以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。
図1は、本発明の一実施形態である電池パック100の構成図である。電池パック100は、負荷接続端子5,6に接続される不図示の外部負荷に電力を供給可能な二次電池200と、二次電池200を保護する保護モジュール80とを内蔵して備えている。電池パック100は、外部負荷に内蔵されてもよいし、外付けされてもよい。外部負荷の具体例として、携帯端末(携帯電話、携帯ゲーム機、PDA、モバイルパソコン、スマートフォン、タブレット端末、音楽や映像の携帯プレーヤーなど)、コンピュータ、ヘッドセット、カメラなどの電子機器が挙げられる。
二次電池200は、負荷接続端子5,6に接続される不図示の充電器によって充電可能である。二次電池200の具体例として、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などが挙げられる。二次電池200は、2つのセル201,202が互いに並列に接続されて構成されている。
保護モジュール80は、負荷接続端子5と、負荷接続端子6と、セル接続端子3,17,27とを備え、セル接続端子3,17,27に接続された二次電池200を過電流から保護する電池保護装置である。セル接続端子3は、負荷接続端子5に電源経路8を介して繋がる。セル接続端子17は、負荷接続端子6に電源経路16を介して繋がり、セル接続端子27は、負荷接続端子6に電源経路26を介して繋がる。セル接続端子3は、セル201とセル201の両方の正極に接続されている。セル接続端子17は、セル202の負極に接続されずに、セル201の負極に接続される。セル接続端子27は、セル201の負極に接続されずに、セル202の負極に接続される。
保護モジュール80は、トランジスタ11,12,21,22を備えている。トランジスタ11は、セル201の充電経路を遮断可能な充電経路遮断部であり、トランジスタ12は、セル201の放電経路を遮断可能な放電経路遮断部である。トランジスタ21は、セル202の充電経路を遮断可能な充電経路遮断部であり、トランジスタ22は、セル202の放電経路を遮断可能な放電経路遮断部である。図示の場合、トランジスタ11は、セル201の充電電流が流れる電源経路16を遮断でき、トランジスタ12は、セル201の放電電流が流れる電源経路16を遮断できる。トランジスタ21は、セル202の充電電流が流れる電源経路26を遮断でき、トランジスタ22は、セル202の放電電流が流れる電源経路26を遮断できる。
トランジスタ11,12は、電源経路16の導通/遮断を切り替え可能なスイッチング素子であり、電源経路16に直列に挿入されている。トランジスタ21,22は、電源経路26の導通/遮断を切り替え可能なスイッチング素子であり、電源経路26に直列に挿入されている。
トランジスタ11,12,21,22は、例えば、MOSFETである。トランジスタ11は、トランジスタ11の寄生ダイオードの順方向がセル201の放電方向に一致するように電源経路16に挿入されている。トランジスタ12は、トランジスタ12の寄生ダイオードの順方向がセル201の充電方向に一致するように電源経路16に挿入されている。トランジスタ21は、トランジスタ21の寄生ダイオードの順方向がセル202の放電方向に一致するように電源経路16に挿入されている。トランジスタ22は、トランジスタ22の寄生ダイオードの順方向がセル202の充電方向に一致するように電源経路26に挿入されている。
なお、トランジスタ11,12,21,22は、IGBTやバイポーラトランジスタなどの他の半導体素子でもよい。また、トランジスタ11,12,21,22のドレイン−ソース間(又は、コレクタ−エミッタ間)にダイオードが追加されてもよい。
保護モジュール80は、抵抗13,23を備えている。抵抗13は、セル201に流れる放電電流又は充電電流の電流値を検出するための検出抵抗であり、セル接続端子17とトランジスタ11,12との間における電源経路16に直列に挿入されている。抵抗23は、セル202に流れる放電電流又は充電電流の電流値を検出するための検出抵抗であり、セル接続端子27とトランジスタ21,22との間における電源経路26に直列に挿入されている。
保護モジュール80は、キャパシタ14,24を備えている。キャパシタ14は、抵抗13に並列に接続されている。キャパシタ14を抵抗13に並列に接続することによって、抵抗13を用いた電流検出の精度が向上する。キャパシタ24は、抵抗23に並列に接続されている。キャパシタ24を抵抗23に並列に接続することによって、抵抗23を用いた電流検出の精度が向上する。
保護モジュール80は、保護IC90を備えている。保護IC90は、二次電池200から給電されて二次電池200を保護する集積回路である。保護IC90は、一つのチップから構成されている。
保護IC90は、VDD端子と、VSS1端子と、VSS2端子とを備えている。VDD端子は、抵抗1を介して、セル接続端子3又は電源経路8に接続される正側電源端子である。VSS1端子は、セル接続端子17と抵抗13との間で電源経路16に接続される負側電源端子である。VSS2端子は、セル接続端子27と抵抗23との間で電源経路26に接続される負側電源端子である。
抵抗1は、VDD端子に過電流が流れることを防止する電流制限抵抗である。キャパシタ2は、抵抗R1とVDD端子との間に接続された一端と、セル接続端子17と抵抗13との間で電源経路16に接続される他端とを有している。抵抗1とキャパシタ2によって構成されたRCローパスフィルタは、VDD端子とVSS1端子との間の電源電圧を平滑化できる。
保護IC90は、保護IC90のCOUT1端子から、ハイレベルの信号を出力することでトランジスタ11をオンでき、ローレベルの信号を出力することでトランジスタ11をオフできる充電制御回路34を有している。充電制御回路34は、トランジスタ11をオンすることによって、セル201を充電する方向の電流が電源経路16に流れることを許可でき、トランジスタ11をオフすることによって、セル202を充電する方向の電流が電源経路16に流れることを禁止できる。
また、保護IC90は、保護IC90のDOUT1端子から、ハイレベルの信号を出力することでトランジスタ12をオンでき、ローレベルの信号を出力することでトランジスタ12をオフできる放電制御回路37を有している。放電制御回路37は、トランジスタ12をオンすることによって、セル201を放電する方向の電流が電源経路16に流れることを許可でき、トランジスタ12をオフすることによって、セル201を放電する方向の電流が電源経路16に流れることを禁止できる。
