JP6313517B1 - フィルタ係数算出装置、及び補聴器 - Google Patents

フィルタ係数算出装置、及び補聴器 Download PDF

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Abstract

【課題】負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を容易に決定し、抑制量の最適化を短時間で実現できるフィルタ係数算出装置、及び補聴器を提供する。【解決手段】負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出装置1であって、伝達関数E(s)に基づく伝達関数データE´(jω)を取得する取得部11と、複数の参照データを含む母集団を生成する母集団生成部12と、遺伝的アルゴリズムを用いて、選択及び更新を複数繰り返す最適化部13と、出力部14と、を備え、最適化部13は、複数の子データtiを生成する子データ生成部13aと、伝達関数データE´(jω)と、子データtiとを含む評価データR(ω)を生成し、評価データR(ω)を評価し、生成及び評価を繰り返す評価部13bと、更新部13cと、を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出装置、及び補聴器に関する。
従来、デジタルフィルタを含む負帰還制御を用いた回路技術の用途として、例えば特許文献1のようなこもり音低減装置等が提案されている。また、例えば特許文献2では、デジタルフィルタの係数を決定する方法について開示されている。
特許文献1に開示されたこもり音低減装置は、開口部が形成された音出力部と、開口部が形成された集音部と、開口部と外耳道内の空間を連通する音導部と、集音部から音出力部への負帰還を担う負帰還部とを備えている。音導部の内部には、一端が開口部に面し他端が外耳道内の空間に面した共通空間が形成され、共通空間を経由して双方向に音が伝搬する。共通空間は長さL(mm)と断面積S(mm2)に関し、3≦L≦8の範囲内で、S≧a1・L+b1、及び、S≦a2・L+b2、ただし、a1=0.19(mm)、b1=0.57(mm2)、a2=0.65(mm)、b2=0.18(mm2)、の関係を満たすように設定される。
特許文献2に開示されたデジタルフィルタの係数決定方法は、初期集団作成部により、量子化前のn個の係数値のそれぞれを任意の量子化手法に従って量子化したもの(個体)をN組生成して初期集団とし、遺伝的アルゴリズム実行部は該初期集団に遺伝的アルゴリズムを繰返し適用し、該遺伝的アルゴリズムにより、所望の周波数特性からの劣化が小さくなるように、n個それぞれの係数値を所定の量子化法により量子化して有限語長の係数データを求める。
特開2017−11383号公報 特開平09−046178号公報
ここで、負帰還制御に用いられる回路の設計においては、様々な制約がある中で、最適な特性の導出を必要とする場合がある。特に、負帰還制御における最適な抑制量を実現するために、複数のデジタルフィルタを備えることがあり、各デジタルフィルタの周波数特性を決定するための係数を設定する必要がある。また、実装される環境(使用条件)の僅かな違いに伴い、最適な抑制量を実現するためのデジタルフィルタの係数を変更しなければならない。このため、デジタルフィルタの係数を決定することは容易ではなく、抑制量の最適化を実現するために膨大な時間を費やす必要がある、という事情がある。
この点、特許文献1の開示技術では、デジタルフィルタの係数を決定することに関する記載がされておらず、上述した事情を解決することができない。また、特許文献2の開示技術では、ビット演算による遺伝的アルゴリズムを用い、デジタルフィルタの係数を決定している。このため、上述した負帰還制御に用いられる複数のデジタルフィルタの係数を決定するには不向きであり、上述した事情を解決することができない。上述した事情により、複数のデジタルフィルタの係数を容易に決定し、抑制量の最適化を短時間で実現できることが望まれている。
そこで本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を容易に決定し、抑制量の最適化を短時間で実現できるフィルタ係数算出装置、及び補聴器を提供することにある。
第1発明に係るフィルタ係数算出装置は、レシーバに入力した信号及びマイクロホンから出力された信号を用いて算出された伝達関数に基づき、前記レシーバと前記マイクロホンとの間に接続された負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出装置であって、前記伝達関数に基づく伝達関数データを取得する取得部と、予め取得された初期情報に基づき設定された複数の参照データを含む母集団を生成する母集団生成部と、遺伝的アルゴリズムを用いて、前記母集団のうち一部の前記参照データを選択し、前記選択された一部の前記参照データを更新し、前記選択及び前記更新を複数繰り返す最適化部と、前記母集団から第1参照データを選択し、前記第1参照データに基づき前記複数のデジタルフィルタの係数を出力する出力部と、を備え、前記最適化部は、前記選択された一部の前記参照データに基づき、複数の子データを生成する子データ生成部と、前記伝達関数データと、前記子データとを含む評価データを生成し、前記評価データを評価し、前記生成及び前記評価を繰り返す評価部と、前記評価の結果に基づき、前記複数の子データのうち一部の前記子データを選択し、前記選択された一部の前記参照データとして前記更新する更新部と、を有することを特徴とする。
第2発明に係るフィルタ係数算出装置は、第1発明において、前記評価データは、全体のゲイン値を含み、前記評価部は、前記評価データが、予め設定された条件を満たす場合には前記全体のゲイン値を更新し、前記条件を満たさない場合には前記評価データを前記評価し、前記更新部は、前記選択された一部の前記子データと、前記選択された一部の前記子データに対応する前記全体のゲイン値とを、前記選択された一部の前記参照データとして前記更新し、前記出力された前記複数のデジタルフィルタの係数は、前記第1参照データに対応する前記全体のゲイン値を有することを特徴とする。
第3発明に係るフィルタ係数算出装置は、第2発明において、前記参照データ及び前記子データは、中心周波数と、品質係数と、ゲイン値とを有し、前記評価部は、下記の[数15]に示す前記評価データ(R(ω))を前記生成することを特徴とする。
Figure 0006313517
ここで、L(s)は一巡伝達関数として下記の[数14]で示される。
Figure 0006313517
ここで、Gallは前記全体のゲイン値を示し、E′(s)は前記伝達関数データを示し、H(s)はコントローラの伝達関数として下記の[数13]で示される。
Figure 0006313517
ここで、fcik、Qik、及びGikは、それぞれ前記評価データに対応する前記子データの有する前記中心周波数、前記品質係数、及び前記ゲイン値を示す。
第4発明に係るフィルタ係数算出装置は、第3発明において、前記評価部は、下記の[数16]を前記条件として前記評価データを判別し、前記判別の結果に基づき前記評価データを前記更新又は前記評価することを特徴とする。
Figure 0006313517
ここで、fd1は前記条件に対応する第1周波数を示し、plоwは前記第1周波数以下の上限値を示し、pupは前記第1周波数以上の上限値を示す。
第5発明に係るフィルタ係数算出装置は、第4発明において、前記評価部は、前記[数16]及び下記の[数17]を前記条件として前記評価データを前記判別し、前記判別の結果に基づき結果前記評価データを前記更新又は前記評価することを特徴とする。
Figure 0006313517
ここで、fd2は前記条件に対応する第2周波数を示し、nlоwは前記第2周波数以下の下限値を示す。
第6発明に係るフィルタ係数算出装置は、第3発明〜第5発明の何れかにおいて、前記評価部は、下記の[数18]で示される評価関数(E)を参照して、前記評価データを前記評価することを特徴とする。
Figure 0006313517
ここで、fiは評価周波数を示し、Rtg(fi)は前記評価周波数における目標値を示し、C1は第1重み係数を示し、C2は第2重み係数を示す。
第7発明に係るフィルタ係数算出装置は、第3発明〜第6発明の何れかにおいて、前記取得部は、下記の[数2]を参照して前記伝達関数に基づく前記伝達関数データ(E′(jω))を取得することを特徴とする。
Figure 0006313517
ここで、E(jω)は前記伝達関数を示し、flは補正対象となる補正周波数を示し、βは位相の勾配を示す。
第8発明に係るフィルタ係数算出装置は、第3発明〜第7発明の何れかにおいて、前記母集団生成部は、前記初期情報の有する下記の[数3]で示される中心周波数分布(fc)に基づき前記中心周波数を設定することを特徴とする。
Figure 0006313517
ここで、εiniは乱数を示し、fcupは上限周波数を示す。
