JP6314374B2 - 光路長調整方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光路長調整方法に関し、例えば、被測定デバイスの特性を測定する測定系における光経路の光路長調整方法に関する。
高速かつ大容量の光通信システムとして、例えばコヒーレント光通信システムが知られている。コヒーレント光通信システムで用いられるコヒーレント光受信器では、一例として、信号光と局部発振光(LO光)とを偏光分離素子、90度ハイブリッドで処理した後に、受光素子により光信号から電気信号への変換を行う。コヒーレント光受信器の特性評価に、例えば、SPRR(Single Port Rejection Ratio)と呼ばれるパラメータを用いる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
コヒーレント光受信器のような2つの信号光が入射される光デバイスでは、それぞれの信号光が伝搬する光経路の光路長が重要となる。例えば、光遅延干渉計と光受信器との間の2つの光経路を伝搬する信号光の遅延を、光受信器に備わる受光素子からの出力信号のスペクトルを用いて調整する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
Yves Painchaud、外3名、「Performance of balanced detection in a coherent receiver」、OPTICS EXPRESS、2009年3月2日、17巻、5号、p.3659−3672
特開2008−48150号公報
2つの信号光が入射される被測定デバイスの特性を測定する測定系において、特性を精度良く測定するために、それぞれの信号光が伝搬する光経路の光路長を測定系全体で最適な長さに合わせこむことが行われる。例えば、コヒーレント光受信器の場合を例に挙げると、SPRR測定を繰り返し行い、入射する2つの信号光それぞれが伝搬する光経路の光路長を変えたときの挙動を観測することによって、光路長の最適値を探り出して調整することが行われる。しかしながら、このような方法では、測定を繰り返し行うことになるため、手間と時間がかかってしまう。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、簡易な方法で光路長の調整を行うことが可能な光路長調整方法を提供することを目的とする。
本発明は、被測定デバイスに対して2つの信号光を入力するための2つの光経路を有する測定系において、前記2つの光経路の光路長を異ならせる工程と、前記光路長を異ならせた後、前記2つの光経路を伝搬する信号光の遅延時間差を求める工程と、前記遅延時間差から、前記2つの光経路の光路長を等しくするための補正量を求める工程と、前記補正量に基づいて、前記2つの光経路の光路長差を補正する工程と、を備えることを特徴とする光路長調整方法である。本発明によれば、簡易な方法で光路長の調整を行うことができる。
上記構成において、前記2つの光経路の一方に強度変調がかけられた信号光を伝搬させ、他方に強度変調と位相変調とがかけられた信号光を伝搬させ、前記2つの光経路を伝搬した2つの前記信号光を干渉させて干渉信号光を出射する90度ハイブリッドと、前記干渉信号光を受光する受光素子と、を含む光受信器からの出力信号の周波数特性を用いて前記遅延時間差を求める構成とすることができる。
上記構成において、前記遅延時間差は、下記式(1)により求める構成とすることができる。
遅延時間差={arctan(√2)}/(πf)・・・(1)
:前記周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数
上記構成において、前記補正量は、下記式(2)により求める構成とすることができる。
補正量={arctan(√2)}×c/(πf)・・・(2)
:前記光路長を補正する光路長補正手段での光の速度
上記構成において、前記光路長差を補正する工程は、前記補正量の大きさだけ長く又は短くなるように前記光路長を変化させる第1の補正と、前記第1の補正をした後、前記光路長が正しく補正されたかを確認する工程と、前記光路長が正しく補正されていない場合に、前記第1の補正とは反対の方向に前記補正量の大きさだけ前記光路長を変化させる第2の補正と、を備える構成とすることができる。