同様に、保護IC90は、保護IC90のCOUT2端子から、ハイレベルの信号を出力することでトランジスタ21をオンでき、ローレベルの信号を出力することでトランジスタ21をオフできる充電制御回路44を有している。充電制御回路44は、トランジスタ21をオンすることによって、セル202を充電する方向の電流が電源経路26に流れることを許可でき、トランジスタ21をオフすることによって、セル202を充電する方向の電流が電源経路26に流れることを禁止できる。
また、保護IC90は、保護IC90のDOUT2端子から、ハイレベルの信号を出力することでトランジスタ22をオンでき、ローレベルの信号を出力することでトランジスタ22をオフできる放電制御回路47を有している。放電制御回路47は、トランジスタ22をオンすることによって、セル202を放電する方向の電流が電源経路26に流れることを許可でき、トランジスタ22をオフすることによって、セル202を放電する方向の電流が電源経路26に流れることを禁止できる。
保護モジュール80は、セルが複数並列に接続された二次電池を保護する電池保護装置の一例である。保護モジュール80は、保護制御部を有する保護IC90を備えている。保護制御部は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられ、対応するセルの保護を制御する。保護制御回路30は、セル201に対して設けられ、セル201の保護を制御する保護制御部の一例であり、保護制御回路40は、セル202に対して設けられ、セル202の保護を制御する保護制御部の一例である。
保護制御回路30は、電流検出回路31と、充電過電流検出回路32と、充電電流制限回路33と、充電制御回路34と、放電過電流検出回路35と、放電電流制限回路36と、放電制御回路37と、過充電検出回路38と、過放電検出回路39とを備えている。保護制御回路40は、電流検出回路41と、充電過電流検出回路42と、充電電流制限回路43と、充電制御回路44と、放電過電流検出回路45と、放電電流制限回路46と、放電制御回路47と、過充電検出回路48と、過放電検出回路49とを備えている。
保護モジュール80は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられた充電電流制限部と、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられた放電電流制限部とを有する保護IC90を備えている。
充電電流制限回路33は、セル201に対して設けられた充電電流制限部の一例であり、放電電流制限回路36は、セル201に対して設けられた放電電流制限部の一例である。充電電流制限回路33及び放電電流制限回路36は、VDD端子とVSS1端子又はCS1端子との間の電圧を電源電圧として動作する。同様に、充電電流制限回路43は、セル202に対して設けられた充電電流制限部の一例であり、放電電流制限回路46は、セル202に対して設けられた放電電流制限部の一例である。充電電流制限回路43及び放電電流制限回路46は、VDD端子とVSS2端子又はCS2端子との間の電圧を電源電圧として動作する。
また、保護モジュール80は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれの充電経路に設けられた充電制御素子と、二次電池に構成された複数のセルそれぞれの放電経路に設けられた放電制御素子とを備えている。
トランジスタ11は、セル201の充電経路である電源経路16に設けられた充電制御素子の一例であり、トランジスタ12は、セル201の放電経路である電源経路16に設けられた放電制御素子の一例である。同様に、トランジスタ21は、セル202の充電経路である電源経路26に設けられた充電制御素子の一例であり、トランジスタ22は、セル202の放電経路である電源経路26に設けられた放電制御素子の一例である。
充電電流制限回路33は、充電電流制限回路33に対応するセル201に充電電流I1が流れている充電期間に充電電流I1が所定の充電電流値Icth1を超えることをトランジスタ11のオン状態を制御することにより制限する充電電流制限制御を行う。トランジスタ11は、充電電流I1が流れている充電期間に充電電流I1が充電電流値Icth1を超えることを充電電流制限回路33の充電電流制限制御により制限する充電電流制限素子である。トランジスタ11は、セル201の充電方向に流れる充電電流I1の流れを制限でき、充電電流制限回路33は、充電電流I1の流れが制限されるようにトランジスタ11をオン動作させる。
したがって、充電電流制限回路33は、充電電流I1が充電電流値Icth1に上昇して到達しても、充電電流I1が充電電流値Icth1を超えないように充電電流I1の流れを絞りながら、充電電流I1を零よりも大きな電流値で流し続けることができる。
同様に、充電電流制限回路43は、充電電流制限回路43に対応するセル202に充電電流I2が流れている充電期間に充電電流I2が所定の充電電流値Icth2を超えることをトランジスタ21のオン状態を制御することにより制限する充電電流制限制御を行う。トランジスタ21は、充電電流I2が流れている充電期間に充電電流I2が充電電流値Icth2を超えることを充電電流制限回路43の充電電流制限制御により制限する充電電流制限素子である。トランジスタ21は、セル202の充電方向に流れる充電電流I2の流れを制限でき、充電電流制限回路43は、充電電流I2の流れが制限されるようにトランジスタ21をオン動作させる。
したがって、充電電流制限回路43は、充電電流I2が充電電流値Icth2に上昇して到達しても、充電電流I2が充電電流値Icth2を超えないように充電電流I2の流れを絞りながら、充電電流I2を零よりも大きな電流値で流し続けることができる。
なお、電源経路8に流れる充電電流Iは、セル201及び電源経路16を流れる充電電流I1と、セル202及び電源経路26を流れる充電電流I2との和である。また、充電電流値Icth1と放電電流値Icth2とは、等しい値でもよいし、異なる値でもよい。
このように、充電電流I1又はI2が所定の充電電流値で制限されることによって、セル201とセル202の容量が互いに異なっていても、両セル間で過剰な充放電電流が流れることを防止できる。そして、互いに異なる容量を有する複数のセルを並列に接続できるため、限られた実装面積を効率的に使用できる。例えば、容量が小さくなるほどセルの体積は小さくなるので、複数のセルが実装される基板に存在する隙間スペースに、それらの複数のセルのうち相対的に小さな容量を有するセルを実装できる。
