JP6243975B1 - 異物混入時期判別方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、食品への昆虫等の混入時期を調べる方法として、一般的に、カタラーゼテストが行われている(特許文献1参照)。
しかし、カタラーゼ酵素が分解機能を失うには、100℃近い温度で加熱される必要がある。つまり、食品の加熱温度が80℃程度である場合には、カタラーゼテストでは異物の混入時期を判別できないという欠点があった。
また、人の爪等のカタラーゼ酵素をほとんど含まない異物は、カタラーゼテストが実施できなかった。
また、上記タンパク質系異物及び上記予測異物は、昆虫である。
また、上記タンパク質系異物及び上記予測異物は、人の毛髪又は爪片等の身体破片である。
本発明の異物混入時期判別方法は、加熱工程を経て製造される食品から検出されたタンパク質系異物Xが、食品が加熱を受ける前(加熱工程前)に混入したのか、食品が加熱を受けた後(加熱工程後)に混入したのか、を判別する異物混入時期判別方法である。
本発明に於て対象となる食品は、調理や殺菌のために、1回又は複数回(2回〜3回)の加熱工程を経て製造される加工食品(食料製品)であって、例えば、惣菜、食肉加工品、レトルト食品、冷凍食品、乳製品、飲料、お菓子等である。
タンパク質系異物Xとは、例えば、ゴキブリ、ハエ、ハチ、アリ、クモ等の食品に混入する虞のある昆虫、あるいは、人の毛髪又は爪片、皮膚片等の身体破片である。
図3に示すように、タンパク質系予測異物Yを昆虫(具体的には、クロゴキブリ)と設定した場合について説明する。
先ず、タンパク質系予測異物Yから、5mg〜10mg程度の小切片を複数個採取する。この際、生きたままの昆虫(クロゴキブリ)を捕獲して、その昆虫を凍死させた後、各脚の腿節と脛節を切開して筋肉を必要量(5mg〜10mg)ずつ取り出した各小切片を、小皿10に入れた後、蓋(アルミ板)11を被せ、小皿10と蓋11をプレスして縁を圧着して密封状態とし、アルミニウムシールセル12に密封する。アルミニウムシールセル12は、加熱に伴う予測異物Yの小切片(昆虫の筋肉)の水分の蒸発を防止する。
各分析サンプルS0〜S8の加熱条件を、下記〔表1〕に示す。
ここで、示差走査熱量測定(DSC)とは、分析対象物の温度を所定の条件下で変化させ、その際の熱量収支(エネルギー収支)を求める分析方法である。例えば、昆虫(クロゴキブリ)の筋肉の構成要素には、100℃未満の熱で変性するものが含まれており、これが変性しているかどうかを、示差走査熱量測定によって、熱エネルギーの吸収・放出(吸熱・発熱)を検出して熱量収支を測定する。
実際の示差走査熱量測定に於て、常温(約20℃)から分析をスタートし、10℃〜15℃/分の加熱速度で温度を上昇させて、100℃に至るまでを1stサイクルとし、次に、100℃から−15℃〜−20℃/分の冷却速度で温度を降下させて常温(20℃)に戻してから、再び、10℃〜15℃/分の加熱速度で温度を上昇させて、100℃に至るまでを2ndサイクルとして、分析には、1stサイクルと2ndサイクルの昇温時の熱量収支を利用する。
この示差走査熱量測定によって得られる複数個の分析サンプルS0,S1,S2,S3,…の予測熱分析情報D1を、データベースZに記憶させる。
図5のグラフ図の中央部、2点鎖線で囲った領域に着目すると、各DSC曲線には50℃〜55℃に吸熱ピークP1が存在することが判る。
非加熱の分析サンプルS0のDSC曲線は、55℃付近に吸熱ピークP1を有している。43℃で5時間加熱された分析サンプルS1のDSC曲線は、吸熱ピークP1が約1℃低温側にシフトして54℃近くに存在し、45℃で30分間加熱された分析サンプルS2のDSC曲線は、52℃付近に吸熱ピークP1が移動する。即ち、分析サンプルS1,S2,S3,…の加熱温度が高くなるにつれて、吸熱ピークP1の温度が次第に低温側へ移動していく傾向にある。なお、85℃で2分間加熱された分析サンプルS8は、DSC曲線を図示省略したが、分析サンプルS0〜S7のDSC曲線が示す77℃付近の吸熱ピークP2が消失し、分析サンプルS7のDSC曲線に出現する50℃付近の吸熱ピークP1は、分析サンプルS8の分析結果でも変化しなかった。