上記構成において、前記第1の補正をした後での前記光受信器からの出力信号の周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数が、前記第1の補正の前よりも低くなっていないかどうかによって、前記光路長が正しく補正されたかを確認する構成とすることができる。
上記構成において、前記2つの光経路間の光路長差が4mm以上となるように、前記2つの光経路の光路長を異ならせる構成とすることができる。
本発明によれば、簡易な方法で光路長の調整を行うことができる。
図1は、SPRRを説明するための図である。 図2は、実施例1に係る光路長調整方法に関する測定系を示すブロック図である。 図3は、光受信器を示すブロック図である。 図4(a)及び図4(b)は、周波数特性の測定結果を示す図である。 図5は、実施例1に係る光路長調整方法を示すフローチャートである。 図6は、光路長が正しく調整された後の周波数特性の測定結果を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。
まず、上述の非特許文献1に記載されているSPRRについて説明する。非特許文献1では、SPRRは以下の式(数1)で定義されている。
Figure 0006314374
ここで、数1に記載のΔI(f)、ΔI(f)、及びΔI(f)について説明する。図1は、SPRRを説明するための図である。図1のように、90度ハイブリッド10から出射される干渉信号光を受光素子12で受光する場合を想定する。90度ハイブリッド10は、入射された信号光及び局部発振光(LO光)を分光・合成・遅延し、干渉信号光を4つのポートから出射する。信号光と局部発振光とには、例えば周波数fの強度変調がかけられていて、局部発振光にはさらに、強度変調とは同期しない低周波の位相変調がかけられている。
90度ハイブリッド10の4つのポートから出射される干渉信号光は、1対の差動光信号を2組含んでいる。1対の差動光信号を受光する1対の受光素子12a、12bそれぞれで生成される光電流をI(t)、I(t)とし、I(t)とI(t)を合成した光電流をΔI(t)とする。
90度ハイブリッド10に信号光のみが入射され、局部発振光が入射されない場合、1対の受光素子12a、12bそれぞれは、同じ位相の光信号を受光する。数1のΔI(f)は、この場合における、1対の受光素子12a、12bそれぞれで生成された光電流I(t)とI(t)を合成したものである。
90度ハイブリッド10に信号光と局部発振光とが入射される場合、局部発振光の位相によって、1対の受光素子12a、12bそれぞれが受光する光信号の強度が変わる。数1のΔI(f)は、受光素子12aが受光する光信号の強度が最大になる場合での、1対の受光素子12a、12bそれぞれで生成された光電流I(t)とI(t)を合成したものである。数1のΔI(f)は、受光素子12bが受光する光信号の強度が最大になる場合での、1対の受光素子12a、12bそれぞれで生成された光電流I(t)とI(t)を合成したものである。
また、非特許文献1では、数1の分母の測定において、信号光及び局部発振光それぞれが伝搬する光経路の光路長が最適値からずれた場合での受光素子12から出力される光電流の挙動として、以下の式(数2)が示されている。
Figure 0006314374
数2において、Rは受光素子の受光感度、aは干渉系の入出力ポート間の結合係数、Pは平均光パワー、ΔPは強度変調の振幅、fは強度変調の周波数、τは干渉系に入射するまでの光路長による信号光と局部発振光との遅延時間差である。
数2によれば、光路長が最適値からずれた場合には、受光素子12から出力される光電流(出力信号)は、cos(πfτ)に従って低下することが分かる。つまり、受光素子12からの出力信号は、遅延時間差τの影響を強く受けることが分かる。例えば、強度変調の周波数fが20GHzの場合に、測定系における光ファイバ等の2つの光経路間の光路長差が最適値から1mmずれると、受光素子12からの出力信号は、最適値から約0.2dB程度ずれることになる。
