JP6326185B1 - 圧粉コア、該圧粉コアの製造方法、該圧粉コアを備える電気・電子部品、および該電気・電子部品が実装された電気・電子機器 - Google Patents
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1.圧粉コア
図1に示す本発明の一実施形態に係る圧粉コア1は、その外観がリング状であって、軟磁性粉末を含む成形体と、成形体の外装コートと、を備える。本発明の一実施形態に係る圧粉コア1は、外装コートがポリエーテルスルホンを含有する。限定されない一例として、軟磁性粉末を、圧粉コア1に含有される他の材料(同種の材料である場合もあれば、異種の材料である場合もある。)に対して結着させる結着成分を含有する。なお、圧粉コア1の外観はリング状に限定されず、例えばEE型、EI型、EER型、PQ型、I型、あるいはコイルを圧粉コアの内部に封入したもの等がある。
(1−1)軟磁性粉末
本発明の一実施形態に係る圧粉コア1の成形体が含む軟磁性粉末は、鉄を含有する鉄系材料およびニッケルを含有するニッケル系材料の少なくとも一方の粉末を含有していてもよい。
結着成分は、本発明の一実施形態に係る圧粉コア1に含有される軟磁性粉末を固定することに寄与する材料である限り、その組成は限定されない。結着成分を構成する材料として、樹脂材料および樹脂材料の熱分解残渣(本明細書において、これらを「樹脂材料に基づく成分」と総称する。)等の有機系の材料、無機系の材料などが例示される。この熱分解残渣は例えば圧粉コア中の軟磁性粉末の歪取りのための、後述する熱処理を施した後に形成されるものである。樹脂材料として、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などが例示される。無機系の材料からなる結着成分は水ガラスなどガラス系材料が例示される。結着成分は一種類の材料から構成されていてもよいし、複数の材料から構成されていてもよい。結着成分は有機系の材料と無機系の材料との混合体であってもよい。
本発明の一実施形態に係る圧粉コア1は、外装コートを備える。外装コートは、成形体1Bの機械的強度の向上などを目的として、成形体1Bの少なくとも一部を覆うように設けられる層である。成形体1Bは、軟磁性粉末MMを含む混合物を加圧成形することを含んで形成されるものであるから、その表面は、軟磁性粉末MMに由来する凹凸を有している場合がある。また、混合物がバインダー成分BMを含む場合であって、成形体1Bがバインダー成分BMの熱分解残渣TDMを含む場合には、上記のように、成形体1Bは空隙PRを有することがある。こうした場合には、外装コートを構成する材料は、成形体1Bの表面のみならず、表面からある程度内部に入った領域まで存在していてもよい。すなわち、外装コートは、成形体1Bに対して含浸構造を有していてもよい。
上記の本発明の一実施形態に係る圧粉コア1の製造方法は特に限定されないが、次に説明する製造方法を採用すれば、圧粉コア1をより効率的に製造することが実現される。
まず、軟磁性粉末MMおよびバインダー成分BMを含む混合物を用意する。この混合物の加圧成形を含む成形処理により成形製造物を得ることができる。加圧条件は限定されず、バインダー成分BMの組成などに基づき適宜決定される。例えば、バインダー成分BMが熱硬化性の樹脂からなる場合には、加圧とともに加熱して、金型内で樹脂の硬化反応を進行させることが好ましい。一方、圧縮成形の場合には、加圧力が高いものの、加熱は必要条件とならず、短時間の加圧となる。
