以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
図1は、ラベル装着装置を示す上面図である。図2は、同ラベル装着装置の正面図である。図3は、同ラベル装着装置の右側面図である。図4は、ラベル装着装置で用いられる筒状のラベルLを示す斜視図である。図5は、図4におけるラベルLのシール部のE−E線断面図である。
図1に示すように、ラベル装着装置10は、ボトル供給部12、ラベル供給部13、ラベル受渡部14、ロータリー型のラベル装着部15及びボトル搬出部16を備える。図1において、ラベル装着部15を基準に見ると、正面視(図1の下側から上側を見る方向)でボトル供給部12はラベル装着部15の手前右側に配置され、ボトル搬出部16はラベル装着部15の手前左側に配置されている。また、ラベル供給部13は、ラベル装着部15の左側奥に配置されている。
ラベル装着装置10は、ラベル装着部15でPET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂からなる多数のボトルタイプの容器B(以下、「ボトルB」という。)を搬送しながら、各ボトルBの胴部にストレッチフィルムからなる筒状のラベルLを連続的に装着する処理を行う。ラベル装着部15では、ボトルBの上方位置でラベルLを筒状に開いた後、ボトルBを上昇させてそのボトルBの胴部にラベルLを装着する処理が行われる。
図4に示すように、ラベルLは、長方形状で帯状のフィルム基材Fの両端部を所定幅で重ねあわせて接合されて筒状体をなしている。フィルム基材Fは、例えば、密度が0.880〜0.930g/cm3である線状低密度ポリエチレンを主成分として構成される。
ラベルLは、ラベル供給部13において、長手方向に所定ピッチで繰り返し同じ印刷(絵柄や文字等)が施され、筒状に整形されたストレッチフィルムをシート状に折り畳んで帯状にしたラベル基材を所定長さに切断して形成されるものである。ラベル基材に用いられストレッチフィルムは、伸縮性の良いフィルムで、例えば、厚さ10μm〜100μmで周方向の伸張倍率が1.40倍〜1.60倍の自己伸縮性フィルムである。
ラベルLは、フィルム基材Fの端縁同士を重ね合わせて接合した部分であるシール部Sを有する。シール部Sは、周方向に例えば0.2〜10mm、好ましくは0.3〜5mm、より好ましくは0.4〜2mm程度の幅を有して軸方向に沿って延びている。シール部Sは、図2(a)に示すように、フィルム基材Fの一方端部F1の外面と他方端部F2の内面とを圧接させて例えばヒートシールすることにより接合されている。このような接合形態を所謂「封筒貼り」という。
ただし、ラベルLの接合形態はこれに限定されるものではなく、図5(b)に示すように、フィルム基材Fの両端部F1,F2の内面同士を所定幅で重ね合わせて接合する所謂「合掌貼り」で構成してもよい。この場合、シール部Sは、径方向外側(または内側)に突出して形成されることになる。また、シール部Sは、ヒートシールによる接合に限定されるものではなく、図示しない接着剤層を介して接合されてもよい。
図1〜図3を再び参照すると、ラベル装着装置10のボトル供給部12は、多数のボトルBを所定の間隔で連続的にラベル装着部15に供給する。ボトル供給部12は、ベルトコンベア121、図示省略のスクリュー及びスターホイール122を有する。ベルトコンベア121は多数のボトルBを一列に並べてラベル装着部15側に搬送する(図1では右側から左側への搬送)。スクリューはベルトコンベア121で搬送されたボトルBの間隔をスターホイール122のボトル受取間隔に調整する。スターホイール122は、図1において時計回りに回転してスクリューで搬送される各ボトルBを受け取り、ラベル装着部15のボトルBの受取タイミングに同期してボトル供給位置γに搬送し、各ボトルBをラベル装着部15に受け渡す。
ラベル供給部13は、ボトル供給部12がラベル装着部15にボトルBを供給する周期(以下、「ボトル供給周期」という。)と同一の周期でラベルLを生成し、ラベル受渡部14に供給する。具体的には、ラベル供給部13は、シート状に折り畳まれたラベル基材をボトル供給周期で間欠的に所定のラベル基材切断位置に搬送し、そのラベル基材の各ラベルL間に設けられたカットマークに応じて切断することにより個々のラベルLを生成し、そのラベルLをラベル受渡部14に搬送する処理を行う。
ラベル供給部13は、回転刃を自転させながらラベル基材切断位置を通る所定の円軌道上で公転させ、ラベル基材切断位置で回転刃をラベル基材に対して横方向に移動させてラベル基材を切断することによりラベルLを生成する。回転刃の公転周期に相当するラベルLの生成周期は、上述したボトル供給周期と同一である。したがって、ラベル供給部13は、ボトル供給周期と同一の周期でラベルLを生成し、そのラベルLを第1のラベル受渡位置α(図1,図2参照)に搬送する。
ラベル受渡部14は、ラベル供給部13から供給される各ラベルLをラベル供給部13の第1のラベル受渡位置αで受け取り、ラベル装着部15の第2のラベル受渡位置βに搬送し、ラベル装着部15に渡す。ラベル受渡部14は、回転軸141から放射状に突設された複数のテイクアップ部材142を有する。テイクアップ部材142は、櫛歯状のラベル受取面を有し(図2参照)、そのラベル受取面には吸引孔が設けられている。複数のテイクアップ部材142は、図1において時計回りに回転し、第1のラベル受渡位置αでラベル供給部13から鉛直方向(図1では紙面に垂直な方向)に搬送されるラベルLをラベル受取面で受け取り、吸着によりそのラベルLを保持して第2のラベル受渡位置βまで搬送する。
ラベル装着部15は、ボトル供給部12から所定の間隔で供給される多数のボトルBをボトル供給位置γで受け取り、各ボトルBを所定の円軌道上で搬送しながらラベル供給部13から供給されるラベルLを各ボトルBに装着する。ボトル搬出部16は、ラベル装着部15でラベルLが装着されたボトルB(ラベル付きボトルB)をボトル搬出位置δで受け取り、後工程に搬出する。
ボトル搬出部16は、ベルトコンベア161とスターホイール162を有する。スターホイール162は、図1において時計回りに回転し、ボトル搬出位置δでラベル装着部15のボトルBの受渡タイミングに同期してラベル付きボトルBを受け取り、ベルトコンベア161まで搬送する。スターホイール162で搬送された各ラベル付きボトルBは、ベルトコンベア161に載置され、そのベルトコンベア161によって後工程に搬送される。なお、ボトル搬出部16のベルトコンベア161は、ボトル供給部12のベルトコンベア121と連続的につながったものであってもよいし、分離した別個のものであってもよい。
ラベル装着部15は、主軸151の周りを反時計回りに回転する環状の支持盤152を備える。この支持盤152には周縁に沿って24個のボトルBを保持するボトル保持部80が等間隔DBで設けられている。また、各ボトル保持部80の上部に、ラベル受渡部14からシート状に折り畳まれたラベルLを受け取り、当該ラベルLを筒状に開く処理とボトルBを上昇させて当該ラベルLを装着させた当該ボトルBをボトル搬出位置δに搬送する処理とを行うラベル装着ヘッド70(図2,図3参照)が設けられている。
図1において、支持盤152の中心から下方向の位置を回転基準位置Nとして、反時計回りに角度を取るとすると、およそ+17°の位置にボトル供給位置γが設けられ、およそ+245°の位置に第2のラベル受渡位置βが設けられ、およそ−17°の位置にボトル搬出位置δが設けられている。
なお、後述するように、ラベル装着部15はボトル供給位置γで受け取ったボトルBをラベル受渡位置βまで搬送する間に上昇させてラベル装着ヘッド(ラベル付き容器製造装置)70に設けられているボトル持上部90(図2参照)に引き渡し、ボトル持上部90によってボトル搬出位置δまで搬送する動作をする。このため、高さ方向におけるボトル搬出位置δは、図2に示すように、ボトル供給位置γ(支持盤152の設けられている高さ位置と略同じ)よりも高い位置に設けられている。
支持盤152の各ボトル保持部80には保持したボトルBを上昇させるボトル昇降機構が設けられている。ボトル昇降機構は、図6に示すように、所定長の棒状のボトル昇降軸82と、ボトル昇降軸82の下端に設けられ、円筒状のカム板154(図2,図3参照)のカム溝154Aに嵌め込まれたカムフォロア83とで構成される。ボトル昇降軸82は支持盤152のボトル保持部80に設けられた貫通孔に回動自在に取り付けられた軸受85によって上下動可能に支持されている。ボトル昇降軸82の上端にボトルBを載置する円盤状のボトル載置台84が固着されている。
円筒状のカム板154は、支持盤152の周縁部の下側に配置されている(図2,図3参照)。カム板154には、図11に示すライン(IV)の軌跡を有するカム溝154Aが形成されている。カム板154は固定されているので、カム溝154Aの高さは、図1で反時計回りにボトル供給位置γからラベル受渡位置βに至る区間で略台形状の山形に変化し、ラベル受渡位置βからボトル供給位置γに戻る区間は最も低い位置(最下位の位置)で一定となっている。