また、このように、充電電流I1又はI2が所定の充電電流値で制限されることによって、セル201とセル202との接続時に両セル間の電圧差が大きくても、両セル間で過剰な充放電電流が流れることを防止できる。また、充電電流I1又はI2が所定の充電電流値で制限されることによって、いずれかのセルが満充電になっても、残りのセルに過剰な充電電流が流れることを防止できる。また、充電電流I1又はI2が所定の充電電流値で制限されることによって、いずれかのセルの内部インピーダンスがセルの劣化等により増加しても、残りのセルに過剰な充電電流が流れることを防止できる。
なお、充電電流制限回路33は、保護IC90のCOUT1端子とV−1端子との間の電圧値を制御することによって、トランジスタ11のゲート‐ソース間の電圧値を調整できるので、充電電流I1の電流値を増減しながら制限できる。COUT1端子は、トランジスタ11のゲートに接続され、V−1端子は、抵抗15を介して、トランジスタ11のソースに接続される。同様に、充電電流制限回路43は、保護IC90のCOUT2端子とV−2端子との間の電圧値を制御することによって、トランジスタ21のゲート‐ソース間の電圧値を調整できるので、充電電流I2の電流値を増減しながら制限できる。COUT2端子は、トランジスタ21のゲートに接続され、V−2端子は、抵抗25を介して、トランジスタ21のソースに接続される。
一方、放電電流制限回路36は、放電電流制限回路36に対応するセル201に放電電流I1(図示の矢印とは逆向きの電流)が流れている放電期間に放電電流I1が所定の放電電流値Idth1を超えることをトランジスタ12のオン状態を制御することにより制限する放電電流制限制御を行う。トランジスタ12は、放電電流I1が流れている放電期間に放電電流I1が放電電流値Idth1を超えることを放電電流制限回路36の放電電流制限制御により制限する放電電流制限素子である。トランジスタ12は、セル201の放電方向に流れる放電電流I1の流れを制限でき、放電電流制限回路36は、放電電流I1の流れが制限されるようにトランジスタ12をオン動作させる。
したがって、放電電流制限回路36は、放電電流I1が放電電流値Idth1に上昇して到達しても、放電電流I1が放電電流値Idth1を超えないように放電電流I1の流れを絞りながら、放電電流I1を零よりも大きな電流値で流し続けることができる。
同様に、放電電流制限回路46は、放電電流制限回路46に対応するセル202に放電電流I2(図示の矢印とは逆向きの電流)が流れている放電期間に放電電流I2が所定の放電電流値Idth2を超えることをトランジスタ22のオン状態を制御することにより制限する放電電流制限制御を行う。トランジスタ22は、放電電流I2が流れている放電期間に放電電流I2が放電電流値Idth2を超えることを放電電流制限回路46の放電電流制限制御により制限する放電電流制限素子である。トランジスタ22は、セル202の放電方向に流れる放電電流I2の流れを制限でき、放電電流制限回路46は、放電電流I2の流れが制限されるようにトランジスタ22をオン動作させる。
したがって、放電電流制限回路46は、放電電流I2が放電電流値Idth2に上昇して到達しても、放電電流I2が放電電流値Idth2を超えないように放電電流I2の流れを絞りながら、放電電流I2を零よりも大きな電流値で流し続けることができる。
なお、電源経路8に流れる放電電流I(図示の矢印とは逆向きの電流)は、セル201及び電源経路16を流れる放電電流I1と、セル202及び電源経路26を流れる放電電流I2との和である。また、放電電流値Idth1と放電電流値Idth2とは、等しい値でもよいし、異なる値でもよい。
このように、放電電流I1又はI2が所定の放電電流値で制限されることによって、セル201とセル202の容量が互いに異なっていても、両セル間で過剰な充放電電流が流れることを防止できる。そして、互いに異なる容量を有する複数のセルを並列に接続できるため、限られた実装面積を効率的に使用できる。例えば、容量が小さくなるほどセルの体積は小さくなるので、複数のセルが実装される基板に存在する隙間スペースに、それらの複数のセルのうち相対的に小さな容量を有するセルを実装できる。
また、このように、放電電流I1又はI2が所定の放電電流値で制限されることによって、セル201とセル202との接続時に両セル間の電圧差が大きくても、両セル間で過剰な充放電電流が流れることを防止できる。特に、充電電流I1又はI2が所定の充電電流値で制限される上述の機能と組み合わされることによって、両セル間で過剰な充放電電流が流れることを更に迅速に防止できる。
また、放電電流I1又はI2が所定の放電電流値で制限されることによって、電源経路8を介して負荷接続端子5に接続される負荷に対して過剰な負荷電流が流れることを防止できる。
なお、放電電流制限回路36は、保護IC90のDOUT1端子とVSS1端子又はCS1端子との間の電圧値を制御することによって、トランジスタ12のゲート‐ソース間の電圧値を調整できるので、放電電流I1の電流値を増減しながら制限できる。DOUT1端子は、トランジスタ12のゲートに接続され、VSS1端子は、抵抗13を介して、トランジスタ12のソースに接続され、CS1端子は、抵抗13を介さずに、トランジスタ12のソースに接続される。同様に、放電電流制限回路46は、保護IC90のDOUT2端子とVSS2端子又はCS2端子との間の電圧値を制御することによって、トランジスタ22のゲート‐ソース間の電圧値を調整できるので、放電電流I2の電流値を増減しながら制限できる。DOUT2端子は、トランジスタ22のゲートに接続され、VSS2端子は、抵抗23を介して、トランジスタ22のソースに接続され、CS2端子は、抵抗23を介さずに、トランジスタ22のソースに接続される。
充電電流制限回路33は、充電電流I1の検出値が充電電流値Icth1よりも小さい場合、充電電流I1が充電電流値Icth1よりも低い値まで上昇することをトランジスタ11の制御電圧を高く変更することにより許容する充電電流上昇制御を行う。逆に、充電電流制限回路33は、充電電流I1の検出値が充電電流値Icth1よりも大きい場合、充電電流I1の電流値をトランジスタ11の制御電圧を低く変更することにより低下させる充電電流低下制御を行う。トランジスタ11がMOSFETである場合、トランジスタ11の制御電圧は、トランジスタ11のゲート‐ソース間の電圧に相当する。
充電電流制限回路33は、充電電流上昇制御及び充電電流低下制御を行うことにより、充電電流I1が上昇しても、充電電流I1の電流値を充電電流値Icth1に安定的に近づけることができる。特に、充電電流制限回路33は、充電電流上昇制御及び充電電流低下制御を周期的に行うことにより、充電電流I1が上昇しても、充電電流I1の電流値を充電電流値Icth1に一層安定的に収束させることができる。
充電電流制限回路43も同様の制御を行うことにより、充電電流I2の電流値を充電電流値Icth2に安定的に近づけることができる。
