JP6243902B2 - アンモニウムジニトラミドベースの液体単元推進薬のための改善されたリアクタ、および、そのようなリアクタを含むスラスタ - Google Patents

アンモニウムジニトラミドベースの液体単元推進薬のための改善されたリアクタ、および、そのようなリアクタを含むスラスタ Download PDF

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Description

本発明は、高効率グリーン推進(HPGP:High Performance Green Propulsion)単元推進薬などのアンモニウムジニトラミドベースの液体単元推進薬のための改善されたリアクタ、および、そのようなリアクタを備えるスラスタ、特には約5Nから数kNのスラスタに関する。
衛星発射台、衛星および別の宇宙船などの、発射用途および宇宙ビークル用途では、液体推進薬スラスタ、液体推進薬ロケットエンジンおよび液体推進薬ガスジェネレータがしばしば使用される。このようなスラスタおよびロケットエンジンは、例えば衛星の軌道操縦および姿勢制御のために、および、別の宇宙ビークルの主推進システムの例えば回転制御および推進薬定置(propellant settling)のために使用され得、この場合、連続的点火、オフモジュレーションの点火、パルスモードのシングルパルスの点火においてしばしばロケットエンジンまたはスラスタが使用され、この継続時間は通常は数分の一秒から1時間となり得る。このような目的のために、通常は0.5Nから約1.5kNの推進力を有する、小型のロケットエンジンまたはスラスタが一般に使用される。
このようなスラスタは、WO2002/096832およびWO2012/166046に記述されるようなアンモニウムジニトラミド(ADN:ammonium dinitramide)ベースの液体単元推進薬上で作動され得る。一部のADNベースの液体単元推進薬は高効率グリーン推進(HPGP:High Performance Green Propulsion)単元推進薬とも称される。
上記のADNベースの液体単元推進薬のためのリアクタは、このようなリアクタを備えるスラスタと共に、WO02/095207に記述されている。このようなスラスタはHPGPスラスタとも称される。
HPGPスラスタを点火する前に、リアクタが通常は(ベッドロード(bed load)および個別の単元推進薬に応じて)300℃から400℃の十分な温度まで予加熱される。反応はヒートベッド温度が200℃を超える時点で既に開始されるが、公称のスタート(nominal start)を実現するには350℃が好ましい。長パルスまたは定常状態の点火の間、触媒ベッド内および燃焼室内に発生する熱が、スラスタ内に噴射される単元推進薬を継続的に加熱するのに十分な量となり、この場合、単元推進薬は触媒ベッドに入るときに実質的に気相となる。液相単元推進薬が触媒ベッドに入る場合には、多孔質触媒ボディが、下流側の燃焼からの熱に露出されるときに、その多孔質ボディ内で発生する高い蒸気圧を原因として、分解する可能性がある。また、着火遅れを原因として液相単元推進薬がヒートベッドの大部分を充填する場合には通常はハードスタート(hard start)が起こる。
予加熱のパワーは、普通、10分から30分までといったように適当な時間内でヒートベッドを十分な温度まで加熱するのみの量である。推進力を増大させるスラスタを用いることにより、一定時間内で特定の予加熱温度に到達させるのに必要となる予加熱パワーが増大する。約1Nから10Nの小型のスラスタの場合、予加熱パワーは通常は10W未満であり、約200Nから500Nの大型のスラスタの場合、予加熱パワーは100W程度である。スラスタの予加熱されたヒートベッドに入るときの加圧された推進薬は通常は10℃〜50℃の温度を有する。
例えば発射台および宇宙船上でのパワー供給はしばしば非常に制限されることから、必要な予加熱温度に到達させるのに必要となるスラスタの予加熱パワーまたは加熱時間を軽減すること、または、必要となる予加熱温度を維持するためのエネルギー消費を軽減することが明確に望まれる。
したがって、本発明の目的は上記の問題を解決することである。
