本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極の間に、発光層を含む少なくとも1層の有機層が挟持された有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機層のうち少なくとも1層に、後述する一般式(1)又は一般式(2)に由来する、前記一般式(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(B1)、(B3)、(B4)、(C1)、(C2)、(D1)、(D3)、(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(J1)、(J3)、(J4)、(K1)、(K2)、(K3)、(K4)、(L1)又は(L3)で表される構造を有する芳香族複素環誘導体を含有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、L1が単結合、フェニレン基、ビフェニレン基又は炭素数2以下のアルキレン基を表すことが、ガラス転移温度(Tg)上昇による熱安定の向上の効果が得られることから好ましい。また前記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、L2が単結合、フェニレン基、ヘテロアリーレン基又は炭素数2以下のアルキレン基を表すことが、Tg上昇による熱安定の向上の効果が得られることから、好ましい。
さらに、本発明においては、前記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、L1が、前記式(I)で表される前記芳香族複素環誘導体のXを含む縮合環の2位又は4位のいずれかの位置に結合していることが好ましい。これにより、選択性の高い合成法を用いることができ、化合物を高収率、高純度で得られる。
また、前記一般式(1)及び(2)において、L2が、前記式(I)で表される前記芳香族複素環誘導体のXを含む縮合環の5位又は7位のいずれかの位置に結合していることが好ましい。これにより、選択性の高い合成法を用いることができ、化合物を高収率、高純度で得られる。
また、本発明においては、前記一般式(3)及び(4)において、L2が、前記式(I)で表される前記芳香族複素環誘導体のXを含む縮合環の2位又は4位のいずれかの位置に結合していることが好ましい。これにより、選択性の高い合成法を用いることができ、化合物を高収率、高純度で得られる。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、Y1〜Y3が、全て窒素原子を表すことが好ましい。また、前記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、Ar1及びAr2が、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基を表すことが、化合物の励起状態の安定化の効果が得られることから、好ましい。
さらに、本発明においては、前記芳香族複素環誘導体を含有する前記有機層が、発光層であることが好ましい。これにより、高効率化、高寿命化の効果が得られる。また、前記発光層が、前記芳香族複素環誘導体をホスト化合物として含有することが好ましい。さらに前記発光層が、リン光発光性化合物を含有することが高効率化、高寿命化の観点から好ましい。
また、前記発光層が、前記芳香族複素環誘導体とは異なる構造を有するホスト化合物をさらに含有することが、キャリアバランスの調整により再結合確率の向上の効果が得られることから、好ましい。
本発明の有機EL素子は、照明装置及び表示装置に好適に具備され得る。
さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子に含有される化合物が、前記一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも1層の有機層に一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される芳香族複素環誘導体を含むことを特徴とする。
以下に本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《一般式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される芳香族複素環誘導体》
上記一般式(1)、(2)、(3)、及び(4)において、Y
1、Y
2及びY
3はそれぞれ独立に、CR′又は窒素原子を表し、少なくとも一つは窒素原子である。
より好ましくはY1、Y2及びY3の内、二つ又は三つが窒素原子であり、より好ましくはY1、Y2及びY3が全て窒素原子である。
R′、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基を表す。R′、Ar1及びAr2が全て同時に水素原子であることはない。
R′、Ar1又はAr2で表される炭素数1〜12のアルキル基は、本発明の化合物の機能を阻害しない範囲であれば、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよく、また、シクロアルキル基のように環状構造であってもよい。
炭素数1〜12のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソプロピル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、等が挙げられる。
R′、Ar1又はAr2で表される環形成炭素数6〜30のアリール基(芳香族炭化水素環基ともいう)としては、非縮合であっても縮合環であってもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、インデニル基、インデノフルオレン環等が挙げられる。
好ましくは、本発明の化合物の励起三重項エネルギー準位(T1エネルギー準位)を適度に保つ目的から、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、が好ましい。
上記のアルキル基及びアリール基は、本発明の化合物の機能を阻害しない範囲で各々更に置換基を有していてもよく、置換基の具体例としては、後述のRa又はRbで表される置換基と同様の基が挙げられる。
好ましくは、R′は水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
好ましくはAr1及びAr2はアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはAr1及びAr2は炭素数4以下のアルキル基又はアリール基である。
Ra及びRbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
Ra及びRbで表される置換基としては、本発明の化合物の機能を阻害しない範囲であれば特に限定はなく、また、本発明の効果発現性の微調整のために積極的に用いることができる。
置換基の具体例としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、トリアジル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基(前記カルバゾリル基のカルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよく、更に、これらの置換基は複数が互いに結合して環構造を形成してもよい。
また、Ra及びRbがそれぞれ複数存在する場合は、Ra及びRbはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、隣接するRa又はRb同士が互いに結合し、環構造を形成してもよい。
Ra及びRbは、好ましくは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である。
L1は、単結合、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキレン基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、又はこれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。
L2は、単結合、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキレン基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基又はこれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。
L1及びL2で表される炭素数1〜12のアルキレン基としては、本発明の化合物の機能を阻害しない範囲であれば、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよく、また、シクロアルキレン基のように環状構造であってもよい。
炭素数1〜12のアルキレン基の具体例としては、前述のR′、Ar1又はAr2で示した炭素数1〜12のアルキル基から、水素原子を一つ除くことにより導かれる2価の基が挙げられる。
L1及びL2で表される環形成炭素数6〜30のアリーレン基は、非縮合であっても縮合環であってもよく、環形成炭素数6〜30のアリーレン基の具体例としては、前述のR′、Ar1又はAr2で示した環形成炭素数6〜30のアリール基から、水素原子を一つ除くことにより導かれる2価の基が挙げられる。
本発明の化合物のT1エネルギー準位を適度に保つ目的から、アリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、クォーターフェニレン基、トリフェニレンジイル基、フルオレンジイル基が好ましい。
