JP6304539B2 - コンクリート被膜剤およびコンクリート構造 - Google Patents

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本発明は、コンクリート被膜剤およびコンクリート構造に関する。
従来、コンクリート構造物では、二酸化炭素がコンクリート内部に侵入すると、コンクリートの主成分であるアルカリ性のセメントに反応して中性化することにより内部の鉄筋等の鋼材が腐食したり、塩化物イオンがコンクリート内部に侵入する塩害により内部の鉄筋が腐食したりすることが知られている。
このような中性化や塩害化によって、一旦、コンクリートの劣化が進行した場合には、断面修復が必要となり、補修材を劣化したコンクリート内部に注入したり、含浸させる補修方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−285363号公報
しかしながら、中性化や塩害化によるコンクリート劣化の補修では、中性化深さ等の劣化の状況を把握する必要があり、手間と時間がかかるうえ、補修費用が増大するという問題があった。
しかも、コンクリートの修復が不十分な場合には、さらに再劣化が起きる可能性があり、その点で改善の余地があった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、コンクリートの中性化及び塩害化を防止することで、コンクリートの劣化を防ぎ、鉄筋の腐食を抑制することができるコンクリート被膜剤およびコンクリート構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート被膜剤では、コンクリートの中性化及び塩害化を防止するためのコンクリート被膜剤であって、水分散系ポリエステルを主成分とする材料であり、前記コンクリートの露出表面に0.15〜0.25mmの範囲の塗布厚で塗布されることを特徴としている。
また、本発明に係るコンクリート構造では、コンクリートの中性化及び塩害化が防止されるコンクリート構造であって、前記コンクリートの露出表面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリート被膜剤が0.15〜0.25mmの範囲の塗布厚で塗布されていることを特徴としている。
本発明では、コンクリートの露出表面に水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリート被膜剤を塗布することでその露出表面に膜が形成され、コンクリート表層部の透気係数を従来の被膜剤や被膜シートに比べて同等或いは小さくすることができ、コンクリートの保護効果を高めることができ、耐久性能の向上を図ることができる。
そのため、本発明では、コンクリート被膜剤で露出表面を被覆することで、コンクリート表面から気中の二酸化炭素がコンクリート内部に侵入するのを抑制することができ、コンクリートの中性化を遅らせることが可能となり、コンクリートの中性化によって内部の鉄筋が腐食するのを抑えることができる。また、塩化物イオンがコンクリート内部に侵入して内部の鉄筋が腐食する塩害を抑制することができる。
また、本発明では、コンクリート被膜剤を再塗布することで、容易に保護効果の期間を延ばすことが可能となる利点がある。
さらに、本発明では、コンクリート表層部の透気係数が小さくなるため、初期乾燥の防止効果を向上させることができ、優れた保湿養生を行うことができる。しかも、早期に脱型することが可能となり、例えばトンネルの覆工コンクリートのように脱型を早めて施工効率を向上させることができる。
本発明のコンクリート被膜剤およびコンクリート構造によれば、コンクリートの中性化及び塩害化を防止することで、コンクリートの露出表面から二酸化炭素や塩化物イオンの侵入を抑制することで、保護効果を高めることができ、コンクリートの劣化を防ぐとともに、鉄筋の腐食を抑制することができる。
本発明の実施の形態によるコンクリート構造の構成を示す断面図である。 試験例によるコンクリート表層部の透気効果を示す図であって、各試験体における透気係数を示す図である。 試験例によるコンクリート被膜剤の保護効果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態によるコンクリート被膜剤、およびコンクリート構造について、図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施の形態によるコンクリート構造1は、コンクリート3の中性化及び塩害化が防止される構造であって、コンクリート3の露出表面3aに、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリート被膜剤2が塗布された構成となっている。
