以下に、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
本発明に係る芯座標計測装置1(芯座標計測システムと称しても良い)は、図1に示すように、測量機10と、端末装置11とを備えている。又、測定対象物として円柱12が存在する。
測量機10は、一般に建設現場や土木現場で使用され、本体部100と、(視準)望遠鏡101とを備えている。本体部100は、水平方向に回転可能に構成される。望遠鏡101は、本体部100に対して鉛直方向に回転可能に設けられる。そのため、望遠鏡101は、測量機10に対して水平方向及び鉛直方向に回転可能である。
望遠鏡101は、デジタルカメラの機能を有し、望遠鏡の観測方向(光軸の方向)にある対象物の画像を撮影することが出来る。デジタルカメラは、望遠鏡101のレンズの光軸に平行に設置されたCCDカメラ素子を備え、CCDカメラ素子の撮影画像の中心は、望遠鏡の光軸と一致するため、デジタルカメラで撮影した撮影画像の中心位置は、望遠鏡が視準して測距した対象物の表面の測定位置と一致する。
円柱12に望遠鏡101の視準が合わされ、測定命令が測量機10に入力されると、測量機10は、望遠鏡101から円柱12に対して走査光を照射し、その走査光が円柱12から反射され、再び望遠鏡101に入射される。入射された反射光は、測量機10の受光素子により受光信号に変換される。測量機10は、望遠鏡101の水平角度及び鉛直角度を角度検出器で検出する。そして、測量機10の光波距離計は、受光信号を用いて、測量機10から円柱12までの斜距離を計測する。光波距離計は、ターゲットを用いるプリズムモードとターゲットを用いないノンプリズムモードとを有するが、本発明では、ノンプリズムモードを基本とする。測量機10の本体部100(計側部)は、検出した望遠鏡101の水平角度及び鉛直角度と、計測した斜距離とに基づいて、円柱の測量点(視準点)の座標(3次元座標値)を計測する。この円柱の測量点の座標は、例えば、測量機10の機械点の座標を基準として算出される。
端末装置11は、一般に使用されるコンピュータであり、記憶部と、キーボード、マウス等の入力部と、液晶ディスプレイ等の出力部とを備えている。端末装置11は、タッチパネル付きの携帯端末装置、タブレット型端末装置、ウェアラブル型端末装置を含む。端末装置11は、有線又は無線で測量機10と通信可能に接続され、測量機10からのデータを受信して表示したり、測量機10へ命令を送信して、測量機10を操作したりすることが出来る。
円柱12は、例えば、地面に対して斜めに立位している斜杭(斜立坑)やほぼ鉛直に立位している鉛直柱(直杭)を想定する。円柱12は、水平方向及び鉛直方向のどの角度から観測しても、円柱12の軸方向上の中央点を視準することが出来るため、その特性を活かして、測量点における円柱12の芯の座標を算出する。
測量機10、端末装置11は、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。後述する各部についても、CPUがプログラムを実行することで各部の機能を実現する。
次に、図2、図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、測量者は、芯座標計測装置1を持って、測定対象物の円柱12が存在する現場に赴き、芯座標計測装置1の測量機10を設置する。そして、測量者は、測量機10の機械点の座標を測定するように操作し、芯座標計測装置1の機械点測定部201は、測量機10の機械点Mの座標(Xm、Ym、Zm)を測定する(図3:S101)。
機械点測定部201が測量機10の機械点Mの座標を測定する方法に特に限定は無い。例えば、測量機10の設置のエリアにおいて、測量者が、2つの既知点をそれぞれ視準、測距し、機械点測定部201が、測量機10を中心とする2点の既知点のそれぞれの距離と方位角とに基づいて、測量機10の機械点Mの座標を測定することが出来る。他の公知の方法を用いても良い。測量機10の機械点Mの座標を測定することにより、後述する正面中央測量点や正面中央補助点の座標を測量機10の機械点Mの座標を基準として算出することが出来る。