第9発明に係るフィルタ係数算出装置は、第3発明〜第8発明の何れかにおいて、前記母集団生成部は、前記初期情報の有する下記の[数4]で示される品質係数分布(Q)に基づき前記品質係数を設定し、前記初期情報の有する下記の[数5]で示されるゲイン値分布(G)に基づき前記ゲイン値を設定することを特徴とする。
Figure 0006313517
Figure 0006313517
ここで、Qupは上限品質係数を示し、Gupは上限ゲイン値を示し、εiniは乱数を示す。
第10発明に係るフィルタ係数算出装置は、発信部に入力した信号及び受信部から出力された信号を用いて算出された伝達関数に基づき、前記発信部と前記受信部との間に接続された負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出装置であって、前記伝達関数に基づく伝達関数データを取得する取得部と、予め取得された初期情報に基づき設定された複数の参照データを含む母集団を生成する母集団生成部と、遺伝的アルゴリズムを用いて、前記母集団のうち一部の前記参照データを選択し、前記選択された一部の前記参照データを更新し、前記選択及び前記更新を複数繰り返す最適化部と、前記母集団から第1参照データを選択し、前記第1参照データに基づき前記複数のデジタルフィルタの係数を出力する出力部と、を備え、前記最適化部は、前記選択された一部の前記参照データに基づき、複数の子データを生成する子データ生成部と、前記伝達関数データと、前記子データとを含む評価データを生成し、前記評価データを評価し、前記生成及び前記評価を繰り返す評価部と、前記評価の結果に基づき、前記複数の子データのうち一部の前記子データを選択し、前記選択された一部の前記参照データとして前記更新する更新部と、を有することを特徴とする。
第11発明に係る補聴器は、外部空間から伝わる音を電気信号に変換する外部マイクロホンと、外耳道内から伝わる音を電気信号に変換する外耳道用マイクロホンと、前記外部マイクロホンにより変換された前記電気信号を使用者に応じて補聴処理する補聴処理部と、電気信号から変換した音を出力するレシーバと、前記レシーバと前記外耳道用マイクロホンとの間に配置された負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタ、及び、前記複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出部、を有するコントローラと、を備え、前記フィルタ係数算出部は、前記レシーバに入力した信号及び前記外耳道用マイクロホンから出力された信号を用いて算出された伝達関数と、前記伝達関数に基づく伝達関数データとを取得する取得部と、予め取得された初期情報に基づき設定された複数の参照データを含む母集団を生成する母集団生成部と、遺伝的アルゴリズムを用いて、前記母集団のうち一部の前記参照データを選択し、前記選択された一部の前記参照データを更新し、前記選択及び前記更新を複数繰り返す最適化部と、前記母集団から第1参照データを選択し、前記第1参照データに基づき前記複数のデジタルフィルタの係数を出力する出力部と、を有し、前記最適化部は、前記選択された一部の前記参照データに基づき、複数の子データを生成する子データ生成部と、前記伝達関数データと、前記子データとを含む評価データを生成し、前記評価データを評価し、前記生成及び前記評価を繰り返す評価部と、前記評価の結果に基づき、前記複数の子データのうち一部の前記子データを選択し、前記選択された一部の前記参照データとして前記更新する更新部と、を有することを特徴とする。
第1発明〜第11発明によれば、評価部は、遺伝的アルゴリズムを用いて、伝達関数データと、子データとを含む評価データを評価する。また、伝達関数データは、デジタルフィルタを用いる環境の伝達関数に基づいて取得される。このため、評価部は、デジタルフィルタを用いる環境の違いを考慮した評価を実施できる。これにより、複数のデジタルフィルタの係数を容易に決定し、抑制量の最適化を短時間で実現することが可能となる。
また、第2発明によれば、複数の評価データは、全体のゲイン値を含み、評価部は、評価データが条件を満たす場合には全体のゲイン値を更新する。すなわち、遺伝的アルゴリズムにより生成された子データ毎に最適な全体のゲイン値を設定することができる。このため、全体のゲインをデジタルフィルタの係数として用いることで、抑制量全体の調整を行うことができ、負帰還制御の精度向上を図ることが可能となる。
また、第3発明によれば、評価部は、[数15]で示す評価データを生成する。このとき、評価データは、子データの中心周波数、品質係数、及びゲイン値、並びに全体のゲイン値を有しており、各値を係数とした複数のデジタルフィルタの抑制量に対応する。このため、評価部では、実際の抑制量に基づいた評価を実施することができる。これにより、複数のデジタルフィルタの係数を高精度に決定することが可能となる。
また、第4発明によれば、評価部は、[数16]を条件として評価データを判別し、判別の結果に基づき評価データを更新又は評価する。[数16]は、第1周波数以下の上限値及び第1周波数以上の上限値に対して評価データの値を比較する式を含む。このため、各評価データ(抑制量)における正帰還の上限値を任意に設定することができる。これにより、決定されたデジタルフィルタの係数を用いたときに、意図しない信号の増幅を抑制することが可能となる。
また、第5発明によれば、評価部は、[数16]及び[数17]を条件として評価データを判別し、判別の結果に基づき評価データを更新又は評価する。[数17]は、第2周波数以下の下限値に対して評価データの値を比較する式である。このため、デジタルフィルタを用いたときに、負帰還制御が不要な周波数帯域を任意に設定することができる。これにより、電力の消費を抑制することが可能となる。
また、第6発明によれば、評価部は、[数18]で示される評価関数を参照して、評価データを評価する。[数18]は、複数の評価周波数における目標値と、評価データとの差を一義的な値で示すことができる。このため、評価の結果に基づき、複数の子データのうち一部の子データを容易に選択することができ、子データを目標値まで容易に収束させることができる。これにより、抑制量の最適化に必要とする時間をさらに短くすることが可能となる。
また、第7発明によれば、取得部は、[数2]を参照して伝達関数に基づく伝達関数データを取得する。[数2]は、補正周波数以下の伝達関数において、振幅特性を平坦とし、位相特性を回転させる式である。このため、伝達関数の変化を考慮したフィルタの係数を決定することができる。これにより、デジタルフィルタを用いる環境における伝達関数が変化した場合においても、抑制量の安定性を高めることが可能となる。
また、第8発明によれば、母集団生成部は、中心周波数分布に基づいて中心周波数を設定する。すなわち、参照データの取り得る中心周波数の範囲を、予め制限することができる。このため、遺伝的アルゴリズムを用いたとき、更新される参照データを確実に収束させることができる。これにより、抑制量の最適化に必要とする時間をさらに短くすることが可能となる。
また、第9発明によれば、品質係数分布及びゲイン値分布に基づき、品質係数及びゲイン値を設定する。ここで、デジタルフィルタに含まれるピーキングフィルタの周波数特性は、ピークの周波数、品質係数、及びゲイン値により決まる。このため、品質係数及びゲイン値の上限を予め制限することで、極端なピークを作る係数を排除することができる。これにより、デジタルフィルタとしてピーキングフィルタを用いた場合における抑制量の安定性を高めることが可能となる。
図1は、実施形態におけるフィルタ係数算出装置の構成の一例を示す模式図である。 図2(a)は、伝達関数の周波数特性の一例を示すグラフであり、図2(b)は、伝達関数の位相特性の一例を示すグラフである。 図3(a)は負帰還制御装置の等価回路の一例を示し、図3(b)はデジタルフィルタの等価回路の一例を示し、図3(c)は、複数のデジタルフィルタの等価回路の一例を示す。 図4(a)は、8つのデジタルフィルタの周波数特性の一例を示すグラフであり、図4(b)は、8つのデジタルフィルタの位相特性の一例を示すグラフである。 図5(a)は、デジタルフィルタの周波数特性の一例を示すグラフであり、図5(b)は、デジタルフィルタの位相特性の一例を示すグラフである。 図6(a)は、実施形態におけるフィルタ係数算出装置の構成の一例を示す模式図であり、図6(b)は、実施形態におけるフィルタ係数算出装置の機能の一例を示す模式図である。 図7は、実施形態におけるフィルタ係数算出装置の情報処理の流れの一例を示す図である。 図8は、実施形態におけるフィルタ係数算出装置の情報処理の流れの一部の一例を示す図である。 図9(a)は、伝達関数データの周波数特性の一例を示すグラフであり、図9(b)は、伝達関数データの位相特性の一例を示すグラフである。 図10(a)は、上限を制限したデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフであり、図10(b)は、下限を制限したデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフである。 