図1において、支持盤152が反時計回りに回転すると、カムフォロア83はカム溝154Aに沿って図11に示すライン(IV)の軌跡を描くように移動する。これにより、カムフォロア83は、ボトル供給位置γからラベル受渡位置βまで移動する間に1回だけ山形に上下動を行った後、最下位の位置を維持してボトル供給位置γまで戻る動作を繰り返す。図6(a)はカムフォロア83の高さが最も高い位置(最上位の位置)に上昇したときの状態を示し、図6(b)はカムフォロア83の高さが最下位の位置に戻ったときの状態を示している。カムフォロア83が上昇する最上位の位置、すなわち、ボトルBを上昇させる位置は、ボトルBを筒状に開口したラベルLに下側から入り込ませて当該ラベルLをボトルBの胴部の所定の位置に装着させる位置である。
支持盤152の各ボトル保持部80にはボトル供給部12からボトルBを立った状態で受け取り、その状態を保持するためにボトルガイド86が設けられている。図6に示すように、一方のガイド部材86a(以下、「固定ガイド86a」という。)は支持盤152に固定され、他方のガイド部材86b(以下、「可動ガイド86b」という。)はボトル昇降軸82を支持する軸受85の上面に延設された支持部材85aの先端部に固定されている。軸受85の下端部には揺動レバー87が取り付けられ、その揺動レバー87の先端にカムフォロア88が設けられている。
カムフォロア88は、ボトル保持部80がボトル供給位置γを通過する際、図示省略のカム面に当接して支持部材85aに揺動動作をさせる。これにより、可動ガイド86bが固定ガイド86aに対して接離する方向に移動してボトルガイド86が開閉動作を行う。具体的には可動ガイド86bは、ボトル供給位置γでボトル供給部12からボトルBが渡されるタイミングで外側に移動して(ボトルガイド86を開いて)スターホイール122から供給されるボトルBをボトル載置台84上に受け入れ、ボトルBがボトル載置台84に載置されるタイミングで内側に移動して(ボトルガイド86を閉じて)当該ボトルBを保持する。
ラベル装着ヘッド70は、主軸151を中心とした同心円上に一定間隔で多数取り付けられている。ラベル装着ヘッド70は、ラベル受取部28、ラベル拡開部30及びボトル持上部90を有する。ラベル受取部28は、第2のラベル受渡位置βでラベル受渡部14からシート状に折り畳まれたラベルLを受け取り、そのラベルLを予備的に筒状に開く。ラベル拡開部30は径方向に移動可能な6本の拡径爪50(図7参照)を有し、ボトル昇降軸82によって上昇するボトルBがラベルLの開口部を通り抜けられるように、ラベル受取部28で予備的に開口されたラベルLを拡径爪50により当該ラベルの伸縮性に抗して更にボトルBの外径より大きいサイズに押し広げる機能を有する。ラベル拡開部30の構造については後に詳述する。
ラベル受取部28は、ラベルLを受け取る開閉可能な一対のクランプ部材28a(図2,図3参照)と、その一対のクランプ部材28aに開閉動作を行わせる開閉駆動部材(図示省略)と、クランプ部材28aにラベルLを吸着させる吸引部材(図示省略)とを有する。クランプ部材28aは、テイクアップ部材142と同様に、櫛歯状のラベル受取面を有し、そのラベル受取面には吸引孔が設けられている。ラベル受取部28は、一対のクランプ部材28aを開いた状態で第2のラベル受渡位置βを水平方向に移動し、一方のクランプ部材28aのラベル受取面がラベル受渡部14のテイクアップ部材142と交差して当該テイクアップ部材142のラベル受取面で保持されているラベルLを受け取る。
ラベル受取部28は、ラベルLを受け取ると、一旦クランプ部材28aを閉じる動作をする。そして、両クランプ部材28aの吸引孔によってラベルLの表裏両面を吸着した後、開く動作をすることによりシート状に折り畳まれたラベルLを予備的に略舟形状に開く(図11の(j)〜(m)のクランプ部材28a参照)。
図7は、ラベル装着ヘッド70におけるラベル拡開部30を示す斜視図である。このラベル拡開部30の上方に上記ラベル受取部28が設けられ、ラベル拡開部30の下方に上記ボトル保持部80が設けられる。また、ラベル受取部28の上方に上記ボトル持上部90が設けられている。
ラベル拡開部30は、ラベル装着ヘッド70において固定的に設けられた基部32と、基部32の上に設けられたカム板34と、カム板34の上に設けられた上板36と、上板36に配置された複数の拡径爪50を含んで構成される。基部32とカム板34と上板36は、いずれも中心部に円形の開口部38を有する円環状部材である。この開口部38は、その中をラベルLが装着される対象容器であるボトルBが上昇して通るための貫通部である。
基部32は、ラベル装着ヘッド70をラベル装着装置10に取り付ける部材である。カム板34は、カム溝40が設けられる円環部材である。カム板34は図示されていない駆動装置で正回転および逆回転される。カム板34に設けられるカム溝40は、拡径爪50を上板36の径方向に移動させるための溝である。カム溝40は、各拡径爪50のそれぞれに1つずつ設けられる。
上板36は、予め定めた個数の複数本の拡径爪50を周方向に配置する円環状部材である。図7の例では、6本の拡径爪50が用いられているので、拡径爪50が周方向に60度の等間隔で放射状に配置される。このように、上板36は、拡径爪50を放射状に配置する基台に相当する。拡径爪50の配置には、上板36に径方向に沿って放射状に設けられるガイド溝42が用いられる。上板36はカム板34と異なり回転せず、基部32に対して固定されている。なお、拡径爪50の本数は、6本に限定されるものではなく、例えば8本等の他の本数であってもよい。
拡径爪50は、スライド部52と、爪部54と、スライド部52に設けられるカムピン56とを含んで構成される。
スライド部52は、上板36のガイド溝42に支持された状態で上板36の径方向に移動可能な案内部材である。スライド部52は1つの部材であってもよいし、複数の部材を組み合わせたものであってもよい。爪部54は、スライド部52の一方側端部から軸方向に沿って長く延びる軸部材である。ここで軸方向とは、ラベル拡開部30の開口部38の中心軸に平行な方向であり、後述するように複数の拡径爪50によって拡径されるラベルLの軸方向に一致する。
図7に示す例では、各爪部54の爪長手方向は、それぞれ上下方向または鉛直方向に沿って延びている。また、爪部54は、スライド部52と一体化される。一体化には、同一部材をL字型に加工して、爪部54とスライド部52としてもよく、別部材で爪部54とスライド部52を作って、これらを組み立てて一体化してもよい。
カムピン56は、スライド部52の下部に突き出て、カム板34のカム溝40に嵌り込むピンである。カムピン56は、スライド部52を貫通するピンとすることができる。その場合には、スライド部52の上部にもカムピン56の頭部が現れる。図7では、スライド部52の上部にカムピン56の頭部が示されている。
上記のように構成される拡径爪50は、カム板34が回転すると、カム溝40の軌跡に沿ってカムピン56が駆動される。カムピン56が配置されるスライド部52は、上板36の径方向にのみ移動可能にガイド溝42に案内されるので、カム板34が回転するとスライド部52が上板36の径方向に移動する。爪部54はスライド部52と一体であるので、結局、カム板34が回転すると、拡径爪50の爪部54が上板36の径方向に移動することになる。
カム板34が正回転するときに、拡径爪50が上板36の外径側に移動するとすれば、カム板34が逆回転のときは、正回転と逆方向に、すなわち上板36の内径側に拡径爪50が移動する。このように、カム板34の回転方向を変えることで、拡径爪50を上板36の外径側または内径側に移動させることができる。
そこで、ラベルLを拡径するためにラベルLを受け取るときは、拡径爪50を内径側に移動させ、ラベルLを径方向に引き伸ばしてその中にボトルBを挿入させるときは、拡径爪50を外径側に移動させる。前者の拡径爪50の位置を縮径位置、後者の拡径爪50の位置を拡径位置ということにする。したがって、拡径爪50は、ラベルLを受け取る縮径した縮径位置と、ラベルLを引き伸ばす拡径した拡径位置との間で、上板36の径方向に移動可能である。
また、カム板34のカム溝40の平面形状を異ならせることによって、ラベル拡径動作時の各拡径爪50の動作を異なるように設定することで、ラベルLのシール部Sを特定の拡径爪50に対して位置決めできるようにしている。その詳細については後述する。
本実施形態では、6本の拡径爪50のうち1本が特定拡径爪50Aとされている。特定拡径爪50Aは、ラベルLの拡径時にシール部Sの内面領域3に沿って接触した状態でラベルLを拡径させるものである。以下において、必要に応じて特定拡径爪50Aとそれ以外の拡径爪50Bとを区別する。また、爪部についても同様に、必要に応じて特定拡径爪50Aの爪部54Aとそれ以外の拡径爪50Bの爪部54Bと区別することにする。
図8は、図7における複数の拡径爪50のうち筒状ラベルLのシール部Sに対応する特定拡径爪50Aの爪部54Aを示す図であり、(a)は特定拡径爪50Aの爪部54Aの側面図、(b)は爪部54Aの正面図、(c)は爪部54AのH−H断面図である。また、図9は、図7における特定拡径爪50A以外の拡径爪50Bの爪部54Bを示す図であり、(a)は爪部54Bの側面図、(b)は爪部54Bの正面図、(c)は爪部54BのI−I断面図である。
