より強力な抗体応答を誘導し、寄生体の攻撃に対してより高レベルの保護を提供する、改善されたLbLワクチンをもたらす。
用語「a」および 「an」および「the」および類似の指示物の使用は(以下の特許請求の範囲の文脈では特に)、本明細書で別段の表示がない限り、または文脈において明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものとして解釈されるべきである。本明細書で使用される、第1、第2、等の用語には、特定の順序を表す意図はなく、単に、複数の(例えば)層を表す便宜のためのものに過ぎない。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」という用語は、特に断りがない限り、オープンエンドの(すなわち、「〜を含むが、それに限定されない」という意味の)用語として解釈されるべきである。数値範囲の記載は、本明細書で別段の表示がない限り、その範囲内にある別個の値をそれぞれ個別に表記することの単なる略記法として用いることを意図しており、別個の値の各々は、あたかも個別に表記されているかのように、本明細書に組み入れられる。すべての範囲の上下限はその範囲に含まれ、独立して組み合わせることができる。本明細書で記述されるすべての方法は、本明細書で別段の表示がない限り、または文脈において明らかに矛盾しない限り、適当な順序で実施することができる。いずれかの、およびすべての例の使用、または例示的言語(「例えば(such as)」等)の使用は、発明をより明確に説明することを意図するだけであり、特許請求の範囲で規定されていない限り、本発明の範囲に対して限定を与えるものではない。本明細書で使用される文言はいずれも、特許請求の範囲にない何らかの要素が本発明の実施にとって必須であることを示しているものとして解釈するべきではない。
本発明を、例示的な実施態様を参照しながら記述してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を施すことができ、構成要素を等価物で置き換えられることは、当業者によって理解されるであろう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況や材料を本発明の教示に適合させるために多くの変更を行うことができる。従って、本発明は、この発明を実施するために考えられる最良の形態として開示されている特定の実施態様に限定されず、本発明はむしろ、添付の特許請求の範囲に収まるすべての実施態様を含むことが意図される。本明細書で別段の表示がない限り、または文脈において明らかに矛盾しない限り、上記において記載した要素の可能なすべてのバリエーションのあらゆる組合せが、本発明に包含される。

Claims (23)

  1. 複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第1の多層フィルムを含み、前記多層フィルム中の高分子電解質の層の1つは、第1の抗原性ポリペプチド高分子電解質を含み、
    前記第1の抗原性ポリペプチドは、前記ポリペプチドのC末端および/またはN末端における1つまたは2つの表面吸着領域に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1BT*エピトープを含み、前記表面吸着領域の少なくとも1つは、8つの負または正に荷電したアミノ酸残基を含み、
    前記多層フィルム中の高分子電解質は、1,000より大きい分子量、および、分子あたり少なくとも5個の電荷を有する、ポリカチオン性材料またはポリアニオン性材料を含む、
    組成物。
  2. 前記第1の多層フィルムは、第2の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含む第2の抗原性高分子電解質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 記第2の高分子電解質は、ポリペプチドである、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記多層フィルムは、共有結合により架橋されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記共有結合による架橋は、アミノ酸側鎖官能基が関わるアミド結合である、請求項4に記載の組成物。
  6. 前記第1の多層フィルムは、第3の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含む第3の抗原性高分子電解質をさらに含む、請求項2または3に記載の組成物。
  7. 前記第1の多層フィルムは、TLRリガンドをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 前記TLRリガンドは、前記第1の抗原性高分子電解質に共有結合により連結されている、請求項7に記載の組成物。
  9. 記第2および第3の高分子電解質は、ポリペプチドである、請求項6に記載の組成物。
  10. TLRリガンドが、前記第1、第2、または第3の抗原性高分子電解質に共有結合により連結されている、請求項6に記載の組成物。
  11. 前記第1の多層フィルムは、コア粒子上に堆積される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第2の多層フィルムをさらに含み、前記第2の多層フィルム中の層の1つは、第2の抗原性高分子電解質を含み、
    前記第2の抗原性高分子電解質は、第2の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含む
    請求項1に記載の組成物。
  13. 記第2の高分子電解質は、ポリペプチドである、請求項12に記載の組成物。
  14. 前記第1および第2の多層フィルムは、コア粒子上に堆積される、請求項12または13に記載の組成物。
  15. 前記第1および/または第2の多層フィルムは、TLRリガンドをさらに含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の組成物。
  16. 前記TLRリガンドは、前記第1および/または第2の抗原性高分子電解質に共有結合により連結されている、請求項15に記載の組成物。
  17. 複数の反対に荷電した高分子電解質の層を含む第3の多層フィルムをさらに含み、前記第3の多層フィルム中の層の1つは、第3の抗原性高分子電解質を含み、
    前記第3の抗原性高分子電解質は、第3の高分子電解質に共有結合により連結された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T1、B、またはT*エピトープを含む
    請求項12〜16のいずれか1項に記載の組成物。
  18. 記第2および第3の高分子電解質は、ポリペプチドである、請求項17に記載の組成物。
  19. 前記第1、第2、および第3の多層フィルムはコア粒子上に堆積される、請求項17または18に記載の組成物。
  20. 前記第1、第2、および/または第3の多層フィルムは、TLRリガンドをさらに含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の組成物。
  21. 前記TLRリガンドは、前記第1、第2、および/または第3の抗原性高分子電解質に共有結合により連結されている、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記第1の多層フィルムは、PBS中で37℃で24時間インキュベートされた場合にその高分子電解質の半分より多くを保持する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
  23. 脊椎動物において免疫応答を誘導するための、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
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