本超音波イメージングシステムの実施形態は、プローブまたは変換器ユニットと、処理ユニットと、プローブを処理ユニットに接続する任意のケーブルとを含む。通常、プローブの実施形態は、従来の超音波プローブの構造、構成要素、および要素の少なくとも一部を含む。すなわち、プローブの1つの実施形態は、超音波パルスを発生させ、これらを患者の特定領域に向かって送信する。この実施形態はまた、患者から反響された超音波エコーを受信する。プローブの多くの実施形態は、通常携帯デバイスであるが、一部は携帯デバイスではない。
本超音波診断装置の例示的な実施形態が、添付の図を参照して詳細に以下で説明される。次に図2を参照すると、概略図は、本超音波診断装置の実施形態を示している。本実施形態(超音波診断装置)は、超音波プローブ100と、モニタ120と、タッチ入力デバイス130と、装置本体1000とを含む。超音波プローブ100の1つの実施形態は、圧電振動子などの複数の変換素子をさらに有する。これらの素子は、装置本体1000内に収容された送信部111から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生させる。
超音波が、超音波プローブ100内の圧電振動子などの複数の変換素子から被検体Ptに送信されるとき、送信された超音波は、被検体Ptの体内組織内の音響インピーダンスの不連続面によって連続して反響され、これはまた、超音波プローブ100の圧電振動子によって、反響したエコー信号として受信される。受信された、反響した波信号の大きさは、超音波を反響させる不連続面の音響インピーダンスにおける差違によって左右される。たとえば、送信された超音波パルスが、移動する血流または心臓壁の表面によって反響されたとき、反響したエコー信号は、周波数シフトの影響を受ける。すなわち、ドップラー効果により、反響したエコー信号の周波数は、移動する対象物の超音波送信方向の速度成分に依存する。
装置本体1000は、最終的には、超音波画像を表す信号を発生させる。装置本体1000は、超音波をプローブ100から患者の対象領域に向かって送信すると共に、反響したエコーを超音波プローブ100において受信することを制御する。装置本体1000は、送信部111と、受信部112と、Bモード処理部113と、ドプラ処理部114と、処理部115と、画像メモリ116と、制御部117と、内部記憶部118とを含み、これらすべては、内部バスを介して接続される。
送信部111は、制御部117による制御のもとで、超音波プローブ100における複数の圧電振動子各々に駆動信号を供給する。受信部112は、各圧電振動子によって発生されたエコー信号に基づいて、受信信号を発生する。送信部111と受信部112とまとめて送受信部と呼ぶ。送受信部は、圧電振動子(超音波振動子)を介して、造影剤が投与された被検体との間で超音波を送受信する。
具体的には、送受信部は、図示していないパルス発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路と、プリアンプと、アナログディジタル(Analog to digital(以下、A/Dと呼ぶ))変換器と、受信遅延回路と、加算器とを有する。
パルス発生器は、所定のレート周波数frHz(周期:1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。発生されたレートパルスは、チャンネル数に分配され、送信遅延回路に送られる。
送信遅延回路は、複数のチャンネルごとに、送信超音波をビーム状に収束し、かつ送信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、送信遅延時間と呼ぶ)を、各レートパルスに与える。送信超音波の送信方向または送信遅延時間(以下、送信遅延パターンと呼ぶ)は、内部記憶部118に記憶される。内部記憶部118に記憶された送信遅延パターンは、制御部117により超音波の送信時に参照される。
パルサ回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ100の圧電振動子ごとに電圧パルス(駆動信号)を印加する。これにより、超音波ビームが被検体に送信される。
プリアンプは、超音波プローブ100を介して取り込まれた被検体Pからのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をディジタル信号に変換する。
受信遅延回路は、ディジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、受信遅延時間と呼ぶ)を与える。エコー信号の受信方向または受信遅延時間(以下、受信遅延パターンと呼ぶ)は、内部記憶部118に記憶される。内部記憶部118に記憶された受信遅延パターンは、制御部117により超音波の受信時に参照される。
加算器は、遅延時間が与えられた複数のエコー信号を加算する。この加算により、送受信部は、受信指向性に応じた方向からの反射成分を強調した受信信号(RF(radiofrequency)信号ともいう)を発生する。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される。この総合的な指向性により、超音波ビーム(いわゆる「超音波走査線」)が決まる。
Bモード処理部113は、送受信部における受信部112から出力された受信信号に基づいて、Bモードデータを発生する。具体的には、Bモード処理部113は、図示していない包絡線検波器、対数変換器などを有する。包絡線検波器は、送受信部から出力された受信信号に対して包絡線検波を実行する。包絡線検波器は、包絡線検波された信号を、後述する対数変換器に出力する。対数変換器は、包絡線検波された信号に対して対数変換して弱い信号を相対的に強調する。Bモード処理部113は、対数変換器により強調された信号に基づいて、各走査線における深さごとの信号値(Bモードデータ)を発生する。Bモード処理部113は、Bモードデータに基づいて、Bモードに関するボリュームデータ(以下、Bモードボリュームデータと呼ぶ)を発生する。
ドプラ処理部114は、送受信部における受信部112から出力された受信信号に基づいて、ドプラデータを発生する。具体的には、ドプラ処理部114は、図示していないミキサー、低域通過フィルタ(Low Pass Filter:以下LPFと呼ぶ)、速度/分散/Power演算デバイス等を有する。ミキサーは、送受信部から出力された受信信号に、送信周波数と同じ周波数f0を有する基準信号を掛け合わせる。この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数fdの成分の信号と(2f0+fd)の周波数成分を有する信号とが得られる。LPFは、ミキサーからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除く。ドプラ処理部は、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除くことにより、ドプラ偏移周波数fdの成分を有するドプラ信号を発生する。
