JP6317536B1 - アルミナおよびこれを含有するスラリー、ならびにこれを用いたアルミナ多孔膜、積層セパレータ、非水電解液二次電池および非水電解液二次電池の製造方法 - Google Patents
アルミナおよびこれを含有するスラリー、ならびにこれを用いたアルミナ多孔膜、積層セパレータ、非水電解液二次電池および非水電解液二次電池の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明の第1の態様
本発明の第1の態様に係るアルミナは、K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaからなる群から選択される1種以上を、合計で200〜50000質量ppm含有し、前記1種以上の元素の表面濃度が、合計で0.5〜20at%である。
本発明の第2の態様に係るアルミナは、フーリエ変換赤外分光法により得られる赤外吸収スペクトルにおいて、3400cm−1および3500cm−1における強度を結ぶ線分をベースラインとして、当該ベースラインよりも強度が大きく、且つ半値幅が90cm−1以下であるピークが、3400〜3500cm−1の範囲に無い。
質量減少率A[%]
=(25℃におけるアルミナの質量[g]−150℃におけるアルミナの質量[g]) ÷ 25℃におけるアルミナの質量[g]×100 式(I)
質量減少率B[%]
=(200℃におけるアルミナの質量[g]−260℃におけるアルミナの質量[g]) ÷ 25℃におけるアルミナの質量[g]×100 式(II)
本発明の第1の態様に係るアルミナは、K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaからなる群から選択される1種以上を、合計で200〜50000質量ppm含有し、前記1種以上の元素の表面濃度が、合計で0.5〜20at%(原子%)である。
以下、各構成について詳述する。
本発明の第1の態様に係るアルミナは、当該元素からなる群から選択される1種以上を、合計で200〜50000質量ppm含有する。当該元素が少ないと電解液安定性が劣化し、一方、多すぎると、当該元素が過剰となることにより、当該元素の凝集物が生成し、生成した凝集物がアルミナ多孔膜の孔を閉塞して、イオン透過性を低下させる恐れがある。
本発明者らは、アルミナ表面における当該元素の濃度を測定するための手段としてX線光電子分光法を用い、アルミナ表面における当該元素の濃度を制御し、電解液安定性について検討を行った。その結果、K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaからなる群から選択される1種以上の元素の表面濃度を、合計で0.5〜20at%であるように制御することにより、電解液安定性に優れたアルミナを得ることができることを見出した。当該元素のアルミナ表面濃度が小さいと、当該元素が不足することにより電解液安定性が劣化し、一方、大き過ぎると、当該元素が過剰となることにより、アルミナ表面との結合が不十分となった当該元素成分が遊離し、電池充放電時のイオン輸送を阻害する恐れがある。
なお、本発明の第1の態様に係るアルミナの「純度」は、アルミナ100質量%中に含まれるK、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの含有量並びにSiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量を用いて、下記式(III)から算出される。その測定法は、アルミナがαアルミナである場合を例として実施例にて後述する。
純度(質量%)
=100×{100−(K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの含有量の総和[質量%])−(SiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量の総和[質量%])}÷{100−(K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの含有量の総和[質量%])}
式(III)
特に本発明の第1の態様に係るアルミナがαアルミナである場合、例えば電池用途においてその純度が99質量%を下回ると、αアルミナに含まれるSi、NaまたはFe等が多くなり、良好な電気絶縁性が得られなくなるばかりでなく、短絡の原因となる金属性異物の混入量が多くなり好ましくない。
水酸化アルミニウムの焼成は通常、焼成容器に充填して行われる。焼成容器としては、例えば鞘または匣鉢などが挙げられる。
また、焼成容器の材質は、得られるαアルミナの汚染防止の観点からアルミナであることが好ましく、特に高純度のαアルミナであるのがよい。ただし、焼成容器の耐熱性および使用サイクル特性の観点から、適切な範囲でシリカ成分などを含むものを用いてもよい。
水酸化アルミニウムの焼成容器への充填方法は特に制限されないが、自重で充填してもよいし、圧密してから充填してもよい。