造粒粉は、軟磁性粉末MMおよびバインダー成分BMを含有する。造粒粉におけるバインダー成分BMの含有量は特に限定されない。かかる含有量が過度に低い場合には、バインダー成分BMが軟磁性粉末MMを保持しにくくなる。また、バインダー成分BMの含有量が過度に低い場合には、熱処理工程を経て得られた圧粉コア1中で、バインダー成分BMの熱分解残渣TDMからなる結着成分が、複数の軟磁性粉末MMを互いに他から絶縁しにくくなる。一方、上記のバインダー成分BMの含有量が過度に高い場合には、熱処理工程を経て得られた圧粉コア1に含有される結着成分の含有量が高くなりやすい。圧粉コア1中の結着成分の含有量が高くなると、軟磁性粉末MMが結着成分から受ける応力の影響により圧粉コア1の磁気特性が低下しやすくなる。それゆえ、造粒粉中のバインダー成分BMの含有量は、造粒粉全体に対して、0.5質量%以上5.0質量%以下となる量にすることが好ましい。圧粉コア1の磁気特性が低下する可能性をより安定的に低減させる観点から、造粒粉中のバインダー成分BMの含有量は、造粒粉全体に対して、0.5質量%以上3.5質量%以下となる量にすることが好ましく、0.6質量%以上3.0質量%以下となる量にすることがより好ましい。
圧縮成形における加圧条件は特に限定されない。造粒粉の組成、成形品の形状などを考慮して適宜設定すればよい。造粒粉を圧縮成形する際の加圧力が過度に低い場合には、成形品の機械的強度が低下する。このため、成形品の取り扱い性が低下する、成形品から得られた圧粉コア1の機械的強度が低下する、といった問題が生じやすくなる。また、圧粉コア1の磁気特性が低下したり絶縁性が低下したりする場合もある。一方、造粒粉を圧縮成形する際の加圧力が過度に高い場合には、その圧力に耐えうる成形金型を作成するのが困難になってくる。
成形工程により得られた成形製造物が本実施形態に係る圧粉コア1が備える成形体1Bであってもよいし、次に説明するように成形製造物に対して熱処理工程を実施して成形体1Bを得てもよい。このような熱処理工程は、アニール工程とも称される。
上記の成形工程により得られた成形製造物からなる成形体1B、または成形製造物に対して上記の熱処理工程により得られた成形体1Bに対して、ポリエーテルスルホンを含む外装コートを施す。その製造方法の一例は前述のとおりであるからここでは記載を省略する。
本発明の一実施形態に係る電気・電子部品は、上記の本発明の一実施形態に係る圧粉コアを備える。具体的には、本発明の一実施形態に係る電気・電子部品は、圧粉コア、コイルおよびこのコイルのそれぞれの端部に接続された接続端子を備える。ここで、圧粉コアの少なくとも一部は、接続端子を介してコイルに電流を流したときにこの電流により生じた誘導磁界内に位置するように配置されている。
本発明の一実施形態に係る電気・電子機器は、上記の本発明の一実施形態に係る圧粉コアを備える電気・電子部品を備える。具体的には、上記の電気・電子部品が実装されたものや、上記の電気・電子部品が組み込まれたものが例示される。そのような電気・電子機器のさらなる具体例として、電圧昇降圧回路、平滑回路、DC−DCコンバータ、AC−DCコンバータ等を備えたスイッチング電源装置や太陽光発電等に使用されるパワーコントロールユニット等が挙げられる。
(1)Fe基非晶質合金粉末の作製
水アトマイズ法を用いて、Fe74.3at%Cr1.56at%P8.78at%C2.62at%B7.57at%Si4.19at%なる組成になるように秤量して得られた非晶質磁性材料の粉末を軟磁性粉末MMとして作製した。得られた軟磁性粉末MMの粒度分布は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装社製「MT3300EX」)を用いて体積分布で測定した。その結果、体積分布における体積累積値が50%のときの粒径体積分布において50%となる粒度であるメジアン径(D50)は11μmであった。
上記の軟磁性粉末MMを96.0〜99.3質量部、アクリル系樹脂からなる絶縁性結着材を0.5〜2.0質量部、シランカップリング剤0.1〜1.0質量%およびステアリン酸亜鉛からなる潤滑剤0.1〜1.0質量部を適宜調整して混合し、水を溶剤とするスラリーを用意した。
得られた造粒粉を金型に充填し、面圧0.5〜2GPaで加圧成形して、外径20mm×内径12.8mm×厚さ6.8mmのリング形状を有する成形製造物を得た。