次に、図1に示すように、異物Xに対し、示差走査熱量測定を行う。示差走査熱量測定によって検出異物熱分析情報D2を得る工程を、検出異物熱分析工程5とする。
検出異物熱分析工程5に於て、異物Xの熱量収支を検出した結果、図6に示すようなDSC曲線(i)が得られたとする。
判別工程3は、異物Xの熱量収支を、非加熱の分析サンプルS0の熱量収支と、比較して、相互に一致するか判別する第1判別手段1を有している。
図6に示す異物XのDSC曲線(i)は、55℃付近に吸熱ピークP1を有し、全体の波形が、図5に示す非加熱の分析サンプルS0のDSC曲線の波形に一致している。
なお、本発明に於て、「熱量収支が一致する」とは、吸熱ピーク・発熱ピークが高温側・低温側±0.5℃の範囲で相互に近接し、かつ、全体の波形に大きな相違がないことと定義する。
図1に示すように、第1判別手段1で、異物Xの熱量収支が、非加熱の分析サンプルS0の熱量収支と一致していると判別されると、異物X(昆虫)が加熱を受けていない(非加熱)ものと推定され、異物Xは食品の加熱後に混入したと判断する。
先ず、第1判別手段1で、異物Xの熱量収支を、非加熱の分析サンプルS0の熱量収支と、比較して、相互に一致するか判別する。
図7に示すDSC曲線(ii)は、52℃付近に吸熱ピークP1を有し、全体の波形も、非加熱の分析サンプルS0のDSC曲線と少し相違している。従って、異物Xの熱量収支が、非加熱の分析サンプルS0の熱量収支と一致していないと判別される。
次に、異物Xの熱量収支を、加熱された分析サンプルS1〜S8の熱量収支と、比較して、相互に一致するか判別する第2判別手段2を有している。
図7に示すDSC曲線(ii)は、52℃付近に吸熱ピークP1を有し、全体の波形が、図5に示す分析サンプルS2のDSC曲線の波形に一致している。
第2判別手段2で、異物Xの熱量収支が、分析サンプルS2の熱量収支と一致していると判別した場合、異物X(昆虫)が加熱を受けたものと推定され、異物Xは食品の加熱前に混入したと判断する。
なお、判別工程3では、異物Xの熱量収支が、どの分析サンプルS0〜S8の熱量収支とも一致しないこともあり、その場合、分析サンプルS0,S1,S2,S3,…の中に、異物Xと同じ加熱条件で加熱されたものがなかったと判断する。
図2に示すように、人の爪片から複数個の小爪片を採取して、その内の少なくとも1個を非加熱の分析サンプルS0とし、他の複数個の分析サンプルSnを相違する複数の加熱条件で加熱処理する。分析サンプルS1〜S3の加熱条件を、下記〔表2〕に示す。
示差走査熱量測定によって得られる複数個の分析サンプルS0,S1,S2,S3の予測熱分析情報D1を、データベースZに記憶させる。
図8に示すように、非加熱の分析サンプルS0のDSC曲線と、加熱された分析サンプルS1〜S3のDSC曲線では、波形が明らかに相違していることが判る。
非加熱の分析サンプルS0のDSC曲線は、55℃付近に第1の吸熱ピークP1を有し、87℃付近に第2の吸熱ピークP2を有している。
一方、分析サンプルS1のDSC曲線は、57℃付近に第1の発熱ピークP3を有し、86℃付近に第2の発熱ピークP4を有している。
このように、人の爪片から採取した分析サンプルS0〜S3には、加熱すると熱量収支が大きく変化する傾向があることが判る。
異物熱分析工程5に於て、異物Xの熱量収支を検出した結果、図9に示すようなDSC曲線(iii)が得られたとする。
判別工程3は、異物Xの熱量収支を、非加熱の分析サンプルS0の熱量収支と比較して、相互に一致するか判別する第1判別手段1を有している。