なお、ドプラ処理部114は、ドプラ信号を発生するために、直交検波方式を用いてもよい。このとき、受信信号(RF信号)は、直交検波されIQ信号に変換される。ドプラ処理部114は、IQ信号を複素フーリエ変換することにより、ドプラ偏移周波数fdの成分を有するドプラ信号を発生する。ドプラ信号は、例えば、血流、組織、造影剤によるドプラ成分である。
速度/分散/Power演算デバイスは、図示していないMTI(Moving Target Indicator)フィルタ、LPFフィルタ、自己相関演算器等を有する。なお、自己相関演算器の代わりに相互相関演算器を有していてもよい。MTIフィルタは、発生されたドプラ信号に対して、臓器の呼吸性移動や拍動性移動などに起因するドプラ成分(クラッタ成分)を除去する。MTIフィルタは、ドプラ信号から血流に関するドプラ成分(以下、血流ドプラ成分と呼ぶ)を抽出するために用いられる。LPFは、ドプラ信号から組織の移動に関するドプラ成分(以下、組織ドプラ成分と呼ぶ)を抽出するために用いられる。
自己相関演算器は、血流ドプラ成分及び組織ドプラ成分に対して自己相関値を算出する。自己相関演算器は、算出された自己相関値に基づいて、血流および組織の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度(パワー)等を算出する。速度/分散/Power演算デバイスは、複数のドプラ信号に基づく血流および組織の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度等に基づいて、被走査領域の各位置におけるカラードプラデータを発生する。以下、ドプラ信号とカラードプラデータとをまとめて、ドプラデータと呼ぶ。
ドプラ処理部114は、ドプラデータに基づいて、ドプラモードに関するボリュームデータ(以下、ドプラボリュームデータと呼ぶ)を発生する。以下、Bモードボリュームデータとドプラボリュームデータとをまとめて、ボリュームデータと呼ぶ。
また、Bモード処理部113とドプラ処理部114とをまとめてボリュームデータ発生部と呼ぶ。ボリュームデータ発生部は、送受信部における受信部112からの出力に基づいて、時系列に沿った一連のボリュームデータを発生する。
具体的には、ボリュームデータ発生部は、被走査領域におけるアジマス(Azimuth)方向、エレベーション(Elevation)方向、深さ方向(以下、レンジ(Range)方向と呼ぶ)にそれぞれ対応付けて配列された複数の信号値(Bモードデータ、ドプラデータ)に基づいて、ボリュームデータを発生する。レンジ方向とは、走査線上の深さ方向である。アジマス方向とは例えば、1次元超音波振動子の配列方向に沿った電子走査方向である。エレベーション方向とは、1次元超音波振動子の機械的揺動方向である。Bモードボリュームデータは、複数の画素値または複数の輝度値などを、走査線に沿って、アジマス方向、エレベーション方向、レンジ方向にそれぞれ対応付けて配列させたデータであってもよい。
図2を参照すれば、組織灌流応答(灌流応答特性)を求めるためのシステム1100は、1つの実施形態の装置本体1000に加えて灌流ユニット300を含む。1つの例示的な実施形態では、灌流ユニット300は、ボーラス投与を提供するために、短時間、通常は約2秒から20秒の範囲にわたって所定の灌流造影剤を一回投与する。灌流ユニット300の1つの例示的な実施形態は、比較的少量の所定の造影剤を含有するシリンジを含む。
それにしたがって、プローブ100は、所定の灌流造影剤の上記で説明したボーラス投与後に関心領域上に置かれてデータを取得する。取得されたデータは、関心領域から反響されて検出されたエコーから生成される。取得されたデータは、コントラスト強調された超音波量の時間系列を描出する。取得されたデータは、画像メモリ116などの所定のメモリデバイス、または内部記憶部118内にさらなる処理のために保存される。通常、所定のソフトウェアプログラム上を実行する、処理部115などのマイクロプロセッサは、時系列のコントラスト強調された超音波量を処理して生物学的組織内の灌流を定量化する。対象の単位体積あたりの組織灌流応答が、血液量および血流などの定量的機能パラメータを提供するために推定される。
処理部115は、図示していない曲線決定部と設定部と応答特性決定部とを有する。曲線決定部は、時系列に沿った一連のボリュームデータに基づいてボリュームデータにおける複数のボクセル各々の時間強度曲線(Time−Intencity Curve:以下、TICと呼ぶ)を決定する。なお、曲線決定部は、時系列に沿った一連のボリュームデータに基づいてボリュームデータにおける複数のボクセル各々の時間濃度曲線(Time−Density−Curve:以下、TDCと呼ぶ)を決定してもよい。すなわち、曲線決定部は、複数のボクセル各々について、TICまたはTDCを示す曲線の関数を決定する。なお、曲線決定部は、設定部により設定された複数のボクセルまたは複数の領域について、TICまたはTDCを示す曲線の関数を決定してもよい。
設定部は、ボリュームデータにおいて、灌流応答特性の解析対象となる対象ボクセル(tROI)を設定する。なお、対象ボクセルは、複数のボクセルを有する領域であってもよい。設定部は、設定された対象ボクセル(tROI)を通過する造影剤に関連する通過関連ボクセルを決定する。例えば、設定部は、入力部(タッチ入力デバイス130)を介して入力された操作者の指示に従って、tROIを設定する。また、設定部は、入力部(タッチ入力デバイス130)を介して入力された操作者の指示に従って、tROIの周囲の通過関連ボクセルを設定する。
応答特性決定部は、通過関連ボクセルと対象ボクセルとにおけるTICまたはTDCに基づいて、対象ボクセルにおける灌流応答特性を決定する。応答特性決定部は、決定した灌流応答特性をモニタ120に出力する。
以下、処理部115における処理内容について詳述する。
次に図3を参照すると、図は、本実施形態による、コンピュータ断層撮影(CT)、陽電子放出コンピュータ断層撮影(PET)および磁気共鳴イメージング(MRI)を含むモダリティにおける灌流定量化のシステム同定手法を示している。関数x(t)は、対象の組織領域(対象ボクセル:tROI)に供給する動脈内の時間tにわたる造影剤の動的取り込みを描出する入力関数である。関数y(t)は、対象の組織領域(tROI)内の時間tにわたる造影剤の動的取り込みを描出する出力関数である。
入力関数x(t)は、対象の組織領域(対象ボクセル)に流入する造影剤に関連する少なくとも一つのボクセル(入力ボクセル)におけるTICを示す関数である。また、出力関数y(t)は、対象の組織領域(tROI)から流出する造影剤に関連する少なくとも一つのボクセル(出力ボクセル)におけるTICを示す関数である。すなわち、ボリュームデータにおいて対象ボクセルに対する前記造影剤の通過に関連する入力ボクセルおよび出力ボクセルは、通過関連ボクセルである。