得られた成形体1Bを、窒素気流雰囲気の炉内に載置し、炉内温度を、室温(23℃)から昇温速度10℃/分で最適コア熱処理温度である300〜500℃まで加熱し、この温度にて1時間保持し、その後、炉内で室温まで冷却する熱処理を行い、成形体1Bを得た。
ポリエーテルスルホン(住友化学社製「5003PS」を、N−メチルピロリドン(NMP)とキシレンとの混合溶剤(容量比で、NMP:キシレン=2:1)にて溶解し、ポリエーテルスルホンの濃度が10質量%である液状組成物を調製した。
実施例1と同様にして、成形体1Bを得た。熱硬化性ポリイミド(宇部興産社製「UPIA−AT」)を、NMP溶剤として希釈して、熱硬化ポリイミドの濃度が10質量%である液状組成物を調製した。得られた液状組成物中に、上記の成形体1Bを15分間浸漬させた。その後、成形体1Bを液状組成物中から取り出し、80℃にて30分間、その後150℃にて1時間乾燥させて、成形体1Bの表面に液状組成物の塗膜を形成した。この塗膜を備えた成形体1Bを350℃で1時間加熱して、成形体1B上に外装コートを備える圧粉コアを得た。
実施例1と同様にして、成形体1Bを得た。ポリアミドイミド(DIC社製「V−8000BM」)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850−S」)を当量配合したものをシクロヘキサノンを溶剤として希釈し、固形分濃度が12質量%である液状組成物を調製した。得られた液状組成物中に、上記の成形体1Bを15分間浸漬させた。その後、成形体1Bを液状組成物中から取り出し、100℃にて1時間乾燥させて、成形体1Bの表面に液状組成物の塗膜を形成した。この塗膜を備えた成形体1Bを200℃で1時間加熱して、成形体1B上に外装コートを備える圧粉コアを得た。
液状組成物を調製する際に、ポリエーテルスルホンに代えて、メチルフェニルシリコーン(信越化学社製「KR−271」を、キシレンを溶剤として希釈して、メチルフェニルシリコーンの濃度が20質量%である液状組成物を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、圧粉コアを得た。
実施例1と同様にして得た成形体1Bからなる圧粉コアを得た。すなわち、参考例1に係る圧粉コアは、外装コートを有しないものであった。
実施例および参考例により作製した圧粉コアに銅線の巻線を施してトロイダルコアを得た。このトロイダルコアについて、インピーダンスアナライザー(HP社製「4192A」)を用いて、周波数100kHzのときの比透磁率を測定した。この比透磁率を「初期比透磁率μ0」という。
実施例および比較例により作製した圧粉コアを250℃の環境に200時間静置し、静置後の圧粉コアについて、上記の要領で比透磁率を測定した。この比透磁率を「加熱後比透磁率μ1」という。
下記式にて比透磁率の変化率Rμ(単位:%)を求めた。
Rμ=(μ1−μ0)/μ0×100
初期比透磁率μ0および加熱後比透磁率μ1ならびに比透磁率の変化率Rμを表1に示す。なお、表1には、実施例において用いた液状組成物の樹脂種および濃度(単位:質量%)を示した。
実施例および参考例により作製した圧粉コアに銅線の巻線を施してトロイダルコアを得た。このトロイダルコアについて、BHアナライザー(岩崎通信機社製「SY−8218」)を用いて、周波数100kHz,最大磁束密度100mTの条件でコアロス(PCV)を測定した。このコアロスを「初期コアロスW0」(単位:kW/m3)という。
実施例および比較例により作製した圧粉コアを250℃の環境に200時間静置し、静置後の圧粉コアについて、上記の要領でコアロスを測定した。このコアロスを「加熱後コアロスW1」(単位:kW/m3)という。
下記式にてコアロスの変化率RW(単位:%)を求めた。
RW=(W1−W0)/W0×100
初期コアロスW0および加熱後コアロスW1ならびにコアロスの変化率RWを表1に示した。