特定拡径爪50Aの爪部54Aは、例えばステンレス等の金属からなる棒材により形成されている。図8(a)に示すように、爪部54Aは、図中下側に示される略L字状側面の取付部57を有する。取付部57には、スライド部52にねじ固定するための貫通孔58が形成されている。
爪部54Aは、取付部57から略垂直に延びる延長部60Aを有する。延長部60Aの先端部は、所定角度で略楔状に傾斜する傾斜面61が形成されている。傾斜面61は、先端側にいくにしたがって径方向内側(図8(a)中の左側)位置となるように傾斜している。傾斜面61の傾斜角θは、ラベルLの伸縮度合いやラベル内側から拡径爪50を抜くときの引き抜き速度等に応じて適宜に設定することができるが、本実施形態では例えば約45度程度に形成されている。また、傾斜面61は、拡径爪50が拡径位置に移動してラベルLを拡開する際には、ラベルLに接触することなくラベル上端縁部の上方に位置することになる。
また、爪部54Aの延長部60Aの基端側から先端部近傍までの径方向外側に向いた表面は、ラベル拡径動作時にラベルLの内面と接触するラベル接触面62Aとなるが、このラベル接触面62AはラベルLのシール部内面領域3に対して滑り性が悪い形状に形成されている。
具体的には、ラベル接触面62Aは、爪長手方向に沿って延びており、拡径爪50Aが鉛直方向に沿って配置されたときにラベル接触面62Aもまた鉛直方向に沿って延びるように形成されている。また、特定拡径爪50Aの爪部54Aの延長部60Aは、図8(b)に示すように、基端側から先端部にかけて同一幅d1に形成されている。この延長部60Aの幅d1は、他の拡径爪50Bの爪部54Bに比べて比較的広く設定されている。さらに、この延長部60Aの表面であるラベル接触面62Aは、図8(c)に示すように、略円弧状に湾曲して形成されており、その曲率半径r1は他の拡径爪50Bの爪部54Bに比べて大きく形成されている。
ここで、特定拡径爪50Aの爪部54Aのラベル接触面62Aの周方向幅、より厳密にはラベル接触面62Aのうち実際にラベル内面と接触する部分の周方向幅は、ラベルLのシール部Sの内面領域3の周方向幅よりも大きく形成されていることが好ましい。このようにすることで、ラベルLのシール部内面領域3が爪部54Aのラベル接触面62Aに対して周方向全体で接触することができ、ラベル拡径時にシール部Sでのしわ発生を効果的に抑制することができる。
また、ラベル接触面62Aは、ラベルLのシール部Sのシール部内面領域3に対して滑り性が悪くなるような表面性状を有している。具体的には、ラベル接触面62Aは、例えばバフ処理等によって鏡面仕上げが施されている。このように鏡面仕上げされることによって微小凹凸がなくなることで、ラベルLのシール部内面領域3に密に接した状態となって接触面積が増加するため、その分、摩擦抵抗が増大して滑り性が悪くなる。
これに対し、図9を参照すると、他の拡径爪50Bの爪部54Bは、特定拡径爪50Aの爪部54Aに対して取付部57を有する点で共通するが、次のような点で相違する。
まず、図9(a)に示すように、爪部54Bの延長部60Bのラベル接触面62Bは、取付部57から先端部にかけて緩やかに径方向内側位置となるように傾斜したテーパ面として形成されている。このように傾斜していることで、拡径されたラベルLの内側から拡径爪50Bが抜かれるときにラベル接触面62Bがラベル内面に対して滑り易くなる。換言すれば、特定拡径爪50Aの爪部54Aのラベル接触面62は、鉛直方向に沿って延びる非テーパ面として形成されていることで、ラベルLが拡径されるとき及びラベル内側から拡径爪50Aが抜かれるときに、ラベルLのシール部内面領域3に対して滑り性が悪くなっているといえる。
また、図9(b)に示すように、他の拡径爪50Bの爪部54Bは、基端側から先端部にかけて比較的狭い幅d2に形成されている。この幅d2は、特定拡径爪50Aの爪部54Aの幅d1に比べて小さく設定されている。このように爪部54Bの幅を小さくしてラベル内面との接触面積を比較的小さくすることによって、拡径されたラベルLの内側から拡径爪50Bが抜かれるときにラベル接触面62Bがラベル内面に対して滑り易くなる。換言すれば、特定拡径爪50Aの爪部54Aのラベル接触面62は、周方向の幅d1が比較的広く形成されていることでラベルLのシール部内面領域3との接触面積が大きくなることで、ラベルLが拡径されるとき及びラベル内側から拡径爪50Aが抜かれるときのラベルLと爪部54Aとの摩擦抵抗が増加し、その結果、ラベルLのシール部内面領域3に対して滑り性が悪くなっている。
また、図9(c)に示すように、爪部54Bの延長部60Bのラベル接触面62Bは略円弧状をなす湾曲面として形成されるが、その曲率半径r2は特定拡径爪50Aの爪部54Aに比べて小さく形成されている。このようにラベル接触面62Bの曲率半径を小さくすることで、ラベル内面との接触面積を比較的小さくすることができる。これにより、拡径されたラベルLの内側から拡径爪50Bが抜かれるときにラベル接触面62Bがラベル内面に対して滑り易くなる。換言すれば、特定拡径爪50Aの爪部54Aのラベル接触面62は、曲率半径r1が比較的大きく形成されてラベルLのシール部内面領域3との接触面積が大きくなることで、ラベルLが拡径されるとき及びラベル内側から拡径爪50Aが抜かれるときのラベルLと爪部54Aとの摩擦抵抗が増加し、その結果、ラベルLのシール部内面領域3に対して滑り性が悪くなっている。
さらに、他の拡径爪50Bの爪部54Bのラベル接触面62Bには、上述したようなバフ処理による鏡面仕上げが施されていない。これにより、ラベル接触面62Bには微小凹凸が残されていることで、ラベル内面との接触面積が小さくなり、その結果、拡径されたラベルLの内面との摩擦抵抗が小さくなって爪引き抜き時の滑り性が良くなる。
なお、上記においては、特定拡径爪50Aは、他の拡径爪50Bとの対比において、爪部の形状および表面性状の両方を異ならせてラベルLのシール部内面領域3に対する滑り性が悪くなるようにした例について説明したが、これに限定されるものではなく、形状および表面性状の一方だけを異ならせて滑り性を異ならせてもよい。
また、上記においては、爪部54のラベル接触面62の表面性状を異ならせる処理としてバフ処理による鏡面仕上げを例示したが、これに限定されるものではなく、ラベルLの伸縮度合いや内面印刷層の滑り性等との関係で特定拡径爪のラベルのシール部内面領域に対する滑り性が比較的悪くなるような手段を適宜に採用すればよい。例えば、特定拡径爪50Aの爪部54Aのラベル接触面62Aをショットブラスト等によって適度に粗面化することによってシール部内面領域に対して滑りにくくしてもよいし、あるいは、ウレタン等の軟質材料をコーティングや貼着することによって滑りにくくしてもよい。逆に、他の拡径爪50Bの爪部54Bのラベル接触面62Bに、例えばフッ素系樹脂層をコーティングまたは貼着してラベル内面に対する滑り性を良くすることによって、特定拡径爪50Aのシール部内面領域に対する滑り性を相対的に悪くしてもよい。
ラベル装着ヘッド70のボトル持上部90は、図2,図3に示すように、L字状に屈曲した上下動可能な支持部材91と、その下端に水平面内で開閉可能に支持された一対の揺動アーム92を備える。更に、図10に示すように、各揺動アーム92の先端部に一対のグリッパ93が垂直に取り付けられ、各グリッパ93の内側の略中間位置には一対のネッククランパ93aが取り付けられ、各グリッパ93の下端部には一対の胴部クランパ93bが取り付けられている。
支持部材91は、カム機構によって上下動される。支持部材91のカム機構は、筒状のカム板97(図2,図3参照)に形成された下側カム溝(図2,図3では下側に形成されたカム溝)と支持部材91の基端に設けられ、カム溝に嵌入されたカムフォロア94で構成されている。なお、支持部材91にはスライドガイド(図示省略)が設けられており、支持部材91を上下動させるときにはそのスライドガイドが支持盤152に垂直に取り付けられたガイドレール(図示省略)に沿って移動するようになっている。
図11のライン(II)は、ラベル装着ヘッド70が主軸151の周りを反時計回りに回転したときに、カム板97の下側カム溝によってカムフォロア94が案内される移動軌跡である。同図に示すように、カムフォロア94は、ボトル供給位置γからラベル受渡位置βまで移動する間にカム板97の下側カム溝によって下方向に上下動を1回だけ行うので、このカムフォロア94の下降動作によりグリッパ93が、ボトル昇降軸82によって上昇させたボトルBの上昇位置まで押し下げられる。
揺動アーム92の開閉機構は、両揺動アーム92を常時開方向に付勢するバネ(図示省略)と、両揺動アーム92の基端部に設けられたローラ対(図示省略)と、両ローラの間に挿入されるカム部材(図示省略)とで構成される。カム部材は支持部材91に上下動自在に支持された昇降部材96の下端に取り付けられており、昇降部材96はカム機構によって上下動されるようになっている。
