JP6279908B2 - 鍛造品の製造方法 - Google Patents
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切断材101に、アプセット加工(据え込み加工)を施すことで、図11(b)に示すように、一端に球状頭部102aを有する予備成形品102を得る。
タイロッドエンドハウジングは、形状が複雑であり、機械加工により削り出す製造方法では材料歩留まりが悪いと共に加工時間が長くなる。この点、冷間鍛造法であれば、材料歩留まりが極めてよく、加工時間も短くなるという利点を有する。
例えば、圧力容器において、内圧を受ける円筒の円周面に沿ってフープ応力が発生し、この応力は、外径に比例することが知られている。
カップ部105の外周105aには亀裂が入らないが、フランジ106の外周106aには亀裂が入るということが理解できる。
この点、冷間鍛造法であれば、鍛造品の寸法精度がよくなり、材料費を含めた製造コストの低減が可能となる。
素材を切断して所定寸法の切断材を得る切断工程と、
前記切断材における切断面を研削して、研削済み材料を得る湿式ショットブラスト工程と、
前記研削済み材料の研削面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程と、
前記潤滑剤が塗布された前記研削面に冷間鍛造を施した鍛造品を得る冷間鍛造工程と、からなり、
前記切断工程で得た前記切断材は、前記切断面が粗い面であり、
前記湿式ショットブラスト工程では、研削深さが前記粗い面の谷の最大深さに達するまで前記切断面を研削し、表面を滑らかにすることを特徴とする。
すなわち、従来の切断材には切断面に破断面が残っており、このような切断材に冷間鍛造を施すと、破断面の谷が始点となって亀裂が発生した。対して、本発明では、冷間鍛造前に切断面を滑らかにしたので、亀裂の始点となる破断面が除去され、冷間鍛造を施しても亀裂の発生を防止することができるという効果を奏する。
この点、ショットブラストであれば、ショット粒を投射するだけであるから、生産性が高まり、加工コストを容易に下げることができる。
乾式ブラスト法では、ショット粒を当てるだけであるから、切断材の切断面に付着した切削油を完全に脱脂することはできない。このため、潤滑剤塗布工程で塗布する潤滑剤が定着せず、脱脂工程が別途必要となる。
この点、湿式ブラスト法であれば、流体が切削油を洗い流すため、脱脂工程を別途設ける必要が無くなる。
この点、湿式ブラスト法であれば、流体が冷却剤になるため温度は上がらず、流体がクッションとなり加工硬化現象が起こり難い。
よって、本発明により、冷間鍛造法であっても鍔状の膨出部に亀裂を発生させないような製造方法が提供される。
従来、このような膨出部(ブーツの位置決め部位)には、亀裂が入ることが多かった。 対して、本発明では、膨出部には亀裂が入らない。
つまり、冷間鍛造前に切断材の切断面に残る破断面を除去した結果、亀裂の発生を防止することができ、良好な鍛造品(タイロッドエンドハウジング)を得ることができた。さらには、破断面を湿式ショットブラストで除去することで、高い生産性と、加工コストの低減を図ることができた。
棒状素材11は長尺の鋼棒であって、ベッド12から所定寸法Lだけ突出させ、切断刃14を下ろす(切断工程)。この際、素材11の切断部位に予め切削油を塗布又は噴射しておく。
切断面16が上位になるようにして、切断材15を切断材挿入穴21に挿入する。次に、アプセット用上型25を下げて、切断材15の上端部を圧縮しつつ、増径する(予備成形工程)。この際、変形部位に予め切削油を塗布又は噴射しておく。
次に実施する湿式ショットブラスト処理のために、図5に示すような多角形状のショット粒31を準備する。このショット粒31は、代表寸法Aが100μmのステンレス鋼製の研磨材である。
