図面は単に例示的なものであり、図面へのすべての参照は、単に例示目的で行われ、決して、以下に本明細書に記載される実施形態の範囲を制限するよう意図されるものではないということは理解されよう。便宜上、参照数字は、類似の成分または特徴を示すよう図を通して反復され得る(補正値を伴って、または伴わずに)。
明確にするために、以下の考察が、教示の実施形態の種々の態様を説明するが、特定の具体的な詳細は、そうすることが好都合か否か、または適当であるか否かに関わらず省くことを理解されたい。例えば、代替実施形態における同様または類似の特徴の考察は、幾分か省略され得る。周知の見解または概念は、簡潔さのためにかなり詳細には論じられない場合もある。当業者ならば、一部の実施形態は、どの実施においても、実施形態の完全な理解を提供するためだけに本明細書において示される、いくらかの具体的に記載された詳細を必要としない場合もあるということを認識する。同様に、記載された実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、普通の一般知識によるわずかな変更または変形の影響を受けやすい場合があるということは明らかであろう。以下の実施形態の詳細な説明は、決して、本教示の範囲を制限するとみなされてはならない。
本発明は、ヒト血漿、血清または全血などのヒト試料などにおいて、胆汁酸前駆体などのケトステロールバイオマーカーを検出および定量化する方法を記載する。一部の実施形態では、脳腱黄色腫症(CTX)および過敏性腸症候群(IBS)障害において見られるCYP27A1欠乏などの27−ヒドロキシラーゼ(CYP27A1)欠乏を診断またはスクリーニングする方法が開示される。種々の実施形態では、CTXおよび過敏性腸症候群疾患のケトステロールバイオマーカーの同時分析のための迅速な、簡単な溶液が提供され、したがって、これらの障害ならびに他の障害および/またはCYP27A1欠乏と関連している状態の日常的なスクリーニングの可能性を提供する。これは、例えば、CTXの新生児スクリーニングとして有用であり得る。
対象のバイオマーカーの中には、7α−コレステン−3−オン(7αC4)、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オン、7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オン(7α12αC4)および27−ヒドロキシラーゼ(CYP27A1)欠乏のために蓄積される他のケトステロール胆汁酸前駆体がある。
対象の各ケトステロールバイオマーカーの内部標準を作り出すための簡単な、安価な方法を有することは有用であり、時には、極めて重要である。本明細書において記載されるQAO試薬は、これらのケトステロール胆汁酸前駆体のイオン化効率を実質的に改善し、QAO試薬を用いない場合よりも大幅に低いLLOQを提供する。この方法は、3〜5pL程度の少ない試料体積を使用する分析を提供する。
本明細書に記載される実施形態は、新生児スクリーニングの診断またはスクリーニング方法を含む。しかし、本明細書に記載される方法は、幼児および成人などの他の集団およびスクリーニング/診断にとっても同等に有用である。
一部の実施形態では、他の物質が混じっていない標準との簡単な反応によって対象の各分析物のISを作製するために、同位体濃縮された第四級アミノキシ試薬が使用され得る。バイオマーカーのパネルの内部標準の特定の濃度は、第四級アミノキシ試薬の同位体の変異体を用いて既知濃度の分析物を標識することによって作り出され得る。次いで、これが、試験試料中にスパイクされ得、内部標準として使用され得る。
本明細書に記載されるマススペクトロメトリー技術において分析物として使用されるケトステロールバイオマーカーは、生理流体試料などの種々の生体マトリックス、細胞または組織溶解物試料、タンパク質試料、細胞培養試料、発酵ブロス培地試料、農産物試料、動物製品試料、動物食餌試料、ヒト消費のための食物または飲料の試料、それらの組合せなど、およびケトステロールバイオマーカー官能性が存在する本質的に任意の試料中に見られる。生体マトリックスの例は、血液、血清、血漿、汗、涙、尿、腹膜液、リンパ、膣分泌物、精液、脊髄液、腹水(ascetic fluid)、唾液、痰、乳房滲出液およびそれらの組合せなどの生理流体を含み得る。一部の実施形態では、試料は、乾燥血液スポット(DBS)に由来する。一部の実施形態では、DBS試料は、新生児スクリーニングから得られたDBSである。
本教示は、27−ヒドロキシラーゼ(CYP27A1)欠乏のために蓄積するケトステロール胆汁酸前駆体に適用される。ケトステロール胆汁酸前駆体として、例えば、7α−コレステン−3−オン(7αC4)、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オン、および7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オンが挙げられる。
本教示はまた、CTXをスクリーニングおよび/または診断する方法に適用される。CTXの診断および/またはスクリーニングにとって特に有用な胆汁酸前駆体として、7α−コレステン−3−オン(7αC4)、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オン、および7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オンが挙げられる。
一部の実施形態では、1種または複数の胆汁酸前駆体を含む分析物をQAO試薬で誘導体化し、標識された分析物をイオン化し、質量分析によって前記の標識された分析物のシグネチャーイオンフラグメントを検出し、濃度を定量化する方法が提供される。一部の実施形態では、胆汁酸前駆体は、7αC4を含み、50ng/mL超の濃度は、CTXを示す。他の実施形態では、75ng/mL超、100ng/mL超、150ng/mL超、200ng/mL超、250ng/mL超、または300ng/mL超の7αC4の濃度は、CTXを示す。他の実施形態では、試料が、27−ヒドロキシラーゼ欠乏を示すかどうかを定義するために使用される胆汁酸前駆体の濃度は、7αC4を使用するCTX−スクリーニングのための図9に提供されるものなどの表を使用することによって決定され得る。
本教示はまた、Δ4−3−オキソステロイド−5Bレダクターゼ欠乏をスクリーニングおよび/または診断する方法に適用される。Δ4−3−オキソステロイド−5Bレダクターゼ欠乏の診断および/またはスクリーニングにとって特に有用な胆汁酸前駆体として、7α−コレステン−3−オンおよび7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オンが挙げられる。
本教示はまた、過敏性腸症候群(IBS)をスクリーニングおよび/または診断する方法に適用される。
本教示はまた、胆汁酸吸収不良をスクリーニングおよび/または診断する方法に適用される。胆汁酸吸収不良にとって特に有用な胆汁酸前駆体として7α−ヒドロキシ−4−コレステン(chlesten)−3−オンが挙げられる。
一部の実施形態では、単一のケトステロール胆汁酸前駆体が定量化される。一部の実施形態では、ケトステロール胆汁酸前駆体のうち2種以上が定量化される。一部の実施形態では、27−ヒドロキシラーゼ(CYP27A1)欠乏のために蓄積されるケトステロール胆汁酸前駆体のうち3種以上が、単一アッセイにおいてパネルとして定量化される。
さらに他の実施形態では、ケトステロール胆汁酸前駆体のうち4種以上が、1つのパネルで定量化される。一部の実施形態では、7α−コレステン−3−オン(7αC4)および7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オンのうち少なくとも1種が定量化される。一部の実施形態では、7α−コレステン−3−オン(7αC4)、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オン、および7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オンの各々が定量化される。一部の実施形態では、7α−コレステン−3−オン(7αC4)、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オン、7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オン、7α−ヒドロキシ−5β−コレスタン−3−オン、および7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コレスタン−3−オンの各々が分析される。一部の実施形態では、7α−コレステン−3−オン(7αC4)、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オン、7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オン、7α−ヒドロキシ−5β−コレスタン−3−オン、および7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コレスタン−3−オンの各々が定量化される。
試料は、種々の方法によって濃縮され得る。濃縮方法は、血液(新鮮または乾燥)、血漿、血清、尿または唾液などの試料の種類に応じて変わる。例示的濃縮方法として、タンパク質沈殿、液液抽出、固液抽出および限外濾過が挙げられる。他の濃縮方法または2種以上の濃縮方法の組合せが使用され得る。
標識試薬
したがって、特定の標識試薬および分析のためのシグネチャーイオンフラグメント選択を使用するケトステロール胆汁酸前駆体の質量分析のための方法が本明細書で提供される。
一部の実施形態では、生体試料中のケトステロール胆汁酸前駆体の相対定量化、絶対定量化または両方のための、一般式(I):
[式中、nは、2、3、4、5または6であり、Yは、構造:
(式中、各R4は、独立して、Hまたは分岐鎖もしくは直鎖であるC1〜C18アルキルであり、
mは、1から20の間の整数であり、
Xは、陰イオンである)
を有する]
を有するアミンオキシドまたはその塩もしくは水和物である標識試薬を含めた標識試薬および標識試薬のセットが提供される。
一部の実施形態では、nは、2〜4であり、他の実施形態では、nは3である。一部の実施形態では、Yは、−N(CH3)3 (+)である。一部の実施形態では、mは、1から12の間の整数または1から5の間の整数である。一部の実施形態では、各R4は、独立して、Hまたは分岐鎖もしくは直鎖であるC1〜C12アルキルであるか、あるいは各R4は、独立して、Hまたは分岐鎖もしくは直鎖であるC1〜C6アルキルである。一部の実施形態では、各R4は同一である。
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、塩である。一部の実施形態では、塩は、CF3COO−、CF3CF2COO−、CF3CF2CF2COO−またはCF3SO3COO−である。一部の実施形態では、塩は、ペルフルオロカルボン酸塩である。
一部の実施形態では、式Iの標識試薬は、以下:
またはその塩もしくは水和物である。一部の実施形態では、式(II)の化合物は塩である。一部の実施形態では、塩は、CF3COO−、CF3CF2COO−、CF3CF2CF2COO−またはCF3S03COO−である。一部の実施形態では、塩は、ペルフルオロカルボン酸塩である。
種々の態様では、本教示は、標識された分析物を提供し、これでは、分析物は、少なくとも1つのケトン基ならびに式(I)および/または(II)の標識試薬を含み得る。種々の態様では、本教示は、標識された分析物を提供し、これでは、分析物は、少なくとも1つのアルデヒド基および本明細書に記載されるQAO標識を含み得る。