昇降部材96のカム機構は、カム板97に形成された上側カム溝(図2,図3では上側に形成されたカム溝)と、昇降部材96の基端に設けられ、カム板97の上側カム溝に嵌め込まれたカムフォロア95で構成される。なお、昇降部材96にもスライドガイド(図示省略)が設けられており、昇降部材96を上下動させるときにはそのスライドガイドが支持盤152に垂直に取り付けられたガイドレール(図示省略)に沿って移動するようになっている。
図11のライン(I)は、ラベル装着ヘッド70が主軸151の周りを反時計回りに回転したときに、カム板97の上側カム溝によってカムフォロア95が案内される移動軌跡である。同図に示すように、カムフォロア95の移動軌跡は、カムフォロア94の移動軌跡と略平行するが、(a)から(b)の間でカムフォロア95とカムフォロア94の間隔が狭くなり、(b)から(n)までその間隔を保持した後、(n)から(p)の間でその間隔が元の間隔に戻っている。
図11中の(a)から(b)の間でカムフォロア95をカムフォロア94側に近接させる動作は、カム部材を一対の揺動アーム92の基端部に設けられたローラ対に挿入してバネの付勢力を弱め、一対の揺動アーム92の間隔を所定の定量だけ狭くするものである(図11(a),(b)の揺動アーム92の間隔の変化を参照)。すなわち、一対のグリッパ93のネッククランパ93a及び胴部クランパ93bでボトルBの首部と胴部をそれぞれ保持させる動作をさせるものである。
一方、図11中の(n)から(p)の間でカムフォロア95をカムフォロア94から離隔させる動作はその逆の動作で、一対の揺動アーム92の間隔を元の間隔に戻すものである(図11(n),(p)の揺動アーム92の間隔の変化を参照)。すなわち、一対のグリッパ93で保持しているボトルBを開放させる動作をさせるものである。
ボトル持上部90は、ボトル供給位置γからラベル受渡位置βまで移動する間にボトルBの上昇位置まで下降してから上昇する動作を行うが、この上下動のときには一対の揺動アーム92は閉動作をしているので、一対の揺動アーム92が最下位の位置に下降したときに一対のグリッパ93のネッククランパ93aおよび胴部クランパ93bでボトルBの首部と胴部を挟持し、そのままボトルBを挟持した状態で最上位の位置まで上昇する。これにより、ボトル持上部90は、ボトルBをラベル拡開部30から抜き取ってボトル搬出位置δまで搬送する。
ここで、図11を参照して、ラベル装着ヘッド70におけるラベルLのボトルBへの装着シーケンスを簡単に説明すると、ラベル装着ヘッド70とラベル受取部28は、下記の(1)〜(7)の動作を各ラベルLと各ボトルBについて連続的に行う。
(1)第2のラベル受渡位置βでラベル受取部28によりラベル受渡部14からラベルLを受け取る(図11(j))。
(2)受け取ったラベルLを第2のラベル受渡位置βからボトル供給位置γに移動する間に、シート状に折り畳まれたラベルLをラベル受取部28で予備的に筒状に開口する一方(図11(j)〜(m))、ラベルLが開口するタイミングでラベル拡開部30を上昇させて拡開爪50を予備的に開口したラベルLに挿入した後(図11(m)〜(o))、拡開爪50を開いてラベルLの開口サイズをボトルBが嵌入可能な大きさに押し広げる(図11(a))。
(3)ボトル供給位置γに至ると、ボトル保持部80がボトル供給部12のスターホイール122で搬送されたボトルBを受け取り、ラベル拡開部30で筒状に押し広げられたラベルLの下方位置に当該ラベルLを装着するボトルBをセットする(図11(a))。
(4)ボトル保持部80がボトルBを受け取ると、ボトル供給位置γと第2のラベル受渡位置βのほぼ中間の位置までボトルBを搬送する間にボトル昇降軸82がボトルBを上昇させるとともに、ボトル持上部90の昇降機構が当該ボトル持上部90を下降させる(図11(b)〜(e))。
(5)ボトル昇降軸82がボトルBを上昇させることにより、ラベル拡開部30が筒状に押し広げているラベルLに当該ボトルBが下側から挿入される。ボトルBが最上位の位置に上昇するタイミングでボトル持上部90を最下位の位置に下降させ、一対のグリッパ93の胴部クランパ93bがボトルBの胴部をラベルLの外側から挟持するとともに、ネッククランパ93aがボトルBの首部を挟持する(図11(f))。
(6)最上位の位置に上昇したボトルBは直ちに元の最下位の位置に下降するとともに、最下位の位置に下降したボトル持上部90は直ちに元の最上位の位置に上昇するので、ラベルLが装着されたボトルBをボトル持上部90により最上位の位置に持ち上げた後、その位置を保持してラベル搬出位置δまで搬送する(図11(f)〜(p))。
(7)ボトル持上部90でラベル搬出位置δに搬送されたラベル付きボトルBを、ボトル搬出部16のスターホイール162に受け渡し、スターホイール162とベルトコンベア161とによって後工程に搬出する(図11(p))。
なお、図11の(j)〜(p)では、ラベルLをラベル受渡部14から受け取る動作とともに、ボトル持上部90がラベル付きボトルBを搬送する動作が重複して描かれているが、これは上記(1)〜(7)の動作が連続的に行われている様子を表しているためである。
続いて、図12〜図19を参照して、上記のような構成を有するラベル装着ヘッド70におけるラベル装着動作について詳細に説明する。図12は、縮径位置にある複数の拡径爪50の周囲に筒状ラベルLが被嵌された様子を示す図である。
筒状のラベルLは、ラベル受取部28によって予備的に略舟形状に拡開された状態で受け渡される。このとき、ラベル装着ヘッド70のラベル拡開部30の複数の拡径爪50は図12に示すように縮径位置にあって、略船形状に開かれた状態で受け取られるラベルLが各拡径爪50A,50Bの周囲に被嵌される。
このときラベルLは、シール部Sの周方向位置が複数の拡径爪50A,50Bのうちの特定拡径爪50Aの爪部54Aにほぼ対応するように位置合わせした状態で配置される。上述したように特定拡径爪50Aの爪部54Aは他の拡径爪50Bの爪部54Bに比べて幅広に形成されているため、ラベル受取部28から受け渡されるラベルLのシール部Sを特定拡径爪50Aの爪部54Aに対して確実に位置合わせがすることができる。
図13は、ラベルLのシール部Sを特定拡径爪50Aの爪部54Aに位置合わせして拡径させる拡径動作の一例を示す。図13(a)に示すように、ラベルLは、個々のラベルに切断形成される前のラベル基材の状態のときからシート状に折り畳まれているものであるため、2箇所の折り目部O1,O2を径方向に対向する位置に有している。そのため、ラベル受取部28から略舟形形状に開口された状態で複数の拡径爪50の上方から供給されるラベルLは、径方向に対向する2本の拡径爪50Bの爪部54Bに位置するように被嵌されることで、拡径爪50A,50Bの周囲におけるラベルLの周方向位置がほぼ決められることになる。
その状態で、図13(b)に示すように、折り目部O1,O2に対応する拡径爪50Bの爪部54Bがそれぞれ拡径位置へと径方向外側に移動する。このとき、特定拡径爪50Aを含む残る4本の拡径爪50A,50Bは、縮径位置のままとなっている。これにより、ラベルLの周方向位置が確実に決められた状態となり、残る4本の拡径爪50A,50Bの爪部54A,54Bは弛みなく張られたラベル内面に接触した状態になる。このときラベルLのシール部Sは、特定拡径爪50Aの爪部54Aに対して周方向に若干ずれた位置となっているが、このずれ量は特定拡径爪50Aが径方向外側に移動してラベルLが伸張し始めた直後に特定拡径爪50Aの爪部54A上に接触した状態に位置決めされるように設定されている。
そして、図13(c)に示すように、特定拡径爪50Aを含む残りの4本の拡径爪50A,50Bが所定の拡径位置まで径方向外側へ移動し、これによりラベルLは内側にボトルBを非接触状態で挿入可能な程度まで拡径される。このように拡径されるときラベルLは、シール部内面領域3が特定拡径爪50Aの爪部54A上に接触した状態となってシール部Sにおけるしわの発生を抑制しながら周方向に伸張する。
図14は、ラベルLのシール部Sを特定拡径爪50Aの爪部54Aに位置合わせして拡径させる拡径動作の別の例を示す。この例において、ラベルLが略舟形状に開口して拡径爪50A,50Bの周囲に被嵌されたときの状態は、図13(a)と同様であるため、ここでの図示を省略している。
ラベル受取部28から略舟形形状に開口された状態で複数の拡径爪50A,50Bの上方から供給されたラベルLは、径方向に対向する2本の拡径爪50Bの爪部54Bに位置するように被嵌されることで、拡径爪50A,50Bの周囲におけるラベルLの周方向位置がほぼ決められる。
その状態で、図14(a)に示すように、折り目部O1,O2に対応する拡径爪50Bの爪部54Bがそれぞれ所定の拡径位置へと径方向外側に移動する。このとき、特定拡径爪50Aを含む残る4本の拡径爪50A,50Bは、縮径位置のままとなっている。これにより、ラベルLの周方向位置が確実に決められた状態となり、残る4本の拡径爪50A,50Bの爪部54A,54Bは弛みなく張られたラベル内面に接触した状態になる。このときラベルLのシール部Sは、特定拡径爪50Aの爪部54Aに対して周方向に若干ずれた位置となっているのは図13(b)の場合と同様である。
