JP6256066B2 - 動電型スピーカーの磁気回路及び動電型スピーカー - Google Patents

動電型スピーカーの磁気回路及び動電型スピーカー Download PDF

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Description

本発明は、動電型スピーカーの磁気回路及び動電型スピーカーに係り、特に、薄型化に適した磁気回路と、それを用いた動電型スピーカーに関する。
動電型スピーカーの薄型化を図る技術として、特許文献1には、コーン型の振動板の凹側に磁気回路を設ける技術と、磁気回路における磁気空隙の範囲に磁束の流れを効果的に集めるために主マグネットとともに反発マグネットを設けることが開示されている。
例えば、特許文献1には、動電型スピーカーとして、コーン型の振動板の凹側に磁気回路を設け、磁気回路として、同一の磁極性を有する面同士がポールを主マグネットと共に挟んで対峙するように配置される反発マグネットを含む反発型磁気回路を用いる構成が開示されている。
また、特許文献2には、反発マグネットを用いるスピーカーとして、ヨークと、ヨークの内側に結合された主マグネットと、主マグネットのヨークと反対側に結合された上部プレートに配置した反発マグネットとを含み、上部プレートとヨークが対向する空隙を磁気空隙として磁気回路を構成することが開示されている。ここでは、反発マグネットの反発力で位置ずれが生じるのを抑制するために、マグネットの外周方向に拡開する傾斜をつけたマグネットガイドを設け、その傾斜をつけた窪みの中に反発マグネットを配置する。
特開2011−223165号公報 特開2004−328210号公報
ボイスコイルを用いる動電型スピーカーはボイスコイルが磁気回路の磁気空隙においてボイスコイルが可動するので、その薄型化を図るには、磁気空隙における磁束密度を大きくしボイスコイルの可動範囲における磁束密度の対称性を確保しながらボイスコイルが振動板等に接触しないようにすることが必要である。
本発明の目的は、磁気空隙における磁束密度を大きくしボイスコイルの可動範囲における磁束密度の対称性を確保しながらボイスコイルが振動板等に接触しないようにする磁気回路及びこれを用いる動電型スピーカーを提供することである。
本発明に係る動電型スピーカーの磁気回路は、円盤状のポールと、ポールと共に磁気空隙を規定するヨークと、ポールおよびヨークの中央部を連結する主マグネットと、同一の磁極性を有する面同士がポールを主マグネットと共に挟んで対峙するように配置される副マグネットと、を含み、ポールの外周端部が、主マグネットおよび副マグネットの外形寸法よりも大きく形成されて突出し、かつ副マグネットが取り付けられている方向に折れ曲がった断面形状を有し、磁気空隙を規定するヨークの外縁部の全高寸法が、ヨークの中央部の厚み寸法と主マグネットの厚み寸法との和寸法以下に設定されて、側面視した場合にポールの外周端部が全て露出する。
本発明に係る動電型スピーカーの磁気回路において、ポールの外周端部と、ヨークの外縁部とが、磁気空隙を規定する最も相対的に近づく角部分に、それぞれ傾斜面を有することが好ましい。
本発明に係る動電型スピーカーの磁気回路において、ポールの外周端部の副マグネットが取り付けられている方向に折れ曲がった断面形状を規定する突出寸法が、ポールの厚み寸法の1/5に設定されていることが好ましい。
本発明に係る動電型スピーカーの磁気回路において、ポールの外周端部の傾斜面、並びにヨークの外縁部の傾斜面を規定するC面寸法が、ポールの厚み寸法の1/3に規定されていることが好ましい。
本発明に係る動電型スピーカーは、コーン型の振動板と、コーン型の振動板の凹側に配置される磁気空隙を有する上記のいずれか一つに記載の磁気回路と、コイルを磁気回路の磁気空隙に配置してコーン型の振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、コーン型の振動板の外周端を支持するエッジと、コーン型の振動板の内周端側を支持するダンパーと、磁気回路およびエッジの外周端およびダンパーの外周端をそれぞれ固定するフレームと、を備え、磁気回路のヨークの外縁部とコーン型の振動板との間の離間距離は、コーン型の振動板が振動したときにヨークの外縁部に接触しない大きさに設定されている。
本発明に係る動電型スピーカーにおいて、磁気回路を含む中央部の全高寸法が、フレームの外周端を含む外周部の全高寸法以下であることが好ましい。
