本発明の一実施形態を図1〜図10を参照して以下に説明する。
図1〜図3を参照して、本実施形態で例示する関節動力発生装置は、補助対象者P(人)の歩行時等における脚の運動を補助するために該補助対象者Pに装着される運動補助装置1に備えられた装置である。
運動補助装置1は、補助対象者Pの各脚毎に、大腿部フレーム2、下腿部フレーム3、及び足部フレーム4と、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3を相対変位可能に連結する一対の膝関節機構5,5と、下腿部フレーム3及び足部フレーム4を相対変位可能に連結する足首関節機構6とを含む脚リンク機構7と、該脚リンク機構7の膝関節機構5,5に付与する力である関節動力を発生する関節動力発生装置8とを備える。
なお、図1〜図3では、便宜上、各膝関節機構5を模式的に箱状に記載し、該膝関節機構5の具体的な構成の図示を省略している。
補助対象者Pの各脚毎の脚リンク機構7は、大腿部フレーム2、下腿部フレーム3及び足部フレーム4のそれぞれが、該脚リンク機構7の装着対象の脚(右脚又は左脚)の大腿部、下腿部及び足部のそれぞれと一体に動くように該脚に装着される。
なお、大腿部フレーム2が脚の大腿部と「一体に動く」というのは、脚の大腿部に対する大腿部フレーム2の位置及び姿勢が一定もしくは概ね一定に保たれるように、大腿部フレーム2が脚の大腿部と共に動くことを意味する。この場合、脚の大腿部に対する大腿部フレーム2の位置又は姿勢が該脚の運動に伴い若干変化する(脚の大腿部に対して大腿部フレームが若干相対変位する)ことを許容し得る。このことは、下腿部フレーム3及び足部フレーム4のそれぞれが、下腿部及び足部のそれぞれと「一体に動く」ということについても同様である。
各脚リンク機構7の一対の膝関節機構5,5は、脚リンク機構7を補助対象者Pの脚に装着した状態で、該補助対象者Pの脚の膝の左右方向(ピッチ軸方向)の両側(膝の外側及び内側)に各々配置される。
以降の説明では、膝関節機構5,5のうち、膝の外側に配置される膝関節機構5を外側膝関節機構5、膝の内側に配置される膝関節機構5を内側膝関節機構5ということがある。
また、本実施形態の説明では、補助対象者Pの各脚の各部(膝、大腿部等)の内側及び外側は、それぞれ、該脚の左右方向の両側のうち、他方の脚に近い側(他方の脚に対向する側)、他方の脚から遠い側を意味する。すなわち、補助対象者Pの右脚の内側及び外側は、それぞれ右脚の左側、右側であり、左脚の内側及び外側は、それぞれ左脚の右側、左側である。
さらに、内側膝関節機構5に関連する要素と、外側膝関節機構5に関連する要素とを区別する場合に、それぞれの要素の名称に「内側」、「外側」という単語を付加する場合がある。
また、本実施形態の説明では、特にことわらない限り、左右方向(又はピッチ軸方向)、前後方向(又はロール軸方向)、及び上下方向(又はヨー軸方向)は、それぞれ、運動補助装置1を装着した補助対象者Pがほぼ直立姿勢で起立した状態での該補助対象者Pの左右方向、前後方向、上下方向を意味する。また、ピッチ方向、ロール方向、及びヨー方向は、それぞれ、ピッチ軸周り方向の回転方向、ロール軸周り方向の回転方向、ヨー軸回り方向の回転方向を意味する。
大腿部フレーム2は、その基体フレームとして、基部11から二股状に延設された第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13を有する。これらの第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13は、例えば比較的硬質な樹脂部材等により一体構造に構成される。
なお、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13は、複数の部材を相互に結合して一体化した構造体であってもよい。
第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13の根元部たる基部11は、本実施形態では、補助対象者Pの脚の内側の付け根(両脚のそれぞれの内側面の交差部)の高さ以上の高さで、且つ、腰骨よりも低い高さで腰部の片側に配置される部位である。該基部11は、本実施形態では、大腿部フレーム2の上端部となっている。この場合、大腿部フレーム2の上下方向の長さを適切に設定しておくことで、基部11(大腿部フレーム2の上端部)を上記の高さで配置することが可能である。
なお、「腰部の片側」というのは、補助対象者Pの右脚用の脚リンク機構7の大腿部フレーム2については、腰部の右側であり、左脚用の脚リンク機構7の大腿部フレーム2については、腰部の左側である。
第1要素フレーム12は、基部11を外側膝関節機構5に連結する要素フレームである。該第1要素フレーム12は、基部11から補助対象者Pの大腿部の外側面に沿って該大腿部の長手方向に延在して外側膝関節機構5に至るように構成されている。
第2要素フレーム13は、基部11を内側膝関節機構5に連結する要素フレームである。該第2要素フレーム13は、基部11から補助対象者Pの大腿部の前面側を通って(前面側に回り込んで)内側膝関節機構5に至るように構成されている。
さらに、第2要素フレーム13は、補助対象者Pの脚の大腿部の正面側から見たとき、基部11から概ね内側膝関節機構5に向かう方向で大腿部に対して斜行するように構成されている。換言すれば、第2要素フレーム13は、補助対象者Pの脚の大腿部の正面側から見たとき、基部11から斜め下向きに傾いて延在するように大腿部に対して斜行して内側膝関節機構5に至るように構成されている。
この場合、本実施形態の一例では、第2要素フレーム13は、基部11寄りの部分(上部)及び内側膝関節機構5寄りの部分(下部)が、中間部分よりも、大腿部の長手方向に対する傾き(大腿部の正面側から見たときの傾き)がより小さくなり、且つ当該傾きが連続的に滑らかに変化するように形成されている。
また、第2要素フレーム13は、大腿部の前面側の曲面に沿って滑らかに湾曲しつつ斜行するように湾曲形状に形成されている。
また、本実施形態では、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13は、後述の弾性構造体31等を収容し得るように、中空に形成されている。
さらに、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13は、それぞれの下端部に、膝関節機構5に連結する部分たる中空の関節連結部15を有する。該関節連結部15は、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13のそれぞれの上側部分(関節連結部15よりも上側の部分)に固定され、あるいは、該上側部分と一体に形成される。なお、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13のそれぞれの下端部の関節連結部15,15は、互いにほぼ同方向(大腿部の長手方向)に延在している。
そして、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13のそれぞれは、その下端部の関節連結部15を介して外側膝関節機構5及び内側膝関節機構5のそれぞれに連結されている。
以降の説明では、第1要素フレーム12の下端部の関節連結部15を外側関節連結部15、第2要素フレーム13の下端部の関節連結部15を内側関節連結部15ということがある。
大腿部フレーム2はさらに、基部11と第2要素フレーム13の下部との間に架け渡された身体支持部材14を含む。この身体支持部材14は、補助対象者Pの大腿部をその背面側から支持する機能を有する部材である。該身体支持部材14は、第2要素フレーム13との間に、補助対象者Pの大腿部を挿入し得るように配設されている。
具体的には、身体支持部材14は、補助対象者Pの大腿部の背面側から見たとき、基部11から第2要素フレーム13の下部に向かう方向で、斜め下向きに傾いて延在するように、大腿部に対して斜行すると共に、補助対象者Pの臀部の下部及び大腿部の背面側を該背面に沿って湾曲するように、基部11と第2要素フレーム13の下部との間に架け渡されている。そして、身体支持部材14の一端部は、基部11に結合され、他端部は、第2要素フレーム13の下部(図示例では内側関節連結部15よりも若干上側の部分)に結合されている。
この場合、大腿部の長手方向に対する身体支持部材14の傾き(大腿部の正面側又は背面側から見たときの傾き)は、本実施形態では、第2要素フレーム13の傾きと概ね同じである。
また、本実施形態では、身体支持部材14は、補助対象者Pの椅子への着座時等において大腿部あるいは臀部への異物の接触感覚をできるだけ低減し得るように、比較的薄い帯形状に形成されていると共に、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13よりも低剛性のものとされている。該身体支持部材14は、例えば第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13よりも軟質の樹脂部材もしくは布部材等により構成される。
下腿部フレーム3は、本実施形態では、補助対象者Pの下腿部の前面側で該下腿部の長手方向に延在するように配置される基体部3aと、該基体部3aの上部から補助対象者Pの膝の両側(外側及び内側)に回り込むように該基体部3aと一体に形成された二股部3bとを有する。