種々の実施形態では、式(I)および/または(II)の標識試薬が、内部標準(IS)を標識するために使用される。このような同位体標識された内部標準は、多数のケトステロイドの同位体標識された内部標準として特に有用であり得、他のアルデヒド化合物は、市販されていない。さらに、入手可能である標準は、高価であることが多く、形態で制限される。
一部の実施形態では、ケトステロイド胆汁酸前駆体−QAO付加物のシグネチャーイオンフラグメントは、以下:
[式中、各
は、単結合または二重結合のいずれかであり、各
は、存在しないか、または1つもしくは複数の結合を示す]
を含む。分析物が、7α−コレステン−3−オン(7αC4)である場合には、シグネチャーイオンフラグメントは、一部の実施形態では、152.0の質量を有するフラグメントイオンを含み得る。分析物が、5α−コレスタン−3−オンである場合には、シグネチャーイオンフラグメントは、一部の実施形態では、443.0の質量を有するフラグメントイオンを含み得る。分析物が4−コレステン−3−オンである場合には、シグネチャーイオンフラグメント(signature ion fragment)は、一部の実施形態では、161.2の質量を有するフラグメントイオンを含み得る。
主なシグネチャーイオンフラグメントは、例えば、中性損失フラグメントまたは分析物の構造フラグメントおよび標識試薬を含む中性損失またはその一部であり得る。一部の実施形態では、1種よりも多くの主なシグネチャーイオンフラグメントがある。一部の実施形態では、2、3、4または5種の主なシグネチャーイオンフラグメントがある。
ケトステロール胆汁酸前駆体であるものなどの稀なケトステロールの同位体濃縮された内部標準(IS)は、市販されていないか、または作製することが極めて高価であるかのいずれかである。例えば、7αC4については安定な同位体標識された内部標準が入手可能であるが、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オンまたは7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オンのいずれかについては、標識されたISは市販されていない。
したがって、一部の実施形態では、「重い」(同位体濃縮された)QAO試薬は、これらのケトステロールの内部標準を提供し得る。一部の実施形態では、これらの内部標準は、2種以上のケトステロール胆汁酸前駆体が分析される予定である場合には特に有利である。したがって、標識試薬の同位体濃縮された類似体が使用され得、定量化のために内部標準が作製され得る。例えば、炭素(12C、13Cおよび14C)、窒素(14Nおよび15N)、酸素(16Oおよび18O)、硫黄(32S、33Sおよび34S)および/または水素(水素、重水素およびトリチウム)の重い原子同位体が、内部標準の調製において使用され得る。米国特許出願公開番号US2005/068446A1には、同位体濃縮された化合物の合成が開示されており;質量分析ワークフローおよび戦略は、米国特許出願公開番号US2008/0014642A1に開示されており、その両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
同位体濃縮された化合物は、例えば、
を含み得る。本方法は、ケトステロイドの定量的分析のためのMRMワークフローを使用することを含み得る。試薬は、ケト化合物の個々またはパネルの定量的分析のために同位体コード化(isotope−coded)され得る。ケトステロイドプロファイリングが関係する研究では、MS/MSフラグメンテーションは、アミノオキシ誘導体化生成物から主に中性損失シグネチャーイオンを生成するよう低衝突エネルギーで標的化され得る。MRM遷移は、Q1における誘導体化ステロイドの質量およびQ3における中性損失フラグメントの質量であり得る。本教示は、一部の実施形態では、誘導体化によってバックグラウンドノイズを大幅に低減するプロセスを提供し、感度の改善および特異性の改善をもたらすQ3フラグメントの標的化された選択をもたらす。
一部の実施形態では、7αC4などのステロイドの同位体標識された内部標準のセットが提供される。このセットは、本明細書において記載されるような第四級アミンオキシド(QAO)試薬で標識された既知濃度のケトステロイドを含む2種以上の付加物を含み得、ここで、2種以上の付加物の各々は、異なる同位体濃縮された類似体を有する。
一部の態様では、本教示は、質量に差のある標識のセットを含めた質量に差のあるタグを使用する試薬および方法を含み、ここで、セットの1種または複数の標識は、1種または複数の重原子同位体を含有する。質量に差のある標識のセットはまた、異なる全体的な質量および異なる一次レポーター基または質量平衡基を有する標識を調製することによって提供され得、質量に差のあるタグのセットのどのメンバーも同位体濃縮される必要はない。本試薬および方法は、質量に差のある標識および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を使用して、1種または複数の試料におけるケトステロールバイオマーカー分析物の分析を可能にする。本教示は、質量に差のあるタギング試薬およびマススペクトロメトリーを使用するこのような分析物の定性的および定量的分析のために使用され得る。質量に差のあるタグは、それだけには限らないが、非等圧同位体によってコード化された試薬を含む。本教示は、同位体濃縮された標準化合物の使用を伴うか、または伴わないケトステロールバイオマーカー化合物の絶対定量化のための試薬および方法をさらに含む。
一部の実施形態では、一般式(I)および/または(II)の質量に差のある標識のセットが提供される。種々の実施形態では、その非塩の形態および/または非水和物の形態の一般式(I)の等圧標識のセットが提供される。種々の実施形態では、標識の質量は、非塩の形態および/または非水和物の形態において約0.05AMU未満だけ異なる。提供される標識のセットは、一般式(I)または(II)の2種以上の化合物を含み得、ここで、標識のセット中の化合物のうちの1種または複数は、1種または複数の重原子同位体を含有する。種々の実施形態では、重原子同位体は、各々独立に、13C、15N、18O、33Sまたは34Sである。
式(I)または(II)の化合物は、それだけには限らないが、モノTFA塩、モノHCl塩、ビス−HCl塩またはビス−TFA塩またはそれらの水和物を含めた多種多様な塩および水和物の形態で提供され得る。式(I)の変種は、米国特許公開第2011/0003395号およびWO2005/068446に開示されており、その両方とも参照により具体的に組み込まれ、全般的に、iTRAQ(登録商標)試薬と呼ばれる。
種々の実施形態によれば、同位体は、平衡基または平衡部分、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、塩素、臭素などの同位体として使用され得る。例示的平衡基または部分はまた、例えば、2004年11月4日に公開された米国特許出願公開第US2004/0219685A1、2004年11月4日に公開されたUS2004/0219686A1、2004年11月4日に公開されたUS2004/0220412A1および2010年5月6日に公開されたUS2010/0112708A1に記載されたものを含み得、それらのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
種々の実施形態では、標識のセットの化合物の1種または複数は、2種以上の重原子、3種以上の重原子を用いて;および/または4種以上の重原子を用いて同位体濃縮される。種々の実施形態では、式(I)の標識のセットは、重原子同位体を組み込むことによって形成される。一部の実施形態では、少なくとも80パーセント同位体純度で、少なくとも93パーセントの同位体純度および/または少なくとも96パーセントの同位体純度で同位体は存在する。
質量平衡タグの代わりに、またはそれに加えて、等圧タグが使用され得る。同位体濃縮された等圧タグが使用される場合には、等圧標識のセットは、1種または複数の重原子同位体を含み得る。等圧標識のセットは、同一の、または具体的に定義された範囲の凝集体質量を有し得るが、異なる測定可能な質量の一次レポーターイオンまたは帯電分析物を有し得る。等圧試薬のセットは、マススペクトロスコピーを使用するケトステロールバイオマーカー分析物化合物の定性的および定量的分析の両方を可能にする。例えば、特定のケトステロイドまたはケトステロイドの群などの試料中の1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体を検出および定量化するために、同位体濃縮された等圧タグおよび親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)が使用され得る。
等圧標識のセットを含む実施形態では、リンカー基部分は、平衡基と呼ばれることもある。例えば、一部の実施形態では、4種の等圧標識のセットが、1種または複数の分析物のセットに加えられ、組み合わされて、組み合わされた試料を形成し、これが、MS/MS分析に付され、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体をフラグメンテーションし、異なる質量または帯電分析物の4種のレポーターイオンが得られる。標識は、レポーター基または質量平衡基またはその一部または質量平衡基単独またはその一部の重原子置換の適当な組合せによって等圧にされ得る。
以下は、本教示の種々の実施形態による第四級アミノオキシ質量に差のある試薬の例示的セットである:
以下は、本教示の種々の実施形態による第四級アミノオキシ等圧試薬の例示的セットである:
分析
本教示は、質量に差のある標識、等圧標識またはその両方および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を使用して、1種または複数の試料における1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体の分析するための試薬および方法を提供し得る。本教示は、質量に差のあるタギング試薬、等圧タギング試薬またはその両方およびマススペクトロスコピーを使用して、1種または複数の試料中の、ケトステロール胆汁酸前駆体などの1種または複数の分析物の相対濃度、絶対濃度またはその両方を決定する方法を提供し、試料中の複数の分析物、複数の試料中の1種または複数の分析物またはそれらの組合せの、相対濃度、絶対濃度またはその両方が、マルチプレックス様式で決定され得る方法を提供し得る。
本明細書に記載される種々の方法の一部が、図1のフローダイアグラムによって説明され得る。特に、血液、血清、または血漿などの生体マトリックスの一部であり得る試料は、アミノオキシ化学とそれに続いて、標識された分析物およびQAO標識された標準を混合することによって、本明細書において開示される1種または複数のQAO標識試薬を用いて選択され、誘導体化され得る。混合物は、例えば、HPLCなどによるLCによるクロマトグラフィー分離と、それに続く、MRMによる質量分析に付され得る。同位体濃縮された試薬が、内部標準として使用される場合には、誘導体化ステップ後に付加されることが好ましい。
方法はまた、誘導体化ステップに先立って、疎水性溶媒を使用する、液液抽出、固液抽出またはタンパク質沈殿を使用して分析物を抽出するステップを含み得る。あるいは、誘導体化ステップに先立って、分析物をクロマトグラフィー分離に付すステップ。
MRMにおいて測定されたシグネチャーフラグメントイオンが、標識試薬またはその一部が結合された構造フラグメントを含むよう注意深く選択され得る。例えば、標識試薬がトリメチルアミンを含む場合には、シグネチャーフラグメントイオンは、部分N(CH3)3ならびに分析物の骨格の少なくとも一部を失ったイオンを含み得る。一部の実施形態では、シグネチャーフラグメントイオンを形成するよう選択された衝突エネルギーは、単一の主なシグネチャーフラグメントイオンを生成するような低い衝突エネルギーである。
