1.偏光子保護フィルム
以下に、条件Aを満たす偏光子保護フィルム(以下、「偏光子保護フィルムA」とも称する)に関して説明する。
偏光子保護フィルムAは、フィルム流れ方向に対して+45度方向の熱収縮率とフィルム流れ方向に対して−45度方向の熱収縮率との差(「斜め方向の熱収縮率差」と簡略化して呼ぶことがある)が0.4%以下であること(以下、この特性を「条件A」と呼ぶ場合がある)が好ましい。前記斜め方向の熱収縮率差は、好ましくは0.30%以下であり、より好ましくは0.20%以下である。熱収縮率差の値は小さいほど好ましいことから下限は0%である。フィルム流れ方向に対し+45度の方向と、フィルム流れ方向に対し−45度の方向は、互いに直交する。前記熱収縮率の差は、フィルム流れ方向に対して+45度方向の熱収縮率及びフィルム流れ方向に対して−45度方向の熱収縮率熱の大きい方の値から小さい方の値を除することによって求められる。
フィルム流れ方向に対して+45度方向の熱収縮率は1%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.6%以下である。下限は特にないが、0.001%程度とすることができる。ここで、「流れ方向」とは、フィルムの製膜工程における、フィルムの進行方向を意味する。
斜め方向の熱収縮率差を求める為のフィルムの熱収縮率は、フィルムを85℃で30分間、水中で加熱処理した時に求められる値である。より具体的には、加熱処理によるフィルムの流れ方向に対して+45°の収縮の程度を処理前の長さを基準(100%)として測定し、熱収縮率とする。同様にして、フィルムの流れ方向に対して−45°の熱収縮率も測定する。そしてフィルム流れ方向に対して+45°方向の熱収縮率とフィルム流れ方向に対して−45°方向の熱収縮率との差が求められる。
通常、液晶表示装置には、2枚の偏光板がクロスニコルの状態で配置されている。2枚の偏光板をクロスニコルの状態で配置すると、通常、光は2枚の偏光板を通過しない。しかし、偏光子保護フィルムの斜め方向の熱収縮率差によっては、光りが漏れることがある。そのメカニズムについては以下のように考えているが、本願発明はこの理論に限定されるわけではない。
偏光板を製造する際、通常、偏光子保護フィルムと偏光子とが接着剤を介して70℃〜120℃の範囲で10分〜60分ほど熱処理される。この際、偏光子保護フィルムの斜め方向の熱収縮率差が大きいと、熱処理の際に偏光子保護フィルムが斜めに反り、これに伴い偏光板自体も斜め方向に微小な反りが生じる。偏光板が斜め方向に反ることに伴い、偏光軸が僅かに斜め方向に歪むと考えられる。このように偏光軸が僅かに斜め方向に歪んだ偏光板は、もう一方の偏光板と完全なクロスニコルの関係で配置することができないため、僅かに光の漏れが生じてしまうと考えられる。また、上記のような熱処理時の偏光板の反りは、1つの偏光板を構成する偏光子保護フィルムとして特性が異なる2つのフィルム(例えば、PETフィルム及びTACフィルム)を用いた場合に顕著になると考えられる。
特許文献5には、MD方向及びTD方向のいずれの熱収縮率も5%以下であるポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムが開示されている。しかし、上述したメカニズムから明らかなように、MD方向の熱収縮率、及びTD方向の熱収縮率が小さくても、斜め方向の熱収縮率差が大きければ、偏光板の斜め方向の反りが生じ、前記光の漏れの問題を解消することはできない。
偏光子保護フィルムAに用いる樹脂としては任意の熱可塑性樹脂が用いられる。例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(例えば、シンジオタクチックポリスチレン)などを挙げることができる。これらの中でもポリエステルが好ましい。ポリエステルフィルムは、任意のポリエステル樹脂から得ることができる。ポリエステルフィルムを構成する好適なポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられ、より好ましくはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを挙げることができるが、これらは更に他の共重合成分を含んでも良い。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れており、延伸加工によって容易にリタデーションを制御することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートは固有複屈折が大きく、フィルムの厚みが薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られるので、最も好適な素材である。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールとを縮合させて得られる。ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分とジオール成分は、いずれも1種又は2種以上を用いることができる。
ポリエステル樹脂の製造に使用可能なジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等が挙げられる。
ポリエステル樹脂の製造に使用可能なジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
以下、虹斑抑制の観点から、好ましい偏光子保護フィルムAのリタデーション、Nz係数、面配向度について説明をする。
(リタデーション)
偏光子保護フィルムAは、特に限定されるものではないが、4000〜30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが4000nm以上であれば、液晶表示装置を斜め方向から観察したときに干渉色が抑えられ、良好な視認性を確保することができる。偏光子保護フィルムAの好ましいリタデーションは4500nm以上、次に好ましくは5000nm以上、より好ましくは6000nm以上、更に好ましくは8000nm以上、より更に好ましくは10000nm以上である。
偏光子保護フィルムAのリタデーションの上限は30000nmであることが好ましい。それ以上のリタデーションを有するフィルムを用いても更なる視認性の改善効果は実質的に得られず、リタデーションの上昇に伴ってフィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下する恐れがあるためである。
偏光子保護フィルムAのリタデーションの値は、公知の方法に従って、589nmの波長で2軸方向の屈折率と厚みを測定して求められる。また、例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社)等の市販の自動複屈折測定装置を用いて589nmの波長で測定することができる。
(Nz係数)
偏光子保護フィルムAは、上述のリタデーションの範囲であることに加えて、|ny−nz|/|ny−nx|で表されるNz係数が1.7以下であることが好ましい。Nz係数は次のようにして求めることができる。分子配向計(例えば、王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)を用いてフィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向とこれに直交する方向の二軸の屈折率(ny、nx、但しny>nx)、及び厚み方向の屈折率(nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−4T、測定波長589nm)によって求める。こうして求めたnx、ny、nzを、|ny−nz|/|ny−nx|で表される式に代入して、Nz係数を求めることができる。
偏光子保護フィルムAのリタデーションが4000nm〜30000nmであっても、Nz係数が1.7を超えると、そのようなフィルムを一対の偏光板の両方に用いた場合(例えば、入射光側に配される偏光板の入射光側の偏光子保護フィルム及び前記出射光側に配される偏光板の出射光側の偏光子保護フィルムに用いた場合)に、液晶表示装置を斜め方向から観察した際に、角度によっては虹斑が生じ得る恐れがある。このような観点から、Nz係数はより好ましくは1.65以下、さらに好ましくは1.63以下である。Nz係数の下限値は、1.2である。これは、1.2未満のフィルムを得ることは製造技術的に難しいためである。また、フィルムの機械的強度を保つためには、Nz係数の下限値は1.3以上が好ましく、より好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.45以上である。
(面配向係数)
偏光子保護フィルムAのリタデーション値及びNz係数を上記の特定範囲に制御することに加え、(nx+ny)/2−nzで表される面配向度を特定値以下にすることにより、より確実に虹斑を解消することができる。ここで、nx、ny及びnzの値は、Nz係数と同様の方法で求められる。フィルムの面配向度は0.13以下が好ましく、より好ましくは0.125以下、さらの好ましくは0.12以下である。面配向度が0.13以下にすることで、液晶表示装置を斜め方向から観察した場合に角度によって観察される虹斑を完全に解消することができる。面配向度は0.08以上が好ましく、より好ましくは0.10以上である。面配向度が0.08未満では、フィルム厚みが変動し、リタデーションの値がフィルム面内で不均一になる場合がある。
(リタデーション比)
