以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係わるハイブリッド式作業機械の駆動システム(ハイブリッド駆動システム)を示す図である。本実施の形態において、作業機械は例えば8トンクラス以下の小型の油圧ショベルである。
図1において、本実施の形態の油圧ショベルのハイブリッド駆動システムはエンジン駆動系1と、油圧駆動系2と、電動駆動系3と、制御系4とを有している。
エンジン駆動系1は、ディーゼルエンジン11と、エンジンコントローラ13と、電子ガバナ14と、エンジン回転数検出装置15とを備えている。ディーゼルエンジン11は、後述する如く、従来のものよりもダウンサイジングされた(エンジン出力の小さい)エンジンである。電子ガバナ14に代えてメカニカルガバナを用いてもよい。
エンジン回転数検出装置15は、エンジン11の実際の回転数(エンジン回転数)を検出するものであり、エンジンコントローラ13は、エンジン11の目標回転数(後述)とエンジン回転数検出装置15によって検出したエンジン11の実回転数(エンジン回転数)とを入力し、その目標回転数とエンジン回転数とに基づいて目標燃料噴射量を求め、電子ガバナ14を制御する。電子ガバナ14は、その目標燃料噴射量に基づいてエンジンの各気筒に噴射される燃料噴射量を調整し、エンジン出力トルクと回転数を制御する。目標回転数とは、エンジン11に負荷が投入されていないときのエンジン回転数を意味する。エンジン回転数検出装置15によって検出されたエンジン回転数の信号は、エンジンコントローラ13を介して車体コントローラ46(後述)にも入力される。
エンジン1の出力軸は大径ギヤ6aと小径ギヤ6bからなる動力分配機6を介して油圧駆動系2と電動駆動系3に接続されている。
油圧駆動系2は、油圧ポンプ21及びパイロットポンプ22と、コントロールバルブ23と、複数の油圧アクチュエータ24a〜24hと、複数の操作装置25,26とを備えている。
油圧ポンプ21はエンジン11の出力軸に大径ギヤ6aと小径ギヤ6bからなる動力分配機6を介して接続され、エンジン11により駆動される。油圧ポンプ21から吐出された圧油はコントロールバルブ23を介して複数の油圧アクチュエータ24a〜24hに供給され、それぞれの被駆動体を駆動する。油圧ポンプ21は可変容量型であり、押しのけ容積可変機構(例えば斜板)21aと、押しのけ容積可変機構21aの傾転位置を調整し、油圧ポンプ21の容量を制御するポンプレギュレータ27とを備えている。
複数の油圧アクチュエータ24a〜24hは、左右の走行用油圧モータと、それ以外の油圧アクチュエータを含み、それ以外の油圧アクチュエータは、例えば、ブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、バケット用油圧シリンダ、スイング用油圧シリンダ、ブレード用油圧シリンダを含む(後述)。
コントロールバルブ23は複数の油圧アクチュエータ24a〜24hに対応する複数のメインスプールを内蔵し、これらメインスプールは操作装置25,26から出力される油圧信号により切換操作される。操作装置25は左右の走行用の操作装置を代表したものであり、操作装置26は走行以外の操作装置を代表したものである。
電動駆動系3は、発電・電動機31と、インバータ32と、バッテリ(蓄電装置)33と、バッテリコントローラ34とを備えている。
発電・電動機31はエンジン11の出力軸に動力分配機6を介して接続され、バッテリ33の充電量の不足時にエンジン11に余剰トルクがあるときは、その余剰トルクによって駆動されて発電機として作動する。発電・電動機31が発生した電気エネルギはインバータ32を介してバッテリ33に蓄電される。また、発電・電動機31は、バッテリ33の充電状態(SOC)が規定値以上でありかつ油圧ポンプ21をアシスト駆動する必要があるときは、インバータ32を介してバッテリ33の電気エネルギが供給され、電動機として作動する。
制御系4は、エンジンコントロールダイヤル12と、操作パネル35と、走行速度切換スイッチ41と、トルク制御電磁弁44と、走行速度切替電磁弁45と、車体コントローラ46とを備えている。
エンジンコントロールダイヤル12はオペレータの操作によりエンジンの目標回転数を指示するものである。操作パネル35はモニタ35aを有し、このモニタ35aに後述する警告情報を含む種々の情報が表示される。また、操作パネル35はモード選択スイッチ35bを有している。モード選択スイッチ35bは、電動駆動系3を使用するハイブリッドモードと電動駆動系3を使用しない非ハイブリッドモードのいずれを選択するかをオペレータ又は保守員が指示するものである。モード選択スイッチ35bに代えて、モニタ35aの表示操作でハイブリッドモードと非ハイブリッドモードのいずれを選択するかを指示するようにしてもよい。走行速度切換スイッチ41は走行高速と走行低速のいずれを選択するかを指示するものである。
車体コントローラ46は、エンジンコントロールダイヤル12、走行速度切換スイッチ41、トルク制御電磁弁44及び走行速度切替電磁弁45と電気的に接続されている。また、車体コントローラ46はインバータ32、バッテリコントローラ34、操作パネル35及びエンジンコントローラ13とも電気的に接続されている。車体コントローラ46は、モード選択スイッチ35b、エンジンコントロールダイヤル12及び走行速度切換スイッチ41のそれぞれの指示信号、バッテリコントローラ34の蓄電情報及びエンジンコントローラ13のエンジン情報を入力し、所定の演算処理を行い、インバータ32、トルク制御電磁弁44、走行速度切替電磁弁45及びエンジンコントローラ13に制御信号を出力するとともに、操作パネル35に表示信号を出力する。
図2はポンプレギュレータ27の構成の詳細を示す図である。
ポンプレギュレータ27は、複数の操作装置25,26の操作量に基づく要求流量に応じた流量を吐出するよう油圧ポンプ21の押しのけ容積可変機構21aの傾転位置を制御する(したがって油圧ポンプ21の容量を制御する)LS制御部等の要求流量応答制御部と、油圧ポンプ21の最大吸収トルクを予め定められた値を超えないように油圧ポンプ21の押しのけ容積可変機構21aの最大傾転位置を制御する(したがって油圧ポンプ21の最大容量を制御する)トルク制御部とを有している。図2は、図示の簡略化のため、トルク制御部のみ図示している。また、動力分配機6は図示を省略している。