そして、二股部3bの一対の先端部のうち、膝の内側の先端部が、内側膝関節機構5を介して大腿部フレーム2の第2要素フレーム13に連結され、膝の外側の先端部が、外側膝関節機構5を介して大腿部フレーム2の第1要素フレーム12に連結されている。
基体部3aの上部(二股部3bの根元部)は比較的広い面積を有し、下腿部の上部前面(詳しくは、脛骨粗面)を覆うように配置される。該基体部3aの上部は、補助対象者Pの脚の屈伸動作時等に、下腿部の脛骨粗面との間で接触力が作用する部分である。そこで、基体部3aの上部の内面には、図3に破線で示すように、緩衝部材により構成されたパッド16が固着されている。従って、基体部3aの上部は、パッド16を介して補助対象者Pの脛骨粗面に当接可能となっている。
足部フレーム4は、本実施形態では、補助対象者Pの足部を載せるように該足部の底面側に配置される底板部4aを有する板状のフレームである。底板部4aは、靴の中敷きと概ね同様の中敷き形状、あるいは、中敷き形状の一部を切り出した形状(例えば、中敷きの前部もしくは後部を除去した形状等)に形成されている。
また、足部フレーム4は、底板部4aの踵寄りの部分の両側から起立する起立部4b,4bを有し、該起立部4b,4bが足首関節機構6を介して下腿部フレーム3の下端部(基体部3aの下端部)に連結されている。起立部4b,4bは、補助対象者Pの足部を底板部4aに載せた状態で、該補助対象者Pの足首の踝の内側及び外側に位置するように配置されている。
足首関節機構6は、補助対象者Pの足首部の前側の周囲を囲むように配置される概略半円弧形状(又は概略U字形状)のリンク部材17を含む。このリンク部材17の中央部が、ロール軸方向の関節軸17aを介して下腿部フレーム3の下端部に連結されている。
そして、リンク部材17は、下腿部フレーム3に対して、関節軸17aの軸心周りでロール方向に相対回転し得るように軸支されている。
関節軸17aは、本実施形態では、補助対象者Pの足部を足部フレーム4の底板部4aに載せた状態で、補助対象者Pの足首部の距骨の下関節よりも上方の高さに位置するように配置されている。図示例では、関節軸17aは、補助対象者Pの下腿部の下端部の前側で、足部の甲の上側に位置するように配置される。
リンク部材17の両端部のそれぞれは、ピッチ軸方向の関節軸17bを介して足部フレーム4の起立部4b(詳しくは、補助対象者Pの踝の内側及び外側のうち、リンク部材17の各端部と同じ側の起立部4b)に連結されている。この場合、補助対象者Pの踝の内側の関節軸17bと外側の関節軸17bとは同軸心に配置されている。そして、リンク部材17は、内側及び外側の関節軸17b,17bの軸心周りに(ピッチ方向に)足部フレーム4に対して相対回転し得るように軸支されている。
ここで、内側及び外側の関節軸17b,17bの軸心方向について補足すると、補助対象者Pの足首の底屈及び背屈の動作の回転軸は、一般に、脛骨の長軸方向(下腿部の長手方向)に直交する面に対して若干傾いている。
このため、本実施形態では、足首関節機構6の関節軸17b,17bの軸心は、補助対象者Pの足首の底屈及び背屈の動作の回転軸に極力一致するように、補助対象者Pの脛骨の長軸方向(下腿部の長手方向)に直交する面に対して若干傾けられている。この場合、足首関節機構6の関節軸17b,17bの軸心は、足部フレーム4の底板部4aを水平面上に載置した状態(又は運動補助装置1を装着した補助対象者Pが水平面上に起立した状態)で、内側の関節軸17bよりも外側の関節軸17bの方が若干低くなるように傾けられている。
上記の如く足首関節機構6が構成されているので、補助対象者Pの足首の底屈又は背屈の動作時に、下腿部フレーム3及び足部フレーム4が、それぞれ補助対象者Pの下腿部、足部に対する相対変位を極力生じることなく該下腿部、足部と一体に動くようになっている。
また、足首関節機構6のロール軸方向の関節軸17aが、補助対象者Pの足部の甲の上側に配置されるので、足首の底屈動作時に、足部が関節軸17aに干渉するのが防止される。
なお、本実施形態では、足首関節機構6は、ヨー軸方向(上下方向)の関節軸を持たない。ただし、補助対象者Pの足部を下腿部に対してヨー方向に回転させた場合には、下腿部フレーム3の基体部3aが捩れるようになっている。これにより、足部フレーム4が下腿部フレーム3に対してヨー方向に相対回転可能となっている。このため、補助対象者Pは、支障なく、足部を下腿部に対して任意の姿勢に動かすことが可能となっている。
ただし、足首関節機構6は、ヨー軸方向の関節軸を備えるように構成されていてもよい。
外側膝関節機構5及び内側膝関節機構5は、いずれも同じ構造の関節機構である。各膝関節機構5は、本実施形態では、一般的な人の膝関節の動きによる脚の屈伸動作(大腿部及び下端部の間の相対変位運動)と同様の動き方で、膝関節機構5,5の動きによる脚リンク機構7の屈伸動作(大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3の間の相対変位運動)を実現し得るように構成されている。
以下に、図4を参照して、外側膝関節機構5及び内側膝関節機構5のうちの一方、例えば外側膝関節機構5の具体的な構成を代表的に説明する。なお、図4には、膝関節機構5の構成に加えて、脚リンク機構7を伸展状態から屈曲させていったときの膝関節機構5の状態変化の様子が示されている。
外側膝関節機構5は、大腿部フレーム2(詳しくは、第1要素フレーム12)と、下腿部フレーム3(詳しくは、二股部3bの一対の先端部のうちの外側の先端部)とを連結する2つのリンクである第1リンク21及び第2リンク22を有する。
第1リンク21は、大腿部フレーム2の第1要素フレーム12の下端部の関節連結部15に関節軸21aを介して連結されていると共に、下腿部フレーム3の二股部3bの外側先端部に関節軸21bを介して連結されている。関節軸21a,21bは、ピッチ軸方向の互いに平行な軸心を有する。そして、第1リンク21は、大腿部フレーム2に対して、関節軸21aの軸心周りのピッチ方向に相対回転可能に軸支され、下腿部フレーム3に対して、関節軸21bの軸心周りのピッチ方向に相対回転可能に軸支されている。
第2リンク22は、大腿部フレーム2の第1要素フレーム12の下端部の関節連結部15に関節軸22aを介して連結されていると共に、下腿部フレーム3の二股部3bの外側先端部に関節軸22bを介して連結されている。関節軸22a,22bは、関節軸21a,21bの軸心と同方向(ピッチ軸方向)の互いに平行な軸心を有する。そして、第2リンク22は、大腿部フレーム2に対して、関節軸22aの軸心周りのピッチ方向に相対回転可能に軸支され、下腿部フレーム3に対して、関節軸22bの軸心周りのピッチ方向に相対回転可能に軸支されている。
第1リンク21の下腿部フレーム3側の関節軸21bと、第2リンク22の下腿部フレーム3側の関節軸22bとは、関節軸21bよりも関節軸22bが後側に位置するように配置されている。
また、本実施形態では、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3の間の屈曲角度が0[deg]の状態(脚リンク機構7の伸展状態)では、第2リンク22の大腿部フレーム2側の関節軸22aは、第1リンク21の大腿部フレーム2側の関節軸21aよりも若干後ろ側に位置するようになっている。
さらに、図4に示すように、第1リンク21及び第2リンク22の総計4つの関節軸21a,21b,22a,22bのうち、関節軸21a,21bの軸心間隔をD1、関節軸22a,22bの軸心間隔をD2、関節軸21a,22aの軸心間隔をDa、関節軸21b,22bの軸心間隔をDbと表記すると、これらのD1,D2,Da,Dbは、次式(1a)〜(1c)の関係が成立するように設定されている。
D1>Da ……(1a)
D1+Db>D2+Da ……(1b)
Da<Db ……(1c)
なお、第1リンク21及び第2リンク22は、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3の間の屈伸動作時に相互に干渉することが無いように、左右方向(図4の紙面に垂直な方向)での位置をずらして配置されている。
以上が外側膝関節機構5の詳細構造である。内側膝関節機構5も、外側膝関節機構5と同じ構成である。そして、内側膝関節機構5では、大腿部フレーム2の第2要素フレーム13の下端部の関節連結部15と、下腿部フレーム3の二股部3bの内側先端部とが、第1リンク21及び第2リンク22を介して連結される。
この場合、内側膝関節機構5の第1リンク21は、第2要素フレーム13の下端部の関節連結部15と、下腿部フレーム3の二股部3bの内側先端部とにそれぞれ関節軸21a,21bを介して相対回転可能に軸支される。
また、内側膝関節機構5の第2リンク22は、第2要素フレーム13の下端部の関節連結部15と、下腿部フレーム3の二股部3bの内側先端部とにそれぞれ関節軸22a,22bを介して相対回転可能に軸支される。
また、内側膝関節機構5における4つの関節軸21a,21b,22a,22bのそれぞれは、外側膝関節機構5における4つの関節軸21a,21b,22a,22bのそれぞれと同軸心に配置される。
ここで、各膝関節機構5における4つの関節軸21a,21b,22a,22bの軸心方向について補足すると、補助対象者Pの脚の屈伸時に、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3が、それぞれ補助対象者Pの大腿部、下腿部に対する相対変位を極力生じることなく該大腿部、下腿部と一体に動くようにするためには、各膝関節機構5の関節軸21a,21b,22a,22bの軸心が脛骨の長軸方向(下腿部の長手方向)に直交する面に対して若干傾いていることが好ましい。