差動光信号を扱う場合には1対の受光素子を使用するが、例えば受光素子の後段に接続される増幅器を経由した出力信号からは、個々の受光素子の光電流を個別に測定することができない。信号光の全てを1対の受光素子の片方にのみ入射できれば、個々の受光素子の光電流を個別に測定できるが、自然に生じる位相のふらつきのために難しい。そこで、数1の分母の測定にあたり、位相変調器によって局部発振光の位相を故意に変化させつつ、受光素子の光電流を繰り返し測定し、そのうちの最大値を採ることが行われている。この際に、数2で説明したように、信号光及び局部発振光それぞれが伝搬する光経路の光路長が最適値からずれていると、受光素子から出力される光電流が低下してしまう。このため、信号光及び局部発振光それぞれが伝搬する光経路の光路長も変えつつ、上述した受光素子の光電流の測定を繰り返し行っている。これにより、受光素子から出力される光電流が最大となる光路長を探すことで、光経路の光路長の調整も可能となる。しかしながら、このような方法では、手間と時間がかかってしまう。そこで、簡易な方法で光路長の調整が可能な実施例を以下に示す。
図2は、実施例1に係る光路長調整方法に関する測定系を示すブロック図である。実施例1の光路長調整方法は、例えばコヒーレント光受信器を用いて行う。図2のように、光コミュニケーションアナライザ14(LCA:Lightwave Communication Analyzer)から出射された強度変調信号光が、スプリッタ16によって2つに分岐される。一方の分岐光は、アッテネータ18、光路長補正手段20、及び偏波コントローラ22を経由して、光受信器30に入射される。なお、光路長補正手段20は、例えば手動操作型のディレイライン、電動型のディレイライン等、光路長を補正することが可能な装置・方法を用いることができる。他方の分岐光は、アッテネータ18、位相変調器24、及び偏波コントローラ22を経由して、光受信器30に入射される。他方の分岐光は、ファンクションジェネレータ26の制御による位相変調器24によって、強度変調とは同期しない低周波の位相変調がかけられている。
光受信器30は、例えばコヒーレント光受信器であり、信号光と局部発振光(LO光)とが入射される。ここでは、位相変調がかけられていない分岐光を信号光として用い、位相変調がかけられた分岐光を局部発振光として用いる。図2から分かるように、信号光として用いられる分岐光と局部発振光として用いられる分岐光とは、スプリッタ16の後段から異なる光経路を伝搬する。つまり、信号光として用いられる分岐光が伝搬する光経路28aと、局部発振光として用いられる分岐光が伝搬する光経路28bとは異なっている。
図3は、光受信器を示すブロック図である。図3のように、光受信器30は、偏光分離素子32(PBS:Polarization Beam Splitter)、ビームスプリッタ34(BS:Beam splitter)、90度ハイブリッド10x及び10y、受光素子12、増幅器36、及び偏光回転素子38を含む。
光受信器30に入射された信号光は、偏光分離素子32によって、互いに直交するX偏光とY偏光とに分離される。X偏光の光は、X側の90度ハイブリッド10xに入射される。Y偏光の光は、偏光回転素子38で偏光面が90°回転されてX偏光となった後、Y側の90度ハイブリッド10yに入射される。X偏光として例えばTE光、Y偏光として例えばTM光を用いることができるが、X偏光をTM光、Y偏光をTE光としてもよい。
光受信器30に入射された局部発振光(LO光)は、ビームスプリッタ34によって、2つに分岐される。局部発振光は、予めX偏光に設定された光を偏波保持ファイバーにて導入する。このため、ビームスプリッタ34で分岐された分岐光もX偏光となっている。ビームスプリッタ34で分岐された分岐光はそれぞれ、X側の90度ハイブリッド10xとY側の90度ハイブリッド10yに入射される。
90度ハイブリッド10x、10yは、入射された信号光及び局部発振光を、内部の光導波路で分光・合成・遅延し、干渉光を4つのポートから出射する。90度ハイブリッド10x、10yは、例えば平面光導波路(PLC:Planar Lightwave Circuit)により構成することができる。X側の90度ハイブリッド10xに入射された信号光は、局部発振光と合成された後、同相成分(In-Phase)と直交位相成分(Quadrature-Phase)の正成分(Positive)及び負成分(negative)に分離され、4つの干渉信号光(X−Ip、X−In、X−Qp、X−Qn)として出射される。4つの干渉信号光のうちのX−IpとX−Inは1対の差動光信号であり、X−QpとX−Qnも1対の差動光信号である。