本発明の第2の態様に係るアルミナは、フーリエ変換赤外分光法により得られるアルミナの赤外吸収スペクトルにおいて、3400cm−1および3500cm−1における強度を結ぶ線分をベースラインとして、当該ベースラインよりも強度が大きく、且つ半値幅が90cm−1以下であるピークが、3400〜3500cm−1の範囲に無い。このような赤外吸収スペクトルを有する本発明の第2の態様に係るアルミナは、アルミナ表面におけるアルミナ三水和物中の水和水の量が少なく、優れた電解液安定性を有する。一方、3400〜3500cm−1の範囲に当該ピークを有する場合、当該水和水の量が多くなるため、リチウムイオン二次電池等で汎用的に使用される電解質と当該水和水との反応が促進され、ガス成分が発生しやすくなる。
質量減少率A[%]
=(25℃におけるアルミナの質量[g]−150℃におけるアルミナの質量[g]) ÷ 25℃におけるアルミナの質量[g]×100 式(I)
質量減少率B[%]
=(200℃におけるアルミナの質量[g]−260℃におけるアルミナの質量[g]) ÷ 25℃におけるアルミナの質量[g]×100 式(II)
150℃までの加熱で質量減少が生じるのは、アルミナ表面に吸着している水成分等が脱離するためであり、質量減少率Aを0.3%以下にすることにより、使用状態における電池が高温になった際にもアルミナから脱離する水成分等を少なくすることができ、結果的に電解質や電解液の分解が抑制され、電池の長寿命化につながる。また、200℃〜260℃の温度範囲で質量減少が生じるのは、アルミナ三水和物中の水和水が水成分として脱離するためであり、質量減少率Bを0.05%以下にすることにより、アルミナ表面に存在するアルミナ三水和物中の水和水の量をより低減させることができ、さらに優れた電気安定性が得られる。
さらに優れた電気安定性を得る観点から、質量減少率Bは、0.05%以下であることがより好ましく、0.02%以下であることがさらに好ましい。質量減少率Bは、小さいほど好ましいが、通常、0.001%以上である。
質量減少率C[%]
=(t[℃]におけるアルミナの質量[g]−(t+10)[℃]におけるアルミナの質量[g]) ÷ t[℃]におけるアルミナの質量[g]×100 式(IV)
ここで、200≦t≦250である。
なお、本発明の第2の態様に係るアルミナの「純度」は、アルミナ100質量%中に含まれるSiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量を用いて、下記式(V)から算出される。その測定法は、アルミナがαアルミナである場合を例として実施例にて後述する。
純度(質量%)
=100−(SiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量の総和[質量%])
式(V)
また、当該割合を有するアルミナから得られたアルミナ多孔膜においては、アルミナ粒子同士の接点が増えるため、好ましい空隙率を維持しながらも強固な3次元ネットワークを形成することができる。その結果、アルミナ多孔膜の強度が高く、またアルミナの粉落ちが少なくなるため、例えば、セパレータの耐熱性および寸法安定性が向上し、より安全性の高い非水電解液二次電池を得ることができる。
水酸化アルミニウムの焼成は通常、焼成容器に充填して行われる。焼成容器としては、例えば鞘または匣鉢などが挙げられる。
また、焼成容器の材質は、得られるαアルミナの汚染防止の観点からアルミナであることが好ましく、特に高純度のαアルミナであるのがよい。ただし、焼成容器の耐熱性および使用サイクル特性の観点から、適切な範囲でシリカ成分などを含むものを用いてもよい。
水酸化アルミニウムの焼成容器への充填方法は特に制限されないが、自重で充填してもよいし、圧密してから充填してもよい。
水酸化アルミニウムの焼成温度は、例えば1000℃以上1450℃以下、好ましくは1000℃以上1350℃以下であり、この焼成温度まで昇温するときの昇温速度は、通常30℃/時間以上500℃/時間以下であり、水酸化アルミニウムの焼成時間は、通常0.5時間以上24時間以下、好ましくは1時間以上20時間以下である。
以下、本発明の第1の態様のアルミナおよび第2の態様のアルミナに共通する事項をまとめて記載する。この場合、「本発明に係るアルミナ」という文言は、本発明の第1の態様に係るアルミナと、本発明の第2の態様に係るアルミナの両方を意味する。
<2.アルミナスラリー>
本発明に係るアルミナスラリーは、本発明に係るアルミナと、バインダーと、溶媒とを含む。
バインダーとしては公知のものを使用することができ、後述のアルミナ多孔膜において、アルミナ粒子同士の結着やアルミナ多孔層とセパレータとの接着、あるいはアルミナ多孔層と負極および/または正極との接着に使用でき、主として有機物で構成されるものを指す。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル等のポリアクリル酸誘導体;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル等のポリメタクリル酸誘導体;ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース(以下、CMC)、ポリアクリロニトリル及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂等またはこれらの塩でも用いることができ、単独あるいは2種類以上を混合してもよい。
