しかしながら、上記特許文献1に開示された組積造の壁構造は、上下のブロック間に目地モルタルが充填された構成である。このため、当該壁構造が緊締具を軸として面外方向に曲げ力を受けた場合には、面外方向内側となる上下ブロック間では、上下のブロック体が近接してブロック間の目地モルタルが圧迫されることで、目地モルタル又はブロック本体にひび割れが発生するおそれがある。一方、面外方向外側となる上下ブロック間では、上下のブロック体が互いに逆方向に引っ張られることで、ブロック間の目地モルタルとブロック体とが離間してしまうおそれがある。このように、上記特許文献1に開示された組積造の壁構造は、面外方向の曲げに弱い(脆い)という問題がある。
そこで、本発明は、面外方向の曲げによる破壊を抑制することができる組積造の壁構造を提供することを目的とする。
本発明に係る壁構造は、鉛直方向に延設される軸部材に沿って上下方向に複数のブロックを積み上げて形成される組積造の壁構造であって、複数のブロックはそれぞれ、軸部材に沿った状態で当該軸部材と一体化されると共に、壁構造の一方の側面を形成する表面と、壁構造の他方の側面を形成する裏面と、表面の上端と裏面の上端との間に設けられる上面と、表面の下端と裏面の下端との間に設けられる下面とを有し、互いに重なり合う上側のブロックの下面、及び下側のブロックの上面の少なくとも一方において、表面側縁部及び裏面側縁部に沿って弾性を有する一対のクッション材が設けられていることを特徴とする。
本発明に係る壁構造では、ブロックが軸部材に沿った状態(軸部材を挿通させた状態又は軸部材に沿設された状態)で軸部材と一体化されるので、壁構造は、軸部材のしなりに追従可能なものとなる。例えば軸部材のしなりによって壁構造が一方の側面側(ブロックの表面側)が反るような曲げ変形(面外変形)が生じた場合には、上下ブロック間の表面側縁部に沿って設けられたクッション材は圧縮され、上下ブロック間の裏面側縁部に沿って設けられたクッション材は伸長される。その後、上記曲げ変形を生じさせる応力がなくなると、クッション材は弾性力によって元の状態に戻る。このように、上記壁構造によれば、上下ブロック間に設けられた一対のクッション材が壁構造の面外方向の曲げに追従して圧縮又は伸長することで、ブロックのひび割れ等の発生を抑制することができる。
また、上記壁構造では、一対のクッション材は、表面側縁部及び裏面側縁部に沿って連続して延設されていてもよい。
上記壁構造によれば、壁構造の曲げ変形に追従可能なクッション材が、表面側縁部及び裏面側縁部に沿って連続して延設されるので、上下ブロック間のいずれの位置においても、ブロックのひび割れ等の発生を抑制することができる。また、このように延設されたクッション材により、ブロック間の水密性を高めることもできる。
また、上記壁構造では、ブロックは、表面、裏面、上面、及び下面の各端部に連結される一対の小口面を有し、一対の小口面の少なくとも一方には、クッション材が設けられていてもよい。
上記壁構造では、同じ高さで隣接する左右ブロック間にもクッション材が設けられる。したがって、壁構造全体の変形によって生じる上下左右のブロック間の隙間が狭まりや広がりに対してもクッション材が追従可能となるので、ブロックのひび割れ等の発生を効果的に抑制することができる。
また、上記壁構造では、ブロックは、表面、裏面、上面、及び下面の各端部に連結される一対の小口面を有し、クッション材は、一方の小口面から上面を介して他方の小口面に向かって連続して設けられていてもよい。
上記壁構造によれば、一方の小口面から上面を介して他方の小口面に亘って連続してクッション材が設けられるので、ブロック間の水密性をより高めることができる。また、このようにクッション材を設けることにより、各ブロックは、表面(又は裏面)から見て、周囲四方をクッション材で包囲された状態となる。これにより、壁構造は、面外方向はもちろん、面内方向の変形に対しても追従可能となり、ブロックのひび割れ等の発生をより効果的に抑制することができる。
また、上記壁構造では、一対のクッション材の間には、充填材が充填されていてもよい。
上記壁構造によれば、クッション材を介して上下方向に互いに対向する2つのブロックが充填材により一体化されるので、壁構造全体としての強度の向上が図られる。また、クッション材が充填材の縁部に立ち上がる壁として機能するので、充填材の漏れ出しを防止することもできる。
また、上記壁構造では、ブロックの上面及び下面のうち少なくとも一方には、溝部が形成されており、当該溝部に充填材が充填されていてもよい。