図11(a)は、世代数を1としたときのデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフであり、図11(b)は、世代数を100としたときのデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフである。 図12(a)は、世代数を300としたときのデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフであり、図12(b)は、世代数を500としたときのデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフである。 図13(a)は、世代数を1000としたときのデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフであり、図13(b)は、世代数を10000としたときのデジタルフィルタの抑制量の一例を示すグラフである。 図14(a)は、世代数を10000としたときの第1参照データにおけるナイキスト線図を示し、図14(b)は、図14(a)の一部を拡大した図である。 図15は、実施形態における補聴器の構成の一例を示す模式図である。 図16は、他の実施形態におけるフィルタ係数算出装置の構成の一例を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態におけるフィルタ係数算出装置、及び補聴器の一例について、図面を参照しながら説明する。
(フィルタ係数算出装置1の構成)
図1を参照して、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の構成の例について説明する。図1は、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、フィルタ係数算出装置1として、主にパーソナルコンピュータ(PC)が用いられるほか、例えば携帯端末等の電子機器が用いられる。また、フィルタ係数算出装置1を負帰還制御装置5に内蔵してもよい。フィルタ係数算出装置1は、補聴器やオーディオ用イヤホン等の負帰還制御装置5に接続され、負帰還制御装置5の有するデジタルフィルタの係数を決定するために用いられる。
フィルタ係数算出装置1は、例えば公衆通信網(ネットワーク)を介して負帰還制御装置5と接続されてもよい。公衆通信網は、フィルタ係数算出装置1及び負帰還制御装置5が通信回路を介して接続されるインターネット網等を示し、光ファイバ通信網や、無線通信網で実現してもよい。
フィルタ係数算出装置1は、予め負帰還制御装置5の有するレシーバ51に入力した信号及びマイクロホン52から出力された信号を用いて伝達関数E(s)を算出する。フィルタ係数算出装置1は、算出された伝達関数E(s)に基づき、レシーバ51とマイクロホン52との間に接続された制御部53の有する複数のデジタルフィルタの係数を決定する。このため、デジタルフィルタを用いた負帰還制御により、外耳道内等の空間50に発生するこもり音等を抑制することができる。
フィルタ係数算出装置1の算出する伝達関数E(s)は、下記の[数1]で示される。
Figure 0006313517
ここで、Y(s)は、マイクロホン52から出力された信号を示し、X(s)は、レシーバ51に入力した信号を示す。
伝達関数E(s)は、例えば図2のように示すことができる。図2(a)は伝達関数E(s)の周波数特性を示すグラフであり、図2(b)は伝達関数E(s)の位相特性を示すグラフである。図2に示すような伝達関数E(s)は、周波数によって異なる特性を有する。このため、最適な負帰還制御を実現するためには、複数のデジタルフィルタを用いる必要がある。
図3は、負帰還制御装置5の原理説明図であり、図3(a)は負帰還制御装置5の等価回路を示し、図3(b)はデジタルフィルタの等価回路を示し、図3(c)は、複数のデジタルフィルタの等価回路を示す。
図3(a)に示すように、制御部53は、複数のデジタルフィルタにより設定された伝達関数H(s)(コントローラの伝達関数)を有する。すなわち、フィルタ係数算出装置1は、伝達関数H(s)の設定に必要となる複数のデジタルフィルタの係数を算出する。
制御部53は、信号y(t)を受信する。制御部53は、複数のデジタルフィルタを介して、信号y(t)を信号h(t)に変換し、演算部55に送信する。演算部55は、外部入力(例えば、マイクロホン)54からの参照信号となる信号r(t)を受信し、信号r(t)から信号h(t)を除算した信号u(t)を生成する。負帰還制御装置5は、伝達関数E(s)を介して変換した信号u’(t)と、外来ノイズや耳内に発生するノイズ等に起因する信号d(t)とを受信し、信号u’(t)と信号d(t)とを加算した信号y(t)を生成する。このため、空間50に発生したノイズ等に起因する信号d(t)の強度を抑制した信号y(t)を出力することができる。
図3(b)に示すように、デジタルフィルタとして、例えばバイクワッドフィルタF(双2次フィルタ)が用いられる。バイクワッドフィルタFは、5つの乗算部FA1、FA2、FB0、FB1、FB2と、2つの遅延部Z-1と、4つの演算部FC1、FC2、FC3、FC4とを有する。なお、上述した各構成の数は任意であり、必要に応じて設定してもよい。
図3(c)に示すように、制御部53の有する複数のデジタルフィルタとして、複数のバイクワッドフィルタF1、F2、・・・、FNb、及び乗算部GAが用いられる。各バイクワッドフィルタF1、F2、・・・、FNbは、直列に接続される。バイクワッドフィルタFNbと演算部55との間には、乗算部GAが配置される。
本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1は、バイクワッドフィルタFにおける各乗算部FA1、FA2、FB0、FB1、FB2、及び乗算部GAに用いられる値を決定することができる。この詳細については、後述する。
図4は、8つのデジタルフィルタの周波数特性の一例を示すグラフであり、図5は、図4に示す8つのデジタルフィルタを組み合わせたときの周波数特性を示すグラフである。図4(a)及び図5(a)はデジタルフィルタの周波数特性を示し、図4(b)及び図5(b)はデジタルフィルタの位相特性を示す。
図5に示すような周波数特性を有するデジタルフィルタを実装するために、図4に示すような複数のデジタルフィルタを設計する場合がある。この場合、非常に複雑な関係に基づくデジタルフィルタ毎の係数を決定する必要がある。このような場合においても、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1は、遺伝的アルゴリズムを用いることで、デジタルフィルタの最適な係数を容易に決定することができる。
特に、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1は、実数値遺伝的アルゴリズムを用いることが望ましい。発明者らは、実数値遺伝的アルゴリズムを用いることで、通常のビット演算を用いる遺伝的アルゴリズムを用いる場合に比べ、複数のデジタルフィルタの最適な係数を短時間で決定することが可能となることを見出した。
図6(a)は、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の構成の一例を示す模式図である。フィルタ係数算出装置1は、筐体10と、CPU101と、ROM102と、RAM103と、記憶部104と、I/F105〜107とを備える。各構成101〜107は、内部バス110により接続される。
CPU(Central Processing Unit)101は、フィルタ係数算出装置1全体を制御する。ROM(Read Only Memory)102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM(Random Access Memory)103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。記憶部104は、初期情報等の各種情報が記憶される。記憶部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)の他、SSD(solid state drive)等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えばフィルタ係数算出装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。GPUを有することで、通常よりも高速演算処理が可能となる。