一部の実施形態では、衝突フラグメントエネルギーは、10〜130eVの範囲であるよう選択される。例えば、30または35eVが使用され得る。
一部の実施形態では、分析は、最小の試料調製後に行われる。例えば、試料調製は、乾燥血液スポットから出発して、30分未満または20分未満または10分未満である。一部の実施形態では、分析は、調製の間に実施されるGC分離ステップを伴わずに行われる。
いくつかの態様は、永久荷電型アミノキシ試薬(第四級アミノキシ)を用いるケトステロイドの誘導体化化学ならびに試薬および誘導体化された化合物の骨格の両方を含み得る標的化されたフラグメンテーションを使用することによってバックグラウンドノイズの低減または排除を提供する。容易にイオン化される/イオン化可能な分子を用いる誘導体化は、対象の分析物の感度および検出を増大し得る、例えば、ESI/MS/MSにおいてより良好なイオン化効率をもたらし得る。フラグメントイオン(Q3シグネチャーイオン)が、誘導体化試薬(または試薬の一部)が結合された構造フラグメントを含むよう注意深く選択される場合には、感度および選択性の両方が増強され得る。同一Q1/Q3遷移を有する化合物が検出され、BKGノイズ干渉を作り出す機会は極めて低い。
容易にイオン化可能な標識試薬の少なくとも一部を含むシグネチャーイオンフラグメントの賢明な選択をもって、質量分析は、大幅に低いバックグラウンドノイズおよび改善された検出の限界をもって行われ、標識試薬の付加を伴わずに実施されるケトステロール胆汁酸前駆体のMRM分析に対して比較され得る。誘導体化を伴わない検出と比較される増強因子も見られ得る。例えば、一部の実施形態では、非誘導体化試料の検出の限界が、カラムでおよそ20から100pg/mLの間である場合には、誘導体化試料の検出の限界は、カラムで約0.08pg/mL未満である。したがって、QAOを用いる誘導体化による増強は、少なくとも200倍または少なくとも400倍または1000倍を超える、または2000倍を超える。
本明細書において提供される方法の直線性およびダイナミックレンジは、特に良好であり得る。例えば、一部の実施形態では、直線性は、DSCで0.990よりも高い。一部の実施形態では、直線性は、DSCで0.995より高い。
一部の実施形態では、シグネチャーイオンフラグメントは、分析物骨格の一部を含有し、標識試薬の一部も含有する中性損失フラグメントである。一部の実施形態では、シグネチャーイオンフラグメントは、442.6、93.3、164.2、152.1、440.8、456.8、152.3、および/または179.9のm/zを有する1種または複数のフラグメントである。これらの実施形態では、またその他の実施形態では、シグネチャーイオンフラグメントは、13Cが濃縮されたフラグメントなど同位体濃縮され得る。
定量化は、1種または複数の分析物および標準に由来するシグナルの相対的または絶対的測定によって可能にされ得る。正電荷はマススペクトロメトリーによって検出されるフラグメントイオンとして機能する分析物に移され得る
本明細書に記載される他の種々の方法は、図2A、図2Bおよび図2Cのフローダイアグラムによって説明され得る。特に、7αC4としてこれらの図において例示される、および血液、血清、または血漿などの生体マトリックスの一部であり得る、ケトステロール胆汁酸前駆体を含有する試料が選択される。同位体濃縮された7αC4などの内部7αC4標準は、任意選択で、試料に付加される。次いで、7αC4は、任意選択で、例えば、液/液抽出または固/液抽出によって抽出され得る。試料および任意選択で内部標準は、アミノオキシ化学によってQAO標識試薬で誘導体化される。図2Aに記載される方法では、付加物および同位体濃縮されている内部7αC4標準が、誘導体化される。次いで、試料を混合し、インキュベートすることを可能にすることによって、試料はQAO試薬で誘導体化される。図2Bに記載される方法では、付加物は、同位体濃縮されている7αC4標準と組み合わされた標識された付加物である。試料は、まず、試料を混合し、インキュベートすることを可能にすることによって、QAO試薬で誘導体化される。次いで、同位体濃縮されている標準7αC4前駆体−QAO付加物と組み合わされる。
図2Aおよび図2Bに記載された方法について、混合物は、例えば、HPLCなどによるLCによるクロマトグラフィー分離と、それに続く、MRMによる質量分析に付され、これでは、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体のMRM遷移が分析される。定量化は、1種または複数の分析物に由来するシグナル(単数または複数)および1種または複数の標準のものの相対的または絶対的測定によって可能にされる。図2Aでは、7αC4濃度は、濃度曲線に基づいて決定される。正電荷は、マススペクトロメトリーによって検出されるフラグメントイオンとして機能する分析物に移される。
定量化は、内因性を含まないマトリックスに増大した量の既知分析物濃縮物をスパイクして、較正曲線を作り出すことによって可能にされ得る。未知濃度の試料は、濃度曲線の直線回帰から算出される。濃度曲線の直線プロットは、較正物および内部標準の濃度比対較正物およびISの面積比を含む。あるいは、相対定量化は、既知量のスパイクされた内部標準を使用する1点較正によって可能にされ得る。等圧異性体である試料については、これらの化合物が同一の質量パターンを有し得るので、その質量分析に先立って試料を分離するためにクロマトグラフィー分離が使用され得る。生体試料中の等圧ケトステロイドは、同様のQ1/Q3 MRM遷移を有し得るので、等圧ケトステロイドは、干渉として現れるために分析物と同一フラグメンテーションパターンを共有し得る。このような場合には、等圧ケトステロイドは、分析物からクロマトグラフィーによって分離されることが好ましい。
標識試薬の付加される利点は、一部の実施形態では、MSMSフラグメンテーション時に、誘導体化された分析物が、誘導体化された分析物上に電荷を有するフラグメントイオン(Q3シグネチャーイオン)を生成し、これが、MS3分析に従うようにするということである。
誘導体化された分析物は、質量分光分析の感度および選択性の両方を増強し得る。例えば、ここで特許請求される方法は、非誘導体化試料のものの200〜2000倍である感度で、生体マトリックスに由来する3ケトステロール胆汁酸前駆体を検出するために使用され得る。一部の実施形態では、MS/MS感度は、化合物に応じて、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍またはさらに2000倍またはそれ以上増強される。例えば、一部の実施形態では、非誘導体化試料の検出の限界が、カラムでおよそ20から100pg/mLの間である場合には、誘導体化試料の検出の限界は、カラムで約0.08pg/mL未満である。一部の実施形態では、誘導体化後の検出の限界は、<1pg/mLほど低いものであり得る。(図7を参照のこと)。
種々の実施形態では、標準試料に標識を添加して、試料中の1種または複数の標準化合物を用いて標識するステップは、アミノオキシ基が、分析物標準のケトンまたはアルデヒド基とオキシムを形成する1ステップ反応を含む。
種々の態様では、本教示は、ケト分析物を標識して、標識された分析物化合物を形成する方法を提供する。種々の実施形態では、方法は、一般式(I)または(II)の標識化合物を、ケトン含有化合物を反応させることを含む。具体的には、化合物7α−コレステン−3−オン(7αC4)、5α−コレスタン−3−オン、4−コレステン−3−オン、および7α,l2α−ジヒドロキシ−4−コレステン−3−オンは、式Iの標識試薬で誘導体化され、室温で、60分以上、MeOH中、5%酢酸中で特異的に標識された。
以下の実施例、図および表を参照して、標識試薬を用いてケトステロール胆汁酸前駆体を標識することの一例が示されている。これらの反応では、アミノオキシ部分は、ステロイド上のケトンまたはアルデヒドと反応して、標識された化合物上にオキシム基を形成して、標識された分析物をもたらす。
本明細書において記載されるように、各試料に異なる標識を付加すること、異なって標識された試料を組み合わせることおよびPDITMを使用して、試料中の1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体化合物の濃度を決定することによって、2種以上の試料において1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体の濃度を決定する方法が提供される。試料の1種は、対照試料、参照試料、既知濃度の化合物を有する試料などといった標準試料を含み得る。したがって、方法は、複数の試料に由来する複数の化合物の分析を提供し得る。
種々の実施形態では、1種または複数の標識されたケトステロール胆汁酸前駆体の濃度を決定するステップは、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体のうちの1種または複数の絶対濃度を決定すること、標識されたケトンまたは分析物化合物のうちの1種または複数の相対濃度を決定することまたは両方の組合せを含む。
特定の方法は、対象の各試料に、タグのセットに由来する異なるタグを付加して、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体のパネルを形成することによって、2種以上の対象の試料において1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体を標識するステップを含む。タグのセットに由来する各タグは、本明細書に記載される標識試薬またはその一部を含み得る。標識されたケトステロール胆汁酸前駆体のうちの1種または複数は、各分析物が得られた、または含有されている試料に対して、異なって標識され得る。ケトステロール胆汁酸前駆体に標識を付加するステップは、標識の第1の部分が式(I)または(II)からなる1ステップ反応を含み得る。
試料の各々の一部が組み合わされて、透過イオンのうちの1種または複数のイオンシグナルを親−娘イオン遷移モニタリングおよび測定することによって分析される、組み合わされた試料およびその一部が生じ得る。透過親イオンm/z範囲は、標識された分析物化合物のm/z値を含み得、透過娘イオンm/z範囲は、標識された分析物化合物のタグに由来するレポーターイオンのm/z値を含むか、またはイオン化された分析物自体である。次いで、標識された分析物化合物のうちの1種または複数の濃度が、少なくとも、対応する伝達物質レポーターまたは分析物イオンの測定されたイオンシグナル対標準化合物の1種または複数の測定されたイオンシグナル比較に基づいて決定され得る。イオンシグナル(単数または複数)は、例えば、イオンピークの強度(平均値、平均、最大など)、イオンピークの面積またはその組合せに基づいたものであり得る。対象の2種以上の試料のうちの1種または複数が、1種または複数の標準化合物を含有する標準試料であり得る。
一部の実施形態では、ケトステロール胆汁酸前駆体の濃度は、対応する標識されたケトステロール胆汁酸前駆体−レポーターイオン遷移シグナルの測定されたイオンシグナルを、
(i)標準化合物−レポーターまたは分析物イオン遷移の濃度曲線;または
(ii)標識されたケトステロール胆汁酸前駆体と組み合わされた試料中の標準化合物の標準化合物−レポーターイオン遷移シグナル
のうちの1種または複数に対して比較することによって決定される。