それから、図14(b)に示すように、特定拡径爪50Aを含む残りの4本の拡径爪50A,50Bが径方向外側へ移動する一方で、先に所定の拡径位置まで移動した2本の拡径爪50Bが縮径位置に向かって径方向内側に少し戻される。これにより、ラベルLは、6本の拡径爪50A,50Bによって弛みなく張られているが未だ伸張されていない相似の略六角形状に開口した状態に成形される。このとき、ラベルLのシール部Sは特定拡径爪50Aの爪部54A上に接触した状態に位置決めされる。
そして、この状態から図14(c)に示すように全ての拡径爪50A,50Bが所定の拡径位置まで径方向外側へ移動する。これにより、ラベルLは、内側にボトルBを非接触状態で挿入可能な程度まで拡径される。このように拡径されるときラベルLは、シール部内面領域3が特定拡径爪50Aの爪部54A上に接触した状態のまま周方向に伸張するのでシール部Sにおけるしわの発生が抑制される。
図15は、ラベルLのシール部を特定拡径爪に位置合わせして拡径させる拡径動作の更に別の例を示す図である。この例では、図15(a)に示すように、複数の拡径爪50A,50Bの周囲に略舟形状に開口されたラベルLが被嵌されたときに、径方向に対向する2箇所でラベルLを外側から吸着保持する一対のラベルオープナ78が設けられている。ラベルオープナ78は、例えばエア吸引することによってラベルLを吸着することができる。このように吸着されることでラベルLは複数の拡径爪50A,50Bに対する周方向位置が決められる。
この状態で、図15(b)に示すように、各拡径爪50A,50Bが拡径位置へ向かって径方向外側へそれぞれ移動するとともに、この拡径爪50A,50Bによるラベル開口動作を阻害しないように一対のラベルオープナ78もまた径方向外側へ移動する。このとき、ラベルオープナ78によるエア吸引は停止されてラベルLを開放していてもよい。これにより、ラベルLは6本の拡径爪50A,50Bによって弛みなく張られているが未だ伸張されていない相似の略六角形状に開口した状態に成形され、ラベルLのシール部Sは特定拡径爪50Aの爪部54A上に接触した状態に位置決めされる。
そして、この状態から図15(c)に示すように全ての拡径爪50A,50Bが所定の拡径位置まで径方向外側へ移動する。このとき、拡径爪50A,50Bよりも早くに径方向外側へと退避させ、拡径爪50A,50BによるラベルLの拡径動作を阻害しないようにする。このようにしてラベルLは、内側にボトルBを非接触状態で挿入可能な程度まで拡径される。このときラベルLは、シール部内面領域3が特定拡径爪50Aの爪部54A上に接触した状態のまま周方向に伸張するのでシール部Sにおけるしわの発生が抑制される。
上記のようにしてラベルLの拡径が終了すると、図16に示すように、ラベル拡開部30の下方に搬送されているボトルBがラベルLおよび拡径爪50の内側に上昇移動して挿入される。このとき、図17に示すように拡径位置にある各拡径爪50とボトルBとの間には隙間が形成されて非接触状態になっていることが望ましいが、接触していてもよい。
拡径されたラベルLに対して所定位置までボトルBが挿入されるとボトル保持部80によるボトルBの上昇は停止する。そして、図18に示すようにボトル持上部90が下降移動して、一対のグリッパ93が接近するように駆動される。これにより、各一対のネッククランパ93aおよび胴部クランパ93bによってボトルBが把持される。このとき、胴部クランパ93bはラベルLの外側からボトルBを把持する。
ここで、胴部クランパ93bは、図19に示すように爪部54A,54Bを凹部内に収容することで各爪部54A,54Bの周方向両側でラベルLをボトルBに押さえ付けて把持してもよいし、あるいは、爪部54A,54Bの間の周方向位置でラベルLの外側からボトルBの胴部を把持してもよい。
図20は、図19中における特定拡径爪50Aの爪部54Aに対応する胴部クランプ93bの把持状態を示す、ボトルBの側方から見た様子を示す図である。図20に示すように、胴部クランプ93bは、ラベルLのシール部Sの内面領域3に沿って接触する特定拡径爪50Aの爪部54Aを挟んだ両側において爪部54Aから所定距離Xだけそれぞれ離れた接触領域98でラベルLおよびボトルBを把持している。上記所定距離Xは、シール部Sの内面領域3を爪部54Aの表面に適度な摩擦力が生じるが押さえ付けによりラベルLが胴部クランプ93bの位置で過度に伸張し過ぎないことを考慮して設定される。例えば、ラベルLの厚みや伸張倍率、ボトルBの外径等によっても異なるが、例えば、1〜5mm程度、より好ましくは2〜4mm程度に設定される。
続いて、図21に示すように、ラベルLおよびボトルBを把持した一対のグリッパ93が上昇移動してボトルBを持ち上げる。これにより、ラベルLおよびボトルBが上昇移動することで、拡径爪50の爪部54がラベルLとボトルBの間から抜かれる。そのとき、拡径されていたラベルLはその自身の弾性収縮力によってボトルBの胴部の外周面に密着してボトルBに装着される。なお、本実施形態では、ラベルLと共にボトルBを持ち上げることによって拡径爪50をラベルLの内側から抜くものとして説明するが、これに限定されるものではなく、ラベル拡開部30を下降移動させることによって拡径爪50を引き抜くようにしてもよい。
ボトル持上部90によってボトルBが持ち上げられてラベルLの内側から拡径爪50の爪部54が抜かれるとき、ラベルLのシール部内面領域3は特定拡径爪50Aの爪部54Aのラベル接触面62Aと接触しつつ軸方向に移動する。このように摺動している際にもシール部内面領域3は爪部54A上で軸方向に滑らないようにされているので、ラベルLのシール部Sはしわのない状態のままで爪部54BからボトルBへと乗り移ることができる。
また、上述したように胴部クランプ93bによってラベルLのシール部内面領域3を爪部54Aに対して左右両側の対称位置で押さえ付けていることで、ラベルLのシール部内面領域3に対して、爪部54Aの軸方向に関して対称かつ均等な摩擦力が作用することになる。その結果、爪部54Aの側方のいずれか一方側だけを押さえて把持する場合に比べて、ラベルLのシール部内面領域3が爪部54Aの表面で軸方向に関して斜めに摺動することを抑制することができる。これにより、ラベルLのシール部Sが爪部54A上を摺動して移動する際に、シール部Sに爪部54Aの軸方向と直交する方向(すなわちラベルLの周方向)に関して斜めに傾いたしわが発生するのを抑制することができる。
このことを換言すると、拡径爪50でラベルLが拡開された際、シール部Sおよびその近傍領域には、特定拡径爪50Aの爪部54A上において縦方向(すなわち爪部54Aの軸方向)に縮む力が発生している。このとき、爪部54Aの表面とシール部内面領域3との間の摩擦力で縦方向に縮むのを防いで、しわが発生するのを抑制している。そして、ラベルLおよびボトルBを持ち上げる際、シール部内面領域3が爪部54A上で真っ直ぐ上に引き抜かれることで、上記のように縦方向に縮もうとするのを防ぎながら引き抜くことが可能になる。このとき、縦方向以外の斜めに力が作用すると、縦方向に縮むのを防いでいる力のバランスが崩れてしわが発生することになるが、上記のように爪部54Aを挟んだ両側でラベルLを押さえることで、このような斜めの力が作用することを抑制することができるのである。
また、胴部クランプ93bのグリップ位置である接触領域98の縦方向位置は、ラベルLの上端近傍であることが好ましい。そうでないと、ラベルLが爪部54Aから引き抜かれる際に接触領域98より上側のラベル部分に圧縮力が作用してしわが発生し易くなるからである。
ラベルLの下端部から爪部54の先端部が抜けようとするとき、シール部内面領域3は特定拡径爪50Aの爪部54Aの先端部に形成された傾斜面61(図8(a)参照)に最後まで接触しつつ円滑にボトルBへと乗り移ることができる。このような傾斜面61が形成されていることで、シール部Sが特定拡径爪50Aの爪部54Aの周方向中心以外のどの位置を通っても同じ条件でボトルBへ乗り移ることができる。これによりシール部Sの下端近傍にしわが形成されてしまうのを効果的に抑制することができる。
なお、ボトル持上部90によるボトルBの持ち上げ速度(すなわち拡径爪の引き抜き速度)によってはシール部Sの下端部が飛び移るようして傾斜面61と瞬間的に非接触となることが起こり得るが、このような飛び移りが起きないように傾斜面61の傾斜角θをより小さくする、ボトルBの持ち上げ速度を低下させる等の対策を行えばよい。
上記のようにしてラベルLが装着されるラベル付きボトルBの製造方法を図22を参照しつつ簡単に説明すると、次のようになる。
まず、ステップS1において、ラベルLのシール部Sを特定拡径爪50Aの爪部54Aに位置合わせした状態で、縮径位置にある拡径爪50の爪部54の周囲にラベルLを被嵌する。
続いて、ステップS2において、拡径爪50を縮径位置から拡径位置に移動させる。これにより、ラベルLは、各拡径爪50の爪部54によって周方向に伸張されて拡径する。このとき、ラベルLのシール部内面領域3は、特定拡径爪50Aの爪部54Aに沿って接触した状態で維持される。
次いで、拡径したラベルLの内側にボトルBが所定高さまで上昇して挿入配置される。
そして、ボトル持上部90が下降移動してラベルLの外側からボトルBを掴んで持ち上げる。これにより、拡径爪50の爪部54がラベルLとボトルBとの間から引き抜かれる。その結果、ラベルLが弾性収縮力によってボトルBの胴部周囲にシール部Sのしわが少ない状態で装着される。このようにしてラベル付きボトルBが製造される。