I/F105は、負帰還制御装置5等の外部装置との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部分108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部分108として、例えばキーボードが用いられ、フィルタ係数算出装置1の管理者や作業者等は、入力部分108を介して、各種情報又はフィルタ係数算出装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、出力部分109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。出力部分109は、記憶部104に保存された各種情報、又はフィルタ係数算出装置1の処理結果等を出力する。出力部分109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式として入力部分108を含んでもよい。
図6(b)は、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の機能の一例を示す模式図である。フィルタ係数算出装置1は、取得部11と、母集団生成部12と、最適化部13と、出力部14と、入力部15と、情報DB16とを備える。取得部11、母集団生成部12、最適化部13、出力部14、入力部15、及び情報DB16は、CPU101が、RAM103を作業領域として、記憶部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
<取得部11>
取得部11は、伝達関数E(s)を取得する。 取得部11は、伝達関数E(s)に基づき、伝達関数データE´(jω)を取得する。伝達関数データE´(jω)は、必要に応じて伝達関数E(s)に補正処理を実行したデータであり、例えば伝達関数E(s)を伝達関数データE´(jω)としてもよい。なお、補正処理を実行する場合の詳細は、後述する。
<母集団生成部12>
母集団生成部12は、複数の参照データを含む母集団を生成する。複数の参照データは、予め取得された初期情報に基づき設定される。
参照データは、複数のデジタルフィルタの係数に対応するデータを有する。例えば、参照データの有する中心周波数、品質係数、及びゲイン値に基づき、図2(b)及び図2(c)で示した各乗算部FA1、FA2、FB0、FB1、FB2の値を、デジタルフィルタの数Nbに応じて設定することができる。なお、品質係数(クオリティファクタ)は一般的にQ値と呼ばれ、共振のピークの鋭さを表す値である。
初期情報は、初期段階における参照データを設定する値を有し、例えば中心周波数分布fc、品質係数分布Q、及びゲイン値分布Gの少なくとも何れかを有する。この場合、中心周波数、品質係数、及びゲイン値は、例えば初期情報に含まれる各分布の範囲に基づいて設定される。
初期情報は、例えばデジタルフィルタの数Nbと、各デジタルフィルタの係数の数Npとを有するほか、遺伝的アルゴリズムを用いる際に必要となる初期条件や、後述する評価等に必要となる値を有する。
<最適化部13>
最適化部13は、遺伝的アルゴリズムを用いて、母集団のうち一部の参照データをランダムで選択し、選択された一部の参照データを更新する。最適化部13は、上記選択及び更新を複数繰り返す。最適化部13は、子データ生成部13aと、評価部13bと、更新部13cとを有する。
<子データ生成部13a>
子データ生成部13aは、選択された一部の参照データに基づき、複数の子データtiを生成する(交叉)。子データ生成部13aは、例えばREX(Real-coded Ensemble Xover)に基づいて複数の子データtiを生成する。
最適化部13は、選択された一部の参照データの数に比べて、子データtiの数を多く生成する。このため、複数の子データtiを生成するとき、一部の参照データに比べて、デジタルフィルタの係数としてより良いデータとなる可能性を高めることができる。
<評価部13b>
評価部13bは、伝達関数データE´(jω)と、子データtiとを有する評価データR(ω)を生成し、評価データR(ω)を評価する。評価部13bは、上記生成及び評価を繰り返す。評価データR(ω)は、伝達関数データE´(jω)を有しており、デジタルフィルタの抑制量に対応する値を示す。このため、評価部13bは、デジタルフィルタを用いる環境に対応した抑制量に基づき、評価を実施することができる。
<更新部13c>
更新部13cは、評価部13bにおける評価の結果に基づき、複数の子データtiのうち一部の子データtiを選択する。更新部13cは、選択した一部の子データtiを、子データti生成時に選択された一部の参照データとして更新する。子データtiの選択及び更新する数は、任意で設定することができ、例えば評価部13bの評価結果の高い順番に選択及び更新してもよい。これにより、母集団内の参照データを、デジタルフィルタに適した係数に近づけることができる。
<出力部14>
出力部14は、I/F105を介してレシーバ51に信号X(s)を送信(入力)する。出力部14は、母集団から第1参照データを選択し、第1参照データに基づき複数のデジタルフィルタの係数を出力する。出力部14は、例えば複数の参照データに対して評価部13bと同様の評価を実施し、最も評価の高い参照データを第1参照データとして評価する。このため、最適化部13により更新された参照データを有する母集団から、最適なデジタルフィルタの係数として第1参照データを選択することができる。
出力部14は、I/F107を介して出力部分109にデジタルフィルタの係数を表示させるほか、例えばI/F105を介して負帰還制御装置5の制御部53にデジタルフィルタの係数を送信し、デジタルフィルタの係数を直接設定できるようにしてもよい。
<入力部15>
入力部15は、I/F105を介してマイクロホン52から出力された信号Y(s)を取得する。入力部15は、例えばI/F106を介して入力部分108から入力された初期情報等を取得する。入力部15は、例えば可搬メモリ等の記憶媒体を介して、初期情報等を取得してもよい。
<情報DB16>
情報DB16は、予め取得された初期情報、信号X(s)、信号Y(s)、伝達関数E(s)、伝達関数データE´(jω)等が記憶される。上記のほか、情報DB16には、後述する生成された参照データを含む母集団、子データti、評価データR(ω)、判定の条件等が記憶される。各種情報(データ)は、記憶部104に保存される。各構成11〜15は、必要に応じて情報DB16に各種情報を記憶させ、又は各種情報を取出す。
(フィルタ係数算出装置1の処理)
次に、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の情報処理の手順について説明する。図7は、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の情報処理の流れの一例を示す図である。
<伝達関数データE´(jω)を取得:ステップS110>
図7に示すように、取得部11は、伝達関数E(s)に基づき補正処理した伝達関数データE´(jω)を取得する(ステップS110)。取得部11は、例えば予め信号X(s)及び信号Y(s)を取得して、伝達関数E(s)を算出するほか、例えば予め算出された伝達関数E(s)を取得してもよい。
取得部11は、例えば取得した伝達関数E(s)及び伝達関数データE´(jω)を、情報DB16に記憶する。なお、信号X(s)は、フィルタ係数算出装置1から負帰還制御装置5に送信するほか、例えば他の端末から負帰還制御装置5に送信してもよい。
取得部11は、例えば下記の[数2]を参照して伝達関数データE´(jω)を所得してもよい。
Figure 0006313517
ここで、jは複素数を示し、ωは角振動数を示し、s=jωである。flは補正対象となる補正周波数(Hz)を示し、βは位相の勾配を示す。初期情報は、補正周波数fl及び勾配βを有する。
上記の[数2]を参照することで、補正周波数fl以下の伝達関数データE´(jω)において、振幅特性と、位相特性とを制御することができる。
特に、負帰還制御装置5として補聴器が用いられる場合、補聴器の付け外しや、装用自の口の開け閉めにより耳内の伝達関数E(s)が変化することがある。これは、補聴器と外耳道の隙間が変化したり、外耳道の容積が微小に変化したりすることに起因する。このとき、補正周波数fl及び勾配βを設定することで、上記伝達関数E(s)の変化を予め考慮することができ、実使用条件における安定性をさらに高めることが可能となる。
例えば補正周波数flを20Hzとし、勾配βを10とした場合において決定されたデジタルフィルタの抑制量を、図9に示す。図9に示すように、20Hz以下において、振幅特性を平坦(図9(a)の矢印)とし、位相特性を回転(図9(b)の矢印)させることができる。これにより、使用者の顎の動きなどで伝達関数E(s)が若干変化する場合であっても、補聴器を安定的に駆動することが可能となる。
<母集団を生成:ステップS120>
次に、母集団生成部12は、予め取得された初期情報に基づき設定された複数の参照データを含む母集団を生成する(ステップS120)。母集団生成部12は、例えば情報DB16から初期情報を取得し、母集団を生成する。複数の参照データの数は、初期情報に含まれ、任意に設定することができる。母集団生成部12は、例えば取得した母集団を、情報DB16に記憶する。