同様に、Y側の90度ハイブリッド10yに入射された信号光は、局部発振光と合成された後、同相成分と直交位相成分の正成分及び負成分に分離され、4つの干渉信号光(Y−Ip、Y−In、Y−Qp、Y−Qn)として出射される。4つの干渉信号光のうちのY−IpとY−Inは1対の差動光信号であり、Y−QpとY−Qnも1対の差動光信号である。
受光素子12は、90度ハイブリッド10x、10yから出射された干渉信号光を受光し、光電変換によって、光電流を生成する。受光素子12は、例えばフォトダイオード(PD:Photodiode)である。増幅器36は、受光素子12から出力された対となる光電流を電圧に変換して増幅する。増幅器36は、例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA:Trans Impedance Amplifier)である。増幅器36で増幅された1対の電気信号は、光受信器30の外部に出力される。
図2のように、光受信器30から出力された1対の電気信号は、アナログ−デジタル変換回路40(ADC:Analog Digital Converter)によってデジタル信号に変換される。アナログ−デジタル変換回路40から出力されたデジタル信号の1つは、光コミュニケーションアナライザ14に入力される。これにより、光コミュニケーションアナライザ14で、強度変調の変調周波数と光受信器30からの出力信号の強度との関係を示す周波数特性が測定できる。
ここで、発明者が行った実験について説明する。発明者は、図2の測定系において、信号光及び局部発振光それぞれが伝搬する光経路28a、28bの光路長を最適値から故意に大きくずらし、光経路28a、28bそれぞれを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差を53psとした。そして、この状態で、光コミュニケーションアナライザ14で周波数特性を測定した。なお、周波数特性の測定は、1回(1sweep)だけ行った。図4(a)及び図4(b)は、周波数特性の測定結果を示す図である。
図4(a)中の細線は測定データを示し、太線は測定データの最大値を結んだ包絡線を示している。また、参考として、光経路28a、28bの光路長が最適な場合での包絡線を破線で示している。図4(a)のように、光路長が最適値から大きくずれている場合での包絡線(太線)は、最適な場合での包絡線(破線)に比べて、光受信器30からの出力信号の強度が低下していることが分かる。
図4(b)は、光路長が最適な場合での包絡線(以下、Aと称す)にcos(πfτ)をかけた線B(=A×cos(πfτ))を一点鎖線で、Aにsin(πfτ)/√2をかけた線C(=A×sin(πfτ)/√2)を二点鎖線で加えた図である。図4(b)のように、光路長が最適値から大きくずれた場合の測定データ(細線)は、B(=A×cos(πfτ))の線(一点鎖線)とC(=A×sin(πfτ)/√2)の線(二点鎖線)とに囲まれた領域内で位相変調に従った強度変化をしていることが分かる。その結果、測定データの最大値を結んだ包絡線(太線)は、A×cos(πfτ)とA×sin(πfτ)/√2との最大値を結んだ線にほぼ等しくなっていることが分かる。
さらに、測定データ(細線)は、B(=A×cos(πfτ))の線とC(=A×sin(πfτ)/√2)の線とが交差する周波数fでは、位相変調による振動が生じていないことが分かる。したがって、以下の式(数3)が成り立つことが言える。
Figure 0006314374
数3の式から、周波数fが特定されることで、遅延時間差τが求まることが分かる。この遅延時間差τに光の速度をかけた値が、光経路28a、28b間の光路長差であることから、この遅延時間差τに基づいて、図2における光路長補正手段20で光路長を補正することにより、光経路28a、28b間の光路長差を適切にできる。以下、具体的な光路長の調整方法を説明する。
図5は、実施例1に係る光路長調整方法を示すフローチャートである。実施例1の光路長調整方法を、図2を参照しつつ、図5を用いて説明する。図5のように、被測定デバイス(例えば光デバイス)を測定する測定系の2つの光経路28a、28bに用いられる測定系部材(例えば、図2では、アッテネータ18、偏波コントローラ22、位相変調器24)のサイズ等の物理長を測定する(ステップS10)。物理長の測定は、例えば概算でよい。物理長を測定した後、測定系部材及び光受信器等を光ファイバ等で接続して、例えば図2のような測定系を組み立てる(ステップS12)。この際、光ファイバやアダプタ、光路長補正手段20等を必要に応じて駆使し、2つの光経路28a、28bの光路長が異なるようにする。例えば、2つの光経路28a、28b間の光路長差が4mm以上となるようにする。その後、測定系に接続された光受信器30を動作させて、光経路28a、28bごとに偏波を調整する(ステップS14)。