上述したように、本実施形態のラベル装着ヘッド70のラベル拡径部30では、特定拡径爪50Aの爪部54AがラベルLのシール部内面領域3に対して滑り性が悪くなるような形状および表面性状とされている。具体的には、特定拡径爪50Aの爪部54は、比較的幅広で鉛直方向に沿った非テーパ面のラベル接触面を有し、かつ、シール部内面領域に対する摩擦抵抗が大きくなる表面性状としてある。これにより、ラベル拡径時にラベルLのシール部内面領域3が特定拡径爪50Aの爪部54A上で軸方向に滑ってしわが発生するのを抑制でき、その結果、ボトルに装着されたストレッチラベルの外観不良を防止できる。
また、上記ラベル拡径部30では、特定拡径爪50Aの爪部54Aの先端部に傾斜面61が形成されており、ラベルLのシール部内面領域3に対して爪部54Aが最後まで接触状態を可及的に維持しつつ爪部54が抜かれるようにしている。これにより、ラベルLのシール部Sの下端部にしわが発生することなくボトルBへと乗り移らせることができる。
なお、本発明は上述した実施の形態における構成に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の変更が可能である。
例えば、上記においては、ラベルLを拡径する拡径爪50のうちの1本の特定拡径爪50Aの爪部54AをラベルLのシール部内面領域3に対する滑り性が悪いものとして構成したが、これに限定されるものではなく、全ての拡径爪の爪部を同一の形状および表面性状としてもよい。
また、上記においては、ラベルLを拡径する複数の拡径爪50に1本の特定拡径爪50Aが含まれるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、複数の特定拡径爪が含まれてもよい。この場合、複数本の特定拡径爪は周方向に均等配置で設けられるのが好ましく、例えば2本の場合には径方向に対向する位置に配置し、3本の場合には120度間隔で配置するのが好ましい。
また、上記においては、特定拡径爪50Aの爪部54Aは、他の拡径爪50Bの爪部54Bと比較すると、周方向幅が広くかつラベル接触面の曲率半径が大きいことによってラベルLの内面との接触面積が大きくなるようにしたが、これに限定されるものではなく、同じ幅で曲率半径だけが大きいことによって接触面積が大きくなるようにしてもよいし、あるいは、同じ曲率半径で幅だけが広いことによって接触面積が大きくなるようにしてもよい。
また、ラベルLのシール部Sの内面領域3に特定拡径爪50Aの爪部54Aを接触させた状態でラベルLを拡径および伸張させるとき、シール部Sの下端部を爪部54Aに対して押さえるクランプ部材を設けてもよい。このクランプ部材の駆動にはエアシリンダやソレノイド等が好適に用いられる。これにより、ラベル拡径時にシール部Sが爪部54Aに沿ってずり上がるのを防止でき、伸縮性のラベルLのシール部Sにおけるしわ発生防止の効果がより確実なものとなる。
さらに、特定拡径爪50Aの爪部54Aに1つまたは複数のエア吸引噴出口を軸方向に沿って形成し、ラベルLを拡径させるときにエア吸引してシール部Sの内面領域3を吸着することによりシール部内面領域3が爪部54上で軸方向に滑るのをより確実に防止してしわの発生を抑制する一方、特定拡径爪50がラベルLの内側から抜かれるときには上記エア吸引噴出口からエアを噴出させてシール部内面領域3に対する摩擦抵抗を低減するようにしてもよい。
次に、図4及び図5に加えて図23及び図24を参照して、本実施形態のラベル装着装置10に適用可能なラベルLについて説明する。
ここで、筒状体であるラベルLにおいて、内側を向いた面を「内面」といい、外側に向いた面を「外面」という。また、ラベルLにおいて、「軸方向」、「周方向」、「径方向」及び「厚み方向」等の方向を示す用語を使用する。「軸方向」とは、上記筒状体の一端側開口と他端側開口とを結ぶ方向を意味する。「周方向」とは、軸方向に直交する平面において上記筒状体の外周(内周でも同じ)に沿った方向を意味する。「径方向」とは、筒状体の半径方向または直径方向を意味する。「厚み方向」とは、フィルム基材Fの厚みの方向を意味する。
図4を参照して説明したように、ラベルLは、長方形状で帯状のフィルム基材Fの両端部を所定幅で重ねあわせて接合されて筒状体をなしている。フィルム基材Fは、例えば、密度が0.880〜0.930g/cm3である線状低密度ポリエチレンを主成分として構成される。フィルム基材Fは、複数種の線状低密度ポリエチレンを用いて積層構造とすることもできる。また、一種の線状低密度ポリエチレンを用いて形成される単層構造であってもよい。フィルム基材Fの厚みとしては、特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは15〜80μm、特に好ましくは20〜50μmである。
上記線状低密度ポリエチレンは、エチレンと、αオレフィンとの共重合体であることが好ましい。αオレフィンとしては、炭素数が3〜20のαオレフィンであることが好ましく、炭素数が4〜8のαオレフィン(例えば、1‐ブテン、1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテンなど)であることが特に好ましい。αオレフィン成分の含有量は、単量体成分の全重量に対して、好ましくは1〜20重量%であり、より好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは5〜10重量%である。また、線状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒を用いて重合されたものが特に好適である。これら線状低密度ポリエチレンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
線状低密度ポリエチレンの密度は、上記のように、0.880〜0.930g/cm3である。密度がこの範囲内であれば、良好な伸縮性が得られる。なお、線状低密度ポリエチレンの密度は、0.890〜0.925g/cm3であることがより好ましく、0.900〜0.915g/cm3であることが特に好ましい。
上記綿状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2.16kg)は、1〜30g/10分である。MFRがこの範囲内であれば、生産性が良好になる。なお、綿状低密度ポリエチレンのMFRは、1〜20g/10分であることがより好ましく、1〜10g/10分であることが特に好ましい。
線状低密度ポリエチレンは、市販品を用いることができる。適用可能な市販品としては、例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット(登録商標)715FT,1540F,0540F」が例示できる。
線状低密度ポリエチレンは、エチレン及び上記αオレフィン以外の単量体成分、例えば、酢酸ビニル(VA)等のカルボン酸ビニル、アクリル酸(AA)等の不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル(MMA)等の(メタ)アクリル酸エステルなどを含有していてもよい。また、「主成分」とは、上記線状低密度ポリエチレン以外の樹脂や添加剤(例えば、滑剤や帯電防止剤等)などを含んでもよいという意味であって、例えば、フィルム基材Fを構成する樹脂の総重量に対して上記線状低密度ポリエチレンが70重量%(70重量%以上)であってもよい。特に好ましくは、上記線状低密度ポリエチレンが90重量%以上含有される。
さらに、フィルム基材Fは、軸方向の屈折率が、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ1.507〜1.528である。軸方向の屈折率は、好ましくは1.510〜1.525である。また、フィルム基材Fの周方向の屈折率は、軸方向の屈折率と同等又は軸方向の屈折率よりも小さく、且つ1.500〜1.528であることが好適であり、より好ましくは1.503〜1.520である。そして、フィルム基材Fの周方向の屈折率は、厚み方向の屈折率と同等又は厚み方向の屈折率よりも大きいことが好ましい。フィルム基材Fの厚み方向の屈折率は、1.500〜1.510が好ましい。
特に、フィルム基材Fの伸張性を損なうことなく、且つ伸張させたときに部分的なフィルム基材Fの歪みを防ぐために、フィルム基材Fの周方向の屈折率は、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ軸方向の屈折率と同等又は軸方向の屈折率よりも小さいことが好ましい。
また、フィルム基材Fの厚み方向の屈折率(Rtとする)に対する軸方向の屈折率(Rhとする)の比率(Rh/Rt)は、1.001〜1.030が好ましく、1.002〜1.020がより好ましく、1.003〜1.015が特に好ましい。
フィルム基材Fの厚み方向の屈折率(Rt)に対する周方向の屈折率(Rcとする)の比率(Rc/Rt)は、1.000〜1.030が好ましく、1.001〜1.020がより好ましく、1.002〜1.015が特に好ましい。