放電電流制限回路36は、放電電流I1の検出値が放電電流値Idth1よりも小さい場合、放電電流I1が充電電流値Idth1よりも低い値まで上昇することをトランジスタ12の制御電圧を高く変更することにより許容する放電電流上昇制御を行う。逆に、放電電流制限回路36は、放電電流I1の検出値が放電電流値Idth1よりも大きい場合、放電電流I1の電流値をトランジスタ12の制御電圧を低く変更することにより低下させる放電電流低下制御を行う。トランジスタ12がMOSFETである場合、トランジスタ12の制御電圧は、トランジスタ12のゲート‐ソース間の電圧に相当する。
放電電流制限回路36は、放電電流上昇制御及び放電電流低下制御を行うことにより、放電電流I1が上昇しても、放電電流I1の電流値を放電電流値Idth1に安定的に近づけることができる。特に、放電電流制限回路36は、放電電流上昇制御及び放電電流低下制御を周期的に行うことにより、放電電流I1が上昇しても、放電電流I1の電流値を放電電流値Idth1に一層安定的に収束させることができる。
放電電流制限回路46も同様の制御を行うことにより、放電電流I2の電流値を放電電流値Idth2に安定的に近づけることができる。
充電電流I1の検出値又は放電電流I1の検出値は、保護IC90の電流検出回路31が保護IC90のVSS1端子とCS1端子との間の電圧を検出することによって取得できる。電流検出回路31は、例えば、抵抗13の両端電圧と抵抗13に流れる電流の向きとを測定することによって、充電電流I1の検出値又は放電電流I1の検出値を取得できる。VSS1端子は、セル接続端子17と抵抗13の一端との間における電源経路16に接続され、CS1端子は、抵抗13の他端とトランジスタ11,12との間における電源経路16に接続される。
同様に、充電電流I2の検出値又は放電電流I2の検出値は、保護IC90の電流検出回路41が保護IC90のVSS2端子とCS2端子との間の電圧を検出することによって取得できる。電流検出回路41は、例えば、抵抗23の両端電圧と抵抗23に流れる電流の向きとを測定することによって、充電電流I2の検出値又は放電電流I2の検出値を取得できる。VSS2端子は、セル接続端子27と抵抗23の一端との間における電源経路26に接続され、CS2端子は、抵抗23の他端とトランジスタ21,22との間における電源経路26に接続される。
電流検出回路31は、セル201に対して設けられた電流検出部の一例である。電流検出回路31は、VDD端子とVSS1端子又はCS1端子との間の電圧を電源電圧として動作する。同様に、電流検出回路41は、セル202に対して設けられた電流検出部の一例である。電流検出回路41は、VDD端子とVSS2端子又はCS2端子との間の電圧を電源電圧として動作する。
保護モジュール80は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられた充電過電流検出部を有する保護IC90を備えている。充電過電流検出回路32は、セル201に対して設けられた充電過電流検出部の一例であり、充電過電流検出回路42は、セル202に対して設けられた充電過電流検出部の一例である。
充電過電流検出回路32は、所定の第1の充電過電流検出閾値以上の充電電流I1の検出値を電流検出回路31から取得した場合、セル201を充電する方向の過電流(充電過電流)が検出されたと判断する。充電過電流検出回路32は、セル201の充電過電流が検出された場合、セル201に充電電流I1が流れることを禁止する。充電過電流検出回路32は、セル201に充電電流I1が流れることを禁止する場合、充電禁止信号を出力する。
充電過電流検出回路42も、充電過電流検出回路32と同様の回路である。充電過電流検出回路42は、所定の第2の充電過電流検出閾値以上の充電電流I2の検出値を電流検出回路41から取得した場合、セル202に充電電流I2が流れることを禁止する充電禁止信号を出力する。
なお、第1の充電過電流検出閾値と第2の充電過電流検出閾値は、等しい値でも異なる値でもよい。
保護モジュール80は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられた放電過電流検出部を有する保護IC90を備えている。放電過電流検出回路35は、セル201に対して設けられた放電過電流検出部の一例であり、放電過電流検出回路45は、セル202に対して設けられた放電過電流検出部の一例である。
放電過電流検出回路35は、所定の第1の放電過電流検出閾値以上の放電電流I1の検出値を電流検出回路31から取得した場合、セル201を放電する方向の過電流(放電過電流)が検出されたと判断する。放電過電流検出回路35は、セル201の放電過電流が検出された場合、セル201に放電電流I1が流れることを禁止する。放電過電流検出回路35は、セル201に放電電流I1が流れることを禁止する場合、放電禁止信号を出力する。
放電過電流検出回路45も、放電過電流検出回路35と同様の回路である。放電過電流検出回路45は、所定の第2の放電過電流検出閾値以上の放電電流I2の検出値を電流検出回路41から取得した場合、セル202に放電電流I2が流れることを禁止する放電禁止信号を出力する。
なお、第1の放電過電流検出閾値と第2の放電過電流検出閾値は、等しい値でも異なる値でもよい。
保護モジュール80は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられた過充電検出部を有する保護IC90を備えている。過充電検出回路38は、セル201に対して設けられた過充電検出部の一例であり、過充電検出回路48は、セル202に対して設けられた過充電検出部の一例である。
過充電検出回路38は、所定の第1の過充電検出閾値以上のセル電圧をセル201について検出することにより、セル201に過充電が検出されたと判断する充電過電圧検出回路である。過充電検出回路38は、セル201に過充電が検出された場合、セル201を充電することを禁止する。過充電検出回路38は、セル201を充電することを禁止した場合、充電禁止信号を出力する。
過充電検出回路48も、過充電検出回路38と同様の回路である。過充電検出回路48は、所定の第2の過充電検出閾値以上のセル電圧をセル202について検出された場合、セル202を充電することを禁止し、充電禁止信号を出力する。
なお、第1の過充電検出閾値と第2の過充電検出閾値は、等しい値でも異なる値でもよい。
保護モジュール80は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられた過放電検出部を有する保護IC90を備えている。過放電検出回路39は、セル201に対して設けられた過放電検出部の一例であり、過放電検出回路49は、セル202に対して設けられた過放電検出部の一例である。