次いで、光コミュニケーションアナライザ14から強度変調をかけた信号光を出射させて、光受信器30に入射させる。出射された信号光は、スプリッタ16で分岐し、一方は、アッテネータ18、光路長補正手段20、及び偏波コントローラ22を経由して、光受信器30に入射する。他方は、アッテネータ18、位相変調器24、及び偏波コントローラ22を経由し、位相変調器24によって例えば1Hz程度の低周波の位相変調がかけられて、光受信器30に入射する。
図3で説明したように、光受信器30は、90度ハイブリッド10x、10y、受光素子12、及び増幅器36を有する。90度ハイブリッド10x、10yは、入射された2つの信号光(信号光と局部発振光)を干渉させて干渉信号光を出射する。受光素子12は、干渉信号光を受光して光電流を生成する。この光電流は、増幅器36で増幅されて光受信器30の外部に出力される。
光受信器30から出力された電気信号を、アナログ−デジタル変換回路40でデジタル信号に変換した後、光コミュニケーションアナライザ14に入力させて、周波数特性を測定する。周波数特性の測定は、例えば1回(1sweep)でよい。ステップS12において、2つの光経路28a、28bの光路長を異ならせているため、例えば、図4(a)及び図4(b)のような周波数特性の測定結果が得られる。
周波数特性の測定結果から、2つの光経路28a、28bそれぞれを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差を求める(ステップS16)。例えば、周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数fを特定し、上述した数3の式を用いて遅延時間差τを求める。即ち、τ={arctan(√2)}/(πf)を計算して、2つの光経路28a、28bそれぞれを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差を求める。位相変調の影響が見られない点の周波数fは、位相変調による変動が生じていない点の周波数から±0.5GHzの範囲とすることができる。
次いで、ステップS16で求めた遅延時間差から、2つの光経路28a、28bの光路長を等しくするための補正量ΔLを求める(ステップS18)。例えば、光路長を補正する光路長補正手段20での光の速度をcとした場合、補正量ΔLは、ΔL={arctan(√2)}×c/(πf)の計算によって求めることが出来る。
次いで、光路長補正手段20を用いて、補正量ΔLだけ長くなるように光経路28aの光路長を補正する(ステップS20)。ここで、ステップS16で求めた遅延時間差だけでは、2つの光経路28a、28bのどちらの光路長が長いか(又は短いか)までは分からない。したがって、ステップS20において、光路長の補正を反対方向にしてしまった場合、つまり、光経路28aの光路長を短くすべき所を長くしてしまった場合があり得る。
そこで、ステップS20で光路長の補正を行った後、光路長が正しく補正されたかを確認する(ステップS22)。例えば、光路長の補正を行った後に、光受信器30からの出力信号を光コミュニケーションアナライザ14に入力させて周波数特性を測定する。そして、周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数が、補正を行う前よりも低くなっていないかどうかを確認する。周波数が低くなっている場合は、光路長が正しく補正されていないため(ステップS22でNo)、ステップS20に戻り、光路長補正手段20を用いて、補正量ΔLだけ短くなるように光経路28aの光路長を補正する。
ステップS22において、周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数が高くなっているか、又は、位相変調の影響が見られない点が消滅している場合は、光路長が正しく補正されたため(ステップS22でYes)、光路長の調整を終了する。
なお、上記のステップS20では、まず、補正量ΔLだけ長くなるように光経路28aの光路長を変化させているが、補正量ΔLだけ短くなるように光経路28aの光路長を変化させても勿論よい。
