JP6244244B2 - 心疾患診断装置、心音解析プログラムおよび媒体 - Google Patents

心疾患診断装置、心音解析プログラムおよび媒体 Download PDF

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Description

本発明は、心疾患診断装置、心音解析プログラムおよび媒体に関する。
図1は、心臓200の内部構造を示す。心臓200の内部は、右心室202、左心室204、右心房206、左心房208の4室に仕切られた構造を有する。右心室202、左心室204、右心房206、左心房208の各室の出口には、逆流を防ぐ、肺動脈弁210、大動脈弁212、三尖弁214、僧帽弁216がそれぞれ設けられる。
図2は、2心拍分の心音信号の波形の一例を示す。横軸は時間、縦軸は心音信号の強度を示す。通常、健常者の心音信号には、I音およびII音が含まれる。I音は、三尖弁214および僧帽弁216が閉じる際に生じる心音である。II音は、肺動脈弁210および大動脈弁212が閉じる際に生じる心音である。
心音信号の波形は、I音とII音との間の収縮期、および、II音と次の心拍のI音との間の拡張期を有する。心疾患のある患者の心音は、各弁の周辺で血液の乱流が生じるため、収縮期または拡張期に心雑音が生じる。例えば、心疾患には、弁が十分に開かなくなる狭窄症、弁が完全に閉鎖せずに逆流を生じる閉鎖不全症、右心房206と左心房208を隔てる壁に穴が存在する心房中隔欠損症、右心室202と左心室204を隔てる壁に穴が存在する心室中隔欠損症等がある。
心雑音は、心疾患の種類により発生する時相(収縮期、拡張期)が異なる。例えば、収縮期に心雑音が生じる心疾患には、僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁狭窄、心房中隔欠損、心室中隔欠損等がある。一方、拡張期に心雑音が生じる心疾患には、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁狭窄等がある。なお、心疾患の種類により心雑音の生じる周波数もそれぞれ異なる。
従来の心音情報処理装置は、心音からI音、II音を検出し、収縮期区間から心音を抽出して時間領域で解析する(例えば、特許文献1参照)。また、従来の心雑音自動診断装置は、心疾患毎に、あらかじめ基準となる収縮期雑音の周波数解析パターンをメモリに記憶しておき、その基準パターンと、収縮期心音の周波数解析パターンとを照合して、いずれかの基準パターンに相関するか否かを判断する(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1 特開2013−34670号公報
特許文献2 特開昭63−252136号公報
しかしながら、特許文献1に記載の心音情報処理装置は、時間領域における心雑音の型を判定するのみであり、周辺雑音を除去できない。また、引用文献2に記載の心雑音自動診断装置は、心疾患ごとに用意された基準パターンと、入力心音の周波数解析パターンとのパターン照合を行うのみであり、周辺雑音を除去できない。
本発明の第1の態様においては、生体の心音を電気信号として検出する心音検出部と、電気信号を入力し、予め定められた信号処理を行って心音データを出力する入力信号処理部と、収縮期の心音データの一部の周波数帯域におけるパワースペクトルの形状に基づいて、生体に心疾患があるかどうかを診断する心音解析部とを備えた心疾患診断装置を提供する。
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
心臓200の内部構造を示す。 2心拍分の心音信号の波形の一例を示す。 心疾患診断装置10による判定処理のフローチャートを示す。 心疾患診断装置10の構成の一例を示す。 10心拍分の心音信号の波形の一例を示す。 収縮期区間データおよび拡張期区間データの抽出の一例である。 収縮期区間データの単一対数パワースペクトルを示す。 収縮期の単一対数パワースペクトルと多重対数パワースペクトルを示す。 拡張期の単一対数パワースペクトルと多重対数パワースペクトルを示す。 差分対数パワースペクトルの一例を示す。 収縮期の多重対数パワースペクトルの一例を示す。 拡張期の多重対数パワースペクトルの一例を示す。 差分対数パワースペクトルの一例を示す。 心疾患なし学童1の差分対数パワースペクトルを示す。 心疾患なし学童2の差分対数パワースペクトルを示す。 心疾患あり学童1の差分対数パワースペクトルを示す。 心疾患あり学童2の差分対数パワースペクトルを示す。 診断基準線1の設定例を示す。 心疾患なし学童1に診断基準線1を適用する一例である。 