以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態は本発明を限定するものではない。
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態の画像処理装置20を備えた画像処理システム1の概略構成の一例を示す構成図である。
本実施の形態の画像処理システム1は、マルチバンド画像撮影装置10及び画像処理装置20を備える。
マルチバンド画像撮影装置10は、撮影制御部12、マルチバンド照明部14、及びマルチバンド画像撮影部16を備える。
撮影制御部12は、マルチバンド照明部14及びマルチバンド画像撮影部16の動作タイミングを制御する。そのため、撮影制御部12は、マルチバンド照明部14及びマルチバンド画像撮影部16の各々に対して、動作タイミングを制御するための制御信号を出力する。なお、本実施の形態の撮影制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータにより実現されており、CPUが、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、上記制御信号が出力される。そのため、マルチバンド画像撮影装置10によれば、全自動撮影が可能である。
マルチバンド照明部14は、撮影照明光源と、撮影照明光源から射出された光が透過する波長帯域(バンド)を制御する光学素子(例えばバンドパスフィルタ)と、を含む(いずれも図示省略)。マルチバンド照明部14は、撮影制御部12から入力される制御信号に基づいて、光学素子の波長特性を切り替える。具体例として光学素子がバンドパスフィルタの場合は、マルチバンド照明部14はバンドパスフィルタの切り替えを行う。また、マルチバンド照明部14は、撮影制御部12から入力される制御信号に基づいて、撮影照明光源から光を射出させる。これにより、マルチバンド照明部14からは、波長が選択された撮影照明光が出力される。以下では、撮影照明光の波長(光学素子としてバンドパスフィルタを使用している場合はバンドパスフィルタの波長)を「光源波長」という。
マルチバンド画像撮影部16は、1台の白黒カメラと、入射光の波長帯域を制御する光学素子(例えばバンドパスフィルタ)と、を含む(いずれも図示省略)。マルチバンド画像撮影部16は、撮影制御部12から入力される制御信号に基づいて、光学素子の波長特性を切り替える。具体例として光学素子がバンドパスフィルタの場合は、マルチバンド画像撮影部16はバンドパスフィルタの切り替えを行う。また、マルチバンド画像撮影部16は、撮影制御部12から入力される制御信号に基づいて、被写体の画像を撮影する。これにより、マルチバンド画像撮影部16からは、各バンドの撮影照明光に対応したマルチバンド画像が出力される。以下では、マルチバンド画像撮影部16の光学素子(バンドパスフィルタを使用している場合はバンドパスフィルタ)の波長を「カメラ波長」という。
なお、マルチバンド画像撮影部16は、カメラから出力される出力信号値が飽和しないよう、露光条件を設定する。また、光源波長がカメラ波長以下(光源波長≦カメラ波長)の場合のみ、撮影を行うようにしてもよい。
一方、画像処理装置20は、取得部21、撮影画像蓄積部22、マルチバンド画像生成部24、反射成分色再現部26、蛍光成分色再現部28、及び画像合成処理部30を備える。画像処理装置20には、マルチバンド画像撮影装置10のマルチバンド画像撮影部16で撮影されたマルチバンド画像が入力される。また、画像処理装置20からは、色再現結果画像(詳細後述)が出力される。なお、本実施の形態の画像処理装置20は、CPU、RAM、及びROM等を備えたコンピュータにより実現されており、CPUが、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、マルチバンド画像から色再現結果画像を生成して出力する。
取得部21は、マルチバンド画像をマルチバンド画像撮影装置10から取得して、撮影画像蓄積部22に記憶させる。そのため、取得部21には、マルチバンド画像が入力され、入力されたマルチバンド画像が撮影画像蓄積部22に出力される。
撮影画像蓄積部22には、入力されたマルチバンド画像が記憶される。また、撮影画像蓄積部22は、マルチバンド画像撮影部16のカメラにおける各カラーバンドの分光感度特性、撮影照明光スペクトル、及び撮影照明光の分光に用いた各バンドの波長選択特性(バンドパスフィルタを用いる場合は、バンドパスフィルタの分光透過率)がマルチバンド画像と共に記憶されている。なお、撮影画像蓄積部22は、マルチバンド画像生成部24と一体化してもよい。また、撮影画像蓄積部22は、画像処理装置20の外部にあってもよい。
マルチバンド画像生成部24は、蛍光成分分離部40、マルチバンド蛍光成分画像生成部42、及び重み係数計算部44を備える。マルチバンド画像生成部24は、マルチバンド画像撮影装置10で撮影されたマルチバンド画像から、マルチバンド反射成分画像及びマルチバンド蛍光成分画像を生成する。
蛍光成分分離部40は、マルチバンド画像の中から、反射光成分(以下、「反射成分」という)が記録された画像と、蛍光成分が記録された画像とを選別し抽出する。
具体的には、蛍光成分分離部40は、撮影画像蓄積部22から各バンドの撮影照明光に対応したマルチバンド画像と、カメラにおける各カラーバンドの分光感度特性、撮影照明光スペクトル、及び撮影照明光の分光に用いた各バンドの波長選択特性(バンドパスフィルタの分光透過率)を取得する。そして、蛍光成分分離部40は、撮影照明光の各バンドに対し、当該バンドと等しいカラーバンド(光源波長=カメラ波長)の画像をマルチバンド反射成分画像として抽出し、出力する。また、蛍光成分分離部40は、撮影照明光の各バンドに対し、当該バンドよりも波長が長いカラーバンド(光源波長<カメラ波長)の画像を蛍光成分画像として抽出し、出力する。
