JP6282545B2 - 工具鋼を熱機械処理する方法および熱機械処理された工具鋼から作られた工具 - Google Patents

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Description

本発明は、工具鋼の熱機械処理、熱機械処理された工具鋼を用いて工具を成形する方法、および、金属成形および金属切削用途に用いられる工具に関する。
関連出願の相互参照
この出願は、米国仮出願第60/896729号の利益を請求する、2008年3月13日に出願された同時係属出願第12/047532号の一部継続出願であり、各開示は、ここで参照により本明細書に全体が組み込まれる。この出願はまた、ここで参照により本明細書に全体が組み込まれた2008年2月15日出願の米国仮出願第61/029236号の利益を請求する。
市販のカーボンおよび合金鋼の様々な品質等級のなかで、工具鋼の品質等級は、工具が激しい応力、衝撃および/または摩耗を被る用途において一般に用いられる。工具鋼は、概して、特有の硬度、摩耗に対する耐性、切れ刃を保持するための能力、および、高い温度での変形に対する耐性により特徴付けられる。その結果、工具鋼は、金属成形および金属切削用途、検査装置およびゲージ(gage)、ならびに工作機械における摩耗/衝撃要素に、広く利用されている。
種々のタイプの工具が、機械加工、貫通穴開け、鋳造、絞り(drawing)、粉末圧縮、金属彫刻、ピンスタンピング(pin stamping)などの、金属成形および金属切削の用途に用いられる。具体的には、パンチおよびダイが、金属および非金属のワークピースを刺し通し、穴開けし、また、形作るために使用される金属成形工具のタイプを代表する。切削工具およびインサート(insert)は、金属および非金属のワークピースを形作るように機械加工用途に用いられる金属切削工具のタイプを代表する。プラグゲージ、ねじゲージ、パイプゲージ、リングゲージおよび設定盤は、検査用途に用いられる工具のタイプを代表する。マシンスライドおよびジブ(gib)は、工作機械に用いられる摩耗および衝撃要素のタイプを代表する。
パンチおよびダイは、それらの稼働寿命の間に、激しい、繰り返される負荷を受ける。具体的には、パンチは、それらの使用の間に負荷される著しい応力により誘発される壊滅的な破損によって使用中に働かなくなる傾向がある。金属成形工具に対する要求は、超強高度鋼(UHSS)、上級の高強度鋼(AHSS)、変態誘起塑性(TRIP)鋼、双晶誘起塑性(TWIP)鋼、ナノ鋼およびマルテンサイト系(MART)鋼などの、より高い強度重量比を有する鋼から構成されるワークピースの導入に伴い、よりシビアになる。例えば、自動車産業は、車体構造用にこれらのタイプの高強度、軽量鋼をより頻繁に使用するように移行している。
したがって、必要とされるものは、工具鋼をその機械特性を改善するように熱機械処理する方法、および、改善された機械特性を有する、熱機械処理により形成された工具である。
一実施形態では、工具鋼からなるプリフォームを熱機械処理する方法が提供される。工具鋼は、マルテンサイト変態開始温度および安定オーステナイト温度を有する。プリフォームは、オーステナイトを含む領域を有し、この領域は、外表面と、その外表面に関する複数の外側寸法とを備える。この方法は、マルテンサイト変態開始温度と安定したオーステナイトの温度との間の処理温度で、少なくともプリフォームの領域を確立するステップを有する。プリフォームの領域が処理温度にある間、この領域は、領域の外側寸法の少なくとも1つを変化させるように、かつ外表面から外表面の下方1ミリメートル以上の深さに延びる深さにわたって領域の微細構造を修正するように、変形される。領域が変形された後、領域は室温まで冷却される。
他の実施形態では、ワークピースを修正するための機械内で使用するための工具が提供される。工具は、工具鋼からなる部材を有する。この部材は、機械と連結されるように構成された第1の部分と、ワークピースに接触するように構成された第2の部分とを画定する外表面を有する。この部材は、外表面から1ミリメートルを超える深さまで延びる第1の領域と、第1の領域により外表面から分離された第2の領域と、を有する。第1の領域は、約34°を超える平均誤配向角度を有する誤配向角度の分布を有する複数の粒子、第2の領域より少なくとも10%小さい平均粒子サイズを備え、また、第2の領域における複数の粒子とは異なる粒子配向を有する。
この明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面が、本発明の実施形態を例証し、上記の簡単な説明、および、下記の実施形態の詳細な説明とともに、本発明の実施形態の原理を説明する役割を果たす。
本発明の実施形態による熱機械処理M2 AISI工具鋼に関する例示的な時間-温度の関係のグラフ表示である。 本発明の実施形態による熱機械処理工具鋼に関する例示的な時間-温度の関係のグラフ表示である。 本発明の典型的な実施形態によるツールの側面図、および、対応するダイの断面説明図である。 図2Aの工具およびダイの拡大断面説明図である。 変形前のシェルおよびコアを有するプリフォームの一実施形態の斜視図である。 変形後のシェルおよびコアを有するプリフォームの一実施形態の斜視図である。 図3Cの変形されたプリフォームから作られる工具の一実施形態の斜視図である。 M2工具鋼で作られる本発明の例示的な一実施形態の存在する相の測定結果のグラフ表示である。 M2工具鋼で作られる本発明の例示的な一実施形態の粒子の誤配向角の分布の測定結果のグラフ表示である。 M2工具鋼で作られる本発明の例示的な一実施形態の極点図である。 M2工具鋼で作られる本発明の例示的な一実施形態の存在する相の測定結果のグラフ表示である。 M2工具鋼で作られる本発明の例示的な一実施形態の粒子の誤配向角の分布の測定結果のグラフ表示である。 M2工具鋼で作られる本発明の例示的な一実施形態の極点図である。 従来技術による熱処理されたM2工具鋼棒材の存在する相のグラフ表示である。 従来技術による熱処理されたM2工具鋼棒材の粒子の誤配向角の分布のグラフ表示である。 従来技術による熱処理されたM2工具鋼棒材の極点図である。 本発明の一実施形態による工具鋼を熱機械処理するための例示的なプリフォーム構成を示す斜視図である。 本発明の一実施形態による処理前の図7の例示的なプリフォームの平面図である。 変形に続いて、図7の切断線8B-8Bに沿ってとられた図8Aの例示的なプリフォームの部分断面図である。 図4および5Aに示されるプリフォーム構成を熱機械処理するための例示的なダイおよびラム(ram)の概略的な断面表示である。 図8Bに示されるように構成されるプリフォームの図8Bの楕円形状の断面を通じてとられた断面の13Xの倍率で撮影された顕微鏡写真である。 曲線として引かれた優先的な粒子配向を示す、図10Aの顕微鏡写真の概略的な表示である。 変形前のプリフォームの一構成を示す斜視図である。 変形および機械加工後のプリフォームの一構成を示す斜視図である。 鋼材料のシートを切断するために剪断またはトリミング動作をもたらす、互いに対して動作可能な位置にある図11Bに示されるプリフォームから作られる工具の一組の斜視図である。 本発明の例示的な工具の切れ刃のプロファイルの摩耗測定結果の比較を示すグラフ表示、および、図11Cに示される構成をそれぞれ有する基準材料で作られる工具の切れ刃を示す図である。 図12Aのグラフに付与される摩耗プロファイルに関する測定位置を示す図11Cの工具の平面図である。 本発明の例示的な工具の切れ刃の輪郭の摩耗測定結果の比較を示すグラフ表示、および、図11Cに示される構成をそれぞれ有する基準材料で作られる工具の切れ刃を示す図である。 図13Aのグラフに付与される摩耗プロファイルに関する測定位置を示す図11Cの工具の平面図である。 本発明の例示的な工具の切れ刃の輪郭の摩耗測定結果の比較を示すグラフ表示、および、図11Cに示される構成をそれぞれ有する基準材料で作られる工具の切れ刃を示す図である。 図14Aのグラフに付与される摩耗プロファイルに関する測定位置を示す図11Cの工具の平面図である。 本発明の例示的な工具の切れ刃の輪郭の摩耗測定結果の比較を示すグラフ表示、および、図11Cに示される構成をそれぞれ有する基準材料で作られる工具の切れ刃を示す図である。 図15Aのグラフに付与される摩耗プロファイルに関する測定位置を示す図11Cの工具の平面図である。 切れ刃を包囲するエリアにおける優先的な粒子配向を示す1つの工具の切れ刃を包囲する図11Bに示される領域の17Xの倍率で撮影された断面の顕微鏡写真である。 優先的な粒子配向を示すために引かれた線を備えた、図16Aの顕微鏡写真の概略的な表示である。
本発明の一実施形態によれば、工具を作る一方法は工具鋼からプリフォームを製造するステップを含み、プリフォームの少なくとも一領域が熱機械処理される。プリフォームのこの領域は、典型的には、工具鋼の実質的な体積またはプリフォームの大部分を含む。円筒形のプリフォームの幾何形状に関しては、例えば、ラジアル鍛造処理または平面ひずみ鍛造処理で処理される熱機械処理された領域は、その体積の外側60%を包含し、工具鋼の残りの部分の内側体積は、その処理による影響を比較的受けなくてもよい。したがって、単純なプリフォームの幾何学形状に関しては、この領域の体積は、プリフォームの一断面の少なくともある外側体積を含み得る。この領域は、その断面積にわたって少なくとも部分的にまたは全体に延び得る。したがって、この実施形態では、外側体積または修正された領域が、領域の外表面から少なくとも0.039インチ(1ミリメートル)を超える深さまで延びるが、体積の寸法は、その深さがプリフォーム内により深く延び得るようなものであってもよい。しかしながら、その領域の深さは均一である必要はなく、むしろ、領域のある部分における深さは、0.039インチ(1ミリメートル)よりも小さいが、他の部分における深さは0.039インチ(1ミリメートル)より大きく延びる。