L2で表される環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基は、非縮合であっても縮合環であってもよく、好ましくは環を形成するヘテロ原子として、B、N、O、S、Si、P又はSeのいずれかを含み、より好ましくは、N、O、S又はSiのいずれかを含む。また、形成される環は、非縮合の5員環、非縮合の6員環、若しくは5員環又は6員環から構成される縮合環が好ましい。
環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基の例としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、シロール環、ベンゾシロール環、ジベンゾシロール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、フェナジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、アクリジン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾジフラン環、チエノチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ナフトチオフェン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の二つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、アザジベンゾフラン環(ジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、アザジベンゾチオフェン環(ジベンゾチオフェン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、インドロカルバゾール環、インデノインドール環、等から水素原子を二つ除くことにより導かれる2価の基が挙げられる。
より好ましいヘテロアリーレン基としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、トリアジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環等から水素原子を二つ除くことにより導かれる2価の基が挙げられる。
上記のアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、本発明の化合物の機能を阻害しない範囲で各々更に置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のR′、Ar1又はAr2で示した置換基と同様である。
L1及びL2は、さらに好ましくは単結合、フェニレン基、ヘテロアリーレン基、又は炭素数2以下のアルキレン基である。
R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、無置換若しくは下記一般式(A−1)又は(A−2)から選択される構造を置換基として有する環形成炭素数6〜30のアリール基を表す。
R1又はR2で表される炭素数1〜12のアルキル基は、本発明の化合物の機能を阻害しない範囲であれば、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよく、また、シクロアルキル基のように環状構造であってもよい。
炭素数1〜12のアルキル基としては、前述のR′、Ar1又はAr2で示した炭素数1〜12のアルキル基と同様である。
R1又はR2で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
R1又はR2で表される環形成炭素数6〜30のアリール基としては、非縮合であっても縮合環であってもよく、環形成炭素数6〜30のアリール基の具体例としては、前述のR′、Ar1又はAr2で表される環形成炭素数6〜30のアリール基と同様の基が挙げられる。
R1及びR2は、置換基として存在しないか、置換基として存在する場合、それぞれ、炭素数4以下のアルキル基、又はアリール基であることが好ましい。
R1又はR2で表されるアリール基は、下記一般式(A−1)又は(A−2)から選択される構造を置換基として有してもよい。
一般式(A−1)において、A1〜A5はそれぞれ独立に、CRc又は窒素原子を表す。ただし、A1〜A5のうち一つは、CRc且つ、該RcがR1又はR2で表されるアリール基と直接結合する単結合手を表す。
好ましくはA1〜A5の内、3〜5個がCRcであり、より好ましくは一般式(A−1)で表される構造が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環である。
一般式(A−2)において、A11〜A18はそれぞれ独立に、CRc又は窒素原子を表す。ただし、A11〜A18のうち一つは、CRc且つ、該RcがR1又はR2で表されるアリール基と直接結合する単結合手を表す。
好ましくはA11〜A18の内、6〜8個がCRcであり、より好ましくは7個又は8個がCRcであり、さらに好ましくは、A11〜A18が全てCRcである。
Rcは、上記結合手の他に水素原子又は置換基を表し、Rcで表される置換基は本発明の化合物の機能を阻害しない範囲であれば特に限定はなく、また、本発明の効果発現性の微調整のために積極的に用いることができる。
Rcで表される置換基としては、前述の一般式(1)、(2)、(3)及び(4)におけるRa又はRbで示した置換基と同様である。
複数のRcはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣接するRc同士が互いに結合し、環構造を形成してもよい。
好ましくは、Rcはアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基である。
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、R3は置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール基を表す。
炭素数1〜12のアルキル基としては、前述のR′、Ar1又はAr2で示した炭素数1〜12のアルキル基と同様である。
環形成炭素数6〜30のアリール基としては、前述のR′、Ar1又はAr2で示した環形成炭素数6〜30のアリール基と同様である。
より好ましいアリール基としては、本発明の化合物の励起三重項エネルギー準位(T1エネルギー準位)を適度に保つ目的から、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、が挙げられる。
環形成原子数5〜30のヘテロアリール基(芳香族複素環基)は、非縮合であっても縮合環であってもよく、好ましくは環を形成するヘテロ原子として、B、N、O、S、Si、P又はSeのいずれかを含み、より好ましくは、N、O、S又はSiのいずれかを含む。また、形成される環は、非縮合の5員環、非縮合の6員環、若しくは5員環又は6員環から構成される縮合環が好ましい。
環形成原子数5〜30のヘテロアリール基の例としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、シロール環、ベンゾシロール環、ジベンゾシロール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、フェナジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、アクリジン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾジフラン環、チエノチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ナフトチオフェン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の二つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、アザジベンゾフラン環(ジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、アザジベンゾチオフェン環(ジベンゾチオフェン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、インドロカルバゾール環、インデノインドール環、等から水素原子を一つ除くことにより導かれる基が挙げられる。
より好ましいヘテロアリール基としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、トリアジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環等から水素原子を一つ除くことにより導かれる基が挙げられる。
上記のアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、本発明の化合物の機能を阻害しない範囲で各々更に置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のR′、Ar1又はAr2で示した置換基と同様である。
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、n1、na1及びnb1はそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、na2は0〜2の整数を表し、n2、n3、n4及びnb2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