重み係数計算部44には、マルチバンド照明部14の各バンドにおける波長選択特性(バンドパスフィルタの分光透過率)、撮影照明光スペクトル、及び観察環境の照明光(以下、「観察照明光」という)の照明光スペクトル(以下、「観察照明光スペクトル」という)が入力される。なお、波長選択特性(バンドパスフィルタの分光透過率)及び撮影照明光スペクトルは、撮影画像蓄積部22から取得してもよい。重み係数計算部44は、撮影照明光の各バンドの蛍光成分画像に対する重み係数を計算する。
マルチバンド蛍光成分画像生成部42には、蛍光成分分離部40から蛍光成分画像が入力される。また、マルチバンド蛍光成分画像生成部42には、重み係数計算部44から撮影照明光の各バンドに対する重み係数が入力される。マルチバンド蛍光成分画像生成部42は、撮影照明光の各バンドに対し、当該バンドに対する蛍光成分画像に当該バンドに対する重み係数を掛け合わせ、重みつき線形和を求めることで、マルチバンド蛍光成分画像を生成して出力する。
以下、マルチバンド蛍光成分画像生成部42におけるマルチバンド蛍光成分画像の生成について、バンド数をNと一般化し、定式化を行い説明する。また、以下の説明では、分光のための光学素子として、バンドパスフィルタを用いた場合について説明する。また、以下の式では可視光波長領域(380nm〜780nm)のみを取り扱っているが、紫外光波長領域、赤外光波長領域を含むように拡張してもよい。
j番目(jバンド目)の照明下で撮影したi番目(iバンド目)の画像(1≦i,j≦N)の信号値は、撮影照明光スペクトルをI(λ)、jバンド目のフィルタの分光透過率をTj(λ)、被写体表面の分光反射率をR(λ)、及びiバンド目のカメラの分光感度をSi(λ)とすると、下記(1)式のように表すことができる。
ここでλは波長を表す。上記(1)式より、反射成分riは下記(2)式のように書き表せる。
一方で蛍光成分fi,jは、蛍光の吸光特性をα(λ)、及び発光スペクトルをE(λ)とすると、下記(3)式のように表すことができる。
以上から、蛍光成分は下記(4)式のように書き表すことができる。
ここでjバンド目のフィルタTj(λ)のバンド幅が十分に小さいと仮定すると、上記(3)式は下記(5)式のように書き改めることができる。
上記(5)式の第2項はjバンド目のフィルタTj(λ)を透過した撮影照明光のエネルギを表しており、分光計を用いることで計測可能である。
次に、観察照明光スペクトルI’(λ)の観察照明光下での画像を再現することを考える。観察照明光スペクトルI’(λ)の下での蛍光成分fi,jは、上記(5)式より、下記6)式のように表せる。
つまり上記(6)式は、撮影時とは異なる観察照明光下での蛍光成分は、撮影画像の重みつき線形和で求められることを意味する。jバンド目における重み係数wjを、下記(7)式で表すと、マルチバンド蛍光成分画像は、下記(8)式に基づき求めることできる。
重み係数計算部44は、マルチバンド蛍光成分画像生成部42が、上記(8)式に基づいてマルチバンド蛍光成分画像を生成するための重み係数wjを計算する。重み係数計算部44は、マルチバンド照明部14の撮影照明光の各バンド(j)に対し、撮影照明光スペクトルと分光に用いた当該バンド(j)に対する波長選択特性(バンドパスフィルタの分光透過率)の積で、観察照明光スペクトルと分光に用いた当該バンド(j)に対する波長選択特性(バンドパスフィルタの分光透過率)の積を割り、当該バンド(j)における重み係数wjを計算する。具体的には、上記(7)式により、重み係数wjを計算する。重み係数計算部44は、計算した撮影照明光の各バンド(j)に対する重み係数wjをマルチバンド蛍光成分画像生成部42に出力する。
反射成分色再現部26には、マルチバンド画像生成部24の蛍光成分分離部40で抽出されたマルチバンド反射成分画像が入力される。また、反射成分色再現部26には、観察照明光スペクトルが入力される。さらに、マルチバンド画像生成部24には、等色関数、モニタの原色スペクトル、もしくは原色の測色値が入力される場合もある。
反射成分色再現部26は、マルチバンド反射成分画像を用いて、分光反射率の推定処理により分光反射率推定行列を算出する。そして、反射成分色再現部26は、マルチバンド反射成分画像の画素毎に、分光反射率推定行列及び観察照明光スペクトルをかけて反射光スペクトルを算出することにより、反射光スペクトル画像を生成する。なお、反射成分色再現部26は、等色関数を用いた場合にはモニタ特性に依存しない測色値画像を、さらにモニタの原色スペクトルや測色値を用いた場合には線形なガンマ特性を持つ原色信号値画像(RGB画像)を算出する。以下では、反射成分色再現部26により算出された反射光スペクトル画像もしくは測色値画像、または、線形なガンマ特性を持つモニタの原色信号値画像を「反射成分色再現画像」という。反射成分色再現部26からは、反射成分色再現画像が出力される。
反射成分色再現部26において、マルチバンド反射成分画像から分光スペクトルを求める方法について述べる。ここでは具体例として、ウィナー推定法を用いた場合について述べる。カメラの分光感度を行列S=[S1(λ),S2(λ),・・・,SN(λ)]T、と表すとする。また各対角成分が撮影照明光スペクトルである対角行列を行列Iとする。分光反射率をRとすると、観察される分光スペクトルSrは下記(9)式のように書き表せる。
カメラからの出力信号値rは、下記(10)式で表されるため、分光反射率Rは、ウィナー推定法により下記(11)式から推定することができる。
上記(11)式において、R^は分光反射率の推定結果であり、行列Mはウィナー推定行列(分光反射率推定行列)であり行列Hから求められる。また、上記(11)式において、行列Kは被写体の分光反射率の統計的性質を現す行列である。ここでは簡単のため、一次のマルコフ性を仮定し、行列Kを下記(12)式のように定義する。