図2において、ポンプレギュレータ27は、油圧ポンプ21の押しのけ容積可変機構21aに作動的に連結された制御スプール27aと、この制御スプール27aに対して油圧ポンプ21の容量増加方向に作用する第1及び第2の2つのバネ27b,27cと、スプール27aに対して油圧ポンプ21の容量減少方向に作用する第1及び第2の2つの受圧部27d,27eとを有している。第1受圧部27dには油圧ポンプ21の吐出圧力がパイロットライン27fを介して導入され、第2受圧部27eにはトルク制御電磁弁44からの制御圧力が制御油路27gを介して導入される。第1及び第2バネ27b,27cは油圧ポンプ21の最大吸収トルクを設定するものであり、第2受圧部27eはその最大吸収トルクを調整する(減トルク制御する)ものである。第1バネ27bは第2バネ27cよりも長く、制御スプール27aが図示の初期位置にあるときは第1バネ27bのみが制御スプール27aに接触して、制御スプール27aを図示右方向に付勢する。制御スプール27aが図示左方向にある程度移動すると第2バネ27cも制御スプール27aに接触して、第1及び第2バネ27b,27cの両方が制御スプール27aを図示右方向に付勢する。
トルク制御電磁弁44は、車体コントローラ46から制御信号が出力されていないときは図示のOFF位置にあり、ポンプレギュレータ27の第2受圧部27eをタンクに連通させる。車体コントローラ46から制御信号が出力されると、トルク制御電磁弁44はON位置に切り換えられ、第2受圧部27eに制御圧力としてパイロットポンプ22の吐出圧力が導かれる。パイロットポンプ22の吐出圧力はパイロットリリーフ弁28により一定の値(例えば4Mpa)に保たれている。
図3はポンプレギュレータ27のトルク制御によるポンプトルク特性図であり、横軸は油圧ポンプ21の吐出圧力を示し、縦軸は油圧ポンプ21の容量を示している。
図3において、符号TP1及びTP2で示される2つの直線(実線)からなる折れ曲がり線は第1及び第2の2つのバネ27b,27cにより設定される最大吸収トルクの特性であり、直線TP1,TP2に接する符号TPLcで示される曲線は油圧ポンプ21の最大吸収トルク(トルク制御の制限トルク)を示している。
ポンプレギュレータ27のトルク制御部は、油圧ポンプ21の吐出圧力に応じて油圧ポンプ21の押しのけ容積可変機構21aの最大傾転位置(したがって油圧ポンプ21の最大容量)を制限することで油圧ポンプ21の最大吸収トルクを制限する。トルク制御電磁弁44が図2に示すOFF位置にあるとき、ポンプレギュレータ27の第2受圧部27eはタンクに連通し、最大吸収トルク特性は第1及び第2の2つのバネ27b,27cによって実線の直線TP1,TP2からなる折れ曲げ線のように設定される。この場合、油圧ポンプ21の吐出圧力の上昇時に吐出圧力が第1の値P1を超える前は、油圧ポンプ21の吐出圧力が導かれる第1受圧部27dの油圧力は第1バネ27bの付勢力より小さく、油圧ポンプ21の最大容量はqmaxに維持される。すなわち、油圧ポンプ21の容量は要求流量応答制御部の制御によりqmaxまで増加させることができる。油圧ポンプ21の吐出圧力が更に上昇して第1の値P1を超えると、油圧ポンプ21の吐出圧力が導かれる第1受圧部27dの油圧力は第1バネ27bの付勢力より大きくなり、制御スプール27aは図示左方向に移動して、油圧ポンプ21の最大容量は折れ曲げ線の直線TP1に沿って減少する。これにより要求流量応答制御部により制御される油圧ポンプ21の容量は直線TP1が規定する最大容量以下に制限され、油圧ポンプ21の吸収トルク(ポンプ吐出圧力と容量の積)は制限トルクTPLcを超えないように制御される。
油圧ポンプ21の吐出圧力が更に上昇して第2の値P2を超えると、制御スプール27aは第2バネ27cにも接触して、油圧ポンプ21の吐出圧力の上昇量に対する制御スプール27aの移動量の割合(油圧ポンプ21の容量の減少割合)は減少し、油圧ポンプ21の最大容量は直線TP1よりも傾きの小さい直線TP2に沿って減少する。この場合も、油圧ポンプ21の吸収トルクは制限トルクTPLcを超えないように制御される。油圧ポンプ21の吐出圧力がメインリリーフ弁29の設定圧力に達すると、それ以上油圧ポンプ21の吐出圧力の上昇は阻止される。
トルク制御電磁弁44がON位置に切り換わると、第2受圧部27eに制御圧力が導かれ、制御スプール27aには第2受圧部27eの油圧力が第1及び第2バネ27b,27cの付勢力に対向して作用する。これにより第1及び第2バネ27b,27cによる最大吸収トルクの設定は、第2受圧部27eの油圧力の分だけ減少するよう調整され、最大吸収トルク特性は、実線の直線TP1,TP2からなる折れ曲げ線から一点鎖線の直線TP3,TP4からなる折れ曲げ線へとシフトする。その結果、油圧ポンプ21の吐出圧力の上昇時、油圧ポンプ21の最大容量は折れ曲げ線の一点鎖線の直線TP3,TP4に沿って減少する。このときの油圧ポンプ21の最大吸収トルク(ポンプ吐出圧力と最大容量の積)は直線TP1,TP2の最大吸収トルクTPLcから直線TP3,TP4に接する曲線のTPLdへと小さくなる。本願明細書では、この制御を減トルク制御という。
図4は、油圧系のコントロールバルブと複数の油圧アクチュエータのうち、左右の走行用油圧モータに係わる油圧回路部分を示す図である。図中、左右の走行用のメインスプールを符号23a,23bで示し、左右の走行用油圧モータを符号24a,24bで示している。左右の油圧モータ24a,24bはメインスプール23a,23bを介して油圧ポンプ21に接続されている。
左右の油圧モータ24a,24bはそれぞれ可変容量型であり、押しのけ容積可変機構(斜板)24a1,24b1と、押しのけ容積可変機構24a1,24b1をそれぞれ駆動する制御ピストン24a2,24b2とを備えている。制御ピストン24a2,24b2の一側には受圧部24a3,24b3が形成され、その反対側にはバネ24a4,24b4が配置されている。受圧部24a3,24b3は走行速度切替電磁弁45を介してパイロットポンプ22とタンクに接続されている。
走行速度切替電磁弁45は車体コントローラ46から出力される制御信号により図示のOFF位置からON位置に切り換わる。車体コントローラ46は、走行速度切換スイッチ41が走行低速を指示しているときは走行速度切替電磁弁45をOFF位置に保持し、走行速度切換スイッチ41が走行高速を指示するときは制御信号を出力し、走行速度切替電磁弁45をON位置に切り換える。
走行速度切替電磁弁45が図示のOFF位置にあるとき、制御ピストン24a2,24b2の受圧部24a3,24b3はタンクに連通しており、制御ピストン24a2,24b2はバネ24a4,24b4の力で押されて図示の位置にあって、押しのけ容積可変機構24a1,24b1は大傾転位置(大容量位置)に保持されている。走行速度切替電磁弁45がON位置に切り換えられると、制御ピストン24a2,24b2の受圧部24a3,24b3に制御圧力としてパイロットポンプ22の吐出圧力が導かれ、これにより制御ピストン24a2,24b2が作動して、押しのけ容積可変機構24a1,24b1は大傾転位置(大容量位置)から小傾転位置(小容量位置)へと切り換えられる。大傾転位置では油圧モータ24a,24bは低速回転が可能であり、走行低速に適した状態となり(低速大容量モード)、小傾転位置では油圧モータ24a,24bは高速回転が可能であり、走行高速に適した状態となる(高速小容量モード)。