上記壁構造によれば、溝部によって充填材の充填量を増すことができるので、上下ブロック間の連結強度を向上させることができる。
また、上記壁構造では、ブロックの一対の小口面の少なくとも一方には、溝部に連続する側溝部が形成されており、当該側溝部に充填材が充填されていてもよい。
上記壁構造によれば、左右に並べた2つのブロック間に設けられる側溝部に充填材が充填されるので、左右ブロック間の連結強度を向上させることができる。
また、上記壁構造では、ブロックには、当該ブロックの上面及び下面を貫通して軸部材を挿通させるための孔部が設けられており、孔部の内壁と軸部材との間に設けられた隙間に充填材が充填されていてもよい。
上記壁構造によれば、軸部材を挿通させる孔部に充填材が充填されることとなり、上下ブロック間のみならず、積層される全てのブロックが充填材を介して一体化されることとなるので、壁構造としての強度をより向上させることができる。
また、上記壁構造では、充填材は、フロー値が20cm以上であるグラウト材であってもよい。
上記壁構造によれば、充填材が充填領域(溝部、側溝部、孔部等)に隙間なく充填されるので、ブロック間の連結強度をさらに向上させることができる。
また、上記壁構造では、上下方向に積み上げた複数のブロック毎に挟持力を付与する挟持手段が設けられていてもよい。
上記壁構造によれば、挟持手段で上下ブロック間に挟持力を付与することでクッション材を弾性変形させ、ブロック間の隙間を調整することができる。また、挟持手段で複数のブロックを挟み込む力を調節することで、複数のブロックを積み上げた高さを調整することができるので、壁構造の高さを調整することもできる。
本発明によれば、面外方向の曲げによる破壊を抑制することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る壁構造の一部を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る壁構造1は、鉄筋コンクリート造の基礎2の縁部に形成された立ち上がり部2a上に、鉛直方向に延設される垂直補強材(軸部材)3に沿って複数の直方体状のブロック10が積み上げられて形成される組積造の壁構造である。ブロック10は、例えばALC(軽量気泡コンクリート)素材原料、特に脱型後の絶乾状態での比重を0.27〜0.8の範囲とする軽量気泡コンクリート素材原料が型枠に充填され、発泡養生されることで形成される。
まず、図2〜図6を用いて、壁構造1の組積単位となるブロック10について説明する。図2は、ブロック10の平面図である。図3は、ブロック10の底面図である。図4(a)及び図4(b)は、ブロック10の正面図及び背面図である。図5(a)及び図5(b)は、ブロック10の左側面図及び右側面図である。図6は、図2に示すVI−VI線に沿った断面図である。なお、図2〜図6では、壁構造1においてブロック10の周囲に設けられるクッション材6(詳しくは後述する)を含めて図示している。
図2〜図6に示すように、ブロック10は、壁構造1の屋外側の側面(一方の側面)を形成する表面11(図7参照)と、壁構造1の屋内側の側面(他方の側面)を形成する裏面12と、表面11の上端と裏面12の上端との間に設けられる上面13と、表面11の下端と裏面12の下端との間に設けられる下面14とを有している。また、ブロック10は、表面11、裏面12、上面13及び下面14の各端部に連結される一対の小口面15,16を有している。ここで、ブロック10の表面11及び裏面12が互いに対向する方向(図2のZ方向)を厚さ方向と定義する。また、ブロック10の上面13及び下面14が互いに対向する方向(図4(a)のY方向)を高さ方向と定義する。また、厚さ方向及び高さ方向に垂直な方向(図2及び図4(a)のX方向)を長手方向と定義する。
図2、図3及び図6に示すように、ブロック10は、ブロック10の上面13の厚さ方向における中央部において、長手方向に等間隔に並んだ3つの断面円形の孔部18を有している。各孔部18は、上面13から下面14まで貫通するように設けられている。孔部18の径d1は、垂直補強材3の径よりも大きくされているので、孔部18に垂直補強材3を挿通させた場合、孔部18の内壁と垂直補強材3との間に隙間が設けられる。ここで、ブロック10の断熱性を確保するという観点、具体的には、軽量気泡コンクリート部分の欠損部分をブロック全体で見て比較的小さいものとするという観点から、孔部18の径d1は、ブロック10の厚さの1/10〜1/4の範囲に含まれていることが好ましい。ここで、ブロック10の厚さとは、表面11と裏面12との間の距離である。本実施形態では一例として、ブロック10の厚さは約250mmとされており、孔部18の径d1は、上述の範囲に含まれているものとする。