分光反射率の推定結果R^と観察照明光スペクトルI~とを用いると、観察照明光下における反射成分S^rは下記(13)式で表すことができる。
反射成分色再現部26は、上記のようにウィナー推定法を用いて画素毎の分光反射率を推定し、推定した分光反射率を画素値とする反射成分色再現画像を生成する。
なお、画像処理装置20から出力される色再現結果画像をRGBディスプレイに表示するための表示用色再現結果画像とする場合には、反射成分色再現部26において、等色関数、ディスプレイ装置の3原色に関するスペクトル分光分布もしくは測色値、ディスプレイ装置のガンマ特性を利用し、反射光スペクトル画像からRGB画像に変換してもよい。この場合、まず、反射光スペクトルと等色関数とを掛け合わせて測色値を算出し、算出された測色値をRGB値に変換する。最後に、ディスプレイ装置のガンマ特性に応じた補正処理を行い、表示用の反射成分色再現画像を得る。
蛍光成分色再現部28には、マルチバンド蛍光成分画像生成部42で生成されたマルチバンド蛍光成分画像が入力される。また、蛍光成分色再現部28には、観察照明光スペクトルが入力される。さらに、蛍光成分色再現部28、等色関数、モニタの原色スペクトル、もしくは原色の測色値が入力される場合もある。
蛍光成分色再現部28は、マルチバンド蛍光成分画像を用いて、分光スペクトルの推定処理により分光スペクトル推定行列を算出する。そして、蛍光成分色再現部28は、マルチバンド蛍光成分画像の画素毎に、分光スペクトル推定行列をかけて蛍光スペクトルを算出することにより、蛍光スペクトル画像を生成する。なお、蛍光成分色再現部28は、等色関数を用いた場合にはモニタ特性に依存しない測色値画像を、さらにモニタの原色スペクトルや測色値を用いた場合には線形なガンマ特性を持つ原色信号値画像(RGB画像)を算出する。以下では、蛍光成分色再現部28により算出された蛍光スペクトル画像もしくは測色値画像、または、線形なガンマ特性を持つモニタの原色信号値画像を「蛍光成分画像」という。蛍光成分色再現部28からは、蛍光成分画像が出力される。
具体的には、蛍光成分色再現部28は、上述した反射成分色再現部26と同様の処理を行い、蛍光スペクトルを推定してマルチバンド蛍光成分画像を生成する。f’=[f’1,f’2,・・・,f’N]Tとし、対角成分が全て1の対角行列I’を用いると、下記(14)式から、観察照明光下の蛍光スペクトルE^は、下記(15)式で表される。
なお、画像処理装置20から出力される色再現結果画像をRGBディスプレイに表示するための表示用色再現結果画像とする場合には、反射成分色再現部26と同様に、蛍光成分色再現部28において蛍光スペクトル画像からRGB画像に変換してもよい。
画像合成処理部30には、反射成分色再現画像及び蛍光成分色再現画像が入力される。画像合成処理部30は、反射成分色再現画像と蛍光成分色再現画像とを加算し、観察照明光下において観察される色再現結果画像を生成して出力する。色再現結果画像は、反射成分色再現画像及び蛍光成分色再現画像に応じて、スペクトル画像、測色値画像、及び線形なガンマ特性を持つモニタの原色信号値画像のいずれかである。
具体的には、観察照明光I~の下で観察される分光スペクトルは、下記(16)式で書き表される。画像合成処理部30は、下記(16)式に基づいて、色再現結果画像を生成する。
なお、画像合成処理部30に反射光スペクトル画像及び蛍光スペクトル画像が入力される場合は、画像合成処理部30において、上述した反射成分色再現部26及び蛍光成分色再現部28と同様に、観察照明光スペクトル画像からRGB画像に変換してもよい。
次に、本実施の形態の画像処理装置20における画像処理の流れの概略について説明する。
なお、マルチバンド画像撮影部16のカメラには1台の白黒カメラ(カメラ内での信号値補正は無く、ガンマ特性は線形)を使用した。また、被写体にはカラーチャートを用いた。マルチバンド照明部14及びマルチバンド画像撮影部16の両方で、図2に示す分光透過率を持つ8枚のバンドパスフィルタを光学素子として使用した。バンドパスフィルタの中心波長はそれぞれ420nm、450nm、490nm、530nm、570nm、610nm、650nm、690nmで、半値幅は中心波長が420nmのバンドパスフィルタは20nmで、その他のバンドパスフィルタは40nmである。各カメラの露光時間は、カメラと撮影照明光源のバンドパスフィルタが同じ場合に、画像信号値が飽和しないように設定した。なお、露光時間は全ての撮影過程に置いて一定でも良いし、マルチバンド照明部14の撮影照明光源のバンド毎に最適値に設定し、撮影後に画像処理で補正をかけても良い。ピント調整は、光学系の収差の影響を抑えるため、カメラ側と撮影照明光源側のバンドパスフィルタが等しいときに実施した。マルチバンド画像撮影装置10により、図3に示すような合計36枚の画像をマルチバンド画像として撮影した。
マルチバンド画像撮影装置10により撮影照明光の各バンドに対するマルチバンド画像が撮影された後、画像処理装置20により画像処理が実行される。図4は、本実施の形態の画像処理装置20における画像処理の流れの一例を表すフローチャートである。
ステップS100で取得部21は、マルチバンド画像撮影装置10から撮影照明光の各バンドに対するマルチバンド画像を取得する。そして、取得部21は、取得した当該マルチバンド画像を撮影画像蓄積部22に記憶させる。
次のステップS102で蛍光成分分離部40は、撮影照明光の各バンドに対し、蛍光成分を分離して、マルチバンド画像の中から、反射成分が記録された反射成分画像と、蛍光成分が記録された蛍光成分画像とを選別し抽出する。
次のステップS104で重み係数計算部44は、マルチバンド照明部14の各バンドにおける波長選択特性(バンドパスフィルタの分光透過率)、撮影照明光スペクトル、及び観察照明光スペクトルに基づいて、撮影照明光の各バンドの蛍光成分画像に対し、上述した(7)式に基づき、重み係数を計算する。なお、重み係数を計算するタイミングは本実施の形態に限定されず、予め計算しておいてもよい。