最後に、h(t)は、時間tにわたる組織灌流応答を表すために求められる伝達関数である。すなわち、h(t)、対象ボクセル(tROI)内における灌流応答特性を示す関数である。h(t)は、図3におけるtROI内におけるh(t)の疑問符(右辺)によって示される。出力関数y(t)は、入力関数x(t)と組織灌流応答h(t)とのコンボリューション(*)によって定義され、これは以下の式によって示される。
その結果、対象の組織領域(tROI)内の組織灌流応答h(t)は、入力関数x(t)と出力関数y(t)とのデコンボリューション(逆畳み込み)(*
−1)によって得られ、これは以下の式によって示される。
医用イメージングでは、特定の組の時間強度曲線(TIC)は、分析されるべき組織ボリュームの部分を輪郭付けする関心領域(tROI)内の造影剤の取り込み動態に関連する。灌流の定量化は、通常は、TICから導出された造影剤の取り込み量の推移であって、対象の領域(tROI)周辺の血液量または血流を示すパラメータに関連して変化する。そうではあるが、TICは、推定される組織灌流応答の関数だけでなく、ボーラス投与として患者に静脈内投与される造影剤によっても影響を受ける。臨床環境において、注入条件は、造影剤のタイプ、その用量、およびまたはその注入速度または患者の状態(たとえば心拍出量)によって検査ごとに変化する。この変化は取得されるデータに反映されるため、続いて生成されるTICは、灌流定量化を再現するのに必要な一貫性に欠ける。
上記の理由のため、注入条件またはパラメータから独立して組織灌流応答(灌流応答特性)を計算するために、本実施形態によるコントラストイメージングのシステムおよび方法は、システム同定手法を利用する。図3に示すように、対象の組織領域(tROI)内の組織灌流応答h(t)は、入力関数x(t)と出力関数y(t)とのデコンボリューションによって得られる。出力関数y(t)は、tROI内の測定されたTICに基づく。1つの従来技術の手法によれば、ROIに造影剤を供給すると仮定される動脈内で入力関数x(t)に関するROI(以下、xROIと呼ぶ)を任意で描くことにより、入力関数x(t)は、臨床医によって任意に選択される。従来技術の手動作動は、オペレータ依存性が強く、したがって灌流の定量化にさらなる変動要因源をもたらす。
組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法の1つの実施形態は、コントラスト強調された超音波イメージングデバイスによって取得された時系列のボリュームデータ(4D)を利用する。3次元領域における時間強度をマッピングしたボリュームデータにおいて、時間経過を示すデータが、4Dデータとして定義される。ボリュームデータは、通常、3次元(3D)であり、時系列は別次元であるため、4次元(4D)は、時系列ボリュームデータを指す。組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法の別の実施形態は、コントラスト強調された超音波イメージングデバイスによって取得された時系列の3次元データを処理する。組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法のさらに別の実施形態は、コントラスト強調された超音波イメージングデバイスによって取得された時系列の2次元データを処理する。
組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法の実施形態は、入力関数の定義から、注入条件およびオペレータ依存性などの灌流の定量化における変動要因源を実質的に取り除く。組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法の1つの実施形態は、所定の血流方向に沿って、1ボクセルあたりの組織灌流応答を求める。すなわち、この実施形態は、所定のモダリティを時間関数として使用してデータを取得し、隣接ボクセルおよび対象の少なくとも1つのボクセルからなるボクセルの所定の組の各々に対して、取得されたデータに基づいて時間強度曲線(TIC)を求める。
TICは、例えば、ボリュームデータにおける複数のボクセル各々における時間に沿った輝度値の変化を示す曲線である。TICは、時間に沿った輝度値の変化をフィッティングすることにより得られ、時間に対する輝度値の変化を示す関数である。なお、TICの代わりに、時間に対する輝度値の変化を示す関数であるTDCが、用いられてもよい。
その後、この実施形態は、TICに基づいて、対象のボクセルへの所定の血流方向に沿って対象のボクセルのすぐ近隣および距離を離した近隣内の隣接ボクセルのいずれか1つに対応する一部のデータを任意選択で排除する。例えば、対象のボクセルの組織灌流応答を解析する際、伝達関数および入力関数がわかっていれば、任意のボクセルから対象ボクセルに与えられる影響を排除することができる。すなわち、対象ボクセルに対する特定のボクセルの入力関数の影響を排除することができる。この入力関数の排除は、設定部により通過関連ボクセルの設定により実行されてもよい。
排除後、残りの取得されたデータは、選択された隣接ボクセルを定義する。換言すれば、造影剤の空間的分布は、対象のボクセルとその隣接ボクセルとの間の相互作用に基づいて考えられる。さらには、この実施形態は、選択された隣接ボクセルの取得されたデータに基づいて局所的入力関数を求め、最後に、取得されたデータにしたがって、局所的入力関数および出力関数に基づいて組織灌流応答を求める。
なお、入力関数、出力関数、伝達関数は、ボクセル単位で設定または計算されるが、複数のボクセル(例えば、4×4ボクセル)をまとめて評価されてもよい。複数のボクセルのまとめ方は、例えば、自動的に2×2、3×3、4×4、16×16などの様に賽の目状に設定されてもよいし、入力部(タッチ入力デバイス130)および設定部を介して操作者がボクセルの集合の形状を定義してもよい。また、通過関連ボクセル(入力ボクセル(xROI)および出力ボクセル)は、対象ボクセル(tROI)に隣接するボクセルに限定されない。すなわち、通過関連ボクセルは、対象ボクセル(tROI)に完全に隣接している必要はなく、対象ボクセル(tROI)から所定の距離だけ離間したボクセルであってもよい。このとき、例えば、入力ボクセル(xROI)は、対象ボクセル(tROI)から離間して離散的に配置された複数のボクセルとなる。
組織灌流応答(灌流応答特性)は、応答特性決定部により、入力関数と出力関数とのデコンボリューションによって得られる。この場合、出力関数は、対象のボクセル内のフィッティングされた時間強度曲線(TIC)である。入力関数は、対象のボクセル(tROI)に隣接するボクセルからフィッティングされたTICを、設定部により選択的に排除されることによって定義される。隣接ボクセルの排除は、本実施形態による、対象のボクセルに対する所定の血流方向に基づく。さらには、所定の血流方向は、本実施形態による、ボクセルまたはボクセルのグループに対する特定の単一方向には限定されない。換言すれば、血流方向は、関心領域の所定ボリュームに対して複数の所定の血流方向の組み合わせを含む。