さて、機械点測定部201が処理を完了すると、芯座標計測装置1の測量点測定部202は、測量機10の望遠鏡101から見て、円柱12の正面の左右両縁の中央に位置する正面中央測量点P1の座標(Xp1、Yp1、Zp1)を前記測量機10のノンプリズムモードにより測定する(測距する)(図3:S102)。
測量点測定部202が正面中央測量点P1の座標を測定する方法に特に限定は無い。例えば、円柱12が斜杭の場合、図4Aに示すように、測量者が望遠鏡101で円柱12の正面を見ながら、円柱12の先端(柱頭)から円柱12の下方に向かって所定距離rだけ離れた位置を視準する。この位置P1に特に限定は無い。そして、測量者は、望遠鏡101で位置を見ながら、望遠鏡101の撮影画像400の中心(光軸、焦点)を示す基準マーク401を円柱12の正面の左右両縁402、403の中央に移動させる。
基準マーク401を円柱12の正面の左右両縁402、403の中央に移動させる場合、円柱12の特性から、基準マーク401を、円柱12の正面の左縁402から中央点404までの距離aと、円柱12の正面の右縁403から中央点404までの距離aとが等しくなる位置に移動させれば良い。中央点404が正面中央測量点P1となる。尚、図4Aでは、円柱12が斜杭の場合であるが、円柱12が鉛直柱の場合であっても、同様である。
ここで、測量者が、基準マーク401を正面中央測量点P1に移動させる場合、例えば、図4Bに示すように、望遠鏡101のレンズ又は望遠鏡101の撮影画像を表示する測量機10の表示部に、基準マーク401の中心として複数の同心円を設けた同心円スケール405を設けて、同心円スケール405を目安にして基準マーク401を正面中央測量点P1に移動させても良い。又、同心円スケール405の代わりに、基準マーク401の中心として十字線を設け、十字線の線上に複数の目盛を設けた十字線スケール406を設けても良い。
そして、測量者が、基準マーク401を正面中央測量点P1に移動させた後に、測量キーで測定命令を芯座標計測装置1(又は測量機10)に入力すると、測量点測定部202は、機械点Mを原点として、望遠鏡101の水平角度H1及び鉛直角度V1を既設の角度検出器で測定し、次に、測量機10のノンプリズム型光波距離計を用いて、測量機10から円柱12の正面中央測量点P1までの斜距離L1を測定する。そして、測量点測定部202は、正面中央測量点P1の水平角度H1及び鉛直角度V1と、斜距離L1とに基づいて、正面中央測量点P1の座標(Xp1、Yp1、Zp1)を算出する。
尚、測量機10により測定される水平角度Hは、例えば、3次元座標値の座標系のうち、X方向(例えば、真北)を0度とし、Y方向(真西)へ回転する方向を正の値として定義される。測量機10により測定される鉛直角度Vは、3次元座標値の座標系のうち、Z方向(例えば、真上)を0度とし、上方から下方へ回転する方向を正の値として定義される。
測量点測定部202が処理を完了すると、芯座標計測装置1のベクトル算出部203は、前記円柱12の軸方向12aに沿って平行である円柱方向単位ベクトルesを算出する(図3:S103)。
ベクトル算出部203が円柱方向単位ベクトルesを算出する方法に特に限定は無いが、例えば、ベクトル算出部203の処理は、円柱12が斜杭の場合と円柱12が鉛直柱の場合とで分けることが出来る。そのため、先ず、円柱12が斜杭の場合のベクトル算出部203の処理について説明する。
図5に示すように、円柱12が斜杭の場合、円柱12毎に倒れが異なることから、円柱12毎に円柱方向単位ベクトルesは異なる。そこで、ベクトル算出部203は、測量機10の望遠鏡101を正面中央測量点P1からZ方向の上下のいずれかに操作させ、当該望遠鏡101から見て、前記正面中央測量点P1と異なる点であって、前記円柱12の正面の左右両縁の中央に位置する正面中央補助点P2を前記測量機10のノンプリズムモードにより測定し、前記正面中央測量点P1と、前記正面中央補助点P2とに基づいて、前記円柱方向単位ベクトルesを算出する。
つまり、正面中央補助点P2から正面中央測量点P1までの方向ベクトルは、円柱12の軸方向12aに沿って平行であるため、正面中央補助点P2と正面中央測量点P1とを用いて円柱方向単位ベクトルesを求める。これにより、円柱12の正面の左右両縁の中央に位置する、2つの異なる点P1、P2を測定することで、円柱12の軸方向12a(倒れ)に対応した円柱方向単位ベクトルesを容易に算出することが出来る。