そこで、本実施形態では、各膝関節機構5の関節軸21a,21b,22a,22bの軸心方向は、下腿部の長手方向に直交する面に対して若干傾けられている。この場合、運動補助装置1を装着した補助対象者Pが水平面上に起立した状態で、内側膝関節機構5の関節軸21a,21b,22a,22bのそれぞれが、外側膝関節機構5の関節軸21a,21b,22a,22bのそれぞれよりも低くなるように当該軸心方向が傾けられている。
補足すると、各膝関節機構5の関節軸21a,21b,22a,22bは、それぞれ、本発明における前記関節軸C1a,C1b,C2a,C2bに相当する。そして、各膝関節機構5の関節軸21a,21b,22a,22bは上記の如く配置されているので、本発明における前記条件(1)、(2)を満たすように関節軸21a,21b,22a,22bが配置されていることとなる。
内側膝関節機構5及び外側膝関節機構5のそれぞれは、上記の如く構成されている。このため、これらの膝関節機構5での脚リンク機構7の屈伸動作を行った場合に、図4に示すように、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の屈曲度合(屈曲角度)の増加に伴い、各膝関節機構5の第1リンク21及び第2リンク22が動く。
この場合、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の屈曲角度が、脚リンク機構7の伸展状態での角度(0[deg])から増加していくとき、第1リンク21の上側の関節軸21aが、第2リンク22の関節軸22a,22bを結ぶ直線よりも前側に位置する状態から、当該直線上に位置する状態を経て、当該直線の後ろ側に移行するように、各膝関節機構5の第1リンク21及び第2リンク22が動く。
このような膝関節機構5の動作によって、脚リンク機構7の屈伸動作における大腿部フレーム2と下腿部フレーム3との間の相対変位運動を、補助対象者Pの脚の屈伸動作における大腿部と下腿部との間の相対変位運動とほぼ同じ形態で行うことができることとなる。
以上説明した構造の各脚リンク機構7は、図1及び図2に示す如く補助対象者Pに装着される。この場合、補助対象者Pの各脚の大腿部を該脚に対応する脚リンク機構7の大腿部フレーム2の第2要素フレーム13と身体支持部材14との間に挿入し、さらに、該脚の足首の踝が、足部フレーム4の一対の起立部4b,4bの間に位置させるようにして、該脚の足部を、足部フレーム4の底板部4a上に載せることで、該脚リンク機構7が補助対象者Pに装着される。
このように、各脚リンク機構7を装着した補助対象者Pが、自身の脚の運動を行うと、該脚に装着された脚リンク機構7の大腿部フレーム2、下腿部フレーム3、及び足部フレーム4のそれぞれが、該脚の大腿部、下腿部、及び足部のそれぞれと一体に動くこととなる。
図8A〜図8Cは、脚リンク機構7を補助対象者Pに装着した状態で、脚の屈伸動作を行った場合の脚リンク機構7の動作例を示している。図8Aは、補助対象者Pが直立姿勢で起立した状態(脚を伸展させた状態)、図8Cは、補助対象者Pがしゃがんだ状態(脚をほぼ最大限に屈曲させた状態)、図8Bは、図8Aの状態と図8Cの状態との間の途中での脚の屈曲状態を示している。
本実施形態の脚リンク機構7では、前記した構造の各膝関節機構5の動作によって、脚リンク機構7の屈伸動作における大腿部フレーム2と下腿部フレーム3との間の相対変位運動を、補助対象者Pの脚の屈伸動作における大腿部と下腿部との間の相対変位運動とほぼ同じ形態で行うことができる。
このため、補助対象者Pの脚の屈伸動作時に、該脚の大腿部と下腿部とのそれぞれに対する大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3のそれぞれの相対変位がほとんど生じないように、大腿部フレーム2と下腿部フレーム3との間の屈伸動作が行われることとなる。
その結果、図8A〜図8Cを参照して判るように、補助対象者Pの脚の屈曲度合が小さい場合はもちろん、該屈曲度合を大きくした場合であっても、各膝関節機構5は、膝の内側又は外側の位置から膝の前側に突き出たりすることなく、当膝の内側又は外側の位置に保たれる。ひいては、補助対象者Pが膝まづくような場合であっても、各膝関節機構5が床にあたって邪魔になるようなことがない。
ここで、大腿部フレーム2と下腿部フレーム3との間の膝関節機構を、例えばピッチ軸方向の1軸周りの回転自由度を有する単軸構造の関節機構により構成することも可能である。
ただし、このようにした場合には、該膝関節機構の動作と、補助対象者Pの脚の膝関節の動作との不整合によって、補助対象者Pの脚を屈曲させたときに、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3のそれぞれが大腿部及び下腿部のそれぞれに対して相対変位を生じやすい。ひいては、補助対象者Pに、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3のそれぞれと、大腿部及び下腿部との間の擦れ感覚を及ぼしやすい。
また、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3のそれぞれが大腿部及び下腿部のそれぞれに対して相対変位することで、特に、補助対象者Pの脚を屈曲度合を大きくした場合に、膝関節機構が補助対象者Pの膝の前側に突き出るようになる。このため、補助対象者Pが膝まづこうとした場合に、膝関節機構が床にあたって、邪魔なものとなりやすい。本実施形態の膝関節機構5によれば、このような不都合を回避できる。
なお、補助対象者Pの足部に靴、スリッパ等の履物を履かせる場合には、例えば、補助対象者Pの足部に履物を履いた状態で、該履物と共に足部を足部フレーム4の底板部4aに載せるという態様を採用し得る。あるいは、補助対象者Pの足部を足部フレーム4の底板部4aに載せた状態で、該底板部4a及び足部に履物を履かせるという態様を採用することも可能である。さらに、足部フレーム4を、履物に一体に組み付けておく(足部フレーム4を履物の一部として構成しておく)ことも可能である。
次に、前記関節動力発生装置8を詳細に説明する。運動補助装置1の各脚リンク機構7に対応する関節動力発生装置8は、図5に示すように、圧縮によって弾性力を発生するようにそれぞれ構成された2つの弾性構造体31,31と、各弾性構造体31を貫通して配設される可撓性長尺部材32と、可撓性長尺部材32に可変的に張力を付与する張力付与機構33とを備える。
なお、図5では、図示の便宜上、外側膝関節機構5及び内側膝関節機構5は、それぞれの関節軸を紙面に垂直な方向に向けた状態で記載されている。
可撓性長尺部材32は、本実施形態ではワイヤ(線状部材)であり、以降、ワイヤ32という。なお、ワイヤ32は、本発明における長尺部材としての機能を兼ねている。
弾性構造体31,31の一方は外側膝関節機構5に付与する関節動力となる弾性力を発生する弾性構造体(以降、外側弾性構造体31ということがある)、他方は内側膝関節機構5に付与する関節動力となる弾性力を発生する弾性構造体(以降、内側弾性構造体31ということがある)である。これらの外側弾性構造体31及び内側弾性構造体31は同一構造のものである。その構造の一例を図6A、図6B及び図6Cを参照して説明する。
各弾性構造体31は、複数の弾性体41と複数の仕切り板42とを交互に重ね合わせてなる多層構造のものである。そして、弾性体41と仕切り板42との重ね合わせ方向で該弾性構造体31を貫通する貫通穴43が該弾性構造体31の軸心部に形成されている。
各弾性体41は、本実施形態では、密閉された多数の気室(図示省略)を内蔵する弾性部材、例えば単泡性(独立気泡性)のゴムスポンジ等により、筒状に形成されている。この場合、各弾性体41の軸心方向が、弾性構造体31の重ね合わせ方向である。また、各弾性体41の貫通穴が、弾性構造体31の貫通穴43の一部を構成するものとなる。
そして、該弾性体41の最小幅(該弾性体41の軸心方向と直交する方向での該弾性体41の外形幅の最小値)は、弾性構造体31の重ね合わせ方向の全長よりも小さいものに設定されている。
一例として、各弾性体41は、図6Bに例示するように、非圧縮状態(自然状態)において円筒形状となるように形成され得る。この場合には、弾性体41の外径(直径)は、該弾性体41の軸心方向に一定(もしくはほぼ一定)であるため、該弾性体41の外径が該弾性体41の最小幅と最大幅とに一致(もしくはほぼ一致)するものとなる。従って、この場合には、弾性体41の外径を、弾性構造体31の重ね合わせ方向の全長よりも小さい大きさに設定することで、該弾性体41の最小幅が、弾性構造体31の重ね合わせ方向の全長よりも小さいものとなる。
各仕切り板42は、弾性体41よりも十分に高剛性の部材、例えば金属もしくは硬質樹脂等により環状に形成されている。この場合、各仕切り板42の軸心方向(又は厚み方向)が、弾性構造体31の重ね合わせ方向である。また、各仕切り板42の貫通穴が、弾性構造体31の貫通穴43の一部を構成するものとなる。
各仕切り板42は、その軸心方向(厚み方向)で見た外形状と面積とが、弾性体41の軸心方向の端面の全体もしくはほぼ全体を、該仕切り板42の軸心方向の端面(弾性体41を重ね合わせる面)に接触させ得るように設定されている。
一例として、各仕切り板42は、図6Cに例示するように、円環状に形成され得る。そして、該仕切り板42の外径(直径)は、図6Aに示されるように、例えば円筒状の弾性体41の外径と一致もしくはほぼ一致する大きさに設定される。