図5は本実施の形態に係わる油圧ショベルの外観を示す図である。
図5において、油圧ショベルは後方小旋回型の小型の油圧ショベルであり、この油圧ショベルは、下部走行体101と、この下部走行体101上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の先端部分にスイングポスト103を介して上下及び左右方向に回動可能に連結されたフロント作業機104とを備えている。下部走行体101はクローラ方式であり、トラックフレーム105の前方側に上下動可能な排土用のブレード106が設けられている。上部旋回体102は基礎下部構造をなす旋回台107と、旋回台107上に設けられたキャビン(運転室)108とを備えている。フロント作業機104はブーム111と、アーム112と、バケット113とを備え、ブーム111の基端はスイングポスト103にピン結合され、ブーム111の先端はアーム112の基端にピン結合され、アーム112の先端はバケット113にピン結合されている。
上部旋回体102は下部走行体101に対して図示しない旋回モータにより旋回駆動され、スイングポスト103及びフロント作業機104は旋回台107に対してスイングシリンダ24gにより左右に回動駆動され、ブーム111、アーム112、バケット113は、それぞれ、ブームシリンダ24c、アームシリンダ24d、バケットシリンダ24eを伸縮することにより上下に回動駆動される。下部走行体101は左右の走行モータ24a,24bにより回転駆動され、ブレード106はブレードシリンダ24hにより上下に駆動される。
次に、本発明の制御の詳細を説明する。
図6はエンジンコントローラ13の制御機能を示す機能ブロック図である。エンジンコントローラ13は減算部13aと燃料噴射制御部13bとを有している。
減算部13aは車体コントローラ46から目標回転数を入力し、この目標回転数からエンジン回転数検出装置15によって検出したエンジン回転数を減算し、回転数偏差ΔNを算出する。燃料噴射制御部13bは、回転数偏差ΔNに基づいて燃料噴射量を求め、その燃料噴射量を電子ガバナ14に与え、エンジン11の各気筒に噴射される燃料噴射量を制御する。
図7は、燃料噴射量制御部13bが演算に用いる燃料噴射量特性を示す図である。図中、横軸は目標回転数とエンジン回転数との偏差ΔNであり、縦軸は燃料噴射量Fである。この燃料噴射量特性は、回転数偏差ΔNがゼロであるとき、燃料噴射量Fは最小Fminであり、回転数偏差ΔNが増大するにしたがって燃料噴射量Fは斜めの直線F1の特性に沿って直線比例的に増大するよう設定されている。また、回転数偏差ΔNがある所定の値ΔNaに達すると、燃料噴射量Fは最大Fmaxとなり、それ以上回転数偏差ΔNが増大したときは、燃料噴射量Fは最大Fmaxの一定値に保持される。燃料噴射制御部13bは、目標回転数毎に燃料噴射量特性を記憶しておき、目標回転数に応じて対応する燃料噴射量特性を選択し、回転数偏差ΔNを燃料噴射量特性に参照して対応する燃料噴射量を求め、その燃料噴射量を電子ガバナ14に出力する。
図8は、そのように燃料噴射量が制御されたときのエンジン11の出力トルク特性を示す図であり、目標回転数が最大であるときのものである。図中、横軸はエンジン回転数であり、縦軸はエンジン出力トルクである。エンジン11の出力トルク特性は、燃料噴射量が最大であるときの全負荷特性Tfと、電子ガバナ14の燃料噴射量が最大に増加するまで図7に示した燃料噴射特性に基づいて燃料噴射量が調整されるレギュレーション特性Tgmaxとで構成されている。
全負荷特性Tfはエンジン11の特性によって定まるものであり、エンジン回転数が定格回転数NRmax(後述)から中速の所定回転数N0に低下するにしたがってエンジン出力トルクは特性部分Tf1に沿って定格トルクTopt(後述)から増加し、エンジン回転数が所定回転数N0まで低下するとエンジン出力トルクが最大TEmaxeとなり、エンジン回転数がN0から更に低下するにしたがってエンジン出力トルクは特性部分Tf2に沿って減少するよう設定されている。
レギュレーション特性Tgmaxは、図7に示した燃料噴射特性に対応して設定されるものであり、本実施の形態では、エンジン回転数が低下するにしたがってエンジン11の出力トルクが増大するドループ制御の特性となっている。
このドループ制御の特性においては、エンジン11に負荷が投入されていないとき燃料噴射量は最小Fminであり、このときのエンジン回転数はレギュレーション特性Tgmaxの直線と横軸との交点のNTmaxである。エンジン11の負荷トルク(油圧ポンプ21の吸収トルク)が増大し、目標回転数NTmaxと実回転数との偏差ΔNが増大するにしたがって燃料噴射量が増大し、それに伴ってエンジン出力トルクはレギュレーション特性Tgmaxの斜めの直線に沿って直線比例的に増大する。エンジン11の負荷トルクが更に増大し、回転数偏差ΔNが所定の値ΔNaに達すると燃料噴射量は最大となる(図7)。レギュレーション特性Tgmaxの直線と全負荷特性Tfとの交点は燃料噴射量が最大Fmaxで、エンジン11の出力馬力が最大となる点(後述)であり、このときの回転数(最大馬力回転数)NRmaxが定格回転数であり、エンジン出力トルクToptが定格トルクとなる。
目標回転数が最大目標回転数NTmaxよりも低いNTx1,NTx2であるとき、エンジンコントローラ13の燃料噴射制御部13bは目標回転数NTx1,NTx2のそれぞれに対応した燃料噴射特性を選択して燃料噴射量を制御し、それに対応してレギュレーション特性は破線Tg1,Tg2と変化する。その結果、最大馬力回転数はNR1,NR2と低下する。
図9は、目標回転数とエンジン出力馬力と最大馬力回転数の関係を示す図である。図中の実線Emax,E1,E2は、それぞれ目標回転数をNTmax,NT1,NT2に設定した場合のエンジン馬力特性を示している。目標回転数をNTmax,NT1,NT2(以下、NTという)に設定したとき、エンジン11の出力馬力は、それぞれ、エンジン負荷の増加に応じて実線Emax,E1,E2のように変化し、エンジン回転数がNRmax,NR1,NR1(以下、NRという)のときにエンジン出力馬力は最大となる。このエンジン出力が最大となる回転数を最大馬力回転数と言い、目標回転数が最大NTmaxであるときの最大馬力回転数NRmaxを定格回転数と言う。
本実施の形態では、エンジン11に負荷が投入されていないときの回転数NTmax,NTx1,NTx2を目標回転数と定義したが、最大馬力回転数(エンジンコントロールダイヤル12が指示する目標回転数が最大であるときは定格回転数)NRmax,NR1,NR2を目標回転数と定義してもよい。また、本実施の形態では、レギュレーション特性がドループ制御の特性である場合について説明したが、レギュレーション特性は、エンジン負荷の増加によらずエンジン回転数が一定に保たれるように燃料噴射量を調整するアイソクロナス制御の特性であってもよい。