本発明の別の目的および利点が、以下の説明、実施例および添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
本明細書では、「ロケットエンジン」および「スラスタ」という用語は、ノズルを含むようにノズルまで下流側に延在する、推進薬を中に噴射するための、本発明の液体推進薬ロケットエンジンの一部分を示すのに互換的に使用される。
例えば1Nのスラスタでも本発明に従って問題を解決することができるが、実用的な理由により、つまり、寸法が縮小されるとそれに付随して複雑さが増すことを理由として、小型のスラスタに適用されることは稀であり、通常は約5N以上のスラスタに適用される。
本明細書で参照される本発明のロケットエンジンの推進力は通常は5Nから数kNであり、例えば5Nから約3kNまたは5Nから1kNであり、より好適には5Nから約500Nである。
WO02/095207に記述されるスラスタの場合、請求項1の特徴的な技術的特徴により上記の問題が解決され、ここでは、ヒートベッドおよび触媒ベッドを中空ボディ5の内側表面に接触させないように分離させる内側リアクタハウジング45がリアクタ内に含まれる。
内側リアクタハウジング45を用いることにより、熱損失が減少することから、ヒートベッド25がより迅速に予加熱されるようになり、必要とされる予加熱温度でベッドを加熱することを維持しながらエネルギー消費が低減される。
したがって、一態様では、本発明が請求項1に記載のリアクタに関連する。
別の態様では、本発明が、本発明のリアクタを含むスラスタに関連する。
また、参照符号45で示される、本明細書で使用される「内側リアクタハウジング」という用語は、互換的に「ヒートベッドおよび触媒ベッド・ハウジング(heat bed and catalyst bed housing)」とも称され得る。
また、アンモニウムジニトラミド(ADN)およびヒドロキシル基硝酸アンモニウム(HAN:hydroxyl ammonium nitrate)のそれぞれの分解経路は類似することから、本発明のリアクタおよびスラスタは、HANベースの液体単元推進薬にも適すると考えられる。
本発明と共に使用される液体単元推進薬は通常は水性である。
5が中空ボディであり、10が推進薬供給パイプであり、20が噴射器であり、25がペレット26を備えるヒートベッドであり、27がヒートベッドリテーナであり、30が触媒ペレット35を含有する触媒ベッドであり、40が触媒ベッドリテーナであり、45が中に触媒ベッドリテーナ40が装着される内側リアクタハウジングである、リアクタを示す図である。本発明のリアクタに関連して、中空ボディ5はリアクタハウジング5とも称される。 50が燃焼室を示している、本発明のリアクタを備える本発明のロケットエンジンすなわち改善されたHPGPスラスタを示す図である。スラスタに関連して、中空ボディ5はスラスタハウジング5またはスラスタエンベロープ5とも称される。 ヒートベッド25内および触媒ベッド30内まで延在するフランジを有するヒートベッドリテーナ27の一実施形態を示す図である。ヒートベッドリテーナが下流側から示される。
実際では、WO02/095207で開示されるタイプのスラスタは、通常、中空ボディ5の外部表面または噴射器20に適用される加熱によって加熱される。
本発明によると、本発明の内側リアクタハウジング45を単に加熱することで、ヒートベッドを予加熱することに影響を与えることができる。したがって、加熱がスラスタ/リアクタのより小さい部分のみに制限され得る。加えて、内側リアクタハウジングは、放射線を遮蔽することによりヒートベッドからの熱放射を低減するようにも機能し、したがってそれにより、スラスタの予加熱された部分の熱損失を軽減するように機能する。
触媒ベッドリテーナからの熱伝達を改善することにより、内側リアクタハウジングおよびヒートベッドリテーナを介するヒートベッドの再加熱能力を最大化することを目的として、内側リアクタハウジング45は触媒ベッドリテーナ40と一体となるように作られてよいが(例えば、ろう付けまたは溶接により)、実際では一般にはこれは好ましくない。
