以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る硬さ試験機の概要図である。図2は、ステージ12を昇降する昇降機構の概要図である。
この硬さ試験機は、テーブル11と、このテーブル11上に配置され試験片100を載置するステージ12とを備える。ステージ12は、試験片100をX方向(図1における左右方向)およびY方向(図1における紙面に垂直な方向)に移動させ、このXY平面上において試験片100を位置決めするためのものである。このステージ12には、ステージ12をX方向に水平移動させるためのモータ13と、ステージ12をY方向に移動させるためのモータ14とが付設されている。このモータ13およびモータ14はこの発明の水平移動機構を構成する。
ステージ12は、図2に示す昇降機構の作用により、上下方向(Z方向)に移動する。すなわち、ステージ12を支持する支持部51は、その側面にラック53が形成された昇降部材52により支持されている。この昇降部材52におけるラック53は、モータ15の駆動により回転するピニオン54と噛合している。このため、ステージ12は、モータ15の駆動により昇降する。
また、この硬さ試験機は、試験片100を目視により観察するための接眼レンズ16と、試験片100を撮影するためのカメラ17と、圧子21および対物レンズ23、24等を支持して回転する切替部材としてのターレット20とを備える。このターレット20は、つまみ26を操作することにより、あるいは、後述するモータ30の駆動により、鉛直方向を向く軸を中心に回転する。また、この硬さ試験機は、入力部および表示部としても機能するタッチパネル式の液晶表示部59を備える。なお、モータ30およびターレット20は、この発明の切替機構を構成する。
図3は、ステージ12に固定具70が配設された状態を示す斜視図である。図4は、固定具70の各固定部75に試料10を固定した状態を示す平面図である。
微小寸法の試験片100に試験を行うときには、試験片100の硬さに影響を及ぼさない方法で試験片100を樹脂モールドしたものを試料10とし、表面を材料の特性に適した研磨法により研磨して被検査面としている。この硬さ試験機では、試験片100を樹脂モールドした円柱状の試料10の外形に応じた4個の固定部75を形成した固定具70をステージ12上にボルトにより固設することにより、複数の試験片100に対して、連続した自動試験を行うことができる。なお、図4では、歯車の一部である鋼製の同一形状の試験片100を各々保持させた試料10を固定部75に固定した様子を示している。
固定具70は、4個の孔部が設けられた上板部材71と、固定具70をステージ12上に固定するためのボルト孔が設けられた下板部材72と、下板部材72と上板部材71を接続する柱部材73と、試料10の高さに応じて、試料10を下から支える押さえネジ部76とを備える。各固定部75は、上板部材71の孔部と、下板部材72に配設された押さえネジ部76により構成される。
なお、図3および図4に示す固定具70は、複数の試験片100をステージ12上に配置するときに使用される固定具の一例であり、試験片100の調製の態様により、固定具は適宜変更される。
図5は、ターレット20に支持された対物レンズ等の配置を示す説明図である。
ターレット20には、ステージ12上に載置された試験片100に押し込まれる圧子19、21と、2倍の対物レンズ22、5倍の対物レンズ23、40倍の対物レンズ24および50倍の対物レンズ25とが配設されている。これらの圧子19、21および対物レンズ22、23、24、25は、ターレット20の回転中心Cを中心とした円上に配置されている。なお、対物レンズ22、23、24、25の倍率および配設個数はこれに限定されるものではない。
再度、図1を参照して、この硬さ試験機は、試験片100の表面の像を表示するための液晶モニタ等の表示部55と、各種のデータを入力するための入力手段として機能するキーボード57およびマウス58と、本体56とから構成されるパーソナルコンピュータ50を備える。そして、このパーソナルコンピュータ50は、本体56内にROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置と論理演算を実行するCPUを備える。