ここで、図4(a)及び図4(b)の周波数特性の測定結果の場合に、2つの光経路28a、28bそれぞれを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差と、光路長の補正量と、を計算して、光路長を調整する例を説明する。図4(a)及び図4(b)の周波数特性の測定結果から、位相変調の見られない点の周波数fは、5.78GHzと特定される。この周波数の値を上述の数3の式に代入することで、遅延時間差τは52.6psと計算される。ここで、光路長補正手段20には、例えば手動操作型のディレイラインを用いており、光路長補正手段20での光の速度cは3×10m/sである。このため、光路長補正手段20を用いた光路長の補正量ΔLは、τ×c=15.8mmと計算される。よって、光路長補正手段20によって光経路28aの光路長を15.8mm変化させることで、光路長の調整を行う。
図6は、光路長が正しく調整された後の周波数特性の測定結果を示す図である。図6中の細線は測定データであり、太線は測定データの最大値を結んだ包絡線であり、破線は光路長を補正する前の包絡線である。図6のように、位相変調の影響が見られない点が消滅し、測定データの最大値を結んだ包絡線(太線)が、光路長の補正前での包絡線(破線)に比べて、上昇していることが分かる。したがって、光経路28a、28bの光路長が適切な長さに調整されていると言える。
以上説明してきたように、実施例1によれば、図5で説明したように、2つの光経路28a、28bの光路長を異ならせた後、光経路28a、28bを伝搬する信号光の遅延時間差を求め、この遅延時間差から2つの光経路28a、28bの光路長を等しくするための補正量を求めている。そして、この補正量に基づいて、光経路28a、28bの光路長差を補正している。これにより、測定を複数回繰り返し行うことなく、簡易な方法によって光路長の調整を行うことができる。
光経路28a、28bを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差は、以下の方法により求めることが好ましい。即ち、光経路28a、28bの一方に強度変調をかけた信号光を伝搬させ、他方に強度変調と位相変調とをかけた信号光を伝搬させる。そして、光経路28a、28bを伝搬した2つの信号光を干渉させて干渉信号光を出射する90度ハイブリッド10x、10yと、干渉信号光を受光する受光素子12と、を含む光受信器30からの出力信号の周波数特性を求め、この周波数特性から遅延時間差を求めることが好ましい。これにより、遅延時間差を容易且つ精度良く求めることができる。例えば、周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数fを特定し、{arctan(√2)}/(πf)を計算することで、遅延時間差を容易且つ精度良く求めることができる。
光路長を補正する光路長補正手段での光の速度によって、実際の光路長の補正量が変わることから、光路長の補正量ΔLは、光路長補正手段での光の速度をcとした場合に、{arctan(√2)}×c/(πf)の計算により求めることが好ましい。
図5で説明したように、光路長の補正では、補正量ΔLの大きさだけ長く又は短くなるように光路長を補正した後、光路長が正しく補正されたかを確認し、正しく補正されていない場合には、反対方向に光路長を補正することを行うのが好ましい。上記の{arctan(√2)}/(πf)の計算から求めた遅延時間差では、2つの光経路28a、28bのどちらが長いか(又は短いか)が分からないため、光路長が正しく補正されていない場合があり得るためである。
光路長が正しく補正されたかどうかの確認は、補正後における光受信器30からの出力信号の周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数が、補正前よりも低くなっていないかどうかによって容易に確認することができる。補正前よりも周波数が低い場合には、光路長が正しく補正されていないことになる。