本発明者らは、本発明のリアクタ、特には例えば200Nのスラスタなどの大型のスラスタの動作中に、触媒ベッドリテーナ40が内側リアクタハウジング45より大幅に高い温度を有することを見出した。したがって、触媒ベッドリテーナ40は、内側リアクタハウジング45の周囲部分が膨張することに関連して触媒ベッドリテーナが特には径方向により大きく膨張するのを受け入れるために、ルースフィットにより内側リアクタハウジング45内に装着されなければならない。これは約200N以上の大型のエンジンの場合に特に重要である。
したがって、内側リアクタハウジング45および触媒ベッドリテーナ40は特に大型のエンジンでは別個の部品であることが好ましい。例えば、触媒ベッドリテーナは、内側リアクタハウジング45の底部にある内側円周フランジ(図1および2に示される)上に載置されてよい。別個の触媒ベッドリテーナは、内側リアクタハウジングから着脱可能となるように、および、交換可能となるように作られ得る。
内側リアクタハウジング45は、スラスタを点火することにより下流側で発生する熱をエンジン内の上流側へヒートベッドに戻すように誘導するように機能し、それにより、熱がヒートベッドおよび触媒ベッドから中空ボディ5へとの径方向に誘導されることが防止される。
本発明のリアクタは、好適には、図2に示されるような、ロケットエンジンまたはスラスタの一部分を形成する。
図1を参照するその最も一般的な実施形態では、本発明のリアクタが、上流側端部から順番に、噴射器20と、ヒートベッド材料26を備えるヒートベッド25と、ヒートベッドを触媒ベッドから分離させるリテーナ27と、少なくとも約1000℃の温度までの耐熱性および耐焼結性を有する多孔質触媒ペレット35の触媒ベッド30と、触媒ベッド内で触媒ボディを保持するためのリテーナ40と、ヒートベッドおよび触媒ベッドを中空ボディ5の内側表面に接触させないように分離させる内側リアクタハウジング45と、を装備する中空ボディ5を備え、ここでは、内側リアクタハウジングが熱伝導性を有し、ヒートベッドおよび触媒ベッドが内側リアクタハウジング45に熱接触する。
リアクタ内の全体の空隙容積は、本質的に、ヒートベッド内に含有されるヒートベッド材料内の任意の隙間スペースと、触媒ベッド内に含有される触媒ベッド材料内の任意の隙間スペースと、触媒ベッド内の材料の孔とで形成される。
ロケットエンジンの場合、リアクタが図2に示されるエンジンの一部を形成する。分かり易いように、例えば、推進薬供給システム、推進薬バルブ、サーマルスタンドオフ(thermal standoff)といった、上流側部品など、さらには、ヒートベッドを加熱するための加熱器(ヒドラジンスラスタの場合に触媒ベッドを加熱するのに従来使用されている)、および、加熱器のためのサーマルスタンドオフなどの、ロケットエンジンに取り付けられる従来使用されるいかなる部品も図2では排除されている。本開示を読むことにより、ロケットエンジンのための別の部品も必要になることは当業者であれば直ちに認識するであろう。したがって、リアクタを閉じ込める中空ボディはエンジンの中空ボディであり、その中空ボディ内に推進薬が噴射されて燃焼される。したがって、リアクタによって発生する可燃成分を燃焼させるための燃焼室がリアクタの下流側に存在する。
本発明者らが、特定のパルスモードでWO02/095207で説明されるようにスラスタを動作させる場合にハードスタートが起こることを発見した。ハードスタートとは、スラスタ内で推進薬を点火するときに過圧状態になることを意味する。最悪のケースでは、これは爆発の形態をとる。一回のハードスタートでもエンジンに有害であることは明白であり、最悪の場合には破壊に至る。ハードスタートの問題は、5N、22Nおよび200Nのスラスタの場合に、液体のADNベースの単元推進薬を使用してスラスタを動作させるときに観察されている。
本発明者らは、パルスドモード(pulsed mode)の点火時に見られるハードスタートの原因がヒートベッドが過度に冷却されることが原因であることを証明した。ハードスタートは比較的短いパルスとの組合せでミディアムデューティ領域から高デューティ領域で観察されており、これは例えば、デューティファクタが少なくとも約5%であり、約100msから数秒のパルスの継続時間である。パーセンテージとして与えられるデューティファクタは本明細書では以下のように定義される:100TON/(TON+TOFF)。