図6は、圧子19および圧子21に対して試験力を付与するための負荷機構と、試験片100に形成されたくぼみを観察するための光学系の概要図である。なお、図6は、図5において一点鎖線で示す位置における断面を示している。
この硬さ試験機は、圧子19、21の先端を試験片100に対して押し込むための試験力を圧子19、21に対して付与する負荷機構と、ステージ12上に載置された試験片100を照明するとともにくぼみを観察するための光学系とを備える。
ターレット20は、軸筒27がベアリング29を介して回転軸28に接続されており、つまみ26を操作することにより、あるいは、後述するモータ30の駆動により、鉛直方向を向く回転軸28を中心に回転する。図5においては、ターレット20の回転により負荷伝達軸36を介して圧子21に試験力が与えられる場合、すなわち、圧子21が試験片100と対向する位置に配置されている場合を示している。圧子19に対して試験力を付与する場合には、圧子19が、図5に示す圧子21の位置に配置される。
負荷機構は、水平方向を向く軸31を中心に揺動可能なレバー32を備える。レバー32の一端には、中空の押圧部35が配設されている。この押圧部35は、レバー32の揺動に伴って、圧子21に連結した負荷伝達軸36の端部に付設された当接部37を押圧する構成となっている。また、レバー32の他端には、永久磁石33が付設されている。この永久磁石33の外部には、電磁コイル34が配設されている。この永久磁石33と電磁コイル34とにより、ボイスコイルモータが構成される。このボイスコイルモータは、電磁式の負荷機構となり、電磁コイル34に流れる電流を制御することにより、負荷伝達軸36の先端に配設された圧子21による試験片100への試験力を制御することが可能となる。
負荷伝達軸36は、上下の板バネ61が支持部材62を介してターレット20の軸筒27に固定されたロバーバル構造により支持されており、負荷機構により与えられた試験力に応じて昇降可能となっている。負荷伝達軸36には、この負荷伝達軸36の移動量を検出する差動トランス式の変位検出器60が接続されている。この変位検出器60は、支持部材63を介してターレット20の軸筒27に接続され、ターレット20の回転により負荷伝達軸36と同期して移動する。なお、この変位検出器60は、試験片100の表面の検出に使用される。すなわち、圧子21を極めて小さい力で下降させたときの移動量を常に検出し、圧子21の移動が停止したときに圧子21が試験片100の表面と当接したと判断している。
光学系は、LED光源41と、LED光源41からの光を水平方向に導く光筒42と、試験片100を上から照明するために光筒42により導かれた光を押圧部35の中空部に導光するとともに、試験片100の表面およびその周辺領域からの反射光をカメラ17側に透過させるハーフミラー43と、ハーフミラー43を透過した試験片100の表面からの反射光を接眼レンズ16およびカメラ17に分割するハーフミラー44とを備える。対物レンズ22が図4における負荷伝達軸36の位置、すなわち試験片100に形成されたくぼみの観察位置に配置された場合には、試験片100の表面からの反射光が、対物レンズ22、押圧部35の中空部、ハーフミラー43、44を介して、接眼レンズ16およびカメラ17に入射する。これにより、接眼レンズ16により試験片100の拡大像を観察できるとともに、カメラ17により撮影した拡大像をパーソナルコンピュータ50における表示部55に表示することができる。その他の対物レンズ23、24、25がくぼみの観察位置に配置された場合も、対物レンズ22による場合と同様である。
図7は、圧子21により試験片100にくぼみを形成する様子を模式的に示す説明図であり、図8は、試験片100に形成されたくぼみを示す平面図である。