ここで、正面中央測量点P1が円柱12の上方に位置する場合、測量者が、望遠鏡101を下方に操作して、円柱12の下方における円柱12の正面の左右両縁の中央を探し、正面中央測量点P1と同様に、望遠鏡101の撮影画像の基準マークを円柱12の正面の左右両縁の中央に移動させ、測量キーで測定命令を芯座標計測装置1に入力する。すると、ベクトル算出部203は、機械点Mを原点として、望遠鏡101の水平角度H2及び鉛直角度V2を既設の角度検出器で測定し、測量機10から円柱12の正面中央補助点P2までの斜距離L2を測定し、正面中央補助点P2の水平角度H2及び鉛直角度V2と、斜距離L2とに基づいて、正面中央補助点P2の座標(Xp2、Yp2、Zp2)を算出する。
次に、ベクトル算出部203は、下記の式(1)(2)を用い、機械点Mから正面中央測量点P1までの第一の単位ベクトルe1と、機械点Mから正面中央補助点P2までの第二の単位ベクトルe2とを算出する。
e1=P1/|P1| (1)
e2=P2/|P2| (2)
尚、P1、P2は、3次元座標値で構成される座標を示し、機械点Mを基準としている。以下の式中において、点を示す大文字アルファベットも同様である。又、|P1|は、機械点Mから正面中央測量点P1までの距離(絶対値)を示す。以下、同様である。
そして、ベクトル算出部203は、下記の式(3)を用い、第一の単位ベクトルe1から第二の単位ベクトルe2を減算することで、円柱方向単位ベクトルesを算出する。
es=e1−e2 (3)
又、正面中央測量点P1が円柱12の下方に位置する場合は、上述とは逆で、測量者が、円柱12の上方における円柱12の正面の左右両縁の中央を探して、正面中央補助点P2を測定すれば良い。
ここで、ベクトル算出部203は、正面中央測量点P1から円柱12の軸方向12aに沿って所定距離D以上離れた正面中央補助点P2を測定すると好ましい。所定距離Dは、例えば、1m、3m等と設定される。円柱方向単位ベクトルesは、正面中央測量点P1と正面中央補助点P2との間の距離Dが長い程、精度高くなるため、円柱の芯座標を高精度に計測することが出来る。
さて、ベクトル算出部203が処理を完了すると、芯座標計測装置1の角度算出部204は、図6に示すように、前記測量機10の機械点Mから前記正面中央測量点P1までの視準方向単位ベクトルepと前記円柱方向単位ベクトルesとのなす角度αを算出する(図3:S104)。
角度算出部204が角度αを算出する方法に特に限定は無い。先ず、角度算出部204は、上述の式(1)と下記の式(4)を用い、第一の単位ベクトルe1を視準方向方向ベクトルepとして算出する。
ep=e1 (4)
次に、角度算出部204は、下記の式(5)を用い、視準方向単位ベクトルepと円柱方向単位ベクトルesとの内積を求めることで、角度αを算出する。
cosα=ep・es (5)
角度算出部204が処理を完了すると、芯座標計測装置1の第一の背面点算出部205は、前記正面中央測量点P1の座標(Xp1、Yp1、Zp1)と、前記角度αと、前記円柱12の直径d(半径の2倍)とに基づいて、前記正面中央測量点P1から前記視準方向単位ベクトルepの方向に延長して前記円柱12の背面に交わる第一の背面中央点Q1の座標(Xq1、Yq1、Zq1)を算出する(図3:S105)。
ここで、第一の背面点算出部205が第一の背面中央点Q1の座標を算出する方法に特に限定は無い。円柱12の正面縁600と背面縁601とは平行であることから、正面中央測量点P1と第一の背面中央点Q1との直線P1Q1と、円柱12の背面縁601とのなす角度は、角度αに等しくなる。又、円柱12の正面縁600と背面縁601との間の距離は、円柱12の直径dと等しくなる。そこで、第一の背面点算出部205は、下記の式(6)を用い、角度αと、円柱12の直径dとから、直線P1Q1の長さd1を算出する。
d1=d/√{1−(cosα)2} (6)
直線P1Q1の長さd1は、円柱12を視準方向単位ベクトルepに沿って角度αで切断した場合の楕円状の切断面の長径(楕円長径)に相当する。円柱12の直径dは、例えば、測量者により現場で測量された値又は設計上予め設定された値を用い、芯座標算出装置1のメモリに予め記憶されている。又、円柱12の直径dは、望遠鏡101の撮影画像における円柱12の正面の左右両縁の画素数と画素寸法変換係数とに基づいて、望遠鏡101の撮影画像から直接算出しても良い。