より好ましくは、n1〜n4は1を表し、na1、nb1、na2及びnb2は1を表す。
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、L1又はL2が結合するXを含む縮合環の好ましい結合位置について説明する。なお、Xを含む縮合環における結合位置は、式(I)で示す番号のとおりである。
一般式(1)において、L1は好ましくは、Xを含む縮合環の2位、3位又は4位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは2位又は4位である。L2は好ましくは、5位、6位又は7位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは5位又は7位である。
一般式(2)において、L1は好ましくは、Xを含む縮合環の2位、3位又は4位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは2位又は4位である。L2は好ましくは、5位、6位又は7位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは5位又は7位である。
一般式(3)において、L1は好ましくは、Xを含む縮合環の2位、3位又は4位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは2位又は4位である。L2は好ましくは、2位、3位又は4位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは2位又は4位である。
一般式(4)において、L1は好ましくは、Xを含む縮合環の2位、3位又は4位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは2位又は4位である。L2は好ましくは、2位、3位又は4位のいずれかの位置に結合し、より好ましくは2位又は4位である。
次に、一般式(1)又は(3)において、L1が結合するカルバゾール環の好ましい結合位置について説明する。なお、カルバゾール環における結合位置は、式(II)で示す番号のとおりである。
一般式(1)において、L1は好ましくは、カルバゾール環の2位又は3位に結合し、より好ましくは3位に結合する。
一般式(3)において、L1は好ましくは、カルバゾール環の2位又は3位に結合し、より好ましくは3位に結合する。
なお、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)におけるL1及びL2の結合位置の好ましさは、本発明の化合物の機能発現の観点に加え、合成ステップ数、反応のしやすさ、精製のしやすさ、原料のコスト等、より安価に安定して化合物を提供するという合成上の観点も含まれている。
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される芳香族複素環誘導体は、より好ましくは下記一般式(1−1)〜(1−4)、(2−1)〜(2−4)、(3−1)、(3−2)、(4−1)、及び(4−2)で表される。
一般式(1−1)〜(1−4)、(2−1)〜(2−4)、(3−1)、(3−2)、(4−1)、及び(4−2)における、Y1、Y2、Y3、Ar1、Ar2、X、Ra、Rb、L1、L2、R1、R2、R3、n1〜n4、na1、nb1、na2及びnb2は、前述の一般式(1)、(2)、(3)及び(4)におけるY1、Y2、Y3、Ar1、Ar2、X、Ra、Rb、L1、L2、R1、R2、R3、n1〜n4、na1、nb1、na2及びnb2と同義である。
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造を有する化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されない。なお、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)は、さらに一般式(A1)〜一般式(P3)を用いて以下に示した。
一般式(A1)〜一般式(P3)における、Y1、Y2、Y3、Ar1、Ar2、X、L 1 、L2、R1、R2、R3は、前述の一般式(1)、(2)、(3)及び(4)におけるY1、Y2、Y3、Ar1、Ar2、X、L 1 、L2、R1、R2、R3と同義である。Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。但しRa、Rbの少なくとも一方は、置換基を表す。
表中、L1、L2の欄の「−」は単結合であることを表し、RA、Rb、R1、R2の欄の「−」は置換基が存在しないことを表す。また、表中の括弧内の数値は、置換基の結合位置を表す。Ar1、Ar2の欄の「−」は、Ar1、Ar2が水素原子であることを表す。
本発明の複素環誘導体は、昇華精製時の昇華のしやすさの観点から、分子量は800以下であることが好ましく、より好ましくは720以下である。
本発明の化合物は、公知の合成法、例えば、J.Org.Chem.,42,1821(1977)、J.Am.Chem.Soc.,101,4992(1977)、Chem.Rev.,95,2457(1995)、J.Org.Chem.,53,918(1988)等に記載の炭素―炭素結合を形成するPdを用いたクロスカップリング反応、Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,2046等に記載のPdを用いた炭素―窒素結合を形成するクロスカップリング反応、Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,5400に記載のCuを用いた炭素―窒素結合形成反応を用いることにより合成することができる。
以下に具体的な合成例として例示化合物619の合成を示す。
(中間体1の合成)
窒素雰囲気下、ジベンゾフラン33.6g(200mmol)をTHF700mlに溶解し、−70℃以下でn−ブチルリチウム(1.6mol/l ヘキサン溶液)を350ml加えた。添加終了後、−70℃以下で1時間撹拌したのち、反応液を0℃まで昇温させ、1時間撹拌したのち、再び―70℃以下まで冷却し、1,2−ジブロモエタン45g(300mmol)を滴下した。滴下終了後、室温で12時間撹拌したのち、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水洗し、溶媒を減圧下で除去して得られる残留物をヘキサンで再結晶し、中間体1を37.1g得た。収率は75%であった。NMR、マススペクトルで構造を確認した。
(中間体2の合成)
窒素雰囲気下24.7gの中間体1(100mmol)を200mlのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、カルバゾール17.6g(105mmol)、銅粉末14.3g(150mmol)、炭酸カリウム27.6g(200mmol)を加え170℃で12時間撹拌した。反応液を冷却したのち、水500mlに開け、析出する固体をろ取した。ろ取した固体を酢酸エチルに溶解し、不溶物をろ過して除去したのち、溶媒を減圧下で除去して得られる固体をメタノールで再結晶し、33.3gの中間体2を得た。収率は80%であった。NMR、マススペクトルで構造を確認した。
(例示化合物619の合成)
窒素雰囲気下、16.7gの中間体2(50mmol)をTHF300mlに溶解し、−70℃以下でn−ブチルリチウム(1.6mol/l ヘキサン溶液)を90ml加えた。添加終了後、−70℃以下で1時間撹拌したのち、反応液を0℃まで昇温させ、1時間撹拌したのち、再び―70℃以下まで冷却し、1−クロロ−3,5−ジフェニルトリアジン14.7g(55mmol)をTHF80mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、滴下終了後、室温で6時間撹拌したのち、反応液に水を加え、析出する固体をろ取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ―で精製したのち、メタノールで再結晶し、さらにアセトニトリルで再結晶することにより25.4gの例示化合物619を得た。収率は90%であった。NMR,マススペクトルで構造を確認した。
その他の本発明の化合物も同様の方法で合成することができる。
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を上げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
本発明に係る発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
本発明に係る電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
本発明に係る正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
(タンデム構造)
また、本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/第2発光ユニット/第3発光ユニット/陰極
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
また、第3発光ユニットはなくてもよく、一方で第3発光ユニットと電極の間にさらに発光ユニットや中間層を設けてもよい。