図10は図3のポンプトルク特性図にエンジンの最大トルクTEmaxeと定格トルクToptを重ねて示す図である。
エンジン11は、定格トルクToptが油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLcよりも小さく、エンジン11の出力トルクだけでは油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLcを賄えない大きさにダウンサイジング(小型化)されている。また、本実施の形態においては、更にエンジン11は、定格トルクToptだけでなく最大トルクTEmaxeも油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLcよりも小さい大きさにダウンサイジングされている。また、エンジン11の最大トルクTEmaxeは油圧ポンプ21の減トルク制御後の最大吸収トルクTPLdよりも大きく、減トルク制御後の最大吸収トルクTPLdはエンジン11の定格トルクToptよりも大きくなるように設定されている。すなわち、油圧ポンプ21の減トルク制御は油圧ポンプ21の最大吸収トルクをエンジン11の最大トルクTEmaxeよりも小さく、エンジン11の定格トルクToptよりも大きい値TPLdに低下させる。
図10中、Toptcはエンジン11と発電・電動機31を組み合わせたハイブリッド駆動システムの定格システムトルクであり(後述)、油圧ポンプ21の最大吸収トルク(制限トルク)TPLcは定格システムトルクToptcよりも所定の余裕分だけ小さく設定されている。
エンジン11のダウンサイジングについて別の角度から説明する。図18Aは、従来の一般的なミニショベルの油圧ポンプのPQ特性(馬力特性)と代表的な出力使用範囲との関係を示す図であり、横軸は油圧ポンプの吐出圧力を示し、縦軸は油圧ポンプの吐出流量を示している。図18Bは、同ミニショベルのエンジン出力馬力特性と代表的な出力使用範囲との関係を示す図であり、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸はエンジンの出力馬力を示している。図18Cは、同ミニショベルのエンジンの出力トルク特性を示す図であり、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸はエンジンの出力トルクを示している。図18A、図18B及び図18Cは、図8と同様、エンジンコントロールダイヤルが指示する目標回転数が最大NTmaxであるときのものである。
まず、油圧ポンプのPQ特性について説明する。油圧ポンプのPQ特性とは、ある最大吸収トルク特性を持つ油圧ポンプをエンジンで駆動して回転させ、作業を行ったときに得られる油圧ポンプの出力馬力特性である。図18Aの油圧ポンプのPQ特性は、一例として、図3又は図10に示した最大吸収トルク特性を持つ油圧ポンプ21の場合のものであり、かつエンジン回転数が定格回転数NRmaxdにある場合のものである。定格回転数NRmaxdとは、図18Cのレギュレーション特性Tgmaxdと全負荷特性Tfdの交点におけるエンジン回転数であり、図18Bに示すように、最大目標回転数NTmaxに基づいて制御されているエンジンの出力馬力が最大となるときのエンジン回転数である。
一般的なミニショベルの作業状態として、走行高速時と走行低速時と通常作業時とを考える。図18A及び図18B中、Aは走行高速時の代表的な出力使用範囲、Bは走行低速時の代表的な出力使用範囲、Cは通常作業時の代表的な出力使用範囲を示している。走行高速とは、走行用の油圧モータ24a,24bが高速小容量モードにありかつ走行用の操作装置25が操作されて走行している状態をいい、走行低速とは、走行用の油圧モータ24a,24bが低速大容量モードにありかつ走行用の操作装置25が操作されて走行している状態をいう。通常作業とは、走行以外の操作装置26(特にフロント作業機104に係わる油圧アクチュエータ24c,24d,24e及び旋回モータのいずれかに係わる操作装置)が操作されて作業を行っている状態をいう。
一般的なミニショベル(小型ショベル)においては、走行高速時Aはスピード(大流量)が必要であり、図18A及び図18Bに示すように走行高速時Aにおける油圧ポンプ21の出力は最も大きくなる。走行低速時B及び通常作業時Cにおいて油圧ポンプ21の出力は走行高速時Aよりも小さい。このことは、通常作業時に油圧ポンプの出力が最も大きくなる中型、大型の油圧ショベルの場合と大きな相違である。
従来のミニショベルでは、図3又は図10に示した油圧ポンプ21の最大吸収トルク(トルク制御の制限トルク)TPLcは、図18Cに示すように、エンジンの定格トルクToptdよりも所定の余裕分だけ小さく設定されている。図18Aの符号HPLcは図3又は図10に示した油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLcに対応する油圧ポンプ21の最大吸収馬力を示しており、この油圧ポンプ21の最大吸収馬力HPLcもエンジンの最大馬力(定格馬力)HEoptdよりも所定の余裕分だけ小さくなるように設定されている。また、走行高速時は油圧ポンプ21の出力は最も大きくなるため、油圧ポンプ21の最大吸収馬力HPLcは、走行高速時Aの運転状態で油圧ポンプ21に要求される油圧馬力を賄うことができる大きさに設定されている。
一方、ポンプレギュレータ27の最大吸収トルク特性(図3又は図10)は、第1及び第2の2つのバネ27b,27cによって実線の直線TP1,TP2からなる折れ曲げ線のように設定されるため、油圧ポンプ21のPQ特性も同様に符号HPで示すように折れ曲げ線形状となり、通常作業時ではエンジンの最大馬力(定格馬力)HEoptdに対して油圧ポンプ21の出力使用範囲CがPQ特性の折れ曲げ線の交点における凹み分Xa分だけXと大きく離れて、余裕がありすぎる状態となる。これは、エンジン出力馬力を有効に使用していないことを意味する。
図19Aは、本実施の形態によるミニショベルの油圧ポンプのPQ特性(馬力特性)と代表的な出力使用範囲との関係を示す図であり、図19Bは、同ミニショベルのエンジン出力馬力特性と代表的な出力使用範囲との関係を示す図である。図19A及び図19Bは、図8と同様、エンジンコントロールダイヤルが指示する目標回転数が最大でNTmaxあるときのものである。