また、本実施形態では、図6Cに例示するように、各仕切り板42の貫通穴の周囲の内周寄りの部分42aは、該部分42aの周囲の部分(外周寄りの部分)よりも厚く形成されている。該部分42a(以降、肉厚部分42aという)は、仕切り板42の厚み方向(軸心方向)の両側に突出している。そして、各仕切り板42の肉厚部分42aは、該仕切り板42に重ね合わされる弾性体41の貫通穴の端部に挿入し得る形状及びサイズで形成されている。
例えば、弾性体41が円筒形状である場合、各仕切り板42の肉厚部分42aは、図6Cに示すように、該仕切り板42の軸心方向で見た外形状が、弾性体41の貫通穴の横断面形状(該弾性体41の軸心方向と直交する横断面での形状)の内側に収まる形状(図示例では円形状)となるように形成され得る。この場合、該肉厚部分42aの最大幅(図示例では、直径)が、弾性体41の貫通穴の幅(内径)よりも若干小さな大きさに設定される。
さらに、本実施形態では、各仕切り板42の貫通穴の横断面積(該仕切り板42の軸心方向に直交する横断面での面積)の最小値は、弾性体41の貫通穴の横断面積(弾性体41の軸心方向に直交する横断面での面積)の最小値よりも小さい大きさに設定されている。
ここで、本実施形態では、各仕切り板42の貫通穴の内周面は、図6Cに例示するように、該貫通穴の横断面積が軸心方向で変化するように湾曲して形成されている。
具体的には、仕切り板42の肉厚部分42aの両端(軸心方向での両端)の間の中間位置(ほぼ中央位置)で、該仕切り板42の貫通穴の横断面積が最小となり、且つ、仕切り板42の肉厚部分42aの両端のそれぞれに近いほど、該仕切り板42の貫通穴の横断面積が大きくなるように、該仕切り板42の貫通穴の内周面が湾曲形成されている。換言すれば、仕切り板42の貫通穴の内周面は、軸心方向の中間位置で縊れた形状となるように湾曲形成されている。
また、弾性体41の貫通穴は、例えば、その横断面積が軸心方向で一定となるように形成され得る。この場合、仕切り板42の貫通穴の横断面積の最小値(仕切り板42の軸心方向の中間位置での横断面積)が、弾性体41の貫通穴の一定の横断面積よりも小さい大きさに設定される。
また、該仕切り板42の貫通穴の内周面と前記ワイヤ32との間の摩擦係数を低減するために、該内周面は摺動材により形成されている。該摺動材としては、フッソ樹脂、銅合金(リン青銅、真鍮等)、あるいは、オイル含浸メタル等を使用し得る。
以上の如く構成された弾性体41と仕切り板42とをほぼ同軸心に交互に重ね合わせることにより、弾性構造体31が構成されている。この場合、各仕切り板42の肉厚部分42aは、該仕切り板42に重なり合う弾性体41の貫通穴の端部に挿入される。そして、弾性構造体31の貫通穴43は、各弾性体41の貫通穴と各仕切り板42の貫通穴とが相互に連通してなる穴として形成される。
また、互いに重なり合う弾性体41と仕切り板42との接触面(詳しくは、弾性体41の端面と、仕切り板42の肉厚部分42aの周囲の外周寄り部分(肉厚部分42aよりも薄い部分)の厚み方向の端面)は、例えば接着剤により相互に固着されている。なお、互いに重なり合う仕切り板42と弾性体41との固着は接着以外の手法により行うこともできる。例えば、当該固着を、焼き付けにより行うこと、あるいは、仕切り板42と弾性体41との一体成形によって行うことも可能である。
本実施形態では、上記の如く構成された各弾性構造体31の貫通穴43にワイヤ32が貫挿され、該ワイヤ32に後述する如く張力が付与される。このように貫通穴43に貫挿されたワイヤ32に張力が付与された状態で、各弾性構造体31が、その重ね合わせ方向に圧縮される。その圧縮に応じて、該弾性構造体31が、伸長方向の弾性力を発生する。該弾性力は、弾性構造体31の圧縮度合の増加に伴い、大きくなる。
本実施形態では、以上の如く構成された弾性構造体31が、脚リンク機構7の適所、例えば大腿部フレーム2に搭載されている。より詳しくは、外側弾性構造体31と内側弾性構造体31とは、図1〜図3に破線で示すように大腿部フレーム2の第1要素フレーム12の内部と、第2要素フレーム13の内部とにそれぞれ収容されている。
この場合、各弾性構造体31は、各弾性体41の弾性変形によって、ある程度の湾曲を許容し得る。従って、第1要素フレーム12又は第2要素フレーム13における各弾性構造体31の搭載箇所がある程度湾曲している場合には、該弾性構造体31は、その搭載箇所の湾曲形状に倣うように湾曲させた状態で該搭載箇所に搭載することが可能である。例えば、本実施形態の運動補助装置1では、内側弾性構造体31が、図1又は図2に例示する如く、第2要素フレーム13の湾曲形状に倣うように若干湾曲した状態で、第2要素フレーム13の内部に収容される。
ワイヤ32は、各弾性構造体31の貫通穴43に貫挿された状態で、張力付与機構33によって張力が可変的に付与される。該張力付与機構33は、ワイヤ32と併せて、本発明における動力伝達機構の一例を構成するものである。
この場合、張力付与機構33は、各弾性構造体31の貫通穴43に貫挿されたワイヤ32に付与する張力に応じた弾性力(張力に釣り合う弾性力)を該弾性構造体31に発生させるように該ワイヤ32と弾性構造体31と間の力伝達を行うように構成されている。さらに、張力付与機構33は、大腿部フレーム2と下腿部フレーム3との間の相対変位(膝関節機構5の動作による脚リンク機構7の屈伸動作)に応じて、ワイヤ32の張力と弾性構造体31の弾性力とを変化させると共に弾性構造体31の弾性力を関節動力として膝関節機構5に付与することができるように構成されている。
このような機能を有する張力付与機構33は、本実施形態では、各弾性構造体31の軸心方向の両端部のうちの一端部からのワイヤ32の導出部分(以降、一端側導出部分ということがある)の長さを一定に保つように、該一端側導出部分を該弾性構造体31の一端部に対して拘束する機構と、ワイヤ32の他端側導出部分の配設経路の途中部と前記弾性構造体31の他端部との間の当該配設経路沿いの距離を一定に維持する機構と、各弾性構造体31の他端部からのワイヤ32の導出部分(以降、他端側導出部分ということがある)を、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の相対変位運動(屈伸動作)に応じて該弾性構造体31の他端部に対して走行させるように、該相対変位運動を該他端側導出部分に伝達する機構とを含む。
なお、本実施形態では、各弾性構造体31の上記一端部は、該弾性構造体31の上端部(膝関節機構5寄りの端部と反対側の端部)であり、各弾性構造体31の上記他端部は、該弾性構造体31の下端部(膝関節機構5寄りの端部)である。
張力付与機構33の具体的な一例構成を以下に説明する。図5を参照して、本実施形態における張力付与機構33は、ワイヤ32の他端側導出部分の配設経路の途中部と前記弾性構造体31の下端部(他端部)との間の当該配設経路沿いの距離を一定に維持する機構の構成要素として、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13のそれぞれの内部において、外側弾性構造体31の下端部の仕切り板42と外側関節連結部15の上端の隔壁部15aとの間、並びに、内側弾性構造体31の下端部の仕切り板42と内側関節連結部15の上端の隔壁部15aとの間に各々配設された細長のチューブ45を備える。なお、この場合、各関節連結部15の上記隔壁部15aが、ワイヤ32の他端側導出部分の配設経路の途中部に相当する。
各チューブ45は、該チューブ45に対応する弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分を走行可能に挿通させるガイド管である。
各チューブ45の一端が、弾性構造体31の下端部の仕切り板42の貫通穴の開口端周縁部に当接(もしくは固定)され、該チューブ45の他端が関節連結部15の上端の隔壁部15aの所定部位に当接(もしくは固定)されている。なお、各チューブ45は、大腿部フレーム2(第1要素フレーム12又は第2要素フレーム13)に固定されていてもよい。
また、各チューブ45の内部は、弾性構造体31の貫通穴43に連通されていると共に、関節連結部15の隔壁部15aに形成された孔を介して該関節連結部15の内部に連通されている。
そして、各弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分は、該弾性構造体31の下端部に連なるチューブ45に挿通され、さらに該チューブ45の内部を通って関節連結部15の内部に導入されている。
上記各チューブ45は、例えば、高剛性の部材(金属、硬質樹脂等)により構成されている。このため、外側弾性構造体31と外側関節連結部15の隔壁部15aとの間のチューブ45によって、外側弾性構造体31の下端部(他端部)と、外側関節連結部15の隔壁部15aとの間の距離(ワイヤ32の配設経路沿いの距離)が一定に維持されることとなる。
同様に、内側弾性構造体31と内側関節連結部15の隔壁部15aとの間のチューブ45によって、内側弾性構造体31の下端部(他端部)と、内側関節連結部15の隔壁部15aとの間の距離(ワイヤ32の配設経路沿いの距離)が一定に維持されることとなる。
補足すると、各チューブ45は、その長手方向の圧縮荷重に対する剛性が高剛性なものであれば、曲げ荷重に対する剛性が比較的低いもの(撓み得るもの)を採用することもできる。