図6に示すように、ブロック10の内部には、補強鉄筋17a〜17dが、厚さ方向及び高さ方向の両方に平行(長手方向に垂直)なブロック10の断面の四隅のそれぞれにおいて、長手方向に延在している。具体的には、補強鉄筋17aが、表面11と上面13とが交わる角の近傍を通るように延在している。また、補強鉄筋17bが、裏面12と上面13とが交わる角の近傍を通るように延在している。また、補強鉄筋17cが、表面11と下面14とが交わる角の近傍を通るように延在している。また、補強鉄筋17dが、裏面12と下面14とが交わる角の近傍を通るように延在している。
図3、図5及び図6に示すように、ブロック10の下面14は、厚さ方向における中央部において、長手方向に延在する溝部14bを有している。溝部14bの表面11側及び裏面12側には、溝部14bが形成されていることによって相対的に立ち上がった形状の凸部14a及び凸部14cが、所定の厚みをもって形成されている。ここで、溝部14bの深さd2は、断熱性を確保するという観点から、ブロック10の高さの1/20〜1/5の範囲に含まれていることが好ましい。ここで、ブロック10の高さとは、上面13と下面14(凸部14a又は凸部14c)との間の距離である。本実施形態では一例として、ブロック10の高さは約150mmとされており、溝部14bの深さd2は、15mm(ブロック10の高さの約1/10)とされている。
図2、図3及び図5(a)に示すように、裏面12側から表面11側に向かって左側(以下、単に「左側」と記す)の小口面15は、厚さ方向における中央部において、溝部14bに連続すると共に高さ方向に延在する側溝部15bを有している。側溝部15bの表面11側及び裏面12側には、側溝部15bが形成されていることによって相対的に立ち上がった形状の凸部15a及び凸部15cが、所定の厚みをもって形成されている。
図2、図3及び図5(b)に示すように、裏面12側から表面11側に向かって右側(以下、単に「右側」と記す)の小口面16は、厚さ方向における中央部において、溝部14bに連続すると共に高さ方向に延在する側溝部16bを有している。側溝部16bの表面11側及び裏面12側には、側溝部16bが形成されていることによって相対的に立ち上がった形状の凸部16a及び凸部16cが、所定の厚みをもって形成されている。
ここで、側溝部15b及び側溝部16bの深さd3は、断熱性を確保するという観点から、ブロック10の高さの1/20〜1/5の範囲に含まれていることが好ましい。本実施形態では一例として、側溝部16bの深さd3は、溝部14bと同じ15mm(ブロック10の高さの約1/10)とされている。
続いて、壁構造1について説明する。図1に示されるように、立ち上がり部2aは、ブロック10の厚さとほぼ同じ大きさの幅で直線状に延びている。この立ち上がり部2aの上面に複数のブロック10を長手方向に連なるように一列に並べることで、壁構造1の1段目が形成される。また、1段目を形成する複数のブロック10の上に1段目と同様に複数のブロック10を並べることで、壁構造1の2段目が形成される。さらに複数のブロック10を水平方向に並べると共に垂直方向に積み上げていくことで、壁構造1の3段目以降が形成される。
ここで、複数のブロック10は、上下に隣接するブロック10,10間で孔部18が連続する(水平位置が一致する)ように積み上げられている。これにより、1つの垂直補強材3を複数のブロック10に挿通させることができる。また、本実施形態では一例として、複数のブロック10は、上下に隣接するブロック10,10間で小口面15(又は小口面16)の水平位置が一致しないように、つまり芋目地が発生しないようにジグザグ状(千鳥状)に積まれている。これにより、壁構成の安定性が高められている。
また、垂直補強材3は、左右に並べられた複数のブロック10の孔部18二つ置きに、孔部18に挿通されている。これにより、各ブロック10に設けられた3つの孔部18のうち少なくとも1つの孔部18に垂直補強材3が挿通されるので、各ブロック10は少なくとも1本の垂直補強材3によって支持される。