上記構成による動電型スピーカーの磁気回路は、ポールの外周端部が、主マグネットおよび副マグネットの外形寸法よりも大きく形成されて突出し、かつ副マグネットが取り付けられている方向に折れ曲がった断面形状を有するので、この折れ曲がりにより、ヨークに向かい合うポールの外周端部の面積が広くなり、磁束がより多く磁気空隙に集められる。これによって、ボイスコイルが振動板等に接触しないようにしながら、磁気空隙における磁束密度を大きくし可動範囲における磁束密度の対称性を確保できる。
また、動電型スピーカーの磁気回路において、ポールの外周端部と、ヨークの外縁部とが、磁気空隙を規定する最も相対的に近づく角部分に、それぞれ傾斜面を有することで、磁気空隙において互いに向かい合う面積をより広くでき、磁気空隙における磁束密度をより大きくでき、可動範囲における磁束密度の対称性をより改善できる。
また、動電型スピーカーの磁気回路において、ポールの外周端部の副マグネットが取り付けられている方向に折れ曲がった断面形状を規定する突出寸法が、ポールの厚み寸法の1/5に設定される。突出寸法についてこの設定を行うことで、磁気空隙における磁束密度をより大きくでき、可動範囲における磁束密度の対称性をより改善できる。
また、動電型スピーカーの磁気回路において、ポールの外周端部の傾斜面、並びにヨークの外縁部の傾斜面を規定するC面寸法が、ポールの厚み寸法の1/3に規定される。C面寸法についてこの設定を行うことで、磁気空隙における磁束密度をより大きくでき、可動範囲における磁束密度の対称性をより改善できる。
また、本発明に係る動電型スピーカーは、上記構成のいずれか一つの磁気回路を用い、磁気回路のヨークの外縁部とコーン型の振動板との間の離間距離は、コーン型の振動板が振動したときにヨークの外縁部に接触しない大きさに設定されるので、磁気空隙における磁束密度を大きくし可動範囲における磁束密度の対称性を確保しながらボイスコイルが振動板等に接触せず、接触による異音が発生しない。
また、動電型スピーカーにおいて、磁気回路を含む中央部の全高寸法が、フレームの外周端を含む外周部の全高寸法以下であるので、薄型化を実現できる。
本発明に係る実施の形態における動電型スピーカーの構成図で、(a)は上面図、(b)は断面図である。 本発明に係る実施の形態における動電型スピーカーの磁気回路の構成図である。 比較のため従来技術について磁気空隙における磁気特性を示す図で、(a)は磁束分布を示し、(b)は磁気空隙に沿った位置と磁束密度の関係を示す図である。 本発明に係る実施の形態の動電型スピーカーの磁気回路について磁気空隙における磁気特性を示す図で、(a)は磁束分布を示し、(b)は磁気空隙に沿った位置と磁束密度の関係を示す図である。 本発明に係る実施の形態における他の構成の磁気回路について、磁気空隙における磁気特性を示す図で、(a)は磁束分布を示し、(b)は磁気空隙に沿った位置と磁束密度の関係を示す図である。 図3に対応し、磁気回路についてシミュレーションを行うときのパラメータの値と、シミュレーションの結果をまとめた図表である。 本発明に係る実施の形態の動電型スピーカーの磁気回路についてシミュレーションを行った結果を示す図で、Aの値を変化させたときの磁束密度と位置の関係を示す図である。 図7に対し、別のBの値において、Aの値を変化させたときの磁束密度と位置の関係を示す図である。 本発明に係る実施の形態の動電型スピーカーの磁気回路についてシミュレーションを行った結果を示す図で、Bの値を変化させたときの磁束密度と位置の関係を示す図である。 本発明に係る実施の形態の動電型スピーカーの磁気回路についてシミュレーションを行った結果を示す図で、Dの値を変化させたときの磁束密度と位置の関係を示す図である。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下で述べる寸法、形状、材質等は説明のための例示であって、動電型スピーカーの仕様に応じ適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、動電型スピーカー10を示す構成図である。以下では、動電型スピーカー10を単にスピーカー10と呼ぶ。スピーカー10は、後述するコーン型の振動板18を有する略円盤状の音声発生装置である。(a)は振動板18の凹側の方向から見た上面図で、(b)は(a)の任意の中心線に沿った断面図である。