また、ワイヤ32の他端側導出部分の配設経路の途中部と弾性構造体31の下端部(他端部)との間の距離(ワイヤ32の配設経路沿いの距離)を一定に維持する機構は、上記チューブ45に限らず、種々様々な構成を採用し得ることはもちろんである。例えば、外側弾性構造体31の下端部の仕切り板42と、内側弾性構造体31の下端部の仕切り板42とを、それぞれ、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13のそれぞれに対して直接的に固定もしくは移動不能に係止する構成を採用し得る。この場合には、チューブ45は低剛性なもの(軟質なもの)であってもよい。あるいは、チューブ45を省略することも可能である。
また、張力付与機構33は、各弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分を、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の相対変位運動(屈伸動作)に応じて該弾性構造体31の下端部(他端部)に対して走行させるように、該相対変位運動を該他端側導出部分に伝達する機構の構成要素として、各膝関節機構5の第1リンク21を備える。従って、各膝関節機構5の第1リンク21は、張力付与機構33の構成要素を兼ねている。
具体的には、本実施形態では、各膝関節機構5の第1リンク21は、その外周部(換言すれば、関節軸21aと間隔(モーメントアーム長)を有する部分)がプーリの外周部として機能するように形成されている。そして、外側及び内側のそれぞれにおいて、各弾性構造体31から関節連結部15の内部に導入されたワイヤ32の他端側導出部分の端部が、膝関節機構5の第1リンク21の外周部に固定されている。
これにより、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の相対変位運動(脚リンク機構7の屈伸動作)に伴って、各膝関節機構5の第1リンク21が、大腿部フレーム2に対して関節軸21aの軸心周りに回転することで、該第1リンク21でのワイヤ32の他端側導出部分の巻き取り量が増減するようになっている。ひいては、該ワイヤ32の他端側導出部分が、該ワイヤ32に対応する弾性構造体31の下端部に対して走行することとなる。
張力付与機構33はさらに、各弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分の長さを一定に保つように、該一端側導出部分を該弾性構造体31の上端部(一端部)に対して拘束する機構の構成要素として、ワイヤ32の走行動作を制御するためのアクチュエータ装置54と、各弾性構造体31の上端部の仕切り板42とアクチュエータ装置54の筐体61との間に配設されたチューブ55を備える。
アクチュエータ装置54の筐体61は、補助対象者Pの運動の邪魔にならないような箇所で補助対象者Pに装着される。例えば、図1又は図2に示すように、筐体61は、補助対象者Pの上体とほぼ一体に動くように、該補助対象者Pの背面側で腰部の上側にベルト等(図示省略)を介して装着される。なお、筐体51は、例えば補助対象者Pの背中に装着したり、あるいは、腹部側で上体に装着することも可能である。
各チューブ55は、該チューブ55に対応する弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分を走行可能に挿通させるガイド管である。
外側弾性構造体31と筐体61との間のチューブ55は、外側弾性構造体31の上端部から第1要素フレーム12の内部を通って基部11に至り、さらに該基部11から大腿部フレーム2の外部の空間を通って筐体61に至るように配設されている。
また、内側弾性構造体31と筐体61との間のチューブ55は、内側弾性構造体31の上端部から第2要素フレーム13の内部を通って基部11に至り、さらに該基部11から大腿部フレーム2の外部の空間を通って筐体61に至るように配設されている。
そして、各チューブ55の一端が、弾性構造体31の上端部の仕切り板42の貫通穴の開口端周縁部に当接(もしくは固定)され、該チューブ55の他端が筐体61の外壁の所定部位に当接(もしくは固定)されている。
ここで、上記各チューブ55は、弾性構造体31が圧縮されるに伴い、弾性構造体31と筐体61との間で撓み得るように、該弾性構造体31の上端部と筐体61との間の直線距離よりも長いものとされている。そして、各チューブ55は、曲げ荷重に対する剛性が比較的低いと共に、該チューブ55の長手方向での圧縮荷重に対する剛性が比較的高い(伸縮し難い)ものとなるように構成されている。該チューブ55としては、例えば自転車のブレーキチューブと同じ構成のもの(密に巻いた金属コイルの周りを樹脂で覆った構造のチューブ)を採用し得る。
また、各チューブ55の内部は、弾性構造体31の貫通穴43に連通されていると共に、筐体61に形成された孔を介して該筐体61の内部に連通されている。
そして、各弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分は、該弾性構造体31の上端部に連なるチューブ55に挿通され、さらに該チューブ55の内部を通って筐体61の内部に導入されている。
図7に示すように、前記アクチュエータ装置54は、筐体61内に、外側弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分と、内側弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分とが各々巻き掛けられた二つのプーリ62,62と、これらのプーリ62,62を回転駆動可能な電動モータ66と、電動モータ66の運転制御を行う制御装置67とを備える。また、図示は省略するが、筐体61には、電動モータ66及び制御装置67の電源(電池等)も搭載される。ただし、制御装置67あるいは電源を、アクチュエータ装置54の筐体61とは別の箇所に配置することも可能である。
なお、図7では、補助対象者Pの左脚及び右脚のいずれか一方に装着される1つの脚リンク機構7用のアクチュエータ装置54だけを記載している。筐体61は、補助対象者の左脚に装着される脚リンク機構7用のアクチュエータ装置54と、右脚に装着される脚リンク機構7用のアクチュエータ装置54とで共用のもの、あるいは、各別のもののいずれであってもよい。
前記プーリ62,62は、一体に回転し得るように同軸心に連結されている。そして、外側弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分と、内側弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分とは、それぞれの端部がプーリ62の外周部に固定されている。
また、電動モータ66は、そのハウジング(電動モータ66のステータの固定部)が筐体61に固定されている。そして、電動モータ66の出力トルクをプーリ62,62に伝達し得るように、電動モータ66の出力軸に、減速機63を介してプーリ62,62が接続されている。
上記の如くアクチュエータ装置54が構成されているので、電動モータ66によりプーリ62,62を、筐体61内で回転停止状態に保持した場合、各弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分の長さが一定に保たれるように、該一端側導出部分が該弾性構造体31の上端部(一端部)に対して筐体61及びチューブ55を介して拘束されることとなる。
電動モータ66の運転制御を行う制御装置67は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成される。なお、制御装置67は、相互に通信可能な複数の電子回路ユニットにより構成されていてもよい。
本実施形態では、制御装置67には、プーリ62,62の回転角度に応じた信号を出力する回転センサ71と、補助対象者Pの脚に装着された脚リンク機構7が接地状態であるか否か(該脚リンク機構7を装着した補助対象者Pの脚が支持脚となっている状態であるか、遊脚となっている状態であるか)に応じた信号を出力する接地センサ72とからそれぞれの検出信号が入力される。
上記回転センサ71は、例えばプーリ62,62のいずれか一方、もしくは電動モータ66等に組み付けられるロータリエンコーダ、ポテンショメータ等により構成され得る。また、上記接地センサ72は、例えば足部フレーム4と補助対象者Pの足裏との間の圧力を検出するように足部フレーム4に組み付けられる力センサ等により構成され得る。
そして、制御装置67は、回転センサ71及び接地センサ72の検出信号を監視しつつ、あらかじめ実装されたプログラムを実行することで、電動モータ66の運転制御を行う。
次に、本実施形態の運動補助装置1の作動を説明する。
補助対象者Pの各脚に図1又は図2に示す如く、脚リンク機構7を装着した状態で制御装置67が起動される。
制御装置67は、各脚リンク機構7毎に、回転センサ71及び接地センサ72の検出信号に応じて、次のように電動モータ66の運転制御を行う。
制御装置67は、接地センサ72の検出信号が、脚リンク機構7が接地状態でないことを示す信号である場合、すなわち、該脚リンク機構7が装着された脚が遊脚となっている場合(ひいては、足部フレーム4が空中移動中である場合)には、プーリ62に、ワイヤ32の弛みが生じるのを防止し得る程度の小さなトルク(例えば所定値のトルク)を付与するように、該電動モータ66の出力トルクを制御する。
この場合、脚リンク機構7を装着した脚の屈伸動作に伴い、膝関節機構5での脚リンク機構7の屈伸動作が行われると、各弾性構造体31を貫通するワイヤ32が、該弾性構造体31に対して走行する。この状況では、ワイヤ32の張力は、弛みが生じない程度の小さい張力に維持される。