本実施の形態では、エンジン11の最大馬力(定格馬力)HEoptを図18Bに示した従来の最大馬力(定格馬力)HEoptdよりも小さくし、油圧ポンプ21の馬力特性HPにおける最大吸収馬力HPLcを下回る設定とする。更に言えば、本実施の形態では、エンジン11の最大馬力(定格馬力)HEoptを、走行高速時A以外(走行低速時B及び通常作業時C)の運転状態で油圧ポンプ21に要求される油圧馬力の大部分を賄うことができ、走行高速時Aの運転状態で油圧ポンプ21に要求される油圧馬力を賄うことができない大きさに設定する。このことをエンジン11の出力トルクで言い換えると、エンジン11の定格トルクToptは、図10に示すように、走行高速時A以外(走行低速時B及び通常作業時C)の運転状態で油圧ポンプ21に要求される油圧トルクの大部分を賄うことができ、走行高速時Aの運転状態で油圧ポンプ21に要求される油圧トルクを賄うことができない大きさに設定されている。
本実施の形態の油圧ショベルは8トンクラス以下の小型の油圧ショベルであり、このような小型の油圧ショベルは、それよりもクラスの大きい中型、大型の油圧ショベルに比べて旋回フレーム上の機器スペースが狭いため、ハイブリッド化した場合に電動駆動系の機器を設置することがレイアイト面で非常に困難である。本実施の形態では、上述したようにエンジン11はエンジン11の出力トルクだけでは油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLcを賄えない大きさ、或いは走行高速時Aの運転状態で油圧ポンプ21に要求される油圧トルクを賄うことができない大きさにダウンサイジングされており、これにより小型の油圧ショベルであっても電動駆動系の機器の設置スペースを確保しハイブリッド化することが容易となる。
図11は車体コントローラ46の制御機能を示す機能ブロック図である。車体コントローラ46は、ハイブリッドモード制御部46a(電動充電制御部;第1制御装置)と、モード選択部46b(モード選択装置)と、非ハイブリッドモード制御部46c(第2制御装置)とを有している。
図12はハイブリッドモード制御部46aの処理手順を示すフローチャートである。
まず、ハイブリッドモード制御部46aは、バッテリコントローラ34の蓄電情報から取得したバッテリ充電状態(SOC)が最小限界値よりも大きいか否かを判定する(ステップS90)。最小限界値とは発電・電動機31のアシスト駆動による作業の継続が不能となる充電状態(例えば30%)である。ステップ90の判定がYES(バッテリ充電状態>30%)であった場合、バッテリ充電状態が第1閾値より小さいか否かを判定する(ステップS100)。第1閾値とは、バッテリ33の充電状態が発電・電動機31のアシスト駆動は可能でありかつバッテリ充電制御により充電を行うことが好ましい状態であるか否かを判定する閾値であり、作業の継続が不能となる最小限界値(例えば30%)よりも高い値(例えば50%)に設定されている。ステップS100の判定がYES(バッテリ充電状態<50%)であった場合、エンジンコントローラ13のエンジン回転数情報から取得した現在のエンジン回転数(実回転数)が最大馬力回転数NRより小さいか否かを判定する(ステップS110)。前述したように目標回転数が最大NTmaxであるとき、最大馬力回転数は定格回転数NRmaxある。ステップS110において、現在のエンジン回転数が最大馬力回転数NRより小さいか否かの判定は、現在のエンジン回転数から最大馬力回転数NRを差し引いた偏差ΔNが負の値かどうかを判定することで行ってもよい。
ステップS110の判定がYES(エンジン回転数<最大馬力回転数NR)であった場合、発電・電動機31を電動機として作動させる制御指令をインバータ32に出力し、アシスト制御を行い(ステップS140)、処理を終了する。ステップS140のアシスト制御によって、エンジン回転数は上昇して最大馬力回転数NRに戻され、最大馬力回転数NRに維持される。発電・電動機31を電動機として作動させる制御の具体例としては、例えば最大馬力回転数からエンジン回転数(実回転数)を差し引いた回転数偏差ΔNdを求め、この回転数偏差ΔNdが大きくなるにしたがって駆動トルクが増加するよう制御指令をインバータ32に出力し、発電・電動機31を制御すればよい。
ステップS110の判定がNO(エンジン回転数≧最大馬力回転数NR)であった場合、エンジン11の負荷トルク(油圧ポンプ21の吸収トルク)がエンジン11の定格トルクToptよりも小さく、エンジン11に余裕がある場合であり、この場合は発電・電動機31を発電機として作動させる制御指令をインバータ32に出力し、エンジン11の余剰トルクによって発電・電動機31を駆動して発電機として作動させ(ステップS120)、バッテリ充電制御を行う(ステップS130)。これによりエンジン11の出力トルクは定格トルクToptまで増加し、エンジン回転数は最大馬力回転数NRまで低下し、エンジン出力馬力は最大馬力まで増加する。さらに、エンジン11の余剰トルクによって発電機31が駆動され、発電機31で発電した電力がインバータ32を介してバッテリ33に蓄電される。発電・電動機31を発電機として作動させる制御の具体例としては、例えばエンジン回転数(実回転数)から最大馬力回転数を差し引いた回転数偏差ΔNcを求め、この回転数偏差ΔNcが大きくなるにしたがって発電トルクが増加するよう制御指令をインバータ32に出力し、発電・電動機31を制御すればよい。
ステップS130に続いて、バッテリ充電状態が第2閾値より大きいか否かを判定する(ステップS150)。第2閾値とは、バッテリ33の充電が不要か否かを判定するための閾値であり、第1閾値よりも高い値(例えば70%)に設定されている。ステップS150でYES(バッテリ充電状態>70%)と判定された場合は、処理を終了する。一方、ステップS150でNO(バッテリ充電状態≦70%)と判定された場合は、ステップS110に戻り、ステップS110以降の処理を繰り返し実行する。
ステップS100の判定がNO(バッテリ充電状態≧50%)であった場合は、ステップS110と同様にエンジン回転数が最大馬力回転数NRより小さいか否かを判定する(ステップS160)。ここでの判定も、現在のエンジン回転数から最大馬力回転数NRを差し引いた偏差ΔNが負の値かどうかを判定することで行ってもよい。ステップS160の判定がYES(エンジン回転数≧最大馬力回転数NR)であった場合、発電・電動機31を電動機として作動させる制御指令をインバータ32に出力し(ステップS140)、処理を終了する。これにより、エンジン回転数は最大馬力回転数NRに維持される。一方、ステップS160の判定がNO(エンジン回転数≧最大馬力回転数NR)であった場合は、処理を終了する。
また、ステップS90の判定がNO(バッテリ充電状態≦30%)であった場合は、発電・電動機31のアシスト駆動による作業の継続が不能な場合であり、ハイブリッドモード制御部46aは、バッテリ33の充電状態(SOC)が異常であることを知らせる異常状態情報を生成し、モード選択部46bの異常検知部46b1(後述)に出力する。
図14は、図8に示したエンジン11の出力トルクとアシスト制御による発電・電動機31の出力トルクを組み合わせたハイブリッド駆動システムの出力トルク特性を示す図であり、図8と同様、目標回転数が最大NTmaxであるときのものである。