次のステップS106でマルチバンド蛍光成分画像生成部42は、上記ステップS102で得られた蛍光成分画像と、上記ステップS104で得られた撮影照明光の各バンドの蛍光成分画像に対する重み係数に基づいて、上述したように、撮影照明光の各バンドに対し、当該バンドに対する蛍光成分画像に当該バンドに対する重み係数を掛け合わせ、重みつき線形和を求めることで、蛍光成分画像のうち当該バンドの撮影照明光で撮影された画像に当該バンドの重み係数を掛け合わせ、マルチバンド蛍光成分画像を生成する。
次のステップS108で蛍光成分色再現部28は、上記ステップS106で得られたマルチバンド蛍光成分画像と、分光スペクトル推定行列とに基づいて、上述したように、蛍光スペクトルを算出することにより、蛍光スペクトル画像(蛍光成分色再現画像)を生成する。
次のステップS110で反射成分色再現部26は、上記ステップS102で得られたマルチバンド反射成分画像と、分光反射率推定行列と、観察照明光スペクトルとに基づいて、上述したように、反射光スペクトルを算出することにより、反射光スペクトル画像(反射成分色再現画像)を生成する。
次のステップS112で画像合成処理部30は、上述したように、蛍光成色再現画像及び反射成分色再現画像を加算することにより色再現結果画像を生成し、表示装置等に出力した後、本実施の形態の画像処理を終了する。
被写体として黄、緑、オレンジ、ピンクの4種類の蛍光色カードを用いて、撮影時のマルチバンド照明部14の撮影照明光源としてキセノンランプを使用し、観察照明光として蛍光灯と白熱灯の下での観察照明光スペクトルの推定を行う実験を行った実験結果を行った。図5には、蛍光灯下での推定結果(estimation)及び分光計による計測結果(measurement)を示す。また、図6には、白熱灯下での推定結果及び分光計による計測結果を示す。図5及び図6によれば、蛍光灯下及び白熱灯下のいずれにおいても、推定結果と計測結果とがほぼ一致していることがわかる。
なお、上記画像処理における蛍光成分色再現画像を生成するステップS104〜108の処理と、反射成分色再現画像を生成するステップS110の処理の順番は本実施の形態に限定されないことはいうまでもない。
なお、本実施の形態の画像処理では、マルチバンド画像撮影装置10のマルチバンド画像撮影部16が備える複数の光学素子(バンドパスフィルタ)の構成は、特に限定されない。複数の光学素子は、例えば、カメラで撮影された撮影画像毎に、撮影照明光源から射出された光が透過する波長帯域(バンド)を制御してもよい。このように構成する場合は、例えば、カメラのレンズの前に配置した光学素子を順次切り替えて、光学素子毎に撮影を行えばよい。
また、複数の光学素子は、例えば、カメラで撮影された撮影画像の画素毎(複数の画素による画素群単位毎も含む)に、撮影照明光源から射出された光が透過する波長帯域(バンド)を制御してもよい。このように構成する場合は、例えば、カメラがイメージセンサを有する場合、当該イメージセンサの画素毎に、異なる光学素子(バンドパスフィルタ)を配置すればよく、具体例としては、CCD( Charge Coupled Device Image Sensor)イメージセンサ上のカラーフィルタを当該複数の光学素子とすることが挙げられる。
マルチバンド画像撮影部16は、1台の白黒カメラと、入射光の波長帯域を制御する光学素子(例えばバンドパスフィルタ)と、を含む(いずれも図示省略)。マルチバンド画像撮影部16は、撮影制御部12から入力される制御信号に基づいて、光学素子の波長特性を切り替える。具体例として光学素子がバンドパスフィルタの場合は、マルチバンド画像撮影部16はバンドパスフィルタの切り替えを行う。また、マルチバンド画像撮影部16は、撮影制御部12から入力される制御信号に基づいて、被写体の画像を撮影する。これにより、マルチバンド画像撮影部16からは、各バンドの撮影照明光に対応したマルチバンド画像が出力される。以下では、マルチバンド画像撮影部16の光学素子(バンドパスフィルタを使用している場合はバンドパスフィルタ)の波長を「カメラ波長」という。
このように本実施の形態のマルチバンド画像撮影装置は、マルチバンド照明部14とマルチバンド画像撮影部16とを備える。マルチバンド画像撮影部16は、1台の単色カメラと、1台のカメラに入射する光の波長を制限し、透過させる光の波長帯域であるバンドが各々異なる複数の第1光学素子の一例であるバンドパスフィルタを備える。また、マルチバンド照明部14は、撮影照明光源と、当該撮影照明光源から被写体に照射する撮影照明光の波長を制限し、透過させる光の波長帯域であるバンドが各々異なる複数の第2光学素子の一例であるバンドパスフィルタを備える。
画像処理装置20は、マルチバンド画像生成部24を備える。マルチバンド画像生成部24は、蛍光成分分離部40、マルチバンド蛍光成分画像生成部42、及び重み係数計算部44を備える。蛍光成分分離部40は、撮影照明光の各バンドに対し、マルチバンド画像を、当該バンドと等しいバンドの画像である反射成分画像と、当該バンドより中心波長が長いバンドの画像である蛍光成分画像とに分離する。重み係数計算部44は、撮影照明光の各バンドに対し、撮影照明光の照明光スペクトルと当該バンドに対する第2光学素子の波長選択特性の積で、観察環境の照明光の照明光スペクトルと前記バンドに対する前記第2光学素子の波長選択特性の積を割ることにより、バンドの蛍光成分画像に対応する重み係数を計算する。マルチバンド蛍光成分画像生成部42は、蛍光成分分離部40により分離された、撮影照明光の各バンドに対する蛍光成分画像と、重み係数計算部44により計算された撮影照明光の各バンドに対する重み係数とに基づいて、蛍光成分画像の重みつき線形和を求めることで、マルチバンド蛍光成分画像を生成して出力する。