また、水平方向に延びる軸部材であって壁構造1を補強するための水平補強材4が、ブロック5段置きに配置されている。水平補強材4は、上下に隣接するブロック10,10の間に形成される空間、すなわち上方のブロック10の溝部14bによって形成される溝を通ってブロック10の長手方向に延在するように配置されている。
続いて、図7を用いて、壁構造1において上下に隣接するブロック10,10間の連結構成、及び左右(長手方向)に隣接する左右ブロック10,10間の連結構成のそれぞれについて詳細に説明する。図7(a)は、ブロック10の長手方向に垂直であり且つブロック10の孔部18の中心軸に沿った断面形状を示す図である。図7(b)は、ブロック10の高さ方向に垂直であり且つブロック10の高さ方向における中央部を通る断面形状を示す図である。
図7(a)に示すように、互いに重なり合う上側のブロック10(以下「上ブロック10」と記す)の下面14、及び下側のブロック10(以下「下ブロック10」と記す)の上面13の少なくとも一方において、表面側縁部13a,14d及び裏面側縁部13b,14eに沿って一対のクッション材6a,6bが設けられている(図2,図3参照)。ここで、表面側縁部13aは、表面11と上面13とが交わる縁部であり、表面側縁部14dは、表面11と下面14とが交わる縁部である。裏面側縁部13bは、裏面12と上面13とが交わる縁部であり、裏面側縁部14eは、裏面12と下面14とが交わる縁部である。
また、図7(b)に示すように、互いに長手方向に隣接する左側のブロック10(以下「左ブロック10」と記す)の小口面16、及び右側のブロック10(以下「右ブロック10」と記す)の小口面15の少なくとも一方において、一対のクッション材6a,6bと連続するように、一対のクッション材6c,6dが設けられている。つまり、ある1つのブロック10に着目すると、クッション材6は、一方の小口面15から上面13(又は下面14)を介して他方の小口面16に向かって連続して設けられている。
ここで、クッション材6a〜6dは、弾性を有するものである。なお、ここでいう「弾性」には、粘弾性が含まれる。すなわち、クッション材6a〜6dは、弾性又は粘弾性を有するものであり、例えばゴム、ゴムテープ、シーリング材、エプトシーラー(登録商標)等が挙げられる。本実施形態では一例として、クッション材6a〜6dは、ブロック10に塗付により設けられるペースト状のシーリング材であるものとして説明する。
クッション材6a,6bは、施工時において、例えば下ブロック10の上面13に上ブロック10を積む前に、下ブロック10の上面13の表面側縁部13a,裏面側縁部13bに沿って長手方向に連続するように塗布される。ここで、クッション材6a,6bは、上ブロック10の下面14の表面側縁部14d,裏面側縁部14eに沿って長手方向に連続するように塗布されてもよい。本実施形態では、クッション材6a,6bは、上ブロック10の凸部14a,14cと下ブロック10の上面13とが重なり合う領域全体をカバーするように塗布される(設けられる)ものとする。ただし、クッション材6a,6bは、必ずしも上記領域全体をカバーする必要はなく、クッション材6a,6bの厚さ方向における幅は、任意に定めてよい。
クッション材6c,6dは、施工時において、例えば左ブロック10の小口面16の右側に右ブロック10を配置する前に、左ブロック10の小口面16の凸部16a,16cに塗付される。ここで、クッション材6c,6dは、右ブロック10の小口面15の凸部15a,15cに塗布されてもよい。本実施形態では、クッション材6c,6dは、左ブロック10の凸部16a,16cと右ブロック10の凸部15a,15cとが重なり合う領域全体をカバーするように塗布される(設けられる)ものとする。ただし、クッション材6c,6dは、必ずしも上記領域全体をカバーする必要はなく、クッション材6c,6dの厚さ方向における幅は、任意に定めてよい。
クッション材6a,6bは、例えば壁構造1が面外方向の曲げ力を受けて曲げ変形(面外変形)を生じた場合に、当該曲げ変形に応じて変形(伸長又は圧縮)することで、曲げによる壁構造1(ブロック10)の破壊を抑制する役割を果たす。具体的には、例えば垂直補強材3のしなりによって壁構造1の屋外側(一方)が反るような曲げ変形が生じた場合には、上下ブロック10,10間の表面側縁部13a,14dに沿って設けられたクッション材6aは圧縮され、上下ブロック10,10間の裏面側縁部13b,14eに沿って設けられたクッション材6bは伸長される。その後、上記曲げ変形を生じさせる応力がなくなると、クッション材6a,6bは弾性力によって元の状態に戻る。すなわち、一対のクッション材6a,6bが壁構造1の面外方向の曲げに追従して圧縮又は伸長することで、ブロック10のひび割れ等の発生が抑制される。