フィルム基材Fの軸方向の屈折率(Rh)に対する周方向の屈折率(Rc)の比率(Rc/Rh)は、0.980〜1.005が好ましく、0.985〜1.000がより好ましく、0.990〜0.999が特に好ましい。
上記フィルム基材Fを構成する自己伸縮性フィルムの屈折率は、JIS K 7105.7142に準拠して測定できる。上記屈折率は、例えば、JIS K 7142のA法に準拠した、アッペ屈折計((株)アタゴ製の製品名「アッペ屈折計NAR−2T」。Na白色光源)を用いて、測定波長589nmで測定できる。
フィルム基材Fの上記屈折率は、フィルム基材Fの主成分である上記線状低密度ポリエチレンの組成、及びフィルム基材Fの延伸を制御することにより実現できる。特に、軸方向、周方向、及び厚み方向における屈折率の差は、フィルム基材Fの延伸方向及び延伸倍率を制御することにより実現できる。
上記フィルム基材Fを構成する自己伸縮性フィルムは、筒状体としたとき、その筒状体の周方向に伸張倍率1.25倍に伸張可能で、且つ、1.25倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が10.5%以下であることが好ましく、同1.25倍に伸張後の瞬間歪みが10%以下がより好ましく、同1.25倍に伸張後の瞬間歪みが8%以下が特に好ましく、同1.25倍に伸張後の瞬間歪みが6%以下が最も好ましい。
より好ましくは、上記フィルム基材Fを構成する自己伸縮性フィルムは、筒状体としたとき、その筒状体の周方向に伸張倍率1.60倍に伸張可能で、且つ、1.60倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下となるものが好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが11.5%以下となるものがより好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが10.5%以下が特に好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが10%以下が最も好ましい。
加えて、高伸縮性の自己伸縮性フィルムは、筒状体の周方向に伸張倍率1.60倍以上に伸張可能で、且つ、周方向に1.60倍に伸張後の瞬間歪み(6000mm/分)が30%以下となるものが好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが20%以下となるものがより好ましく、同1.60倍に伸張後の瞬間歪みが18%以下になるものが特に好ましい。
上記瞬間歪みは、次のようにして測定できる。
自己伸縮性のフィルムを、他方向(筒状体の軸方向に相当)に長さ15±0.1mm、一方向(筒状体の周方向に相当)に長さ200mm(標線間距離100±2mm)の長方形に切り取り、サンプル片を作製する。このサンプル片の長辺方向を測定方向として、所定の伸縮倍率(1.25倍又は1.60倍)になるまで引張り、サンプル片の標線間距離を測定する。
上記測定は、例えば、クロスヘッド速度一定型又は振子型引張試験機(試験時の伸張速度:50mm/分又は6000mm/分)を用いて、所定の荷重(N)を加えてサンプル片の標線間距離が所定の倍率になるまで伸ばし、この直後に荷重を0(N)に戻したときの標線間距離を読み取る。その測定値を下記の計算式に代入して、瞬間歪み(%)を算出する。
瞬間歪み(%)=100×ΔL1/L1
上記L1は、引張る前のサンプル片の標線間距離(mm)を示し、上記ΔL1は伸張後に荷重を戻したときのサンプル片の標線間距離の増加(mm)を示す。
なお、上記自己伸縮性フィルムの伸張倍率の上限は、特に制限はないが、例えば、2.0倍以下である。また、上記自己伸縮性フィルムの瞬間歪みの下限は、理論上では零であるが、実際には零という場合は少ない。このため、上記自己伸縮性フィルムの瞬間歪みの下限は、0%を超え、好ましくは1%以上である。
上記フィルム基材Fを構成する自己伸縮性フィルムのストレッチ特性は、永久歪み(%)によっても表すことができる。この永久歪みは、上記瞬間歪みと同様の引張り試験後、試験機からサンプル片を取り外し、23℃の恒温槽で4週間保管した後に上記標線間距離を読み取って上記計算式により算出できる。永久歪みは、瞬間歪みと同様に、引張り試験後にサンプル片が元の長さに戻らずに変形した度合いを示すが、荷重を取り除いた4週間後に測定する点で瞬間歪みと異なる。永久歪みを測定するときの引張り試験におけるサンプル片の伸張速度は「50mm/分」である。永久歪みが小さいほど、ラベルの復元性が高く、ストレッチ特性に優れる。中でも、周方向に伸張倍率1.60倍に伸張後の永久歪み(50mm/分)は、11%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、7%以下が特に好ましく、6%以下が最も好ましい。
また、印刷層を位置ずれなく形成するためには、軸方向の引張り応力が4.3N/mm2であるときの、自己伸縮性フィルムの軸方向の伸び(50mm/分)が、9%以下(例えば、1〜9%)であることが好ましく、4〜9%であることがより好ましく、5〜8%であることが特に好ましい。上記軸方向の伸びは、引張り応力と伸び(歪み)との応力歪み曲線から求めることができる。
また、上記軸方向の伸びは、引張り応力と伸び(歪み)との応力歪み曲線から求めることができる。具体的には、自己伸縮性フィルムを、他方向(筒状体の軸方向に相当)に長さ200mm(標線間距離100±2mm)、一方向(筒状体の周方向に相当)に長さ15±0.1mmの長方形に切り取り、サンプル片を作製する。このサンプル片の長辺方向(ストレッチラベルの軸方向)を測定方向として、クロスヘッド速度一定型又は振子型引張試験機(伸張速度:50mm/分)を用いて、サンプル片を引張り、そのときの応力歪み曲線を得る。その曲線から求められる、引張り応力4.3N/mm2のときのサンプル片の伸び(%)を上記軸方向の伸びとする。
また、上記自己伸縮性フィルムは、筒状体としたときに、少なくとも周方向に対して伸張倍率1.10倍に伸張させたときの引張り応力(以下、F10値とする)が、好ましくは1〜10N/mm2、より好ましくは2〜8N/mm2、特に好ましくは3〜7N/mm2である。また、上記少なくとも周方向に対して伸張倍率1.60倍に伸張させたときの引張り応力(以下、F60値とする)は、好ましくは1〜12N/mm2、より好ましくは2〜10N/mm2、特に好ましくは3〜9N/mm2である。なお、F10値及びF60値の下限値が低くすぎると伸張した状態で容器の締め付け力が弱くなりすぎ、見栄えの良い装着状態が得られない場合がある。上記F10値及びF60値は、上記瞬間歪みの測定法の引張り試験により得られる、引張り応力と伸び(歪み)との応力歪み曲線から求めることができる。
上記のように、周方向の伸張倍率が1.60倍以上と高く、且つ周方向に1.60倍に伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下、周方向のF10値が10N/mm2以下といういずれも小さな値を示す高伸縮タイプの自己伸縮性フィルムを用いた場合には、その筒状体は、従来のストレッチラベルにはない優れたストレッチ特性を有している。さらに、かかる筒状体は、優れたストレッチ特定を有しながら、上記のように、良好な製造特性を有する。
上記自己伸縮性フィルムの延伸倍率は、ストレッチ特性及び製造適性の両立の観点から、周方向および軸方向にそれぞれ1.01〜1.40倍であり、好ましくは1.03〜1.35倍、特に好ましくは1.05〜1.30倍である。上記自己伸縮性フィルムは、筒状体の周方向に延伸されていなくてもよいが、好ましくは、軸方向と同等以下の倍率で延伸されているものが好ましい。特に、延伸倍率が1.05〜1.30倍の範囲において、筒状体の周方向及び軸方向に対して同等の倍率で延伸されている自己伸縮性フィルムが好適である。
図23(a)を参照すると、ラベルLの内面のシール部Sを除く略全体には、印刷層1が形成されている。印刷層1は、例えば、商品名やイラスト、使用上の注意等を表示するためのデザイン印刷層であって、透明なフィルム基材Fを介して外側から視認することができる。印刷層1の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10μmである。ここで、シール部Sはフィルム基材Fの一方端部F1と他方端部F2とが互いに接着された部分であるが、内周側に位置する一方端部F1の先端部分6は他方端部F2に接着されることなく残されてもよい。このようにフィルム基材Fの他方端部F2の内側に非接着状態で延出した先端部分6を「内側延出部」と称することがある。
上記印刷層1は、後述するラベル装着装置の拡径爪に対する滑り性が比較的良いインキで構成されている。これにより、容器へのラベル装着時に拡径爪との摺動摩擦抵抗を小さくすることができる。印刷層1は、例えば、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、合成ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂などのバインダー樹脂と、染料や顔料等の色材とを含有し、滑剤(ワックス)が層全体の1重量%以上含有する層であることが好ましい。