また、画像処理装置20は、反射成分色再現部26、蛍光成分色再現部28、及び画像合成処理部30を備える。蛍光成分色再現部28は、マルチバンド蛍光成分画像生成部42で生成されたマルチバンド蛍光成分画像の画素毎に、分光スペクトル推定行列をかけて蛍光スペクトルを算出し、蛍光成分色再現画像を生成する。反射成分色再現部26は、蛍光成分分離部40で分離された反射成分画像によるマルチバンド反射成分画像の画素毎に、分光反射率推定行列及び観察照明光スペクトルをかけて反射光スペクトルを算出し、反射成分色再現画像を生成する。画像合成処理部30は、蛍光成分色再現画像と反射成分色再現画像とを加算して色再現結果画像を生成して出力する。
従って、本実施の形態の画像処理装置20によれば、従来よりも広帯域な波長幅で分光を行い撮影されたマルチバンド画像により、蛍光成分の吸光特性の推定を要せずに、反射成分画像と蛍光成分画像とを用いて任意の観察照明光下での画像を生成することができる。
[第2の実施の形態]
本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様の構成及び動作を含むため、同様の構成及び動作についてはその旨を記し詳細な説明を省略する。
図7は、本実施の形態の画像処理装置120を備えた画像処理システム101の概略構成の一例を示す構成図である。
本実施の形態の画像処理システム101は、マルチバンド画像撮影装置110及び画像処理装置120を備える。
マルチバンド画像撮影装置110は、マルチバンド照明部114及びマルチバンド画像撮影部116を備えている。
図8に、本実施の形態のマルチバンド照明部114として用いたマルチバンド照明装置の具体例を示す。図8に示したマルチバンド照明装置114Aの撮影照明光源はキセノンランプであり、マルチバンド照明装置114Aの内部には最大8枚のバンドパスフィルタが取りつけ可能なフィルタターレットが内蔵されている。また射出光はファイバーガイドを経由して、レンズを通して被写体に照射される。図8に示したマルチバンド照明装置114Aの場合は、2台の8バンド照明装置をファイバーガイドでつないで、同一のレンズから被写体に射出光が照射される。
マルチバンド画像撮影部116は、複数台の白黒カメラを備えている。図9に、本実施の形態のマルチバンド画像撮影部116に用いた9眼ステレオカメラの具体例を示す。9台のカメラは全て白黒カメラであり、それぞれのカメラには、図10に示す分光透過率を有するバンドパスフィルタが取り付けられている。マルチバンド照明装置114Aにも同じ分光透過率を有する9枚のバンドパスフィルタが取り付けられている。
各カメラの露光時間は、撮影制御部112及びマルチバンド照明部114のバンドパスフィルタが等しいときに画像信号値が飽和しないよう設定し、撮影後に補正をかけた。撮影画像の明るさの補正には、同じ条件で撮影した標準白色板の画素値を使用した。また各カメラのピント調整も、光学系の収差の影響を抑えるため、撮影制御部112及びマルチバンド照明部114のバンドパスフィルタの波長が等しいときに実施した。
本実施の形態のマルチバンド画像撮影部116のカメラは上述のように、9台のカメラを用いており、各カメラの位置が異なるため、各カメラで撮影された画像中の被写体の位置がずれている。そのため、本実施の形態の画像処理装置120では、マルチバンド画像のうちから選択した基準画像に基づいて、被写体の位置を合わせるように他の画像を変形させる。
本実施の形態の画像処理装置120には、マルチバンド画像撮影部116で撮影されたバンド数Nのマルチバンド画像が入力される。また、図7に示すように、本実施の形態の画像処理装置120は、第1の実施の形態の画像処理装置20のマルチバンド画像生成部24に代えてマルチバンド画像生成部124を備えている。
マルチバンド画像生成部124は、蛍光成分分離部40の前に画像変形処理部46をさらに備えている。図11は、本実施の形態の画像変形処理部46の概略構成の一例を示す構成図である。
図11に示すように、画像変形処理部46は、基準画像選択部50、対応点検出部52、画像変形パラメータ算出部54、画像変形パラメータ記憶部56、及び画像変形処理部58を備えている。
基準画像選択部50には、撮影画像蓄積部22に蓄積されているマルチバンド画像撮影部116で撮影された複数の画像が入力される。光源波長とカメラ波長とが等しい(光源波長=カメラ波長)画像(反射成分画像)の中から対応点検出の基準とする基準画像を1枚選択する。例えば、基準画像としては、被写体に対して所望の位置に設置されたカメラで撮影された画像や、9バンドの画像中で中心波長が短いほうから4番目の画像、輝度のヒストグラム分布の分散が最大である画像、及びエントロピが最大である画像等が挙げられる。
基準画像選択部50からは、選択された1枚の反射成分画像である基準画像と、基準画像とは異なる、光源波長とカメラ波長とが等しいN−1枚の反射成分画像である変形対象画像と、が対応点検出部52に出力される。また、基準画像選択部50からは、光源波長とカメラ波長とが異なる画像が画像変形処理部58に出力される。
対応点検出部52には、基準画像選択部50で選択された基準画像とN−1枚の反射成分画像である変形対象画像が入力される。なお、変形対象画像は、後述する画像変形パラメータ記憶部56に画像変形パラメータが記憶されるごとに、順次、対応点検出部52に入力されるようにしてもよい。
対応点検出部52は、基準画像の基準点に対応する変形対象画像の対応点を探索して検出する。対応点を探索して検出する方法は特に限定されず、既存の方法を用いればよい。既存の方法としては、例えば、NCC(Normalized cross correlation)法や位相限定相関(Phase-only correlation:POC)法、SAD (sum of absolute differences)法、SSD(sum of squared difference)法、ヒストグラム相関法、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)法、HOG(Histograms of Oriented Gradients)法等が挙げられる。