心疾患なし学童2に診断基準線1を適用する一例である。 心疾患あり学童1に診断基準線1を適用する一例である。 心疾患あり学童2に診断基準線1を適用する一例である。 心疾患診断装置10の構成の一例を示す。 本発明の実施形態に係る心疾患診断装置10のハードウェア構成の一例を示す。 本発明の実施形態に係るコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図3は、心疾患診断装置10による心疾患の診断処理のフローチャートを示す。心疾患診断装置10は、心音解析用のプログラムを読み込むことによって、ステップS10−50を実行する。心疾患診断装置10は、被検者の心音信号に基づいて、被検者の心疾患の有無を診断する。本明細書において、心疾患診断装置10が実行するプログラムの各ステップを括弧内に示す。
図4は、心疾患診断装置10の構成の一例を示す。心疾患診断装置10は、心音検出部11、入力信号処理部12、心音解析部13および出力部14を備える。
心音検出部11は、被検者に装着され、被検者の心音を電気信号として検出する。例えば、心音検出部11は、被検者の胸部を伝播する心音振動に応じた心音信号を検出する。心音検出部11は、マイクロフォン、加速度センサ、圧力センサ等で構成される。
入力信号処理部12は、心音検出部11が検出した心音信号に対して所定の信号処理を行うことにより、心音データを生成する。例えば、入力信号処理部12は、フィルタ回路、増幅器およびA/D変換器を有する。フィルタ回路は、心音信号に含まれるDC周波数成分、エイリアシングを引き起こす可能性のある高周波成分、および、心音解析に不要な高周波成分を取り除く。また、増幅器は、A/D変換器の入力レンジに合わせて心音信号を増幅する。A/D変換器は、増幅器が増幅した心音信号をデジタル信号に変換した心音データを生成する。
心音解析部13は、デジタル化された心音データを取得する(S10)。心音解析部13は、予め定められた第1の区間の心音データと、第1の区間と異なる第2の区間の心音データとの相違に基づいて、心疾患の有無を診断する。第2の区間は、第1の区間よりも心雑音が小さい区間であってよい。本例では、心音解析部13は、収縮期を第1の区間として、拡張期を第2の区間とする。例えば、心音解析部13はマイクロコンピュータ等の演算処理装置で構成される。心音解析部13は、区間抽出部131、周波数解析部132、差分対数パワースペクトル算出部133および心疾患診断部134を備える。
区間抽出部131は、デジタル化された心音データから収縮期区間データおよび拡張期区間データを抽出する(S20)。本明細書において、収縮期区間データとは、収縮期の心音データを指す。また、拡張期区間データとは、拡張期の心音データを指す。
周波数解析部132は、収縮期区間データおよび拡張期区間データのそれぞれに対して周波数変換を行い、単一対数パワースペクトルを算出する(S30)。単一対数パワースペクトルとは、1心拍分の対数パワースペクトルである。また、周波数解析部132は、複数心拍における単一対数パワースペクトルに基づいて、多重対数パワースペクトルを算出する。多重対数パワースペクトルとは、複数心拍分の単一対数パワースペクトルを平均したものである。平均値である多重対数パワースペクトルを算出することにより、環境雑音による影響が低減される。
差分対数パワースペクトル算出部133は、周波数解析部132が出力した収縮期および拡張期の多重対数パワースペクトルに基づいて、差分対数パワースペクトルを算出する。差分対数パワースペクトルとは、収縮期の多重対数パワースペクトルと、拡張期の多重対数パワースペクトルとの差である。
心疾患診断部134は、差分対数パワースペクトルから、心疾患の有無を診断する(S40)。心疾患診断部134は、予め定められた心疾患診断基準と差分対数パワースペクトル算出部133から入力された差分対数パワースペクトルとを比較することにより、心疾患の有無を診断する。
出力部14は、心疾患診断部134が診断した結果を外部に出力する(S50)。例えば、出力部14は、診断結果を表示するディスプレイを備える。また、出力部14は、外部に設けられたハードディスク等の記憶装置に出力してよい。
本例の心疾患診断装置10は、入力信号処理部12の備えるフィルタ回路により、周波数の一部を抽出した後に周波数変換する。しかし、心疾患診断装置10は、周波数解析部132の後段にフィルタ回路を配置することにより、心音データを周波数変換した後に、周波数の一部を抽出してもよい。