より詳しくは、膝関節機構5での脚リンク機構7の屈曲度合が増加すると、各弾性構造体31を貫通するワイヤ32が膝関節機構5の第1リンク21の外周に巻き取られるように引っ張られることで、アクチュエータ装置54のプーリ62が、ワイヤ32の引き出し方向に回転する。これにより、ワイヤ32が、弾性構造体31からの他端側導出部分の長さが長くなる方向に走行する。
また、膝関節機構5での脚リンク機構7の屈曲度合が減少すると、各弾性構造体31を貫通するワイヤ32が膝関節機構5の第1リンク21の外周から引き出される。そして、アクチュエータ装置54のプーリ62が、ワイヤ32の巻き取り方向に回転する。これにより、ワイヤ32が、弾性構造体31からの他端側導出部分の長さが短くなる方向に走行する。
このように、脚リンク機構7の屈伸動作に伴い、各弾性構造体31に対してワイヤ32が走行する状況では、各弾性構造体31には、実質的に圧縮荷重が作用せず、ひいては、各膝関節機構5に弾性構造体31の弾性力は実質的に作用しない状態となる。
従って、補助対象者Pは、遊脚としての脚を、脚リンク機構7を装着していない状態での通常の動作と同様に動かすことができる。
一方、接地センサ72の検出信号が、脚リンク機構7が接地状態であることを示す信号である場合、すなわち、該脚リンク機構7が装着された脚が支持脚となっている場合(ひいては、足部フレーム4が接地状態である場合)には、制御装置67は、回転センサ71の出力により示されるプーリ62の回転角度を一定に保持する(ひいては、プーリ62を回転停止状態に保持する)ように、回転センサ71の検出信号に応じて電動モータ66の出力トルクを制御する。
このように電動モータ66の出力トルクを制御した場合、各弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分は、プーリ62及び電動モータ66を介して筐体61に対して係止された状態となる。さらに、該ワイヤ32の一端側導出部分は、その長さが一定に保たれるように、筐体61及びチューブ55を介して該弾性構造体31の上端部の仕切り板42に拘束されることとなる。
この状態では、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の屈曲度合を増加させていくと(脚リンク機構7を伸展状態から膝関節機構5で屈曲させていくと)、図9に示すように、各弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分の長さが一定に保たれるように、各弾性構造体31に対応するチューブ55が撓みつつ、該弾性構造体31が圧縮される。
同時に、各弾性構造体31を貫通するワイヤ32に付与される張力が、該弾性構造体31の圧縮により発生する弾性力に釣り合う張力に増加するように、電動モータ66の出力トルクが制御されることとなる。この場合、ワイヤ32と弾性構造体31との間の力伝達は、プーリ62、電動モータ66、筐体61及びチューブ55を介して行われる。
これにより、各弾性構造体31の弾性力が、該弾性構造体31と同じ側(外側又は内側)の膝関節機構5に、脚リンク機構7を伸展させる方向の関節動力として付与されることとなる。この場合、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3の間の屈曲度合いの増加に伴い、各弾性構造体31の圧縮量、ひいては弾性力が増加する。
このように、補助対象者Pの支持脚側の脚リンク機構7の膝関節機構5に弾性構造体31の弾性力による関節動力が付与されることによって、補助対象者Pの歩行動作、あるいは、立ち座り動作、あるいはしゃがみこみ動作、しゃがみこみ状態からの立ち上がり動作等における補助対象者Pの支持脚の負荷が軽減される。このため、脚力が低下した補助対象者P等の運動(脚を動かす運動)を補助することができる。
本実施形態の運動補助装置1では、一例として、図10のグラフに例示する如き動作特性が実現される。図10のグラフは、各膝関節機構5に付与される弾性構造体31の弾性力によって、補助対象者Pに作用する補助力(上体に対して上向きに作用する並進力)と、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3の間の屈曲度合い(屈曲角度)との関係の一例を示すグラフである。
この例では、大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3の間の屈曲度合い(屈曲角度)が比較的小さい領域(脚リンク機構7の伸展状態に近い領域)では屈曲度合の増加に伴い感度よく、弾性構造体31の弾性力による上記上向きの並進力が増加する。そして、当該屈曲度合がある程度大きくなると、当該屈曲度合の増加に伴い、弾性構造体31の弾性力による上記上向きの並進力が比較的緩やかに増加する。
なお、運動補助装置1の動作特性は図10に例示した特性に限らず、各弾性構造体31の弾性体41の弾性特性の選定、各膝関節機構5における第1リンク21の外周部(ワイヤ32との係合部)の形状の設定等によって、種々様々な動作特性を実現できる。
また、本実施形態の運動補助装置1は、前記した如く構成されているので、以下に示す如き効果を奏することができる。
各弾性構造体31の弾性体41は、単泡性(独立気泡性)のゴムスポンジ等、密閉された多数の気室を有する構造のものであるので、各弾性構造体31を軽量なものとすることができる。
さらに、各弾性体41は、その素材による弾性力に加えて、弾性体41内の複数の気室の圧縮(体積の減少)による弾性力(詳しくは、各気室の体積の減少に応じて該気室内の気圧が増加することによって発生する弾性力)を発生する。従って、各弾性構造体31は、その軸心方向での圧縮によって、感度よく弾性力を増加させることができる。このため、各弾性構造体31は、小型なものであっても、比較的大きな弾性力を発生できる。
また、本実施形態では、弾性構造体31が、複数の弾性体41及び仕切り板42により、多層構造に形成されていると共に、張力を付与されたワイヤ32が弾性構造体31の貫通穴43に貫挿されているので、弾性構造体31の圧縮時に、弾性構造体31の全体が過剰に屈曲したり、あるいは、該弾性構造体31の重ね合わせ方向の局所毎に屈曲方向が異なるものとなるような異常屈曲状態が発生するのが防止される。
また、本実施形態では、弾性構造体31の各仕切り板42の貫通穴の横断面積の最小値は、各弾性体41の貫通穴の横断面積の最小値よりも小さい。このため、弾性構造体31が、大腿部フレーム2に湾曲した状態で搭載されることによって、ワイヤ32が弾性構造体31の貫通穴43の中心から偏心していたり、あるいは、弾性構造体31の圧縮時もしくは圧縮状態からの伸長時に、ワイヤ32が貫通穴43の中心から偏心しても、ワイヤ32が、各弾性体41の貫通穴の内周面に摺接するのが防止もしくは抑制される。ひいては、該弾性体41の貫通穴の内周面とワイヤ32との間の摩擦が発生するのを防止もしくは抑制できる。
加えて、仕切り板42の貫通穴の内周面は、前記した如く湾曲されていると共に、摺動材により形成されているので、ワイヤ32が仕切り板42の貫通穴の内周面に摺接しても、該ワイヤ32と仕切り板42との間の摩擦力は小さなもので済む。
さらに、互いに重ね合わされる弾性体41と仕切り板42とは、それらの接触面で互いに固定されているので、弾性構造体31の圧縮時又は圧縮状態からの伸長時に該接触面での摩擦が発生することが無い。
このため、弾性構造体31の圧縮により蓄積される弾性エネルギー等が、摩擦による熱エネルギーとして消耗されてしまうのを極力防止できる。ひいては、エネルギー損失を少なくできる。また、弾性構造体31に蓄積される弾性エネルギーを、膝関節機構5に作用させる関節動力に効率よく変換することができる。
また、各仕切り板42の貫通穴の周囲の内周寄り部分は肉厚部分42aとなっていると共に、該肉厚部分32aの内側の貫通穴の内周面は、前記した如く湾曲されている。このため、弾性構造体31の圧縮時又は圧縮状態からの伸長時に、ワイヤ32が仕切り板42の貫通穴の内周面に接触しても、その接触圧が該仕切り板32の貫通穴の長手方向に分散される。ひいては、ワイヤ32と仕切り板42との接触圧が該ワイヤ32又は仕切り板42の局所に集中するのが防止される。その結果、該ワイヤ32の断線、損傷等が生じるのを防止して、該ワイヤ32等の耐久性を高めることができることとなる。
また、本実施形態では、各大腿部フレーム2は、その基体のフレームが、補助対象者Pの腰部の片側に配置される基部11から補助対象者Pの大腿部の外側に沿って膝の外側に至る第1要素フレーム12と、基部11から大腿部の前面側を斜行して膝の内側に至る第2要素フレーム13とから構成されている。
このため、補助対象者Pの脚の付け根寄りの箇所の内側にフレームが無いため、補助対象者Pの右脚用の脚リンク機構7の大腿部フレーム2と、左脚用の脚リンク機構7の大腿部フレーム2とが、両脚の大腿部の内側で互いに干渉してしまうようなことを回避できる。
また、大腿部フレーム2の第1要素フレーム12はほぼ上下方向に延在し、第2要素フレーム13は、基部11から斜め下向きに斜行するので、大腿部フレーム2は、ピッチ方向での曲げ剛性が比較的高いものとすることができる。このため、補助対象者Pの脚の屈曲時に、補助対象者Pの上体を押し上げる力を身体支持部材14を介して効果的に補助対象者Pに作用させることができる。