母集団生成部12は、初期情報の有するデジタルフィルタの数Nbと、各デジタルフィルタの係数の数Npとに基づき、各参照データの係数の数を設定する。各参照データの係数の数Nn(同定する係数の数)は、Nb×Npで示され、例えばNb=8、Np=3のとき、Nn=24である。
母集団生成部12は、例えば下記の[数3]で示される中心周波数分布fcを取得する。
Figure 0006313517
ここで、εiniは任意の分散を有する乱数を示し、fcupは上限周波数(Hz)を示す。母集団生成部12は、中心周波数分布fcに基づき中心周波数を設定し、参照データを生成する。このため、各参照データの中心周波数を、中心周波数分布fcに示す範囲内で設定頻度に重み付けをした状態で設定することができる。これにより、遺伝的アルゴリズムを用いたとき、探索範囲を事前に制限することができ、更新される参照データを確実に収束させることができる。
特に、負帰還制御装置5として補聴器が用いられる場合、デジタルフィルタのカットオフ周波数は、負の値を設定することができない。このため、デジタルフィルタがローパスフィルタを含む場合、上限周波数fcup及び下限周波数を設定することで、補聴器におけるデジタルフィルタの係数として適用可能な中心周波数に収束させることが可能となる。例えば、上限周波数fcupを8000Hzとし、さらに下限周波数を1Hzとすることで、補聴器におけるデジタルフィルタの係数として適用可能な中心周波数に収束させることが容易となる。
母集団生成部12は、例えば下記の[数4]で示される品質係数分布Q、及び下記の[数5]で示されるゲイン値分布Gを取得する。
Figure 0006313517
Figure 0006313517
ここで、Qupは上限品質係数を示し、Gupは上限ゲイン値(dB)を示す。母集団生成部12は、品質係数分布Qに基づき品質係数を設定し、ゲイン値分布Gに基づきゲイン値を設定し、参照データを生成する。このため、品質係数及びゲイン値を制限することができ、デジタルフィルタが急峻な周波数特性を有することを防止できる。
特に、負帰還制御装置5として補聴器が用いられる場合、所望の帯域を増幅又は減衰させるために、デジタルフィルタの一種であるピーキングフィルタが重要な役割を担う。ピーキングフィルタの周波数特性は、ピークの周波数を示す中心周波数、ピークの鋭さを示す品質係数、及びピークの高さを制御するゲイン値によって決められる。このため、デジタルフィルタがピーキングフィルタを含む場合、上限品質係数Qup及び上限ゲイン値Gupを設定することで、極端なピークの形成を抑制することができる。例えば、上限品質係数Qupを2、及び上限ゲイン値Gupを25とすることで、補聴器に不要なピークの形成をさらに抑制することができる。
<母集団の最適化:ステップS130>
最適化部13は、遺伝的アルゴリズムを用いて、母集団のうち一部の参照データを選択し、選択された一部の参照データを更新し、選択及び更新を複数繰り返す(ステップS130)。最適化部13は、例えばJGGモデル(Just Generation Gapモデル)に基づいて、ステップS130を実施する。
最適化部13は、例えば情報DB16から母集団及び初期情報を取得し、一部の参照データの選択及び更新を複数繰り返す。最適化部13は、例えば更新済みの参照データを含む母集団を、情報DB16に記憶するほか、更新の過程で取得した各種データ等を、情報DB16に適宜記憶し、又は情報DB16から適宜取出す。
ステップS130では、選択及び更新としてステップS131〜ステップS134を複数回繰り返す。最適化部13は、初期情報の有する繰り返し回数(世代数Ngen)に基づき、ステップS131〜ステップS134を繰り返すほか、例えば更新の前後における参照データの比較結果に基づいて、繰り返しを終了してもよい。なお、最適化部13は、ステップS131〜ステップS134において必要となる初期情報や、生成された各種情報を、適宜情報DB16から取出し、又は記憶する。
<一部の参照データを選択:ステップS131>
最適化部13は、初期情報の有する親数μに基づき、母集団のうち一部の参照データをランダムで選択する(ステップS131)。親数μは、参照データの選択数を示し、例えばNn+1で示され、Nn=24のとき、μ=25である。最適化部13は、例えば選択された一部の参照データとして、例えば下記の[数6]で示されるμ行Nn列の行列Pを取得する。
Figure 0006313517
すなわち、行列Pの行数は、選択された参照データの数を示し、行列Pの列数は、各参照データの係数の数を示す。
<複数の子データtiを生成:ステップS132>
次に、子データ生成部13aは、選択された一部の参照データに基づき、複数の子データtiを生成する(ステップS132)。子データ生成部13aは、例えば下記の[数7]を参照して、行列Pを乱数N(0,0.1)の分布に変換して下記の[数8]で示される行列Ptを算出する。
Figure 0006313517
Figure 0006313517
ここで、Npоpは初期情報の有する集団サイズを示す。Npоpは、例えばNn×25で示され、Nn=24のとき、Npоp=600である。
次に、子データ生成部13aは、行列Ptに基づいて、下記の[数9]で示される親個体yiを設定する。
Figure 0006313517
ここで、iは親数μのうちの1つを示す。
次に、子データ生成部13aは、下記の[数10]で示される親個体の重心<y>を算出し、下記の[数11]で示される子個体xiを生成する。
Figure 0006313517
Figure 0006313517
ここで、εは任意の乱数を示し、λは生成子個体数を示す。初期情報は、乱数ε及び生成子個体数λを有する。生成子個体数λは、例えばNn×4で示される。
その後、子データ生成部13aは、上記の[数7]を参照して、子個体xiを変換して下記の[数12]に示す子データtiを生成する。
Figure 0006313517
ここで、fci、Qi、及びGiは、それぞれ子データtiの有する中心周波数、品質係数、及びゲイン値を示す。子データtiの数は、生成子個体数と同様のλで示される。
<評価データR(ω)を生成、評価:ステップS133>
次に、評価部13bは、伝達関数データE´(jω)と、子データtiとを含む評価データR(ω)を生成し、評価データR(ω)を評価し、生成及び評価を複数繰り返す(ステップS133)。評価部13bは、従来の遺伝的アルゴリズムを用いる場合と同様に、評価データR(ω)を任意の評価関数によって評価を繰り返し実施するほか、例えば図8に示すように、生成及び評価としてステップS133a〜ステップS133fを繰り返し実施してもよい。評価部13bは、子データtiの数λに基づき、評価を繰り返し実施する。以下、ステップS133a〜ステップS133fを実施した場合について説明する。
<コントローラの伝達関数H(s)を生成:ステップS133a>
評価部13bは、下記の[数13]に示すコントローラの伝達関数H(s)を生成する(ステップS133a)。
Figure 0006313517
伝達関数H(s)は、子データtiをデジタルフィルタの係数として用いた場合における伝達関数を示す。なお、伝達関数H(s)は、子データti毎に別途生成される。
<一巡伝達関数L(s)を生成:ステップS133b>
次に、評価部13bは、下記の[数14]に示す一巡伝達関数L(s)を生成する(ステップS133b)。
Figure 0006313517
ここで、Gallは全体のゲイン値(dB)を示す。全体のゲイン値Gallは、予め初期値が初期情報として設定され、例えば−80dBである。全体のゲイン値Gallは、後述する各評価データR(ω)の判別に応じて更新されたあと、図3(c)に示した乗算部GAの係数として出力される。なお、全体のゲイン値Gallは、伝達関数H(s)毎に初期値が設定される。
<評価データR(ω)を生成:ステップS133c>
次に、評価部13bは、下記の[数15]に示す評価データR(ω)を生成する(ステップS133c)。
Figure 0006313517
評価データR(ω)は、子データtiをデジタルフィルタの係数として用いた場合における抑制量に対応する。なお、評価データR(ω)は、一巡伝達関数L(s)毎に生成される。
<評価データR(ω)を判別:ステップS133d>
次に、評価部13bは、下記の[数16]を予め設定された条件として、評価データR(ω)及び評価データR(ω)に含まれる一巡伝達関数L(s)を判別する(ステップS133d)。
Figure 0006313517
ここで、fd1は判別の基準となる第1周波数(Hz)を示し、plоwは第1周波数fd1以下の上限値(dB)を示し、pupは第1周波数fd1以上の上限値(dB)を示す。初期情報は、第1周波数fd1、及び各上限値plоw、pupを有する。
評価部13bは、評価データR(ω)が上記条件を満たすか否かを判別し、満たす場合には評価データR(ω)に含まれる全体のゲイン値Gallを更新する(ステップS133e)。評価部13bは、例えば全体のゲイン値Gallに1を加えた値を全体のゲイン値Gallとして更新し、再度ステップS133bを実行する。これに対し、評価部13bは、評価データR(ω)が上記条件を満たさない場合には、評価データR(ω)の評価を実行する(ステップS133f)。