次に図4を参照すれば、図は、本実施形態による、関心領域(ROI)に対する所定の単一の血流方向を示している。特定の実施態様に関しては、組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法の実施形態は、ボクセルまたはボクセルのグループなどのデータ単位を定義する。たとえば、矢印によって示す軸I、J、およびKの所定の組内で、関心領域に対応する対象のボクセルVOIは、座標(i,j,k)に位置し、一方で隣接ボクセルAdjVは、座標(i−1,j,k)に位置している。血流方向BFDが、矢印によって示すように、軸Iに沿って隣接ボクセルAdjVから対象のボクセルVOIまでであると仮定すると、組織灌流応答は、本システムおよび方法の1つの実施形態において入力関数および出力関数に基づいて、応答特性決定部により求められる。局所的入力関数は、所定の単一の血流方向BFDに隣接ボクセルAdjV(i−1,j,k)が対象のボクセルVOI(i,j,k)に供給する時間tにわたる造影剤の動的取り込み(TIC)を描出する入力関数である。したがって、局所的入力関数は、x(i−1,j,k,t)として定義される。局所的出力関数は、所定の単一の血流方向BFDの血流を受け入れる際の対象のボクセルVOI(i,j,k)内の時間tにわたる造影剤の動的取り込みを描出する出力関数である。したがって、局所的出力関数は、y(i,j,k,t)として定義される。その結果、対象のボクセルVOI内の組織かん流応答h(t)は、局所的入力関数x(i−1,j,k,t)と局所的出力関数y(i,j,k,t)とのデコンボリューションによって得られ、これは以下によって示される。
次に図5を参照すれば、グラフは、本実施形態による、関心領域(ROI)に対する所定の単一の血流方向の所定の造影剤の時間強度曲線を示している。y軸は、所定の単位における、検出された信号のエコーパワー(相対的な造影剤の濃度に比例する量)であり、一方でx軸は秒単位の時間である。組織灌流応答を求める上で、局所的入力関数x(i−1,j,k,t)および局所的出力関数y(i,j,k,t)はそれぞれ、実線および点線によって描かれている。グラフで示すように、局所的入力関数x(i−1,j,k,t)のピークは、局所的出力関数y(i,j,k,t)より時間的に先行している。図5は、時間強度曲線(TIC)によって示されるように1つだけの入力関数を示している。複数の入力関数が存在するとき、ピークまでの時間(time−to−peak:以下、TTPと呼ぶ)などの時間関連パラメータが、これらの入力関数の一部の影響を排除するために使用される。時間関連パラメータは、ピークまでの時間には限定されず、中間通過時間、平均通過時間または立上がり時間などの他の時間関連パラメータを含む。加えて、入力関数は、特定の単一方向に沿った血流には限定されず、対象の領域に対して軸に沿った複数の方向に沿う血流を含む。
次に図6を参照すれば、図は、本実施形態による、関心領域(ROI)に対する所定の2つの血流方向を示している。特定の実施態様に関しては、組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法の実施形態は、ボクセルなどのデータの単位を定義する。たとえば、矢印によって示す軸I、J、およびKの所定の組内で、対象のボクセルVOIは、座標(i,j,k)に位置し、一方で2つの隣接ボクセルAdjV1およびAdjV2はそれぞれ、座標(i−1,j,k)および(i,j+1,k)に位置している。第1の血流方向BFD1は、第1の矢印によって示すように、軸Iに沿って隣接ボクセルAdjV1から対象のボクセルVOIまでであると仮定される。また、第2の血流方向BFD2は、第2の矢印によって示すように、軸Jに沿って隣接ボクセルAdjV2から対象のボクセルVOIまでであると仮定される。
この点において、組織灌流応答は、本システムおよび方法の1つの実施形態において2つの入力関数および出力関数に基づいて求められる。局所的入力関数は、所定の2つの血流方向BFD1およびBFD2に対象のボクセルVOI(i,j,k)に供給する2つの隣接ボクセルAdjV1(i−1,j,k)およびAdjV2(i,j+1,k)内の時間tにわたる造影剤の動的取り込み(TIC)を描出する入力関数である。したがって、局所的入力関数は、x(i−1,j,k,t)およびx(i,j+1,k,t)の和として定義される。あるいは、局所的入力関数は、2つの定義の平均または任意の組み合わせとして定義される。局所的出力関数は、所定の2つの方向BFD1およびBFD2の血流を受け入れる際の対象のボクセルVOI(i,j,k)内の時間tにわたる造影剤の動的取り込みを描出する出力関数である。したがって、局所的出力関数は、y(i,j,k,t)として定義される。その結果、対象のボクセルVOI内の組織かん流応答h(t)は、局所的入力関数の和{x(i−1,j,k,t)+x(i,j+1,k,t)}と局所的出力関数y(i,j,k,t)とのデコンボリューションによって得られ、これは以下によって示される。
次に図7を参照すれば、グラフは、本実施形態による、関心領域(ROI)に対する所定の2つの血流方向の所定の造影剤の時間強度曲線を示している。y軸は、所定の単位における検出された信号のエコーパワーであり、一方でx軸は秒単位の時間である。組織灌流応答を求める上で、第1の局所的入力関数x(i−1,j,k,t)、第2の局所的入力関数x(i,j+1,k,t)、および局所的出力関数y(i,j,k,t)はそれぞれ、一点鎖線、二点鎖線、および実線によって描かれる。第1の局所的入力関数x(i−1,j,k,t)および第2の局所的入力関数x(i,j+1,k,t)の和もまた、三点鎖線によって描かれる。グラフに示すように、第1の局所的入力関数x(i−1,j,k,t)のピークと第2の局所的入力関数x(i,j+1,k,t)のピークの両方は、局所的出力関数y(i,j,k,t)のピークより時間的に先行している。図7は、時間強度曲線(TIC)によって示されるように2つだけの入力関数を示しているが、3つ以上の入力関数が存在するとき、ピークまでの時間(TTP)などの時間関連パラメータが、これらの一部の入力関数の影響を排除するために使用される。時間関連パラメータは、ピークまでの時間には限定されず、中間通過時間、平均通過時間または立上がり時間などの他の時間関連パラメータを含む。加えて、入力関数は、特定の2つの方向に沿った血流には限定されず、対象の領域に対して軸に沿った複数の方向に沿う血流を含む。