スピーカー10は、外形を形作るフレーム12を備える。また、一つは、フレーム12の内部空間において、コーン型の振動板18と、振動板18のコーン型の凹側に配置され磁気空隙60を有する磁気回路30と、ボイスコイル50と、コーン型の振動板18の外周端を支持するエッジ20と、ボイスコイル50と連結してコーン型の振動板18の内周端側を支持するダンパー22とを備える。
フレーム12は、上面側の上フレーム14と、裏面側の下フレーム16で構成される。上フレーム14には、音波を外部に放射する窓部15が設けられる。図1(a)の例では、6つの窓部15が設けられる。下フレーム16には、スピーカー10を外部に取り付けるための取付フランジ17が設けられる。図1(a)の例では、4つの取付フランジ17が設けられる。上フレーム14と下フレーム16は、それぞれの外周端においてエッジ20の外周端を挟み込み、カシメ等の固定手段で一体化固定される。また、上フレーム14には磁気回路30が固定され、下フレーム16にはダンパーの外周端が固定される。
かかるフレーム12としては、適当な強度を有する材料を所定の形状に成形したものを用いることができる。例えば、樹脂成形品を用いることができる。これに代えて金属板を所定の形状に成形したものを用いてもよい。金属板を用いるときは、アルミニウム板等の非磁性板を用いることが好ましいが、SPCC等の鋼板を用いてもよい。
振動板18は、コーン型に成形された樹脂製で、コーン状に拡がる上面側の外周端は、エッジ20を介してフレーム12に取り付けられ、コーン状に絞られる底面側の内周端は、ボイスコイル50の下端部と接続される。ボイスコイル50に音声に応じた電気信号を供給することで、振動板18はボイスコイル50によって移動駆動され、それによって振動し、外部に音波を放射する。
振動板18の板厚は、スピーカー10の仕様に応じて設定される。一例を述べると、約0.1mmから約0.4mm程度とすることができる。かかる振動板18は、熱可塑性樹脂を所定の形状に成形したものを用いることで得ることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、例えば、発泡ポリプロピレンを用いることができる。もちろん、振動板18は、抄紙工程によりコーン型に成形された紙部材で構成されてもよい。
エッジ20は、振動板18の外周端に沿って配置される円環状形状の可撓性薄板で、振動板18をフレーム12に振動自在に支持する。エッジ20は、フレーム12に連結固定される外周側のガスケット部分と、ガスケット部分の内周側部分で振動板18の外周端に取り付けられる薄肉のロール部分で構成される。ロール部分はフレーム12に対し可動でき、これによって振動板18を振動自在に支持できる。かかるエッジ20としては、熱可塑性樹脂を用い、柔軟性を有する所定の形状に成形したものを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂を用いることができ、例えば、発泡性ポリウレタン樹脂を用いることができる。また、エッジ20の材料として、ゴムや発泡ゴムやコーティング布等でもよい。
エッジ20のガスケット部分とフレーム12との間の連結固定手段、エッジ20のロール部分と振動板18との間の接続手段としては、それぞれ適当な接着剤を用いることができる。このように、振動板18とエッジ20は、個別に製造されたものを接着剤によって接続して用いることができるが、これに代えて、異なる樹脂を一体化成形する二色成形法によって振動板18とエッジ20を一体化したものを用いてもよい。
ダンパー22は、円環状の形状を有し、ボイスコイル50を磁気空隙60の所定位置に配置するためのもので、円環状の内周端が振動板18の内周側の底面に固定され、外周端がフレーム12に固定される。「所定位置に配置する」とは、スピーカー10が初期状態にあるときに、ボイスコイル50のコイル54の位置が次に述べる磁気回路30を構成するポール32の中心線CLの位置に配置し、これを中立位置とすることである。ダンパー22の固定手段としては、適当な接着剤を用いることができる。かかるダンパー22としては、柔軟性を有する材料を所定の形状に成形したものを用いることができる。例えば、不織布にフェノール樹脂を含浸させたものを材料として、これを所定の形状に成形して用いることができる。
ボイスコイル50は、円環状形状に形成されるボビン52と、ボビン52の円環状形状に沿って巻回されるコイル54と、コイル54から引き出される2本の錦糸線を含んで構成される。図1では、錦糸線の図示を省略した。