修正された領域は、内側体積まわりの層の形をした外側体積として前述されているが、その修正された領域は、不規則な形状の領域であってもよい。これは、例えば、プリフォームの外面が、変形前に、ある幾何学的形状を有するが、その後、異なる形状を備えた物体を形成するように、領域の外側寸法の少なくとも1つを変化させることにより変形される場合である。例えば、変形は、領域のある長さを増減し得る断面積または他の外側寸法の1つまたは複数における変化を含み得る。当業者は、処理される材料の体積が、それに限定されないが、プリフォームのサイズおよび形状ならびに変形装置の能力およびタイプを含む数々の他の要因に依存し得ることに気付くであろう。一般に、鍛造装置の耐荷重が増大しプリフォームのサイズが小さくなるにつれ、変形される領域は、プリフォームの、全部ではないが、より大きな部分を含み得る。したがって、ショットピーニングなどの表面処理作業とは異なり、本発明の実施形態は、部品の予め確立された輪郭をたどるように強いられる薄い表面層を形成する場合に限定されない。更に、本発明の実施形態は、工具鋼のより大きな部分を変形させ、また、いくつかの実施形態では、プリフォームの輪郭または外側の表面寸法を決定する。この点において、プリフォームの領域は、プリフォームまたは工具の大部分の厚さにわたって測定され得る。また、プリフォームの形状は、工具の最終形状に無関係であり得る。
処理される工具鋼の体積に影響を及ぼすことに加え、熱機械処理前のプリフォームの幾何または形状は、最終的な微細構造に影響を及ぼし得る。例えば、プリフォームの形状により、粒子の配向、ならびに熱機械処理された領域における微細構造の特性が影響を受ける、または決定される可能性がある。当業者は、工具鋼のプリフォームが、円形、矩形または多角形の断面を有する棒状ストック、または、より複雑な形状および断面を有するストック材料などの、任意の数の断面形状を有する複数の構成の1つであり得ることを理解するであろう。プリフォーム幾何の決定は、歴史的経験、工具要件、および/または、処理制限に基づいて進展させられ得る。例えば、プリフォームの幾何形状は、採用される処理のタイプ、および、目標とされる工具の最終幾何形状に基づき選択され得る。
領域の温度が本発明の異なる実施形態による後述される温度範囲に保持される間に、領域は、変形を被る。本発明の実施形態では、変形の量が、変形した領域の機械特性を改良するのに十分である。変形の量は、熱機械処理による断面積における相対的減少として規定される縮小率の計算により定量化され得る。領域の特性の改善は、変形の量に比例すると考えられる。限定ではなく一例として、わずか20%ほどの縮小率が、領域の機械特性における測定可能な改善をもたらし得る。機械特性における測定可能な改善をもたらす変形の量は、工具鋼の動的再結晶によってのみ制限されると考えられる。言い換えれば、変形の量は、微細構造に動的に再結晶させるように効果的な閾値以下に保たれ得る。変形された微細構造が再結晶した場合、再結晶されない微細構造と比較して、機械特性における測定可能な減少が観察され得る。特定の機械特性における減少は、少なくとも約20%であり得る。しかしながら、減少が観察され得るにもかかわらず、機械特性は、より詳細に後述されるように、特定された温度範囲を超えて、工具鋼を熱処理することにより調製された工具と比較して改善され得る。当業者は、変形の量に加えて、動的再結晶が、工具鋼の組成および変形が生じる温度を条件とすることを理解するであろう。
前述したように、熱機械処理は、工具鋼プリフォームが高い温度に保持されつつ、工具鋼プリフォームを塑性的に変形させるステップを含む。プリフォームを塑性的に変形させ得る適切な処理には、それに限定されないが、ラジアル鍛造、リング圧延、回転鍛造、スエージング、チキソフォーミング(thixoforming)、オースフォーミング(ausforming)および温間/熱間アップセッティング(warm/hot upsetting)などの鍛造処理が含まれるが、他の適切な変形処理が利用可能である。例えば、技術はまた、主要な変形方向が、プリフォームの長手軸に実質的に垂直でない場合のものも含み得る。前述したように、高い温度でのショットピーニングなどの他の技術は、非常に浅い変形をもたらし、したがって、機械特性における必須の改善をもたらすためにより深い塑性変形が必要とされる場合には、除外される。
1つのこのような処理は、主として、工具鋼プリフォームの径方向および周方向の塑性変形を生じる平面ひずみ鍛造である。したがって、平面ひずみ鍛造は、加えられた荷重に垂直である方向にて粒子の伸長を制限し得る。プリフォームは、結果として、その長さに沿って、また、その周囲で、実質的に均一な機械特性の分布を示し得る。したがって、一実施形態では、平面ひずみ鍛造が、特定方向における粒子の伸長を、たとえあってもほとんど生じない塑性変形処理を含む。しかしながら、工具鋼プリフォームを熱機械処理する場合、プリフォームを塑性変形させ得る前述した処理のいかなる組合せも用いられ得る。
また別の実施形態では、既存の工具が、プリフォームとして役割を果たす。例えば、未使用の工具に加えて、既存の工具には、使用済みの工具、損傷した工具、または、壊れた工具を含めることができる。既存の工具は、工具をその有効性を回復させるべく再製造または再処理するために、本明細書に記述されるように、熱機械処理される。
前で規定されたように、熱機械処理は、プリフォームの領域を、その領域が高い処理温度に保持されつつ、塑性変形させるステップを含む。変形の間のプリフォーム温度は、より高い温度からプリフォームを冷却することにより確立され得る。かかる処理は、ただ例として、溶融された原材料から工具鋼のビレットまたはプリフォームを鋳造するステップ、鋳造プリフォームをより低い処理温度まで冷却するステップ、および、処理温度でそれを変形させるステップ、を含み得る。代替として、プリフォームは、より詳しく後述されるように、プリフォームを室温でまたは室温に近い温度から加熱することにより変形が生じる処理温度にすることができる。
具体的には、また、図1を参照して、プリフォームが、工具鋼のマルテンサイト変態(Ms)の開始温度(マルテンサイト変態開始温度)を超える一方、プリフォームがオーステナイトを含む場合には工具鋼の安定オーステナイト温度(AC3)未満である処理温度で変形される。Msは、マルテンサイトへのオーステナイトの変態が冷却の間に開始する温度であり、また、AC3は、オーステナイトへのフェライトの変態が加熱の間に完了する温度である。
加えて、図1にて明らかなように、オーステナイト変態開始温度(AC1)は、オーステナイトが加熱の間に形成を開始する温度を表す。当業者は、Ms、AC1およびAC3が、それぞれ、工具鋼の特定の組成に依存していることを理解するであろう。したがって、Ms、AC1またはAC3が特定の温度とともに参照される本明細書に記載されたいかなる事例も、その定義付けをその特定の温度に限定するためのものでない。
前で定義された温度を考慮して、また、一実施形態によれば、工具鋼プリフォームがMsとAC3との間の温度にある場合に、また、領域がオーステナイト(例えば準安定オーステナイト)を含む場合に、工具鋼プリフォームの全てまたは一部が処理される、すなわち、工具鋼プリフォームが塑性的に変形されるまたは鍛造される。結果として、工具鋼プリフォームの変形された領域は、後述されるいくらかの改良された機械特性を有する。例えば、衝撃強度または変形された領域の靱性における改善は、少なくとも約20%大きくなり得、また、更なる例において、微細構造が主に安定オーステナイトである場合には、AC3を超えてプリフォームを変形させるよりも少なくとも約50%大きくなり得る。
前で紹介されたように、一実施形態では、方法が、工具鋼プリフォームを、プリフォームの少なくとも一部がオーステナイトを含むような温度範囲内に加熱するステップを有する。当業者は、多くの異なる温度プロファイルが、変形前に、工具鋼プリフォームを前述した温度範囲内にもっていくために利用され得ることに気付くであろう。ただ一例として、また、図1を参照すれば、工具鋼プリフォームが、Ms未満の温度からAC1を超える処理温度(符号10で示される)へ加熱され得る。この例では、その温度が約1530°F(約832℃)であり、AC3が約2250°F(約1232℃)である。工具鋼プリフォームは、その後、それがAC1とAC3との間の処理温度に保持されつつ、変形され得る。
他の温度プロファイルが、Ms未満の温度からAC1とAC3との間の温度へ工具鋼プリフォームを加熱するステップと、その後、それを変形させる前に、Msを超える処理温度(符号11で示される)まで工具鋼プリフォームを冷却するステップと、を有し得る。図1Aに示される更に別の実施形態では、温度プロファイルが、工具鋼プリフォームをAC3を超える温度に加熱するステップと、その後、それを変形させる前に、AC1とAC3との間の処理温度(符号12で示される)まで、または、MsとAC1との間の処理温度(符号13で示される)まで冷却するステップと、を有し得る。
変形の間の処理温度は、上昇しても、低下しても、実質的に同じままであってもよいが、領域の温度は、AC3とMsとの間のままである。図1および1Aに示されるように、変形が起きる温度(例えば10、11、12および13での)は、水平線として示される。水平線が等温状態を表し得るが、当業者は、実際の処理温度におけるいくらかの変動が生じることを理解するであろう。例えば、工具鋼プリフォームの実際の処理温度は、変形の間に、±50°F(±28℃)で変わる可能性がある。実質的に等温である状態に領域を維持するための温度制御には、閉ループ温度フィードバック制御システムを介して熱を意図的に追加する、または除去することが必要とされる可能性がある。