図5は、10心拍分の心音信号の波形の一例を示す。本例の心音信号の波形は、加速度センサを備える心音検出部11により検出される。10心拍分の心音信号波形からは、収縮期および拡張期の心音信号を10回分取得できる。入力信号処理部12は、被検者の10心拍分の心音信号を、2kHzサンプリング、16ビットでデジタル化する。なお、図5において横軸は時間、縦軸は心音信号の強度を示す。
図6は、収縮期区間データおよび拡張期区間データの抽出の一例である。区間抽出部131は、入力信号処理部12によりデジタル化された心音データから、収縮期区間データおよび拡張期区間データを抽出する。抽出された収縮期区間データおよび拡張期区間データは、周波数解析部132に入力される。また、区間抽出部131は、収縮期および拡張期以外にも、心雑音が含まれる区間と心雑音が含まれない区間をそれぞれ選択して、心音データを抽出してよい。
図7は、収縮期区間データの単一対数パワースペクトルを示す。なお、図7において横軸は周波数[Hz]、縦軸は対数パワースペクトルである。
周波数解析部132は、1心拍毎に抽出された収縮期区間データに対して適当な窓関数を掛ける。その後、周波数解析部132は、窓関数を掛けられた収縮期区間データをフーリエ解析する。本例の周波数解析部132は、図5における最初の収縮期区間データに対して、128ミリ秒(256サンプル)のハミング窓関数を掛ける。また、周波数解析部132は、ハミング窓関数が掛けられた収縮期区間データをフーリエ変換することにより単一対数パワースペクトルを算出する。
図8は、収縮期の単一対数パワースペクトルと多重対数パワースペクトルを示す。太線以外は、10心拍分の単一対数パワースペクトルである。太線は、収縮期の多重対数パワースペクトルである。本明細書における多重対数パワースペクトルは、10心拍分の単一対数パワースペクトルの平均である。ただし、多重対数パワースペクトルは、必要に応じて、予め定められた心拍分の単一対数パワースペクトルの平均であってよい。
単一対数パワースペクトル(図8の太線以外)は、背景ノイズ等の影響で生じる局所的な周波数変動により、収縮期区間データの周波数特性を正確に表現できない。一方、多重対数パワースペクトル(図8の太線)は、複数心拍の単一対数パワースペクトルを平均して、ランダムに発生する局所的なパワースペクトルが抑圧されているので、収縮期区間データの周波数特性をより正確に表現できる。
図9は、拡張期の単一対数パワースペクトルと多重対数パワースペクトルを示す。太線以外は、10心拍分の単一対数パワースペクトルである。太線は、拡張期区間データの多重対数パワースペクトルである。図9は、収縮期区間データの代わりに拡張期区間データを用いる点で、図8と異なる。但し、単一対数パワースペクトルおよび多重対数パワースペクトルの算出方法は基本的に同じである。
図10は、差分対数パワースペクトルの一例を示す。差分対数パワースペクトルとは、収縮期の多重対数パワースペクトル(図8)と、拡張期の多重対数パワースペクトル(図9)との差分である。縦軸は差分対数パワースペクトル、横軸は周波数[Hz]を示す。本例の差分対数パワースペクトルは、0に近い値を示す。
図11は、収縮期の多重対数パワースペクトルの一例を示す。本例の多重対数パワースペクトルは、定常雑音下で測定されている。本例では、周波数800Hz付近に背景雑音によるピークが発生している。例えば、周波数800Hz付近の背景雑音は、聴診部位や、心音マイクと皮膚との装着状態などの測定条件の影響により発生する。また、背景雑音は、測定環境によって生じる定常的な周辺雑音であってよい。
図12は、拡張期の多重対数パワースペクトルの一例を示す。本例の多重対数パワースペクトルは、定常雑音下で測定されている。本例では、周波数800Hz付近に背景雑音によるピークが発生している。つまり、収縮期および拡張期の多重対数パワースペクトルは、定常雑音下において、同一の背景雑音を有する。
図13は、差分対数パワースペクトルの一例を示す。本例の差分対数パワースペクトルは、収縮期の多重対数パワースペクトル(図11)と、拡張期の多重対数パワースペクトル(図12)との差分である。
本例の差分対数パワースペクトルは、収縮期の多重対数パワースペクトル(図11)と、拡張期の多重対数パワースペクトル(図12)との差分をとることにより、周波数800Hz付近の背景雑音が相殺される。一方、拡張期の多重対数パワースペクトルには心雑音が少ないので、収縮期の多重対数パワースペクトルの心雑音は相殺されない。このように、心疾患診断装置10は、収縮期の多重対数パワースペクトルと拡張期の多重対数パワースペクトルとの差分をとることにより、背景雑音を除去できる。
図14は、心疾患なし学童1の差分対数パワースペクトルを示す。本明細書において、心臓検診で心疾患なしと診断された学童を心疾患なし学童と称する。本例の心疾患なし学童を心疾患なし学童1とする。本例の差分対数パワースペクトルは、0を中心に、−1から+1の範囲に収まっている。