図14において、TEmaxcはハイブリッド駆動システムのシステム最大トルクであり、エンジン11の最大トルクTEmaxeと発電・電動機31の最大トルクTMmaxの合計である。Toptcはハイブリッド駆動システムの定格トルクであり、エンジン11の定格トルクToptと発電・電動機31の最大トルクTMmaxの合計である。これらのシステム最大トルクTEmaxc及びシステム定格トルクToptcはダウンサイジングしない従来のエンジンの最大トルク及び定格トルクと同等に設定されている。
本実施の形態では、上述したように、エンジン11の回転数が定格回転数NRmax以下に低下しようとすると発電・電動機31が電動機として作動し、エンジン回転数を定格回転数NRmaxに維持するよう制御される(ステップS140)。また、エンジン11の回転数が定格回転数NRmaxより大きく、バッテリ33の充電状態が閾値(50%)より小さい場合は、発電・電動機31はエンジン11の余剰トルクによって発電機として作動し、バッテリ33の充電を行う(ステップS120,S130)。
図13はモード選択部46b及び非ハイブリッドモード制御部46cのそれぞれの処理手順を説明するフローチャートである。
まず、モード選択部46bは、モード選択スイッチ35bからの指示信号を入力し、モード選択スイッチ35bが非ハイブリッドモードを指示しているか否かを判定する(ステップS200)。この判定がNOであった場合、モード選択部46bは、次に、電動駆動系3に異常があるか否かを判定する(ステップS210)。この判定のため、モード選択部46bは異常検知部46b1を有しており、異常検知部36bは、インバーダ32及びバッテリコントローラ34から発電・電動機31、インバーダ32、バッテリ33、バッテリコントローラ34の状態情報を入力し、この状態情報に基づいて電動駆動系3の異常を検知する。また、異常検知部36bはハイブリッドモード制御部36aからバッテリ33の充電状態(SOC)の情報を入力し、バッテリ33の充電状態の異常を検知する。
電動駆動系3に異常が無く、ステップS210の判定がNOであった場合、モード選択部46bはハイブリッドモードを選択し、ハイブリッドモード制御部46aの動作を継続させる(ステップS220)。
電動駆動系3に異常があり、ステップS210の判定がYESであった場合、モード選択部46bは更に電動駆動系3の異常が電動駆動系全体を停止させる必要がある異常であるか否かを判定する(ステップS230)。電動駆動系全体を停止させる必要がある異常とは、例えば、通信異常、初期化異常等である。この判定がNOであった場合、モード選択部46bは更に電動駆動系3の異常が発電・電動機31を停止する必要がある異常であるか否かを判定する(ステップS240)。発電・電動機31を停止する必要がある異常とは、例えば、発電・電動機31の断線、インバータ32の過電流、発電・電動機31及びインバータ32のセンサ異常、バッテリ33の充電状態(SOC)異常等であり、発電・電動機31を停止する必要のない異常とは、例えば、発電・電動機31或いはインバータ32の温度上昇等である。ステップS240の判定がNOであった場合、モード選択部46bは操作パネル35に警告信号を出力し、異常内容を知らせる警告をモニタ35aに表示させる(ステップS250)。
一方、ステップS200,S230,S240のいずれかの判定がYESであった場合、モード選択部46bは非ハイブリッドモードを選択し、ハイブリッドモード制御部46aに電動駆動系3の停止指令を出力しかつ非ハイブリッドモード制御部46cに非ハイブリッドモード指令を出力する(ステップS260)。
ハイブリッドモード制御部46aは電動駆動系3の停止指令を受け取ると、電動駆動系3を停止させる。
非ハイブリッドモード制御部46cは、非ハイブリッドモード指令を受け取ると、操作パネル35に警告信号を出力し、モニタ35aに電動駆動系3が使用できない旨の警告を表示させる(ステップS270)。また、電動駆動系3の異常により電動駆動系3が使用できない場合は、電動駆動系3に異常が発生した旨の警告と異常の内容をモニタ35aに表示させる。非ハイブリッドモード制御部46cは、更に、電磁弁44に制御信号を出力して油圧ポンプ21の最大吸収トルクを減少させる減トルク制御を行い(ステップS280)、エンジン11の目標回転数を低下させるエンジン回転数低下制御を行う(ステップS290)。
なお、図13のフローチャートでは、油圧ポンプ21の最大吸収トルクを減少させる減トルク制御(ステップS280)とエンジン11の目標回転数を低下させるエンジン回転数低下制御(ステップS290)を同時或いは連続的に行ったが、エンジン回転数低下制御を先に行ってスタンバイ状態とし、その後に減トルク制御をしてもよい。また、減トルク制御はエンジン負荷(油圧ポンプ21の吸収トルク)が増加したときに行ってもよい。
非ハイブリッドモード制御部46cは、油圧ポンプ21の最大吸収トルクを減少させる減減トルク制御を行うとき、前述したように、油圧ポンプ21の最大吸収トルクをエンジン11の最大トルクTEmaxeよりも小さい値TPLdに低下させる。
また、非ハイブリッドモード制御部46cは目標回転数設定部46c1を有しており、エンジン回転数低下制御を行うとき、目標回転数設定部46c1は、エンジンコントロールダイヤル12が指示する目標回転数NTと非ハイブリッドモード制御部46cが指示する目標回転数とを入力し、両者の小さい方を選択して燃料噴射制御の目標回転数として設定し、エンジンコントローラ13に出力する。また、非ハイブリッドモード制御部46c(車体コントローラ46)のメモリには、目標回転数設定部46c1に指示する目標回転数として、最大目標回転数NTmaxとエンジン回転数低下制御用の最大目標回転数NTmaxよりも小さい目標回転数NTcが記憶されており、非ハイブリッドモード制御部46cはエンジン回転数低下制御を行わないときは最大目標回転数NTmaxを目標回転数設定部46c1に指示し、エンジン回転数低下制御を行うときはエンジン回転数低下制御用の目標回転数NTcを目標回転数設定部46c1に指示する。これによりエンジン回転数低下制御を行わないときはNT≦NTmaxであるため、目標回転数設定部46c1はエンジンコントロールダイヤル12が指示する目標回転数NTを選択し、エンジン回転数低下制御を行うときでかつエンジンコントロールダイヤル12が指示する目標回転数NTが目標回転数NTcよりも高いときは、NTc≦NTであるため、目標回転数設定部46c1は目標回転数NTcを選択し、エンジンコントローラ13に出力される。
ここで、目標回転数NTcは、エンジン11の最大馬力回転数におけるエンジン11の出力トルクTEc(目標回転数をNTcに設定したときのレギュレーション特性Tgと全負荷特性Tfとの交点におけるエンジン11の出力トルク)が油圧ポンプ21の減トルク制御により低下した最大吸収トルクTPLdに一致する(等しい)かそれよりも大きくなるように設定されている。なお、出力トルクTEcは必ずしも最大吸収トルクTPLdと概ね等しくなくてもよく、最大吸収トルクTPLd付近の値であればよい。例えば、出力トルクTEcは最大吸収トルクTPLdよりも少し小さい値に設定されていてもよい。