しかしながら、温度の上昇または低下が、変形の間に生じ得る。温度の上昇または低下は、意図的なもの、または、変形の間に温度を制御しない結果であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、プリフォームの温度が、エネルギーが変形によりプリフォームに加えられる速度のせいで、150°F(83℃)ほど上昇し得る。追加のエネルギーは熱に変換され、熱を下げるまたは除去することにより補償されない場合、それが領域の温度を上昇させる。したがって、処理温度は、領域の温度が、AC1を超える温度で開始し、AC1未満の温度で終了し得る、または、AC1未満の温度で開始し、AC1を超える温度で終了し得るように、上昇または低下し得る。他の実施形態では、領域が、変形が生じている間に領域の温度を下げるように意図的に冷却され得る。しかしながら、プリフォーム温度が実質的に変形処理の間に変化した場合、粒子の動的再結晶が、領域の衝撃強度および靱性を低下させ得ることに留意されたい。したがって、等温処理、すなわち、変形の間に工具鋼プリフォームの実際の処理温度を実質的に一定に保持することは、後述されるように、領域の強度、靱性、および、他の機械特性を最大化し得る。
図1および1Aを引き続き参照すれば、種々の加熱および冷却処理が採用され得る一方、処理温度および処理時間が、炭化物ノーズ14またはベイナイトノーズ(bainite nose)16を回避するように制御される。当業者は、AC1以下の温度で、工具鋼が、領域があまりに長くこれらの範囲に保持された場合、炭化物またはベイナイトをもたらし得ることを理解するであろう。例として、M2 AISI工具鋼プリフォームは、実質的な炭化物またはベイナイト相形成なしに、少なくとも2分の期間にわたって変形され得る。しかしながら、プリフォームがこの範囲における温度に保持され得る時間量は、他の要因とともに、少なくとも工具鋼の組成および温度に依存している。
熱機械処理に続いて、プリフォームは、より低い温度に冷却される。冷却または焼き入れ(quenching)が、強制空気対流により、または、プリフォームを室温まで冷却する前に、領域を中間温度に保持することにより達成され得る。当業者は、焼き入れが、例えば、水または油焼き入れを含む他の冷却方法および媒体を有し得ることを理解するであろう。付加的な例として、領域は、低温処理を条件とし得るもので、ここで、領域は、より大きな割合の残留オーステナイトをマルテンサイトに変化させるために、1つまたは複数の段階で約-150°F(約-101℃)と約-300°F(約-184℃)との間の温度まで冷却される。低温処理は、例えば、液体窒素で達成され、また、実質的な割合の残留オーステナイトを含む他の工具鋼がこのタイプの処理から恩恵を得るが、主としてA2およびD2の工具鋼で採用され得る。焼き入れの速度は、工具鋼の臨界冷却速度、すなわち、炭化物ノーズ14およびベイナイトノーズ16等の望ましくない変態を防止するための連続した冷却の最小速度よりも大きい。したがって、冷却速度は、炭化物またはベイナイト等の望ましくない分解生成物への準安定オーステナイトの実質的な変態を回避するのに十分である。より速い冷却速度もまた使用可能であるが、より速い冷却速度は、領域に熱衝撃をもたらさない、または他の形で工具鋼プリフォームを歪ませないものに限定される。
更に、一実施形態では、冷却の後に、1つまたは複数の焼き戻し処理が行われる。例えば、焼き戻しは、約45分から約60分間、約850°F(約454℃)と約1000°F(約537℃)との間の温度まで領域を加熱するステップを有し得る。焼き戻しは、残留オーステナイトをマルテンサイトを変換することにより、微細構造を修正する。当該技術において知られるように、複数の焼き戻しサイクルが、残留オーステナイトを変換するために用いられ得る。当業者は、焼き戻しが、工具鋼の組成、プリフォームの幾何形状およびサイズ、許容される残留オーステナイトの量、および、利用される焼き戻し処理の数に応じて、より短いまたはより長い期間、より高いまたはより低い温度まで加熱するステップを有し得ることを理解するであろう。一実施形態によれば、焼き入れに続き、焼き戻し前に、領域はAC3で、またはAC3を超える温度で熱処理されない。更に、領域は、変形の間に領域が経験したいかなる温度をも超えて加熱されなくてもよい。言い換えれば、プリフォームは再加熱され得るが、いずれの後の再加熱の間の温度も、安定オーステナイト温度とマルテンサイト開始温度との間の温度で領域中のオーステナイトを変形させる結果としてのひずみまたは転位の増大を実質的に抑制したり変化させたりしない。
他の実施形態では、方法が、更に、熱機械変形処理後に、工具鋼プリフォームを工具に仕上げるステップを有する。仕上げは、最終的な所定形状および/または表面仕上げをもたらするように、材料除去処理を有し得る。例えば、従来の仕上げ処理は、工具を使用のために準備するように、機械加工、研削、研磨/つや出し、または、その組合せを有し得る。しかしながら、仕上げは、プリフォームを工具に形付けるように、少量の材料除去のみを必要とし得る。例えば、変形は、変形に続いて、プリフォームの少数の後続処理があればそれが工具を製作するために必要とされるようなニアネットシェイプ鍛造処理を含むことができる。
1つまたは複数の二次的な処理が、工具の冷却または仕上げに続き得る。二次的な処理は、工具上に被覆物を形成するステップ、または、ある方法で工具の表面を更に修正するステップを有する。例となる二次的な処理は、工具の変形された領域または工具全体を耐摩耗材料で溶射するステップまたはクラッディングするステップを有する。他の二次的な処理は、それに限定されないが、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)または塩浴被覆処理を含む被覆技術により工具の作業面上に被覆物を加えるステップを有する。他の表面修正技術は、工具の作業面における表面層を修正するように用いられ得るイオン注入、レーザまたはプラズマ硬化技術、窒化、または、浸炭を有する。工具を更に修正するために、様々な異なる二次的な処理が、いかなる組合せでも用いられ得ることが理解されるであろう。
前述したように、プリフォームは、工具鋼で構成される。工具鋼は、他の材料を切削する、形成する、または他の方法で形作るために用いられる工具が作られる鋼の部類を表す。工具鋼は、熱処理を伴う焼き入れを示し得るとともに、所望の機械特性を達成するために焼き戻しされ得る。例えば、プリフォームは、冷間加工、熱間加工、高速工具鋼等級材料、または、独自の工具鋼等級のような工具鋼の種々の異なる分類から作製され得る。具体的には、工具鋼が、約0.35重量%から約1.50重量%までの範囲内の、また、別の例では、求められる炭化物相があればそれに応じて考慮される他の炭素含有量とともに、約0.85重量%から約1.30重量%までの範囲内の炭素含有量を備えた鉄-炭素(Fe-C)合金系である。
工具鋼は、しばしば、バナジウム(V)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、また、その組合せ等の炭化物形成元素の添加を含む。合金化添加に応じて、M6C、M2C、M23C6、M7C3またはM4Cのような1つまたは複数の炭化相が沈殿し得るが、他のタイプの炭化物が当該技術において知られるように形成し得る。ほとんど例外なく、工具鋼は、ニッケル(Ni)の意図的な添加を含まない。ニッケルは、公知のオーステナイト相安定剤である。しかしながら、工具鋼は、微量(0.3重量%最大) のこの元素を含み得る。
表1は、本発明の実施形態により工具鋼を作製するように用いられ得る例示的な工具鋼の重量パーセントにおける公称組成(鉄(Fe)である工具鋼のバランス)を示す。一例として、表1中の工具鋼のAC3が、約2100°F(約1149℃)と約2400°F(約1316℃)との間の範囲に入り、AC1温度が、約1300°F(約749℃)と約1680°F(約915.6℃)との間の範囲に入り、また、Msが、約320°F(約160℃)と約480°F(約249℃)との間の範囲に入る。
加えて、プリフォームはまた、粉末の金属材料、または、具体的には、粉末の金属工具鋼を有し得る。粉末金属工具鋼プリフォームは、工具鋼のバルクピース(bulk piece)を物理的に砕き、または他の方法で多くの小さな個々の粒子にし、粉末の金属を金型内に注入しまたは弱く凝集した成形体を作り出すように粉末金属をダイに通過させ、その成形体を当該技術において知られるように焼結させることにより一般に作られる。粉末の金属工具鋼から形成される工具は、しばしば、それらの製造方法の結果として等方特性を有するものとして特徴付けられる。しかしながら、本明細書に開示される実施形態により処理される場合、工具の特性は、従来の焼結および/または熱間等静圧圧縮成形法により処理される粉末の金属工具に比べて改善される。
本明細書に開示されるように工具鋼を処理することより、工具鋼の微細構造が修正される。前述したように、工具鋼は、それがオーステナイトを含みつつ、変形される。当該技術において知られるように、オーステナイトは、面心立方(fcc)結晶構造を有し、マルテンサイトは、体心正方(bct)結晶構造を有する。そのより多くの滑り面のため、オーステナイトは、マルテンサイトより高い延性(ductility)を有するものと、当該技術において通常の技術を有する者により考えられる。AC3を超えて形成するいかなるオーステナイトも、安定なものと、当業者により一般に認識される。つまり、AC3を超える温度では、オーステナイトは、通常、他の相へ分解しない。AC3未満の温度では、オーステナイトは、AC3とMsとの間の温度に長時間保持された場合、他の相に分解するため、不安定になると知られており、しばしば3準安定と呼ばれる。ここに記載される温度範囲に存在するオーステナイトは、準安定である。理論に制限されることは望まないが、準安定オーステナイトは、オーステナイトと同じ結晶構造を有するにもかかわらず、ひずみ履歴を保有すると考えられる。