評価部13bが評価データR(ω)を判別することで、評価データR(ω)毎に最適化された全体のゲイン値Gallを設定することができる。このため、遺伝的アルゴリズムにより生成された子データti毎に、最適な全体のゲイン値Gallを設定することができる。これにより、決定されたデジタルフィルタの係数を用いる際、元の信号の位相と、負帰還制御された信号の位相とが、一致して正帰還となる信号を抑制することができ、意図しない信号の増幅を抑制することが可能となる。
特に、負帰還制御装置5として補聴器が用いられる場合、こもり音抑制機能における正帰還の増幅を制御でき、音圧が増加することを抑制できる。例えば第1周波数fd1を300Hzとし、上限値plоwを5dBとし、上限値pupを5dBとした場合において決定されたデジタルフィルタの抑制量を、図10(a)に示す。図10(a)に示すように、抑制量全体の振幅を、破線(5dB)以下に抑制することができる。
評価部13bは、例えば上記の[数16]及び下記の[数17]を予め設定された条件として、評価データR(ω)を判別してもよい。
Figure 0006313517
ここで、fd2は判別の基準となる第2周波数(Hz)を示し、nlоwは第2周波数fd2以下の下限値(dB)を示す。
上記の[数17]を条件として評価データR(ω)を判別することで、負帰還制御が不要な周波数帯域を任意に設定することができる。
特に、負帰還制御装置5として補聴器が用いられる場合、第2周波数fd2以下の下限値nlоwを設定することで、電池の消耗を抑制することができる。例えば第2周波数fd2を10Hzとし、下限値nlоwを−5dBとした場合において決定されたデジタルフィルタの抑制量を、図10(b)に示す。図10(b)に示すように、10Hz以下における抑制量の振幅を、破線(−5dB)以上に抑制することができる。
<評価データR(fi)を評価:ステップS133f>
次に、評価部13bは、下記の[数18]に示される評価関数Eを参照して、評価データR(fi)を評価する(ステップS133f)。
Figure 0006313517
ここで、Rtg(fi)は目標値(dB)を示し、C1は初期情報の有する第1重み係数を示し、C2は初期情報の有する第2重み係数を示し、fiは初期情報の有する評価周波数(Hz)を示し、kは任意の数を示す。
初期情報は、目標値Rtg(fi)、第1重み係数C1、第2重み係数C2、評価周波数fi、及び任意の数kを有する。上記の[数18]に示す各重み係数C1、C2を設定することで、目標とする抑制量に収束し易い評価結果を示すことができる。
特に、負帰還制御装置5として補聴器が用いられる場合、例えば第1重み係数C1を0.1とし、第2重み係数C2を100とする。また、評価周波数fiの数kを5とし、第1評価周波数f1を100Hzとし、第2評価周波数f2を140Hzとし、第3評価周波数f3を200Hzとし、第4評価周波数f4を300Hzとし、第5評価周波数f5を400Hzとすることで、補聴器に適した抑制量に収束し易い評価結果を示すことができる。
<複数の子データtiを一部の参照データとして更新:ステップS134>
上述したステップS133における生成及び評価の繰り返し(子個体xiのループ)を実行した後、更新部13cは、ステップS133fにおける評価の結果に基づき、複数の子データtiのうち一部の子データtiを選択し、ステップS131において選択された一部の参照データとして更新する(ステップS134)。更新部13cは、例えば評価の結果における上位μ個の評価データR(ω)に対応する子データtiを選択し、μ個の選択された参照データとして更新する。このとき、更新部13cは、例えば選択された一部の子データtiと、選択された一部の子データtiに対応する全体のゲイン値Gallとを、選択された一部の参照データとして更新又は追加してもよい。
<第1データを選択し、デジタルフィルタの係数を出力:ステップS140>
上述したステップS130における選択及び更新の繰り返し(世代のループ)を実行した後、出力部14は、母集団から第1参照データを選択し、第1参照データに基づき複数のデジタルフィルタの係数を出力する(ステップS140)。出力部14は、目標値Rtg(fi)に最も近い係数を有する参照データを選択する。
出力部14は、例えば上記の[数18]に示される評価関数Eを参照して、母集団の参照データを評価してもよい。このとき、出力部14は、例えば各参照データに基づき上記の[数15]に示す評価データR(ω)を生成して評価してもよい。
これにより、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の情報処理の手順が終了する。なお、上述した初期情報は、管理者や作業者等により、予め入力部分108等を介して情報DB16に記憶させるほか、例えば初期情報のデータベースを予め記憶部104に構築し、必要に応じて情報DB16から取出してもよい。
本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、評価部13bは、遺伝的アルゴリズムを用いて、伝達関数データE´(jω)と、子データtiとを含む評価データR(ω)を評価する。また、伝達関数データE´(jω)は、デジタルフィルタを用いる環境の伝達関数E(s)に基づいて取得される。このため、評価部13bは、デジタルフィルタを用いる環境の違いを考慮した評価を実施できる。これにより、複数のデジタルフィルタの係数を容易に決定し、抑制量の最適化を短時間で実現することが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、複数の評価データR(ω)は、全体のゲイン値Gallを含み、評価部13bは、評価データR(ω)が条件を満たす場合には全体のゲイン値Gallを更新する。すなわち、遺伝的アルゴリズムにより生成された子データti毎に最適な全体のゲイン値Gallを設定することができる。このため、全体のゲイン値Gallをデジタルフィルタの係数として用いることで、抑制量全体の調整を行うことができ、負帰還制御の精度向上を図ることが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、評価部13bは、上記の[数15]で示す評価データR(ω)を生成する。このとき、評価データR(ω)は、子データtiの中心周波数fci、品質係数Qi、及びゲイン値Gi、並びに全体のゲイン値Gallを有しており、各値を係数とした複数のデジタルフィルタの抑制量に対応する。このため、評価部13bでは、実際の抑制量に基づいた評価を実施することができる。これにより、複数のデジタルフィルタの係数を高精度に決定することが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、評価部13bは、上記の[数16]を条件として評価データR(ω)を判別し、判別の結果に基づき評価データR(ω)を更新又は評価する。上記の[数16]は、第1周波数fd1以下の上限値plоw及び第1周波数fd1以上の上限値pupに対して評価データR(ω)の値を比較する式を含む。このため、各評価データR(ω)(抑制量)における正帰還の上限値を任意に設定することができる。これにより、決定されたデジタルフィルタの係数を用いたときに、意図しない信号の増幅を抑制することが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、評価部13bは、上記の[数16]及び上記の[数17]を条件として評価データR(ω)を判別し、判別の結果に基づき評価データR(ω)を更新又は評価する。上記の[数17]は、第2周波数fd2以下の下限値nlоwに対して評価データR(ω)の値を比較する式である。このため、デジタルフィルタを用いたときに、負帰還制御が不要な周波数帯域を任意に設定することができる。これにより、電力の消費を抑制することが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、評価部13bは、上記の[数18]で示される評価関数Eを参照して、評価データR(ω)を評価する。上記の[数18]は、複数の評価周波数fiにおける目標値Rtg(fi)と、評価データR(ω)との差を一義的な値で示すことができる。このため、評価の結果に基づき、複数の子データtiのうち一部の子データtiを容易に選択することができ、子データtiを目標値Rtg(fi)まで容易に収束させることができる。これにより、抑制量の最適化に必要とする時間をさらに短くすることが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、取得部11は、上記の[数2]を参照して伝達関数E(s)に基づく伝達関数データE´(jω)を取得する。上記の[数2]は、補正周波数以下の伝達関数E(s)において、振幅特性を平坦とし、位相特性を回転させる式である。このため、伝達関数E(s)の変化を考慮したフィルタの係数を決定することができる。これにより、デジタルフィルタを用いる環境における伝達関数E(s)が変化した場合においても、抑制量の安定性を高めることが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、母集団生成部12は、中心周波数分布fcに基づいて中心周波数を設定する。すなわち、参照データの取り得る中心周波数の範囲を、予め制限することができる。このため、遺伝的アルゴリズムを用いたとき、更新される参照データを確実に収束させることができる。これにより、抑制量の最適化に必要とする時間をさらに短くすることが可能となる。