偏光子保護フィルムAは、そのリタデーション(Re)と厚み方向リタデーション(Rth)との比(Re/Rth)が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。上記リタデーションと厚み方向リタデーションの比(Re/Rth)が大きいほど、複屈折の作用は等方性を増し、観察角度による虹状の色斑の発生が生じ難くなるためである。完全な1軸性(1軸対称)フィルムでは上記リタデーションと厚み方向リタデーションの比(Re/Rth)は2となる。しかし、完全な1軸性(1軸対称)フィルムに近づくにつれ配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下する。
そこで、リタデーションと厚み方向のリタデーションの比(Re/Rth)の上限は、好ましくは1.2以下、より好ましくは1以下である。観察角度による虹状の色斑発生を完全に抑制するためには、上記リタデーションと厚み方向位相差の比(Re/Rth)が2である必要は無く、1.2以下で十分である。また、上記比率が1.0以下であっても、液晶表示装置に求められる視野角特性(左右180度、上下120度程度)を満足することは十分可能である。
(厚み斑)
観察角度による虹斑を抑制する観点から、偏光子保護フィルムAのリタデーションの変動を抑制することが好ましく、その為にはフィルムの厚み斑が小さいことが好ましい。フィルムの厚み斑は5%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4%以下であることがよりさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
(フィルム厚み)
偏光子保護フィルムAの厚みは、特に制限されないが、通常15〜300μmであり、好ましくは15〜200μmである。フィルム厚みが15μm未満では、フィルムの力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じる場合がある。特に好ましい厚みの下限は25μmである。一方、偏光子保護フィルムAの厚みの上限は、300μmを超えると偏光板の厚みが厚くなりすぎてしまい好ましくない。偏光子保護フィルムとしての実用性の観点から、厚みの上限は200μmが好ましい。特に好ましい厚みの上限は一般的なTACフィルムと同等程度の100μmである。
(光透過率)
偏光子保護フィルムAは、偏光子に含まれるヨウ素色素等の光学機能性色素の劣化を抑制する観点から、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、光学機能性色素の紫外線による変質を抑制することができる。光線透過率は、フィルムの平面に対して垂直方向に測定した値であり、分光光度計(例えば、日本分光株式会社製分光光度計V7100)を用いて測定することができる。
フィルムの波長380nmの透過率は、配合する紫外線吸収剤の種類、濃度、及びフィルムの厚みを適宜調節することで20%以下に制御することができる。紫外線吸収剤には、公知の紫外線吸収剤を適宜選択して使用することができる。具体的な紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、及び環状イミノエステル系等、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが本発明の規定する吸光度の範囲であれば特に限定されない。しかし、耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、より紫外線吸収効果を改善することができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びアクリロニトリル系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール等が挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
偏光子保護フィルムとして用いるフィルムに紫外線吸収剤を配合する場合、フィルムを3層以上の多層構造とし、フィルムの最外層以外の層(即ち、中間層)に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
(その他の成分等)
偏光子保護フィルムとして用いるフィルムには、紫外線吸収剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、各種の添加剤を含有させることも好ましい様態である。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。また、高い透明性を奏するためにはフィルムに実質的に粒子を含有しないことも好ましい。「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
(易接着層)
偏光子保護フィルムAとしてポリエステルフィルムを用いる場合は、偏光子との接着性を改良のために、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする易接着層を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは易接着層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。易接着層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、及びポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
易接着層は、上記塗布液を未延伸フィルム又は縦方向の1軸延伸フィルムの片面又は両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.05〜0.2g/m2に制御することが好ましい。塗布量が0.05g/m2未満であると、得られる偏光子との接着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.2g/m2を超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの両面に易接着層を設ける場合は、両面の易接着層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
易接着層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは、単独で易接着層に添加されてもよく、2種以上を組合せて添加することもできる。
塗布液は、公知の方法を用いて塗布することができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法等が挙げられる。これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
上記の粒子の平均粒径の測定は下記方法により行うことができる。粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
偏光子保護フィルムAには、偏光子との接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
(機能層)
偏光子保護フィルムAの偏光子が配置される面とは反対側の面に、写り込み防止やギラツキ抑制、キズ抑制等を目的として、種々の機能層、すなわちハードコート層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防止層、及び反射防止防眩層、帯電防止層からなる群より選択される1種以上の機能層を配向ポリエステル表面に設けることも好ましい様態である。種々の機能層を設けるに際して、偏光子保護フィルムはその表面に易接着層を有することが好ましい。その際、反射光による干渉を抑える観点から、易接着層の屈折率を、機能層の屈折率と偏光子保護フィルムの屈折率の相乗平均近傍になるように調整することが好ましい。易接着層の屈折率の調整は、公知の方法を採用することができ、例えば、バインダー樹脂に、チタンやジルコニウム、その他の金属種を含有させることで容易に調整することができる。
(配向ポリエステルフィルムの製造方法)
偏光子保護フィルムとして用いるフィルムは、一般的なフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステルフィルムの場合、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。偏光子保護フィルムは、一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムであっても良い。
偏光子保護フィルムとして用いるフィルムの流れ方向に対して45°の方向の熱収縮率と流れ方向に対して45°の方向の熱収縮率の差を小さくするためには、上述の方法で得られる一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムの製膜工程において、熱処理後に冷却する工程で生じる斜め方向の応力を緩和させることが好ましい。このため、熱処理工程後にリラックス率、温度を適正な範囲に調整してTD方向にリラックスさせることが好ましい。また、一度巻き取ったロールを、例えば80℃〜120℃で、10秒〜90分間、オフラインアニール処理する方法も有効である。
偏光子保護フィルムとして用いるフィルムの流れ方向に対して45°の方向の熱収縮率と流れ方向に対して45°の方向の熱収縮率の差を小さくするためには、上述の方法で得られる一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムの製膜工程において、熱処理後に冷却する工程で生じる斜め方向の応力を緩和させることが好ましい。