準安定オーステナイトを含むプリフォームの塑性変形は、これらの温度間から焼き入れのみ行う場合、または、AC3を超える温度でプリフォームを鍛造し、その後に焼き入れを行う場合とは異なる微細構造をもたらす。結果としての変形領域の微細構造および材料特性は、工具鋼のタイプ、熱機械処理のタイプ、オーステナイトに引き起こされたひずみの大きさ、ひずみが引き起こされた速度、および、熱機械処理が実行された温度に依存し得る。例えば、MsとAC1との間の温度における準安定オーステナイトの熱機械処理は、AC1とAC3との間の温度における準安定オーステナイトの熱機械処理とは異なる微細構造をもたらし得る。しかしながら、いかなる場合にも、変形領域は、改良された機械特性を示す。
これらの温度範囲においてオーステナイトを変形させる結果として、一実施形態では、微細構造が、粒子の細かいものとなる。例えば、変形領域における粒子または結晶の平均サイズは、従来の処理で作られた工具にて観察されるものより少なくとも10%小さく、また、別の例では、少なくとも約25%小さくなり得る。いくつかの実施形態では、粒子の細かい微細構造は、焼き入れまたは他の処理の間により多くの粒子境界に沿った炭化物相の均一な沈殿を促進する。
加えて、他の微細構造の特徴は、転位密度の増大を有し得る。当該技術にて知られるように、転位は、オーステナイト内などの、結晶性固体内の線状欠陥である。他のタイプの転位が知られ、また、単結晶内に同時に形成するように多くのタイプの転位が知られるが、1つの典型的な転位は、結晶内の原子の余分な半平面(extra half-plane)により形成される。更に、粒子境界は、1つまたは複数の転位により表され得る。多結晶材料では、プリフォームの工具鋼材料のように、隣接する結晶間に存在する粒子境界は、ある粒子の結晶格子と隣接する粒子の結晶格子との間の不整合の領域である。隣接する粒子間の不整合の度合いまたは誤配向角度が、隣接する粒子の結晶構造が整列する0度から大きくなるにつれ、粒子境界における転位密度が大きくなる。したがって、粒子間の誤配向角度の測定は、転位密度、特に、粒子境界における転位密度の測定である。工具鋼プリフォームの領域を変形させることにより、粒子間の誤配向角度は、従来の方法によるAC3を超える熱間鍛造または熱処理により同様の組成の領域を変形させる場合を超える角度まで大きくなる。変形、焼き入れおよび焼き戻しの後のマルテンサイト粒子は、例えば、約34°を超える平均角度で誤配向させられ、また、別の例では、マルテンサイト粒子が、平均して少なくとも約40°だけ誤配向させられ得る。加えて、一実施形態では、領域の転位密度が、従来の処理の熱間鍛造されたまたは熱処理された部分より少なくとも25%大きい。転位密度および粒子サイズは、例えば電子後方散乱回折(EBSD)またはX線回折(XRD)技術を用いることにより測定され得る。変形領域の衝撃強度を改善することに加えて、高転位密度の場所は、変形の間に、または、その後の加熱または冷却作業において、炭化物相の沈殿のために、核生成点をもたらし得る。
変形領域はまた、粒子構造の好適な配向を示し得る。具体的には、変形領域の断面図において、粒子が、互いに対して配置されたまたは配向された場合に、粒子が微細構造に対する優先的な流れまたは方向性をもたらすように、粒子が集合的に引き延ばされ得るか、または、他の形状を有し得る。優先的な配向の方向は、工具の面の1つに対して、工具軸に対して、または、優先的な配向をも有する他の領域に対して、一方向にあり得る。本質的に、優先的な配向は、いかなる方向にもあり得る。一実施形態では、変形領域における粒子の優先的な配向は、工具の作業面の表面輪郭に従う。例えば、優先的な配向は、エッジを画定する2つの交差面により形成される表面輪郭に従い得る。粒子構造は、エッジに隣接したエリアで、1つの表面に平行である第1の方向から第2の表面に平行である第2の方向に移行しつつ、各表面に実質的に平行であり得る。プリフォームの最初の形状、処理前のプリフォームに存在するいかなる炭化物または合金バンディング(banding)、および、処理技術は、変形領域における粒子の優先的な配向を判断する上で、主要な要因であり得る。
したがって、一実施形態では、変形領域が前記微細構造の特性の2つまたはそれ以上の組合せにより特徴付けられる。例えば、変形領域が小さな平均粒子サイズを備えた粒子サイズ分布を有し得るとともに、粒子が工具の作業面または工具軸に対して優先的に方向付けられ得る。更に、領域が比較的高い転位密度を有するように特徴付けられ得る。一実施形態では、領域が、粒子境界にまた高転位密度の場所に配置されるより細かい、より均一に分布された1つまたは複数の炭化物相を有することにより、更に特徴付けられ得る。更に、それらの特徴は、大きなばらつきが2つまたはそれ以上の別個に形成された領域間に存在し得るものの、変形領域内である場所から他の場所まで大きく変化し得ない。例えば、プリフォームの部分が、比較的低い転位密度領域により分離される比較的高い転位密度領域を有し得る。領域間の転位密度のばらつきは、用いられる異なる処理(例えば平面ひずみ鍛造と比べてラジアル鍛造)、異なる鍛造速度または異なる鍛造強度、異なる温度等によるものであり得る。
理論に縛られることなく、発明者らは、熱機械処理からの外部エネルギーが、細かい粒子構造を形成してもよく、粒子構造に対する配向をもたらしてもよく、転位密度を増加させてもよく、または、準安定オーステナイト相内でその組合せをもたらすために利用されてもよいと考える。焼き入れに続いて、変形された準安定オーステナイトが、最終的に形を成す微細構造に有益に作用する。加えて、熱機械処理からの外部エネルギーが、微細構造における炭化物相の沈殿を促進し得る。例えば、AC1より低い温度での熱機械処理は、準安定オーステナイトにおける炭素の溶解度を低下させ、その結果、炭化物の沈殿を促進すると考えられる。関係のある実施形態において、炭化物相は、変形の間または冷却の間、または、変形および冷却の両方の間に、粒子境界および/または転位場所で沈殿し得る。したがって、AC1未満で処理される工具鋼プリフォームは、AC1を超える温度で処理される工具鋼プリフォームと比較して、他の改良された特性のなかで、より大きな強度を示す。更に、この温度範囲における転位密度の増大は、AC1より高い温度で熱機械処理されるプリフォームと比較して、実質的により高いと考えられる。
前述したように、プリフォームの変形領域は、従来の処理(例えばAC3を超える熱処理および/または熱間鍛造)と比較して、改良された特性により特徴付けられる。したがって、工具鋼プリフォームから作られる工具は、例えば、より長い耐用年数を示し得る。改良された特性は、(シャルピー試験による)衝撃強度、靱性、硬度または摩耗抵抗の1つまたは複数、または、その組合せにおける改良を有し得る。比較として、本発明の一実施形態により処理されたM2 AISI工具鋼のプリフォームの変形領域の衝撃強度は、AC3を超えて変形されたまたは鍛造なしで加熱処理された同様の組成の工具より少なくとも50%大きいものであり得る。いかなる実施形態でも、より長い工具の寿命は、衝撃に対する改善された耐性、他の応力に対する改善された耐性、または、使用中に経験される研磨の状態に対する改善された耐性によるものとすることができる。
図2Aおよび2Bを参照して、また、本発明の他の実施形態によれば、工具18が、機械(図示略)に接続または連結されるべき第1の部分24と、工具18が金属成形および金属切削用途に用いられる場合に、ワークピース28に接触する作業面26の典型的な形をなす第2の部分とを一般に有する外表面22を備えた部材20を有する。更に、外表面22は、工具鋼の嵩体積または主要部(mass)の外側境界を取り囲み、画定する。図2Bに最良に示されるように、取り囲まれた嵩体積内には、本明細書に記載されるように、少なくとも1つの領域30が形成される。領域30が、工具18の嵩体積全体により構成されない場合に、部材20は、微細構造の特徴の1つまたは複数において異なり、また、したがって、領域30と比較して前述した特性において異なる他の領域32を有し得る。
一実施形態では、図2Aを再度参照して、部材20が細長くされ、また、外表面22が、バレル(barrel)またはシャンク(shank)34、シャンク34の一端に配置される頭部36、および、シャンク34の頭部36とは反対側の端部に配置される先端部40を備えたノーズまたはボディ38を画定する。先端部40に支えられる作業面26は、切れ刃44に沿って、先端部40の側壁42に接続する。切れ刃44は、それに沿って側壁42および作業面26が合流する隅部を画定する。切れ刃44および作業面26は、ワークピース28の表面に接触する工具18の部分を一括して画定する。ワークピース28は、金属成形または金属切削用途にて、工具18により処理されるべき材料を有し得る。
工具18の長手軸または中央線50に沿って見たとき、細長い部材20のシャンク34およびボディ38は、例えば、丸い、矩形の、正方形の、または楕円形の断面形状等の、適切な断面形状を有する。シャンク34およびボディ38は、同一エリアの断面形状を有し得る、または、ボディ38は、シャンク34とボディ38との間に緩衝域52を提供するために、より小さい断面積を有し得る。いくつかの実施形態では、シャンク34およびボディ38は、中央線50まわりに対称的に配置され、具体的には、中央線50上に中央合わせされた円形のまたは丸い断面形状を有し得る。
工具18の頭部36は、工作機械またはプレス(図示略)のような金属加工機械とともに用いられる工具保持デバイスで保持されるのに適した構造を有する。例示的な実施形態では、頭部36が、シャンク34の直径を超える直径を有するフランジである。しかしながら、頭部36の代わりに、工具18が、ボールロック(ball-lock)、くさびロック(wedge lock)、タレット(turret)、または、工具18のシャンク34を工具保持デバイスと連結するための他のタイプの保持構造を代替として有してもよい。