図5のステップ12において、2つの光経路28a、28bの光路長を異ならせて測定系を組み立てる際に、光経路28a、28b間の光路長差が4mm以上となるように異ならせることが好ましい。光路長差が短いと、図4(a)及び図4(b)の周波数特性で、位相変調の影響が見られない点が高周波数側にシフトしてしまい、周波数変化による出力変動量が小さくなる事から、位相変調の影響が見られない点の周波数の特定精度が悪くなってしまうからである。したがって、このような観点から、光経路28a、28bの光路長を異ならせる際には、光路長差が5mm以上となる場合がより好ましく、6mm以上となる場合がさらに好ましく、7mm以上となる場合がよりさらに好ましい。また、光路長差があまり大きくなりすぎると、光路長調整手段20による光路長の調整が難しくなるので、光路長差は50mm以下の場合が好ましく、40mm以下の場合がより好ましく、30mm以下の場合がさらに好ましく、20mm以下の場合がよりさらに好ましい。例えば、光路長差Lを、L={arctan(√2)}×4×c/(π×BW)から計算してもよい。ここで、cは真空中の光の速度であり、BWは本測定系による被測定デバイスの帯域である。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10、10x、10y 90度ハイブリッド
12、12a、12b 受光素子
14 光コミュニケーションアナライザ
16 スプリッタ
18 アッテネータ
20 光路長補正手段
22 偏波コントローラ
24 位相調整器
26 ファンクションジェネレータ
28a、28b 光経路
30 光受信器
32 偏光分離素子
34 ビームスプリッタ
36 増幅器
38 偏光回転素子
40 アナログ−デジタル変換回路

Claims (4)

  1. 被測定デバイスに対して1つの信号光がスプリッタによって2つに分岐される2つの信号光を入力するための2つの光経路を有する測定系において、
    前記2つの光経路の光路長を異ならせる工程と、
    前記光路長を異ならせた後、前記2つの光経路を伝搬する信号光の遅延時間差を求める工程と、
    前記遅延時間差から、前記2つの光経路の光路長を等しくするための補正量を求める工程と、
    前記補正量に基づいて、前記2つの光経路の光路長差を補正する工程と、を含み、
    前記2つの光経路の一方に強度変調がかけられた信号光を伝搬させ、他方に強度変調と位相変調とがかけられた信号光を伝搬させ、前記2つの光経路を伝搬した2つの前記信号光を干渉させて干渉信号光を出射する90度ハイブリッドと、前記干渉信号光を受光する受光素子と、を含む光受信器からの出力信号の周波数特性を用いて前記遅延時間差を求め、
    前記遅延時間差および前記補正量は、下記式(1)(2)により求める、光路長調整方法。
    遅延時間差={arctan(√2)}/(πf )・・・(1)
    :前記周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数
    補正量={arctan(√2)}×c /(πf )・・・(2)
    :前記光路長を補正する光路長補正手段での光の速度
  2. 前記光路長差を補正する工程は、前記補正量の大きさだけ長く又は短くなるように前記光路長を変化させる第1の補正と、前記第1の補正をした後、前記光路長が正しく補正されたかを確認する工程と、前記光路長が正しく補正されていない場合に、前記第1の補正とは反対の方向に前記補正量の大きさだけ前記光路長を変化させる第2の補正と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の光路長調整方法。
  3. 前記光路長差を補正する工程は、前記補正量の大きさだけ長く又は短くなるように前記光路長を変化させる第1の補正と、前記第1の補正をした後、前記光受信器からの出力信号の周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数が、前記第1の補正の前よりも低くなっていないかどうかによって、前記光路長が正しく補正されたかを確認する工程と、前記光路長が正しく補正されていない場合に、前記第1の補正とは反対の方向に前記補正量の大きさだけ前記光路長を変化させる第2の補正と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の光路長調整方法。
  4. 前記2つの信号光は、同じ信号光であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項記載の光路長調整方法。
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