一部の実施形態では、「親−娘イオン遷移モニタリング」または「PDITM」は、分析の方法およびワークフロー状態として使用される。PDITMとは、第1の質量分離器(「MS」またはマススペクトロメトリーの第1次元と呼ばれることが多い)の透過された質量対電荷(m/z)範囲が、分子イオン(「親イオン」または「前駆体イオン」と呼ばれることが多い)を、イオンフラグメンター(例えば、衝突セル、光解離領域など)に透過して、フラグメントイオン(「娘イオン」と呼ばれることが多い)を生じるよう具体的に選択され、第2の質量分離器(「MS/MS」またはマススペクトロメトリーの第2次元と呼ばれることが多い)の透過されたm/z範囲が、1種または複数の娘イオンを、娘イオンシグナルを測定する検出器に透過するよう選択される技術を指す。この技術は、予測される娘イオン質量に検出器を「パーキング」することによって、スペクトラムにおける娘イオンの検出に焦点があてられる場合に独特の利点を提供する。モニタリングされる親イオンおよび娘イオン質量の組合せは、モニタリングされる「親−娘イオン遷移」と呼ばれることもある。モニタリングされる所与の親イオン−娘イオン組合せのための検出器での娘イオンシグナルは、「親−娘イオン遷移シグナル」と呼ばれ得る。
例えば、親−娘イオン遷移モニタリングの一実施形態は、多重反応モニタリング(MRM)(選択的反応モニタリングとも呼ばれる)である。MRMの種々の実施形態では、所与の親−娘イオン遷移のモニタリングは、第1の質量分離器(例えば、対象の親イオンm/zにパーキングされた第1の四重極子)を使用して、対象の親イオンを透過させることおよび第2の質量分離器(例えば、対象の娘イオンm/zにパーキングされた第2の四重極子)を使用して、1種または複数の対象の娘イオンを透過させることを含む。種々の実施形態では、PDITMは、第1の質量分離器(例えば、対象の親イオンm/zでパーキングされた四重極子)を使用して、親イオンを透過させることおよび第2の質量分離器を、1種または複数の対象の娘イオンのm/z値を含むm/z範囲にわたってスキャンすることによって実施され得る。
例えば、タンデム質量分析(MS/MS)機器または、より一般には、多次元的質量分析機器が、PDITM、例えば、MRMを実施するのに使用され得る。適した質量分析器システムの例は、それだけには限らないが、トリプル四重極子、四重極子−線形イオントラップ、四重極子TOFおよびTOF−TOFのうちの1種または複数を含むものを含む。
したがって、PDITMは、第1の質量分離器およびイオンフラグメンターおよび第2の質量分離器を含む質量分析器システムで実施され得る。PDITMスキャンの透過親イオンm/z範囲(第1の質量分離器によって選択される)は、標識された分析物化合物の1種または複数のm/z値を含むよう選択され、PDITMスキャンの透過娘イオンm/z範囲(第2の質量分離器によって選択される)は、透過された標識された分析物化合物のタグに対応するレポーターイオンのうちの1種または複数のm/z値を含むよう選択される。
一部の実施形態では、標識された分析物の親娘イオン遷移モニタリング(PDITM)は、トリプル四重極子MSプラットフォームを使用して実施される。PDITMおよびその使用についてのより詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開番号US2006/0183238A1に記載されている。一部の実施形態では、アミノオキシMSタギング試薬は、MSMSの際に中性損失を起こし、帯電分析物種であるレポーターイオンを残す。一部の実施形態では、アミノオキシMSタギング試薬は、MSMSの間に、タグフラグメントであるレポーターイオンを形成する。
したがって、種々の実施形態では、本教示の標識を使用して1種または複数の試料において1種または複数ケトステロール胆汁酸前駆体を分析するために、(a)1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体化合物各々を、式(II)の標識のセットに由来する異なる標識を用いて標識して、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体化合物、各々質量平衡またはレポーターイオン部分を有する標識された前駆体化合物を提供するステップと、(b)標識された分析物化合物の各々の少なくとも一部を組み合わせて、組み合わされた試料を得るステップと、(c)組み合わされた試料の少なくとも一部を、親−娘イオン遷移モニタリングに付すステップと、(d)透過された分析物またはレポーターイオンの1種または複数のイオンシグナルを測定するステップと、(e)少なくとも、対応する前駆体またはレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの、標準化合物の1種または複数の測定されたイオンシグナルに対する比較に基づいて、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体のうちの1種または複数の濃度を決定するステップとを含む。したがって、種々の実施形態では、1種または複数の試料中の複数のケトステロール胆汁酸前駆体化合物の濃度は、例えば、2種以上の標識された分析物化合物を組み合わせて、組み合わされた試料を得ることおよび組み合わされた試料をPDITMに付すことおよび標識された前駆体化合物のうち2種以上の分析物またはレポーターイオンをモニタリングすることによって、マルチプレックス様式で決定され得る。
組み合わされた試料の少なくとも一部を、PDITMに付すステップは、組み合わされた試料の一部を、クロマトグラフィーカラム(例えば、LCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムまたはそれらの組合せ)にロードすること、クロマトグラフィーカラムからの溶出物の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングに付すことおよび透過レポーターイオンのうちの1種または複数のイオンシグナルを測定することを含む。
標識されたケトステロール胆汁酸前駆体化合物のうちの1種または複数の濃度を決定するステップにおいて使用される標準化合物の1種または複数の測定されたイオンシグナルは、多数の方法で提供され得る。種々の実施形態では、1種または複数の同位体濃縮されていない標準化合物は、タグで標識され、1種または複数の標識された標準化合物のうちの1種または複数の少なくとも一部が、標識された前駆体化合物の各々の少なくとも一部と組み合わされて、組み合わされた試料が得られ、続いて、この組み合わされた試料の少なくとも一部をPDITMに付し、透過レポーターイオンのうちの1種または複数のイオンシグナルを測定する。
タグのセットに由来するタグが、1種または複数の標準試料に付加されて、1種または複数の標識された標準試料を提供し、各標準試料は、タグによって標識されている、1種または複数の同位体濃縮されていない標準化合物を含有し、1種または複数の標準試料に付加されるタグは、対象の試料に付加されるタグとは異なっている。1種または複数の標識された標準試料のうちの1種または複数の少なくとも一部は、対象の試料の各々の少なくとも一部と組み合わされて、組み合わされた試料が得られ、続いて、この組み合わされた試料の少なくとも一部をPDITMに付し、透過レポーターイオンのうちの1種または複数のイオンシグナルを測定する。
次いで、組み合わされた試料中の1種または複数の標識された標準化合物のうちの1種または複数に対応する、レポーターまたは分析物イオンのうちの1種または複数の測定されたイオンシグナルは、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体化合物のうちの1種または複数の濃度の決定において使用され得、標準化合物のいくつかの値をプロットすることによって濃度曲線を作製するために使用され得る。したがって、一部の実施形態では、標識された分析物化合物の濃度を決定することは、少なくとも、対応するレポーターまたは分析物の測定されたイオンシグナルの、組み合わされた試料中の1種または複数の標識された標準化合物のうちの1種または複数に対応する、1種または複数のレポーターまたは分析物イオンの測定されたイオンシグナルに対する比較に基づいている。この組み合わされた試料の少なくとも一部を、PDITMに付すステップは、例えば、質量分析器システムへの直接導入、まず、この組み合わされた試料の少なくとも一部を、クロマトグラフィーカラムにロードすること、続いて、クロマトグラフィーカラムからの溶出物の少なくとも一部をPDITMに付すことおよび透過レポーターイオンのうちの1種または複数のイオンシグナルを測定することを含み得る。
本明細書に開示されるように、標準化合物でPDITMは、第1の質量分離器およびイオンフラグメンターおよび第2の質量分離器を含む質量分析器システムで実施され得る。PDITMスキャンの透過親イオンm/z範囲(第1の質量分離器によって選択される)は、標識された標準化合物のうちの1種または複数のm/z値を含むよう選択され得、PDITMスキャンの透過娘イオンm/z範囲(第2の質量分離器によって選択される)は、透過された標準化合物に対応するレポーターまたは分析物イオンのうちの1種または複数のm/z値を含むよう選択され得る。
標識された分析物化合物のうちの1種または複数の濃度を決定することは、(i)対応するレポーターまたは分析物イオンの測定されたイオンシグナルの、1種または複数の標準化合物の1種または複数の濃度曲線に対応する1種またはレポーターまたは分析物イオンの測定されたイオンシグナルに対する比較および(ii)対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体と組み合わされた1種または複数の標識された標準化合物に対応する1種または複数のレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに対する比較の両方に基づき得る。第1の濃度を有し、タグのセットに由来するタグで標識された同位体濃縮されていない標準化合物が提供され得、標識された試料の各々の少なくとも一部と組み合わされて、組み合わされた試料が得られ、この組み合わされた試料は、次いで、本明細書に記載されるようにさらに分析され得る。
本教示の種々の実施形態では、標準化合物の濃度曲線は、(a)第1の濃度を有する、同位体濃縮された、または同位体濃縮されていない標準ケトステロール胆汁酸前駆体を提供するステップ;(b)標準化合物を、標識のセットに由来する標識で標識するステップであって、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体標準化合物がレポーターイオン部分を有するこステップ;(c)標識された標準化合物の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードするステップ;(d)クロマトグラフィーカラムからの溶出物の少なくとも一部を、親−娘イオン遷移モニタリングに付すステップ;(e)透過された分析物またはレポーターイオンのイオンシグナルを測定するステップ;(f)1種または複数の異なる標準化合物濃度についてステップ(a)〜(e)を反復するステップ;および(g)少なくとも、1つまたは複数の標準化合物濃度での透過された分析物またはレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに基づいて、標準化合物の濃度曲線を作成するステップによって作成され得る。