パルスドモードの点火では、個別のデューティおよびパルスの継続時間に応じて、触媒ベッド内および燃焼室内で発生した熱がヒートベッドを再加熱するのに十分な速さでは伝達されない可能性があり、それにより、必要となる予加熱温度よりも大幅に低い温度までヒートベッドが冷却されてしまう。例えば、22Nのスラスタの場合、少なくとも約10%のデューティで、約100msから数秒のパルス継続時間で、ハードスタートが起こる傾向がある。
また、パルスドモードの点火では通常はベッドロードが高くなり、つまり、触媒ベッドの所与の断面積を通って流れる推進薬の単位時間当たりの質量が増大し、例えば安定状態の点火時を超える。
本発明者らは、例えばLMP−103Sよりもエネルギー含有量が少なくかつ冷却効果が高い1127−3で示される単元推進薬(WO2012/166046の実施例3の単元推進薬に相当する)などの、WO2012/166046に記述される新たに開発された単元推進薬を用いる場合にはパルスドモードの点火時のハードスタートの問題がより顕著になることを見出した。
内側リアクタハウジング45は、エンジン内の上流側に、触媒ベッドおよび触媒リテーナからヒートベッドに熱を戻すように誘導することにより、ヒートベッドを再加熱することを改善し、熱がヒートベッドおよび触媒ベッドから中空ボディ5へとの径方向に誘導されることが防止される。
それにより、パルス後のリアクタの回復時間がある程度短縮され、パルスドモードの点火時にハードスタートが起こる危険性が軽減される。
好適な実施形態では、内側リアクタハウジング45が、ハニカム構造などの、ヒートベッドおよび/または触媒ベッド内の内部構造物要素、あるいは、バッフルを収容し、それにより、エンジン内の上流側の熱誘導能力がさらに向上し、それによりヒートベッドを再加熱することが改善される。したがって、内部構造物要素は上流側のヒートベッド内および/または下流側の触媒ベッド内まで延在してよい。また、このような構造物は、触媒ベッド内に含有される触媒物質および/またはヒートベッド内に含有されるヒートベッド材料をパーティション化またはコンパートメント化するのを可能にする。上記の構造物は着脱可能および交換可能となるように作られ得る。このような実施形態が図3に示され、ここでは、リテーナ27がヒートベッド内および触媒ベッド内まで延在するフランジを装備する。このような構造がヒートベッドを再加熱するのを改善するように機能する。触媒ベッド内まで下流側に延在するフランジは触媒ベッドリテーナ40に接触するように載置され得る。
実際に、計算が示したところによると、約200NのHPGPスラスタの場合、内側リアクタハウジング45と、下流側で触媒ベッド内までおよび上流側でヒートベッド内まで延在する構造物要素と(図3に示されるような)とを組み合わせることにより、WO02/095207に開示される一般的な概念の従来の200NのHPGPスラスタと比較して約10分の1、リアクタの回復時間が改善される。5Nから数kNの範囲のスラスタの場合でも同様に改善されると考えられる。
大型のエンジンではベッドロードが増大することから、つまり、単位時間当たりでより多くの推進薬がベッドの所与の断面積を通過する必要があることから、ヒートベッドの冷却も大規模となる。加えて、本発明者らが見出したところによると、ヒートベッドに触媒活性を加えることにより、エンジンのさらに上流側で推進薬の分解/燃焼が開始され得、それにより、ヒートベッドにさらに熱が供給され(内側ハウジングの効果および使用される場合の内部構造物要素の効果に加えて)、それにより、高いベッドロード時にヒートベッドが過度に冷却されることがさらに軽減される。
このように、触媒活性を有するヒートベッド30は、ベッドロードがさらに高くなるような、大型のエンジンのパルスモードオペレーションにおいて特に有利であることが分かっている。