このようにして得られたアルミナスラリーから製造されるアルミナ多孔膜は、耐熱性が高く、絶縁性である。このアルミナ多孔膜は、正極、負極またはセパレータの少なくとも一つの表面に形成され、正極、負極およびセパレータと共に積層して形成した電極群(積層型電極群)、又はアルミナ多孔膜を、正極、負極およびセパレータと共に積層して巻回して形成した電極群(巻回型電極群)と、電解液とを含む非水電解液二次電池に好適に用いられる。尚、本明細書中において、「セパレータ」とは正極と負極を分離する膜であればどのようなものでもよく、主として二次電池、特に非水電解液二次電池用のセパレータを意味する。
(純度)
(K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの含有量および純度)
アルミナの純度(質量%)は、アルミナ100質量%中に含まれるK、Mg、Ca、SrBaおよびLaの含有量、並びにSiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量を用いて、下記式(III)式から求めた。
純度(質量%)
=100×{100−(K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの含有量の総和[質量%])−(SiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量の総和[質量%])}÷{100−(K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの含有量の総和[質量%])}
式(III)
K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの含有量は、評価試料をICP発光分析法にて測定することにより求めた。
比表面積測定装置として、島津製作所社製の「フローソーブII 2300」を使用し、JIS−Z8830(2013)に規定された方法に従って、窒素吸着法一点法により求めた。ただし、測定前の乾燥処理として、窒素ガス流通下において200℃で20分間加熱して行った。
X線光電子分光装置(KRATOS社製AXIS−ULTRA)を用いて、Al、O、Na、K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの表面濃度を算出した。測定試料は、装置専用の試料保持台に導電性カーボンテープを貼り、そこに固定したワッシャー内に紛体試料を充填し、下記に示す条件で測定を行った。得られたスペクトルは、Quadratic Savitzky−Golay法により、カーネル幅(スムージング点数)を11に設定してスムージングを行った。C1sのピークを284.6eVとして帯電補正を行った後、直線法にてバックグラウンドを差し引き、各元素の感度係数(装置付属の「VISION2」の値を使用)を用いて、Al、O、Na、K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの原子数濃度として算出した。
・X線源:Alkα
・X線出力:15kV、15mA
・パスエネルギー:20eV
・測定ステップ幅:0.10eV
・測定領域:700μm×300μm以上
・測定真空度:1×10−7torr以下
・電荷中和機構:使用
・測定元素:Al2p、O1s、Na1s、K2p、Mg1s、Ca2p、Sr3d、Ba3d、La3d
レーザー粒度分布測定装置〔マイクロトラック・ベル(株)製「マイクロトラックMT3300EXII」〕を用いてレーザー回折法により、質量基準で累積百分率50%相当粒子径を平均粒子径とした。測定に際しては、0.2質量%のヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液で5分間超音波分散し、屈折率は1.76とした。
超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学株式会社製)を70質量%と、質量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞株式会社製)30質量%と、この超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスの合計100質量部に対して、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.4質量部と、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.1質量部と、ステアリン酸ナトリウム1.3質量部とを加え、さらに全体積に対して38体積%となるように平均粒子径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)を加え、これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。溶融押出された該ポリオレフィン樹脂組成物を表面温度が150℃の一対のロールにて圧延しシートを作製した。このシートを塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5質量%)に浸漬させることで炭酸カルシウムを除去し、続いて105℃で6倍に延伸して基材多孔質フィルム(厚み:16.2μm、目付量:7.3g/m2、透気度:140秒/100cc)を得た。
アルミナ多孔膜の評価用の試料フィルムとして、以下の方法で評価用の積層多孔質フィルムを作製した。