図9に示す異物XのDSC曲線(iii)の波形は、図8に示す非加熱の分析サンプルS0のDSC曲線の波形に一致している。また、55℃付近に第1の吸熱ピークP1を有し、87℃付近に第2の吸熱ピークP2を有していることからも、異物Xの熱量収支が、非加熱の分析サンプルS0の熱量収支に一致していると判別でき、異物X(人の爪片)が加熱を受けていない(非加熱)ものと推定され、異物Xは食品の加熱後に混入したと判断する。
先ず、第1判別手段1で、異物Xの熱量収支を、非加熱の分析サンプルS0の熱量収支と比較して、相互に一致か判別する。
図10に示すDSC曲線(iv)は、非加熱の分析サンプルS0のDSC曲線とは全体の波形が相違しており、熱量収支が一致していないと判別される。
図10に示すDSC曲線(iv)は、分析サンプルS2のDSC曲線の波形に一致している。57℃付近に第1の発熱ピークP3を有し、86℃付近に第2の発熱ピークP4を有していることから、異物Xの熱量収支が、分析サンプルS2の熱量収支に一致していると判別でき、異物X(人の爪片)が、分析サンプルS2と同じ加熱条件(似た加熱条件)で加熱を受けたものと推定され、異物Xは食品の加熱前に混入したと判断する。
なお、図1に示すように、判別工程3の判別結果を、記憶する工程を備えていても良く、また、必要に応じて判別結果をプリントアウトしても良い。
4 予測情報記憶工程
5 検出異物熱分析工程
X タンパク質系異物
Y タンパク質系予測異物
Z データベース
S0,Sn 分析サンプル
D1 予測熱分析情報
D2 検出異物熱分析情報
Claims (3)
- 所定の加熱条件での加熱工程を経て製造された食品から検出されたタンパク質系異物(X)の混入した時期が、上記加熱工程前であるか、上記加熱工程後であるか、を判別する異物混入時期判別方法であって、
混入が予測されるタンパク質系予測異物(Y)を設定し、該予測異物(Y)から、少なくとも1個の非加熱の分析サンプル(S0)と、相違する複数の加熱条件で加熱処理された複数個の分析サンプル(Sn)とを、作成し、全ての上記分析サンプル(S0)(Sn)に対し示差走査熱量測定を行い、該示差走査熱量測定によって得た上記分析サンプル(S0)(Sn)の予測熱分析情報(D1)を、データベース(Z)に記憶させる予測情報記憶工程(4)を備え、
食品から検出されたタンパク質系異物(X)に対し示差走査熱量測定を行い、該示差走査熱量測定によって検出異物熱分析情報(D2)を得る検出異物熱分析工程(5)と、
上記異物(X)の上記検出異物熱分析情報(D2)を、上記データベース(Z)に記憶させた予測異物(Y)の上記予測熱分析情報(D1)に、比較して、上記異物(X)の熱量収支が、上記分析サンプル(S0)(Sn)の熱量収支の何れに一致するかを判別する判別工程(3)を備えることを特徴とする異物混入時期判別方法。 - 上記タンパク質系異物(X)及び上記予測異物(Y)は、昆虫である請求項1記載の異物混入時期判別方法。
- 上記タンパク質系異物(X)及び上記予測異物(Y)は、人の毛髪又は爪片等の身体破片である請求項1記載の異物混入時期判別方法。
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JP4920563B2 (ja) * | 2007-11-19 | 2012-04-18 | ハウス食品株式会社 | プラスチック片の混入時期推定方法 |
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CN109580702A (zh) * | 2018-11-26 | 2019-04-05 | 中国石油大学(北京) | 一种流体包裹体的均一温度和冰点温度的测定方法 |
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