代表的な実施形態にてパンチの構造を有する工具18は、ダイセット(die set)54の構成要素を典型的に形成する。ダイセット54は、工具18の先端部40の一部を受ける開口部58を含むダイ56を更に有する。ダイ56および工具18は、共に押圧された場合に、ある所望な方法で、ワークピース28にて形作られた穴部を形成するように、または、ワークピース28を変形させるように共働する。工具18がラム(図示略)の端部に対する工具保持機構を用いることにより一時的に取り付けられつつ、工具18およびダイ56は、金属加工機械から取り外し可能である。
工具18は、全体的に、ワークピース28に向かって、かつ荷重が作業面26とワークピース28との間の接触点に垂直な状態で、方向61で移動する。金属加工機械は、ワークピース28内に工具18を押し進める荷重を加えるように、機械式に、油圧式に、空気圧式に、または、電気式に駆動され得る。工具18の先端部40は、ワークピース28の厚さを通じてまたは厚さ内に、また、ダイ開口部58内に、金属加工機械により負荷される高荷重のもとで押し進められる。ワークピース28は、工具18の作業面26とワークピース28との間の接触ゾーンでまたその周囲で変形および/または切断される。
工具18は、典型的な実施形態の構造とは異なる他のパンチ構造を有し得る。例として、工具18は、ブレード、ヒールパンチ(heel punch)、ペデステルパンチ(pedestal punch)、丸パンチ等として構成され得る。典型的な実施形態では、工具18がパンチに一致した構造を有するように示されるが、当業者は、工具18が、ダイ56(図2Aおよび2B)またはストリッパのようなダイなどの他の構造を有し得ることを理解するであろう。具体的には、パンチ、ダイまたはストリッパの形をなす工具18が、貫通穴加工および穴開け、精密打ち抜き、成形および押出しまたは鋳造のような金属スタンピングおよび成形工程において適用され得る。
工具18はまた、回転式ブローチ、非回転式ブローチ、タップ(tap)、リーマ(reamer)、ドリル、フライス盤、トリミング工具等の切削工具の構造を有し得る。工具18は、従来のダイキャスティング、高圧ダイキャスティング、および、射出成形等の鋳造および成形用途に用いられ得る。工具18はまた、製剤過程、栄養補給過程、バッテリ製造、化粧品、製菓および食品ならびに飲料産業で用いられる粉末圧縮用途において、また、家庭製品および核燃料、錠剤、爆発物、弾薬、陶器、および、他の製品の製造において利用され得る。工具18はまた、細部を配置させるまたは細部に部分接触する(part-touching)など、自動化および部品固定用途に用いられ得る。
図2Bを参照すれば、工具18の領域30、ダイ56の領域62、または、工具18の領域30およびダイ56の領域62の両方が、前述したように熱機械処理されたプリフォーム(図示略)の領域から形成されるまたは機械加工される。例えば、領域30は、しばしば、近接して配置されるか、または領域30が工具18の作業中にワークピース28に近接する、もしくは直接に接触するように、作業面26を含んでいる。同様に、ダイ56の領域62は、工具18およびダイ56が用いられる場合に、ワークピース28に近接するか、または直接に接触する。領域30は、外表面22、例えば作業面26から、0.039インチ(1ミリメートル)を超える深さd1まで延びる。同様に、ダイ56において、領域62は不規則に形作られ得るが、また、外表面63から、0.039インチ(1ミリメートル)を超える深さd2まで延びる。
しかしながら、領域30または62が工具鋼プリフォーム内の他の位置に形成される場合に、有益な性能が観察され得る。これらの位置は、工具18が用いられる作業に伴う要因、またはその製造コストに対する工具18の利用の平衡を保たせるために使用される経費検討により決定され得る。いかなる点においても、熱機械処理された領域30は、前で規定されるような、高転位密度、微細粒子構造、粒子の好適な配向またはその組合せにより特徴付けられる。一実施形態では、高転位密度、微細粒子構造、粒子の好適な配向またはその組合せが、熱機械処理の間の主要な変形方向に関係付けられ得る。
工具18は、高転位密度、微細粒子構造、粒子の好適な配向またはその組合せの複数の領域を有し得る。2つまたはそれ以上の領域を備えた実施形態では、各領域が、工具鋼プリフォーム内で、隣の領域に隣接し得る。ある領域における粒子の配向は、工具18の他の領域または軸のいずれかと実質的に位置合わせされ得るまたは位置合わせされ得ないことが理解されるであろう。更に別の実施形態では、高転位密度、微細粒子構造もしくは粒子の好適な配向、または、その組合せの領域が、その1つまたは複数の部分に制限されるよりむしろ、実質的に工具18に亘って延びる。言い換えれば、工具18は、本明細書における実施形態により予め熱機械処理された工具鋼プリフォームから機械加工され得るまたは形成され得る。
図3Aおよび3Bを参照すれば、本発明の実施形態が、実質的に完全に工具鋼で構成されるプリフォームを参照してここに説明され図解される一方、他の実施形態ではプリフォーム64は、異種の鋼で作られたコア68を有する工具鋼で作られたシェル66の構成をとり得る。図3Aに示されるように、コア68は、他の変数のなかでもとりわけ、そこから作られる工具(図示略)に関する用途に応じて、シェル66内の間隙全体、または、その一部のみに詰められ得る。シェル66内の工具鋼の体積は、異種の鋼の体積と比較される場合に小さくなり得るが、シェル66は、変形領域が少なくとも0.039インチ(1ミリメートル)厚であるように、0.039インチ(1ミリメートル)を超える。シェル66は、工具(図1A参照)の作業面26を形成するように設計される。コア68は、工具の残りの部分を形成し得るとともに、補足的な機械特性を工具に付与するように設計され得る。ただ例として、シェル66は、図3Aに示されるように、工具鋼のチューブであり得る。コア68は、より経済的であるD2のような低炭素または冷間加工鋼などの他の鋼の円筒であり得る。チューブ状シェル66内への円筒コア68の挿入後に、プリフォーム64が加熱され、少なくともシェル66が、前述した温度範囲において、スエージングまたはラジアル鍛造により変形される。例えばシェル66をラジアル鍛造した後の変形されたプリフォーム69およびコア68が、図3Bに示される。変形されたまたは鍛造されたプリフォーム69から形成されたまたは機械加工された工具18aは、例えば、工具の耐用年数を改善するために、 (図3Cに示されるような) ギヤまたはギヤ回転またはねじ回転ダイを含んでいてもよく、横強度が必要とされる用途に使用され得るが、工具の材料コストは著しく削減される。
本発明の更なる詳細について、以下の実施例を参照しながら説明する。
1.5インチ(3.81センチメートル)の直径および48インチ(121.9センチメートル)の長さを有し、記号表示AISI M2、D2およびM4により当該技術にて知られる圧延されたままの棒材の構成をした8つの工具鋼プリフォームが、本明細書に開示される方法の一実施形態により調製された。
その目的のために、棒材は、ガス動力加熱炉(gas powered furnace)内でAC1を超えて2100°F(1149℃)まで加熱された。温度測定結果は、作業の範囲内に較正された赤外線高温計を用いて記録された。この温度において、棒材の各々の微細構造はオーステナイトで構成されると考えられる。棒材が目標温度に達した後、それらは、200トン−4ハンマーのラジアル鍛造機の入口ロール(inlet roll)へ個々に(部品移送の間の温度損失を回避するように)移送された。1.500インチ(3.81センチメートル)直径×48インチ(121.9センチメートル)長の棒材が、それぞれ、0.875インチ(2.222センチメートル)の直径を有する棒材へ4回の圧下を伴いラジアル鍛造された。各圧下は、約15から約20秒(1棒材当たり最大で計80秒)の間かかった。計算された効果的な圧下比は66%であった。処理された棒材は、強制対流により室温まで空気冷却された。
熱機械処理の間、熱い金属が、対流および放熱による損失のため、熱を失うであろうことが知られる。したがって、各棒材の温度を、2100°F(1149℃)の目標温度近くの狭い温度範囲内に維持するために、変形処理からの外部熱および内部熱が、いかなる熱損失をも補償するように用いられた。その結果、鍛造が、ほぼ等温状態において実行された。更に、いかなる温度変化も無視できたことを保証するために、温度が監視された。
小断面が中間圧下の間に各棒材から解析用に切られた。サンプルは、いずれも再結晶を示すことは観察されなかった。加えて、各サンプルに存在する相が判断され、粒子間の誤配向が測定され、また、横方向(TD)および半径方向(RD)に関するマルテンサイトの[001]面について、極点図が現像された。測定結果が、変形およびその後の焼き戻しの後に、棒材の断面の半径の2分の1である場所で、または、M2の工具鋼棒材の中心から約0.22インチでとられた。相同定が、フィリップスのX′ PertX線回折計で行われた。実施例1の1つのM2棒材の相解析が、図4Aに示される。図4Aでは、各相の数分率が、0.771473鉄マルテンサイト、0.00419837クロム-バナジウム炭化物(658741)、0.219877鉄-タングステン炭化物(892579)、および、0.00445168V4C3であった。EBSD走査が、電界放出環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)-EBSD検出器を備えたFEI/フィリップスのXL30 ESEM-FEG上で実行された。データが、方位像顕微鏡(商標)(OIM(商標))データ収集ソフトウェアを用いて、収集され、XRDデータとともにマッピングされた。誤配向グラフが、OIM(商標)解析ソフトウェアにより生成された。実施例1のM2工具鋼棒材の1つについてのマルテンサイト粒子に関して測定された誤配向角度の典型的な分布が、図4Bに示される。このM2棒材に関して現像された極点図が、図4Cに示される。