過放電検出回路39は、所定の第1の過放電検出閾値以下のセル電圧をセル201について検出することにより、セル201に過放電が検出されたと判断する放電過電圧検出回路である。過放電検出回路39は、セル201に過放電が検出された場合、セル201を放電することを禁止する。過放電検出回路39は、セル201を放電することを禁止した場合、放電禁止信号を出力する。
過放電検出回路49も、過放電検出回路39と同様の回路である。過放電検出回路49は、所定の第2の過放電検出閾値以上のセル電圧をセル202について検出された場合、セル202を放電することを禁止する放電禁止信号を出力する。
なお、第1の過放電検出閾値と第2の過放電検出閾値は、等しい値でも異なる値でもよい。
充電制御回路34は、過充電検出回路38と充電過電流検出回路32のうち少なくとも一つの検出回路から充電禁止信号が出力されたとき、トランジスタ11をオフする。トランジスタ11のオフにより、セル201の充電電流が流れる電源経路16を遮断できるので、セル201に流れる充電電流を停止でき、セル201を過充電又は充電過電流から保護できる。同様に、充電制御回路44は、過充電検出回路48と充電過電流検出回路42のうち少なくとも一つの検出回路から充電禁止信号が出力されたとき、トランジスタ21をオフする。トランジスタ21のオフにより、セル202の充電電流が流れる電源経路26を遮断できるので、セル202に流れる充電電流を停止でき、セル202を過充電又は充電過電流から保護できる。
放電制御回路37は、過放電検出回路39と放電過電流検出回路35のうち少なくとも一つの検出回路から放電禁止信号が出力されたとき、トランジスタ12をオフする。トランジスタ12のオフにより、セル201の放電電流が流れる電源経路16を遮断できるので、セル201に流れる放電電流を停止でき、セル201を過放電又は放電過電流から保護できる。同様に、放電制御回路47は、過放電検出回路49と放電過電流検出回路45のうち少なくとも一つの検出回路から放電禁止信号が出力されたとき、トランジスタ22をオフする。トランジスタ22のオフにより、セル202の放電電流が流れる電源経路26を遮断できるので、セル202に流れる放電電流を停止でき、セル202を過放電又は放電過電流から保護できる。
充電制御回路34は、セル201とセル202との間での同極間(図示の場合、セル201の負極とセル202の負極との間)の電位差ΔV及び/又は電流I1とI2に応じて、充電電流制限回路33によって電流制限するのか充電過電流検出回路32によって電流停止するのか切り替える。充電制御回路34は、例えば、充電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが零又は零よりも大きな設定閾値Vth未満の場合、充電電流制限回路33が充電電流I1の流れを制限することを禁止し、充電過電流検出回路32が充電電流I1の流れを停止することを許可する。逆に、充電制御回路34は、例えば、充電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが設定閾値Vth以上の場合、充電電流制限回路33が充電電流I1の流れを制限することを許可し、充電過電流検出回路32が充電電流I1の流れを停止することを禁止する。
充電制御回路34は、電位差ΔVが設定閾値Vth以上であるか否かを判定することによって、セル201とセル202との間で過剰な充放電電流が流れるか否かを判断できる。充電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが設定閾値Vth以上の状態は、セル201とセル202との間で過剰な充放電電流が流れる状態である。そのような状態では、充電過電流が充電過電流検出回路32によって検出されても、充電電流制限回路33が充電電流I1の流れを制限することによって、充電電流I1を零よりも大きな電流値で流し続けることができる。逆に、充電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが設定閾値Vth未満の状態は、セル201とセル202との間で過剰な充放電電流が流れていない状態である。そのような状態では、充電過電流が充電過電流検出回路32によって検出されれば、充電電流I1の流れを停止することができる。
充電制御回路44も、電位差ΔV及び/又は電流I1とI2に応じて、充電電流制限回路43によって電流制限するのか充電過電流検出回路42によって電流停止するのか切り替える。充電制御回路44も、充電制御回路34と上記同様の回路でよいので、その詳細説明を省略するが、充電流I2について、充電制御回路34と上記同様の効果が得られる。
放電制御回路37は、電位差ΔV及び/又は電流I1とI2に応じて、放電電流制限回路36によって電流制限するのか放電過電流検出回路35によって電流停止するのか切り替える。放電制御回路37は、例えば、放電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが零又は零よりも大きな設定閾値Vth未満の場合、放電電流制限回路36が放電電流I1の流れを制限することを禁止し、放電過電流検出回路35が放電電流I1の流れを停止することを許可する。逆に、放電制御回路37は、例えば、放電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが設定閾値Vth以上の場合、放電電流制限回路36が放電電流I1の流れを制限することを許可し、放電過電流検出回路35が放電電流I1の流れを停止することを禁止する。
放電制御回路37は、電位差ΔVが設定閾値Vth以上であるか否かを判定することによって、セル201とセル202との間で過剰な充放電電流が流れるか否かを判断できる。放電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが設定閾値Vth以上の状態は、セル201とセル202との間で過剰な充放電電流が流れる状態である。そのような状態では、放電過電流が放電過電流検出回路35によって検出されても、放電電流制限回路36が放電電流I1の流れを制限することによって、放電電流I1を零よりも大きな電流値で流し続けることができる。逆に、放電方向を正の方向としたときの電位差ΔVが設定閾値Vth未満の状態は、セル201とセル202との間で過剰な充放電電流が流れていない状態である。そのような状態では、放電過電流が放電過電流検出回路35によって検出されれば、放電電流I1の流れを停止することができる。