以上において、ハイブリッドモード制御部36aは、発電・電動機31を電動機として駆動し、油圧ポンプ21をアシスト駆動するよう発電・電動機31を制御する第1制御装置を構成する。また、モード選択部46bは、発電・電動機31とバッテリ(蓄電装置)33を含む電動駆動系3を使用するハイブリッドモードと電動駆動系3を停止させる非ハイブリッドモードのいずれかを選択するモード選択装置を構成し、非ハイブリッドモード制御部46cは、モード選択部46bにおいて非ハイブリッドモードが選択されたとき、電動駆動系3を停止させ、かつ油圧ポンプ21の最大吸収トルクを低下させる減トルク制御とエンジン11の目標回転数を低下させるエンジン回転数低下制御とを同時に行う制御装置(第2制御装置)を構成する。
本実施の形態のハイブリッド式油圧ショベルの動作を説明する。
<電動駆動系3を使用する通常時>
電動駆動系3に異常が無くかつモード選択スイッチ35bがハイブリッドモードを指示する通常時は、モード選択部46bはハイブリッドモードを選択し(図13のステップS200→S210→S220)、ハイブリッドモード制御部46aは、エンジンコントローラ13からのエンジン回転数とバッテリコントローラ34からの充電状態情報に基づいて、バッテリ33の充電状態が最小限界値(例えば30%)以上でありかつエンジン回転数が最大馬力回転数(定格回転数)NRよりも低いとき、発電・電動機31を電動機として駆動する制御指令をインバータ32に出力し、油圧ポンプ21をアシスト駆動するよう発電・電動機31を制御する(図12のステップS90→S100→S220又はS160→S140)。また、ハイブリッドモード制御部46aは、バッテリ33の充電状態が最小限界値(例えば30%)以上でかつ第1閾値(例えば50%)より小さくかつエンジン回転数が最大馬力回転数(定格回転数)NRよりも低いとき、発電・電動機31を発電機として駆動する制御指令をインバータ32に出力し、バッテリ33を充電するよう発電・電動機31を制御する(図12のステップS90→S100→S110→S120→S130)。
図15は、アシスト制御によるシステム出力トルクの変化を示す図であり、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸はシステム出力トルクを示している。
図15において、油圧ポンプ21の吸収トルク(エンジン11の負荷トルク)がエンジン11の定格トルクToptよりも小さいTPx1にある状態から、例えば走行速度切換スイッチを走行高速に切り換えて行う高速移動等の高負荷作業時に、油圧ポンプ21の吸収トルクが最大吸収トルクTPLcに増加した場合を考える。このとき、ハイブリッド駆動システムの動作点はX1→X2→X3→X4と変化する。
すなわち、油圧ポンプ21の吸収トルクがエンジン11の定格トルクToptよりも小さいTPx1にあるとき、ハイブリッド駆動システムの動作点はX1にある。この状態から油圧ポンプ21の吸収トルクが増加してエンジン回転数が定格回転数NRmaxまで低下すると、燃料噴射量は最大Fmax(図7)となり、エンジン11の出力トルクは定格トルクToptまで増加する(動作点X2)。更にエンジン11の回転数が低下すると発電・電動機31が電動機として作動し(図12のステップS140)、エンジン回転数が定格回転数NRmaxに維持されるよう制御される。また、システム出力トルクはエンジン11の定格トルクToptと発電・電動機31の出力トルクTMaとの合計となる。このとき、アシスト制御の遅れのため、エンジン11の回転数は定格回転数NRmaxよりも一旦低下し(動作点X3)、その後アシスト制御によりエンジン11の回転数は上昇し、定格回転数NRmaxへと戻される(動作点X4)。
図16は、バッテリ充電制御によるシステム出力トルクの変化を示す図であり、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸はシステム出力トルクを示している。
油圧ポンプ21の吸収トルクがエンジン11の定格トルクToptよりも小さいTPy1にあるとき、ハイブリッド駆動システムの動作点はY1にある。この状態でバッテリ充電状態が50%よりも小さくなると(図12のステップS100の判定がYES)、ハイブリッド駆動システムの動作点はY1→Y2と変化し、エンジン11の余剰トルクTGによって発電・電動機31を発電機として作動させ、バッテリ33を充電する充電制御を行う。
以上のアシスト制御と充電制御により、エンジン11がダウンサイジングされていても、油圧ポンプ21の吸収トルクが最大となる高負荷作業も含め、従来通りの作業が可能となる。また、エンジン11を小型化したため、燃費の向上、排ガス特性の改善及び騒音の低減を図ることができる。
<電動駆動系3の異常発生時>
電動駆動系3に異常が発生しかつその異常が電動駆動系全体或いは発電・電動機31を停止させる必要がある異常である場合、モード選択部46bは非ハイブリッドモードを選択し、非ハイブリッドモード制御部46cは電動駆動系3を停止させる処理を行う(図13のステップS200→S210→S230→S260或いはS230→S240→S260)。また、モード選択部46bからの非ハイブリッドモード指令を受けて、非ハイブリッドモード制御部46cは、油圧ポンプ21の最大吸収トルクを低下させる減トルク制御とエンジン11の目標回転数を低下させるエンジン回転数低下制御とを同時に行う(図13のステップS280及びS290)。また、非ハイブリッドモード制御部46cはモニタ35aに電動駆動系3に異常が発生したため電動駆動系3が使用できない旨の警告と異常の内容を表示させる(図13のステップS270)。これによりオペレータは電動駆動系3に異常が発生したことを知り、油圧ショベルを修理・点検のため作業現場から安全な場所まで移動する退避運転を行う。この退避運転には、油圧ショベルが不整地で作業をしていた場合は、フロント作業機などを使用して油圧ショベルを不整地から脱出させる動作も含まれる。
図17は、油圧ポンプ21の減トルク制御とエンジン11の回転数低下制御の効果を示す図である。横軸はエンジン回転数を示し、縦軸はシステム出力トルクを示している。
図17において、Z1は、通常時(ハイブリッドモード時)における高負荷作業時のハイブリッド駆動システムの動作点である。高負荷作業の代表例には、走行速度切換スイッチ41を走行高速に切り換えて走行用の油圧モータ24a,24bを高速小容量モードに切り換え、油圧ショベルを高速で移動する場合やフロント作業機などを使用して油圧ショベルを不整地から脱出させる動作があり、油圧ポンプ21の吸収トルクは最大TPLcとなる。この場合、ハイブリッド制御部46aにより発電・電動機31を電動機として作動させるアシスト制御を行うことで、不足分のトルクTMaが補われる。