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料及び構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO2、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO2、CuGaO2、SrCu2O2、LaB6、RuO2、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi2O3等の2層膜や、SnO2/Ag/SnO2、ZnO/Ag/ZnO、Bi2O3/Au/Bi2O3、TiO2/TiN/TiO2、TiO2/ZrN/TiO2等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号、米国特許第7420203号、米国特許第7473923号、米国特許第6872472号、米国特許第6107734号、米国特許第6337492号、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に係る発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の層厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
また、本発明の個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
本発明の発光層には、発光ドーパント(単にドーパントともいう)と、ホスト化合物(発光ホスト、単にホストともいう)とを含有することが好ましい。
(1)発光ドーパント
本発明に係る発光ドーパントについて説明する。
発光ドーパントとしては、蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)と、リン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう)が好ましく用いられる。本発明においては、少なくとも1層の発光層がリン光発光ドーパントを含有することが好ましい。
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用される特定のドーパント及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、本発明に係る発光ドーパントは、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なるドーパント同士の組み合わせや、蛍光発光性ドーパントとリン光発光性ドーパントとを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。
白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
本発明の有機EL素子における白色とは、特に限定はなく、橙色寄りの白色であっても青色寄りの白色であってもよいが、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/m2でのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
(1.1)リン光発光性ドーパント
本発明に係るリン光発光性ドーパント(以下、「リン光ドーパント」ともいう)について説明する。
本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては二種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明において使用できるリン光ドーパントとしては、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater. 17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006835469号、米国特許公開第20060202194号、米国特許公開第20070087321号、米国特許公開第20050244673号、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第20020034656号、米国特許第7332232号、米国特許公開第20090108737号、米国特許公開第20090039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20060008670号、米国特許公開第20090165846号、米国特許公開第20080015355号、米国特許第7250226号、米国特許第7396598号、米国特許公開第20060263635号、米国特許公開第20030138657号、米国特許公開第20030152802号、米国特許第7090928号、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第20060251923号、米国特許公開第20050260441号、米国特許第7393599号、米国特許第7534505号、米国特許第7445855号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20080297033号、米国特許第7338722号、米国特許公開第20020134984号、米国特許第7279704号、米国特許公開第2006098120号、米国特許公開第2006103874号、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許公開第2012228583号、米国特許公開第2012212126号、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(1.2)蛍光発光性ドーパント
本発明に係る蛍光発光性ドーパント(以下、「蛍光ドーパント」ともいう)について説明する。
本発明に係る蛍光ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
本発明に係る蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。
遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
(2)ホスト化合物
本発明に係るホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
本発明で用いることができるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第20030175553号、米国特許公開第20060280965号、米国特許公開第20050112407号、米国特許公開第20090017330号、米国特許公開第20090030202号、米国特許公開第20050238919号、国際公開第2001039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、EP2034538等である。
《電子輸送層》
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明に係る電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を5nm〜1μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm2/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明に係る電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
米国特許第6528187号 、米国特許第7230107号、米国特許公開第20050025993号 、米国特許公開第20040036077号 、米国特許公開第20090115316号、米国特許公開第20090101870号、米国特許公開第20090179554号、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号、米国特許公開第2009030202号、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、EP2311826号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
本発明におけるよりより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《正孔阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明に係る正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
《電子注入層》
本発明に係る電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記の如く陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
《正孔輸送層》
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明に係る正孔輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT:PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、αNPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