コンクリート3は、鉄筋コンクリート製であり、露出表面3aの内側に所定の被り厚をもって鉄筋3bが配筋されている一般的なものである。ここで、本実施の形態では、コンクリート3において、鉄筋3bよりも露出表面3a側の部分(ほぼ図1に示す二点鎖線より露出表面3a側の領域)を表層部3Aという。なお、図1に示す二点鎖線は、説明上の線であり、この位置に制限されることはない。
コンクリート被膜剤2が塗布されるコンクリート3は、既設のコンクリートでもよいし、作製時又は作製直後のコンクリート、すなわち型枠を脱型した直後の養生中のコンクリートを対象としてもよい。なお、養生時にコンクリート被膜剤2を塗布することで、コンクリートの初期乾燥を防止する効果も得られる。
コンクリート被膜剤2は、塗布厚が0.15〜0.25mmの範囲であることが好ましく、例えば0.2mmの厚さでコンクリート3の露出表面3aに塗布されている。ここで、図1に示す紙面右向きの矢印は、塩化物イオン及び二酸化炭素を示している。
コンクリート被膜剤2は、上述したように水分散系ポリエステルを主成分としたコンクリート3の中性化及び塩害化の防止効果を有する材料であって、例えば、特許第3162477号公報(特許文献2)記載の、
「(イ)次式(特許文献2に示す段落12の化学式5)で表されるジオール成分(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を表し、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜7である。)、
(ロ)脂肪族ジオール、および(ハ)三価以上の多価アルコールよりなる群から選ばれる一種以上のアルコール成分と、
(ニ)二価のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、および
(ホ)三価以上の多価カルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルよりなる群から選ばれる一種以上の酸成分とを共縮重合して得られる酸価が3〜70KOHmg/gのポリエステル樹脂を、
ケトン系溶剤に溶解させ、中和剤を加えて該ポリエステル樹脂のカルボキシル基をイオン化し、次いで水を加えた後、ケトン系溶剤を留去して水系に転相したものである自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物」
を用いることができる。
この自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物の製造に用いられるポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル等の酸性分を原料モノマーとして製造するものであり、さらに詳しくは特許文献2の段落11〜22に記載されているので、ここでは説明を省略する。
また、コンクリート被膜剤2として、例えばニュートラック2011(NT−2011、花王社製、登録商標)が挙げられる。この水分散系ポリエステルを主成分とする材料のコンクリート被膜剤2は、水に分散したポリエステルで、内部可塑剤の導入によって弾性を有する膜を低温(例えば5〜40℃)で形成される高分子素材であり、pHが7〜9、粘度が30〜100mPa・s(25℃の条件)、平均粒径が90〜120nmの特性値を有している。
また、コンクリート被膜剤2は、好ましくは100〜250g/m、より好ましくは150〜200g/mの塗布量でコンクリート3の露出表面3aに対して付着させるのがよい。そして、例えばローラーや手押しポンプ噴霧器などを使用することで露出表面3aに対してコンクリート被膜剤2を良好に塗布することができる。
次に、上述したコンクリート被膜剤、およびコンクリート構造の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施の形態では、図1に示すように、コンクリート3の露出表面3aに水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリート被膜剤2を塗布することでその露出表面3aに膜が形成され、コンクリート表層部3Aの透気係数を従来の被膜剤や被膜シートに比べて同等或いは小さくすることができ、コンクリート3の保護効果を高めることができ、耐久性能の向上を図ることができる。
そのため、本実施の形態では、コンクリート被膜剤2で露出表面3aを被覆することで、コンクリート表面から気中の二酸化炭素がコンクリート内部に侵入するのを抑制することができ、コンクリート3の中性化を遅らせることが可能となり、コンクリート3の中性化によって内部の鉄筋3bが腐食するのを抑えることができる。また、塩化物イオンがコンクリート内部に侵入して内部の鉄筋3bが腐食する塩害を抑制することができる。
また、本実施の形態では、コンクリート被膜剤2を再塗布することで、容易に保護効果の期間を延ばすことが可能となる利点がある。
さらに、本実施の形態では、コンクリート表層部3Aの透気係数が小さくなるため、初期乾燥の防止効果を向上させることができ、優れた保湿養生を行うことができる。しかも、早期に脱型することが可能となり、例えばトンネルの覆工コンクリートのように脱型を早めて施工効率を向上させることができる。