次に、第一の背面点算出部205は、下記の式(7)を用い、正面中央測量点P1の座標(Xp1、Yp1、Zp1)から、直線P1Q1の長さd1と視準方向単位ベクトルepとの内積の値だけ平行移動させた第一の背面中央点Q1の座標(Xq1、Yq1、Zq1)を算出する。
Q1=P1+d1・ep (7)
第一の背面点算出部205が処理を完了すると、芯座標計測装置1の第二の背面点算出部206は、前記第一の背面中央点Q1の座標(Xq1、Yq1、Zq1)と、前記角度αと、前記視準方向単位ベクトルepとに基づいて、前記正面中央測量点P1から前記円柱方向単位ベクトルesの方向と垂直の方向に延長して前記円柱12の背面に交わる第二の背面中央点Q2の座標(Xq2、Yq2、Zq2)を算出する(図3:S106)。
ここで、第二の背面点算出部206が第二の背面中央点Q2の座標を算出する方法に特に限定は無い。第一の背面中央点Q1と第二の背面中央点Q2との直線Q1Q2と、第二の背面中央点Q2と正面中央測量点P1との直線Q2P1とのなす角度は、直角であり、正面中央測量点P1と第一の背面中央点Q1との直線P1Q1と、第一の背面中央点Q1と第二の背面中央点Q2との直線Q1Q2とのなす角度は、角度αに等しくなる。そこで、第二の背面点算出部206は、下記の式(8)を用い、第一の背面中央点Q1の座標(Xq1、Yq1、Zq1)から、直線P1Q1の長さd1と角度αの余弦値cosαと円柱方向単位ベクトルesとの内積の値だけ平行移動させた第二の背面中央点Q2の座標(Xq2、Yq2、Zq2)を算出する。
Q2=Q1−d1・cosα・es (8)
そして、第二の背面点算出部206が処理を完了すると、芯座標計測装置1の芯座標算出部207は、前記正面中央測量点P1の座標(Xp1、Yp1、Zp1)と、前記第二の背面中央点Q2の座標(Xq2、Yq2、Zq2)とに基づいて、前記正面中央測量点P1における前記円柱12の芯C1の座標(Xc1、Yc1、Zc1)を算出する(図3:S107)。
ここで、芯座標算出部207が円柱12の芯C1の座標を算出する方法に特に限定は無い。正面中央測量点P1と第二の背面中央点Q2との中点が丁度、円柱12の芯C1に相当することから、芯座標算出部207は、下記の式(9)を用い、正面中央測量点P1と第二の背面中央点Q2との中点である円柱12の芯C1の座標(Xc1、Yc1、Zc1)を算出する。
C1=(P1+Q2)/2 (9)
そして、算出された円柱12の芯C1の座標(Xc1、Yc1、Zc1)は、端末装置11の出力部を介して表示される。これにより、測量者は、正面中央測量点P1における円柱12の芯C1の座標を簡単に確認することが出来る。
このように、本発明では、正面中央測量点P1と正面中央測量点P2との座標をノンプリズムモードで測定し、式(1)−(9)を用いることで、正面中央測量点P1における前記円柱12の芯C1の座標(Xc1、Yc1、Zc1)を簡単に算出することが出来る。特に、本発明では、測量者が目視でスケールのメモリ幅を読むこと無く、望遠鏡101の視野の基準マークを円柱12の正面の左右両縁の中央に合わせて、ノンプリズムモードで測定するだけで良いので、測量者のスケールの読み違いによる測定誤差が生じるおそれが皆無であり、人的な測定誤差を最小限に抑えることが出来る。又、本発明では、単純な式を用いていることから、測定誤差が小さく、円柱12の芯C1の座標の高精度測定に好適である。
尚、円柱12の芯C1の座標は、例えば、円柱12の長さLと、下記の式(10)を用い、円柱12の下面中心点S0(Xs0、Ys0、Zs0)(基端点)を算出するために用いられる。
S0=C1−(L−r)・es (10)
尚、式(10)は、正面中央補助点P2が、正面中央測量点P1よりも下方に位置する場合に適用される。正面中央補助点P2が、正面中央測量点P1よりも上方に位置する場合は、円柱方向単位ベクトルesの方向が逆となり、下記の式(11)となる。
S0=C1+(L−r)・es (11)
ところで、上述では、円柱12が斜杭の場合のベクトル算出部203の処理について説明したが、次に、円柱12が鉛直柱の場合のベクトル算出部203の処理について説明する。