対応点検出部52からは、検出された対応点と、基準画像の基準点と変形対象画像上における対応点の位置関係とが出力される。
画像変形パラメータ算出部54には、対応点検出部52で検出された対応点と、基準画像の基準点と変形対象画像上における対応点の位置関係とが入力される。
画像変形パラメータ算出部54は、対応点検出部52で検出された対応点を用いて、基準点と対応点とが一致するように画像変形パラメータを算出する。画像変形パラメータとしては、例えばアフィン変換行列や、スプライン補完法で使用するルックアップテーブル等が挙げられる。また、画像変形パラメータの算出方法は特に限定されず、既存の手法を用いればよい。
本実施の形態では、画像変形パラメータ算出部54は、N−1枚の反射成分画像である変形対象画像について画像変形パラメータを算出する。従って、画像変形パラメータ算出部54からは、各バンドの画像変形パラメータが出力される。
画像変形パラメータ記憶部56は、入力された画像変形パラメータ算出部54で算出された画像変換パラメータが記憶される。
画像変形処理部58には、画像変形パラメータ記憶部56に記憶されている各バンドの画像変形パラメータ及び変形対象画像が入力される。
画像変形処理部58は、画像変換パラメータに基づき変形対象画像の変形を行う。なお、同一のカメラで撮影された異なる撮影照明光源下での画像に対しては、同一の画像変形パラメータが適用可能である。そのため、光源波長とカメラ波長とが異なる(光源波長≠カメラ波長)の画像(蛍光成分画像)に関しては、対応点検出および画像変形パラメータ算出は行わなくても良く、画像変形パラメータ記憶部56に記憶されたカメラ波長が同一の画像変形パラメータを用いて画像変形処理を行う。画像変形処理部58からは、基準画像と各バンドの変形対象画像の変形結果の画像(変形結果画像)とを含むマルチバンド画像が蛍光成分分離部40に出力される。
なお、本実施の形態では、被写体が平面状の場合には、画像変形パラメータ算出部54及び画像変形処理部58における手段として、線形的な手法の1つである射影変換法を用いた。また、被写体が3次元的な形状を持つ場合には、非線形的な手法の1つであるTPS(Thin-plate spline)法を用いた。この他の画像変形方法としては、画像を小領域に分割し、画像毎に射影変換法の様な線形的手法やTPS法の様な非線形的手法を適用してもよい。また各カメラで得られるステレオ情報を用いて被写体の3次元形状を推定し、形状の推定結果と撮影画像の対応付けを行い、画像生成を行っても良い。撮影画像からの3次元形状推定結果を用いる代わりに、画像撮影と同時に3次元スキャナによる形状計測を行い、得られた3次元形状データと撮影画像との対応付けを行ってもよい。
次に、本実施の形態の画像処理装置120における画像処理の流れの概略について説明する。
図12は、本実施の形態の画像処理装置120における画像処理の流れの一例を表すフローチャートである。
本実施の形態の画像処理では、ステップS100で取得部21がマルチバンド画像を取得して撮影画像蓄積部22に記憶させた後、ステップS202へ移行する。
ステップS202で基準画像選択部50が、光源波長とカメラ波長とが等しい画像(反射成分画像)の中から対応点検出の基準とする基準画像を選択する。例えば、上述したように、中央のカメラで撮影された画像を基準画像として選択する。
次のステップS204で対応点検出部52が、上述したように、光源波長とカメラ波長とが等しい、基準画像と1枚の変形対象画像間での対応点を探索して検出する。例えば、サブピクセル精度での対応点検出には、位相限定相関法を用いる。
次のステップS206で画像変形パラメータ算出部54が、上述したように、対応点検出部52で検出された対応点を用いて、画像変形パラメータを算出する。算出された画像変形パラメータは、画像変形パラメータ記憶部56に記憶される。
次のステップS208で画像変形パラメータ算出部54は、単色カメラの全バンドに対する画像変形パラメータが画像変形パラメータ記憶部56に記憶されたか判断する。未だ記憶されていない場合は、否定判定となり、ステップS204に戻り、画像変形パラメータの算出及び記憶を繰り返す。一方、肯定判定となった場合は、ステップS210へ移行する。
ステップS210で画像変形処理部58は、上述したように、画像変換パラメータに基づいて、光源波長とカメラ波長とが異なる(光源波長≠カメラ波長)の変形対象画像も含め、全ての変形対象画像の変形を行う。
ステップS210の後は、上述した第1の実施の形態のステップS102に移行し、ステップS102〜S112の処理を行った後、本画像処理を終了する。
なお本実施の形態では、上述したように、マルチバンド画像撮影部116が複数台の白黒(単色)カメラを備えている場合について説明したが、マルチバンド画像撮影部116が備えるカメラはこれに限定されない。例えば、第1の実施の形態のマルチバンド画像撮影装置10のマルチバンド画像撮影部16と同様に1台の白黒(単色)カメラであってもよい。第1の実施の形態のマルチバンド画像撮影部16のようにカメラが1台であっても、何らかの原因でマルチバンド画像撮影部16のカメラの位置や姿勢が変化した場合には、本実施の形態で上述した画像処理(特に画像変形処理部58による画像変形処理)を行うことが好ましい。
また、マルチバンド画像撮影部116が例えば後述する第3の実施の形態のように、カラー(RGB)カメラを備えていてもよい。この場合、カラーカメラで撮影されたカラー画像を白黒画像に変換した単色画像を用いればよい。