実施例1からの0.875インチ(2.222センチメートル)直径の棒材のいくつかが、AC1を超えて、2100°F(1149℃)の温度に再加熱された。棒材がAC1を超えて加熱された後、微細構造は、オーステナイトから構成されると考えられた。棒材が目標温度に達すると、それらは、200トン−4ハンマーのラジアル鍛造機の入口ロールへ個々に移送された。各棒材は、2100°F(1149℃)にある間に、ラジアル鍛造された。4回の圧下において、棒材直径は、0.875インチ(2.222センチメートル)から0.640インチ(1.626センチメートル)へ縮小された。この断面積における縮小は、実施例1の第1の4回の圧下からの66%の縮小に加え、47%の効果的な縮小比に達した。処理された棒材が、強制対流により室温まで空気冷却された。いくつかのサンプルが、ひずみの影響を記録するために、中間圧下において、1つの棒材から切られた。実施例1からのサンプルと同様に、再結晶が、サンプルのいずれにおいても観察されなかった。
前述と同様に、周囲に失われた熱および変形から生成された熱は、熱機械処理の間に、棒材を一定温度に維持しようとする試みにおいて平衡を保たれた。温度は、温度変化が無視できたことを保証するように、処理の間にまた圧下間で監視された。したがって、転位密度を増大させるとともにオーステナイト粒子サイズを削減するために、外部エネルギーの全てがプリフォームに移されたと考えられる。
その後、棒材が、ガス動力加熱炉において1400°F(760℃)で4時間応力緩和され、続いて、歪曲を最小化するために、棒材ストレータ(bar straighter)を通じて首尾よく処理された。
1.5インチ(3.81センチメートル)の直径および48インチ(121.9センチメートル)の長さを有し、AISI M2、D2およびM4の記号表示により当該技術にて知られる圧延されたままの棒材の構成をした工具鋼プリフォームが調製された。
棒材が、ガス動力加熱炉において、2050°F(1121℃)の温度に加熱された。棒材の微細構造は、準安定オーステナイトで構成されると考えられる。前述同様に、温度測定結果は、作業の範囲内に較正された赤外線高温計を用いて記録された。棒材が目標温度に達した後、棒材の各々が、加熱炉外に引き出され、200トン−4ハンマーのラジアル鍛造機の入口ロールに配置された。その後、棒材は、約1100°F(約593℃)と約1200°F(約649℃)(AC1以下)との間の処理温度に空気冷却された。温度降下が、約1分で生じた。棒材が、7回の圧下において、1.000インチ(2.54センチメートル)の直径までラジアル鍛造された。計算された縮小比は、56%であった。1.000インチ(2.54センチメートル)直径の棒材は、強制対流により室温まで空気冷却された。
実施例1および2に記載される温度制御と同様に、棒材が、可能な限り一定温度に保持された。各棒材の温度が、温度変化が無視できることを保証するように、処理の間に、また、圧下間に監視された。
小断面が中間圧下の間に各棒材から解析用に切られた。サンプルは、いずれも動的再結晶の微細構造特性を示さなかった。相が判断され、粒子間の誤配向の測定結果がとられ、また、棒材の断面の半径の2分の1である場所で、または、棒材の中心から約0.25インチでマルテンサイトの[001]面について、極点図が現像された。実施例3の1つのM2棒材の相解析が図5Aに示される。図5Aにおける相の数分率は、0.737644鉄マルテンサイト、0.0111572クロム-バナジウム炭化物(658741)、0.240541鉄-タングステン炭化物(892579)、および、0.0106579V4C3であった。実施例3のM2工具鋼棒材の1つについてのマルテンサイト粒子間の誤配向角度の典型的な分布が、図5Bに示される。このM2棒材に関して現像された極点図が、図5Cに示される。
比較例1
圧延されたままのAISI M2棒材ストックが、実施例1および3と同じ硬度、すなわちHRC61-63を達成するために、約1000°Fまで加熱し、約45分から1時間保持し、冷却する3つの標準焼き戻しサイクルがその後に続く、2250°F(約1232℃)を超える温度まで棒材を加熱することによる標準熱処理サイクルを用いて、2バール真空加熱炉において熱処理された。熱処理された棒材は、その後、実施例3の棒材と同じ外側寸法に研磨された。
相、誤配向角度、および、比較棒材に関する極点図の測定結果が、図6A、6Bおよび6Cに示される。図6Aに示される相の数分率は、0.660257鉄マルテンサイト、0.00451285クロム-バナジウム炭化物(658741)、0.330886鉄-タングステン炭化物(892579)、および、0.00434446V4C3であった。各棒材に存在する相は、図4A、5Aおよび6Aの比較分析により提供されるものと実質的に同じであった。
しかしながら、実施例1および3の各棒材の転位密度は、比較例1の棒材よりも実質的に高い。具体的には、図4Bおよび5Bを図6Bと比較することにより、実施例1および3のM2棒材の各々の誤配向角度は、図6Bに示される比較M2棒材よりも相当高い。実施例1(図4B)の棒材に関する誤配向角度の分布の平均は約36度であり、実施例3(図5B)の棒材に関する誤配向角度の分布の平均は約42度であり、比較例1(図6B)の棒材に関する誤配向角度の分布の平均は約34度であった。比較の熱処理されたM2棒材に対する実施例1および3のM2工具鋼棒材における高い平均誤配向角度は、より高い転位密度およびひずみを示す。AC1より低い温度での変形が、粒子がより小さい熱エネルギーを有し、より遅い速度で変形から回復するにつれ、高温での変形に対する粒子の誤配向角度における増大を許容し得ると考えられる。
実施例1および3のM2棒材に関する改良された転位密度はまた、図6Cに示される比較例1のM2棒材の極点図と比較した場合に、それぞれ図4Cおよび5Cに示される極点図により立証される。極点図は、実施例1および3の棒材に関する転位密度または転位の数が、加熱処理されただけの比較例1の棒材に関する転位密度よりも相当高いことを示している。相対的な転位密度が、各グラフにおけるドットの密度により示される。したがって、実施例1(図4C)が、最高数の転位を有し、その後に、実施例3(図5C)が続き、比較例1(図6C)が最小数の転位を有する。
実施例3の処理からの1.000インチ(2.54センチメートル)直径の棒材のいくつかが、2050°F(1121℃)(AC1を超えるがAC3未満)まで再加熱された。棒材が加熱炉から取り出され、約1100°F(約593℃)と約1200°F(約649℃)との間の処理温度まで空気冷却された。処理温度に達した後、棒材が、それぞれ、7回の圧下において0.700インチ(1.778センチメートル)の直径を有する棒材にラジアル鍛造された。算出された縮小率は51%であった。
処理された棒材が、室温まで空気冷却された。いくつかのサンプルが中間圧下で各棒材から切られた。実施例3のサンプルと同様に、棒材はいずれも動的再結晶の微細構造特性を示さなかった。
前述同様、温度が、温度変化が無視できることを保証するように、処理の間に、また、圧下間に監視された。
その後、棒材が、真空加熱炉において、約950°F(約510℃)と約1000°F(約538℃)との間で、約3時間、3回焼き戻しされた。焼き戻し処理が、残留オーステナイトのいずれもをマルテンサイトに変態させたことが確かめられた。前記実施例1-4において、処理された棒材が、伸長されるとともに棒材の長手軸に沿って優先的に方向付けられた粒子を含むことが注目された。
実施例1から4がラジアル鍛造を採用するものの、当該技術において知られる他の鍛造技術が、前述したように、プリフォームを熱機械処理するために用いられ得る。したがって、続く実施例では、ニア平面ひずみ鍛造処理(near-plane-strain forging)が、水平型の熱間アップセッティング(hot upsetting)機上で再現された。プリフォーム65は、この機械を用いて鍛造された場合に、円筒棒材になるように展開された(図7および8Aならびに8B参照)。円筒棒材は、その後、金属切削および金属成形工具を機械加工するまたは形成するためのプリフォームとして用いられることが可能であった。
図7および8Aならびに8Bを参照すれば、ニア平面ひずみ鍛造処理において、工具鋼で完全に構成されるプリフォーム65の幾何形状が、楕円形部分70と円筒形部分72とを有する。円筒形部分72は、いかなる変形も被らず、主として、鍛造の間に機械においてプリフォーム65を位置させ保持するために用いられる。楕円形部分70または領域は加熱され、処理の間に、工具がそこから形成され得るように、変形を受ける。変形の後に、変形されたプリフォーム75は、図8Bに最も良く示されるように、変形された楕円形部分73または領域を有する。
ここで図9を参照すれば、ニア平面ひずみ鍛造処理において、工具キャビティ74およびラム76が、それぞれ、半円形キャビティを形成するように設計された。工具キャビティ74およびラム76の閉鎖により形成される結果としての円形形状は、まとめて、工具鋼が径方向および周方向の両方に流れることを可能としつつ、一方向での楕円形部分70における工具鋼の動きを阻むように設計された。