図7に示すように、円柱12が鉛直柱の場合、円柱12は地面に対してほぼ鉛直に立位していることから、円柱方向単位ベクトルesは、Z方向の単位ベクトルezと平行と仮定することが出来る。そこで、ベクトル算出部203は、下記の式(12)を用い、Z方向の単位ベクトルezを円柱方向単位ベクトルes(例えば、Xes=0、Yes=0、Zes=1)として算出する(図3:S103)。
es=ez (12)
これにより、円柱12が鉛直柱の場合は、正面中央補助点P2の座標を測定することなく、Z方向の単位ベクトルezを用いることが出来るため、測量者の手間や時間を削減することが出来る。
尚、この後の処理は、円柱12が斜杭の場合と同様である。先ず、角度算出部204は、図8に示すように、視準方向単位ベクトルepと円柱方向単位ベクトルesとのなす角度αを算出する(図3:S104)。ここで、角度αは、上記の式(5)を用い、視準方向単位ベクトルepと円柱方向単位ベクトルesとの内積で求める。
次に、第一の背面点算出部205は、正面中央測量点P1から視準方向単位ベクトルepの方向に延長して円柱12の背面に交わる第一の背面中央点Q1の座標(Xq1、Yq1、Zq1)を算出する(図3:S105)。ここで、直線P1Q1の長さd1は、上記の式(6)で求め、第一の背面中央点Q1の座標は、上記の式(7)で求める。
更に、第二の背面点算出部206は、正面中央測量点P1から円柱方向単位ベクトルesの方向と垂直の方向に延長して円柱12の背面に交わる第二の背面中央点Q2の座標(Xq2、Yq2、Zq2)を算出する(図3:S106)。ここで、第二の背面中央点Q2の座標は、上記の式(8)で求める。円柱方向単位ベクトルesはZ方向の単位ベクトルであるため、式(8)における、直線P1Q1の長さd1と角度αの余弦値cosαと円柱方向単位ベクトルesとの内積の値は、容易に求めることが出来る。
そして、芯座標算出部207は、正面中央測量点P1における円柱12の芯C1の座標(Xc1、Yc1、Zc1)を算出する(図3:S107)。ここで、円柱12の芯C1の座標は、上記の式(9)で求める。
つまり、円柱12が鉛直柱の場合であっても、S104からS107まで、円柱12が斜杭の場合と同様の式を用いて算出することが出来る。特に、円柱12が鉛直柱の場合、正面中央測量点P1の座標のみをノンプリズムモードで測定するだけで、式(5)−(9)(12)を用いて、正面中央測量点P1における円柱12の芯C1の座標(Xc1、Yc1、Zc1)を簡単に算出することが出来る。又、この場合であっても、測定誤差は小さくなる。更に、正面中央測量点P1と正面中央補助点P2との位置関係に応じて、式(10)又は式(11)を用いることで、円柱12の下面中心点S0(Xs0、Ys0、Zs0)を算出することが出来る。
尚、円柱12が斜杭の場合の処理と円柱12が鉛直柱の場合の処理とで分ける際には、例えば、斜杭モードと鉛直柱モードとを設けて、測量者が、現場の円柱12の種類に応じて、斜杭モードと鉛直柱モードとのいずれかを選択して、ベクトル算出部203の処理を分けるように構成すれば良い。
<実施例>
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
<実施例1>
図1〜図3に基づいて本発明に係る芯座標計測装置1を設計し、測量機10と端末装置11とを組み合わせて実施例1の芯座標計測装置1を作製した。尚、測量機10と端末装置11は無線通信で接続し、測量機10はデータを端末装置11へ無線で送信し、端末装置11はデータに基づいて円柱12の芯C1の座標(Xc1、Yc1、Zc1)を算出するよう構成した。
先ず、直径dが140mm、長さLが1800mmの塩ビ管(塩化ビニル管)を円柱12として用意し、図9Aに示すように、屋内の地面に対して塩ビ管12を斜めに立位させて、この塩ビ管12を斜杭とした。一方、塩ビ管12に対して所定距離だけ離れた位置に芯座標計測装置1の測量機10を設置して、図9Bに示すように、塩ビ管12の上面から下方に所定距離rだけ下がった正面中央測量点P1と、複数の正面中央補助点P2−1、P2−2、P2−3との座標を本発明の実行手順で測定し、正面中央測量点P1における塩ビ管12の芯C1の座標を算出した。