図15は、心疾患なし学童2の差分対数パワースペクトルを示す。心疾患なし学童2は、心疾患なし学童1と異なる学童である。本例の差分対数パワースペクトルは、0を中心に、−1から+1の範囲に収まっている。
図16は、心疾患あり学童1の差分対数パワースペクトルを示す。本明細書において、心臓検診で心疾患ありと診断された学童を心疾患あり学童と称する。本例の心疾患あり学童を心疾患あり学童1とする。本例の差分対数パワースペクトルは、特に、50から250Hzの低周波数帯域において、心疾患なし学童と比較して大きな値を有する。
図17は、心疾患あり学童2の差分対数パワースペクトルを示す。心疾患あり学童2は、心疾患あり学童1と異なる心疾患を有する学童である。本例の差分対数パワースペクトルは、特に、50から250Hzの低周波数帯域において、心疾患なし学童と比較して大きな値を有する。
以上の通り、心疾患なし学童1の差分対数パワースペクトル(図14)および心疾患なし学童2の差分対数パワースペクトル(図15)は、0を中心とした値を有している。一方、心疾患あり学童1の差分対数パワースペクトル(図16)および心疾患あり学童2の差分対数パワースペクトル(図17)は、特に、50から250Hzの低周波数帯域において正の大きな値を有する。つまり、心疾患あり学童1および心疾患あり学童2は、収縮期の低周波数帯域において、鋭いピーク形状の心雑音を有することが分かる。このように、心疾患診断装置10は、背景雑音を除去しつつ、収縮期の心雑音だけを算出できる。
次に、心疾患診断装置10による、心疾患の有無の診断方法について説明する。例えば、心疾患診断装置10は、診断周波数帯域において、予め定められた診断基準線に基づいて、差分対数パワースペクトルから心疾患の有無を診断する。診断周波数帯域とは、心疾患あり学童が心雑音を有するであろうと予測される周波数帯域であってよい。一例では、診断周波数帯域は、50Hzから150Hzの低域周波数帯、もしくは、250Hzから650Hzの中間周波数帯域である。
図18は、診断基準線1の設定例を示す。本例の診断基準線1は、50Hzから250Hzの診断周波数帯域において閾値1.78に設定される。閾値が1.78は、収縮期の多重対数スペクトルパワーが拡張期の多重対数スペクトルパワーの約60倍に相当する。心疾患診断装置10は、被検者の差分対数パワースペクトルが、診断基準線1より大きくなる場合、心疾患ありと診断する。一方、心疾患診断装置10は、被検者の差分対数パワースペクトルが、診断基準線1より小さい場合、心疾患なしと診断してよい。
本例の診断基準線1は、1つの診断周波数帯域において、周波数に関係なく一定値を有する。しかし、心疾患診断装置10は、診断基準線1を診断周波数帯域に依存して変動させてもよい。また、心疾患診断装置10は、診断周波数帯域として、複数の周波数帯域を設けてもよい。
図19は、心疾患なし学童1に診断基準線1を適用する一例である。心疾患なし学童1の差分対数パワースペクトルは、診断基準線1を一度も超えないため、心疾患なしと診断される。
図20は、心疾患なし学童2に診断基準線1を適用する一例である。心疾患なし学童2の差分対数パワースペクトルは、診断基準線1を一度も超えないため、心疾患なしと診断される。
図21は、心疾患あり学童1に診断基準線1を適用する一例である。心疾患あり学童1の差分対数パワースペクトルは、診断基準線1を超えるため、心疾患ありと診断される。例えば、心疾患診断装置10は、被検者の差分対数パワースペクトルが、診断基準線1を超えた場合に、心疾患ありと診断する。本明細書において、診断基準線1を超えた場合とは、差分対数パワースペクトルが診断基準線1を一度でも超えた場合であってよい。また、心疾患診断装置10は、予め定められた回数だけ診断基準線1を超えた場合に、差分対数パワースペクトルが診断基準線1を超えたと判断してもよい。一方、心疾患診断装置10は、差分対数パワースペクトルが診断基準線1を超えなかった場合に、心疾患なしと診断してもよい。
図22は、心疾患あり学童2に診断基準線1を適用する一例である。心疾患あり学童2の差分対数パワースペクトルは、診断基準線1を超えるため、心疾患ありと診断される。
他の実施形態において、心疾患診断装置10は、診断基準線1と異なる診断基準線2を有してよい。診断基準線2は、診断基準線1よりも小さい。心疾患診断装置10は、被検者の差分対数パワースペクトルが診断基準線2を超えた周波数帯域の診断周波数帯域に対する割合に応じて、心疾患の有無を診断する。例えば、心疾患診断装置10は、診断周波数帯域に対する、診断基準線2を超えた周波数帯域の割合が、80%以上の場合に、心疾患ありと診断する。一方、心疾患診断装置10は、診断周波数帯域に対する、診断基準線2を超えた周波数帯域の割合が、80%未満の場合に、心疾患なしと診断してよい。これにより、心疾患診断装置10は、被検者の単一対数パワースペクトルが局所的に大きく変動した場合でも、正確に診断できる。