ボビン52は、円環状形状に形成される薄い絶縁体の筒部材である。ボビン52の内周側の筒状空間には、磁気回路30のポール32と、ポール32を挟んで取り付けられる主マグネット36と副マグネット38が配置され、ボビン52の円環状形状の外側には磁気回路30のヨーク34が配置される。内側のポール32と主マグネット36と副マグネット38と、外側のヨーク34との間に形成される円環状の隙間空間は、磁気回路30における磁気空隙60である。換言すれば、ボビン52は、磁気回路30における円環状の磁気空隙60に挿入されて配置される。ボビン52の厚みは、これに巻回されるコイル54を支持でき、円環状形状を維持できる強度を有すれば、薄いほど好ましい。
かかるボビン52は、薄板を所定の円環状形状に曲げて成形したものを用いることができる。薄板としては、適当な強度と耐熱性を有する金属箔または樹脂フィルムを用いることができる。金属箔としては、アルミニウム箔を用いることができる。樹脂フィルムとしては、ポリイミド(PI)フィルム、ガラス入りポリエーテルイミド(TIL)フィルム等を用いることができる。
コイル54は、絶縁被膜付き銅線をボビン52の円環状形状の外周面に沿って所定の巻数で巻回して形成される。絶縁被膜付き銅線を積層巻としてもよい。ボビン52の上に配置されるコイル54の厚みは、(絶縁被膜付き銅線の外径×積層数)となる。ボビン52上のコイル54の巻回を固定する手段としては、適当な接着剤を用いることができる。
コイル54の所定の巻数は、スピーカー10の仕様に応じて設定される。一例を挙げると、約40ターンから約100ターン程度である。絶縁被膜付き銅線としては、断面が円形の銅線を絶縁ワニスで被膜したものを用いることができる。絶縁被膜付き銅線の外径は、一つにおける振動板18の動作範囲等から設定することができる。
(ボビン52の厚み+コイル54の厚み)は、磁気空隙60の隙間寸法に比べ十分小さいことが必要である。例えば、(ボビン52の厚み+コイル54の厚み)を、磁気空隙60の隙間寸法の約20%から約35%程度とすることができる。
磁気回路30は、円盤状のポール32と、ポール32と共に磁気空隙60を規定するヨーク34と、主マグネット36と、副マグネット38を含んで構成される内磁形磁気回路である。図2は、磁気回路30の対称軸の半分の部分を抜き出した詳細図で、(a)は断面図、(b)は、磁気空隙60を規定する部分として、ポール32の折れ曲がり部40とこれに向かい合うヨーク34の部分の拡大図である。なお、図2において、±Lは中立状態のときのボイスコイル50の両端の位置、±Sはボイスコイル50が移動駆動されるときにおける最大ストロークの両端の位置を模式的に図示するものである。
ポール32は、円板形状の本体部31と、本体部31の外周端で副マグネット38側に折れ曲がった折れ曲がり部40を有する折れ曲がり付き円盤形状の部品である。ポール32の外径は、主マグネット36の外径よりも大きく、副マグネット38の外径よりも大きい。すなわち、ポール32の外周端は、主マグネット36の外径からも、副マグネット38の外径からも突き出す。この突き出した部分が副マグネット38側に折れ曲がって折れ曲がり部40が形成される。
折れ曲がり部40は、ヨーク34に向かい合うポール32の対向面積を増加させてポール32を通る磁束をできるだけ磁気空隙60に集中させるために設けられる。ポール32の外周端部に設けられる折れ曲がり部40の角部分に設けられるポール側の傾斜部41は、角部分の面に対し傾斜角度θでDの長さを面取りしたもので、ヨーク34に向かい合うポール32の対向面積をさらに増加させる。折れ曲がり部40の角部分とは、折れ曲がり部40とヨーク34の外縁部35に向かい合って磁気空隙60を規定するときに、互いに最も相対的に近づく角部分である。傾斜部41の傾斜角度θは45度とすることが好ましい。傾斜角度45度として面取りされた面はC面と呼ばれ、そのときのDの長さはC面の大きさを示す代表寸法としてC面寸法と呼ばれる。
かかるポール32としては、磁性体で構成され、所定の形状に成形されたものを用いることができる。成形法としては、プレス加工、切削加工、鍛造等が用いられる。
ヨーク34は、円板形状の中央部33と、中央部33の外径よりも大きな内径を有する円環状の外縁部35と、中央部33と外縁部35とを接続する接続部とを有するカップ型形状の部品である。接続部の厚みは、中央部33の厚みよりも薄く、外縁部35の厚みよりも薄い。ここで、厚みとは、ヨーク34の軸方向に沿った寸法である。したがって、ヨーク34において、中央部33の外周端と外縁部35の内周端との間に円環状の溝部が形成される。磁気空隙60は、この溝部の一部を利用して形成される。