種々の実施形態では、本開示は、1種または複数の試料において1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体の濃度を決定する方法を提供する。本方法は、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体の各々を、式(I)のタグのセットに由来する異なるタグで標識するステップを含み、ここで、Y基は、第四級窒素であり得、レポーターイオン部分を含む。本方法はまた、標識された前駆体化合物の各々の少なくとも一部を組み合わせて、組み合わせられた試料を得るステップおよび組み合わされた試料の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングに付すステップ(ここで、透過親イオンm/z範囲は、標識された分析物化合物のm/z値を含み、透過娘イオンm/z範囲は、標識された分析物化合物のタグに対応するレポーターイオンのm/z値を含む)および透過レポーターイオンのうちの1種または複数のイオンシグナルを測定するステップ;次いで、少なくとも、対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの、標準化合物の1種または複数の測定されたイオンシグナルに対する比較に基づいて、標識された分析物化合物のうちの1種または複数の濃度を決定するステップも含む。イオンシグナル(単数または複数)は、例えば、イオンピークの強度(平均値、平均、最大など)、イオンピークの面積またはその組合せに基づいたものであり得る。
PDITMは、第1の質量分離器およびイオンフラグメンターおよび第2の質量分離器を含む質量分析器システムを含めた、当技術分野で公知の任意の適した質量分析器で実施され得る。PDITMスキャンの透過親イオンm/z範囲(第1の質量分離器によって選択される)は、標識された分析物化合物のうちの1種または複数のm/z値を含むよう選択され、PDITMスキャンの透過娘イオンm/z範囲(第2の質量分離器によって選択される)は、透過された標識された分析物化合物のタグに対応するレポーターイオンのうちの1種または複数のm/z値を含むよう選択される。
一部の実施形態では、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体試料は、同一実験測定内で、(i)異なる試料(例えば、対照、処理)に由来する複数のケトステロール胆汁酸前駆体を含有する化合物が、比較および/または定量化され得る;(ii)同一試料に由来する同一ケトステロール胆汁酸前駆体化合物で複数の濃度測定値が決定され得る;および(iii)ベースライン試料に対して臨床試料の異なる単離物が評価され得るよう、質量に差のあるタグのセットから選択されるタグのうちの1種または複数で標識される。
組み合わされた試料の少なくとも一部を、PDITMに付すステップは、例えば、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)イオン供給源を使用して適した溶液中の組み合わされた試料を導入することによって、質量分析器システムに組み合わされた試料を直接導入するステップを含む。
組み合わされた試料中の1種または複数の標識された標準化合物のうちの1種または複数に対応するレポーターのうちの1種または複数の測定されたイオンシグナルは、標識された分析物化合物のうちの1種または複数の濃度を決定する。標識された分析物化合物の濃度を決定することは、少なくとも、対応するフラグメントイオンの測定されたイオンシグナルの、組み合わされた試料中の1種または複数の標識された標準化合物のうちの1種または複数に対応する1種または複数のフラグメントの測定されたイオンシグナルに対する比較に基づいている。この組み合された試料の少なくとも一部を、PDITMに付すステップは、例えば、質量分析器システムへの直接導入;まず、この組み合わされた試料の少なくとも一部を、クロマトグラフィーカラムにロードすること、続いて、クロマトグラフィーカラムからの溶出物の少なくとも一部をPDITMに付すことおよび透過レポーターまたは分析物イオンのうちの1種または複数またはその組合せのイオンシグナルを測定することを含み得る。
一部の実施形態では、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体化合物のうちの1種または複数の濃度を決定することは、対応する分析物またはレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの、1種または複数の標準化合物の1種または複数の濃度曲線に対応する1種または複数のレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに対する比較を含む。第1の濃度を有し、タグのセットに由来するタグで標識された同位体濃縮されていない標準化合物が提供される。標識された標準化合物の一部が、親−娘イオン遷移モニタリングに付され(ここで、透過親イオンm/z範囲は、標識された標準化合物のm/z値を含み、透過娘イオンm/z範囲は、標識された標準化合物のタグに対応するレポーターまたは分析物イオンのm/z値を含む)、レポーターまたは分析物イオンのイオンシグナルが測定される。標準化合物の濃度曲線を作成するために、標識するステップおよびPDITMのステップおよび透過されたレポーターまたは分析物イオンのイオンシグナルを測定するステップは、第1の濃度とは異なる少なくとももう1種の標準化合物濃度について反復される。
試料の誘導体化は、QAO試薬が、アミノオキシMSタギング部分ならびに一般式(I)で示される標識部分を含む1ステップ反応である場合も、付加物が、オキソ含有試薬およびケトステロール胆汁酸前駆体の反応と、それに続く、アミノオキシMSタグとの組合せによって形成されるマルチステップ反応である場合もある。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第61/588,902号に記載されている。一部の実施形態では、多重化能を提供する2ステップ標識反応が提供され得る。例えば、一部の実施形態では、異なるケトステロール胆汁酸前駆体が、異なるQAO試薬で標識され得る。他の実施形態では、異なるケトステロール胆汁酸前駆体は、単一QAO試薬で標識され得、得られた付加物は、異なるアミノキシタグと反応され得る。
本方法は、既知ケトステロール胆汁酸前駆体を含む標準を提供すること、標準の既知ケトステロール胆汁酸前駆体をQAO試薬で処理して、標準付加物を形成することをさらに含み得る。種々の実施形態では、標準は、本教示に従う1ステップまたは2ステップ標識反応によってQAO試薬で処理されて、標準付加物を形成し得る。次いで、標準付加物は、ケトステロール胆汁酸前駆体をQAO試薬で標識して、混合物を形成することによって形成された付加物と混合され得る。次いで、混合物は、マススペクトロメトリーを使用して、例えば、LC/MSMS分光法を使用して分析され得る。一部の実施形態では、ケトステロール胆汁酸前駆体の相対濃度が得られ得る。他の実施形態では、既知濃度の標準を使用してケトステロール胆汁酸前駆体の絶対定量化が得られ得る。
種々の実施形態によれば、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体の相対定量化のための方法は、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体を標識し、それに続いて、マススペクトロメトリーを使用して分析することを含み得る。一部の実施形態によれば、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体および/またはその代謝産物は定量化され得る。一部の実施形態によれば、アミノキシタギング剤は、等圧タグのセットを含み得る。一部の実施形態によれば、第1のステップでは、標準中の少なくとも1種のケトステロール胆汁酸前駆体がQAO試薬で標識されて、標準付加物を形成し得る。第2のステップでは、標準付加物は、等圧タグのセットに由来する第1の等圧タグでタグを付けられ得る。試験試料は、QAO試薬と反応され、試験試料中の、存在すれば、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体を標識し得る。試験試料中の標識されたケトステロール胆汁酸前駆体は、次いで、第1の等圧タグとは異なっている、同一セットの等圧タグに由来する第2の等圧タグでタグを付けられ得る。次いで、標識された標準および標識された試験試料は組み合わされ得、得られた混合物は、逆相カラム上での液体クロマトグラフィー(LC)分離に付され得る。標識されたケトステロール胆汁酸前駆体は、個別の保持時間を有し得、別個の時間にカラムから溶出し得る。溶出ピークは、標識された分析物を含有するピークおよび標識された標準を含有するピークを含み得る。カラムからの溶出物は、その後、マススペクトロメトリーを使用して分析され得る。
ケトステロール胆汁酸前駆体の絶対定量化は、標準が既知濃度のケトステロール胆汁酸前駆体を有する場合には、相対的定量化について上記で記載されたような同一の様式で実施され得るということは理解されなくてはならない。また、ケトステロール胆汁酸前駆体および/またはケトステロール胆汁酸前駆体の代謝産物が上記で記載される場合には、任意のケトステロール胆汁酸前駆体が使用され得るということが理解されなければならない。
種々の実施形態によれば、複数の異なるケトステロール胆汁酸前駆体を含む試料が、異なるQAO試薬で処理されて、2種以上のケトステロール胆汁酸前駆体の各々を、前記試薬のうち異なる1種で標識し得る。次いで、標識された試料は、マススペクトロメトリー、例えば、LC/MSMSを使用して分析され、標識されたケトステロール胆汁酸前駆体を定量化し得る。一部の実施形態では、試料のこのような分析は、分光器の単回試行で実施され得る。上記で論じられたように、一部の実施形態では、ケトステロール胆汁酸前駆体は、ステロイドまたはステロイド様分析物であり得る。
種々の実施形態によれば、1種または複数の化合物を含有する試料は、分析に先立って種々の方法によって濃縮され得る。濃縮方法は、血液(新鮮または乾燥)、血漿、血清などといった試料の種類に応じて変わり得る。例示的濃縮方法として、制限するものではないが、タンパク質沈殿、液液抽出、固液抽出および限外濾過が挙げられる。他の濃縮方法または2種以上の濃縮方法の組合せが使用され得る。
一部の実施形態では、ケトステロール胆汁酸前駆体の分析は、例えば、質量分析計における高エネルギー衝突によって、レポーターイオンを作製することおよび定量化のためにレポーターイオンの強度またはピーク面積を利用することを含み得る。例として、上記で示されたQAO試薬は、高エネルギー衝突(MSMS)の際に中性損失を起こし、レポーターイオンとして帯電分析物種を残し得、次いで、レポーターイオンはMS3分析に付され得る。一部の実施形態では、QAO試薬は、高エネルギー衝突の際にタグフラグメントを作製し得、次いで、タグフラグメントは、MS3分析に付され得る。
種々の実施形態によれば、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体および/または本教示にしたがって形成されたその付加物を標識するのに、複数のマススペクトロメトリー(MS)タギング剤が使用され得る。一部の実施形態によれば、アミノキシタギング剤は、良好にフラグメンテーションして、強力なレポーターイオンを提供し得る。一部の実施形態によれば、アミノキシタギング剤は、 マススペクトロメトリーのために特に設計されているタギング剤を含み得、一部の実施形態によれば、アミノキシタギング剤は、多重反応モニタリング(MRM)アッセイのために特に設計されている。一部の実施形態では、アミノキシタギング剤は、ケトステロール胆汁酸前駆体を標識することによって生じた付加物にタグを付けるために使用され得る。標準付加物がケトステロール胆汁酸前駆体の定量化のために使用される一部の実施形態では、標準付加物にタグを付けるためにアミノキシタギング剤が使用され得る。種々の実施形態では、標準付加物は、ケトステロール胆汁酸前駆体の相対定量化のために使用され得る。標準付加物の濃度が既知である一部の実施形態では、標準付加物は、ケトステロール胆汁酸前駆体の絶対定量化のために使用され得る。一部の実施形態では、種々のアミノキシMSタギング剤は、種々の分析物を標識するために使用され得る。例えば、アミノキシMSタギング剤は、異なる等圧タグまたは異なる質量に差のあるタグであり得る。例として、標準付加物にタグを付けるために使用されるアミノキシMSタギング剤は、等圧タグのセットに由来する第1の等圧タグを含み得、一方で、試料に由来する付加物にタグを付けるために使用されるアミノキシMSタギング剤は、第1の等圧タグとは異なっている、等圧タグの同一セットに由来する第2の等圧タグを含み得る。