また、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1によれば、品質係数分布Q及びゲイン値分布Gに基づき、品質係数及びゲイン値を設定する。ここで、デジタルフィルタに含まれるピーキングフィルタの周波数特性は、ピークの周波数、品質係数、及びゲイン値により決まる。このため、品質係数及びゲイン値の上限を予め制限することで、極端なピークを作る係数を排除することができる。これにより、デジタルフィルタとしてピーキングフィルタを用いた場合における抑制量の安定性を高めることが可能となる。
次に、本実施形態におけるフィルタ係数算出装置1の実施例について説明する。本実施例では、負帰還制御装置5として補聴器を用いた。制御対象となる補聴器は、図2に示した伝達関数E(s)(耳内伝達関数)を有する。
本実施例において、評価周波数fiとして、第1評価周波数f1を100Hzとし、第2評価周波数f2を200Hzとし、第3評価周波数f3を300Hzとし、第4評価周波数f4を400Hzとした。目標値Rtg(fi)として、第1評価周波数f1において20dBとし、第2評価周波数f2において20dBとし、第3評価周波数f3において17dBとし、第4評価周波数f4において15dBとした。
また、本実施例において、補聴器には8つのバイクワッドフィルタFを直列に接続する構成とした。使用する8つのバイクワッドフィルタFは、ピーキングフィルタを5つ、ローシェルフフィルタを2つ、ハイパスフィルタを1つとした。また、正帰還の増幅を抑制する各上限値plоw、pupを5dBとした。その他初期条件の値は、上記に一例として示した値を適宜使用した。
上記初期情報の設定により、フィルタ係数算出装置1を実施した結果を、図11〜図14に示す。
図11〜図13は、異なる世代数Ngenの最後に更新された参照データに基づく抑制量を示す。図11〜図13には25種類の周波数特性が示されており、更新された参照データの数に対応する。また、目標値Rtg(fi)を太線で示す。
図11(a)は世代数Ngenが1の結果を示し、図11(b)は世代数Ngenが100の結果を示し、図12(a)は世代数Ngenが300の結果を示し、図12(b)は世代数Ngenが500の結果を示し、図13(a)は世代数Ngenが1000の結果を示し、図13(b)は世代数Ngenが10000の結果を示す。
世代数Ngenが1及び100の結果では、図11に示すように、各周波数特性の差異が目立つ結果を示しており、また、各周波数特性が目標値Rtg(fi)と乖離している結果を示す。これに対し、世代数Ngenが300、500、及びの結果では、図12、及び図13(a)に示すように、各周波数特性の差異が小さくなる結果を示し、目標値Rtg(fi)に隣接する結果を示した。さらに、世代数Ngenが10000の結果では、図13(b)に示すように、各周波数特性がほぼ等しくなる結果を示し、目標値Rtg(fi)とほぼ等しい値となる結果を示した。
また、図13(b)に示した世代数Ngenが10000のときにおける参照データの中で、最も目標値Rtg(fi)に近い抑制量を取る参照データ(第1参照データ)を選択し、補聴器のデジタルフィルタの係数を決定した結果は、図4及び図5に示した形状に該当し、非常に複雑な周波数特性が得られることを確認した。
また、第1参照データにおけるナイキスト線図を導出した結果は、図14に示した形状に該当する。図14(a)はナイキスト線図を示し、図14(b)は図14(a)の(0,−1j)付近の拡大図を示す。ここで、図14において、第1参照データにおけるナイキスト線図は、破線の範囲外にプロットされている。破線の円及び直線で囲まれた範囲(斜線部分)では、正帰還が5dB以上であることを示す。このため、正帰還が5dB以下であることを確認した。
(補聴器100の構成)
次に、実施形態における補聴器100の構成の例について説明する。図15は、補聴器100の構成の一例を示す模式図である。本実施形態における補聴器100は、上述したフィルタ係数算出装置1をフィルタ係数計算部として備える。
図15に示すように、補聴器100は、外部マイクロホン154と、補聴処理部155と、外耳道用マイクロホン152と、レシーバ151と、コントローラ153と、を備える。
外部マイクロホン154は、外部空間から伝わる音を電気信号に変換する。補聴処理部155は、使用者に応じたゲイン調整等の補聴処理を行う。すなわち、補聴処理部155は、外部マイクロホン154により変換された電気信号を使用者に応じて補聴処理する。外耳道用マイクロホン152は、外耳道内150から伝わる音を電気信号に変換する。レシーバ151は、電気信号から変換した音を出力する。コントローラ153は、レシーバ151と外耳道用マイクロホン152との間に配置された複数のデジタルフィルタ、及び、複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出部、を有する。フィルタ係数計算部は、上述したフィルタ係数算出装置1と同様の構成であり、詳細な説明は省略する。
本実施形態における補聴器100によれば、上述したフィルタ係数算出装置1と同様に、評価部13bは、遺伝的アルゴリズムを用いて、伝達関数データE´(jω)と、子データtiとを含む評価データR(ω)を評価する。また、伝達関数データE´(jω)は、デジタルフィルタを用いる環境の伝達関数E(s)に基づいて取得される。このため、評価部13bは、デジタルフィルタを用いる環境の違いを考慮した評価を実施できる。これにより、複数のデジタルフィルタの係数を容易に決定し、抑制量の最適化を短時間で実現することが可能となる。
(フィルタ係数算出装置200の構成)
次に、他の実施形態におけるフィルタ係数算出装置200の構成の例について説明する。図16は、フィルタ係数算出装置200の構成の一例を示す模式図である。本実施形態におけるフィルタ係数算出装置200と、上述したフィルタ係数算出装置1との違いは、音以外の負帰還制御に係るデジタルフィルタの係数を決定するために用いられる点である。このため、上述した内容と同様の構成については、説明を省略する。
図16に示すように、フィルタ係数算出装置200は、発信部251に入力した信号及び受信部252から出力された信号を用いて伝達関数E(s)を算出する。フィルタ係数算出装置200は、算出された伝達関数E(s)に基づき、発信部251と受信部252との間に接続された負帰還制御部253の有する複数のデジタルフィルタの係数を決定する。このため、デジタルフィルタを用いた負帰還制御により、空間50における温度制御や、空間50の側面に伝達された振動制御等を実現することができる。
なお、フィルタ係数算出装置200は、負帰還制御部253に直接接続されるほか、例えば公衆通信網を介して負帰還制御部253と接続されてもよい。
本実施形態におけるフィルタ係数算出装置200によれば、上述したフィルタ係数算出装置1と同様に、評価部13bは、遺伝的アルゴリズムを用いて、伝達関数データE´(jω)と、子データtiとを含む評価データR(ω)を評価する。また、伝達関数データE´(jω)は、デジタルフィルタを用いる環境の伝達関数E(s)に基づいて取得される。このため、評価部13bは、デジタルフィルタを用いる環境の違いを考慮した評価を実施できる。これにより、複数のデジタルフィルタの係数を容易に決定し、抑制量の最適化を短時間で実現することが可能となる。
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1、200 :フィルタ係数算出装置
10 :筐体
11 :取得部
12 :母集団生成部
13 :最適化部
13a :子データ生成部
13b :評価部
13c :更新部
14 :出力部
15 :入力部
16 :情報DB
5 :負帰還制御装置
50 :空間
51 :レシーバ
52 :マイクロホン
53 :制御部
54 :外部入力
55、56 :演算部
100 :補聴器
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :記憶部
105〜107:I/F
108 :入力部分
109 :出力部分
110 :内部バス
151 :レシーバ
152 :外耳道用マイクロホン
153 :コントローラ
154 :外部マイクロホン
155 :補聴処理部
251 :発信部
252 :受信部
253 :負帰還制御部
C1 :第1重み係数
C2 :第2重み係数
F1〜FNb :バイクワッドフィルタ