ここで、算出した塩ビ管12の芯C1の座標の測定精度を確認するために、塩ビ管の下面の中心点S0にターゲット90を設置し、ターゲット90の座標を測量機10のプリズムモードで測定し、ターゲットの下面中心点S0とした。一方、算出した塩ビ管12の芯C1の座標から、塩ビ管12の下面の中心点S1の座標を算出し、計測値の下面中心点S1、S2、S3とした。つまり、正面中央測量点P1における塩ビ管12の芯C1の座標を、ターゲット90の位置に換算した。そして、ターゲットの下面中心点S0の座標と計測値の下面中心点S1、S2、S3の座標との差分を算出することで、本発明の計測結果の計測値の下面中心点S1、S2、S3がターゲットの下面中心点S0からどれだけ外れているかを評価した。
又、複数の正面中央補助点P2−1、P2−2、P2−3は、正面中央測量点P1との距離Dを段階的に変更させて、計測値の下面中心点S1、S2、S3を、正面中央補助点P2−1、P2−2、P2−3毎に算出することで、正面中央測量点P1と正面中央補助点P2との距離が与える測定精度の影響を評価した。
その結果、図10に示すように、正面中央測量点P1との距離が1500mm以上離れている正面中央補助点P2−1では、ターゲットの下面中心点S0の座標と計測値の下面中心点S1の座標との差分(S1−S0)が2mm以内であり、測定精度が高いことが確認出来た。又、正面中央測量点P1との距離が長くなる程、測定精度が良好になることが確認出来た。
次に、上述の塩ビ管12を用いて、図11Aに示すように、屋内の地面に対して塩ビ管12をほぼ鉛直に立位させて、この塩ビ管12を鉛直柱とした。塩ビ管12から離れた位置に芯座標計測装置1の測量機10を設置して、図11Bに示すように、塩ビ管12の上面から下方に所定距離rだけ下がった正面中央測量点P1の座標を本発明の実行手順で測定し、円柱方向単位ベクトルをZ方向の単位ベクトルにして、正面中央測量点P1における塩ビ管12の芯C1の座標を算出した。
ここで、塩ビ管12が鉛直柱の場合は、正面中央測量点P1に対応する塩ビ管12の位置にターゲット110を設置し、ターゲット110の座標を測量機10のプリズムモードで測定し、ターゲット110の座標から、ターゲット110の設置における塩ビ管12の芯C2の座標を算出し、その塩ビ管12の芯C2の座標から、予め測定した塩ビ管12の下面中心点S0の座標を減算して、ターゲットによる柱の倒れを算出した。一方、算出した正面中央測量点P1における塩ビ管12の芯C1の座標から、塩ビ管12の下面中心点S0の座標を減算して、計測値による柱の倒れを算出した。つまり、正面中央測量点P1における塩ビ管12の芯C1の座標を、柱の倒れに換算した。そして、ターゲットによる柱の倒れと計測値による柱の倒れとの差分を算出することで、本発明の計測結果の計測値による柱の倒れがターゲットによる柱の倒れからどれだけ外れているかを評価した。
その結果、図12に示すように、ターゲットによる柱の倒れと計測値による柱の倒れとの差分{(C1−S0)−(C2−S0)}が2mm以内であり、測定精度が高いことが確認出来た。
尚、建築工事標準仕様書 JASS 6 鉄骨工事において、高さHの建物の倒れの管理許容差eは、H/4000+7mm、且つ、30mm以下と設定される。これは、一般的に、柱は鉛直に立位していると仮定して検査しており、実施例1でも、塩ビ管12が鉛直柱であると仮定して、その柱の倒れを確認した。
<実施例2>
円柱のサイズを変更して、屋外で実施例1と同様の試験・評価を行った。先ず、直径dが320mm、長さLが3842mmの大型塩ビ管を円柱12として用意し、図13Aに示すように、屋外の地面に対して大型塩ビ管12を斜めに立位させて、この大型塩ビ管12を斜杭とした。そして、大型塩ビ管12から離れた位置に芯座標計測装置1の測量機10を設置して、図13Bに示すように、大型塩ビ管12の上面から下方に所定距離rだけ下がった正面中央測量点P1と、複数の正面中央補助点P2−1、P2−2、P2−3との座標を本発明の実行手順で測定し、正面中央測量点P1における大型塩ビ管12の芯C1の座標を算出した。