したがって、一実施形態では、本発明のリアクタおよびスラスタが、触媒活性を有するヒートベッドを備える。触媒活性を有するこのようなヒートベッドがUS61/644,772に開示されており、本願と同一日付で出願された、本出願人の同時係属の米国仮特許出願にも開示される。その明細書で開示される触媒性ヒートベッドは、Ir、Pd、Pt、Rh、Ruまたはそれらの組合せなどの、触媒活性を有する貴金属で被覆される、非多孔質または低多孔質の高温抵抗セラミックおよび/または金属材料から形成される、触媒活性を有するヒートベッド材料26を備える。ヒートベッド材料26は好適にはペレットの形態であるが、ハニカム構造が適切となる場合もある。ヒートベッド材料26がペレットの形態で設けられる場合、ペレット26の適切なサイズは内側リアクタハウジング45の内径の約10分の1以下であり、好適には約10分の1である。
リアクタおよびスラスタの構成要素
噴射器20
噴射器は、意図される機能を実行すること、つまり、ヒートベッドに対して推進薬を一様に分布させることが可能である限りにおいて、本発明において重要ではない。適切な噴射器は当技術分野では既知であり、本明細書でさらには説明しない。
ヒートベッド25
ヒートベッドは触媒ベッドに入る前に推進薬を蒸発させるために設けられる。ヒートベッドは、スタート時および熱がベッドへと上流側に伝達される前の時点で十分な量の推進薬を蒸発させることを目的として十分な熱容量を有さなければならない。また、ヒートベッドは、ベッド全体にわたって熱を分散させるのを可能にするために十分な熱伝導率を有さなければならず、この熱はリアクタボディ5のリアクタ壁を介して下流側からベッドへと部分的に伝達される。次いで、ベッドを通って流れる推進薬に熱が伝達される。さらに、ベッドの材料は、例えば硝酸などの、ベッド内のADNの分解時に発生する成分からのいかなる有害の影響にも耐えることが可能でなければならない。したがって、ヒートベッドの材料は例えば耐酸性である。
ヒートベッド25のリテーナ27
リテーナは、ヒートベッド(触媒性または非触媒性)を定位置で維持するように、および、ヒートベッドを下流側の触媒ベッドから分離した状態で維持するように機能する。適切なリテーナの一例は、Irは関連する燃焼化学種に対して不活性であるから、Ir、または、Reで支持されるIrの多孔プレートである。
好適な実施形態では、リテーナが、ヒートベッド内へと上流側に延在するフランジまたは同様の構造物を装備する。フランジは、エンジンの動作時にエンジン内の上流側へと戻すための熱誘導能力を向上させるように機能し、それにより、ヒートベッドリテーナからヒートベッド材料へと上流側に戻すように熱を効果的に伝達することにより、ヒートベッドを再加熱することが改善される。
代替の好適な実施形態では、ヒートベッドリテーナが、触媒ベッド内へと下流側に延在するフランジまたは同様の構造物を装備する。フランジは、エンジンの動作時にエンジン内の上流側へと戻すための熱誘導能力を向上させるように機能し、それにより、触媒ベッドからヒートベッドリテーナへと上流側に戻すように熱を効果的に伝達することにより、ヒートベッドを再加熱することが改善される。
触媒ベッド内へと下流側に延在するフランジを有するヒートベッドリテーナ27が使用される場合、上記のフランジは触媒ベッドリテーナ40に接触するように載置され得る。
より好適な実施形態では、ヒートベッドをより効率的に再加熱するために、ヒートベッドリテーナが、ヒートベッド内へと上流側におよび触媒ベッド内へと下流側に延在するフランジまたは同様の構造物を有する。ヒートベッドリテーナ27のこの実施形態が図3に示されており、これが、触媒ベッドからヒートベッドへの熱伝達をさらに改善する。
触媒ベッド30
適切な触媒ベッドはWO02/095207に記述されており、本明細書では詳細には説明しない。適切な触媒物質およびペレットは当技術分野で既知であり、WO02/094717およびWO02/094429にそれぞれ記述されている。触媒ベッド30のペレット35の適切なサイズは内側リアクタハウジング45の内径の約10分の1以下であり、好適には約10分の1である。
内側リアクタハウジング45