さらに他の実施形態において、心疾患診断装置10は、診断基準線1および診断基準線2の両方を有してよい。この場合、心疾患診断装置10は、被検者の差分対数パワースペクトルが診断基準線1を一度でも超えた場合、および、被検者の差分対数パワースペクトルが診断基準線2を超えた周波数帯域の割合が、予め定められた割合を超えた場合、の少なくとも一方が生じた場合に、心疾患ありと診断する。本例の心疾患診断装置10は、診断基準線1および診断基準線2を最適化することにより、心疾患の診断の精度を向上できる。
なお、心疾患診断装置10は、差分対数パワースペクトルの絶対値と診断基準線1とを比較してもよい。これにより心疾患診断装置10は、差分対数パワースペクトルが負側にピークを有する場合にも、心疾患ありと診断できる。
図23は、心疾患診断装置10の構成の一例を示す。本例の心疾患診断装置10は、予測値生成部15をさらに備える。
予測値生成部15は、過去に取得された心音データに基づいて予測した予測値を生成する。予測値生成部15には、心音解析部13から心音データが入力される。また、予測値生成部15には、区間抽出部131が抽出した収縮期区間データおよび拡張期区間データが入力されてもよい。
例えば、予測値生成部15は、過去の心音データに基づいて、診断基準線1を設定する。予測値生成部15は、被検者に合わせて、予測値の生成に用いる心音データの種類を決定する。例えば、予測値生成部15は、被検者が学童である場合、学童の過去の心音データを選択して、予測値を決定する。また、予測値生成部15は、被検者が女性である場合、女性の過去の心音データを選択して、予測値を決定する。このように、予測値は、被検者に合わせて適宜変更される。なお、予測値の決定は、心疾患診断装置10を操作する人間によりマニュアルで行われてもよい。
以上の通り、本発明に係る心疾患診断装置10は、収縮期の対数パワースペクトルおよび拡張期の対数パワースペクトルの差分をとることにより背景雑音を除去して、心疾患の有無を診断する。つまり、心疾患診断装置10は、背景雑音の影響を受けにくく、簡易に精度のよい心臓検診ができる。また、心疾患診断装置10が抽出する収縮期区間データは、学童に多い心房中隔欠損、心室中隔欠損等の先天性疾患の有力な手がかりとなるため、学童の心疾患の診断に有用である。これにより、心疾患診断装置10は、低価格で、かつ、精度の高い集団検診を実現できる。
図24は、本実施形態に係る心疾患診断装置10のハードウェア構成の一例である。加速度センサ1700は、被検者の心音を電気信号として検出する心音検出部11として機能する。入力信号処理回路1800は、フィルタ回路1820と、増幅回路1840と、A/D変換回路1860とを備え、入力信号処理部12として機能する。フィルタ回路1820は、心音信号に含まれるDC周波数成分、エイリアシングを引き起こす可能性のある高周波成分、および、心音解析に不要な高周波成分を取り除く。増幅回路1840は、A/D変換回路1860の入力レンジに合わせて心音信号を増幅する。A/D変換回路1860は、増幅回路1840が増幅した心音信号をデジタル信号に変換する。そして、コンピュータ1900は、心音解析部13、および、出力部14として機能し、デジタル化された心音データに対して演算又は加工を行う。
図25は、本実施形態に係るコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部とを備える。
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続すると共に、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。また、入出力チップ2070は、入力信号処理回路1800とも接続する。
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を心疾患診断装置の一部として機能させるプログラムは、心音解析モジュール、出力モジュールとを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、心疾患診断装置の一部としてそれぞれ機能させる。