圧子19、21のうち、圧子21は、硬さ試験としてのビッカース硬さ試験を実行するためのものであり、その先端は四角錐形状となっている。この圧子21は、図7に示すように、図5に示す負荷機構の作用により試験片100の表面に深さhだけ押し込まれる。そして、その試験力を解除し、図1に示すターレット20を回転させて所望の倍率の対物レンズ(例えば、対物レンズ24)を試験片100と対向する位置に移動させる。対物レンズ24、カメラ17を介して得られた試験片100の表面に形成されたくぼみの画像から、くぼみの対角線長さd[d=(dx+dy)/2]を測定する(図8参照)。ビッカース硬さは、試験力を、底面が正方形で頂点の角度が圧子21と同じ角錐であると仮定したくぼみの表面積で割って得られる値に比例する。そして、くぼみの対角線長さd(mm:ミリメートル)から求められたくぼみの表面積と試験力から、ビッカース硬さが算出される。
ここで、試験力をF(N:ニュートン)とした場合に、ビッカース硬さHVは、下記の式(1)で表される。
HV = 0.1891(F/d2 ) ・・・・・(1)
なお、圧子19、21のうち、他方の圧子19としては、例えば、ヌープ硬さ試験に使用される底面が菱形のピラミッド型の圧子が使用される。
図9は、この発明に係る硬さ試験機の主要な制御系を示すブロック図である。
この硬さ試験機は、試験機本体内に試験機の動作を制御する試験機制御部80を備える。この試験機制御部80は、上述したカメラ17、液晶表示部59、LED光源41、変位検出器60、電磁コイル34、パーソナルコンピュータ50の本体56、ターレット20を回転させるためのモータ30およびステージ12をX、Y、Z方向に移動させるためのモータ13、14、15と接続されている。さらに、この試験機制御部80は、硬さ試験機を動作させるための各種情報を記憶する記憶部81と接続されている。
パーソナルコンピュータ50は、複数の試験位置に対する試験を連続して実行させるための各種機能を備えるこの発明の制御装置として機能し、本体56内に、制御部90と記憶部96を備える。そして、制御部90は機能的構成として、試験位置設定部91と、動作制御部92と、時間算出部93と、表示制御部95とを備える。
試験位置設定部91は、試験片100の表面に複数の試験位置を設定する。動作制御部92は、試験位置設定部91により設定された複数の試験位置の座標に基づき、ステージ12の水平移動機構および昇降機構の制御量、圧子19または21を試験片100に押し付ける負荷機構の制御量、および、圧子19、21、対物レンズ22、23、24、25のいずれかを試験片100に対向配置する切替機構の制御量を算出し、各機構の動作を制御する。時間算出部93は、試験が開始されてから試験が終了するまでの試験の所要時間を計算し、試験中には、試験が終了した試験位置について実際に試験に要した時間に基づいて、残りの試験位置について試験が終了するまでの残りの試験時間を再計算する。表示制御部95は、時間算出部93の算出結果に基づいて、試験の残り時間および/または試験終了予定時刻を表示部55に表示させる。
記憶部96は、試験位置設定部91により試験位置を設定するときに利用される試験パターンや、設定された各試験位置の座標等の各種情報を記憶する。なお、試験パターンは、試験位置間の距離などのいくつかのパラメータにより規定されたものであり、表示部55の画面上に示される複数の試験位置を、各試験位置の位置関係を維持した状態で1つの操作対象として取り扱うことが可能なものである。例えば、オペレータが試験片100の外縁から所定の距離の位置に所定の間隔で複数の試験位置を設定する試験パターンを選択すると、試験位置設定部91は、低倍率の対物レンズ22を介して取得した試験片100の形状に合わせて、複数の試験位置を自動的に設定する。
次に、以上のような構成を有する硬さ試験機を使用して、硬さ試験を行う場合の、試験時間の計算、残り時間および試験終了予定時刻の表示部55への表示について、図4に示す同一形状の試験片100を各々保持させた試料10をステージ12上の固定具70の各固定部75に固定して、連続してビッカース硬さ試験を行うときを例に説明する。
まず、ターレット20を回転させて、低倍率の対物レンズ22を試料10と対向する位置に移動させ、対物レンズ22を介して取得された画像を、表示部55に表示させるとともに、パーソナルコンピュータ50により試験片100の形状を読み取る。次に、オペレータがキーボード57およびマウス58を利用して表示部55に表示された1の試験片100に対して圧子21を押し込んで硬さを計測すべき試験位置を設定する。