等圧タグによって、多重化が可能となり、ケトステロール胆汁酸前駆体を、ハイスループットな、試料当たり、より低コストの分析を用いて多重化分析する方法を提供する。ケトステロール胆汁酸前駆体のすべてにおいて、1つの共通の官能基があるので、種々の実施形態では、各分析物についてただ1つだけのタグが必要である。一部の実施形態では、PDITMを使用することで、特異性が増大し、エラーのリスクが低減する。試薬設計によって、FlashQuantTM適用にとって良好なツールとなり、分析物の同一性の確認において役立つMS3能を可能にする。
種々の実施形態によれば、あるセットの等圧試薬に由来する第1の等圧タグは、既知ケトステロール胆汁酸前駆体を例えば、既知濃度で含み得る標準と接触するよう作製され得る。接触は、第1の等圧タグおよび標準間の反応に有利に働く条件下で行われ得る。第1の等圧タグと同一セットの等圧試薬に由来する第2の等圧タグは、未知濃度のケトステロール胆汁酸前駆体を含む試料と接触するよう作製され得る。以下にさらに記載されるように、標準および試料のタグが付けられた分析物は、一緒に混合され、分析され、試料中の分析物の濃度を決定できる。分析は、混合物を分けて、別個の分析物を形成することおよび別個の分析物を分析することを含み得る。使用され得る分離法は、ガスクロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー法、他のクロマトグラフィー法、電気泳動法、電気浸透法、質量に差のある分離法などを含む。例示的実施形態では、混合物中の種々の分析物を分離し、したがって、別個の分析物を形成するために、液体クロマトグラフィーが使用される。
一部の実施形態では、クロマトグラフィー分離は、逆相カラムで実施され得、カラムから溶出するピークがその後の分析に付され得る。一部の実施形態では、その後の分析は、マススペクトロメトリー、より詳しくは、親娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を含み得る。以下により詳細に記載されるように、PDITMから得られた結果を比較することによって、試料中のケトステロール胆汁酸前駆体の濃度が決定され得る。PDITMおよびその使用についてのより詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開US2006/0183238A1に見出すことができる。
一部の実施形態によれば、本明細書において上記に記載される質量に差のある薬剤の対など、等圧タギング試薬の代わりに質量に差のあるタギング剤が使用され得る。種々の実施形態によれば、アミノキシMSタギング剤は、マルチプレックスアッセイにおける相対および絶対定量化のために使用され得る。一部の実施形態によれば、アミノキシMSタギング剤は、二重、三重、四重および他の多重アッセイのために使用され得る。
一部の実施形態では、QAO試薬は、オキソ部分の等モル濃度で試料と組み合わされる。一部の実施形態では、過剰の(例えば、約10%、約20%、約2倍過剰または約4倍過剰)のQAO試薬が付加される。一部の実施形態では、等モル濃度未満のQAOが使用され、例えば、QAO濃度は、オキソ部分のモル濃度の約25%、約50%または約75%であり得る。一部の実施形態では、QAO試薬は、試料溶液中、1μg/mL〜100mg/mLの間または100μg/mL〜10mg/mLの間の濃度で試料と組み合わされる。
本教示の種々の実施形態に従って使用され得る種々の液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリー方法、システムおよびソフトウェアとして、2009年5月31日に出願された米国仮特許出願番号第61/182,748号に、また2006年8月17日に公開された米国特許出願番号第US2006/0183238A1号に記載されるものが挙げられる。これらの参考文献は両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
本教示のさらに他の実施形態によれば、上記で論じられるものなどのQAO試薬を含むキットが提供される。他の実施形態では、QAO試薬および1種または複数のアミノキシMSタギング剤を含むキットが提供される。アミノキシMSタギング剤は、上記のアミノキシMSタギング剤の第1および/または第2の分類またはセットに由来する化合物を含み得る。一部の実施形態では、キットは、既知ケトステロール胆汁酸前駆体を含む標準を含み得る。
本教示の種々の実施形態によれば、QAO試薬およびアミノキシMSタギング剤のうちの1種または複数を含み得るキットが提供される。一部の実施形態では、キットは、既知濃度のケトンを含むステロイド分析物を含む標準を含み得る。
一部の実施形態では、キットは、既知濃度の既知ケトステロール胆汁酸前駆体を含む少なくとも1種の標準を含み得る。一部の実施形態によれば、アミノキシMSタギング剤は、等圧タグのセットに由来する等圧タグであり得、一部の実施形態では、キットは、等圧タグのセットに由来する複数の異なる等圧タグを含み得る。一部の実施形態によれば、アミノキシMSタギング剤は、質量に差のあるタグのセットに由来する質量に差のあるタグであり得、一部の実施形態では、キットは、質量に差のあるタグのセットに由来する複数の異なる質量に差のあるタグを含み得る。一部の実施形態によれば、キットは、QAO試薬、アミノキシMSタギング剤、既知ケトステロール胆汁酸前駆体および/または既知濃度の既知ケトステロール胆汁酸前駆体を含む標準を含み得、標識のための説明書をさらに含み得る。
一部の実施形態では、例えば、式(I)または(II)の、1種または複数の永久荷電型アミノオキシ化合物を含む、本明細書に記載された1種または複数のアミノオキシ試薬を含むキットが提供され得る。
一部の実施形態では、方法は、ケトステロイドの定量的分析のためのMRMワークフローを使用することを含み得る。試薬は、ケト化合物の個々またはそのパネルの定量的分析のために同位体コード化され得る。MS/MSを用いるプロファイリング研究のために、低衝突エネルギーでのフラグメンテーションは、1種の主なシグネチャーイオンをもたらし得る。シグネチャーイオンは、アミノオキシ誘導体化生成物からの中性損失に起因し得る。MRM遷移は、Q1における誘導体化ステロイドの質量およびQ3における中性損失フラグメントの質量であり得る。低濃度定量化のためには、標識試薬および分子の骨格の一部を含む高衝突エネルギーでのMS/MSフラグメンテーションは、誘導体化によってバックグラウンドノイズを大幅に低減するための方法を提供し、改善された感度および改善された特異性をもたらすQ3フラグメントの標的化された選択をもたらし得る。
種々の実施形態によれば、本教示は、生体試料の多段階精製およびクロマトグラフィー分離と関連する問題を伴うことなく、バックグラウンドノイズを低減または排除する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、永久荷電型アミノオキシ試薬(QAO)を用いるケトステロイドの誘導体化化学および試薬および誘導体化されたステロイドの骨格の両方を含む標的化フラグメンテーションを利用することによってバックグラウンドノイズを排除する。容易にイオン化される/イオン化可能な分子を用いる誘導体化は、ESI MS/MSにおいて良好なイオン化効率をもたらし、分析物に対する感度を増大する。Q3シグネチャーイオンであるフラグメントイオンは、誘導体化試薬または試薬の一部が結合された構造フラグメントを含むよう選択される場合には、感度および選択性の両方が増強され得る。正確に同一のQ1/Q3遷移を有する化合物が検出され、バックグラウンドノイズ干渉を作り出す機会は極めて少ない。同様のQ1/Q3 MRM遷移の唯一の可能性は、生体試料中の等圧ケトステロイドの存在であろう。等圧ケトステロイドは、干渉として現れるには、分析物と同一のフラグメンテーションパターンを共有しなくてはならない。このような稀な状況では、等圧ケトステロイドは、分析物からクロマトグラフィー分離され得る。
種々の実施形態によれば、試薬設計の付加される利点は、MS/MSフラグメンテーションの際に、試薬が、フラグメントイオン、すなわち、誘導体化された分析物で電荷を有する、Q3シグネチャーイオンを生成することであり、これによって、MS3分析に従うものとなるということである。一部の実施形態では、本方法は、ケトまたはアルデヒド官能基を有する分子のクラスで実施され得、その検出は、MS/MSによる超高感度分析のための誘導体化から利益を受け得る。
一部の実施形態では、ケトステロール胆汁酸前駆体を検出した後に、ケトステロール胆汁酸前駆体の相対濃度が、標準化合物のものに対する比較によって、または標準濃度曲線を使用することによって測定される。一部の実施形態では、少なくとも1種の分析物の絶対濃度が決定される。一部の実施形態では、少なくとも1種の重原子で標識された標準を含む較正物が使用される。一部の実施形態では、較正物は、少なくとも2種の重水素原子を有する化合物である。
本教示は、ケトステロイドおよびケト官能基を含有する分子のクラスの、高度に感度の高い、特異的な分析を提供する。本教示は、例えば、標識試薬の一部および分子の骨格の一部を含むためのシグネチャーイオンの注意深い欠失のために、MS/MSにおいて極めて低いバックグラウンドノイズを伴う、高いシグナル対ノイズ比を提供する。
質量分析器
本教示において、PDITMを実施するために、多種多様な質量分析器システムが使用され得る。適した質量分析器システムは、2種の質量分離器を含み、イオンフラグメンターが、2つの質量分離器の間のイオン飛行経路中に配置されている。適した質量分離器の例として、それだけには限らないが、四重極、RF多重極、イオントラップ、時間非行型(TOF)および時限式イオン選別器と連結しているTOFが挙げられる。適したイオンフラグメンターとして、それだけには限らないが、衝突誘導性解離(CID、衝突支援解離(collisionally assisted dissociation)(CAD)とも呼ばれる)、光誘導性解離(PID)、表面誘導性解離(SID)、ポストソース分解、電子線との相互作用による(例えば、電子誘導性解離(EID)、電子捕獲解離(ECD))、熱放射との相互作用(例えば、熱/黒体赤外放射解離(thermal/black body infrared radiative dissociation)(BIRD))、ポストソース分解またはそれらの組合せの原理で作動するものが挙げられる。
質量分析器についての適したマススペクトロメトリーシステムの例として、それだけには限らないが、トリプル四重極、四重極−線形イオントラップ(例えば、4000 Q TRAP(登録商標)LC/MS/MSシステム、Q TRAP(登録商標)LC/MS/MSシステム)、四重極TOF(例えば、QSTAR(登録商標)LC/MS/MSシステム)およびTOF−TOFのうちの1種または複数を含むものが挙げられる。
種々の実施形態では、質量分析器システムは、MALDIイオン供給源を含む。種々の実施形態では、組み合わされた試料の少なくとも一部が、MALDIマトリックス材料と混合され、MALDIイオン化供給源を備えた質量分析器を使用する親−娘イオン遷移モニタリングに付される。種々の実施形態では、組み合わされた試料の少なくとも一部が、クロマトグラフィーカラムにロードされ、溶出物の少なくとも一部がMALDIマトリックス材料と混合され、MALDIイオン化供給源を備えた質量分析器を使用する親−娘イオン遷移モニタリングに付される。