放電制御回路47も、電位差ΔV及び/又は電流I1とI2に応じて、放電電流制限回路46によって電流制限するのか放電過電流検出回路45によって電流停止するのか切り替える。放電制御回路47も、放電制御回路37と上記同様の回路でよいので、その詳細説明を省略するが、放電流I2について、放電制御回路37と上記同様の効果が得られる。
なお、電位差ΔVは、VSS1端子とVSS2端子との間の電圧(又は、セル接続端子17とセル接続端子27との間の電圧)が検出されることによって取得できる。また、電流I1は、抵抗13の両端電圧が検出されることによって取得でき、電流I2は、抵抗23の両端電圧が検出されることによって取得できる。
充電過電流検出回路32と充電電流制限回路33は互いに並列に接続され、電流検出回路31から供給される電流検出値は、充電過電流検出回路32と充電電流制限回路33のそれぞれに入力される。
充電過電流検出回路32は、例えば、電流検出回路31から供給される充電電流I1の検出値が所定の第1の充電過電流検出閾値以上であるか否かを判定するためのコンパレータ32aを有する。充電過電流検出回路32は、充電電流I1の検出値が所定の第1の充電過電流検出閾値以上であるとコンパレータ32aによって判断された場合、セル201に充電電流I1が流れることを禁止する充電禁止信号を充電制御回路34に対して出力する。
充電電流制限回路33は、例えば、電流検出回路31から供給される充電電流I1の検出値が充電電流値Icth1よりも小さいか大きいかを判定するためのコンパレータ33aを有する。充電電流制限回路33は、コンパレータ33aによって判定された充電電流I1の検出値と充電電流値Icth1との大小関係に応じて、トランジスタ11に入力される制御電圧値を調整するためのアナログ調整信号を充電制御回路34に対して出力する。
同様に、充電過電流検出回路42と充電電流制限回路43は互いに並列に接続され、電流検出回路41から供給される電流検出値は、充電過電流検出回路42と充電電流制限回路43のそれぞれに入力される。充電過電流検出回路42と充電電流制限回路43が、それぞれ、コンパレータを有しコンパレータの判断結果に応じたアナログ調整信号を出力する点については、充電過電流検出回路32及び充電電流制限回路33の場合と同様であるため、説明を省略する。放電過電流検出回路35及び放電電流制限回路36の場合、放電過電流検出回路45及び放電電流制限回路46の場合についても同様であるため、説明を省略する。
図2は、充電電流制限回路33で行われる電池保護方法に含まれる各制御工程の流れを示した状態遷移図である。S0〜S6は、充電電流制限回路33の制御状態を表す。なお、充電電流制限回路43と放電電流制限回路36と放電電流制限回路46で行われる電池保護方法も、図2と同じ流れである。そのため、以下では、代表して充電電流制限回路33の動作について説明し、その他の制御回路の動作についての説明は省略又は簡略する。
VGS1は、トランジスタ11のゲート−ソース間電圧(ゲート電圧)を表す。V1〜V6は、ゲート電圧VGS1の電圧値を表し、すべて、トランジスタ11のオン閾値以上の電圧値である。つまり、状態S1乃至S6では、トランジスタ11がオンしていることにより充電電流I1が流れている状態である。ゲート電圧VGS1の電圧値は、「0<V1<V2<V3<V4<V5<V6」の関係が成立する。
閾値Ithは、上述の充電電流値Icth1に相当する。充電電流制限回路33は、充電電流I1が閾値Ithよりも小さい場合(I1<Ith)、充電電流I1は正常値であると判定する。一方、充電電流制限回路33は、充電電流I1が閾値Ithよりも大きい場合(I1>Ith)、充電電流I1が過大な充電電流であると判定する。
まず、充電電流制限回路33は、充電電流制限回路33の電源投入時の初期状態(状態S0)では、トランジスタ11がオフの状態から始まるように、トランジスタ11のゲート電圧値を零に設定する。これにより、電源投入時にセル201に過大な充電電流I1が流れることを防止できる。
充電電流制限回路33は、トランジスタ11をオンして充電電流I1がセル201に流れることを許容するため、ゲート電圧値をV1に設定する。ゲート電圧値V1がトランジスタ11のオン閾値よりも僅かに大きな値であることによって、トランジスタ11をハーフオンさせることができる。これにより、充電電流I1の電流値を絞ってトランジスタ11に流すことができる。
充電電流制限回路33は、トランジスタ11のゲート電圧を段階的に上げる毎に又は下げる毎に、充電電流I1の検出値が充電電流値Ithよりも小さいか否かを判定することを繰り返す。
充電電流制限回路33は、充電電流I1の検出値が充電電流値Ithよりも小さいと判定した場合、充電電流I1が充電電流値Ithよりも低い値まで上昇することをトランジスタ11のゲート電圧を高く変更することにより許容する充電電流上昇制御を行う。トランジスタ11のゲート電圧を高く変更することによって、充電電流I1の許容上限値を引き上げることができる。充電電流I1の許容上限値とは、充電電流I1がとりうる最大の電流値である。
一方、充電電流制限回路33は、充電電流I1の検出値が充電電流値Ithよりも大きいと判定した場合、充電電流I1の電流値をトランジスタ11のゲート電圧を低く変更することにより低下させる充電電流低下制御を行う。トランジスタ11のゲート電圧を低く変更することによって、充電電流I1の許容上限値を引き下げることができる。
このような制御を繰り返すことにより、充電電流I1が過剰に増加しようとしても、充電電流I1を充電電流値Ith付近で流し続けることができる。
例えば、充電電流制限回路33は、状態S1において、充電電流I1の検出値が所定の充電電流値Ithよりも小さいか否かを判定する。充電電流制限回路33は、充電電流I1の検出値が充電電流値Ithよりも小さい場合、トランジスタ11のゲート電圧値をV1からV2に大きくする(S1からS2に遷移)。電圧値V2は、電圧値V1よりも僅かに大きな値である。これにより、トランジスタ11が流すことが可能な電流値が僅かに上昇するため、充電電流I1の許容上限値を引き上げることができる。充電電流制限回路33は、状態S2において、トランジスタ11をハーフオンさせることにより、充電電流I1の電流値を絞ってトランジスタ11に流すことができる。
充電電流制限回路33は、状態S2において、充電電流I1の検出値が所定の充電電流値Ithよりも小さいか否かを判定する。
充電電流制限回路33は、状態S2において、充電電流I1の検出値が充電電流値Ithよりも小さい場合、トランジスタ11のゲート電圧値をV2からV3に大きくする(S2からS3に遷移)。電圧値V3は、電圧値V2よりも僅かに大きな値である。これにより、トランジスタ11が流すことが可能な電流値が僅かに上昇するため、充電電流I1の許容上限値を更に引き上げることができる。充電電流制限回路33は、状態S3において、トランジスタ11をハーフオンさせることにより、充電電流I1の電流値を絞ってトランジスタ11に流すことができる。