図17において、Z2は非ハイブリッドモード時における高負荷作業時のハイブリッド駆動システムの動作点であり、油圧ポンプ21の減トルク制御とエンジン11の回転数低下制御の効果を示している。油圧ポンプ21の減トルク制御により油圧ポンプ21の最大吸収トルクはTPLcからTPLdに減少する。減トルク制御後の油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLdはエンジン11の最大トルクTEmaxeよりも小さく、エンジン11の定格トルクToptよりも大きい値である。また、エンジン11の回転数低下制御によりエンジン11の目標回転数は最大のNTmaxからNTcに低下し、これに伴ってエンジン11の最大馬力回転数はNRmaxからNRcに低下しかつエンジン11の最大馬力回転数における出力トルクはToptからTEcに増加する。図示の例では、目標回転数NTcは出力トルクTEcが最大吸収トルクTPLdにほぼ一致するよう設定されており、TEcはTPLdにほぼ等しい値である。
ここで、電動駆動系3に異常が発生したときに電動駆動系3を停止させるだけである場合は、退避運転のため走行用の油圧モータ24a,24bを高速小容量モードに切り換えて油圧ショベルを高速で移動しようとするとき、或いはフロント作業機などを使用して油圧ショベルを不整地から脱出させようとするとき、油圧ポンプ21の吸収トルク(エンジン負荷トルク)はZ1点のTPLcとなり、エンジン11の負荷トルクはエンジン11の定格トルクToptを上回ってしまうため、エンジンストールを起こしてしまう。
また、電動駆動系3に異常が発生したときに電動駆動系3を停止させるだけでなく、油圧ポンプ21の減トルク制御を行ったとしても、従来の油圧ポンプの減トルク制御における減トルク幅はエンジンのダウンサイジング量に比べて相対的に小さいため、減トルク制御後の油圧ポンプ21の吸収トルク(エンジン負荷トルク)はエンジン11の定格トルクToptよりも小さくならない。このため退避運転を行うとやはりエンジンストールを起こしてしまう。
本実施の形態では、電動駆動系3に異常が発生したときに電動駆動系3を停止させた上で、油圧ポンプ21の減トルク制御とエンジン11の回転数低下制御を行い、油圧ポンプ21の減トルク制御により油圧ポンプ21の最大吸収トルクをTPLcからエンジン11の定格トルクToptより大きく、最大トルクTEmaxeよりも小さいTPLdに減少させ、かつエンジン11の回転数低下制御によりエンジン11の最大馬力回転数NRcにおける出力トルクをToptからTPLdにほぼ等しいTEcに増加させる。これにより油圧ポンプ21の吸収トルクが最大吸収トルクTPLdとなる高負荷時にエンジン11は出力トルクTEcが油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLdにほぼ一致する図17の点Z2で動作し、エンジン11の負荷トルクはエンジン11の最大トルクTEmaxよりも大きくならず、エンジン11はストールを起こすことなく、最大目標回転数NTcにおいてレギュレータ特性TGcを有するエンジンとして動作する。これにより電動駆動系に何らかの異常が発生した場合でも、フロント作業機などを使用して油圧ショベルを不整地から脱出させ、走行用の油圧モータ24a,24bを高速小容量モードに切り換えて、減トルク制御後の油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLdの範囲内で油圧ショベルを高速で移動し、安全な場所で適切な措置をとることができる。また、目標回転数NTcを最大目標回転数として設定したエンジンと同等の出力トルク特性が得られ、最大目標回転数NTcにおいてレギュレータ特性TGcを有するエンジンとして動作するため、燃費の悪化を起こさずに好適なエンジン制御を行うことができる。
<経年変化−電動駆動系取り外し>
経年変化で電動駆動系3が使用できなくなった場合は、オペレータがモード選択スイッチ35bを操作して非ハイブリッドモードの選択を指示すると、ハイブリッドモード制御部35aと非ハイブリッドモード制御部46cは、電動駆動系3に異常が発生した場合と同様、電動駆動系3を停止させ(図13のステップS200→S260)、かつ油圧ポンプ21の最大吸収トルクを低下させる減トルク制御とエンジン11の目標回転数を低下させるエンジン回転数低下制御とを同時に行う(図13のステップS280及びS290)。これによりエンジン11は、電動駆動系3に異常が発生した場合と同様、油圧ポンプ21の吸収トルクが最大吸収トルクTPLdとなる高負荷時に出力トルクTEcが油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLdにほぼ一致する図17の点Z2で動作するようになり、エンジン11だけで油圧ショベルを動作させることができる。また、最大目標回転数NTcにおいてレギュレータ特性Tgcを有するエンジンとして動作するため、燃費の悪化を起こさずに好適なエンジン制御を行うことができる。
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施の形態では、本発明を8トンクラス以下の小型の油圧ショベルに適用した場合のものであり、エンジン11をエンジン11の出力トルクだけでは油圧ポンプ21の最大吸収トルクTPLcを賄えない大きさにダウンサイジングすることで、小型の油圧ショベルであっても電動駆動系の機器の設置スペースを確保しハイブリッド化することを容易にしている。しかし、8トンよりも大きなクラスの油圧ショベルであっても、ハイブリッド化した場合にエンジンを小型化し、電動駆動系の機器設置スペースが拡大されることは有利であり、本発明の適用対象は8トンクラス以下の小型の油圧ショベルに限られず、本発明は8トンよりも大きなクラスの油圧ショベルに適用してもよい。また、本発明は、油圧ショベル等の建設機械に限らず、ホイールローダ等の作業機械に適用してもよい。
また、発電・電動機31のアシスト制御をエンジン回転数が最大馬力回転数よりも低下したときに行うようにしたが、最大馬力回転数以外の基準回転数を設定し、エンジン回転数がその基準回転数よりも低下したときに行うようにしてもよいし、エンジン回転数以外のパラメータ(例えばトルク)を用いてアシスト制御を行ってもよい。
更に、本実施の形態では、アクチュエータが全て油圧アクチュエータである場合について説明したが、アクチュエータの一部(例えば旋回モータ)は電動アクチュエータであってもよい。
また、本実施の形態では、油圧ポンプ21及びパイロットポンプ22と発電・電動機31を動力分配器6を介してエンジン11の出力軸に連結する構成としたが、エンジン11の出力軸に直列に連結する構成であってもよい。