ヨーク34の外縁部35の先端部でポール32の折れ曲がり部40に向かい合う角部に設けられるヨーク側の傾斜部43は、ポール側の傾斜部41と同様に、角部の面に対し傾斜角度θでC面寸法を面取りしたもので、ポール32に向かい合うヨーク34の対向面積を増加させる。ヨーク34の外縁部35の角部分とは、ポール32の折れ曲がり部40に向かい合って磁気空隙60を規定するときに、互いに最も相対的に近づく角部分である。ヨーク側の傾斜部43における傾斜角度θは、ポール側の傾斜部41と同様に45度とすることが好ましい。ポール側の傾斜部41とヨーク側の傾斜部43を合わせて、磁気空隙60における傾斜部42と呼ぶ。傾斜部42は、ポール32の外周端部の折れ曲がり部40と、ヨーク34の外縁部35とが、磁気空隙60を規定するときに、最も相対的に近づく双方の角部分にそれぞれ設けられる傾斜部である。
カップ型形状の外底面に相当するヨーク34の上面は平坦面で、フレーム12に固定される。なお、図2に示すザグリ部37は、場合によっては省略できる。かかるヨーク34としては、磁性体で構成され、所定の形状に成形されたものを用いることができる。成形法としては、プレス加工、切削加工、鍛造等が用いられる。
主マグネット36は、上面がヨーク34の中央部33の下面に連結され、下面がポール32の本体部31の上面に連結される磁石である。副マグネット38は、上面側がポール32の本体部31の下面に連結される磁石である。ポール32の上面側に連結される主マグネット36の下面の磁極性と、ポール32の下面に連結される副マグネット38の上面の磁極性は同じである。例えば、主マグネット36の上面の磁性極がS極、下面の磁性極がN極とすると、副マグネット38の上面の磁性極がN極、下面の磁性極がS極である。このように、副マグネット38は、同一の磁極性を有する面同士がポール32を主マグネット36と共に挟んで対峙するように配置される。
主マグネット36と副マグネット38とは、同じ磁石材料を用い、同じ形状に成形したものを用いることができる。磁石材料としては、アルミニウムニッケルコバルトの合金であるアルニコ系磁石、ネオジムを含むネオジム系磁石を用いることができる。
磁気回路30において、ヨーク34とフレーム12との間、ヨーク34と主マグネット36の間、主マグネット36とポール32の間、副マグネット38とポール32の間の固定手段としては、適当な接着剤を用いることができる。
磁気回路30における磁気空隙60は、ポール32の外周端部に設けられる折れ曲がり部40と、ヨーク34の円環状の内径側端部との間に円環状形状で形成される隙間である。この磁気空隙60に、ボイスコイル50が挿入される。磁気空隙60の隙間寸法は、スピーカー10の仕様等によって設定される。一例を挙げると、約0.8mmから約1.5mm程度である。
磁気回路30における各要素の寸法関係としては、ヨーク34の磁気空隙60を規定する外縁部35の全高寸法H1が、ヨーク34の中央部33の厚み寸法と主マグネット36の厚み寸法との和寸法H2以下に設定されて、側面視した場合にポール32の外周端部が全て露出するように設定される。ここで、ヨーク34の中央部33の厚み寸法としては、ザグリ部37の窪み寸法を差し引かない最大厚み寸法を用いる。
また、スピーカー10の構成要素と磁気回路30の要素の間の寸法関係としては、磁気回路30におけるヨーク34の外縁部35とコーン型の振動板18との間の離間距離H3は、コーン型の振動板18が振動したときにヨーク34の外縁部35に接触しない大きさに設定される。これにより、振動板18が振動したときにヨーク34の外縁部35に接触して異音を生じることがない。
また、スピーカー10と磁気回路30との間の寸法関係としては、磁気回路30の中央部における全高寸法H4は、フレーム12の外周端を含む外周部の全高寸法H0以下に設定される。