参照符号45に示される「内側リアクタハウジング」は「ヒートベッドおよび触媒ベッド・ハウジング」とも称される。内側リアクタハウジング45は、中空ボディ5の内側表面に接触させないようにヒートベッドおよび触媒ベッドを分離させる。内側リアクタハウジングとリアクタハウジング5との熱接触は最小に維持されなければならない。内側リアクタハウジング45とリアクタハウジング5とのいかなる熱接触も、内側リアクタハウジング45とリアクタハウジング5との取付領域のみに制限されなければならず、この領域は、噴射器に近接するところの図1および2に示されるように上流側のフランジに沿うような形などで、リアクタ内の上流側に位置しなければならない。また、内側リアクタハウジング45とリアクタハウジング5との間の周囲クリアランスは、内側リアクタハウジング45がある程度わずかに膨張するのを許容しなければならない。ヒートベッド25、ヒートベッドリテーナ27および触媒ベッド30が内側リアクタハウジング45内に収容される。
既に指摘したように、内側リアクタハウジングはヒートベッドを予加熱するのを改善するように機能し、さらに、パルスモードの点火時に1つのパルスから次のパルスまでの回復時間を短縮させる。
触媒ベッド30のためのリテーナ40
触媒ベッドはリテーナにより定位置で維持される。内側リアクタハウジング45は好適には触媒ベッドリテーナ40から分離され、内側リアクタハウジングの底部を形成する。適切なリテーナの一例は、Irは関連する燃焼化学種に対して不活性であるから、Ir、または、Reで支持されるIrの多孔プレートである。図1および2に示されるように、プレートは例えば内側リアクタハウジング45の底部の周囲フランジ上に載置され得る。
燃焼室50(スラスタの場合)
燃焼室を含めたリアクタの壁は、推進薬の燃焼時に発生する高温に耐えることが可能でなければならない。また、リアクタの壁は、リアクタ内に発生するいかなる排出ガスまたは中間段階の分解生成物に対しても耐性を有さなければならない。長寿命の用途に適する材料はレニウムである。分解の最終ステップで発生する窒素ガスに耐えるために、壁の燃焼室部分がイリジウムで適切に裏張りされる。
リアクタハウジング、スラスタエンベロープおよびリテーナなどの、噴射器の下流側のエンジンの異なる部品ための適切な材料は例えばIrおよびReである。短寿命用または低温用に設計される用途では、モリブデン合金のTZMおよびMHC、白金の合金、および、モリブデンの別の合金などの、別の材料が適切となる可能性もある。
リアクタの機能および分解のプロセス
本発明の内側リアクタハウジング、ヒートベッド内および/または触媒ベッド内まで延在する内部構造物要素、ならびに、触媒性ヒートベッドを除くと、リアクタおよびその構成要素の一般機能さらには分解のプロセスはWO02/095207により既に知られており、本明細書では詳細には説明しない。
WO02/095207のヒートベッドは推進薬を蒸発させ、同時に、ADNの熱分解を開始させ、これは、WO02/095207に記載される反応スキームに従うと、下流側の触媒ベッド内で推進薬を完全に触媒燃焼させるのに必要である。
内側リアクタハウジングは、中空ボディの内側表面に接触させないようにヒートベッドおよび触媒ベッドを分離させ、予加熱時にヒートベッドからの放射線を遮蔽し、さらには、ヒートベッドの再加熱を向上させることにより回復時間を短縮する。
使用時、内部構造物要素は、スラスタの動作時にヒートベッドへと上流側に熱を伝達し、それにより回復時間を大幅に短縮させる。
使用時、本発明の触媒性ヒートベッドは、さらに、最終的な触媒分解/燃焼を開始させ、これは、従来技術のエンジンと比較して本発明のエンジン内のさらに上流に熱を発生させ、この場合、熱が触媒ベッド内に発生する。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
熱伝導性および耐熱性を有する金属材料の中空ボディ(5)を備える、液体のアンモニウムジニトラミドベースの単元推進薬を分解して高温の可燃性ガスにするためのリアクタであって、前記中空ボディ(5)が、上流側端部から順番に、
噴射器(20)と、
ヒートベッド(25)と、
ヒートベッドリテーナ(27)と、
少なくとも1000℃の温度までの耐熱性を有する多孔質触媒ペレット(35)の触媒ベッド(30)と、
触媒ベッドリテーナ(40)とを装備し、