測定精度は、実施例1と同様に、大型塩ビ管の下面の中心点S0にターゲット130を設置し、ターゲット90の座標を測量機10のプリズムモードで測定し、ターゲットの下面中心点S0とした。又、算出した大型塩ビ管12の芯C1の座標から、大型塩ビ管12の下面の中心点S1の座標を算出し、計測値の下面中心点S1、S2、S3とした。そして、ターゲットの下面中心点S0の座標と計測値の下面中心点S1、S2、S3の座標との差分を算出することで、本発明の計測結果の計測値の下面中心点S1、S2、S3がターゲットの下面中心点S0からどれだけ外れているかを評価した。尚、屋外での試験では、測量機10とタッチパネル付きの携帯端末装置11との無線通信を確認した。
その結果、図14に示すように、正面中央測量点P1との距離が3500mm以上離れている正面中央補助点P2−1では、ターゲットの下面中心点S0の座標と計測値の下面中心点S1の座標との差分(S1−S0)が2mm以内であり、測定精度が高いことが確認出来た。又、正面中央測量点P1との距離が長くなる程、測定精度が良好になることが確認出来た。
次に、上述の大型塩ビ管12を用いて、図15Aに示すように、屋外の地面に対して大型塩ビ管12をほぼ鉛直に立位させて、この大型塩ビ管12を鉛直柱とした。大型塩ビ管12から離れた位置に芯座標計測装置1の測量機10を設置して、図15Bに示すように、大型塩ビ管12の上面から下方に所定距離rだけ下がった正面中央測量点P1の座標を本発明の実行手順で測定し、円柱方向単位ベクトルをZ方向の単位ベクトルにして、正面中央測量点P1における塩ビ管12の芯C1の座標を算出した。
測定精度は、実施例1と同様に、正面中央測量点P1に対応する大型塩ビ管12の位置にターゲット150を設置し、ターゲット150の座標を測量機10のプリズムモードで測定し、予め測定した塩ビ管12の下面中心点S0の座標を用いて、ターゲットによる柱の倒れを算出した。一方、算出した正面中央測量点P1における大型塩ビ管12の芯C1の座標から、塩ビ管12の下面中心点S0の座標を減算して、計測値による柱の倒れを算出した。そして、ターゲットによる柱の倒れと計測値による柱の倒れとの差分を算出することで、本発明の計測結果の計測値による柱の倒れがターゲットによる柱の倒れからどれだけ外れているかを評価した。
その結果、図16に示すように、ターゲットによる柱の倒れと計測値による柱の倒れとの差分{(C1−S0)−(C2−S0)}が4mm以内であり、測定精度が高いことが確認出来た。
このように、実施例1、2において、本発明における測定結果は、ターゲットによるプリズムモードの測定結果に近く、本発明における円柱の芯座標C1は高精度であることが理解される。
ところで、S102において、測量者が望遠鏡101で円柱12の正面を見ながら、望遠鏡101の撮影画像の基準マーク(中心)を円柱12の正面の左右両縁の中央に移動させる必要があるが、同心円スケールや十字線スケールの設置により、ある程度、測量者の人的な測定誤差を生じ難くすることは出来るものの、完全に無くすことは出来ない。
そこで、測量点測定部202は、望遠鏡101により円柱12の正面が視準されると、望遠鏡101の撮影画像から、円柱12の正面の左右両縁の線を抽出し、抽出した左右両縁の線の中心を算出し、算出した線の中心と撮影画像の中心(基準マーク)との差分を算出して表示するよう構成しても良い。これにより、測量者が、表示された差分に応じて望遠鏡101を操作することで、望遠鏡101の撮影画像の基準マークを円柱12の正面の左右両縁の中央の位置に精度高く移動させることが可能となり、測量者の人的な測定誤差の発生を劇的に減少させることが出来る。
具体的には、図17Aに示すように、測量者が、望遠鏡101で円柱12の正面を視準して、円柱12の正面を含む撮影画像1700を撮影し、所定の命令を測量機10(又は芯座標計測装置1)に入力する。この時点では、望遠鏡101の撮影画像1700の基準マーク1701は円柱12の正面の左右両縁の中央に位置していない。命令の入力に対応して、測量点測定部202は、撮影された撮影画像1700に画像処理を施し、撮影画像1700から、円柱12の正面の左縁(円柱12と外部との境界)を構成する左縁の点1702と、円柱12の正面の右縁(円柱12と外部との境界)を構成する右縁の点1703とを抽出する。測量点測定部202は、抽出した左縁の点1702に基づいて、円柱12の正面の左縁を構成する線1704を算出し、同様に、抽出した右縁の点1703に基づいて、円柱12の正面の右縁を構成する線1705を算出する。これにより、円柱12の正面の左右両縁の線1704、1705を抽出することが出来る。