質量分析計システムは、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するためにトリプル四重極質量分析計を含み得る。この実施形態では、第1の四重極子は、親イオンを選択する。第2の四重極子は、複数の低エネルギー衝突が起こり、親イオンの一部のフラグメント化を引き起こすよう、十分に高い圧力および電圧で維持される。第3の四重極は、選択された娘イオンを検出器に透過するよう選択される。種々の実施形態では、トリプル四重極質量分析計は、イオン供給源とトリプル四重極子の間に配置されたイオントラップを含み得る。イオントラップは、イオン(例えば、すべてのイオン、特定のm/z範囲を有するイオンなど)を集めるよう設定され得、全時間(full time)の後、末端の電極にパルスをかけて、選択されたイオンがイオントラップを出るのを可能にすることによって、選択されたイオンを第1の四重極子に透過する。求められる充填時間は、例えば、イオン数、イオントラップ内の電荷密度、異なるシグネチャーペプチドの溶出間の時間、デューティーサイクル、励起状態種または多重帯電イオンの減衰率またはそれらの組合せに基づいて決定され得る。
トリプル四重極質量分析計中の四重極子の1種または複数は、線形イオントラップとして設定可能であり得る(例えば、四重極子内に実質的に長い円筒上のトラップ体積を提供するよう末端電極を付加することによって)。種々の実施形態では、第1の四重極子は、親イオンを選択する。第2の四重極子は、複数の低エネルギー衝突が起こり、親イオンの一部のフラグメント化を引き起こすよう、十分に高い衝突ガス圧および電圧で維持される。第3の四重極子は、フラグメントイオンを捕捉し、充填時間の後、末端の電極にパルスをかけて、選択された娘イオンがイオントラップを出るのを可能にすることによって、選択された娘イオンを検出器に透過するよう選択される。求められる充填時間は、例えば、フラグメントイオンの数、イオントラップ内の電荷密度、異なるシグネチャーペプチドの溶出間の時間、デューティーサイクル、励起状態種または多重帯電イオンの減衰率またはそれらの組合せに基づいて決定され得る。
質量分析計システムは、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するために2種の四重極子質量分離器およびTOF質量分析計を含み得る。種々の実施形態では、第1の四重極子は、親イオンを選択する。第2の四重極子は、複数の低エネルギー衝突が起こり、イオンの一部のフラグメント化を引き起こすよう、十分に高い圧力および電圧で維持され、TOF質量分析計は、例えば、対象の娘イオンを包含する質量範囲にわたってイオンをモニタリングし、作成されたイオンクロマトグラムを抽出すること、選択された娘イオンの時間枠の外側に現れるイオンを検出器からそらすこと、検出器に選択された娘イオンの到着時間枠に対して時間ゲーティングを行う(time gating)こと、またはそれらの組合せによって、検出のために娘イオンを選択する。
質量分析計システムは、2種のTOF質量分析器およびイオンフラグメンター(例えば、CIDまたはSIDなど)を含み得る。種々の実施形態では、第1のTOFは、イオンフラグメンター中に導入するために親イオンを選択し(例えば、選択された親イオンの時間枠の外側に現れるイオンをフラグメンターから離してそらすことによって)、第2のTOF質量分析計は、対象の娘イオンを包含する質量範囲にわたってイオンをモニタリングし、作成されたイオンクロマトグラムを抽出すること、選択された娘イオンの時間枠の外側に現れるイオンを検出器から離してそらすこと、検出器に選択された娘イオンの到着時間枠に対して時間ゲーティングを行うこと、またはそれらの組合せによって、検出のために娘イオンを選択する。TOF分析器は、線形であっても、反射型分析器であってもよい。
質量分析計システムは、対象の親イオンを選択するための時限式イオン選別器を有する第1のフィールドフリードリフト領域、娘イオンを生成するためのフラグメンテーションチャンバー(またはイオンフラグメンター)および選択された娘イオンを検出のために透過させる質量分離器を含むタンデムMS−MS機器を含み得る。種々の実施形態では、時限式イオン選別器は、パルス化イオン偏向器(pulsed ion deflector)を含む。種々の実施形態では、イオン偏向器は、パルス化イオン偏向器として使用され得る。質量分離器は、イオン反射器(ion reflector)を含み得る。種々の実施形態では、フラグメンテーションチャンバーは、イオンのフラグメンテーションを引き起こし、抽出を遅延するよう設計された衝突セルである。種々の実施形態では、フラグメンテーションチャンバーはまた、飛行時間型マススペクトロメトリーによるフラグメントイオンの分析のための遅延型抽出イオン供給源としても役立ち得る。
一部の実施形態では、イオン化は、構造的に特異的なフラグメントイオンおよびQ3 MRMイオンを作製するために使用され得る。標識試薬は、構造的に特異的なフラグメントイオンで全体的にまたは部分的に含有され得る。本方法は、Q3 MRMイオンに対する感度および特異性の両方を提供し得る。一部の実施形態では、イオン化は、優勢な中性損失フラグメントイオンをもたらすよう使用され得、これは、Q3において選択され、次いで、フラグメント化されて、構造的に特異的なイオンを生成し得る。次いで、これらのフラグメントイオンは、MS3と呼ばれる手順での同定および定量化のために使用され得る。
キット
一部の実施形態では、本教示は、ケトステロール胆汁酸前駆体の分析のためのキットを含む。キットは、2種以上の同位体濃縮された標準および1種または複数の試薬のセットを含む1種または複数の標識、容器、酵素、バッファーおよび/または使用のための説明書を含む。本教示のキットは、1種または複数の支持体のセットを含み、各支持体は、切断可能なリンカーを介して支持体と切断可能に連結している、異なる等圧標識化合物を含む。切断可能な結合の例として、それだけには限らないが、化学的にまたは光分解的に切断可能なリンカーが挙げられる。支持体は、異なる試料と反応させられ、それによって、試料の分析物を、それぞれの支持体と関連している等圧タグで標識できる。異なる試料に由来するケトステロール胆汁酸前駆体の分析は、異なる支持体と接触させられ、したがって、異なるレポーター/リンカー組合せで標識され得る。
種々の実施形態によれば、キットは、複数の異なるアミノオキシタギング試薬、例えば、本明細書に記載される標識試薬のセットを含み得る。キットは、複数の異なるケトステロール胆汁酸前駆体、例えば、複数の異なるケトステロールを分析するよう構成され得、標識は、各々を複数の異なるそれぞれの標識試薬、例えば、異なるケトステロール胆汁酸前駆体各々のための異なる試薬で標識することを含み得る。本教示の種々の実施形態によれば、1種または複数のケトステロール胆汁酸前駆体にタグを付けるための1種または複数のアミノオキシMSタギング試薬を含むキットが提供される。アミノオキシMSタギング試薬は、本明細書において記載される構造のうちの1種を有する化合物を含み得る。
キットは、1種または複数の既知ケトステロール胆汁酸前駆体を含む標準を含み得る。標準は、既知濃度の既知化合物を含み得る。一部の実施形態では、キット中のアミノオキシMSタギング試薬は、等圧タグのセットに由来する1種または複数の等圧タグを含み得る。一部の実施形態では、キットは、等圧タグのセットに由来する複数の異なる等圧タグを含み得る。一部の実施形態では、キット中のアミノオキシMSタギング試薬は、永久荷電型アミノオキシ試薬のセットに由来する1種または複数の永久荷電型アミノオキシ試薬を含み得る。一部の実施形態では、キットは、永久荷電型アミノオキシ試薬タグのセットに由来する複数の異なる永久荷電型アミノオキシ試薬タグを含み得る。
キットはまた、ケトステロール胆汁酸前駆体を標識するための説明書、例えば、紙の説明書または電子ファイルの形式の説明書、例えば、コンパクトディスクでの説明書を含み得る。説明書は、アッセイを実施するためのものであり得る。一部の実施形態では、キットは、試料のみが付加される必要がある、単一容器における均一アッセイを含み得る。キットの他の成分は、バッファー、他の試薬、1種または複数の標準、混合容器、1種または複数の液体クロマトグラフィーカラムなどを含み得る。
一部の実施形態では、複雑な生体マトリックスからのケトステロイドの高度に感度の高い定量化、例えば、低pg/mL濃度の範囲での検出を可能にするケトステロイド分析キットが提供される。
定義
本明細書において、用語「診断」「診断する」および「診断している」とは、対象が所与の疾患または状態を患っているか否かを決定または同定しようとするプロセスを指す。用語「診断」とは、特定の疾患の有無を100%の正確性で決定する能力を指すものではなく、所与の経過または結果が、そうではない場合よりも起こる可能性が高いということでさえもない。そうではなく、当業者ならば、用語「診断」とは、対象において特定の疾患が存在する可能性の増大を指すということは理解されよう。診断は、本明細書においてまた、当技術分野で公知の他の方法を使用する診断によって確認され得る予備診断のための方法を含む。さらに、本明細書に記載された方法は、状態の進行および/または状態を治療するために使用されている療法の有効性をモニタリングするために使用され得るということが考慮される。
用語「スクリーニング」とは、特定の疾患または臨床状態を対象とし、標的を使用するアッセイを指す。
本明細書において、「水和物の形態」とは、化合物または混合物の任意の水和状態または化合物の1種よりも多くの水和状態を指す。例えば、本明細書において論じられる標識試薬は、半水和物、一水和物、二水和物などであり得る。さらに、本明細書に記載される標識試薬の試料は、一水和物、二水和物および半水和物形態を含み得る。
語句「等圧標識」、「等圧タグ」および「等圧標識試薬」は、互換的に使用される。語句「等圧標識のセット」、「等圧タグのセット」および「等圧標識試薬のセット」は、互換的に使用され、例えば、セットのメンバー(個々の「等圧標識」、「等圧タグ」または「等圧標識試薬」)が、同一質量を有するが、セットの各メンバーが、イオンフラグメンテーション(例えば、衝突誘導性解離(CID)、光誘導性解離(PID))に付された際に異なる娘イオンシグナルをもたらし得る、試薬または化学部分を指す。等圧タグのセットは、式(I)または(II)の化合物またはその塩もしくは水和物の形態を含み得る。セットのメンバー間を区別するために使用され得る等圧タグの娘イオンは、等圧タグのレポーターイオンまたは帯電分析物であり得る。等圧タグのセットは、ケトステロール胆汁酸前駆体を標識するために使用され、実質的にクロマトグラフィーによって識別不可能であるが、CID後にシグネチャーイオンを生成する標識された化合物を生成し得る。質量標識のセットの個々のメンバーの質量は、同一であっても、異なっていてもよい。個々の同位体置換が同一である場合には、質量は同一であり得る。セットの特定の標識に組み込まれる重い要素または軽い要素のための個々の原子の選択における相違はまた、同位体濃縮された置換基の特定の原子量に基づいて質量の相違をもたらし得る。
本明細書において、「同位体濃縮された」とは、化合物(例えば、標識試薬)が、1個または複数の重原子同位体(例えば、それだけには限らないが、重水素、13C、15N、18O、37Clまたは81Brを含めた安定な同位体)を用いて合成的に濃縮されていることを意味する。同位体濃縮は、100%有効ではないので、濃縮のより少ない状態である化合物の不純物が存在し得、これらはより少ない質量を有する。同様に、過剰な濃縮(望ましくない濃縮)のために、また、天然の同位体存在量の変動のために、より多い質量の不純物が存在し得る。