実施例および参考例により作製した圧粉コアを、JIS Z2507:2000に準拠した試験方法により測定して、初期圧環強度S0(単位:MPa)を求めた。
実施例および比較例により別途作製した圧粉コアを、250℃の環境に200時間静置し、静置後の圧粉コアについて、JIS Z2507:2000に準拠した試験方法により測定して、加熱後圧環強度S1(単位:MPa)を求めた。
下記式にて圧環強度の変化率RS(単位:%)を求めた。
RS=(S1−S0)/S0×100
初期圧環強度S0および加熱後圧環強度S1ならびに圧環強度の変化率RSを表1に示した。
これに対し、比較例(実施例3から実施例5)に係る圧粉コアは、比透磁率の低下率が5%以下、コアロスの増加率が5%以下、および初期圧環強度または加熱後圧環強度の少なくとも一方が20MPa以上のいずれをも満たすことができず、磁気特性および機械的強度の双方について特に優れた特性を有することはできなかった。
1A…成形製造物
1B…成形体
MM…軟磁性粉末
BM…バインダー成分
TDM…熱分解残渣
PR…空隙
CRM…外装コート材
10…トロイダルコイル
2…被覆導電線
2a…コイル
2b,2c…被覆導電線2の端部
2d,2e…コイル2aの端部
200…スプレードライヤー装置
201…回転子
S…スラリー
P…造粒粉
Claims (10)
- 軟磁性粉末を含む成形体と、前記成形体の外装コートと、を備える圧粉コアであって、
前記外装コートは、ポリエーテルスルホンを含有すること
を特徴とする圧粉コア。 - 前記軟磁性粉末は、鉄系材料およびニッケル系材料の少なくとも一方の粉末を含有する、請求項1に記載の圧粉コア。
- 前記軟磁性粉末は、結晶質磁性材料の粉末を含有する、請求項1または請求項2に記載の圧粉コア。
- 前記軟磁性粉末は、非晶質磁性材料の粉末を含有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧粉コア。
- 前記前記軟磁性粉末はナノ結晶磁性材料の粉末を含有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧粉コア。
- 前記軟磁性粉末は、結晶質磁性材料、非晶質磁性材料、ナノ結晶磁性材料のうちの2種以上を混合したものである請求項1または請求項2に記載の圧粉コア。
- 前記成形体は、前記軟磁性粉末と結着成分とを備え、前記結着成分は、樹脂系材料を含むバインダー成分の熱分解残渣からなる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧粉コア。
- 請求項7に記載される圧粉コアの製造方法であって、
前記軟磁性粉末と前記バインダー成分とを備える混合物の加圧成形を含む成形処理により成形製造物を得る成形工程、
前記成形工程により得られた成形製造物を加熱して、前記軟磁性粉末と前記バインダー成分の熱分解残渣からなる結着成分とを備える前記成形体を得る加熱処理工程、および
ポリエーテルスルホンおよび溶剤を含む液状組成物を前記成形体と接触させ、前記成形体の表面を含む領域に前記液状組成物の塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥させて溶剤を揮発させ、ポリエーテルスルホンを含む外装コートを形成する外装コート形成工程を備えること
を特徴とする圧粉コアの製造方法。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載される圧粉コア、コイルおよび前記コイルのそれぞれの端部に接続された接続端子を備える電気・電子部品であって、
前記圧粉コアの少なくとも一部は、前記接続端子を介して前記コイルに電流を流したときに前記電流により生じた誘導磁界内に位置するように配置されていること
を特徴とする電気・電子部品。 - 請求項9に記載される電気・電子部品を備えることを特徴とする電気・電子機器。
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