図7および8Aに示される幾何形状のAISI M2工具鋼プリフォームが、圧延されたままのミル棒材ストック(as-rolled mill bar stock)から機械加工された。従来のミル棒材ストックにおける圧延方向または主要な炭化物方向は、図4中の矢印により示されるように、円筒形部分の軸に対して常に同心であった。処理前の炭化物バンディング(carbide banding)の方向が、熱機械処理後の炭化物の配向を決定し得る。続いて、プリフォームが、いかなる残りの応力も緩和するために、また、ニア等軸粒構造(near-equiaxed grain structure)を実現するために、真空加熱炉において、45分-60分間、1400°F(760℃)で最初に焼鈍しされた。
焼鈍し後、各プリフォームの楕円形部分が、誘導コイルを用いて、AC1を超えて、約1850°F(約1010℃)の温度まで加熱された。この処理温度で、微細構造は、オーステナイトで構成されると考えられた。温度が、ニア平面ひずみ鍛造工程をシミュレートするために用いられる50トン水平型アップセッティング機へ組み込まれる赤外線高温計を用いて監視された。プリフォームの楕円形部分が1850°F(1010℃)に達した後、各プリフォームが、ニア半円形断面(例えば図8B参照)へ個々に鍛造された。
鍛造後、各棒材が、対流空気冷却により室温まで焼き入れされた。鍛造後の微細構造は、微細粒状のオーステナイトで構成された。焼き入れ後、オーステナイトがマルテンサイトに変態し、炭化物が沈殿した。この微細構造は、不安定と考えられ、真空加熱炉において、約950°F(約510℃)と約1000°F(約538℃)との間の温度で、約2バールの圧力で、応力緩和された。応力緩和後、プリフォームは、残留オーステナイトをマルテンサイトに変換するために、約1200°F(約649℃)と1400°F(760℃)との間で、1サイクル当たり45-60分間、3回の焼き戻しサイクルを通じて処理された。その後、微細構造における残留オーステナイトをマルテンサイトに変換するために、加熱炉冷却が行われた。
ニア平面ひずみ鍛造からの衝撃強度ゲインは、転位密度の増大およびオーステナイト粒子サイズの縮小によるものであった。しかしながら、ラジアル鍛造処理と異なり、ニア平面ひずみ鍛造では、変形が楕円形部分の全長に沿ってほとんど瞬時に生じるので、周囲に対する熱損失が無視できる。
図8Aに示される幾何形状のAISI M2工具鋼プリフォームが、圧延されたままのミル棒材ストックから機械加工され、その後、処理された。先のプリフォームと同様に、処理前の炭化物圧延方向が、従来の方向に方向付けられた(図7参照)。加熱および変形前に、プリフォームは、プリフォームにおけるいかなる残余応力を緩和するために、また、ニア等軸粒構造を得るために、真空加熱炉において、1400°F(760℃)で、45分-60分間、焼鈍しされた。
各プリフォームは、誘導コイルを用いて2050°F(1121℃)の温度まで加熱された。この温度は、AC1を超えるがAC3未満であった。温度が、赤外線高温計を用いて監視された。コイルおよび高温計の両方が、ACMA50トン水平型アップセッティング機に組み込まれた。AC1とAC3との間の温度における微細構造は、オーステナイトで構成された。2050°F(1121℃)への加熱の後に、楕円形部分が、約1100°F(約593℃)と約1200°F(約649℃)との間の温度まで空気冷却された。温度降下が約1分で生じた。微細構造が準安定オーステナイトで構成された。その後、楕円形部分が1100°F(593℃)と1200°F(649℃)との間の処理温度に保持されつつ、円形断面構造になるように鍛造された。
その後、鍛造されたプリフォームが室温まで冷却された。冷却において、マルテンサイト変態および炭化物沈殿が生じ、プリフォームの楕円形部分において均質の微細粒状の微細構造がもたらされた。しかしながら、微細構造は、残留オーステナイトの存在のために、大部分の用途について不安定と考えられた。続いて、プリフォームは、950°F(510℃)と1000°F(538℃)との間の温度で、45分-60分間、3回焼き戻しされた。
衝撃強度のゲインが、変形された楕円形部分の各々において観察された。衝撃強度ゲインは、転位密度の増大、オーステナイト粒子サイズの縮小、および、炭化物沈殿の開始によるものであった。また、ラジアル鍛造試行の間に観察された結果と同様に、AC1より低い温度で鍛造されたプリフォームの機械特性は、AC1を超えて鍛造されたものより改善された。より低い温度で鍛造されたプリフォームにおける転位密度は、より高い温度で鍛造することによりもたらされた転位密度よりも相当に高いと考えられる。
図10Aおよび10Bを参照すれば、先の例示的な実施形態における熱機械処理が衝撃強度を改善する一方、ニア平面ひずみ鍛造処理の固有の性質のせいで、各楕円形部分において、比較的高い強度および比較的低い強度の領域が存在する。最大変形および最小変形の領域は、実質的に互いに垂直に方向付けられる。明瞭さのため、鍛造後の粒子の優先的な配向が、図10B中の曲線により示される。比較的低い衝撃強度の領域は、典型的には、工具キャビティおよびラムと接触することになるまたは近接するものである。比較的高い衝撃強度の領域は、最大変形の領域に関係している。図10Aに示される断面の寸法は、高さ約13.11ミリメートルおよび幅約11.03ミリメートルであり、ここで、幅は、プリフォームの端部(左)から、変形された楕円形部分73の表面が円筒形部分72(右)に移行する場所まで測定される。
ほとんど均一の材料強度の最大の改善が必要とされるプリフォームにおいて、複数ステップの平面ひずみ鍛造処理が、比較的低い衝撃強度の領域の強度を連続して完全するために用いられ得る。例えば、熱機械処理された金属成形および金属切削工具用の円筒棒材を得るために、矩形または正方形の断面幾何形状を備えた棒材の構成をしたプリフォームが、長円形断面を備えた棒材へのニア平面ひずみ鍛造を用いて熱機械処理されることが可能であった。円形断面を備えた棒材を形成するための、長円形断面のその後の熱機械処理は、変形のより均一な分布をもたらし得る。
具体的に、図10Bを参照すれば、平面ひずみ鍛造を用いた第1の熱機械処理の結果として、比較的低い強度の領域が、最小変形の領域に沿ってまたは近接して位置合わせされ、また、比較的高い強度の領域が、比較的高い変形の領域に対して位置合わせされることになる。したがって、長円形断面へ鍛造される矩形または正方形の棒材が、その後のニア平面ひずみ鍛造処理用のプリフォームとして用いられ得る。その後の処理では、比較的低い強度の領域が、最も高い変形の方向に沿って位置合わせされ得る。この配向は、例えば、初期の変形方向に垂直であり得る。したがって、比較的低い強度の領域は、その領域における変形の結果として強化されることになる。反対に、第1の鍛造作業からの比較的高い強度の領域は、最小の変形強度、ひいては、最小の改善を観察することになる。
2つの工具は、T15工具鋼の粉末金属プリフォームから調製された。プリフォームは、焼鈍しされた熱平衡にプレスされたT15粉末金属から機械加工された。プレートの微細構造が、その調製方法の結果としてほとんど同位体であったことが注目された。プリフォームは、図11Aに示される構造を有した。図示されるように、プリフォーム76の一端は、ピラミッド形状を有した。プリフォームの全長は、5.75インチ(14.6センチメートル)と測定され、ピラミッド形の部分は、全長が1.75インチ(4.445センチメートル)であった。
プリフォーム76は、2000°F(1093℃)と2050°F(1121℃)との間(AC1とAC3との間)の処理温度まで、約4分で、誘導ヒータを用いて加熱された。熱いプリフォームが、500トンのダイ締め力を備えた1000トン水平型機械的AJAXアップセッタ(1000 Ton horizontal mechanical AJAX upsetter)を用いて、ニアネットシェイプ(near net shape)に、1サイクルで鍛造された。鍛造されたプリフォーム78が、図11Bに示される。具体的には、1.75インチ(4.445センチメートル)のピラミッド形端部が、図示されるように、1インチ(2.54センチメートル)の矩形端部80へ鍛造された。
鍛造後、鍛造物78が、オーブン内で、45-60分間、1400°F(760℃)で応力緩和される。鍛造されたプリフォーム78は、オーブン内で室温にまで冷却された。
応力緩和されたプリフォームが、残留オーステナイトをマルテンサイトへ変換するように3段式に焼き戻しされた(triple tempered)。最終的な硬度が、63HRCと66HRCとの間で測定された。3段式に焼き戻しされた部分は、スケールを除去し、炭素除去するために、また、最終的な工具形状を提供するために、機械加工された。2つの工具18b、18cの組が、示されるプリフォームを半分に切ることにより、図11Bに示されるプリフォーム構造から作られた。
2つの工具18b、18c、すなわち、上側工具および下側工具は、シート鋼ワークピース(図示略)を切断するために、(図11C中の矢印により示されるように)互いに対して作用した。工具間の間隙は、0.006インチ(0.01524センチメートル)であった。ワークピースは、商標USIBOR(登録商標)1500Pの下で販売されたAlSi被覆を備えた22MnB5鋼であった。ワークピース鋼は、UTS1500MPa(50HRC)までプレス硬化させられた。シートは、1.85ミリメートル(0.07283インチ)厚と測定された。試験が、約68°F(約20℃)で行われた。切れ刃における摩耗が4カ所で監視された。測定は、5000衝撃またはサイクル毎の切れ刃の輪郭で行われた。
各上側および下側のT15工具に関する切れ刃の輪郭の測定結果が、図12A、13A、14Aおよび15Aに示され、それらはまた、基準材料およびCPM(登録商標)M4粉末金属の工具に関する切れ刃の輪郭を提供している。(CPM(登録商標)M4粉末金属で作られた工具は、以下で、実施例8において十分に記載される。)上側および下側工具の両方における4カ所での摩耗測定が行われる一方、上側および下側工具における2つの最も高い摩耗の場所のみが図に提供される。輪郭の測定は、それぞれ、図12B、13B、14Bおよび15Bに示される場所で行われた。