さらに不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)3に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許公開第20030162053号、米国特許公開第20020158242号、米国特許公開第20060240279号、米国特許公開第20080220265号、米国特許第5061569号、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、EP650955、米国特許公開第20080124572号、米国特許公開第20070278938号、米国特許公開第20080106190号、米国特許公開第20080018221号、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《電子阻止層》
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る電子阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明に係る電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も電子阻止層に好ましく用いられる。
《正孔注入層》
本発明に係る正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記の如く陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432や特開2006−135145等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《含有物》
前述した本発明における有機層は、更に他の含有物が含まれていてもよい。
含有物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
含有物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
《有機層の形成方法》
本発明に係る有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
本発明に係る有機層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、且つ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・to・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
本発明に係る有機EL材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
更に層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
本発明に係る有機層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5V以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
または、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
陽極の厚さは材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
《陰極》
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、厚さは通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの厚さで作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《支持基板》
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等とも言う)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル、又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)若しくはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m2・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、10−3ml/(m2・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、10−5g/(m2・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。
《封止》
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムはJIS K
7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m2・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。
さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
《保護膜、保護板》
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜又は前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜若しくは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
《光取り出し向上技術》
有機エレクトロルミネッセンス素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)などが挙げられる。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、又は基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度又は耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。またさらに1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む層厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面又は、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、若しくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でも良いが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
《集光シート》
本発明の有機EL素子は、支持基板(基板)の光取り出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、又は、いわゆる集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)などを用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であっても良い。
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
《用途》
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
《表示装置》
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の有機EL素子から構成される表示装置の構成の一例を示した概略斜視図であって、有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。図1に示すとおり、ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
制御部Bは表示部Aと電気的に接続されている。制御部Bは、複数の画素それぞれに対し、外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送る。その結果、各画素が走査信号により走査線毎に画像データ信号に応じて順次発光し、画像情報が表示部Aに表示される。
図2は、図1に記載の表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。
表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図2においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料から構成されている。走査線5とデータ線6は互いに格子状に直交して、その直交する位置で画素3に接続されている(詳細は図示していない)。
画素3は、走査線5から走査信号が送信されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並列配置することによって、フルカラー表示が可能となる。
《照明装置》
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図3、図4に示すような照明装置を形成することができる。
図3は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。)。
図4は、照明装置の断面図を示し、図4において、105は陰極、106は有機EL層、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「体積%」を表す。
〔実施例1〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子101の作製