上述のように本実施の形態によるコンクリート被膜剤、およびコンクリート構造では、コンクリート3の中性化及び塩害化を防止することで、コンクリート3の露出表面3aから二酸化炭素や塩化物イオンの侵入を抑制することで、保護効果を高めることができ、コンクリート3の劣化を防ぐとともに、鉄筋3bの腐食を抑制することができる。
次に、上述した実施の形態によるコンクリート被膜剤、およびコンクリート構造の保護効果を裏付けるための試験例について以下に説明する。
(試験例1)
図2に示すように、本試験例は、所定硬化期間の経過後に脱型したコンクリートに対して、上述した実施の形態による水分散系ポリエステルを主成分としたコンクリート被膜剤2(図1参照)を使用した実施例と、気泡緩衝材(被膜材)を使用した比較例1と、従来の異なる被膜剤を使用した比較例2〜6と、無養生の比較例とにおける表層部(図1の3Aに相当)の透気係数(×10−16)を測定し、実施例が有効であることの確認を行った。
試験方法は、実施例および比較例1〜6、無養生の比較例のそれぞれ毎に試験体を製作し、それぞれ材齢1日目で脱型し、コンクリートの露出表面に被膜剤及び被膜材を施し、無養生の場合にはコンクリートに処理を施していないものとし、その後、温度20℃で、相対湿度60%の環境条件において、材齢56日まで室内気中養生した。
本試験例による評価方法は、表面透気試験を行い、各試験体(実施例、比較例1〜6、無養生の比較例)において比較した。
表面透気試験では、図2に示すように、コンクリートの養生後の緻密性を評価するものであり、表面透気試験は、トレント法(「Strong effect of curing condition on air permeability of surface concrete,Concrete Plant International」pp72-76,Phan H.D.Quoc,T.Kishi,April 2009)により行った。
この結果、実施例のコンクリート被膜剤2の場合、透気係数が略0.8×10−16となり、比較例1の被膜材や比較例2の被膜剤とほぼ同等の効果を得ることができ、実施例のコンクリート被膜剤2が他の比較例3〜6よりもが小さく、二酸化炭素や塩化物イオンのコンクリート内部への侵入を抑える効果があることが確認された。
(試験例2)
次に、図3に示すように、試験例2では、上述したコンクリート被膜剤2のコンクリート3に対する保護効果を確認した。
具体的には、前述の試験例1に示す本実施の形態のコンクリート被膜剤2を使用した実施例(図3で塗布有り)と、無養生の比較例(図3で塗布無し)との場合で、コンクリート表面から中性化が進行している中性化深さ(mm)と、コンクリート表面から塩化物イオンが浸透している塩化物イオン浸透深さ(mm)とを、5年の暴露試験後に測定した。
図3に示す結果、中性化深さは、塗布無し(比較例)で5mmであるのに対して、塗布有り(実施例)では2mmとなり、半分以下に中性化を抑えることができることが確認できた。また、塩化物イオン浸透深さは、塗布無し(比較例)で13mmであるのに対して、塗布有り(実施例)では4mmとなり、1/3以下に塩害を抑えることができることが確認できた。
以上、本発明によるコンクリート被膜剤、およびコンクリート構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明のコンクリート被膜剤2を使用するコンクリートとして、内部に鉄筋3bを配置したコンクリート3を採用しているが、コンクリートの構成、すなわち鉄筋の数量、配置に限定されず、また鉄筋に限らず鉄骨等の鋼材が埋設されたコンクリートを適用対象とすることも可能である。
また、コンクリートの配合、脱型までの時間、コンクリート被膜剤2を塗布するタイミングや塗布量等は施工条件に応じて適宜、変更することができる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
1 コンクリート構造
2 コンクリート被膜剤
3 コンクリート
3A 表層部
3a 露出表面
3b 鉄筋

Claims (2)

  1. コンクリートの中性化及び塩害化を防止するためのコンクリート被膜剤であって、
    水分散系ポリエステルを主成分とする材料であり、前記コンクリートの露出表面に0.15〜0.25mmの範囲の塗布厚で塗布されることを特徴とするコンクリート被膜剤。
  2. コンクリートの中性化及び塩害化が防止されるコンクリート構造であって、
    前記コンクリートの露出表面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリート被膜剤が0.15〜0.25mmの範囲の塗布厚で塗布されていることを特徴とするコンクリート構造。
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