また、大腿部フレーム2の第1要素フレーム12と第2要素フレーム13とは、それらの下部側の間隔を変化させるように撓ませることを比較的容易に行い得る。このため、幅広い範囲の太さの大腿部に対して、大腿部フレーム2をフィッティングさせることができると共に、補助対象者Pに拘束感を及ぼすのを極力回避できる。
また、大腿部フレーム2の第2要素フレーム13が大腿部の前面側において、該大腿部の外側から内側に向かって斜め下向きに斜行している。加えて、該第2要素フレーム13は、滑らかに湾曲している。
このため、例えば、補助対象者Pが椅子等に腰掛けた状態で、該補助対象者Pは、該第2要素フレーム13の上部側から下部側までの各部を、自身の腕等の自然な姿勢をとりつつ把持しやすい。さらには、その把持状態で補助対象者Pは、第2要素フレーム13に対して無理なく力を及ぼしやすい。ひいては、補助対象者Pが、脚リンク機構7の脱着作業を行い易い。
また、大腿部フレーム2の身体支持部材14は、基部11から第2要素フレーム13の下端部にかけて、大腿部の背面側で斜めに延在する。このため、補助対象者Pの脚(支持脚)の屈曲状態(弾性構造体31による弾性力が膝関節機構5に作用する状態)において、大腿部の下部側の箇所から上部側の箇所にかけて、該大腿部を背面側から身体支持部材14で支持することができる。
特に、基部11は、補助対象者Pの脚の内側の付け根の高さ以上の高さに配置される部位であるので、該基部11から延在する身体支持部材14によって、補助対象者Pの大腿部だけでなく、股関節近辺の箇所、あるいは、坐骨近辺の箇所をも身体支持部材14によって支持することができる。
このため、補助対象者Pの上体を押し上げる方向の並進力を、補助対象者Pの局所に偏らせないようにしつつ、該補助対象者Pに効果的に作用させることができる。
また、大腿部フレーム2の上端部たる基部11が、補助対象者Pの脚の内側の付け根の高さ以上の高さに配置されると共に、補助対象者Pの腰骨よりも低い高さに配置されるので、補助対象者Pの脚の外旋時に、大腿部フレーム2の上端部が補助対象者Pの尻に押し付けられたり、あるいは、補助対象者Pの上体を横に曲げたときに、大腿部フレーム2の上端部が補助対象者Pの上体側面に当たるのを回避できる。
また、本実施形態では、関節動力発生装置8は、各膝関節機構5に、弾性構造体31が発生した弾性力を、該膝関節機構5の第1リンク21を介して付与する。この場合、各膝関節機構5は、前記した如く構成されているので、図4を参照して判るように、補助対象者Pが、各脚を伸展状態から最大限に屈曲させても、第1リンク21の、回転変位量は、比較的小さなもので済む。
このため、各弾性構造体31の必要伸縮量が比較的小さなもので済む。ひいては、各弾性構造体31の配置のための必要スペースが小さく済むため、各弾性構造体31の配置の自由度が高まると共に、関節動力発生装置8を小型なものに構成できる。
また、前記したように、補助対象者Pの脚の屈伸動作時に、該脚の大腿部と下腿部とのそれぞれに対する大腿部フレーム2及び下腿部フレーム3のそれぞれの相対変位がほとんど生じないため、その相対変位を考慮した余裕スペースをほとんど必要としない。このため、関節動力発生装置8を小型に構成できる。
さらに、各チューブ55の屈曲角の合計値(詳しくは、各チューブ55の曲率を、該チューブ55の全長にわたって、該チューブ55の長さ方向に積分してなる値)が小さくなるので、ワイヤ32とチューブ55との間の摩擦を低減することができる。
[変形態様について]
本発明の実施形態は、前記実際形態で説明したものに限らず、種々様々な態様を採用し得る。以下に、いくつかの変形態様を説明する。
前記実施形態では、弾性構造体31の各弾性体41が円筒形状であるものを例示した。ただし、弾性構造体31の各弾性体41は、円筒形状に限らず、種々様々の形状のものを採用し得る。
また、弾性構造体31に、その重ね合わせ方向に延在するガイド筒を外挿し、該弾性構造体31の圧縮が、該ガイド筒の内周面に沿って行われるようにすることも可能である。
また、弾性構造体31の代わりに、例えばコイルばね等の通常の弾性部材を使用することも可能である。この場合、例えば、第1要素フレーム12又は第2要素フレーム13の内部又は外側で、コイルばねの上端部を第1要素フレーム12又は第2要素フレーム13に固定もしくは係止し、該コイルばねの下端部をワイヤ等の可撓性長尺部材を介して膝関節機構の第1リンク21の外周部に連結する構成等を採用し得る。
また、前記実施形態では、可撓性長尺部材としてワイヤ32を使用した。ただし、可撓性長尺部材は、ベルト状のもの、鎖状のものなどであってもよい。
また、関節動力発生装置8は、前記した構造のものに限られず、種々様々な態様を採用し得る。例えば、関節動力発生装置8の張力付与機構として、図11に示す構造の張力付与機構81を採用することもできる。
この張力付与機構81は、弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分の配設経路の途中部と前記弾性構造体の第2端部との間の当該配設経路沿いの距離を一定に維持する機構は、前記実施形態の張力付与機構33と同じである。すなわち、当該機構は、各弾性構造体31の下端部の仕切り板42と、関節連結部15の上端の隔壁部15aとの間に配設された細長のチューブ45を含む。
一方、張力付与機構81は、各弾性構造体31からのワイヤ32の一端側導出部分の長さを一定に保つように、該一端側導出部分を該弾性構造体31の上端部(一端部)に対して拘束する機構の構成要素として、ワイヤ32の一端側導出部分の端部に固定された係止部材82を備える。この係止部材82は、弾性構造体31の上端部の仕切り板42の貫通穴の開口端周縁部に当接(もしくは固定)されている。
これにより、各弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分を引っ張るようにして該ワイヤ32に張力を付与した状態で、ワイヤ32の一端側導出部分の長さが一定(この例ではほぼゼロの長さ)に保たれるように、該ワイヤ32の一端側導出部分が弾性構造体31の上端部に拘束されることとなる。
なお、係止部材82を備える代わりに、ワイヤ32の一端側導出部分を適宜の締結部材もしくは接着剤等を介して弾性構造体31の上端部(一端部)の仕切り板42に固定する構成を採用することも可能である。
張力付与機構81は、さらに各弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分を、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の相対変位運動(屈伸動作)に応じて該弾性構造体31の下端部(他端部)に対して走行させるように、該相対変位運動を該他端側導出部分に伝達する機構の構成要素として、大腿部フレーム2の各関節連結部15に搭載された動滑車83と、該動滑車83をその自転軸周りに回転自在に支承する軸受部84と、各膝関節機構5の第1リンク21と、ワイヤ32の走行動作を制御するためのアクチュエータ装置54とを備える。アクチュエータ装置54は、前記実施形態の張力付与機構33に備えたものと同じである。
各動滑車83は、これを支承する軸受部84と共に、膝関節機構5の第1リンク21に対して接近又は離反する方向(図11の矢印Y1,Y2の方向)に並進移動し得るように、関節連結部15の内部に収容されている。
なお、各動滑車83及び軸受部84の可動方向は、例えば、該動滑車83及び軸受部84が収容された関節連結部15の内壁面によって規制される。
そして、各動滑車83用の軸受部84は、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の相対変位運動(屈伸動作)に連動して変位するように、長尺部材の一例としてのワイヤ85を介して膝関節機構5の第1リンク21に連結されている。
この場合、ワイヤ85の第1リンク21側の一端部は、プーリの外周部として機能する第1リンク21の外周部に固定されている。また、ワイヤ85の他端部が、軸受部84に係止又は固定されている。
これにより、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の相対変位運動(脚リンク機構7の屈伸動作)に伴って、各膝関節機構5の第1リンク21が、大腿部フレーム2に対して関節軸21aの軸心周りに回転することで、該第1リンク21でのワイヤ85の巻き取り量が増減するようになっている。
ひいては、外側及び内側のそれぞれにおいて、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の相対変位運動に伴って、動滑車83及び軸受部84が、膝関節機構5の第1リンク21に対して接近又は離反するように並進移動することとなる。この場合、本実施形態では、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の屈曲度合いの増加に伴い、第1リンク21でのワイヤ85の巻き取り量が増加し、ひいては、動滑車83が該第1リンク21に接近するように並進移動する。
各弾性構造体31からチューブ45を通って関節連結部15の内部に導入されたワイヤ32の他端側導出部分は、図11に示す如く、該関節連結部15に収容された動滑車83の外周(膝関節機構5の第1リンク21寄りの外周)に巻き掛けられている。
そして、外側関節連結部15内の動滑車83の外周に巻き掛けられたワイヤ32の他端側導出部分は、該動滑車83の外周を経由した後、外側関節連結部15の隔壁部15aに形成された孔を通って、第1要素フレーム12のうちの外側関節連結部15の上側部分の内部に導入されている。