この硬さ試験機では、試験位置の設定は、試験片100上の任意の位置を1点1点オペレータが指定する方法と、予め記憶部96に記憶させていた試験パターンを呼び出して、試験片100上の所定の領域に適用する方法とによって実行することができる。
図4の試験片100は歯車の一部であり、歯車は互いに噛み合う歯面の耐摩耗性を確保するために焼入れが行われる。試験位置とこれに対応する試験力等の試験条件は、焼入れによる硬化層深さに応じて、試験片100内の位置によって異なる。このため、この硬さ試験機では、複数の試験位置がパターン化された試験パターン(例えば、試験片100の外縁に沿って試験位置を設定するパターンと、試験片100の内側に向かって直線状に試験位置を設定するパターン)を、予めパーソナルコンピュータ50の記憶装置(例えばROM)または試験機制御部80に接続された記憶部81に記憶させている。そして、所望の試験パターンをオペレータが入力手段を介して選択することにより、複数の試験位置を試験片100に設定できるようにしている。試験パターンは、試験片100の材質や形状に応じて複数用意されており、このような試験パターンの試験片100への適用は、オペレータのマウス58等を用いた所望の試験パターンを選択する信号の入力を受けて、試験片100の端縁からの距離やくぼみ中心間の距離等、試験規格に定められた条件を充足する位置を試験位置として設定するプログラムの実行により実現される。
また、図4に示す同一形状の4つの試験片100に試験位置を設定する場合、例えば、1つの試験片100上の任意の位置を1点1点オペレータが指定して設定した複数の試験位置を試験パターンとして一旦記憶部96に記憶させ、他の3つの試験片100に試験位置を設定するときには、先に記憶させた試験パターンを適用することで、複数の試験位置を一括して設定することもできる。
このようにして各試験片100上に設定された複数の試験位置の座標情報は、記憶部96に記憶される。そして、記憶部96に記憶された情報は、動作制御部92において、ステージ12の水平移動機構、昇降機構およびターレット20の切替機構の各機構の制御量の算出に利用される。
ステージ12上に載置された全ての試験片100の全ての試験位置の設定が完了すると、動作制御部92により全ての試験位置に対して順次試験を実行していくためのステージ12の水平移動機構、昇降機構およびターレット20の切替機構の各機構の制御量が算出され試験機制御部80に送信される。そして、試験機制御部80は、モータ30を駆動してターレット20を回転させ、圧子21を試験片100の表面に対向配置させるとともに、モータ13およびモータ14を駆動して設定された試験位置と圧子21の負荷軸の軸心が一致するように、ステージ12を水平移動させる。そして、ステージ12の移動が完了すると、試験機制御部80は、負荷機構を制御することにより、所定の試験力で圧子21を試験片100の表面に押し付ける。
また、試験片100の表面へのくぼみの形成が終わると、表示部55に表示される画像の視野範囲を、くぼみの計測に適した視野範囲に切り替えるため、試験機制御部80は、モータ30を駆動してターレット20を回転させることにより、対物レンズ24を試験片100の表面に対向する位置に移動させ、モータ15を駆動してステージ12を昇降させることでオートフォーカスを実行する。試験機制御部80は、対物レンズ24を介して得られた画像を用いて、くぼみの対角線長さdを計測し、ビッカース硬さを算出する(図8参照)。
図10は、表示部55への表示態様の一例を示す図である。図10(a)は、試験終了までの残り時間を表示し、図10(b)は、試験予定終了時刻を表示している。なお、試験終了までの残り時間と試験予定終了時刻を同時に表示してもよい。