ダイセルファインケム株式会社製CMC;品番1110(3質量部)、イソプロピルアルコール(51.6質量部)、純水(292質量部)及びアルミナ(100質量部)を順に混合撹拌した後に、メディア径φ0.65mmのビーズミルで30分間分散し、目開き10μmの網メッシュでろ過することでスラリーを調製した。
次いで、基材多孔質フィルム上に、バーコーター(#20)にて前記スラリーを塗工した後に乾燥温度65℃で乾燥し、基材多孔質フィルム表面にアルミナ多孔膜が形成された評価用の積層多孔質フィルムを得た。
粘度測定装置として東機産業株式会社製「TVB10M」を使用し、No.3のローターを6rpmで回転させて、評価用の積層多孔質フィルムを作製する際に使用したスラリーの粘度を測定した。
厚み(単位:μm)は、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測定機「VL−50A」で測定した。アルミナ多孔膜の塗膜厚みD(μm)は、積層多孔質フィルムの厚みから基材多孔質フィルムの厚みを差し引いた上で算出した。
積層多孔質フィルムから8cm×8cmの正方形のサンプルを切り出し、当該サンプルの質量W(g)を測定し、積層多孔質フィルムの目付量(g/m2)=W/(0.08×0.08)をまず算出した。ここから基材多孔質フィルムの目付量を差し引いて、アルミナ多孔膜の目付量B(g/m2)を算出した。
基材多孔質フィルムから8cm×8cmの正方形のサンプルを切り出し、当該サンプルの質量W’(g)を測定し、W(g)とW’(g)の差からアルミナ多孔膜の質量を算出した。アルミナ多孔膜の質量およびスラリーの組成から、積層多孔質フィルムから切り出した8cm×8cmの正方形のサンプル中のアルミナの質量W1(g)およびCMCの質量W2(g)を、それぞれ計算で求め、下記式(VI)式から空隙率(体積%)を求めた。なお、αアルミナの真密度ρ1は、3.98(g/cm3)とし、CMCの真密度ρ2は、1.6(g/cm3)とした。
空隙率(体積%)=100−(B÷D)÷[(W1+W2)÷{(W1÷ρ1)+(W2÷ρ2)}]×100 式(VI)
積層多孔質フィルムから8cm(MD方向)×8cm(TD方向)の正方形のサンプルを切り出し、当該サンプルに6cm(MD方向)×6cm(TD方向)の正方形を書き入れ、書き入れた正方形のMD方向に平行な2つの辺の長さを正確に測定(cm単位で小数点以下第二位)し、その平均値L1を算出した。次に、当該サンプルを紙に挟んで、150℃に加熱したオーブンに入れた。1時間後、オーブンから当該サンプルを取り出し、書き入れた正方形のMD方向に平行な2つの辺の長さを正確に測定し、その平均値L2を算出した。L1およびL2を用いて、下記式(VII)からMD加熱形状維持率を算出した。
MD加熱形状維持率(%)=(L2÷L1)×100 式(VII)
JIS P8117(2009)に準拠して、株式会社東洋精機製作所製のガーレ式デンソメータで積層多孔質フィルムのガーレ値を測定した。
アルミナを120℃で8時間真空乾燥した後、露点を−30℃以下に保ったグローブボックス内で、アルミラミネート袋に当該アルミナ1gと電解液2mgとを封入し、封入後のアルミラミネート袋の質量を測定した。電解液には、キシダ化学製のLiPF6溶液(1mol/L、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネート=30体積%:50体積%:20体積%)を使用した。熱処理前に、封入後のアルミラミネート袋の比重および体積をアルキメデス法により測定した後、当該アルミラミネート袋を85℃で72時間熱処理した。熱処理後の当該アルミラミネート袋の比重および体積をアルキメデス法により測定し、熱処理前後の体積変化をガスの発生量として算出した。
バイヤー法で作製した水酸化アルミニウムを原料に用い、ガス炉にて焼成した後、ボールミルで粉砕して、平均粒子径=0.5μm、BET比表面積6m2/gのα相のアルミナ粉末を得た。
実施例1〜3の硝酸マグネシウム6水和物の代わりに、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウムおよび酢酸ランタンのエタノール溶液を用いる以外は、実施例1〜3と同様に処理して、K、Ca、Sr、BaおよびLaを表1に示す含有量(wtppm)および表面濃度(at%)で含む金属修飾アルミナ粉末(4)〜(16)を得た。このアルミナ粉末を用いて、上述の電解液安定性試験を行い、結果を表1に記載した。
バイヤー法で作製した水酸化アルミニウムを原料に用い、ガス炉にて焼成した後、ボールミルで粉砕して、平均粒子径=0.5μm、BET比表面積6m2/gのα相のアルミナ粉末(A)を得た。いずれの異種元素の添加も行わなかった。得られたアルミナ粉末(A)のK、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの合計含有量は176質量ppmであり、アルミナ表面のK、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaの合計表面濃度は0.1at%であった。電解液安定性試験の結果、ガスの発生量は75mL/gと多く、電解液安定性が悪かった。
(赤外吸収スペクトル)
フーリエ変換赤外分光光度計として、Nicolet社製MAGNA760を用いて、以下の条件にて拡散反射法により、アルミナの赤外吸収スペクトルを測定し、得られた赤外吸収スペクトルをKubelka−Munk変換した。
検出器:DTGS KBr