次に図8を参照すれば、図は、本実施形態による、関心領域(ROI)に対する所定の6つの血流方向を示している。特定の実施に関しては、組織灌流応答を定量化するためのシステムおよび方法の実施形態は、ボクセルなどのデータ単位を定義する。たとえば、矢印によって示すような軸I、J、およびKの所定の組内で、対象のボクセルVOIは、座標(i,j,k)に位置し、一方で6つの隣接ボクセルAdjV1からAdjV6は、(i−1,j,k)、(i,j+1,k)、(i,j,k+1)、(i,j−1,k)、(i,j,k−1)および(i+1,j,k)に位置している。第1の血流方向BFD1は、第1の矢印によって示すように、軸Iに沿って隣接ボクセルAdjV1から対象のボクセルVOIまでであると仮定される。また、第2の血流方向BFD2は、第2の矢印によって示すように、軸Jに沿って隣接ボクセルAdjV2から対象のボクセルVOIまでであると仮定される。さらには、第3の血流方向BFD3は、第3の矢印によって示すように、軸Kに沿って隣接ボクセルAdjV3から対象のボクセルVOIまでであると仮定される。同様に、第4から第6の血流方向、BFD4からBFD6はそれぞれ、対応する矢印によって示すように、所定の軸に沿って隣接ボクセルAdjV4〜AdjV6から、対象のボクセルVOIまでである。
この点において、組織灌流応答は、本発明によるシステムおよび方法の1つの実施形態において3つの入力関数および出力関数に基づいて求められる。局所的入力関数は、所定の3つの血流方向BFD1、BFD2およびBFD3で対象のボクセルVOI(i,j,k)に供給する3つの隣接ボクセルAdjV1(i−1,j,k)、AdjV2(i,j+1,k)およびAdjV3(i,j,k+1)内の時間tにわたる造影剤の動的取り込み(TIC)を描出する入力関数である。したがって、局所的入力関数は、x(i−1,j,k,t)、x(i,j+1,k,t)およびx(i,j,k+1,t)の和として定義される。局所的出力関数は、所定の3つの方向BFD1、BFD2、およびBFD3の血流を受け入れる際の対象のボクセルVOI(i,j,k)内の時間tにわたる造影剤の動的取り込み(TIC)を描出する出力関数である。したがって、局所的出力関数は、y(i,j,k,t)として定義される。その結果、対象のボクセルVOI内の組織灌流応答h(t)は、局所的入力関数の和{x(i−1,j,k,t)+x(i,j+1,k,t)+x(i,j,k+1,t)}と局所的出力関数y(i,j,k,t)とのデコンボリューションによって得られ、これは以下によって示される。
次に図9を参照すれば、グラフは、本実施形態による、関心領域(ROI)に対する所定の6つの血流方向における所定の造影剤の時間強度曲線を示している。y軸は、所定の単位における検出された信号のエコーパワーであり、一方でx軸は秒単位の時間である。組織灌流応答を求める上で、第1の局所的入力関数x(i−1,j,k,t)、第2の局所的入力関数x(i,j+1,k,t)、第3の局所的入力関数x(i,j,k+1,t)および局所的出力関数y(i,j,k,t)はそれぞれ、第1の線L1、第2の線L2、および第3の線L3によって描かれる。第1の局所的入力関数x(i−1,j,k,t)、第2の局所的入力関数x(i,j+1,k,t)、および第3の局所的入力関数x(i,j,k+1,t)の和もまた、第4の線L4で描かれる。グラフに示すように、第1の局所的入力関数x(i−1,j,k,t)、第2の局所的入力関数x(i,j+1,k,t)、および第3の局所的入力関数x(i,j,k+1,t)のピークはすべて、局所的出力関数y(i,j,k,t)のピークより時間的に先行している。図9は、線L1からL3ならびにL5からL7の時間強度曲線(TIC)によって示されるように6つの入力関数を示しているが、ピークまでの時間(TTP)などの時間関連パラメータが、線L5およびL7によって描かれたTICを有する、これらの入力関数のうちの3つの入力関数の影響を排除するために使用される。
オプション的な排除は、対象のボクセルVOI(i,j,k)に対して複数の血流方向に関連付けられたデータを処理する実施形態では重要である。L5、L6およびL7によって描かれるTICのピークは、線L8によって描かれるVOI(i,j,k)における出力関数y(i,j,k,t)のピークL8Mより遅れているため、対象のボクセル(VOI)による造影剤の取り込みは、これらの血流方向に沿ったVOI(i,j,k)でのピーク前に起こっていない。すなわち、排除された入力関数は、対象のボクセルVOI(i,j,k)に対して同じ血流方向にはなく、それにより、TIC(L5、L6、およびL7)によって示される造影剤の取り込みは、時間的にTIC(L1,L2,L3)の後に起こっている。換言すれば、対象のボクセル(VOI)から流出する方向を示すあらゆる隣接ボクセルが、本システムおよび方法の1つの実施形態における以下の規則に基づいて排除される。残りの隣接ボクセルは、次いで、入力関数を求める際に隣接ボクセルとして選択される。
(dT>0)である場合、隣接ボクセルVnを排除し、他の場合(dT<0)はVnを排除しない。
ここでdT=T(Vn)−T(Vi)であり、
T(Vn)は、隣接ボクセルVn内の第1の時間関連パラメータ(例えばTTP)であり、
T(Vi)は、対象のボクセルVOI内の第2の時間関連パラメータ(例えばTTP)である。ここで、Viは、VOI内のボクセルである。
本システムおよび方法の別の実施形態では、対象のボクセル(VOI)内への血流方向を示すあらゆる隣接ボクセルは、以下の反対の規則に基づいて排除されない。残りの隣接ボクセルは、次いで、入力関数を求める際に隣接ボクセルとして選択される。
(dT<0)である場合、Vnを排除せず、他の場合(dT>0)はVnを排除する。
ここでdT=T(Vn)−T(Vi)であり、
T(Vn)は、隣接ボクセルVn内の第1の時間関連パラメータであり、
T(Vi)は、対象のボクセルVOI内の第2の時間関連パラメータである。
要約すると、隣接ボクセルに対する上記の排除規則は、もっぱら対象のボクセル内へのまたは対象のボクセルからの血流方向に基づく。本発明の別の実施形態では、時間における局所的出力関数y(i,j,k,t)は、排除されたボクセルからのフィッティングされたTICの組み合わせとして定義される。
すなわち、T(Vn)>T(Vi)のとき、隣接ボクセルVnは、灌流応答特性の入力関数として排除される。また、T(Vn)<T(Vi)のとき、隣接ボクセルVnは、灌流応答特性の入力関数として用いられる。
なお、灌流応答特性を計算するデコンボリューションに用いられずに排除される隣接ボクセルは、タッチ入力デバイス(入力部)130を介した操作者の指示により、指定されてもよい。例えば、灌流応答特性を計算するデコンボリューションから排除するボクセルが存在する方向が、対象ボクセル(VOI)に対して指定される。次いで、灌流応答決定部は、対象ボクセル(VOI)に隣接する複数のボクセルから、指定された方向に関する隣接ボクセルを排除する。
なお、排除したい隣接ボクセルが存在する方向を指定する代わりに、以下のようにして(隣接)ボクセルを排除してもよい。灌流応答特性(h(t))の決定において、単に血流が存在するボクセル(ドプラデータによる血流の流速が一定値以上のボクセル)の位置から対象ボクセルに向かう方向に位置するボクセルに関する入力関数の影響を排除するために、排除されるボクセルをが指定されてもよい。具体的には、応答特性決定部は、ドプラデータに関するボリュームデータ(例えばカラードプラに関するカラードプラボリュームデータ)に基づいて、例えば、対象ボクセルを通過する造影剤の流れにおいて対象ボクセルの下流に位置するボクセルを排除する。