図3から図5は、磁気回路30における各要素の構成の仕方と、磁気空隙60の磁気特性との関係をみるためにシミュレーションを行った結果を示す図である。各図において(a)は、図2で説明した磁気回路30の構成図にシミュレーションで得られる磁束分布を重ねた図である。(a)におけるCLは、ポール32の厚みについての中心線である。(b)は、(a)の結果に基づいて、磁気空隙60におけるボイスコイル50の移動方向に沿った位置に対する磁束密度の関係を示す図である。縦軸は規格化した磁束密度、横軸はボイスコイル50の移動方向に沿った位置で、CLの位置はポール32の中心線の位置である。(36)として示される位置は、CLの位置よりも主マグネット36側の位置である。(38)として示される位置は、CLの位置よりも副マグネット38側の位置である。
図3は、比較のために、従来技術の構成におけるシミュレーションの結果を示す図である。この構成では、ポール32に折れ曲がり部が設けられず、代わりに、副マグネット38の下面が第2ポール39に連結される。シミュレーションの結果は、(a)に示されるように、ポール32を通る磁束の多くがヨーク34側に向かっている。そして(b)に示されるように、磁束密度の最大値はかなり高い値となっているが、磁束密度が最大値を取る位置は、CLの位置よりも主マグネット36の側にずれている。このように、磁束密度の最大値は高い値であるが、ボイスコイル50の移動方向に沿った磁束密度の対称性がよくない。
図4は、図2の構成についてのもので、ポール32に折れ曲がり部40が設けられ、磁気空隙60における傾斜部42も設けられる。シミュレーションの結果は、(a)に示されるように、ポール32を通る磁束が折れ曲がり部40の広い面積に渡り均一化されてヨーク34側に向かっている。そして(b)に示されるように、磁束密度の最大値が図3に比べて低く押えられているが、磁束密度が最大値を取る位置は、CLの位置である。このように、磁束密度の最大値と、ボイスコイル50の移動方向に沿った磁束密度の対称性とのバランスがよく取れている。
図5は、図4の構成に対し、ヨーク34の外縁部35の全高寸法H1を短くし、側面視したとき、ポール32が完全に露出し、さらに主マグネット36も露出するようにしたものである。シミュレーションの結果は、図4とほぼ同じである。すなわち、(a)に示されるように、ポール32を通る磁束が折れ曲がり部40の広い面積に渡り均一化されてヨーク34側に向かっている。また、(b)に示されるように、磁束密度の最大値が図3に比べて低い値に押えられていて、磁束密度が最大値を取る位置は、CLの位置となっている。このように、磁束密度の最大値と、ボイスコイル50の移動方向に沿った磁束密度の対称性とのバランスがよく取れている。
図3から図5の結果から、図4、図5のように、ポール32に折れ曲がり部40を設け、折れ曲がり部40とヨーク34の外縁部35にそれぞれ傾斜部41、43を設けることで、磁束密度と対称性のバランスが取れることが分かった。そこで、図2に示す各寸法A、B、C、Dの最適値を求めるために、A、B、C、Dのうちの1つの値を変数として、シミュレーションを行った。Aは、ポール32において、本体部31から突き出す折れ曲がり部40の突出寸法である。Bは、主マグネット36の本体部31の厚み寸法で、副マグネットの厚み寸法も同じBである。Cはポール32の本体部31の厚み寸法である。Dは、ポール側の傾斜部41のC面寸法で、ヨーク側の傾斜部43のC面寸法も同じである。なお、A、B、C、Dの値は、規格化した値である。
図6は、シミュレーションに用いたA、B、C、Dの値と、シミュレーションの結果をまとめた図である。図7から図10は、A、B、C、Dの影響度を見るために、A、B、C、Dのうちの1つの値を変数とし、それ以外のA、B、C、Dの値を固定して、シミュレーションを行った結果を示す図である。これらの図は、磁気空隙60におけるボイスコイル50の移動方向に沿った位置に対する磁束密度の関係を示す図で、縦軸は規格化した磁束密度、横軸はボイスコイル50の移動方向に沿った位置で、CLの位置はポール32の厚みについての中心線の位置である。
図7は、B=6、C=3、D=1として、折れ曲がり部40の突出寸法Aを変数としたときのシミュレーション結果を示す図である。図7に示されるように、A=0からA=3へ向かってAの値を増加させるにつれて、磁束密度の最大値が低下する。また、対称性は、A=0.6が最もよく、その他は対称性があまり良くない。
図8は、B=6、C=4、D=1.34として、折れ曲がり部40の突出寸法Aを変数としたときのシミュレーション結果を示す図である。図8に示されるように、A=0.6からA=2へ向かってAの値を増加させるにつれて、磁束密度の最大値が低下する。また、対称性は、A=0.8が最もよく、その他は対称性があまり良くない。