また、本実施の形態では、上述したように、撮影された複数の画像のうち光源波長とカメラ波長とが等しい画像の中から、基準画像を選択し、画像変形パラメータ算出部54が変形対象画像について画像変形パラメータを算出したが、これに限らず、基準画像を除く撮影された複数の画像の全てに対して、画像変形パラメータを算出し、算出した画像変形パラメータに基づいて、画像変形処理部58が画像変形処理を行うようにしてもよい。
このように本実施の形態のマルチバンド画像撮影装置110は、マルチバンド照明部114及びマルチバンド画像撮影部116を備える。マルチバンド画像撮影部116は、カメラに入射する光の波長を制限し、透過させる光の波長帯域であるバンドが各々異なる複数の第1光学素子の一例であるバンドパスフィルタを有し、かつ、視点が異なる複数台の単色カメラを備える。マルチバンド照明部114は、撮影照明光源と、撮影照明光源から被写体に照射する撮影照明光の波長を制限し、透過させる光の波長帯域であるバンドが各々異なる複数の第2光学素子の一例であるバンドパスフィルタを備える。
また、本実施の形態の画像処理装置120におけるマルチバンド画像生成部124は、蛍光成分分離部40、マルチバンド蛍光成分画像生成部42、重み係数計算部44、及び画像変形処理部46を備える。画像変形処理部46は、基準画像選択部50、対応点検出部52、画像変形パラメータ算出部54、画像変形パラメータ記憶部56、及び画像変形処理部58を備える。
基準画像選択部50は、撮影された複数の画像のうち光源波長とカメラ波長とが等しい画像の中から予め定められた画像を基準画像として選択する。
対応点検出部52は、基準画像とは異なる、光源波長とカメラ波長とが等しい画像の各々について、前記基準画像上の各基準点に対する、前記画像上における各対応点を検出する。
画像変形パラメータ算出部54は、基準画像とは異なる、光源波長とカメラ波長とが等しい画像の各々について画像変形パラメータを算出して画像変形パラメータ記憶部56に記憶させる。
画像変形処理部58は、撮影照明光の各バンドに対し、基準画像とは異なる画像の各々において、基準画像上の各基準点に対する画像における各対応点に基づいて、各基準点の位置と各対応点の位置とが一致するように画像を変形した変形結果画像を生成し、基準画像と変形結果画像の各々とを含むマルチバンド画像を生成する。
本実施の形態の蛍光成分分離部40は、撮影照明光の各バンドに対し、画像変形処理部58により変形されたマルチバンド画像を、前記バンドと等しいバンドの画像である反射成分画像と、前記バンドより中心波長が長いバンドの画像である蛍光成分画像とに分離する。
従って、本実施の形態の画像処理装置120においても第1の実施の形態と同様に、従来よりも広帯域な波長幅で分光を行い撮影されたマルチバンド画像により、蛍光成分の吸光特性の推定を要せずに、反射成分画像と蛍光成分画像とを用いて任意の観察照明光下での画像を生成することができる。
また、複数のカメラにより同時に撮影を行うことができるため、撮影回数を第1の実施の形態よりも少なくすることができる。
[第3の実施の形態]
本実施の形態は、上述した各実施の形態と同様の構成及び動作を含むため、同様の構成及び動作についてはその旨を記し詳細な説明を省略する。
図13には、本実施の形態の画像処理システム201の概略構成の一例を示す構成図を示す。本実施の形態の画像処理システム201は、マルチバンド画像撮影部216と画像処理装置220の画像変形処理部246が第2の実施の形態と異なる。
本実施の形態のマルチバンド画像撮影部216は、1台のカラー(RGB)カメラと、複数の単色(白黒)カメラ(具体例として8台)と、を備える。また、マルチバンド画像撮影部216は各単色カメラに付随する入射光の波長帯域を制御する光学素子を備える。
図14に、本実施の形態のマルチバンド画像撮影部216に用いた9眼ステレオカメラの具体例を示す。中央のカメラがRGBカメラ、その周辺の8台のカメラは白黒カメラである。RGBカメラで画角を決め、その周辺に白黒カメラを配置した。白黒カメラの各々には、上記図2に示した分光透過率を有するバンドパスフィルタがレンズの前に取り付けられている。
各カメラの露光時間は、マルチバンド照明部14とマルチバンド画像撮影部216バンドパスフィルタの波長が等しい場合に画像信号値が飽和しないよう設定し、撮影後に補正をかけた。撮影画像の明るさの補正には、同じ条件で撮影した標準白色板の画素値を使用した。また、各カメラのピント調整も、光学系の収差の影響を抑えるため、マルチバンド照明部14及びマルチバンド画像撮影部216のバンドパスフィルタの波長が等しいときに実施した。
マルチバンド画像撮影部216からは、各バンドの撮影照明光に対応したマルチバンド画像及び撮影照明光(分光する前の状態)で撮影したカラー(RGB)画像、すなわち、バンド数が(N−1+3)のマルチバンド画像が出力される。
本実施の形態のマルチバンド画像撮影部216によれば、1ショットで8バンド画像及びRGB画像が撮影できるため、撮影回数を8回(第1の実施の形態では36回)に短縮することができる。
図13に示すように、本実施の形態の画像変形処理部246は、第2の実施の形態の基準画像選択部50及び対応点検出部52の代わりに基準画像選択部250及び対応点検出部252を備える。また、画像変形処理部246は、分光スペクトル推定部60、カメラ分光感度特性記憶部62、及び単色画像生成部64をさらに備える。
本実施の形態の基準画像選択部250には、撮影画像蓄積部22に蓄積されているマルチバンド画像撮影部216で撮影されたマルチバンド画像が入力される。
基準画像選択部250は、分光しない状態の撮影照明光下で撮影されたカラーカメラのカラー画像を基準画像として選択する。