試験が開始されると、時間算出部93において所要時間が計算される。この所要時間とは、試験が開始されて、設定された全ての試験位置についてくぼみのサイズの読込が終了するまでの総試験時間である。試験開始時に算出される試験時間(所要時間)は、1試験位置当たりのおおよその必要時間(例えば30秒)に、設定した試験位置数(例えば1000)を乗算することにより算出される。時間算出部93の算出結果である時間は、図10(a)に示すように、試験終了までの残り時間としてそのまま表示されるか、または、図10(b)に示すように、パーソナルコンピュータ50が有する時計機能から取得された現在時刻に算出された試験時間を加算して得られる試験終了予定時刻として表示される。なお、図10(a)に示すように時間を表示する場合には、パーソナルコンピュータ50の本体56が有する時計機能と連動させて、時間をカウントダウンさせる。
試験中においては、設定された複数の試験位置のうち試験が終了した試験位置について実際に試験に要した時間がカウントされており、この実際に試験に要した時間に基づいて、時間算出部93において、試験が終了するまでの残り時間が再計算される。この再計算は、試験開始時に試験時間の計算に用いた1試験位置あたりの試験時間を、実際に試験に要した時間に基づいて得られた1試験位置あたりの試験時間に変更した後に、その変更された1試験あたりの試験時間に残りの試験位置数を乗算することにより行われる。表示制御部95は、時間算出部93の再計算結果に基づいて、表示部55に表示させる試験終了までの残り時間、または、試験終了予定時刻を更新する。
また、この硬さ試験機では、複数の試験位置に対して連続して試験を行うときの圧子21の押し込みとくぼみ計測の手順を、次の2つの方法から選択できるようになっている。第1の方法は、1の試験位置への圧子21の押し込みが終わった直後に、くぼみのサイズを読み取る逐次試験方式である。第2の方法は、設定した複数の試験位置をいくつかの単位に分け(グループ化)、グルーブごとに圧子21の押し込みを連続して行った後に、くぼみのサイズを読み取る一括試験方式である。
圧子21の押し込みとくぼみ計測の手順として、第1の方法が選択されているときには、時間算出部93は、所定の数の試験位置に対する試験が終了するごとに、所定の数の試験位置について実際に試験に要した時間と所定の数から求めた1試験位置当たりの試験時間に基づいて、残り時間を再計算する。所定の数は1以上の任意の数であり、例えば、所定の数が1の場合は、ある試験位置に対して負荷機構を動作させて圧子21への荷重負荷が開始されたときから、次の試験位置に対して負荷機構を動作させて圧子21への荷重負荷が開始されるまでの時間を、1試験位置当たりの試験時間とし、残り時間の再計算を1試験位置ごとに繰り返し実行する。また、例えば、所定の数が10の場合は、ある試験位置に対して負荷機構を動作させて圧子21への荷重負荷が開始されたときから、11番目の試験位置に対して負荷機構を動作させて圧子21への荷重負荷が開始されるまでの時間を試験位置の数10で除した時間(平均試験時間)を、1試験位置当たりの試験時間として、残り時間の再計算を10試験位置ごとに繰り返し実行する。
圧子21の押し込みとくぼみ計測の手順として、第2の方法が選択されているときには、グループ単位で試験が進行していくことから、時間算出部93は、グループ内の各試験位置に対する試験が終了するごとに、グループ単位で実際に試験に要した時間とグループ内の試験位置数から求めた1試験位置当たりの試験時間に基づいて、残り時間を再計算する。例えば、あるグループの最初の試験位置に対して負荷機構を動作させて圧子21への荷重負荷が開始されたときから、次のグループの最初の試験位置に対して負荷機構を動作させて圧子21への荷重負荷が開始されるまでの時間を1グループの試験に要した時間とし、この1グループに要した時間をグループ内の試験位置数で除した時間(平均試験時間)を記憶部96に記憶させ、次のグループの最初の試験位置への圧子21への荷重負荷が開始されたときに、時間算出部93において記憶させた平均試験時間を用いて残り時間を再計算させる。
なお、上述した例では、1グループの試験に要した時間を、圧子21に対して負荷機構を動作させるタイミングに合わせてカウントしているが、例えば、対物レンズ24と圧子21の位置を入れ替えるためにターレット20を回転させる切替機構の動作のタイミングでカウントしてもよい。また、この第2の方法は、第1の方法に比べて、ターレット20の切替回数が少ない分、総試験時間を短くすることができる。このため、圧子21の押し込みから読み取りまでに時間が経過しても、くぼみの形状に変化を生じない塑性変形する材料の試験では、第2の方法が選択されることが多い。