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚15nmの正孔注入層を形成した。
次いで、HT−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
次いで、比較のホスト化合物である比較化合物1とGD−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚40nmの発光層を形成した。
次いで、HB−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。
さらにその上に、ET―1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの第二電子輸送層を形成した。
その後、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子101を作製した。
作製後、有機EL素子101の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、層さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子102〜111の作製》
有機EL素子101の作製において、ホスト化合物を表1に記載の化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子102〜111を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子101〜111の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)外部取り出し量子効率
有機EL素子を室温(約23℃)、2.5mA/cm2の定電流条件下による通電を行い、発光開始直後の発光輝度(L0)[cd/m2]を測定することにより、外部取り出し量子効率(η)を算出した。
ここで、発光輝度の測定はCS−2000(コニカミノルタ(株)製)を用いて行い、外部取り出し量子効率は有機EL素子101を100とする相対値で表した。
なお、値が大きいほうが発光効率に優れていることを示す。
(2)半減寿命
下記測定法に従って、半減寿命の評価を行った。
各有機EL素子を初期輝度4000cd/m2を与える電流で定電流駆動して、初期輝度の1/2になる時間を求め、これを半減寿命の尺度とした。なお、半減寿命は有機EL素子101を100とする相対値で表した。
なお、値が大きいほうが比較に対して耐久性に優れていることを示す。
(3)高温保存安定性評価
有機EL素子を高温条件下(約50±5℃)の恒温槽に入れ、上記(2)半減寿命の測定法と同条件で半減寿命の評価を行い、下記式を用いて耐熱性を算出した。
耐熱性(%)=(高温条件下での半減寿命)/(室温での半減寿命)×100
表1には有機EL素子101を100とする相対値で表した。耐熱性の値が大きいほうが比較に対して温度変化に対する耐久性が高い、つまり高温保存安定性が優れていることを示す。
表1より、本発明の有機EL素子は比較の有機EL素子101に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例2〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子201の作製
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚10nmの正孔注入層を形成した。
次いで、HT−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
次いで、比較のホスト化合物である比較化合物2とGD−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
次いで、HB−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。
さらにその上に、ET−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの第二電子輸送層を形成した。
その後、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子201を作製した。
作製後、有機EL素子201の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、層さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子202〜212の作製》
有機EL素子201の作製において、ホスト化合物を表2に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子202〜212を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子201〜212の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子201の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表2に示す。
表2より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子201に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例3〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子301の作製
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚20nmの正孔注入層を形成した。
次いで、HT−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚20nmの正孔輸送層を形成した。
次いで、比較のホスト化合物である比較化合物3とGD−3の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
次いで、HB−3を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚10nmの第一電子輸送層を形成した。
さらにその上に、ET−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚40nmの第二電子輸送層を形成した。
その後、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子301を作製した。
作製後、有機EL素子301の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、層さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子302〜312の作製》
有機EL素子301の作製において、ホスト化合物を表3に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子302〜312を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子301〜312の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子301の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表3に示す。
表3より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子301に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例4〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子401の作製
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を120nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用い、3000rpm、30秒の条件でスピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、層厚20nmの正孔注入層を設けた。
次に、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HT−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で正孔注入層上に蒸着し、層厚20nmの正孔輸送層を形成した。
次いで、比較のホスト化合物である比較化合物4とGD−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚40nmの発光層を形成した。
次いで、ET−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚40nmの電子輸送層を形成した。
その上に、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子401を作製した。
作製後、有機EL素子401の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、層さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子402〜412の作製》