充電電流制限回路33は、充電電流I1の許容上限値を各状態でトランジスタ11により徐々に引き上げても、充電電流I1の検出値が充電電流値Ithよりも小さいと状態S5で判定した場合、充電電流I1の許容上限値の引き上げ幅をトランジスタ11により大きくする。例えば、充電電流制限回路33は、トランジスタ11のゲート電圧をトランジスタ11のオン閾値よりも所定値以上大きくすることにより、充電電流I1の許容上限値の引き上げ幅を大きくする。充電電流制限回路33は、例えば、トランジスタ11のゲート電圧のS5からS6までの引き上げ幅を、トランジスタ11のゲート電圧のそれまでの引き上げ幅(例えば、S4からS5までの引き上げ幅)よりも大きくする。これにより、トランジスタ11がフルオンするため、トランジスタ11のオン抵抗が下がり、トランジスタ11の発熱上昇を抑えることができる。
逆に、充電電流制限回路33は、充電電流I1の許容上限値を各状態でトランジスタ11により徐々に引き下げても、充電電流I1の検出値が充電電流値Ithよりも大きいと状態S1で判定した場合、充電電流I1の許容上限値の引き下げ幅をトランジスタ11により大きくする。例えば、充電電流制限回路33は、トランジスタ11のゲート電圧をトランジスタ11のオン閾値よりも所定値以上小さくすることにより、充電電流I1の許容上限値の引き下げ幅を大きくする。充電電流制限回路33は、例えば、トランジスタ11のゲート電圧のS1からS0までの引き下げ幅を、トランジスタ11のゲート電圧のそれまでの引き下げ幅(例えば、S3からS2までの引き下げ幅)よりも大きくする。これにより、トランジスタ11がオフするため、セル201に過剰な充電電流I1が流れ続くことを防止できる。
なお、充電電流制限回路33,43及び放電電流制限回路36,46の4つの制限回路は、上記同様の制御を互いに独立に行う。例えば、放電電流制限回路46も、トランジスタ22のゲート電圧を上げる毎に又は下げる毎に、放電電流I2の検出値が放電電流値Ithよりも小さいか否かを判定することを繰り返す。
放電電流制限回路46は、放電電流I2の検出値が放電電流値Ithよりも小さいと判定した場合、放電電流I2が放電電流値Ithよりも低い値まで上昇することをトランジスタ22のゲート電圧を高く変更することにより許容する放電電流上昇制御を行う。トランジスタ22のゲート電圧を高く変更することによって、放電電流I2の許容上限値を引き上げることができる。放電電流I2の許容上限値とは、放電電流I2がとりうる最大の電流値である。
一方、放電電流制限回路46は、放電電流I2の検出値が放電電流値Ithよりも大きいと判定した場合、放電電流I2の電流値をトランジスタ22のゲート電圧を低く変更することにより低下させる放電電流低下制御を行う。トランジスタ22のゲート電圧を低く変更することによって、放電電流I2の許容上限値を引き下げることができる。
このような制御を繰り返すことにより、放電電流I2が過剰に増加しようとしても、放電電流I2を放電電流値Ith付近で流し続けることができる。
例えば、放電電流制限回路46は、状態S1において、放電電流I2の検出値が所定の放電電流値Ithよりも小さいか否かを判定する。放電電流制限回路46は、放電電流I2の検出値が放電電流値Ithよりも小さい場合、トランジスタ22のゲート電圧値をV1からV2に大きくする(S1からS2に遷移)。電圧値V2は、電圧値V1よりも僅かに大きな値である。これにより、トランジスタ22が流すことが可能な電流値が僅かに上昇するため、放電電流I2の許容上限値を引き上げることができる。放電電流制限回路46は、状態S2において、トランジスタ22をハーフオンさせることにより、放電電流I2の電流値を絞ってトランジスタ22に流すことができる。
また、上記同様、放電電流制限回路46は、放電電流I2の許容上限値を各状態でトランジスタ22により徐々に引き上げても、放電電流I2の検出値が放電電流値Ithよりも小さいと状態S5で判定した場合、放電電流I2の許容上限値の引き上げ幅をトランジスタ22により大きくする。例えば、放電電流制限回路46は、トランジスタ22のゲート電圧をトランジスタ22のオン閾値よりも所定値以上大きくすることにより、放電電流I2の許容上限値の引き上げ幅を大きくする。放電電流制限回路46は、例えば、トランジスタ22のゲート電圧のS5からS6までの引き上げ幅を、トランジスタ22のゲート電圧のそれまでの引き上げ幅(例えば、S4からS5までの引き上げ幅)よりも大きくする。これにより、トランジスタ22がフルオンするため、トランジスタ22のオン抵抗が下がり、トランジスタ22の発熱上昇を抑えることができる。
逆に、放電電流制限回路46は、放電電流I2の許容上限値を各状態でトランジスタ22により徐々に引き下げても、放電電流I2の検出値が放電電流値Ithよりも大きいと状態S1で判定した場合、放電電流I2の許容上限値の引き下げ幅をトランジスタ22により大きくする。例えば、放電電流制限回路46は、トランジスタ22のゲート電圧をトランジスタ22のオン閾値よりも所定値以上小さくすることにより、放電電流I2の許容上限値の引き下げ幅を大きくする。放電電流制限回路46は、例えば、トランジスタ22のゲート電圧のS1からS0までの引き下げ幅を、トランジスタ22のゲート電圧のそれまでの引き下げ幅(例えば、S3からS2までの引き下げ幅)よりも大きくする。これにより、トランジスタ22がオフするため、セル202に過剰な放電電流I2が流れ続くことを防止できる。
充電電流制限回路43及び放電電流制限回路36の動作も同様である。
図3は、本発明の他の実施形態である電池パック101の第1の構成例を示した図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は省略又は簡略する。電池パック101は、保護モジュール81を備えている。
保護モジュール81は、セルが複数並列に接続された二次電池を保護する電池保護装置の一例である。保護モジュール81は、保護制御部を有する保護IC91を備えている。保護制御部は、二次電池に構成された複数のセルそれぞれに対して設けられ、対応するセルの保護を制御する。保護制御回路50は、セル201に対して設けられ、セル201の保護を制御する保護制御部の一例であり、保護制御回路60は、セル202に対して設けられ、セル202の保護を制御する保護制御部の一例である。
保護制御回路50は、電流検出回路51と、充電電流制限回路53と、充電制御回路54と、放電電流制限回路56と、放電制御回路57と、過充電検出回路58と、過放電検出回路59とを備えている。保護制御回路60は、電流検出回路61と、充電電流制限回路63と、充電制御回路64と、放電電流制限回路66と、放電制御回路67と、過充電検出回路68と、過放電検出回路69とを備えている。