試験片100に設定される複数の試験位置のグループ化は、対物レンズ22により取得された表示部55の画面上に表示される試験片100の画像上に示される複数の試験位置のうち、試験パターンを適用した範囲を利用して行うことができる。例えば、図4に示すように同一形状の試験片100の1つに設定した複数の試験位置を試験パターンとして記憶させた後に、他の3つの試験片100に記憶させた試験パターンを適用している場合は、設定された複数の試験位置は試験片100ごとにグループ化され、4つのグループが作成されることになる。
図4に示す例では、固定具70の4個の固定部75に全て同一形状の試験片100を保持する試料10を固定した例を示しているが、試験片100の形状がすべて異なっていてもよい。試験片100の少なくとも一部が同一形状であれば、その同一形状部分について、試験パターンを利用して複数の試験位置を容易に設定することが可能である。すなわち、同一形状部分について先に設定された複数の試験位置を試験パターンとして記憶させておき、他の試験片100の同一形状部分にそれぞれ適用すればよい。この場合には、オペレータがマウス58などを使用して画定した表示部55の画面上の領域内で複数の試験位置を設定する。このようにオペレータが任意の領域を作成した後に、その領域に、例えば、複数の試験パターンを設定していた場合には、その任意の所定の領域ごとに試験位置をグループ化してもよい。
また、試験位置の設定に試験パターンを利用しない場合でも、全ての試験位置を設定した後に、それらの試験位置を、試験位置設定時に表示部55に表示させた試験片100の画像を分割した所定の領域ごとに、あるいは、所定の数(例えば50の試験位置)ごとに、試験片100への圧子21の押し込みとくぼみの読込を一括して行うためのグループに分けてもよい。
なお、図10(a)および図10(b)の表示例においては、試験終了までの残り時間や試験終了予定時刻とともに、現在の試験の状況を、圧子21を試験片100に押し込んでいる「負荷中」と、くぼみのサイズを計測する「読取中」との文字表示で示している。このように、試験終了までの残り時間や終了予定時刻は、試験の状況や試験の進捗を示す他の情報とともに表示されてもよい。また、図10に示す表示例では、対物レンズから取得された試験片100やくぼみの画像とは別のウィンドウに試験終了までの残り時間や終了予定時刻を表示する例を示したが、試験片100やくぼみの画像を表示するウィンドウに表示領域を設けて表示させてもよい。少なくとも残り時間と試験終了予定時刻のいずれか一方が表示部55に表示されればよく、例えば、表示制御部95に表示切替機能を持たせて、図10(a)のような時間の表示と、図10(b)のような時刻の表示とを、オペレータの選択により相互に切り替えるようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、時間算出部93における試験の開始から終了までの総試験時間(所要時間)の計算は、試験開始時に行い、表示制御部95による表示部55への表示も試験開始時に行っているが、これらは、試験を開始する前の試験条件設定時に行うようにしてもよい。さらに、上述した実施形態では、試験開始時に、時間算出部93において所要時間を計算させ、表示制御部95の作用によりこの所要時間を表示部55に表示させるようにしているが、所要時間の計算と表示は省略してもよい。すなわち、最初のグループや所定の数の試験位置について試験が終了した時点(試験進行の早い段階)で、時間算出部93において試験の残り時間を計算させ、残り時間および/または試験終了予定時刻を表示部55に表示させるようにしてもよい。
上述したように、この発明に係る硬さ試験機においては、複数の試験位置を設定して連続して試験を行うときに、試験中にそれまでの試験に要した時間から試験終了までの時間を計算させている。このため、この発明に係る硬さ試験機では、複数の試験片100に対して試験を行うときの、表示部55に表示させる試験終了までの時間または試験終了予定時刻を正確にユーザー側に提示することが可能となる。これにより、ユーザーはより効率的な試験を行うことができる。