同様に、内側関節連結部15内の動滑車83の外周に巻き掛けられたワイヤ32の他端側導出部分は、該動滑車83の外周を経由した後、内側関節連結部15の隔壁部15aに形成された孔を通って、第2要素フレーム13のうちの内側関節連結部15の上側部分の内部に導入されている。
さらに、第1要素フレーム12側のワイヤ32の他端側導出部分と、第2要素フレーム13側のワイヤ32の他端側導出部分とは、第1要素フレーム12側のチューブ86の内部と第2要素フレーム13側のチューブ86の内部とをそれぞれを通ってアクチュエータ装置54の筐体61に至り、該筐体61に形成された孔を介して該筐体61の内部に導入されている。さらに、筐体61内では、各ワイヤ32は、前記プーリ62の外周部に連結されている。
この場合、第1要素フレーム12側のチューブ86は、外側関節連結部15から第1要素フレーム12の延在方向に沿って基部11に至り、さらに該基部11から大腿部フレーム2の外部の空間を通って筐体61に至るように配設されている。
また、第2要素フレーム13側のチューブ86は、内側関節連結部15から第2要素フレーム13の延在方向に沿って基部11に至り、さらに該基部11から大腿部フレーム2の外部の空間を通って筐体61に至るように配設されている。
そして、各チューブ86は、前記実施形態における張力付与機構33のチューブ55と同様に、曲げ荷重に対する剛性が比較的低いと共に、該チューブ86の長手方向での圧縮荷重に対する剛性が比較的高い(伸縮し難い)ものとなるように構成されている。
図11に示す張力付与機構81は、上記の如く構成されている。この張力付与機構81では、前記実施形態の場合と同様に、回転センサ71及び接地センサ72の検出信号に応じて、アクチュエータ装置54の電動モータ66の運転制御が制御装置67により行われる。
この場合、ワイヤ32に弛みが生じるのを防止し得る程度の小さなトルク(例えば所定値のトルク)を付与するように、電動モータ66の出力トルクが制御されている状態では、膝関節機構5での脚リンク機構7の屈伸動作が行われると、その屈伸動作に応じて、各関節連結部15内の動滑車83が回転しつつ、変位(並進移動)する。そして、この動滑車83の変位に応じて、アクチュエータ装置54のプーリ62(図7参照)が回転すると共に、外側弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分のうちの外側動滑車83の外周から筐体61側の部分と、内側弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分のうちの内側動滑車83の外周から筐体61側の部分とが、それぞれ、第1要素フレーム12及び第2要素フレーム13のそれぞれに対して走行する。
この状況では、各弾性構造体31には、実質的に圧縮荷重が作用せず、ひいては、各膝関節機構5に弾性構造体31の弾性力は実質的に作用しない状態となる。
従って、補助対象者Pは、遊脚としての脚を、脚リンク機構7を装着していない状態での通常の動作と同様に動かすことができる。
一方、電動モータ66の出力トルクが、プーリ62の回転角度を一定に保持する(プーリ62を回転停止状態に保持する)ように制御された状態では、大腿部フレーム2に対する下腿部フレーム3の屈曲度合を増加させていくと、各動滑車83がそれぞれに対応する膝関節機構5の第1リンク21に接近する方向に変位(並進移動)する。
そして、このとき、各動滑車83の変位に伴い、各弾性構造体31からのワイヤ32の他端側導出部分が引っ張られることで、該弾性構造体31の上端部にワイヤ32から圧縮荷重が作用し、該弾性構造体31が圧縮される。同時に、ワイヤ32に付与される張力が、該弾性構造体31の圧縮により発生する弾性力に釣り合う張力に増加するように、電動モータ66の出力トルクが制御されることとなる。
これにより、前記実施形態の場合と同様に、各弾性構造体31の弾性力が、該弾性構造体31に対応する膝関節機構5に、脚リンク機構7を伸展させる方向の関節動力として付与されることとなる。
また、この場合、各弾性構造体31の弾性力と、ワイヤ32に付与される張力との合力(弾性力のほぼ2倍の大きさの力)が、動滑車83の軸受部84と、ワイヤ85とを介して膝関節機構5に付与されることとなる。
なお、上記張力付与機構81は、動滑車83を用いて構成したが、動滑車83の代わりに、例えば差動機構を用いることもできる。
また、関節動力発生装置8は、例えば外側膝関節機構5及び内側膝関節機構5の一方にだけ関節動力を付与するように構成されていてもよい。
また、外側膝関節機構5及び内側膝関節機構5の両方または一方に、電動モータ等のアクチュエータの駆動力を、弾性構造体31の弾性力の代わりに付与するようにすることも可能である。
また、前記実施形態あるいは変形態様では、各膝関節機構5の第1リンク21の外周部をプーリ状のものとして、該外周部に可撓性のワイヤ32又は85を連結した。ただし、第1リンク21に動力を伝達する機構は、他の機構であってもよい。
例えば図12Aに示すように、第1リンク21にアーム部21xを形成し、このアーム部21xに軸支したロッド91を介して第1リンク21に動力(並進力)を付与するようにしてもよい。この場合、ロッド91のアーム部21xと反対側の端部は、例えば、前記ワイヤ32に連結したり、あるいは、前記動滑車83の軸受部84に連結する構成を採用し得る。なお、この例では、アーム部21xのロッド91との連結部が、本発明における第1リンクの外周部に相当するものとなる。また、ロッド91が本発明における長尺部材に相当する。
あるいは、図12Bに示すように、第1リンク21の外周部にスプロケット21yを形成し、このスプロケット21yに噛み合わせたチェーン92を介して第1リンク21に動力(並進力)を付与するようにしてもよい。この場合、チェーン92のスプロケット21yと反対側の端部は、例えば、前記ワイヤ32に連結したり、あるいは、前記動滑車83の軸受部84に連結する構成を採用し得る。なお、この例では、スプロケット21yが、本発明における第1リンクの外周部に相当するものとなる。また、チェーン92が本発明における長尺部材に相当する。
また、前記実施形態では、各膝関節機構5に脚リンク機構7の伸展方向の関節動力を作用させるようにしたが、該膝関節機構5に屈曲方向の関節動力を作用させ得るように、関節動力発生装置を構成することも可能である。
また、アクチュエータ装置54は、前記実施形態のものに限られない。例えば、電動モータ66の代わりに、プーリ62を回転不能に制動もしくはロックする状態と、当該制動状態もしくはロック状態を解除する状態とに切替え動作可能なブレーキ装置を備えてもよい。また、電動モータ66とプーリ62との間に、これらの間の動力伝達を遮断可能なクラッチ機構を介装してもよい。また、ワイヤ32の弛みを防止するために、該ワイヤ32に弱い張力を付与するプリテンション機構を電動モータ66もしくはブレーキ装置とは別に備えるようにしてもよい。
また、運動補助装置1の脚リンク機構7は前記の構造のものに限られない。例えば大腿部フレーム2、下腿部フレーム3、及び足部フレーム4は、前記実施形態のものと異なる構造のものであってもよい。
また、脚リンク機構7は、例えば膝の外側又内側の一方にだけ膝関節機構を有する構造のものであってもよい。
また、例えば脚リンク機構7の足首関節機構6及び足部フレーム4を省略し、下腿部フレーム3の下端部を脚の足首にベルト等を介して拘束するように脚リンク機構が構成されていてもよい。
また、足首関節機構6は、例えば、フリージョイント等により構成されていてもよい。
また、大腿部フレーム2の基部11は、大腿部の上部の外側に配置されていてもよい。
また、脚リンク機構の構造は、例えば、図13及び図14に示すような構造を採用してもよい。
この例では、補助対象者Pの各脚毎の脚リンク機構7Aは、大腿部フレーム120の構造だけが前記実施形態のものと相違する。この場合、大腿部フレーム120は、補助対象者Pの腰部の前面側の側面寄りの箇所(前後方向及び左右方向に対して概ね45degの方向箇所)で各脚の上方に配置される基部121と、基部121から下方に二股状に延在する第1要素フレーム122及び第2要素フレーム123とを有する。
第1要素フレーム122は、補助対象者Pの脚の大腿部の前面側で、基部121から外側膝関節機構5に向かって斜め下方に延在し、その下端部(関節連結部15)が外側膝関節機構5に連結されている。
また、第2要素フレーム123は、補助対象者Pの脚の大腿部の前面側で、基部121から内側膝関節機構5に向かって斜め下方に延在し、その下端部(関節連結部15)が内側膝関節機構5に連結されている。
また、大腿部フレーム120は、補助対象者Pの脚の大腿部の背面側に配置される身体支持部材124を有する。この身体支持部材124は、基部11から補助対象者の臀部背面を経由して、第2要素フレーム123の下端部に至るように、該基部11と第2要素フレーム123の下端部との間に架け渡されている。
図16及び図17に示す脚リンク機構7Aは、以上説明した以外構造は、前記実施形態の脚リンク機構7と同じである。
このような構造の脚リンク機構7Aにおいても、大腿部フレーム120は、ピッチ方向の曲げ剛性が高いものとなる。そして、各膝関節機構5に前記実施形態と同様に関節動力を付与することで、補助対象者Pの上体を押し上げる方向の補助力を身体支持部材124を介して適切に補助対象者Pに作用させることができる。
なお、基部121が上記のように、補助対象者Pの前後方向及び左右方向に対して概ね45degの方向箇所に配置されるので、補助対象者Pが、かがんだ時等に、補助対象者Pの腹部に該基部121が当たるのが回避される。