図9は、A=0.6、C=3、D=1として、主マグネット36と副マグネット38の厚み寸法Bを変数としたときのシミュレーション結果を示す図である。図9に示されるように、B=6からB=7へBの値を増加させると、対称性を損なわずに、磁束密度の最大値が増加する。
図10は、A=0.8、B=6、C=4として、傾斜部42のC面寸法Dを変数としたときのシミュレーション結果を示す図である。図10に示されるように、D=1.34からD=1とすると、磁束密度が増加するが対称性が悪くなる。
再び図6に戻り、シミュレーションの結果のまとめを見ると、各寸法は、ポール32の厚み寸法Cを基準として、磁束密度の分布形における対称性のよいものは、A/C=1/5、D/C=1/3であることが分かる。これ以外は、対称性がよくない。また、Bの値を大きくすることで対称性を損なわずに磁束密度の最大値を増加させることができる。これらのことから、磁束密度と対称性のバランスを取るには、A/C=1/5、D/C=1/3とし、その上でBの値を変更して磁束密度の最大値を所望の値とすることがよい。このようにして、一つにおいて、磁気空隙60における磁束密度を大きくしボイスコイル50の可動範囲における磁束密度の対称性を確保しながら、ボイスコイル50が振動板18等に接触しないように薄型化を図ることができる。
10 (動電型)スピーカー、12 フレーム、14 上フレーム、15 窓部、16 下フレーム、17 取付フランジ、18 振動板、20 エッジ、22 ダンパー、30 磁気回路、31 (ポールの)本体部、32 ポール、33 (ヨークの)中央部、34 ヨーク、35 (ヨークの)外縁部、36 主マグネット、37 ザグリ部、
38 副マグネット、39 第2ポール、40 (ポールの)折れ曲がり部、41、42、43 傾斜部、50 ボイスコイル、52 ボビン、54 コイル、60 磁気空隙。

Claims (6)

  1. 円盤状のポールと、
    該ポールと共に磁気空隙を規定するヨークと、該ポールおよび該ヨークの中央部を連結する主マグネットと、
    同一の磁極性を有する面同士が該ポールを該主マグネットと共に挟んで対峙するように配置される副マグネットと、
    を含み、
    該ポールの外周端部が、該主マグネットおよび該副マグネットの外形寸法よりも大きく形成されて突出し、かつ該副マグネットが取り付けられている方向に折れ曲がった断面形状を有し、
    該磁気空隙を規定する該ヨークの外縁部の全高寸法が、該ヨークの該中央部の厚み寸法と該主マグネットの厚み寸法との和寸法以下に設定されて、側面視した場合に該ポールの該外周端部が全て露出する、動電型スピーカーの磁気回路。
  2. 前記ポールの前記外周端部と、前記ヨークの前記外縁部とが、前記磁気空隙を規定する最も相対的に近づく角部分に、それぞれ傾斜面を有する、請求項1に記載の動電型スピーカーの磁気回路。
  3. 前記ポールの前記外周端部の前記副マグネットが取り付けられている方向に折れ曲がった断面形状を規定する突出寸法が、前記ポールの厚み寸法の1/5に設定されている、請求項1または2に記載の動電型スピーカーの磁気回路。
  4. 前記ポールの前記外周端部の前記傾斜面、並びに前記ヨークの前記外縁部の前記傾斜面を規定するC面寸法が、前記ポールの厚み寸法の1/3に規定されている、請求項2記載の動電型スピーカーの磁気回路。
  5. コーン型の振動板と、
    該コーン型の振動板の凹側に配置される前記磁気空隙を有する請求項1から4のいずれか一つに記載の磁気回路と、
    コイルを該磁気回路の該磁気空隙に配置して該コーン型の振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、
    該コーン型の振動板の外周端を支持するエッジと、
    該コーン型の振動板の内周端側を支持するダンパーと、
    該磁気回路および該エッジの外周端および該ダンパーの外周端をそれぞれ固定するフレームと、
    を備え、
    該磁気回路の前記ヨークの前記外縁部と該コーン型の振動板との間の離間距離は、該コーン型の振動板が振動したときに該ヨークの該外縁部に接触しない大きさに設定されている、動電型スピーカー。
  6. 前記磁気回路を含む中央部の全高寸法が、前記フレームの前記外周端を含む外周部の全高寸法以下である、請求項5に記載の動電型スピーカー。
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