語句「質量に差のある標識」、「質量に差のあるタグ」および「質量に差のある標識試薬」は、本明細書において互換的に使用される。語句「質量に差のある標識のセット」、「質量に差のあるタグのセット」は、互換的に使用され、例えば、セットのメンバー(すなわち、個々の「質量に差のある標識」または「質量に差のあるタグ」)が、実質的に同様の構造的および化学的特性を有するが、セットのメンバー間での重い同位体濃縮の相違のために質量が異なっている試薬のセットまたは化学部分を指す。質量に差のあるタグのセットの各メンバーは、イオンフラグメンテーションに付された際に異なる娘イオンシグナルを生成し得る。イオンフラグメンテーションは、例えば、不活性ガスとの衝突による(例えば、衝突誘導性解離(CID)、衝突活性化解離(CAD)など)、解離をもたらす光子との相互作用による(例えば、光誘導性解離(PID))、表面との衝突による(例えば、表面誘導性解離(SID))、解離をもたらす電子線との相互作用による(例えば、電子誘導性解離(EID)、電子捕捉解離(ECD))、熱/黒体赤外放射解離(BIRD)、ポストソース分解またはそれらの組合せによるものであり得る。セットのメンバー間を区別するために使用され得る、質量に差のあるタグまたは標識の娘イオンは、質量に差のあるタグまたは標識のレポーターイオンと呼ばれ得る。
本明細書において、「天然の同位体存在量」とは、自然界における同位体(単数または複数)の天然の地球上の蔓延に基づいた、化合物において見出される、1種または複数の同位体のレベル(または分布)を指す。例えば、生きている植物から得られた天然化合物は、典型的には、約0.6%の13Cを含有する。
本明細書において、「1種の主なシグネチャーイオンフラグメント」などの用語「主な」とは、フラグメンテーションプロセスの間に作り出されたイオンの少なくとも50%超が、シグネチャーイオンであることを意味する。一部の実施形態では、フラグメンテーションプロセスの間作り出されたイオンの少なくとも60%、70%、80%、90%が、シグネチャーイオンである。同様に、「優勢な中性損失フラグメンテーション」などの用語優勢なとは、フラグメンテーションプロセスの間に作り出されたイオンの少なくとも50%超が、中性損失フラグメントであることを意味する。一部の実施形態では、フラグメンテーションプロセスの間に作り出されたイオンの少なくとも60%、70%、80%、90%が、中性損失フラグメントである。
本明細書において、用語「塩の形態」は、化合物の塩または化合物の塩の混合物を含む。さらに、化合物の双性イオンの形態も、用語「塩の形態」に含まれる。アミンまたは他の塩基性基を有する化合物の塩は、例えば、適した有機酸または塩化水素、臭化水素、酢酸、過塩素酸などといった無機酸との反応によって得ることができる。第四級アンモニウム基を有する化合物はまた、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、過塩素酸などといった対アニオンも含有し得る。カルボン酸または他の酸性官能基を有する化合物の塩は、化合物を適した塩基、例えば、水酸化物塩基と反応させることによって調製され得る。したがって、酸性官能基の塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどといった対カチオンを有し得る。
本明細書において、用語「罹患していない」または罹患していない個体、患者または試料とは、27−ヒドロキシラーゼ欠乏と関連する状態を有さない個体、患者または試料を指す。このような個体、患者または試料は、比較する試料および/または対照に使用され得る。
上記の説明は、種々の実施形態の実施例および特定の詳細を提供するが、記載された実施形態の一部の特徴および/または機能は、記載された実施形態の範囲から逸脱することなく改変を認めることを理解されたい。上記の説明は、本明細書の教示の例示的なものであって、その範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲にある文言によってのみ制限される。
本出願人の教示の態様は、以下の実施例を踏まえるとさらに理解され得るが、これは、決して、本出願人の教示の範囲を制限すると解釈されてはならない。
(実施例1)
ケトステロイドの抽出−方法1
以下の手順は、同位体濃縮されたISを使用する、乾燥血液、血清、または血漿スポット試料からのケトステロールの抽出を説明する。
3μLの乾燥血清、血漿または全血スポット(3.17mm パンチ)を含有する試料を得た。MeOH+5%酢酸中のQAO試薬50μL(250μg)を添加した。10μLの同位体濃縮された内部標準(IS)(112pg)も、試料に添加した。次いで、試料をボルテックスで混合し、周囲温度で60分間インキュベートした。
LC−ESI−MS/MS分析のために5μLの試料を注入した。LC−MS/MSは、RP C8カラム(Phenomenex Luna 50〜4.6mm、5pm、40℃で)を使用して実施し、API 4000TM LC/MS/MSは、ポジティブモードで作動するESI供給源を用いて実施した。LC−MS/MS勾配法(8分)は、水/アセトニトリル/0.1%ギ酸移動相を用いた。
誘導体化ケトステロールの定量化は、同位体濃縮されたISを作製することによって可能になった。
上記の方法を使用する抽出回収率は、7α−コレステン−3−オン、5α−コレスタン−3−オン、および4−コレステン−3−オンの各々について>90%であるとわかった。
濃度曲線に使用した較正物:各較正物について、所望の量の標準および内部標準を含有するMeOH溶液3pLを、3.17mmの濾紙パンチ上にスパイクし、乾燥させた。DCS(Double Charcoal Stripped)血清(3μL)を各パンチディスク上にスパイクし、周囲温度で乾燥させた。較正物は、MeOH+5%酢酸中の試薬50μL(250μg)を用いて上記のように抽出した。
図3は、この方法を使用する、DCS血清中の7αC4 1〜400ng/mLの代表的な濃度曲線を提供する。
図4A〜4D、5A〜5Dおよび6A〜6Dは、これらのQAOタグが付けられたバイオマーカーが単一ピークとして同時に溶出することを示す。
表1は、5αコレスタン−3−オン、4−コレステン(Cholesen)−3−オン、および7αコレスタン−3−オンの分析のために利用されるMS/MS条件を提供する。
図7は、3種の異なるQAOタグを付けたケトステロールのQAO誘導体化法成績を提供する。検出の限界、増強因子、直線性、ダイナミックレンジ、CVおよび正確性が示されている。誘導体化後の増強因子は、275から2500の間であり、これは、実質的な改善を実証する。
(実施例2)
ケトステロイドの抽出=方法2
以下のステップは、同位体濃縮された試薬を使用する、乾燥血液、血清、または血漿スポット試料からのケトステロールの抽出を説明する。
3μLの乾燥血清、血漿または全血スポット(3.17mm パンチ)を含有する試料を得た。MeOH+5%酢酸中のQAO試薬50μL(250μg)を添加した。この混合物にボルテックスをかけ、それを周囲温度で60分間インキュベートした。次いで、同位体濃縮されたQAO試薬で誘導体化した、10μLのケトステロール分析物をISとして添加した(約112pg)。
LC−ESI−MS/MS分析のためにこの試料を注入した(5μLの試料)。LC−MS/MSは、RP C8カラム(Phenomenex Luna 50x4.6mm、5μm、40℃で)を使用して実施し、API 4000TMLC/MS/MSは、ポジティブモードで作動するESI供給源を用いて実施した。水/アセトニトリル/0.1%ギ酸移動相を用いるLC−MS/MS勾配法(8分)を使用した。
誘導体化されたケトステロールの定量化は、同位体濃縮されたISを作製することによって可能になった。各濃度について、較正を実施した。各較正物について、所望の量の標準を含有するMeOH溶液3μLを、3.17mmの濾紙パンチ上にISとともにスパイクし、乾燥させた。DCS(Double Charcoal Stripped)血清3μLを各パンチディスク上にスパイクし、周囲温度で乾燥させた。較正物は、MeOH+5%酢酸中の試薬50μ>L(250μg)を用いて上記のように抽出した。LC/MS/MSに先立って、同位体濃縮された試薬ですでに誘導体化された、既知濃度(112pg)のケトステロール分析物10μLをスパイクした。
図6の濃度曲線において示されるように、濃度の決定を実施し、実際の試料について極めて近く、これはISとして重水素化試薬を使用することの実現可能性を示す。図8では、LC/MS/MSの前に試薬をスパイクした。
(実施例3)
ケトステロイドの抽出−方法3
乾燥形態ではない試料3〜10μLを、以下の方法を使用して分析した。
5μLの血清、血漿または全血スポット(3.17mm パンチ)を含有する試料を得た。MeOH+5%酢酸中のQAO試薬75μL(2.8mg/ml)を添加した。10μLの同位体濃縮された内部標準(7aC4−d7、MeOH中10pg/μL)を添加した。この試料を30秒間ボルテックスで混合し、周囲温度で60〜120分間インキュベートした。
LC−ESI−MS/MS分析のために、10μLを注入した。LC−MS/MSは、RP CSカラム(Phenomenex Luna 50x4.6mm、5pm、40℃で)を使用して実施し、QTRAP 5500 LC/MS/MSは、ポジティブモードで作動するESI供給源を用いて実施した。水/アセトニトリル/0.1%ギ酸移動相を用いるLC−MS/MS勾配法(6分)を使用した。
各較正物は、5μL DCS血清を用いて作製し、MeOH溶液中の、漸増濃度のケトステロール分析物7αC4およびIS 7αC4−d7 10μLを用いてスパイクした。MeOH+5%酢酸中の75μL(2.8mg/ml)試薬を用いて上記のように較正物を抽出した。方法3を使用するDCS血清中、0から250nm/mLの間の濃度の7αC4の代表的な濃度曲線が、図10に示されている。
図11は、幾分かの内因性7αC4が存在するDSC血清の典型的な試料のクロマトグラフを提供する。
(実施例4)
ケトステロイドの抽出および分析
実施例4の分析のために使用されるような定量化ワークフローを使用した。具体的には、血漿試料(5μL)を、MeOH+5%酢酸中の、50μLのQAO試薬および10μLの内部標準(112pg)と組み合わせた。この混合物をボルテックスで混合し、室温で1〜2時間インキュベートした。MeOH+5%酢酸40μLを添加した。試料5μLを、QTRAO 5500TMを使用するLC−MS/MS分析に注入した。
この方法の感度増強は、50pgの非誘導体化7αC4のスキャンを、80fgのQAO誘導体化7αC4と比較する図13に示されており、これでは、シグナルは、400倍増強される。このワークフローを使用して分析されたケトステロイドは、図14〜24のうち少なくとも一部に記載されている。
(実施例5)
7αC4の抽出および分析
7αC4の分析のために使用されるような定量化ワークフローを使用した。具体的には、血漿試料(5μL)をMeOH+5%酢酸中、80μL(210μg)QAO試薬と組み合わせ、MeOH中の、10μLの同位体濃縮された(d7)内部標準を添加した。この混合物をボルテックスで混合し、室温で1〜2時間インキュベートした。20μLのMeOH:H2O中のIS−d3を添加した。QTRAO 5500TMを使用するLC−ESI−MS/MS分析のために、5μLの試料を注入した。分析には、6分かかった。このワークフローを使用して分析された7αC4が、図14〜24のうち少なくとも一部に記載されている。
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教示は、その効果への記載がない限り、記載された順序または要素に制限されると読まれてはならない。本教示の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変形がなされ得るということは理解されなければならない。例として、開示される方法ステップのいずれも、他の開示されたステップのいずれかと組み合わせて、本教示の種々の実施形態と一致する環含有化合物を分析する方法を提供してもよい。したがって、本教示の範囲および趣旨内に入るすべての実施形態およびその同等物が特許請求される。