すなわち、応答特性決定部は、カラードプラボリュームデータにおいてドプラ情報を有するボクセルの位置と対象ボクセル(VOI)とに基づいて、通過関連ボクセルのうち、灌流応答特性の決定において排除される所定のボクセルを決定する。例えば、応答特性決定部は、通過関連ボクセルのうち所定のボクセルに関する時間強度曲線による灌流応答特性への影響を排除して、灌流応答特性を決定する。
次に図10を参照すれば、本システムおよび方法の実施形態では、x、y、zの直交3方向の入力関数を、3次元(3D)の血液流入ベクトルの方向を考慮して求めることができる。3D血液流入ベクトルF
in_VOIは、対象のボクセル(VOI)に属するものであり、任意に選択された隣接ボクセルの線形結合として求められ、これは、次の通りであり、
ここで、F
in_V1およびF
in_V2はそれぞれ、VOIの3D中心を原点とした球面座標系(r、θ、φ)において、中心が(r1、θ1、φ1)に位置する第1の隣接ボクセルAdjV1、および中心が(r2、θ2、φ2)に位置する第2の隣接ボクセルAdjV2の流入ベクトルである。このベクトルにより、図10に示すような図に関連する方法およびシステムは、ベクトル性灌流プロセススキームとして考えられる。w
1は、第1の隣接ボクセルAdjV1におけるフィッティングされたTICから導出された正規化パラメータとして定義された第1の重み付け係数である。一方でw
2は、第2の隣接ボクセルAdjV2におけるフィッティングされたTICから導出された正規化パラメータとして定義された第2の重み付け係数である。同じようにして、F
in_Vおよび対応する重み付け係数の組は、N個まで与えられ、これは以下のように定義される。
1つの実施においては、重み付け係数は、正規化された曲線下面積(AUC)などの大きさ関連値であり、重み付け係数は、
として定義され、ここでNは、流入として選択されたボクセルの総数であり、jは選択された流入ボクセルの指数である。
他の実施においては、重み付け係数は、上記で説明したようなデコンボリューションプロセスによる組織応答h(t)から導出された任意のパラメータである。たとえば、組織応答の正規化されたAUC(AUC_h)は、局所的血流量(BV)に対応して、重み付け係数
を与え、ここでBV
i=AUC
hiである。すなわち、上記曲線下面積(AUC)および局所的血流量を用いた重み付け係数の決定は、対象ボクセル(VOI)に流入する血流の体積に応じて重み付け係数を計算することに対応する。第2の例では、重み付け係数は、組織応答から導出された正規化された逆の(分母分子を転置した)平均通過時間(1/MTT_h)であり、局所的血流速度(BVec)に対応し、重み付け係数
である。すなわち、上記局所的血流速度(BVec)(平均通過時間(1/MTT_h)の逆数)を用いた重み付け係数の決定は、対象ボクセル(VOI)に流入する血流の速度(時間の逆数)に応じて重み付け係数を計算することに対応する。第3の例では、重み付け係数は、BVおよびBVecの正規化された積であり、局所的血流(BF)に対応し、
である。すなわち、上記局所的血流(BF)を用いた重み付け係数の決定は、対象ボクセル(VOI)に流入する血流の流量に応じて重み付け係数を計算することに対応する。第4の例では、重み付け係数は、すぐ近隣だけでなく、VOIに対してさらに距離が離れた隣接ボクセルも含む。すぐ近隣とは、ボクセルが、少なくとも1点によって対象のボクセルに直接連結されていることを意味する。
次に図11を参照すれば、本システムおよび方法の実施形態では、3D血液流出ベクトルF
out_VOIは、対象のボクセル(VOI)に属するものであり、図10に関して説明された3D血液流入ベクトルF
in_VOIと組み合わせられる。このベクトルにより、図10に示すような図に関連する方法およびシステムは、ベクトル性灌流プロセス方式として考えられる。3D血液流入ベクトルF
in_VOIは、対象のボクセル(VOI)に属するものであり、選択された隣接ボクセルの線形結合として求められ、これは、次の通りであり、
はそれぞれ、VOIの3D中心を原点とした球面座標系(r、θ、φ)において、中心が(r1、θ1、φ1)に位置する第1の隣接ボクセルAdjV1、および中心が(r2、θ2、φ2)に位置する第2の隣接ボクセルAdjV2の流入ベクトルである。w1inは、第1の隣接ボクセルAdjV1における近似TICから導出された正規化パラメータとし定義された第1の重み付け係数である。一方でw2inは、第2の隣接ボクセルAdjV2における近似TICから導出された正規化パラメータとして定義された第2の重み付け係数である。
さらに図11を参照すれば、3D血液流出ベクトルF
out_VOIは、対象のボクセル(VOI)に属するものであり、選択された隣接ボクセルの線形結合として求められ、これは、次の通りであり、
はそれぞれ、VOIの3D中心を原点とした球面座標系(r、θ、φ)において、中心が(r3、θ3、φ3)に位置する第3の隣接ボクセルAdjV3、および中心が(r4、θ4、φ4)に位置する第4の隣接ボクセルAdjV4の流出ベクトルである。w
1outは、第1の隣接ボクセルAdjV3における近似TICから導出された正規化パラメータとし定義された第1の重み付け係数である。一方でw
2outは、第2の隣接ボクセルAdjV4における近似TICから導出された正規化パラメータとして定義された第2の重み付け係数である。流入と流出ベクトル成分との両方に関して2つだけのベクトルが示されているが、いずれの流れも、ベクトル成分の対には限定されず、
のベクトル成分および対応する重み付け係数w
iの組を含み、この組はN個まで与えられ、以下で定義される。
同様に、1つの実施においては、重み付け係数は、上記で定義したような重み付け係数を有する正規化されたAUCなどの大きさ関連値である。他の実施態様においては、重み付け係数は、任意選択では、上記で説明したようなデコンボリューションプロセスによる組織応答h(t)から導出された任意のパラメータである。
さらには、3D血液ベクトルの方向、長さを視覚的に表現するため、3次元的に血液の流れの方向および血液速度の大きさを示すベクトル場が、特定の実施態様において組織応答を用いて色でレンダリングされる。たとえば、絶対的な血液量(BV)、血流速度(BVec)、血流(BF)、または任意の他のパラメータは、1つの実施において組織応答を用いて色分けされる。時間関連パラメータは、ピークまでの時間に限定されず、中間通過時間および平均通過時間を含む。加えて、入力関数は、特定の3つの方向に沿った血液流入に限定されず、対象の領域に対して軸に沿った複数の方向に沿う血流を含む。別の実施形態では、流入および流出データを組み合わせた3D場のベクトルが、レンダリングされる。たとえば、流入および流出はそれぞれ、赤などの1つの原色および青などの第2の原色に帰属させる。加えて、各色のグラデーションは、BFなどの選択されたパラメータの値に応じて、輝度における線形法則または対数法則などの所定の法則にしたがう。