ビームスプリッタ:KBr
ミラー速度:0.6329
サンプルゲイン:8
分解能:4cm−1
スキャン回数:512回
バックグラウンド:KBr
真空度:0.5torr以下。
Kubelka−Munk変換後の赤外吸収スペクトルにおいて、3400cm−1および3500cm−1における強度を結ぶ線分をベースラインとして、当該ベースラインよりも強度が大きく、且つ半値幅が90cm−1以下であるピークが、3400〜3500cm−1の範囲に存在するか否か判定した。
熱重量分析装置として、リガク社製ThermoPlus TG8120を用いて、以下の条件でアルミナの熱重量分析を行った。
雰囲気ガス:He 300ml/min
昇温速度:20℃/min
昇温範囲:室温(25℃以下)〜480℃
得られた熱重量分析結果から、下記式(I)および式(II)式を用いて、質量減少率AおよびBを算出した。
質量減少率A[%]=(25℃におけるアルミナの質量[g]−150℃におけるアルミナの質量[g]) ÷ 25℃におけるアルミナの質量[g]×100 式(I)
質量減少率B[%]=(200℃におけるアルミナの質量[g]−260℃におけるアルミナの質量[g]) ÷ 25℃におけるアルミナの質量[g]×100 式(II)
また、下記式(IV)を用いて、200〜260℃の範囲におけるアルミナの10℃あたりの質量減少率Cを算出し、その最大値を求めた。
質量減少率C[%]
=(t[℃]におけるアルミナの質量[g]−(t+10)[℃]におけるアルミナの質量[g]) ÷ t[℃]におけるアルミナの質量[g]×100 式(IV)
ここで、200≦t≦250である。
アルミナの純度(質量%)は、アルミナ100質量%中に含まれるSiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量を用いて、下記式(V)から求めた。
純度(質量%)
=100−(SiO2、Na2O、CuO、Fe2O3およびZrO2の含有量の総和[質量%])
式(V)
比表面積測定装置として、島津製作所社製の「フローソーブII 2300」を使用し、JIS−Z8830(2013)に規定された方法に従って、窒素吸着法一点法により求めた。ただし、測定前の乾燥処理として、窒素ガス流通下において200℃で20分間加熱して行った。
レーザー粒度分布測定装置〔マイクロトラック・ベル(株)製「マイクロトラックMT3300EXII」〕を用いてレーザー回折法により、質量基準で累積百分率50%相当粒子径を平均粒子径とした。測定に際しては、0.2質量%のヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液で5分間超音波分散し、屈折率は1.76とした。
アルミナを120℃で8時間真空乾燥した後、露点を−30℃以下に保ったグローブボックス内で、アルミラミネート袋に当該アルミナ1gと電解液2mLとを封入し、封入後のアルミラミネート袋の質量を測定した。電解液には、キシダ化学製のLiPF6溶液(1mol/L、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネート=30体積%:50体積%:20体積%)を使用した。熱処理前に、封入後のアルミラミネート袋の比重および体積をアルキメデス法により測定した後、当該アルミラミネート袋を85℃で72時間熱処理した。熱処理後のアルミラミネート袋の比重および体積をアルキメデス法により測定し、熱処理前後の体積変化をガスの発生量として算出した。
バイヤー法で作製した水酸化アルミニウムを原料に用い、ガス炉にて焼成した後、ボールミルで解砕した。解砕後のアルミナ粉末を600℃で2時間熱処理して、平均粒子径=0.4μm、BET比表面積6m2/gのαアルミナ粉末(17)を得た。
実施例17と同様に、バイヤー法で作製し水酸化アルミニウムを原料に用い、ガス炉にて焼成した後、ボールミルで解砕して、平均粒子径=0.4μm、BET比表面積6m2/gのα相のアルミナ粉末(B)を得た。いずれの異種元素の添加も熱処理も行わず、αアルミナ粉末(B)を得た。
Claims (7)
- K、Mg、Ca、Sr、BaおよびLaからなる群から選択される1種以上を、合計で200〜50000質量ppm含有し、
前記1種以上の元素の表面濃度が、合計で0.5〜20at%であるアルミナ。 - 前記アルミナは、BET比表面積が1〜20m2/gであり、かつαアルミナである請求項1に記載のアルミナ。
- 請求項1または2に記載のアルミナと、バインダーと、溶媒とを含むアルミナスラリー。
- 請求項1または2に記載のアルミナと、バインダーとを含むアルミナ多孔膜。
- セパレータと、請求項4に記載のアルミナ多孔膜とを備える積層セパレータ。
- 請求項1または2に記載のアルミナを含有するアルミナ多孔膜が、正極、負極またはセパレータの少なくとも一つの表面に形成された非水電解液二次電池。
- 請求項3に記載のアルミナスラリーを正極、負極またはセパレータの少なくとも一つの表面に塗工した後、乾燥させてアルミナ多孔膜を形成する工程を含む非水電解液二次電池の製造方法。
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JP2016221785 | 2016-11-14 | ||
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