図6に示すように、湿式ショットブラスト機30は、水に代表される液体32及びショット粒31の混合体を貯留するタンク33と、このタンク33からショット粒31を含む液体32を汲み上げるポンプ34と、このポンプ34から延びる液体ホース35と、タンク33とは別に設けられる高圧空気源36と、この高圧空気源36から延びるエアホース37と、液体ホース35及びエアホース37の先端に接続される投射ガン38とからなる。
この際に、予備成形品27は長手軸回りに回される。
投射ガン38から高圧空気で霧化された液体32が球状頭部28へ投射される。霧化される液体32には所定割合のショット粒31が含まれている。
投射後は、図7(b)に示すように、表面が滑らかな研削済み材料39が得られる。
潤滑剤41には、一工程型潤滑剤が好適である。一工程型潤滑剤は、水媒体に潤滑成分と無機質系ベース成分を分散させたものである。塗布後に乾燥させることで、水分を蒸発させ、表面に潤滑成分皮膜を形成し、その上に無機質系ベース成分皮膜を形成することができる。なお、乾燥時間を短縮するために、潤滑剤塗布前に材料を予熱することが推奨される。
ボンデ処理によれば、材料の表面に、リン酸塩皮膜を形成し、その上に金属石けん皮膜を形成し、その上に未反応石けん皮膜を形成する。
一般的なボンデ処理は、脱脂−水洗−酸洗−水洗−リン酸塩処理−水洗−中和−石けん処理−乾燥の多工程で実施する。
また、脱脂廃液には油分が混じっており、廃液処理にコストが掛かる。酸洗廃液は、中和処理を必要とするため、廃液処理にコストが掛かる。
加えて、リン酸塩処理−水洗−中和−石けん処理を、一工程潤滑剤の塗布に置き換えることができるため、工程数の大幅な削減が図れる。
図9に示すように、冷間鍛造機50は、下金型51と、下パンチ52と、ノックアウト53と、上金型54と、上パンチ55とを備えている。
次に、下パンチ52を降ろし、上金型54及び上パンチ55を上げる。次に、ノックアウト53で成形品を突き出して下金型51から排出する。
つまり、冷間鍛造前に切断材15の切断面16に残る破断面17を除去した結果、亀裂の発生を防止することができ、良好な鍛造品60を得ることができた。さらには、破断面17を湿式ショットブラストで除去することで、高い生産性と、加工コストの低減を図ることができた。
また、ショット粒は、実施例では多角形状の研磨材としたが、球状の研磨材の使用を妨げるものではない。
Claims (4)
- 鍛造品の製造方法であって、
素材を切断して所定寸法の切断材を得る切断工程と、
前記切断材における切断面を研削して、研削済み材料を得る湿式ショットブラスト工程と、
前記研削済み材料の研削面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程と、
前記潤滑剤が塗布された前記研削面に冷間鍛造を施した鍛造品を得る冷間鍛造工程と、からなり、
前記切断工程で得た前記切断材は、前記切断面が粗い面であり、
前記湿式ショットブラスト工程では、研削深さが前記粗い面の谷の最大深さに達するまで前記切断面を研削し、表面を滑らかにすることを特徴とする鍛造品の製造方法。 - 前記冷間鍛造工程では、前記研削面側の端部を前記研削面と交差する方向からパンチで押圧することにより、前記研削面から外方へ張り出す鍔状の膨出部を側方押出しで形成することを特徴とする請求項1記載の鍛造品の製造方法。
- 前記鍛造品はタイロッドエンドハウジングであり、前記冷間鍛造工程で形成する前記膨出部は、カップ部の外周に取り付けられるブーツの位置決めを行うための部位であることを特徴とする請求項2記載の鍛造品の製造方法。
- 前記切断工程と前記湿式ショットブラスト工程の間に、前記切断材の切断面を含む領域を球状に予備成形して予備成形品を得る予備成形工程が追加され、
前記湿式ショットブラスト工程では、前記予備成形品における球状の予備成形部の表面を研削することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の鍛造品の製造方法。
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