次に図12を参照すれば、さらなる別の実施形態において、流入および流出ベクトルが、外挿法において使用され、所定のVOIに対する3D曲線ベクトルを生成する。外挿プロセスは、ベジエ曲線およびスプライン補間などの任意の方法を用いて行われる。生成された3D曲線ベクトルは、流入と流出との間の流れの曲率を表している。図示する例では、3D流入ベクトル
は外挿されて、対象のボクセル(VOI)に対する3D流入ベクトルの3D血流曲線ベクトル
を生成する。
本実施形態のうち1つの実施形態では、平均、標準偏差、またはエントロピなどの統計的パラメータが、ボクセルのグループを含む対象のボリューム内の3D場のベクトルまたは3D曲線ベクトルから導出される。統計的パラメータは、腫瘍などの特定組織の微小血管状態を示すものである。たとえば、統計的パラメータは、対象のボリュームによって手動でまたは自動的に描出された組織の一部分の空間的不均一性または均一性のレベルを示す。この点において、1つの可能な臨床用途は、薬物療法に対する患者反応を示す、腫瘍の空間的不均一性のレベルによって薬物療法を監視することである。患者反応は、通常、腫瘍の空間的不均一性が低下する場合は陽性である。これとは反対に、空間的不均一性が増大する場合はむしろ陰性である。統計的パラメータの分析は、対象のボリューム内の灌流状態を示す、組織応答から導出されたBV、BVecおよびBFなどのパラメータの任意のパラメータに適用可能である。任意の空間的パラメータおよび灌流パラメータの線形結合はまた、実施形態において他の実施における組織微小血管系の状態を表すために、オプションとして使用される。
パラメータは、さまざまな方法で求められ使用される。1つの実施形態では、統計的パラメータは、局所的にまたは対象の3D組織もしくは臓器全体にわたって置かれた非直交格子、または微小血管の構造もしくは灌流の流れの方向を示す接続性のネットワークにおける3D場ベクトルまたは曲率ベクトルから求められる。これらのネットワークは、オプションとして、灌流状態を表す単一のパラメータを導出するための先進的統計分析の対象である。別の実施形態では、3D場ベクトル、曲線ベクトル、または組織応答灌流パラメータは、病変、腫瘍、壊死部分、および健康組織などの対象の3D組織を自動的にセグメント化するまたは描出するために使用される。1つの実施形態では、本方法およびシステムは、医用分子イメージングにおいて標的組織と、分子イメージング用造影剤との結合のレベルを定量化し評価するために使用される。他の実施形態では、本方法およびシステムは、3D超音波または任意の他の医用イメージング技術を介して行われる薬物送達システムにより、標的の造影剤によって運ばれた医薬品有効成分の放出を監視し、制御し、または引き起こすために使用される。最後に、人工知能手法を用いる1つの実施形態では、本パラメータのすべてまたは選択されたパラメータの組が、コンピュータ支援診断(CAD)アプリケーションソフトウェアをトレイニングするための特徴ベクトルとして入力される。コンピュータ支援診断アプリケーションソフトウェアにおいては、複数種類のパラメータや出力関数、灌流応答などに基づいて予測される疾患を判定する。
図4、6、8、10、11および12では、各例は、隣接ボクセルを、対象のボクセルに直接隣接して、並置されたボクセルとして示しているが、本実施形態は、直接隣接するボクセルを必ずしも必要としない。この理由のため、用語、隣接ボクセルは、本明細書および特許請求の範囲においては、対象のボクセルに並置された直接隣接するボクセル、ならびに対象のボクセルに並置されていない近隣ボクセルの両方を含むように交換可能に使用される。この点において、図10、11、および12に示すような直接隣接するボクセルは、対象のボクセルに対して任意の空間的に連結されたボクセル(6面+8コーナー=14隣接ボクセル)を含む。この点において、直接並置されたボクセルの数は、対象の単一のボクセルに対して、最小1から最大13までの範囲になる。
なお、対象のボクセル(VOI)に対して直接隣接するボクセルは、14隣接ボクセルに限定されず、例えば、最大26のボクセルであってもよい。26の隣接ボクセルは、具体的には、対象ボクセルの6面と、8つのコーナーと、12の辺に隣接するボクセルである。なお、対象のボクセル(VOI)から所定のボクセルだけ離れた離散的なボクセルが、隣接ボクセルの代わりに用いられても良い。また、対象ボクセルの周囲の複数のボクセルを1つの単位として、入力関数が求められてもよい。加えて、3D流入ベクトルは、入力関数に関する入力ボクセルを決定または特定するために用いられてもよい。また、3D流出ベクトルは、出力関数に関する出力ボクセルを決定または特定するために用いられてもよい。
微小気泡が血管内または血液プール造影剤に使用される純灌流プロセスの文脈では、上記の最小/最大選択は、「エネルギー保存則」にしたがって厳密に順守されなければならない。すなわち、血液の流入/流出は、創出または破壊されない。この規則の1つの可能な例外は、造影剤が活性化プロセスにより組織内に蓄積することができる医用分子イメージングである。なお、造影剤が組織内に蓄積したり、あるいは超音波によって破壊されたりする造影撮像においては、造影剤の流入/流出量が等しくならない場合がある。
次に図13を参照すれば、フローチャートは、本実施形態による組織灌流応答を定量化する方法に含まれる例示的なステップを示している。各ステップは、単に例示的なものであり、本実施形態による組織灌流応答を定量化するプロセスを他の実施形態で実施するために、これより多いまたは少ないステップまたは動作をオプションとして含む。図示するプロセスでは、ステップは、本実施形態による組織灌流応答を定量化するための実施形態において前に説明したように、ソフトウェアおよびハードウェアの任意の組み合わせによってオプションとして実施される。他方では、図示するプロセスのステップはまた、コンピュータ断層撮影(CT)、陽電子放出コンピュータ断層撮影(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、および光音響イメージング(PI)を含む、前に説明されていないモダリティのためのソフトウェアおよびハードウェアの特定の組み合わせによって実施されてもよい。
また、図13を参照すれば、図示するプロセスは、所定の造影剤がステップS10において被検体に灌流された後、ステップS20においてデータを取得する。灌流プロセスは、微小気泡などの所定の造影剤が、血液循環によって特定の組織ボリュームなどの対象の領域内に入ることを可能にする。造影剤の取り込み動態は、ステップS30において、取得されたデータに基づいて時間強度曲線(TIC)を生成することによってさらに調査される。TICの1つのグループは入力関数であり、対象の領域に対して少なくとも1つの所定の血流方向にしたがって生成される。入力関数は、対象の組織領域(tROI)に供給する動脈内の時間tにわたる造影剤の動的取り込みを描出する。1つの例示的な実施では、所定の方向は、座標系の軸に対して平行であり、選択されたボクセルは、組織内の対象のボクセル(複数可)に隣接している。隣接ボクセルの選択は、VOIの近隣の特定のボクセルを排除することによって、対象のボクセル(VOI)に対するその血流方向にしたがって実施される。TICの他のグループは、ボクセルに基づいてtROI内の時間tにわたる造影剤の動的取り込みを描出する出力関数である。