電流検出回路51,充電制御回路54、放電制御回路57、過充電検出回路58、過放電検出回路59は、それぞれ、図1における、電流検出回路31、充電制御回路34、放電制御回路37、過充電検出回路38、過放電検出回路39と同様の回路である。電流検出回路61,充電制御回路64、放電制御回路67、過充電検出回路68、過放電検出回路69は、それぞれ、図1における、電流検出回路41、充電制御回路44、放電制御回路47、過充電検出回路48、過放電検出回路49と同様の回路である。
充電電流制限回路53は、図1における充電電流制限回路33の電流制限機能と充電過電流検出回路32の電流停止機能とを含んだ回路である。充電電流制限回路63は、図1における充電電流制限回路43の電流制限機能と充電過電流検出回路42の電流停止機能とを含んだ回路である。放電電流制限回路56は、図1における放電電流制限回路36の電流制限機能と放電過電流検出回路35の電流停止機能とを含んだ回路である。放電電流制限回路66は、図1における放電電流制限回路46の電流制限機能と放電過電流検出回路45の電流停止機能とを含んだ回路である。
充電電流制限回路53の電流制限機能と電流停止機能は、電流検出回路51によって取得された充電電流I1又は放電電流I1の検出値を共用する。これにより、充電電流I1又は放電電流I1の検出値が入力されるコンパレータを、両機能で共通化できる。充電電流制限回路53は、セル201と202との間での同極間の電位差ΔV及び/又は電流I1とI2に応じて、電流制限機能と電流停止機能のうち一方の機能が作動することを許可し他方の機能が作動することを禁止する。
充電電流制限回路63、放電電流制限回路56及び放電電流制限回路66も、充電電流制限回路53と同様の機能を有するので、充電電流制限回路53と同様の効果が得られる。
図4は、本発明の他の実施形態である電池パック101の第2の構成例を示した図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は省略又は簡略する。
図4において、充電過電流検出回路52,62は、夫々、図1における充電過電流検出回路32,42の電流停止機能を含んだ回路であり、充電電流制限回路53,63は、夫々、図1における充電電流制限回路33,43の電流制限機能を含んだ回路である。同様に、放電過電流検出回路55,65は、夫々、図1における放電過電流検出回路35,45の電流停止機能を含んだ回路であり、放電電流制限回路56,66は、夫々、図1における放電電流制限回路36,46の電流制限機能を含んだ回路である。
充電電流制限回路53と充電過電流検出回路52とは直列に接続されている。図4の場合、電流検出回路51から供給される電流検出値は、充電電流制限回路53を経由して、充電過電流検出回路52に入力され、充電電流制限回路53の出力が、充電過電流検出回路52に入力される。
充電電流制限回路53は、例えば、アナログスイッチ71を介して、トランジスタ11に入力される制御電圧値を調整するためのアナログ調整信号を充電制御回路54に対して出力する。アナログスイッチ71は、充電過電流検出回路52から出力される信号に従って、オンオフ制御される。
充電過電流検出回路52は、充電過電流が検出されていない場合、アナログスイッチ71をオンすることによって、充電電流制限回路53がアナログ調整信号を充電制御回路54に対して出力することを許可する。充電制御回路54は、充電電流制限回路53によって電流制限することが許可されている場合、アナログ調整信号に従ってトランジスタ11のオン状態を制御する。
一方、充電過電流検出回路52は、充電過電流が検出された場合、アナログスイッチ71をオフすることによって、充電電流制限回路53がアナログ調整信号を充電制御回路54に対して出力することを禁止する。充電過電流検出回路52は、充電過電流が検出された場合、セル201に充電電流I1が流れることを禁止する充電禁止信号を充電制御回路54に対して出力する。充電制御回路54は、充電禁止信号が出力されたとき、トランジスタ11をオフする。
充電電流制限回路63と充電過電流検出回路62との直列構成、アナログスイッチ73及び充電制御回路64も、充電電流制限回路53及び充電過電流検出回路52との直列構成、アナログスイッチ71及び充電制御回路54と同様の機能を有する。放電電流制限回路56と放電過電流検出回路55との直列構成、アナログスイッチ72及び放電制御回路57も、充電電流制限回路53及び充電過電流検出回路52との直列構成、アナログスイッチ71及び充電制御回路54と同様の機能を有する。放電電流制限回路66と放電過電流検出回路65との直列構成、アナログスイッチ74及び放電制御回路67も、充電電流制限回路53及び充電過電流検出回路52との直列構成、アナログスイッチ71及び充電制御回路54と同様の機能を有する。そのため、これらの説明については省略する。
以上、電池保護回路、電池保護装置及び電池パック、並びに電池保護方法を実施形態例により説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではない。他の実施形態例の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
例えば、二次電池200に構成されるセルの並列数が2つの場合を例示したが、3つ以上の場合も同様に考えることができる。また、トランジスタ11とトランジスタ12は、図示の配置位置を互いに置換してもよい。また、トランジスタ21とトランジスタ22は、図示の配置位置を互いに置換してもよい。
また、充電制御用トランジスタ11,21及び放電制御用トランジスタ12,22、並びに抵抗13,23が負側の電源経路16,26に挿入されている場合を例示した。しかしながら、充電制御用トランジスタ11,21及び放電制御用トランジスタ12,22、並びに抵抗13,23が正側の電源経路8に挿入されてもよい。
また、二次電池に構成される各セルは、単数のセルでもよいし、複数のセルが直列又は並列に接続されて構成されたセルでもよい。また、各セルの容量は、互いに同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
また、充電電流を制限する素子及び放電電流を制限する素子は、Nチャネル型のMOSFETに限らず、他の形態の素子でもよい。例えば、Pチャネル型のMOSFET,バイポーラトランジスタ、フォトカプラ、センサなどでもよい。
また、保護IC90又は保護モジュール80は、電池パックに内蔵されない構成であってよく、二次電池からの電力供給を受ける電子機器等の電気負荷に取り付けられる構成であってよい。