基準画像選択部250からは、基準画像が分光スペクトル推定部60に出力される。また、光源波長とカメラ波長とが等しい(光源波長=カメラ波長)単色カメラの画像である変形対象画像が対応点検出部252に出力される。また、基準画像選択部250からは、光源波長とカメラ波長とが異なる(光源波長≠カメラ波長)変形対象画像(蛍光成分画像)が画像変形処理部58に出力される。
カメラ分光感度特性記憶部62は、マルチバンド画像撮影部216の各単色カメラの分光感度特性が予め記憶されている。
分光スペクトル推定部60には、基準画像選択部250から基準画像(分光しない状態の撮影照明光下で撮影したカラー画像)が入力される。分光スペクトル推定部60は、カラー画像の画素毎に分光反射率を推定する。分光反射率の推定方法は特に限定されず、第1の実施の形態において上述した推定方法と同様にすればよい。分光スペクトル推定部60からは、推定した分光反射率を画素値とする分光反射率画像が出力される。
単色画像生成部64には、分光スペクトル推定部60で生成された分光反射率画像、及び撮影照明スペクトル(分光する前の状態)が入力される。また、単色画像生成部64には、カメラ分光感度特性記憶部62から、各単色カメラの分光感度特性が入力される。
単色画像生成部64は、単色カメラ(本実施の形態では8台の単色カメラ)毎に、分光反射率画像、撮影照明スペクトル、及び当該単色カメラの分光感度特性を用いて撮影シミュレーションを行い、カラーカメラの視点から撮影した場合に得られるであろう仮想的な単色画像を生成し、あるバンドパスフィルタを取り付けて撮影された変形対象画像に対する対応点を検出するための基準画像とする。
単色画像生成部64からは、カラーカメラの視点での各単色画像が基準画像として対応点検出部252に出力される。
対応点検出部252は、入力された単色画像生成部64で生成された基準画像、及び変形対象画像間での対応点を探索して検出する。対応点の検出方法は特に限定されず、例えば、第2の実施の形態において上述した対応点検出部52における検出方法と同様にすればよい。
対応点検出部252からは、検出された対応点と、基準画像と変形対象画像上における対応点の位置関係とが画像変形パラメータ算出部54に出力される。
画像変形パラメータ算出部54、画像変形パラメータ記憶部56、及び画像変形処理部58による変形対象画像の画像変形は第2の実施の形態と同様であるため説明を省略する。なお、本実施の形態の画像変形処理部246から蛍光成分分離部40に出力されるマルチバンド画像のバンド数は、第2の実施の形態(バンド数:N)と異なり、N−1である。
次に、本実施の形態の画像処理装置220における画像処理の流れの概略について説明する。
図15は、本実施の形態の画像処理装置220における画像処理の流れの一例を表すフローチャートである。
本実施の形態の画像処理では、ステップS100で取得部21がマルチバンド画像を取得して撮影画像蓄積部22に記憶させた後、ステップS302へ移行する。
ステップS302で基準画像選択部250が、分光しない状態の撮影照明光下で撮影されたカラーカメラのカラー画像を基準画像として選択する。
次のステップS304で分光スペクトル推定部60は、上述したように、カラー画像の画素毎に分光反射率を推定する。
次のステップS306で単色画像生成部64は、上述したように、分光反射率画像、撮影照明スペクトル、及び単色カメラの分光感度特性を用いて撮影シミュレーションを行い、仮想的な単色画像を生成する。
次のステップS308で単色画像生成部64は、全単色カメラについて上記ステップS306の処理を行ったか否かを判断する。行っていない場合は否定判定となり、ステップS306の処理を繰り返す。一方、肯定判定となった場合は、ステップS310へ移行する。
ステップS310で対応点検出部252は、上述したように、基準画像と光源波長とカメラ波長とが等しい1枚の変形対象画像間での対応点を探索して検出した後、ステップS206へ移行する。ステップS206及びS208は、上述した第2の実施の形態と同様の処理を行い、ステップS208で肯定判定となった場合は、第2の実施の形態で上述したステップS210に移行して当該ステップS210の処理及び上述した第1の実施の形態のステップS102〜S112の処理を行った後、本画像処理を終了する。
なお、本実施の形態でマルチバンド画像撮影部216のカメラとして用いたカラーカメラの代わりに単色(白黒)カメラを用いることもできる。この場合は、代わりに用いる単色カメラで撮影された画像は、単色画像であるため、上述した分光スペクトル推定部60、カメラ分光感度特性記憶部62、及び単色画像生成部64が不要となる。
このように、本実施の形態の画像処理装置220においても、第2の実施の形態の画像処理装置120と同様に、従来よりも広帯域な波長幅で分光を行い撮影されたマルチバンド画像により、蛍光成分の吸光特性の推定を要せずに、反射成分画像と蛍光成分画像とを用いて任意の観察照明光下での画像を生成することができる。さらに、複数のカメラにより同時に撮影を行うことができるため、撮影回数を第1の実施の形態よりも少なくすることができる。
なお、上記第2の実施の形態の基準画像選択部50及び第3の実施の形態の基準画像選択部250には、変形対象となる単色カメラの画像は、光源波長とカメラ波長とが等しい画像のみが入力されるようにしてもよい。
なお、上記各実施の形態では、分光反射率及び蛍光スペクトルの推定を行う処理にウィナー推定法を用いたが、他の方法を用いてもよい。例えば、分光反射率や蛍光成分スペクトルのデータベースから算出した主成分を用いる方法、重回帰分析法、及びPLS(partial least square)法(部分最小二乗法)等を用いてもよい。
また、上記各実施の形態は一例であり、具体的な構成は本実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれ、状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。