ステップS30では、TICを生成するために、所定の血流方向は、本実施形態による、対象の特定のボクセルに対する血液流入方向および血液流出方向を含む。特定の実施形態では、血液流入方向および血液流出方向の各々は、3Dベクトルの組み合わせである。たとえば、血液流入方向は、対象のボクセルへの血液流入に寄与する血流の方向および大きさを各々示す3Dベクトルの2つまたはそれ以上の組み合わせである。同じようにして、血液流出方向は、対象のボクセルからの血液流出に寄与する血流の方向および大きさを各々示す3Dベクトルの2つまたはそれ以上の組み合わせである。血液の流入と流出の両方に関しては、血流の大きさは、血液量および流速を含む。さらには、3Dベクトルは、3Dベクトルの和が血液流入ベクトルまたは血液流出ベクトルになるように、対応する重み付け係数の組によって任意選択で重み付けられる。
ステップS40では、特定のTICがtROI内の組織灌流応答h(t)のさらなる決定から排除されるべきか否かが確認される。この選択は、本実施形態によるプロセスに先立ってまたはプロセスの間にオプションとして行われる。TICの排除が行われることがステップS40において確認された場合、プロセスはステップS50に進む。他方では、TICの排除が行われないことがステップS40において確認された場合、プロセスはステップS60に進む。
排除ステップS50は、対象の領域に対して2つ以上の所定の血流方向に関して生成された入力関数の一部の成分を排除するために、所定の排除規則にしたがって実施される。所定の排除規則は、時間強度曲線のピークまでの時間、中間通過時間、または平均通過時間などの時間関連パラメータまたは指標に基づく。別の時間関連指標は、平均通過時間によって血液量を割ることによって得られる血流を含む。たとえば、第1の所定の血流方向に対する第1のTICのピークまでの時間(TTP)は、対象のボクセル(VOI)内の出力関数のものより長く、一方で第2の所定の血流方向に対する第2のTICのTTPは、VOI内の出力関数のものより短い。1つの例示的な排除ステップS50では、第1および第2のTICのいずれか1つが、所定の規則に応じて排除される。すなわち、造影剤の取り込みがVOI内への血液流入に対して調査される場合、第2のTICが排除される。他方では、造影剤の取り込みがVOIからの血液流出に対して調査される場合、第1のTICが排除される。入力関数は、対象の組織領域(tROI)に供給する動脈内の時間tにわたる造影剤の動的取り込みを描出するため、排除された成分は、特定の状況下では、tROIに供給する動脈内の時間tにわたる造影剤の取り込みに寄与しない。他の特定の状況下では、一部の成分は、排除された成分が、tROIに供給する動脈内での時間tにわたる造影剤の取り込みに寄与する場合であっても排除される。
時間関連パラメータ、時間関連パラメータの組み合わせ、または時間関連パラメータおよび大きさ関連値(正規化されたAUC)の組み合わせは、任意の隣接ボクセルにおける近似曲線から求められる。オプションとして、上記のパラメータは、近似曲線の導関数(解析的または数値的)に基づいて決定される。たとえば、1次導関数は、時間に対する血流速度を示し、2次導関数は、血流加速度を示している。さらには、3次導関数は血液の躍度(jerk)(加速度変化率)を示し、4次導関数は血液の激しい揺れ(jounce)を示し、より高次の導関数に関してはその他諸々である。
最後にステップS60では、組織灌流応答が、上記で説明した入力関数および出力関数に基づいて求められる。組織灌流応答h(t)は、tROIにおける時間tにわたる伝達関数である。出力関数y(t)は、入力関数x(t)と組織灌流応答h(t)とをコンボリューションすることによって得られ、これは以下によって示される。
その結果、対象の組織領域(tROI)における組織灌流応答h(t)は、入力関数x(t)と出力関数y(t)とのデコンボリューションによって得られ、これは以下によって示される。
上記で説明したように、入力関数x(t)は、排除がステップS40において確認された場合にステップS50において排除された後の残りの入力関数成分の和である。入力関数x(t)はまた、所定の血流方向に沿った単一の所定の関数であり、またはオプションとして、ステップS50における排除がステップS40において確認されないときの特定の指定された入力関数成分の和でもある。
上記で説明した方法およびシステムは、独立した造影剤の投与と、対象のボリュームに対する血流方向の選択による特定のTICデータの排除との組み合わせに基づいて、灌流の定量化を実質的に改良する。この方法は、造影剤の投与パラメータおよび心拍出量などの患者の状態から独立しているため、客観的な方法で灌流を定量化することを可能にしている。上記で説明したように、造影剤は、ボーラス投与によって被検体に投与される。すなわち、造影剤の投与技術は、本発明によるシステムおよび方法において対象のボクセルあたりの組織灌流応答を求めるために、特定の用量およびまたは速度に限定されない。
上記で説明した方法は単に例示的なものであり、他の実施態様は、ソフトウェアとハードウェアの両方において利用可能である。換言すれば、本実施形態による、組織灌流応答を求めるためのシステムは、ハードウェアデバイスまたはソフトウェアプログラムの特定の組に限定されない。この点において、システムおよび方法は、特定のモダリティに限定されず、また、本実施形態を実施するためにCT、MRI、PETおよびPIなどのコントラストイメージングのモダリティを含む。
上記のプロセスは、単に例示的なプロセスを説明するものであり、本実施形態を実施するために、いくつかのクロスポイントスイッチおよびまたはその加算器などにおける特定の実施に限定されない。同様に、上記のステップは、単に1つの例示的な実施を示しており、本実施形態を実施するために、クロスポイントスイッチからの特定の数の出力の組に限定されない。
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラム(医用画像処理プログラム)をワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
また、上記実施形態の変形例として、本超音波診断装置1の技術的思想を医用画像処理装置で実現する場合には、例えば図2の構成図における破線内の構成要素を有するものとなる。この時、灌流応答特性おw決定する処理は、図13のステップS30乃至S60の処理に対応する。これらの処理については、実施形態と同様である。なお、ステップS20におけるデータは、予め内部記憶部118に記憶される。また、医用画像処理装置において、超音波診断装置から出力されたDICOMファイル(例えば、ボリュームデータなど)を読み込んで、上記処理を実行することも可能である。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。