これに対し、シール部Sの内面領域3に対応する印刷層1の上には、上記拡径爪に対する滑り性が比較的悪いインクで構成された印刷層2が形成されている。このような印刷層2の特性は、例えば、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂などをバインダー樹脂とする滑剤とワックスが層全体の1%未満、好ましくは0.5%であるインキで形成する、インキに含まれる滑剤の含有量を印刷層1に比べて1%以上少なくする、インキにゴム成分等を含有させる等によって生じさせることができる。例えば、印刷層2は、例えば、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、合成ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂などのバインダー樹脂を含有し、滑剤が層全体の1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下の層であることが好ましい。さらに好ましくは、バインダー樹脂の含有量が、層全体の90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。印刷層2は、色材を含有しても良いが、色材を含まないことが好ましい。
また、上記のように内側延出部6が形成されている場合には、内側延出部6の内面にも印刷層2が設けられるのが好ましい。この場合、内側延出部6は、フィルム基材Fの他方端部F2のシール部S近傍まで形成されている印刷層1,2の上に乗り上げた状態となっており、これによりシール部Sの内面領域3の周方向全体が上記拡径爪に対する滑り性が悪い印刷層2で覆われていることになる。
ここで、本実施形態においてシール部Sの内面領域3とは、シール部Sの内面に加えて周方向の両側に広がった領域とされている。具体的には、フィルム基材Fの一方端部F1の内面に形成される印刷層2は、シール部Sの周方向幅よりも若干大きな幅に形成されており、フィルム基材Fの他方端部F2の内面にはシール部Sの近傍から遠ざかる側へ若干広がった幅に形成されている。なお、シール部Sを構成するフィルム基材端部F1の外面およびフィルム基材端部F2の内面には、ヒートシールによる接合性を良好にするために印刷層は設けないことが好ましい。
ただし、本実施形態では、上記拡径爪に対する滑り性が悪い印刷層2をシール部Sの内面とその周方向両側に広がった領域とを含む内面領域3に形成するとしたが、これに限定されるものではなく、シール部Sの内面とその周方向一方側だけに広がった領域とに印刷層2を形成してもよいし、あるいは、シール部Sの内面だけに印刷層2を形成してもよい。また、本実施形態では、印刷層1がデザイン印刷層である場合を示したが、印刷層1は、白色等の背景色印刷層であってもよく、保護印刷層であってもよい。印刷層1が背景色印刷層の場合には、フィルム基材Fと背景色印刷層との間にデザイン印刷層を有していることが好ましく、背景色印刷層の色材としては、酸化チタンを層全体に対し10〜40重量%含有していることが好ましい。また、印刷層1が保護印刷層の場合には、層として色材を含有していなくてもよい。
図23(b)に、シール部Sの内面領域3の拡径爪に対する滑り性を悪くする別の例を示す。この例においてもフィルム基材Fの一方端部F1の先端部分は内側延出部6として形成されている。図示するように、ラベルLを構成するフィルム基材Fの内面の略全体には、商品名等を表示するデザイン印刷層2が形成されており、このデザイン印刷層2が上記拡径爪に対する滑り性が悪い特性を有している。デザイン印刷層2は、内側延出部6の内面も覆って形成されている。また、内側延出部6は、フィルム基材Fの他方端部F2のシール部S近傍まで形成されているデザイン印刷層2の上に乗り上げた状態となっており、これによりシール部Sの内面領域3の周方向全体が上記拡径爪に対する滑り性が悪いデザイン印刷層2で覆われている。デザイン印刷層2は、色材と、前記印刷層2と同様のバインダー樹脂とを含有し、滑剤が層全体の1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下の層であることが好ましい。
このデザイン印刷層2の更に内側を覆って例えば白色等の背景色印刷層4が形成されている。この背景色印刷層4は上記拡径爪に対する滑り性が良い特性を有している。ただし、背景色印刷層4はシール部Sの内面領域3には形成されていないために、デザイン印刷層2が露出している。これにより、シール部Sの内面領域3が上記拡径爪に対して滑り性が悪くなっている。背景色印刷層4は、例えば、前記バインダー樹脂と、前記色材とを含有し、滑剤(ワックス)が層全体の1重量%以上含有する層であることが好ましい。
本実施形態では、滑りの悪い印刷層としてデザイン印刷層2、滑りの良い印刷層として背景色印刷層4の場合を示したが、滑りの悪い印刷層がデザイン印刷層の裏面に設けられた背景色印刷層2であり、滑りの良い印刷層がその背景色印刷層2の裏面に設けられた保護印刷層4であってもよい。
図23(c)に、シール部Sの内面領域3の拡径爪に対する滑り性を悪くするさらに別の例を示す。この例は、フィルム基材Fの一方端部F1が他方端部F2に全て接合されていて内側延出部が形成されていない場合である。この例では、ラベルLを構成するフィルム基材Fの内面の略全体に上記拡径爪に対する滑り性が良い印刷層1が形成されるが、この印刷層1はシール部Sの内面領域3には形成されておらずフィルム基材F自体が露出した状態となっている。このフィルム基材Fの表面は上記拡径爪に対する滑り性が悪く、したがってフィルム基材F自体によってシール部Sの内面領域3の滑り性が悪くなっている。
なお、このようにシール部Sの内面領域3でフィルム基材Fを露出させて拡径爪に対する滑り性が悪くなるようにする場合、図24に示すように、上記拡径爪に対する滑り性が良いインキで構成される印刷層1をフィルム基材Fの内面の略全体を覆って形成するが、シール部Sの内面領域3においては例えば略矩形状の未印刷部5を介してフィルム基材Fを部分的に露出させることによって拡径爪に対する滑り性を調整してもよい。この場合、未印刷部5の形状、大きさ、個数等は、シール部Sの内面領域3の拡径爪に対する所望の滑り性が得られるように適宜に設定することができる。また、未印刷部5の領域に滑り性が悪い印刷層2を形成してもよい。
上述した各印刷層1,2,4は、フィルム基材Fを筒状に成形する前に、筒状体の内面となる面上に印刷インキを塗布し、乾燥やUV照射によって固化することで形成される。印刷層1,2,4の形成には、所望の顔料や染料等の色材、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、合成ゴム系樹脂等のバインダー樹脂、有機溶剤、及び各種添加剤(例えば、可塑剤、ワックス等の滑剤、帯電防止剤)等を含む溶剤型インキ、或いは所望の色材、アクリル系樹脂など光重合性樹脂、光重合開始剤、及び上記各種添加剤等を含む紫外線硬化型インキなどが印刷インキとして用いられる。そして、この印刷インキを用いて、グラビア印刷、フレキソ印刷、又は凸版輪転印刷等を行なうことで印刷層1,2,4を形成することができる。
なお、ラベルLのストレッチ性等に影響を与えない範囲で、印刷層1,2,4以外の層を設けてもよい。例えば、フィルム基材Fの外面にデザイン印刷層を形成してもよく、その場合には、かかる印刷層の保護層を外面側に設けてもよい。また、フィルム基材Fの外面上には、シール部Sを除いて、滑り性の付与や傷付き防止等を目的として透明なオーバーコート層を設けてもよい。保護層やオーバーコート層は、周知慣用のインキを用いて印刷によって形成できる。
上述したように本実施形態において適用可能なラベルLは、シール部Sの内面領域3において拡径爪に対する滑り性が悪くなっている。そのため、複数の拡径爪でラベルLを拡径するときに1本の拡径爪をシール部Sの内面領域3に接触させた状態でラベルLを拡径させると、拡径爪上でシール部Sの内面領域3が軸方向に爪上を滑って縮むのを抑制することができ、その結果、ラベルLのシール部Sにおけるしわの発生を抑制できる。これにより、容器に装着された後のラベルLの外観を改善することができる。
なお、上記のようにラベルLは、シール部Sの内面領域3を除く内面の略全体が拡径爪に対する滑り性が良いことが最も好ましい。
ただし、ラベルLは、シール部Sの内面領域3を除く内面の略全体が滑りが良い場合に限定されず、ラベルLの内面は、少なくとも拡径爪に対応する領域の滑り性が良くなっていればよく、拡径爪と接触しない領域については滑り性が悪くてもよい。
さらに、ラベルLは、ラベルLの内面において複数の拡径爪に対応する領域に、内面領域3以外に滑り性の悪い領域があってもよいが、複数の拡径爪に対応するすべてが滑りが悪い領域であるとラベルLの装着不良が多発するおそれがあるため、ラベルLは複数の拡径爪に対応する複数個の領域のうち半数以上の領域が滑りの良い領域であることが好ましい。