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である心音解析部13、出力部14として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、心音検出部11として機能する加速度センサ1700と、入力信号処理部12として機能する入力信号処理回路1800と合わせて、使用目的に応じた特有の心疾患診断装置が構築される。
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD−ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060(CD−ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
以上に示したプログラム又はモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095の他に、DVD又はCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
10・・・心疾患診断装置、11・・・心音検出部、12・・・入力信号処理部、13・・・心音解析部、14・・・出力部、15・・・予測値生成部、131・・・区間抽出部、132・・・周波数解析部、133・・・差分対数パワースペクトル算出部、134・・・心疾患診断部、200・・・心臓、202・・・右心室、204・・・左心室、206・・・右心房、208・・・左心房、210・・・肺動脈弁、212・・・大動脈弁、214・・・三尖弁、216・・・僧帽弁、1700・・・加速度センサ、1800・・・入力信号処理回路、1820・・・フィルタ回路、1840・・・増幅回路、1860・・・A/D変換回路、1900・・・コンピュータ、2000・・・CPU、2010・・・ROM、2020・・・RAM、2030・・・通信インターフェイス、2040・・・ハードディスクドライブ、2050・・・フレキシブルディスク・ドライブ、2060・・・CD−ROMドライブ、2070・・・入出力チップ、2075・・・グラフィック・コントローラ、2080・・・表示装置、2082・・・ホスト・コントローラ、2084・・・入出力コントローラ、2090・・・フレキシブルディスク、2095・・・CD−ROM

Claims (9)

  1. 生体の心音に基づく電気信号が入力され、予め定められた信号処理を行って心音データを出力する入力信号処理部と、
    第1区間の前記心音データを周波数変換して第1区間パワースペクトルを算出し、第1区間と異なる第2区間の前記心音データを周波数変換して第2区間パワースペクトルを算出し、前記第1区間パワースペクトルと前記第2区間パワースペクトルとの相違に基づいて、前記生体に心疾患があるかどうかを診断する心音解析部と
    を備え
    前記第1区間が収縮期であり、前記第2区間が拡張期である心疾患診断装置。
  2. 前記心音解析部は、
    前記第1区間パワースペクトルの前記第2区間パワースペクトルに対する割合が予め定められた閾値よりも大きいときに、心疾患があると診断する請求項に記載の心疾患診断装置。
  3. 前記心音解析部は、
    前記第1区間パワースペクトルの前記第2区間パワースペクトルに対する割合が、前記心音データの一部の周波数帯域における第1閾値ラインを超える場合に、心疾患があると診断する請求項に記載の心疾患診断装置。
  4. 前記割合は、前記第1区間パワースペクトルの対数をとった第1対数パワースペクトルと前記第2区間パワースペクトルの対数をとった第2対数パワースペクトルとの差分の絶対値である請求項に記載の心疾患診断装置。
  5. 前記心音解析部は、
    前記一部の周波数帯域に前記第1閾値ラインよりも小さい第2閾値ラインを設定し、
    前記差分の絶対値が、前記第2閾値ラインを超える周波数帯域の割合が、予め定められた割合を超えたときに、前記心疾患があると診断する請求項に記載の心疾患診断装置。
  6. 前記第1区間パワースペクトルは、
    複数の心拍分の前記第1区間の前記心音データを周波数変換し、平均したデータであり、
    前記第2区間パワースペクトルは、
    複数の心拍分の前記第2区間の前記心音データを周波数変換し、平均したデータである請求項1からのいずれか1項に記載の心疾患診断装置。
  7. 前記予め定められた閾値として、過去の心音データに基づいて予測した予測値を生成する予測値生成部をさらに備える請求項からのいずれか一項に記載の心疾患診断装置。
  8. コンピュータを、請求項1からのいずれか1項に記載の前記心音解析部として機能させる心音解析プログラム。
  9. 請求項に記載の心音解析プログラムを有する媒体。
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