FA1、FA2:乗算部
FC1〜FC4:演算部
GA :乗算部
-1 :遅延部

Claims (11)

  1. レシーバに入力した信号及びマイクロホンから出力された信号を用いて算出された伝達関数に基づき、前記レシーバと前記マイクロホンとの間に接続された負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出装置であって、
    前記伝達関数に基づく伝達関数データを取得する取得部と、
    予め取得された初期情報に基づき設定された複数の参照データを含む母集団を生成する母集団生成部と、
    遺伝的アルゴリズムを用いて、前記母集団のうち一部の前記参照データを選択し、前記選択された一部の前記参照データを更新し、前記選択及び前記更新を複数繰り返す最適化部と、
    前記母集団から第1参照データを選択し、前記第1参照データに基づき前記複数のデジタルフィルタの係数を出力する出力部と、
    を備え、
    前記最適化部は、
    前記選択された一部の前記参照データに基づき、複数の子データを生成する子データ生成部と、
    前記伝達関数データと、前記子データとを含む評価データを生成し、前記評価データを評価し、前記生成及び前記評価を繰り返す評価部と、
    前記評価の結果に基づき、前記複数の子データのうち一部の前記子データを選択し、前記選択された一部の前記参照データとして前記更新する更新部と、
    を有すること
    を特徴とするフィルタ係数算出装置。
  2. 前記評価データは、全体のゲイン値を含み、
    前記評価部は、
    前記評価データが、予め設定された条件を満たす場合には前記全体のゲイン値を更新し、
    前記条件を満たさない場合には前記評価データを前記評価し、
    前記更新部は、
    前記選択された一部の前記子データと、
    前記選択された一部の前記子データに対応する前記全体のゲイン値とを、
    前記選択された一部の前記参照データとして前記更新し、
    前記出力された前記複数のデジタルフィルタの係数は、前記第1参照データに対応する前記全体のゲイン値を有すること
    を特徴とする請求項1記載のフィルタ係数算出装置。
  3. 前記参照データ及び前記子データは、中心周波数と、品質係数と、ゲイン値とを有し、
    前記評価部は、下記の[数15]に示す前記評価データ(R(ω))を前記生成すること
    を特徴とする請求項2記載のフィルタ係数算出装置。
    Figure 0006313517
    ここで、L(s)は一巡伝達関数として下記の[数14]で示される。
    Figure 0006313517
    ここで、Gallは前記全体のゲイン値を示し、E′(s)は前記伝達関数データを示し、H(s)はコントローラの伝達関数として下記の[数13]で示される。
    Figure 0006313517
    ここで、fcik、Qik、及びGikは、それぞれ前記評価データに対応する前記子データの有する前記中心周波数、前記品質係数、及び前記ゲイン値を示す。
  4. 前記評価部は、下記の[数16]を前記条件として前記評価データを判別し、前記判別の結果に基づき前記評価データを前記更新又は前記評価すること
    を特徴とする請求項3記載のフィルタ係数算出装置。
    Figure 0006313517
    ここで、fd1は前記条件に対応する第1周波数を示し、plоwは前記第1周波数以下の上限値を示し、pupは前記第1周波数以上の上限値を示す。
  5. 前記評価部は、前記[数16]及び下記の[数17]を前記条件として前記評価データを前記判別し、前記判別の結果に基づき結果前記評価データを前記更新又は前記評価すること
    を特徴とする請求項4記載のフィルタ係数算出装置。
    Figure 0006313517
    ここで、fd2は前記条件に対応する第2周波数を示し、nlоwは前記第2周波数以下の下限値を示す。
  6. 前記評価部は、下記の[数18]で示される評価関数(E)を参照して、前記評価データを前記評価すること
    を特徴とする請求項3〜5の何れか1項記載のフィルタ係数算出装置。
    Figure 0006313517
    ここで、fiは評価周波数を示し、Rtg(fi)は前記評価周波数における目標値を示し、C1は第1重み係数を示し、C2は第2重み係数を示す。
  7. 前記取得部は、下記の[数2]を参照して前記伝達関数に基づく前記伝達関数データ(E′(jω))を取得すること
    を特徴とする請求項3〜6の何れか1項記載のフィルタ係数算出装置。
    Figure 0006313517
    ここで、E(jω)は前記伝達関数を示し、flは補正対象となる補正周波数を示し、βは位相の勾配を示す。
  8. 前記母集団生成部は、
    前記初期情報の有する下記の[数3]で示される中心周波数分布(fc)に基づき前記中心周波数を設定すること
    を特徴とする請求項3〜7の何れか1項記載のフィルタ係数算出装置。
    Figure 0006313517
    ここで、εiniは乱数を示し、fcupは上限周波数を示す。
  9. 前記母集団生成部は、
    前記初期情報の有する下記の[数4]で示される品質係数分布(Q)に基づき前記品質係数を設定し、
    前記初期情報の有する下記の[数5]で示されるゲイン値分布(G)に基づき前記ゲイン値を設定すること
    を特徴とする請求項3〜8の何れか1項記載のフィルタ係数算出装置。
    Figure 0006313517
    Figure 0006313517
    ここで、Qupは上限品質係数を示し、Gupは上限ゲイン値を示し、εiniは乱数を示す。
  10. 発信部に入力した信号及び受信部から出力された信号を用いて算出された伝達関数に基づき、前記発信部と前記受信部との間に接続された負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出装置であって、
    前記伝達関数に基づく伝達関数データを取得する取得部と、
    予め取得された初期情報に基づき設定された複数の参照データを含む母集団を生成する母集団生成部と、
    遺伝的アルゴリズムを用いて、前記母集団のうち一部の前記参照データを選択し、前記選択された一部の前記参照データを更新し、前記選択及び前記更新を複数繰り返す最適化部と、
    前記母集団から第1参照データを選択し、前記第1参照データに基づき前記複数のデジタルフィルタの係数を出力する出力部と、
    を備え、
    前記最適化部は、
    前記選択された一部の前記参照データに基づき、複数の子データを生成する子データ生成部と、
    前記伝達関数データと、前記子データとを含む評価データを生成し、前記評価データを評価し、前記生成及び前記評価を繰り返す評価部と、
    前記評価の結果に基づき、前記複数の子データのうち一部の前記子データを選択し、前記選択された一部の前記参照データとして前記更新する更新部と、
    を有すること
    を特徴とするフィルタ係数算出装置。
  11. 外部空間から伝わる音を電気信号に変換する外部マイクロホンと、
    前記外部マイクロホンにより変換された前記電気信号を使用者に応じて補聴処理する補聴処理部と、
    外耳道内から伝わる音を電気信号に変換する外耳道用マイクロホンと、
    電気信号から変換した音を出力するレシーバと、
    前記レシーバと前記外耳道用マイクロホンとの間に配置された負帰還制御に係る複数のデジタルフィルタ、及び、前記複数のデジタルフィルタの係数を決定するフィルタ係数算出部、を有するコントローラと、
    を備え、
    前記フィルタ係数算出部は、
    前記レシーバに入力した信号及び前記外耳道用マイクロホンから出力された信号を用いて算出された伝達関数と、前記伝達関数に基づく伝達関数データとを取得する取得部と、
    予め取得された初期情報に基づき設定された複数の参照データを含む母集団を生成する母集団生成部と、
    遺伝的アルゴリズムを用いて、前記母集団のうち一部の前記参照データを選択し、前記選択された一部の前記参照データを更新し、前記選択及び前記更新を複数繰り返す最適化部と、
    前記母集団から第1参照データを選択し、前記第1参照データに基づき前記複数のデジタルフィルタの係数を出力する出力部と、
    を有し、
    前記最適化部は、
    前記選択された一部の前記参照データに基づき、複数の子データを生成する子データ生成部と、
    前記伝達関数データと、前記子データとを含む評価データを生成し、前記評価データを評価し、前記生成及び前記評価を繰り返す評価部と、
    前記評価の結果に基づき、前記複数の子データのうち一部の前記子データを選択し、前記選択された一部の前記参照データとして前記更新する更新部と、
    を有すること
    を特徴とする補聴器。
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