このため、熱処理工程後にリラックス率、温度を適正な範囲に調整してTD方向にリラックスさせることが好ましい。更にMD方向の張力も最適な範囲に調整することが好ましい。テンタークリップの速度と引き取りロールの速度差を適正な範囲に調整して、MD方向の張力をコントロールすることが好ましい。また、熱処理工程後にリラックス率、温度を適正な範囲に調製して、TD方向にリラックスをさせながら、MD方向にクリップ間隔を縮めることでリラックスさせることも好ましい。
冷却工程中にフィルムをテンタークリップから切断又は開放し、フィルムをMD方向及びTD方向に緩和させながら冷却する方法も好ましい。また、一度巻き取ったロールを、例えば80℃〜120℃で、10秒〜90分間、オフラインアニール処理する方法も有効である。
偏光子保護フィルムAは、縦延伸、及び/又は横延伸された後、熱処理工程を経て、両縁部を裁断してミルロールにし、必要に応じてスリットすることでスリットロールを得ることができる。このうち、ミルロールの両端部33%の範囲(フィルム右端から33%の領域、フィルム左端から33%の領域)は、特に斜め方向の熱収縮率差が高くなる傾向にあるため、例えば、オフラインアニール処理の場合であれば、アニール処理の温度、時間を十分確保して調節することが好ましい。
上述する特定のリタデーション及びNz係数を有するフィルムは、製膜時の条件(例えば、延伸倍率、延伸温度、フィルムの厚み等)を調節することにより得ることができる。例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、フィルムの厚みが厚いほど高いリタデーションが得られ易い。一方、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、フィルムの厚みが薄いほど、低いリタデーションが得られ易い。
具体的な製膜条件としては、例えば、縦延伸温度及び横延伸温度は、80〜145℃が好ましく、特に好ましくは90〜140℃である。縦延伸倍率は1.0〜3.5倍が好ましく、特に好ましくは1.0倍〜3.0倍である。また、横延伸倍率は2.5〜6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0〜5.5倍である。
リタデーションを上述する特定の範囲に制御するためには、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率を制御することが好ましい。縦横の延伸倍率の差が小さすぎるとリタデーション高くすることが難しくなり好ましくない。また、延伸温度を低く設定することもリタデーションを高くする上では好ましい。続く熱処理の温度は、100〜250℃が好ましく、特に好ましくは180〜245℃である。
Nz係数を上述の特定の値にするためには、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率を制御することが好ましく、一軸延伸フィルムとすることが好ましい。また、Nz係数を下げるためには、ポリマーの分子量を上げる、結晶性を下げるために共重合成分を添加することも好ましい。更に、フィルムのNz係数を特定の範囲に制御するためには、トータル延伸倍率、延伸温度を適宜設定することにより行うことが出来る。例えばトータル延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、低いNz係数を得ることが出来る。
面配向度を上述の特定値にするためは、トータル延伸倍率を制御することが好ましい。トータル延伸倍率が高すぎると、面配向度が高くなりすぎるため好ましくない。また延伸温度を制御することも面配向度を低くする上では好ましい。縦延伸倍率と横延伸倍率の差を大きくし、トータル延伸倍率を低く設定し、延伸温度を高く設定することで、Nz係数、面配向度を特定の値以下とすることが可能となる。
延伸温度及び延伸倍率はフィルムの厚み斑に大きな影響を与えることから、厚み斑の観点からも製膜条件の最適化を行うことが好ましい。特にリタデーションを高くするために縦延伸倍率を低くすると、縦厚み斑が悪くなることがある。縦厚み斑は延伸倍率のある特定の範囲で非常に悪くなる領域があることから、この範囲を外したところで製膜条件を設定することが望ましい。
フィルムへの紫外線吸収剤の配合は、公知の方法を組み合わせて実施できる。例えば、混練押出機を用いて、乾燥させた紫外線吸収剤とポリマー原料とをブレンドして予めマスターバッチを作製し、フィルム製膜時に所定の該マスターバッチとポリマー原料を混合する方法等によって配合することができる。
上記マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5〜30質量%の濃度にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度は樹脂の融点以上、290℃以下の温度で1〜15分間で押し出すことが好ましい。290℃以上では紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。1分以下の押し出しでは紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤を添加しても良い。
3層以上の多層構造を有するフィルムの中間層への紫外線吸収剤の配合は、次のよう手法で実施することができる。外層用の樹脂ペレット単独、中間層用の紫外線吸収剤を含有したマスターバッチと樹脂ペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールド又は合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。
光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去するため、偏光子保護フィルムとして用いるフィルムの製造過程において、溶融押し出しの際に高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
次に、条件Bを満たす偏光子保護フィルム(以下、「偏光子保護フィルムB」と称する場合もある)に関して説明する。
VA型液晶セルの液晶分子は非通電時には液晶セル内で立った状態となっており、そのため屈折率楕円体は立ったラグビーボール状である。このため、この状態で斜め方向に出射された直線偏光は楕円偏光となり、角度により光漏れが生じたり、階調性の低下、色調のズレが生じる。これを効果的に低減させるためには、偏光子保護フィルムBは厚みを持った円盤状〜楕円板(ハンバーグ状)であることが好ましい。
上記の観点から、偏光子保護フィルムBは、面内リタデーション(Re)が0〜200nmであり、厚み方向のリタデーション(Rth)が70〜400nmであり、且つRe<Rth(以下、この特性を「条件B」と称する場合がある)を満たす。
偏光子保護フィルムBのReの下限は、好ましくは0nmであり、より好ましくは10nmであり、さらに好ましくは20nmである。偏光子保護フィルムBのReの上限は好ましくは200nmであり、より好ましくは100nmであり、さらに好ましくは70nmである。
偏光子保護フィルムBのRthの下限は、好ましくは70nmであり、より好ましくは100nmであり、さらに好ましくは120nmである。偏光子保護フィルムBのRthの上限は、好ましくは400nmであり、より好ましくは350nmであり、さらに好ましくは300nmであり、特に好ましくは250nmである。Re及びRthを上記範囲に制御することにより、角度による光漏れ、階調性の低下、又は色調のズレを効果的に低減することが出来る。
偏光子保護フィルムBのRthの値は、Reの値よりも大きいことが好ましい。RthとReとの差(Rth−Re)の下限は、好ましくは20nmであり、より好ましくは40nmであり、さらに好ましくは50nmである。上限は好ましくは300nmであり、より好ましくは250nmであり、さらに好ましくは200nmである。上記範囲にすることにより、角度による光漏れ、階調性の低下、色調のズレを効果的に低減することが出来る。
偏光子保護フィルムBの波長700nmの光に対する面内リタデーション(Re(700))と波長400nmの光に対する面内リタデーション(Re(400))の差(Re(700)−Re(400))の下限は、好ましくは−20nmであり、より好ましくは−15nmである。前記差(Re(700)−Re(400))の上限は好ましくは10nmであり、より好ましくは7nmである。
偏光子保護フィルムBの波長700nmの光に対する厚み方向リタデーション(Rth(700))と波長400nmの光に対する厚み方向リタデーション(Rth(400))の差(Rth(700)−Rth(400))の下限は好ましくは−50nmであり、より好ましくは−40nmである。前記差(Rth(700)−Rth(400))の上限は好ましくは20nmであり、より好ましくは15nmである。Re(700)−Re(400)、及びRth(700)−Rth(400)を上記範囲にすることにより、観察する角度による色調のズレを効果的に低減することが出来る。
偏光子保護フィルムBのRe及びRth(単位:nm)は、次の方法に従って求められる。まず、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、632.8nmのHe−Neレーザーで、下記の式(a)で示される平均屈折率(n)を求める。平均屈折率は、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism Coupler:Metricon製)を用いて、測定することができる。