有機EL素子401の作製において、ホスト化合物を表4に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子402〜412を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子401〜412の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子401の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表4に示す。
表4より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子401に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例5〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子501の作製
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を120nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用い、3000rpm、30秒の条件でスピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、層厚20nmの正孔注入層を設けた。
次に、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HT−4の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で正孔注入層上に蒸着し、層厚20nmの正孔輸送層を形成した。
次いで、比較のホスト化合物である比較化合物1とGD−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚40nmの発光層を形成した。
次いで、HB−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。
さらにその上に、ET−3を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの第二電子輸送層を形成した。
その後、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子501を作製した。
作製後、有機EL素子501の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、層さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子502〜512の作製》
有機EL素子501の作製において、ホスト化合物を表5に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子502〜512を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子501〜512の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子501の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表5に示す。
表5より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子501に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
表5より、本発明の有機EL素子は比較の有機EL素子501に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例6〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子601の作製
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚15nmの正孔注入層を形成した。
次いで、HT−3を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
次いで、比較のホスト化合物である比較化合物2とGD−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚40nmの発光層を形成した。
次いで、ET−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚40nmの第二電子輸送層を形成した。
さらにその上に、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子601を作製した。
作製後、有機EL素子601の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、層さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子602〜611の作製》
有機EL素子601の作製において、ホスト化合物を表6に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子602〜611を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子601〜611の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子601の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表6に示す。
表6より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子601に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例7〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子701の作製
参考例6に記載の有機EL素子601の作製において、HT−3の代わりにHT−2を用い、比較化合物2の代わりに比較化合物3を用い、GD−2の代わりにGD−4を用い、ET−2の代わりにET−3を用いた以外は同様にして、有機EL素子701を作製した。作製後、実施例1と同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子702〜711の作製》
有機EL素子701の作製において、ホスト化合物を表7に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子702〜711を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子701〜711の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子701の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表7に示す。
表7より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子701に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例8〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子801の作製
参考例2に記載の有機EL素子201の作製において、HT−2の代わりにHT−3を用い、比較化合物2の代わりに比較化合物4を用い、GD−2の代わりにGD−3を用い、HB−2の代わりにHB−3を用い、ET−2の代わりにET−3を用いた以外は同様にして、有機EL素子801を作製した。作製後、実施例1と同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子802〜811の作製》
有機EL素子801の作製において、ホスト化合物を表8に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子802〜811を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子801〜811の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子801の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表8に示す。
表8より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子801に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例9〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子901の作製
実施例2に記載の有機EL素子201の作製において、HT−2の代わりにHT−4を用い、比較化合物2の代わりに比較化合物1を用い、GD−2の代わりにGD−4を用い、HB−2の代わりにHB−3を用い、ET−2の代わりにET−4を用いた以外は同様にして、有機EL素子901を作製した。作製後、実施例1と同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子902〜911の作製》
有機EL素子901の作製において、ホスト化合物を表9に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子902〜911を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子901〜911の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子901の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表9に示す。