また、クッション材6c,6dは、例えば壁構造1が面内方向の曲げ力を受けて曲げ変形(面内変形)を生じた場合に、当該曲げ変形に応じて変形(伸長又は圧縮)することで、曲げによる壁構造1(ブロック10)の破壊を抑制する役割を果たす。すなわち、クッション材6a,6bと共にクッション材6c,6dが設けられていることで、壁構造1全体の変形(面外変形及び面内変形)によって生じる上下左右のブロック10,10間の隙間の狭まりや広がりに対しても追従可能となり、ブロック10のひび割れ等の発生が抑制される。
また、クッション材6a〜6dは、ブロック10,10同士を接着し、後述するグラウト材(充填材)Gの漏洩を防止する役割を果たす。また、壁構造1の屋外側を形成する表面11側のクッション材6a,6cは、外部からの雨水の進入等を防止する役割も果たす。
上下左右に他のブロック10が積層されているブロック10に着目すると、表面11側から見て、このブロック10の四方を取り囲むように、クッション材6a,6cが設けられるものとなっている(図4(b)参照)。また、裏面12側から見て、このブロック10の四方を取り囲むように、クッション材6b,6dが設けられるものとなっている(図4(a)参照)。これにより、壁構造1は、面外方向はもちろん、面内方向の変形に対しても追従可能となっている。また、ブロック10間の水密性も高められている。
挟持部5は、垂直補強材3を接続及び支持すると共に、複数のブロック10に上下方向の挟持力を付与する挟持手段である。挟持部5は、座金5aと、ナット5bと、高ナット5cとを備えている。座金5aは、例えばブロック10の孔部18よりも径が大きい円盤状の支持金物である。座金5aは、ブロック10の孔部18を塞ぐ位置において、ブロック10の上面13に当接する位置に設けられる。ナット5bは、座金5aの上面に当接する位置に設けられ、高ナット5cは、ナット5bよりも背が高い部材であり、ナット5bの上側に設けられる。
垂直補強材3の上端及び下端はそれぞれ雄ネジ加工されている。垂直補強材3の下端は、下方に位置する挟持部5(以下「下方挟持部5」と記す)の高ナット5cに螺合され、垂直補強材3の上端は、上方に位置する挟持部5(以下「上方挟持部5」と記す)の座金5a及びナット5bを介して、上方挟持部5の高ナット5cに螺合される。
例えば、垂直補強材3は、施工時において、複数段(この場合4段)積み上げられた一番上のブロック10の孔部18から挿入され、垂直補強材3の下端が、下方挟持部5の高ナット5cの上側部分に螺合される。続いて、垂直補強材3の上部に上方挟持部5の座金5a及びナット5bがこの順に通される。その後、ナット5bが締められることで、座金5aを介して座金5aよりも下方に位置するブロック10に対して、水平方向のずれを拘束する力(挟持力)が付与される。
上方挟持部5のナット5bを貫通して上部に突き出た垂直補強材3の上端部分は、上方挟持部5の高ナット5cの下側部分に螺合される。上方挟持部5の高ナット5cの上側部分には、次(1つ上)の垂直補強材3が螺合される。すなわち、高ナット5cを介して、下側の垂直補強材3と上側の垂直補強材3とが継ぎ合わされる。
このように、挟持部5で上下ブロック10,10間にかかる挟持力を調整することでクッション材6a,6bを弾性変形(圧縮又は伸長)させ、ブロック10,10間の隙間を調整することができる。また、挟持部5で複数のブロック10を挟み込む力を調節することで、複数のブロック10を積み上げた高さを調整することができるので、壁構造1の高さを調整することもできる。
以上のように複数のブロック10を左右に並べると共に上下に積み上げることで、上ブロック10の溝部14bと下ブロック10の上面13との間には、溝S1が形成される。また、左ブロック10の側溝部16bと右ブロック10の側溝部15bとの間には、側溝S2が形成される。また、ブロック10の孔部18と垂直補強材3との間には、隙間S3が形成される。なお、垂直補強材3が挿通されない孔部18においては、孔部18によって形成される空間全体が隙間S3に相当する。