式(a): n=(nTE×2+nTM)/3
[式中、nTEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、nTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
続いて、調湿されたフィルムを、25℃、相対湿度60%で、フィルム表面に対し垂直方向、及び、フィルム面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム面法線から±40°傾斜させた方向について632.8nmのHe−Neレーザーでレターデーション値を測定する。測定は、複屈折測定装置(ABR−10A:ユニオプト(株)製)を用いて行うことができる。さらに上記で求めた平均屈折率を用いて、nx、ny、nzをそれぞれ算出し、下記式(b)及び(c)でそれぞれ表される面内方向のレターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出する。
式(b): Re=(nx−ny)×d
式(c): Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸(y)方向の屈折率であり、nzはフィルムの膜厚方向(フィルム面法線方向)の屈折率であり、dはフィルム膜厚(nm)である。遅相軸はフィルム面内で屈折率が最大となる方向であり、進相軸はフィルム面内で屈折率が最小となる方向である。]
Re(λ)及びRth(λ)(単位;nm)は、各々、波長λ(単位;nm)における面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)及びRth(λ)は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、サンプルフィルム表面に対し垂直方向、及び、フィルム面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム面法線から±40°傾斜させた方向について、Xe光源を用いて前記方法に基づき波長λにおけるレターデーション値を測定し、算出される。測定は、分光エリプソメーター(M−150;日本分光(株)製)を用いて行うことができる。
偏光子保護フィルムBの厚みの下限は好ましくは10μmであり、より好ましくは20μmであり、さらに好ましくは30μmである。上記未満であると強度が不足し、貼り合わせ時等の取扱い性が低下することがある。フィルム厚みの上限は好ましくは200μmであり、より好ましくは170μmであり、さらに好ましくは150μmであり、特に好ましくは100μmであり、最も好ましくは70μmである。上記を越えると表示装置が厚くなるとなることがある。
偏光子保護フィルムBは様々な手法で得ることができる。代表的な方法を下記に示す。
(1)複屈折性の樹脂(配向により複屈折が生じる)又は樹脂にリタデーション制御剤(棒状芳香族化合物、芳香族基置換環状化合物など)を添加したものを少なくとも1軸、好ましくは2軸に延伸する方法
(2)透明支持体フィルムに液晶化合物など複屈折化合物を塗布して光学異方性層を設ける方法
(3)異なるリタデーション特性を持つフィルムを積層する方法
上記の方法を併用することも出来る。
複屈折性の樹脂又は樹脂にリタデーション制御剤を添加したものを、少なくとも1軸、好ましくは2軸に延伸する方法に関して説明する。
複屈折性の樹脂としてはセルロースアシレート、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ノルボルネンなどの脂環族ポリオレフィン(COP)、及びアクリルが好ましく、セルロースアシレート、及びCOPがより好ましい。
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートの中では、アセチルセルロースがさらに好ましく、アセチル基とアセチル基以外のアシル基で置換されたものが特に好ましい。
アセチル基以外のアシル基としては炭素数の3以上のアシル基が好ましく、プロピオニル基、ブチリル基、及び芳香族アシル基がより好ましい。異なるアシル基及び/又はアシル置換度を有する樹脂のブレンド体でも良い。
芳香族アシル基としては一般式(I)で示される基が好ましい。
ここで、Xは1価の置換基であり、例えば、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルアミド基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、シアノ基、及びアセチル基、アセトアミド基等が挙げられる。
nは置換基の数であり、例えば、0 〜 5 の整数であり、好ましくは1 〜 5 であり、より好ましくは1 〜 4 であり、更に好ましくは1 〜 3であり、特に好ましくは1又は2である。
アセチル基の置換度の下限は好ましくは0.5であり、より好ましくは1であり、さらに好ましくは1.5である。アセチル基置換度の上限は好ましくは2.4であり、より好ましくは2.3であり、さらに好ましくは2.2である。
炭素数3以上のアシル基の置換度の下限は好ましくは0.3であり、より好ましくは0.4であり、さらに好ましくは0.5である。炭素数3以上のアシル基の上限は好ましくは2.8であり、より好ましくは2であり、さらに好ましくは1.5である。
芳香族のアシル基の置換度の下限は好ましくは0.3であり、より好ましくは0.4であり、さらに好ましくは0.5である。芳香族のアシル基の置換度の上限は好ましくは1.5であり、より好ましくは1.5であり、さらに好ましくは1.2である。
全アシル基の置換度の下限は好ましくは2.3であり、より好ましくは2.4であり、さらに好ましくは2.5である。上記未満であると吸湿性が高くなることがある。全アシル基の置換度の上限は好ましくは2.9であり、より好ましくは2.8であり、さらに好ましくは2.7である。上記範囲を超えてアシル化することはアシル化工程に時間を要する場合がある。
一般的に、プロピニル基、及びブチリル基などの炭素数3以上のアシル基を導入すると、嵩高さのため、セルロース鎖の配向によるリタデーションの影響が小さくなる。一方、芳香族アシル基は芳香族環の電子の影響により、配向するとリタデーションを上げる効果もあり、これら効果は種類や置換位置によって異なる。アセチル基の置換度、及び炭素数の3以上のアシル基の置換を上記範囲とすることで、以下に述べる延伸によるリタデーション制御が行いやすくなる。さらには、吸湿性を制御することが出来る。なお、アシル基の置換度はASTM D817の方法により算出できる。
セルロースアシレートのスチレン換算の数平均分子量の下限は、好ましくは70000であり、より好ましくは75000であり、さらに好ましくは78000である。上記未満であるとフィルム強度が低下することがあり、積層などの加工工程で破断したりシワになったりする場合がある。セルロースアシレートの数平均分子量の上限は好ましくは230000であり、より好ましくは200000であり、さらに好ましくは180000である。上記を越えると溶液粘度が高く製膜性が悪くなることがある。
(リタデーション制御剤)
リタデーション調整剤としては線状芳香族化合物、及び芳香族基置換環状化合物が好ましく、両者を添加することも好ましい実施形態である。
線状芳香族化合物は、芳香族環が2個以上結合した化合物である。結合としては直接共有結合したもの、及び官能基で結合したもののいずれであっても良い。結合としては、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミン結合が挙げられ、エステル結合が好ましく、具体的には下記の式(II)で示される構造式の化合物が好ましい。
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R9及びR10は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R1、R2、R3、R4及びR5のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
芳香族置換環状化合物としては下記の式(III)で示される化合物が挙げられる。
(式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−又は−S−をあらわし、;X2は、単結合、−NR5−、−O−又は−S−を表し、;X3は、単結合、−NR6−、−O−又は−S−を表し、;R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基をあらわし;そして、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基をあらわす。)
ディスコティック液晶化合物も芳香族置換環状化合物の好ましい例として挙げられる。ディスコティック液晶化合物としては、ベンゼン誘導体、トルキセン誘導体、シクロヘキサン誘導体、アザクラウン系、フェニルアセチレン系マクロサイクル等が挙げられ、下記の式(IV) で表されるトリフェニレン環を有する化合物が好ましい。
式中、R1〜R6は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル基、又は−O−Xで示される基(ここで、Xは、アルキル基、アシル基、アルコキシベンジル基、エポキシ変性アルコキシベンジル基、アクリロイルオキシ変性アルコキシベンジル基、又はアクリロイルオキシ変性アルキルである)である。