より具体的に、図12Aおよび13Aは、それぞれ、図12B(位置1)および図13B(位置4)にて特定される場所での上側工具の切れ刃の切れ刃輪郭のグラフである。図14Aおよび15Aは、それぞれ、図14B(位置1)および図15B(位置4)にて特定される場所での下側工具の切れ刃輪郭(edge profile)のグラフである。図中に示されるような場所1および4における切れ刃輪郭は、残りの2つの報告されていない場所における摩耗測定結果を例示するものである。
図12A、13A、14Aおよび15Aを参照すれば、「開始切れ刃形状」と名前を付けられた線は、いかなる使用前の切れ刃形状を表している。「基準」と名前を付けられた線は、工業規格により処理される基準材料で作られた工具について行われた測定結果を表している。
10000回および20000回打撃におけるT15工具に関する場所1および4での切れ刃輪郭は、それぞれ、「T15...1000回衝撃」および「T15...2000回衝撃」と名前を付けられている。グラフによって例示されるように、前記手順により作られたT15工具の切れ刃は、10000回衝撃で、上側および下側工具の両方とも各場所で、基準材料が10000回衝撃で摩耗するよりも摩耗が少なかった。20000回衝撃では、T15工具は、10000回衝撃での基準材料工具と比較可能な量だけ摩耗した。したがって、本発明の一実施形態によるT15工具は、基準材料より、摩耗および衝撃に対する耐性がほぼ2倍になる。
2つの工具が、CPM(登録商標)M4工具鋼の粉末金属プリフォームから調製された。(CPM(登録商標)は、ニューヨークのクルーシブルマテリアルズ社の商標である。)プリフォームは、焼鈍しされたCPM(登録商標)M4粉末金属バルク材料から機械加工された。CPM(登録商標)M4プレートの微細構造が、バルクCPM(登録商標)M4材料を調製するために使用される圧延方向の結果として、主要な炭化物バンディングを有したことが注目された。プリフォームは、図11Aに示される構造を有する。図示されるように、プリフォームの一端は、ピラミッド形状を有した。プリフォームの全長は、5.75インチ(14.6センチメートル)と測定され、ピラミッド形の部分は、5.75インチ(14.6センチメートル)のうち、1.75インチ(4.445センチメートル)であった。
プリフォームは、2000°F(1093℃)と2050°F(1121℃)との間(AC1とAC3との間)まで、約4分で、誘導ヒータを用いて加熱された。熱いプリフォームが、500トンのダイ締め力を備えた1000トン水平型機械的AJAXアップセッタ(1000 Ton horizontal mechanical AJAX upsetter)を用いて、ニアネットシェイプ(near net shape)に、1サイクルで鍛造された。鍛造されたプリフォームが、図11Bに示される。具体的には、1.75インチ(4.445センチメートル)のピラミッド形端部(図11Aに示される)が、図示されるように、1インチ(2.54センチメートル)の矩形端部へ鍛造された。
鍛造後、プリフォームが、オーブン内で、45-60分間、1400°Fで応力緩和される。プリフォームは、オーブン内で室温にまで冷却された。
応力緩和されたプリフォームが、いかなる残留オーステナイトもマルテンサイトへ変換するように3段式に焼き戻しされた。最終的な硬度が、62HRCと64HRCとの間で測定された。
図11Bの鍛造されたプリフォームの切れ刃の領域における優先的な粒子配向は、図16Aに示されるものと同様であった。図16Aに示されるサンプルの寸法は、上部から底部まで17.98ミリメートルで、左右に13.82ミリメートルであった。図12A、13A、14Aおよび15Aに示される切れ刃の測定結果から、CPM(登録商標)M4鍛造された工具は、10000衝撃で、基準材料より摩耗が少なかった。再度、工具の寿命における実質的な改善が観察された。
本発明は、種々の実施形態の説明により例示されてきたが、また、これらの実施形態は、かなり詳細に説明されてきたが、それは、添付された特許請求の範囲をかかる詳細に制限する、または、多少なりと限定するという出願人の意図ではない。付加的な利点および変更は、当業者に容易に想到されるであろう。したがって、より広範な実施形態における発明は、したがって、特定の詳細、典型的な装置および方法、および、図示され説明される例示的な実施例に限定されない。したがって、逸脱は、出願人の一般的発明概念の範囲から逸脱することなく、かかる詳細から行われ得る。
18 工具
20 部材
22 外表面
28 ワークピース
30 第1の領域
32 第2の領域
65 プリフォーム
70 領域

Claims (18)

  1. オーステナイト変態開始温度および安定オーステナイト温度を有する工具鋼で構成されたプリフォームを熱機械処理することにより工具を形成するための方法であって、前記工具は、ワークピースと接触するための作業面と、切断縁において前記作業面と交差した側壁と、を備え、前記方法は、
    前記オーステナイト変態開始温度と前記安定オーステナイト温度との間の処理温度に、前記プリフォームの領域を加熱するステップと、
    前記プリフォームの前記領域が前記処理温度にある間、少なくとも20%の縮小率を達成する量から、再結晶化するよりも小さい量までの範囲において前記領域を鍛造加工して、それにより外表面を形成した、修正されていない内側領域に隣接している、修正された領域を形成する、鍛造加工するステップと、
    前記修正された領域を室温まで冷却するステップと、
    を含み、
    前記修正された領域は、前記修正されていない内側領域よりも少なくとも10%小さい平均結晶粒子サイズを有し且つ前記修正されていない内側領域の微細構造と異なった結晶粒子配向を有するマルテンサイト結晶粒子を含んでいることを特徴とする方法。
  2. 鍛造加工が少なくとも51%の縮小率を達成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 鍛造加工が少なくとも56%の縮小率を達成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 鍛造加工が少なくとも66%の縮小率を達成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 鍛造加工はラジアル鍛造加工を含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 鍛造加工は平面ひずみ鍛造加工を含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記修正された領域が変形された後に、前記修正された領域の外側寸法は、金属切断装置に使用される工具のニアネットシェイプに等しくなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記修正された領域は断面積を有し、前記外表面からの深さは前記断面積を横断して延びていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記修正された領域は長さを有し、鍛造加工は前記プリフォームの領域の少なくとも1つの前記外側寸法を減少して前記長さに一致させることを含んでいることを特徴とする請求項7または請求項7に従属した請求項8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記修正された領域は、前記修正されていない内側領域の平均誤配向角度よりも大きい平均誤配向角度によって特徴づけられた誤配向角度の分布を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記修正された領域は、34°を超える平均誤配向角度により特徴付けられた誤配向角度の分布を有するマルテンサイト粒子を含んでいることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記修正された領域を冷却した後に、前記プリフォームを半分に切断して一式の工具を形成するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 加熱前に、前記プリフォームの一端をピラミッド形状に機械加工するステップをさらに含み、鍛造するステップは、前記ピラミッド形状の端部を矩形端部に鍛造するステップを含んでいることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. ワークピースをせん断するための機械内で使用するためのせん断工具を製造するための方法であって、前記せん断工具は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法を利用して工具鋼から形成されていることを特徴とするせん断工具を製造するための方法。
  15. 鍛造が、少なくとも40°の平均誤配向角度の修正された領域によって特徴付けられた誤配向角度の分布を生じることを特徴とする請求項14に記載のせん断工具を製造するための方法。
  16. 前記修正された領域は、修正されていない領域の近傍にあることを特徴とする請求項14または15に記載のせん断工具を製造するための方法。
  17. 前記修正されていない領域は、外表面の一部を形成していることを特徴とする請求項14に記載のせん断工具を製造するための方法。
  18. 前記せん断工具はパンチであることを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載のせん断工具を製造するための方法。
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