ここで、溝S1、側溝S2、及び隙間S3は、互いに連続した空間を形成する。したがって、例えば上下左右に積まれた複数のブロック10のうち上段に位置するブロック10の隙間S3及び側溝S2等から、グラウト材(充填材)Gを注入することによって、溝S1(一対のクッション材6a,6bの間)、側溝S2(一対のクッション材6c,6dの間)、及び隙間S3にグラウト材Gが充填される。そして、上下ブロック10,10間及び左右ブロック10,10間は、充填後に硬化したグラウト材Gによって連結(一体化)される。ここで、グラウト材Gは、溝S1、側溝S2、及び隙間S3になるべく隙間のないように充填されることが、ブロック10の連結強度の観点からは好ましい。そのため、グラウト材Gのフロー値は、20cm以上であることが好ましく、さらに好ましくは20cm以上50cm以下の範囲に含まれているとよい。このようなグラウト材Gとしては、例えば日鉄住金高炉セメント株式会社製のエスセイバー(登録商標)Hや宇部興産株式会社製の床レベラー(登録商標)G等が挙げられる。
以上説明した本実施形態に係る壁構造1では、上下ブロック10,10間に設けられた一対のクッション材6a,6bが壁構造1の面外方向の曲げに追従して圧縮又は伸長することで、ブロック10のひび割れ等の発生を抑制することができる。また、壁構造1では、壁構造1の曲げ変形に追従可能なクッション材6a,6bが、表面側縁部13a,14d及び裏面側縁部13b,14eに沿って連続して延設されるので、上下ブロック10,10間のいずれの位置においても、ブロック10のひび割れ等の発生を抑制することができる。また、このように延設されたクッション材6a,6bにより、ブロック10間の水密性を高めることもできる。
また、クッション材6a,6bを介して上下方向に互いに対向する2つのブロック10,10がグラウト材Gにより一体化されるので、壁構造1全体としての強度の向上が図られる。また、クッション材6a,6bがグラウト材Gの縁部に立ち上がる水密壁として機能するので、グラウト材Gの漏れ出しを防止することもできる。また、溝部14bによってグラウト材Gの充填量を増すことができるので、上下ブロック10,10間の連結強度を向上させることができる。また、左右に並べた2つのブロック10,10間に設けられる側溝部15b,16bにグラウト材Gが充填されるので、左右ブロック10,10間の連結強度を向上させることができる。
また、垂直補強材3を挿通させる孔部18にグラウト材Gが充填されることとなり、上下ブロック10,10間のみならず、積層される全てのブロック10がグラウト材Gを介して一体化されることとなるので、壁構造1としての強度をより向上させることができる。
また、フロー値が20cm以上であるグラウト材Gを用いることで、グラウト材Gが充填領域(溝S1、側溝S2及び隙間S3)に隙間なく充填されるので、ブロック10間の連結強度をさらに向上させることができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るブロック10では、長手方向に延在する補強鉄筋17a〜17dを備えるものとして説明したが、ブロック10は、必ずしも補強鉄筋17a〜17dを備える必要はない。
また、本実施形態では、ブロック10の下面14に溝部14bを設ける構成としたが、上面13に溝部を設ける構成としてもよい。また、上面13及び下面14の両方に溝部を設ける構成としてもよい。
また、本実施形態では、ブロック10の両方の小口面15,16に側溝部15b,16bを設ける構成としたが、一方の小口面(小口面15又は小口面16)にのみ側溝部(側溝部15b又は側溝部16b)を設ける構成としてもよい。このようにしても、左右ブロック間に空間が形成されるので、本実施形態に係るブロック10と同様の作用効果を奏する。
また、ブロック10のサイズ(厚さ、高さ、長手方向の大きさ)は限定されず、孔部18を設ける個数及び間隔もブロックの大きさ等によって適宜変更してもよい。また、垂直補強材3を挿通させる孔部18の個数(垂直補強材3を挿通させる間隔)も適宜変更してもよい。
また、垂直補強材3は、必ずしもブロック10に設けた孔部18に挿通させる必要はなく、例えば、ブロック10の表面11又は裏面12に沿うように垂直補強材を配設してもよい。この場合には、ブロック10に孔部18を設けなくともよい。また、複数の垂直補強材3を上下に接続するために、必ずしも座金5a、ナット5b、及び高ナット5cを用いた構成とする必要はない。例えば高ナット5cの代わりに別の部材を用いた構成としてもよいし、座金5a、ナット5b、及び高ナット5c以外の部材を用いて接続する構成としてもよい。