リタデーション調整剤の添加量の下限は、好ましくは0.01質量部(対樹脂100質量部)であり、より好ましくは0.05質量部であり、さらに好ましくは0.2質量部である。上記未満であると効果が得られ難いことがある。リタデーション調整剤の添加量の上限は、好ましくは20質量部であり、より好ましくは15質量部であり、さらに好ましくは10質量部である。上記を越えるとリタデーションを制御しにくくなったり、ブリードアウト等により径時的に特性が変化したりすることがある。
セルロースアシレート樹脂には、紫外線吸収剤を添加ことが好ましい。紫外線吸収剤を用いることで、リタデーションの逆波長分散性を大きくすることができ、波長分散性を調整することが出来る。紫外線吸収剤としては室温(25℃)で液状であるものが好ましい。紫外線吸収剤はオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができ、中でもベンゾトリアゾール系が好ましい。市販品としてはチヌビン(TINUVIN)109、171、326、328(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株) 製)が挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量の下限は、好ましくは0.01質量部(対樹脂100質量部)であり、より好ましくは0.1質量部であり、さらに好ましくは0.2質量部であり、特に好ましくは0.3質量部である。上記未満であると効果が得られにくいとなることがある。紫外線吸収剤の添加量の上限は好ましくは30質量部であり、より好ましくは20質量部であり、更に好ましくは15質量部であり、特に好ましくは10質量部である。上記を越えるとブリードアウト等により、径時的に特性が変化することがある。
可塑剤としてリン酸エステル、又はカルボン酸エステルをセルロースアシレート樹脂に添加することも好ましい。可塑剤の添加量の下限は好ましくは0.1質量部(対樹脂100質量部)であり、より好ましくは1質量部であり、さらに好ましくは2質量部であり、特に好ましくは3質量部である。上記未満であると効果が得られにくいことがある。可塑剤の添加量の上限は、好ましくは30質量部であり、より好ましくは25質量部であり、さらに好ましくは20質量部であり、特に好ましくは15質量部である。上記を越えるとブリードアウト等により、径時的に特性が変化することがある。
セルロースアシレート樹脂には、可塑剤、滑材、熱安定剤、及び酸化防止剤など各種添加剤を添加することが出来る。
セルロースアシレート樹脂は、溶剤に溶解させたドープをドラム又はベルト状に展開し、溶剤を除去することでシート状にし、このシートを少なくとも1方向、好ましくは2方向に延伸することで所望のリタデーション特性を有するように制御することができる。
溶剤としては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、及び2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
延伸時にはシートに一定量の溶媒が残留していることが、延伸応力を低減させ、均一な膜厚を得るために好ましい。残留溶媒含量は1〜80質量%であることが好ましく、2〜70質量%がさらに好ましく、3〜60質量%が特に好ましい。
セルロースアシレート樹脂の縦方向(フィルムの流れ方向)、横方向(流れ方向と直交する方向)の延伸倍率はフィルムの光学弾性率に合わせて適宜決定することが出来るが、延伸倍率の下限は好ましくは1.05倍であり、より好ましくは1.1倍であり、さらに好ましくは1.2倍である。上記未満であると、均一なリタデーション特性を得ることができにくくなる。延伸倍率の上限は好ましくは3倍であり、より好ましくは2倍であり、さらに好ましくは1.8倍である。上記を越えると破断など起こりやすくなる。なお、延伸はフィルムの流れ方向に対して20〜70度、好ましくは35〜55度の角度を持った斜め方向に延伸することも出来る。延伸温度は、フィルムのガラス転移温度±20℃の範囲内が好ましい。
延伸フィルムをさらに乾燥させ、残留溶媒量を低減させることができる。得られた延伸フィルムは、表面鹸化処理又は易接着コートを行い、偏光子との接着性や隣接する層との接着性を向上させることが好ましい。
鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法で実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。塗布液の溶媒は、セルロースアシレートフィルムに対する濡れ性が良く、またフィルム表面に凹凸を形成しない溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤を含む水溶液を溶媒として使用することもできる。塗布液に含まれるアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、例えば、KOH及びNaOHを挙げることができる。塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、塗布面を水洗するか、酸で洗浄した後水洗することが好ましい。
セルロースアシレートフィルムに上記の表面処理を実施することにより、フィルムの表面エネルギーが55〜75mN/mであるセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
(COP)
COPとしては、下記の式(V)で表される単量体の重合体が挙げられ、それは単一のモノマー単位で構成されていても共重合体であっても良い。
式中、R1〜R4 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。R1とR2又はR3とR4は、一体化して2価の炭化水素基を形成しても良く、R1又はR2とR3又はR4とは互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。mは0又は正の整数であり、pは0又は1である。式(V)で示される化合物は、pが0であり、mが1であるノルボルネン系化合物が好ましい。中でもR1及びR3は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜4の炭化水素基であり、R2及びR4の少なくとも一つは、−COOCH3、又は−(CH)2−COOCH3であることが好ましい(ここで、CH3はC2H5であっても良い)。これらの単量体は複数のものが用いられても良い。
式(V)で示される重合体に共重合させても良い単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のαオレフィン、ブタジエン、イソプレン等のジエン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、及び塩化ビニル等が挙げられる。αオレフィン及びジエンは、シクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基、シクロアルケニル基、又はアルキル置換シクロアルケニル基が結合した構造であっても良い。
その他に共重合させても良い単量体の例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。
式(V)で表される単量体と共重合させても良い単量体の好ましい比率は、重量比で100/0〜50/50であり、さらに好ましくは100/0〜60/40である。
COPには、リタデーション制御剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑材、熱安定剤、酸化防止剤など各種添加剤を添加することが出来る。
上述のCOPは、アートン(JSR株式会社)、ゼオノア、ゼオネックス、ゼオネックス(いずれも日本ゼオン株式会社)という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
COPはセルロース系フィルムと同様に、ドープから流延法によりシートを得るか、樹脂を押し出し機で溶融混練して回転ドラムやベルト上に押し出し冷却してシートを得ることができる。さらにこのシートを少なくとも1方向、好ましくは2方向に延伸することで所望のリタデーション特性を有するように制御することができる。
COP系樹脂シートの縦方向(フィルムの流れ方向)、及び横方向(流れ方向と直交する方向)の延伸倍率はフィルムの光学弾性率に合わせて適宜決定することが出来るが、延伸倍率の下限は好ましくは1.1倍であり、より好ましくは1.15倍であり、さらに好ましくは1.2倍である。上記未満であると上記未満であると、均一なリタデーション特性を得ることができにくくなる。延伸倍率の上限は好ましくは7倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは3倍である。上記を越えると破断など起こりやすくなることがある。なお、延伸はフィルムの流れ方向に対して20〜70度、好ましくは35〜55度の斜め方向に延伸することも出来る。
延伸温度は、フィルムのガラス転移温度±20℃の範囲内であることが好ましい。さらに延伸後、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下で10秒〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。
得られたフィルムは易接着コート、コロナ処理などを行い、偏光子や積層する他層との接着性を上げることが好ましい。
代表例として、セルロースアシレートフィルム、及びCOPフィルムについて説明したが、配向により複屈折が生じる他の樹脂でも同様の方法で偏光子保護フィルムBを得ることができる。また、複屈折が生じにくい樹脂でも、リタデーション制御剤を添加することで、同様の方法で偏光子保護フィルムBを得ることができる。