表9より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子901に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例10〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子1001の作製
実施例4に記載の有機EL素子401の作製において、HT−2の代わりにHT−3を用い、比較化合物4の代わりに比較化合物2を用い、ET−1の代わりにET−4を用いた以外は同様にして、有機EL素子1001を作製した。作製後、実施例1と同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子1002〜1013の作製》
有機EL素子1001の作製において、ホスト化合物を表10に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子1002〜1013を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子1001〜1013の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子1001の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表10に示す。
表10より、
参考例の有機EL素
子は比較の有機EL素子1001に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例11〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子1101の作製
実施例5に記載の有機EL素子501の作製において、HT−4の代わりにHT−1を用い、比較化合物1の代わりに比較化合物3を用い、GD−1の代わりにGD−4を用い、ET−3の代わりにET−2を用いた以外は同様にして、有機EL素子1101を作製した。作製後、実施例1と同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子1102〜1112の作製》
有機EL素子1101の作製において、ホスト化合物を表11に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子1102〜1112を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子1101〜1112の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子1101の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表11に示す。
表11より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子1101に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例12〕
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子1201の作製
実施例1に記載の有機EL素子101の作製において、HT−1の代わりにHT−4を用い、比較化合物1の代わりに比較化合物4を用い、GD−1の代わりにGD−3を用い、HB−1の代わりにHB−2を用い、ET−1の代わりにET−3を用いた以外は同様にして、有機EL素子1201を作製した。作製後、実施例1と同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子1202〜1214の作製》
有機EL素子1201の作製において、ホスト化合物を表12に記載のホスト化合物に変更した。それ以外は同様にして、有機EL素子1202〜1214を作製した。作製後、同様に図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
《有機EL素子1201〜1214の評価》
各サンプルについて下記の評価を行った。
外部取り出し量子効率、半減寿命、高温保存安定性評価については、実施例1と同様の方法で評価し、有機EL素子1201の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表12に示す。
表12より、参考例の有機EL素子は比較の有機EL素子1201に比べ、外部取り出し量子効率、半減寿命及び高温保存安定性に優れていることが分かる。
〔参考例13〕
《フルカラー表示装置の作製》
(1)青色発光素子の作製
《有機EL素子1301の作製》
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を厚さ100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにHT−1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物としてmCP(1,3−ビスーNカルバゾリルベンゼン)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにHB−2を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパントとしてBD−1を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにET−2を200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
次に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、HT−1の入った前記モリブデン製抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板上に蒸着し、層厚40nmの正孔輸送層を設けた。
更に、mCP(1,3−ビスーNカルバゾリルベンゼン)とBD−1の入った前記モリブデン製抵抗加熱ボートを通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.012nm/秒で、前記正孔輸送層上に共蒸着して、厚さ40nmの発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温とした。
更に、HB−2の入った前記モリブデン製抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、前記発光層上に蒸着して、厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。
更に、ET−2の入った前記抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、前記正孔阻止層上に蒸着して、厚さ40nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温とした。
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子1301を作製した。
作製後、有機EL素子1301の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を構成し、これをサンプルとした。
(2)緑色発光素子の作製
実施例5の有機EL素子508を緑色発光素子として用いた。
(3)赤色発光素子の作製
《有機EL素子1302の作製》
緑色発光素子である実施例5の有機EL素子508において、発光ドーパントをGD−1からRD−1に変更した。それ以外は青色発光素子1301と同様にして、赤色発光素子である有機EL素子1302を作製した。
(4)表示装置の作製
上記で作製した赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並列配置し、図1に記載のような形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。
図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。
図2に示すとおり、表示部Aは同一基板上に複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と並列配置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有している。配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料から構成されている。走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
複数の画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が送信されるとデータ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。このように赤、緑、青の画素3を適宜、並列配置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
得られたフルカラーの表示装置は、駆動することにより、輝度が高く、高耐久性を有し、且つ高温時での保存性に優れたフルカラー動画表示が得られることが確認できた。