次に、図17Bに示すように、測量点測定部202は、抽出した円柱12の正面の左右両縁の線1704、1705から、撮影画像1700の基準マーク1701の高さで、且つ、左右両縁の線1704、1705の中心1706を算出する。そして、測量点測定部202は、算出した線1704、1705の中心1706と撮影画像1700の基準マーク1701との差分zを算出して表示する。
ここで、測量点測定部202は、更に、算出した差分zに基づいて、望遠鏡101を水平方向に操作し、線1704、1705の中心1706を撮影画像1700の基準マーク1701に自動的に一致させるよう構成しても良い。これにより、測量者による望遠鏡101の操作調整を不要とするため、測量者は、撮影画像1700の基準マーク1701が円柱12の正面の左右両縁の中央に位置しているかどうかを確認するだけで済み、測量者の人的な測定誤差の発生を更に減少させることが出来る。
又、測量点測定部202が、画像処理により、望遠鏡101の撮影画像から、円柱12の正面の左右両縁の線を抽出する場合、機械学習を用いて、望遠鏡101の撮影画像から、円柱12の領域のみを抽出し、抽出した円柱12の領域から、円柱12の正面の左右両縁の線を抽出するように構成しても良い。例えば、測量点測定部202は、円柱12が鮮明に写っている撮影画像を機械学習部に入力し、円柱12の形状を機械学習部に学習させる。機械学習部で学習させた後は、測量点測定部202は、前記撮影画像を用いて円柱12の領域のみを抽出し、更に、円柱12の正面の左右両縁の線を抽出する。次に、望遠鏡101で他の円柱12が撮影された際に、測量点測定部202は、新たに撮影された撮影画像を学習後の機械学習部に入力すると、当該機械学習部で、円柱12の形状を認識し、円柱12の領域のみを抽出する。つまり、機械学習部で撮影画像中の円柱12の形状を学習させることで、次に入力される撮影画像中の円柱12の形状を精度高く認識し、円柱12の領域のみを抽出することが出来る。特に、撮影画像は、円柱12が存在する周りの背景や天候により、背景に対して円柱12の正面の左右両縁の明確性が左右される。そこで、機械学習を利用することで、ノイズが多い背景であっても、測量者の目視に寄らずに、円柱12の形状を自動的に識別することが可能となる。機械学習部に特に限定は無いが、例えば、機械学習分類器のサポートベクタマシンを採用することが出来る。又、機械学習部は、ディープラーニングの手法を採用することが出来る。
上述の機械学習部を用いることで、測量点測定部202が、望遠鏡101が円柱12の正面に視準されると、自動的に、望遠鏡101の撮影画像の基準マークを円柱の正面の左右両縁の中央に位置させることが出来る。ここで、円柱12が鉛直柱の場合、測量点測定部202が、自動的に、正面中央測量点P1の座標を測定することが出来れば、後の処理は、計算処理であることから、正面中央測量点P1における円柱12の芯C1の座標の算出を全自動で行うことが出来る。つまり、機械学習部による自動視準測量を行うことが出来る。これにより、測量者の人的誤差を皆無とし、測定精度を更に向上させる。又、上述の機械学習部を用いることで、測定対象物の円柱12が動いたとしても、機械学習部で、測量点測定部202が、撮影画像から円柱12の形状を認識し、円柱12の領域のみを抽出することから、機械学習部による自動追尾測量も可能となる。これらは、例えば、測量者が、測量機10を円柱12に向けて設定し、後は、装置の自動処理に任せることが出来るため、省人化に寄与する。
このように、本発明では、測量者による数値の読み取りを無くし、人的な測定誤差の発生を低減し、円柱の芯座標の計測を自動化することが可能であり、様々な分野で応用することが出来る。
本発明では、測量機10と端末装置11が各部を備えるよう構成したが、当該各部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを所定の処理装置に読み出させ、当該処理装置が各部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。更に、各部が実行するステップを本発明の位置計測方法として提供することも可能である。