次に、透明支持体フィルムに液晶化合物など複屈折化合物を塗布して光学異方性層を設ける方法に関して説明する。
複屈折化合物としては、棒状液晶化合物、及びディスコティック液晶化合物などが挙げられる。棒状液晶化合物は、面内リタデーションを大きくする作用を有する。棒状液晶化合物としてはアゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が挙げられる。棒状液晶化合物は、配向後固定化するために重合性基を有することが好ましい。
ディスコティック液晶化合物を用いることにより、面内方向の屈折率を増大させ、厚み方向のリタデーションをコントロールすることができる。
ディスコティック化合物としては、ベンゼン誘導体、トルキセン誘導体、シクロヘキサン誘導体、アザクラウン系、フェニルアセチレン系マクロサイクル等が挙げられる。好ましいディスコティック化合物は、下記一般式(VI)で表されるトリフェニレン環を有する化合物である。
式中、R1〜R6は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル基、−O−Xで示される基(ここで、Xは、アルキル基、アシル基、アルコキシベンジル基、エポキシ変性アルコキシベンジル基、アクリロイルオキシ変性アルコキシベンジル基、アクリロイルオキシ変性アルキル基である)である。これらの中でも、R1〜R6は、下記一般式(VII)で表されるアクリロイルオキシ変性アルコキシベンジル基が好ましい。
式中、mは、4〜10であることが好ましい。
光学異方性層には、相溶性、塗布性等をコントロールするために、液晶化合物の配向を阻害しない範囲で、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー、及び高分子化合物等を添加することができる。
重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有するものが好ましい。重合性モノマーの量はディスコティック化合物の量に対して好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
高分子化合物は、液晶化合物との相溶性を有していれば特に制限されない。高分子化合物としてはセルロースエステルが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレートが特に好ましい。高分子化合物は液晶化合物の量に対し、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%用いることができる。また、セルロースアセテートブチレートのブチリル化度は30〜80%が好ましく、アセチル化度は30〜80%が好ましい。
透明支持体としては、透明な樹脂フィルムであれば特に限定無く用いることができる。フィルムに用いられる樹脂としては、トリアセチルセルロース、アセチル−プロピオニルセルロース、アセチル−ブチリルセルロース等のセルロースエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等の脂環式ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの中でもトリアセチルセルロース、アセチル−プロピオニルセルロース、及びアセチル−ブチリルセルロース等のセルロースエステルが好ましい。
透明支持体の面内リタデーションの絶対値は50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下である。透明支持体厚み方向のリタデーションの絶対値は250nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。上記を越えると光学異方性層と合わせても偏光子保護フィルムBとして適正なリタデーションの範囲に調整することが困難となる場合がある。主に光学異方性層によりリタデーション制御を行う場合には、面内リタデーションの絶対値はさらに20nm以下、厚み方向のリタデーションの絶対値はさらに100nm以下であることが好ましい。
支持体のリタデーションを下げるためにはアクリル、トリアセチルセルロースなどの配向により複屈折の起こり難い樹脂を用いるほか、製膜時に応力のかかり難い流延法で製膜すること、又は延伸をかけないことで達成できる。また、リタデーション低減剤を添加することも好ましい。これらリタデーション低減剤は、例えば、特開2006−1951587に記載されているものを利用することができる。
支持体の厚み(D)の下限は、好ましくは10μmであり、より好ましくは20μmであり、さらに好ましくは30μmである。上記未満であるとフィルムとしての強度が不足し、積層など加工がし難くなることがある。厚みの上限は好ましくは200μmであり、より好ましくは170μmであり、さらに好ましくは150μmである。上記を越えると表示装置が厚くなるとなることがある。
支持体には、密着性を付与するために下塗り層を設けてもよい。下塗り層にはゼラチンやポリ(メタ)アクリレート樹脂及びその置換体、スチレン−ブタジエン樹脂等が用いられる。コロナ処理等の表面処理を行ってもよい。
支持体と光学異方性層との間には液晶化合物の配向方向を制御するために配向層を設けることができる。配向層に用いられる樹脂としては、透明な樹脂であれば特に限定されないが、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びアルキル変性ポリビニルアルコールが好ましい。これらの中でも、ポリイミドや炭素数6以上のアルキル基で変性されたアルキル変性ポリビニルアルコールが好ましい。
配向層の表面はラビング処理により、一方向に微細な溝を設ける。ラビング処理は紙やガーゼ、フェルト、ゴム、ナイロン、ポリエステル繊維を平均的に植毛した布等を用いて一定方向に擦ることによって行われる。ラビング処理は液晶パネルの液晶配向処理として用いられる処理方法を利用することができる。
棒状液晶化合物は一定方向に配向させることによりリタデーションが発現するため、配向層を設けラビング処理を行うことが好ましい。
ディスコティック液晶化合物の場合は配向層を設けラビング処置を行うことで、ディスコティック化合物のディスコティック構造単位の円盤面が透明支持体面に対して傾き、ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面とのなす角度が光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加する構造となる。また配向層を設けず、ラビング処理を行わない場合には、ディスコティック構造単位の円盤面が透明支持体面に対してほぼ平行に配向させることが出来る。
支持体上、下塗り層上、又は配向層上に液晶化合物を含有する光学異方性層を設けることができる。光学異方性層は上記の液晶化合物と必要に応じて重合性モノマー、高分子化合物、及びその他添加剤とを溶剤に溶解させた塗工液を配向層上に塗工後乾燥させることにより得られる。
溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及びこれらの混合溶媒等から選択される一種以上が好ましく用いられる。
乾燥後、相転移温度まで加熱することにより液晶化合物を配向させることが出来る。相転移のための加熱温度の下限は好ましくは50℃であり、より好ましくは70℃である。上限は好ましくは250℃であり、より好ましくは170℃である。
液晶化合物は配向状態を維持するために液晶化合物に導入された反応基を反応させて固定することが好ましい。好ましい反応基としてはグリシジル基、イソシアネート基、水酸基、カルボン酸基、ビニル基が挙げられ、中でもビニル基が好ましい。固定化反応は反応基や反応触媒に合った方法で行われ、加熱や放射線照射が挙げられる。特にビニル機であれば紫外線や電子線照射が好ましい。
光学異方性層は支持体の片面のみでなく両面に設けても良い。この場合、両面の光学異方性層はそれぞれ異なる光学特性を持っていても良く、同一の光学特性を持っていても良い。
次に、異なるリタデーション特性を持つフィルムを積層する方法に関して説明する。異なるリタデーション特性を持つフィルムとしては、「透明支持体フィルムに液晶化合物など複屈折化合物を塗布して光学異方性層を設ける方法」で使用する透明支持体に「複屈折性の樹脂(配向により複屈折が生じる)又は非複屈折性樹脂にリタデーション制御剤(例えば、棒状芳香族化合物、又は芳香族基置換環状化合物等)を添加し、少なくとも1軸、好ましくは2軸に延伸する方法」で得られるフィルムを積層する方法、「複屈折性の樹脂(配向により複屈折が生じる)又は非複屈折性樹脂にリタデーション制御剤(例えば、棒状芳香族化合物、又は芳香族基置換環状化合物等)を添加し、少なくとも1軸、好ましくは2軸に延伸する方法」で得られる複数のフィルムを互いに積層する方法が挙げられる。積層するフィルムは2枚以上であれば特に制限は無いが、コスト面、プロセス面から3枚以下が好ましい。いずれの場合も積層体合わせて光学特性を満足するよう組み合わせることができる。
偏光子保護フィルムBは吸湿性が低いほうが好ましい。吸湿性が高いと偏光板にした際にソリが発生する恐れがあり好ましくない。
2.偏光板
偏光板は、ヨウ素で染色されたポリビニルアルコール系フィルム等からなる偏光子の両側を2枚の偏光子保護フィルムで挟んだ構成である。前記2枚の偏光子保護フィルムの組合せとしては、偏光子保護フィルムAと一般偏光子保護フィルムとの組合せ、一般偏光子保護フィルムと偏光子保護フィルムBとの組合せ、偏光子保護フィルムAと偏光子保護フィルムBとの組合せを挙げることができる。これらのいずれの偏光板も本発明の液晶表示装置の構成部材として用いることができる。これらの中でも、偏光子保護フィルムAと偏光子保護フィルムBとを組合せた偏光板が好ましい。なお、ここで一般偏光子保護フィルムとは、上述する条件A及びBのいずれをも満たさない偏光子保護フィルムであり、好ましくは、比較的リタデーションの低いTACフィルム、COPフィルム、アクリルフィルムなどである。
偏光子と偏光子保護フィルムとは接着剤を介して積層される。接着剤としては、水系接着剤、放射線硬化型接着剤など、偏光子や偏光子保護フィルムに合わせて選択して用いられる。水系接着剤の場合は、通常、70℃〜120℃の範囲で10分〜60分ほど熱処理して偏光板が得られる。
液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に一対の偏光板を有する。本書では、液晶セルよりも光源側に配置される偏光板を光源側偏光板と呼び、液晶セルよりも視認側(光源とは反対側)に配置される偏光板を視認側偏光板と呼ぶ。光源側偏光板の光源側偏光板保護フィルム又は視認側偏光板の視認側偏光子保護フィルムの少なくとも一方が偏光子保護フィルムAであり、かつ、光源側偏光板の液晶セル側偏光子保護フィルムまたは視認側偏光板の液晶セル側偏光子保護フィルムの少なくとも一方が偏光子保護フィルムBである。
さらに好ましい実施形態では、光源側偏光板の光源側偏光板保護フィルム及び視認側偏光板の視認側偏光子保護フィルムの両方が偏光子保護フィルムAである。また、光源側偏光板の液晶セル側偏光子保護フィルム及び視認側偏光板の液晶セル側偏光子保護フィルムの両方が偏光子保護フィルムBであることも好ましい形態である。特に好ましい形態としては、光源側偏光板の光源側偏光板保護フィルム及び視認側偏光板の視認側偏光子保護フィルムの両方が偏光子保護フィルムAであり、かつ、光源側偏光板の液晶セル側偏光子保護フィルム及び視認側偏光板の液晶セル側偏光子保護フィルムの両方が偏光子保護フィルムBである。この場合に偏光子保護フィルムAは、全く同じ特性を有している必要はなく、偏光子保護フィルムBも必ずしも全く同じ特性を有している必要はない。
偏光板を構成する偏光子保護フィルムAとは反対面に設けられる偏光子保護フィルムは、偏光子保護フィルムB又は一般偏光子保護フィルムのいずれであっても良いが、これらのフィルムも斜め方向熱収縮率差が小さいことが好ましい。具体的にはフィルム流れ方向に対して+45°方向の熱収縮率とフィルム流れ方向に対し−45°方向の熱収縮率の差が0.4%以下であることが好ましい。
3.液晶表示装置
一般に、液晶表示装置は、バックライト光源側から画像を表示する側(視認側又は出射光側)に向かう順に、後面モジュール、液晶セル及び前面モジュールを有する。後面モジュール及び前面モジュールは、一般に、透明基板と、その液晶セル側表面に形成された透明導電膜と、その反対側に配置された偏光板とを含む。ここで、偏光板は、後面モジュールでは、バックライト光源側に配置され、前面モジュールでは、画像を表示する側に配置されている。
液晶表示装置は少なくとも、バックライト光源、2つの偏光板、及び2つの偏光板の間に配された液晶セルを構成部材として含む。本発明の液晶表示装置は、これら以外の他の構成部材、例えば、カラーフィルター、レンズフィルム、拡散シート、反射防止フィルム等を適宜有しても構わない。
バックライトの構成は、導光板や反射板等を構成部材とするエッジライト方式であっても、直下型方式であっても構わない。本発明では、液晶表示装置のバックライト光源として、連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源を用いることが好ましい。ここで、連続した幅広い発光スペクトルとは、少なくとも450nm〜650nmの波長領域、好ましくは可視光の領域において光の強度がゼロになる波長が存在しない発光スペクトルを意味する。このような連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源としては、例えば、白色LEDを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
本発明で使用可能な白色LEDには、蛍光体方式、すなわち化合物半導体を使用した青色光、もしくは紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子や、有機発光ダイオード(Organic light−emitting diode:OLED)等が含まれる。蛍光体としては、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体やテルビウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体等を挙げることができる。白色LEDの中でも、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは、連続的で幅広い発光スペクトルを有していると共に発光効率にも優れるため、本発明のバックライト光源として好適である。白色LEDは消費電力が小さいため、それを利用した本発明の液晶表示装置は、省エネルギー化にも資する。
従来からバックライト光源として広く用いられている冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管は、発光スペクトルが特定波長にピークを有する不連続な発光スペクトルを有する。よって、本発明の所期の効果を得ることは困難であるため、本発明の液晶表示装置の光源としては好ましくない。
液晶セルは、液晶表示装置において使用され得る任意の液晶セルを適宜選択して使用することができ、その方式や構造は特に制限されない。例えば、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の液晶セルを適宜選択して使用できる。よって、液晶セルは、公知の液晶材料及び今後開発され得る液晶材料で作製された液晶を適宜選択して使用することができる。一実施形態において好ましい液晶セルは、透過型の液晶セルである。なお、VAモード又はIPSモードは、液晶セルよりも視認側に設置された偏光子の吸収軸が、表示画面に対して左右方向であることが好ましい。
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されず、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
(1)斜め方向の熱収縮率差
スリットロールの各切り出し部から切り出された後述する偏光子保護フィルム1〜15を一辺21cmの正方形状に切り出し、23℃、65%RHの雰囲気で2時間以上放置した。この試料の中央を中心とする直径20cmの円を描き、縦方向(フィルム流れ方向)を0°として、+45°、−45°方向に円の中心を通る直線を引き、各方向の直径を測定し、処理前の長さとした。次いで、切り出した試料を85℃で30分間、水中で加熱処理した後、切り出した表面に付着した水分を拭き取り、風乾してから23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置し、上述したように各直径方向に引いた直線の長さを測定して処理後の長さとした。次いで、下記の式に従って、熱収縮率を求めた。
熱収縮率=((処理前の試料の長さ)−(処理後の試料の長さ))/(処理前の試料の長さ)×100尚、同一のスリットロールでフィルム幅方向に3点サンプリングし、その平均を熱収縮率差とした。このようにして求めた+45°及び−45°の方向の熱収縮率の大きい方の値から小さい方の値を除し、斜め方向の熱収縮率差を求めた。
(2)光漏れ評価方法
PVAフィルムからなる偏光子の一方の面に、後述の製造例4で作成したセルロースアシレートフィルム(厚み50μm)を、他方の面に後述する方法で作製した偏光子保護フィルム1を〜15のいずれかを、接着剤を介して貼り合せ、オーブンで85℃30分間加熱処理をして、偏光板を製造した。なお、偏光子の偏光軸と、ポリエステルフィルムの主配向軸が互いに垂直になるように貼り合せた。こうして得られた2枚の偏光板を、ポリエステルフィルムが2つの偏光子の外側に来るようにクロスニコルに配置し、日本分光株式会社製分光光度計V7100を用いて、550〜600nmの波長における最大光線透過率を測定した。
○ :最大光線透過率が0.02%以下
× :最大光線透過率が0.02%超
(3)リタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|nx−ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性及び異方性を示す尺度である。後述する偏光子保護フィルム1〜15の二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)を用いてフィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が長辺となるように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(nx,ny)、及び厚み方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−4T、測定波長589nm)を用いて測定し、前記二軸の屈折率の差の絶対値(|nx−ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
(4)Nz係数
|ny−nz|/|ny−nx|で得られる値をNz係数とした。ただし、ny>nxとなるように、ny及びnxの値を選択した。
(5)面配向度(△P)
(nx+ny)/2−nzで得られる値を面配向度(△P)とした。
(6)厚み方向リタデーション(Rth)
厚み方向リタデーションとは、フィルム厚み方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|nx−nz|)、△Nyz(=|ny−nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。リタデーションの測定と同様の方法でnx、ny、nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚み方向リタデーション(Rth)を求めた。
(7)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に後述する偏光子保護フィルム1〜15のいずれかを偏光子の偏光軸とポリエステルフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対側の面に後述の製造例4で作製したセルロースアシレートフィルム(厚み50μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を液晶を挟んで両側に一枚ずつ、各偏光板がクロスニコルの条件下になるよう配置して液晶表示装置を作製した。各偏光板は、前記ポリエステルフィルムが液晶とは反対側(遠位)となるように配置された。液晶表示装置の光源には、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)に用いた。このような液晶表示装置の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。
A: いずれの方向からも虹斑の発生無し。
A’:斜め方向から観察したときに、角度によって極薄い虹斑が観察される。
B: 斜め方向から観察したときに、角度によって薄い虹斑が観察される。
C: 斜め方向から観察したときに、虹斑が観察される。
D: 正面方向及び斜め方向から観察したときに、虹斑が観察される。
(8)引裂き強度
東洋精機製作所製エレメンドルフ引裂試験機を用いて、JIS P−8116に従い、各フィルムの引裂き強度を測定した。引裂き方向はフィルムの配向主軸方向と平行となるように行ない、以下のように判定した。なお、配向主軸方向の測定は分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)で測定した。
○:引裂き強度が50mN以上
×:引裂き強度が50mN未満
(製造例1−ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
(製造例2−ポリエステルB)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後、PET(B)と略す。)
(製造例3−接着性改質塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%及び5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
(製造例4:特性Bを満たすフィルム)
特開2007−199392の実施例1のセルロースアシレートフィルム101の製造方法の記載に従って、セルロースアシレートフィルム(50μm)を作成した。得られたフィルムの物性は、Re=47nm, Rth =130nmであった。
偏光子保護フィルムAに相当するフィルムとして、下記の偏光子保護フィルム1〜15を作製した。
(偏光子保護フィルム1)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、両縁部を裁断除去することによって、フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムからなるミルロールを得た。このミルロールを3等分して、3本のスリットロール(L(左位置),C(中央位置),R(右位置))を得た。各スリットロールについて、90℃、5分間オフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム2)
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚み約100μmとすること以外は偏光子保護フィルム1と同様にして一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム3)
偏光子保護フィルム1と同様の方法により作製された未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に1.5倍延伸した後、偏光子保護フィルム1と同様の方法で幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約50μmの二軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム4)
偏光子保護フィルム3と同様の方法で、走行方向に2.0倍、幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約50μmの二軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム5)
偏光子保護フィルム1と同様の方法で、中間層に紫外線吸収剤を含有するPET樹脂(B)を用いずに、フィルム厚み50μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム6)
偏光子保護フィルム1と同様の方法で、走行方向に1.0倍、幅方向に3.5倍延伸して、フィルム厚み約75μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム7)
偏光子保護フィルム1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更し、横延伸倍率を3.8倍、延伸温度を135℃として、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理したなったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム8)
偏光子保護フィルム1と同様の方法を用い、横延伸倍率を3.8倍、延伸温度を135℃として、厚み約50μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム9)
偏光子保護フィルム1と同様の方法を用い、横延伸倍率を3.8倍として、厚み50μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム10)
偏光子保護フィルム1と同様の方法を用い、横延伸倍率を4.2倍、延伸温度を135℃として、厚み約50μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム11)
偏光子保護フィルム1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更し、横延伸倍率を3.8倍に変更することにより、厚み38μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム12)
偏光子保護フィルム1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚みを38μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム13)
偏光子保護フィルム3と同様の方法で、走行方向に1.8倍、幅方向に2.0倍延伸して、フィルム厚み約275μmの二軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム14)
偏光子保護フィルム3と同様の方法で、走行方向に3.6倍、幅方向に4.0倍延伸して、フィルム厚み約38μmの二軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
(偏光子保護フィルム15)
偏光子保護フィルム1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚み約10μmの一軸配向PETフィルムからなるスリットロールを得た。偏光子保護フィルム1と同様にオフラインアニール処理をしたもの、及びオフラインアニール処理しなかったものの2種類を作成した。
偏光子保護フィルム1〜15について、光漏れ評価の結果を表1(オフラインアニールで処理したサンプル)、表2(オフラインアニールで処理しなかったサンプル)に示す。また、偏光子保護フィルム1〜15(オフラインアニールで処理したサンプル)を用いて上述するように作製した液晶表示装置について虹斑観察及び引裂き強度を測定した結果を以下の表3に示す
表3中、偏光子保護フィルムNo.7*は、偏光子保護フィルムとして偏光子保護フィルム7を用い、光源として有機発光ダイオード(OLED)を用いた場合を示す。また、表3中、偏光子保護フィルムNo.7**は、偏光子保護フィルムとして偏光子保護フィルム7を用い、光源として冷陰極管を用いた場合を示す。
表3に示された結果から、配向ポリエステルフィルムのリタデーションが4000以上であり、且つ、そのNz係数が1.7以下である場合に、虹斑の発生が顕著に抑制されることが示された。また、この条件に加えて、配向ポリエステルフィルムの面配向度を0.13以下に制御することによって、より効果的に虹斑の発生を抑制することが可能であることが示された。