前記ヒートベッドおよび前記触媒ベッドを前記中空ボディ(5)の内側表面に接触させないように分離させる、前記中空ボディ(5)内に装着される内側リアクタハウジング(45)であって、前記内側リアクタハウジング(45)が熱伝導性を有し、前記ヒートベッドおよび前記触媒ベッドが前記内側リアクタハウジング(45)に熱接触する、内側リアクタハウジング(45)を前記リアクタはさらに備えることを特徴とするリアクタ。
[形態2]
前記ヒートベッドリテーナ(27)が、上流側の前記ヒートベッド内および/または下流側の前記触媒ベッド内まで延在するフランジを有する、形態1に記載のリアクタ。
[形態3]
前記ヒートベッドが触媒活性を有する、形態1または2に記載のリアクタ。
[形態4]
前記ヒートベッド材料(26)がペレットの形態である、形態1から3までのいずれか1項に記載のリアクタ。
[形態5]
前記ペレット(26)が、Ir、Pd、Pt、Rh、Ruの群またはそれらの組合せから好適には選択される、触媒活性を有する貴金属で被覆される、形態4に記載のリアクタ。
[形態6]
前記ペレット(35)および前記ペレット(26)のサイズが前記内側リアクタハウジング(45)の内径の約10分の1以下である、形態4または5に記載のリアクタ。
[形態7]
形態1から6までのいずれか1項に記載のリアクタと、
前記リアクタのすぐ下流側にある燃焼室(50)とを備えるアンモニウムジニトラミドベースの液体の単元推進薬のためのロケットエンジン。
[形態8]
5Nから約3kNといったような、5Nから数kNの範囲内の推進力、好適には5Nから1kNの推進力、より好適には5Nから500Nの推進力を有するように寸法決定される、形態7に記載のロケットエンジン。
[形態9]
液体のHANベースの単元推進薬を分解するための、形態1から6までのいずれか1項のリアクタまたは形態7または8のロケットエンジンの使用。

Claims (9)

  1. 熱伝導性および耐熱性を有する金属材料の中空ボディ(5)を備える、液体のアンモニウムジニトラミドベースの単元推進薬を分解して高温の可燃性ガスにするためのリアクタであって、前記中空ボディ(5)が、上流側端部から順番に、
    噴射器(20)と、
    ヒートベッド(25)と、
    ヒートベッドリテーナ(27)と、
    少なくとも1000℃の温度までの耐熱性を有する多孔質触媒ペレット(35)の触媒ベッド(30)と、
    触媒ベッドリテーナ(40)と
    を装備し、
    前記ヒートベッドおよび前記触媒ベッドを前記中空ボディ(5)の内側表面に接触させないように分離させる、前記中空ボディ(5)内に装着される内側リアクタハウジング(45)であって、前記内側リアクタハウジング(45)が熱伝導性を有し、前記ヒートベッドおよび前記触媒ベッドが前記内側リアクタハウジング(45)に熱接触する、内側リアクタハウジング(45)を前記リアクタはさらに備える
    ことを特徴とするリアクタ。
  2. 前記ヒートベッドリテーナ(27)が、上流側の前記ヒートベッド内および/または下流側の前記触媒ベッド内まで延在するフランジを有する、請求項1に記載のリアクタ。
  3. 前記ヒートベッドが触媒活性を有する、請求項1または2に記載のリアクタ。
  4. 前記ヒートベッド(25)は、ペレットの形態であるヒートベッド材料(26)を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のリアクタ。
  5. 前記ペレット(26)が、Ir、Pd、Pt、Rh、Ruの群またはそれらの組合せから好適には選択される、触媒活性を有する貴金属で被覆される、請求項4に記載のリアクタ。
  6. 前記多孔質触媒ペレット(35)および前記ヒートベッド(25)の前記ペレット(26)のサイズが前記内側リアクタハウジング(45)の内径の約10分の1以下である、請求項4または5に記載のリアクタ。
  7. 請求項1から6までのいずれか1項に記載のリアクタと、
    前記リアクタのすぐ下流側にある燃焼室(50)と
    を備える
    アンモニウムジニトラミドベースの液体の単元推進薬のためのロケットエンジン。
  8. 5Nから3kNの範囲内の推進力を有するように寸法決定される、請求項7に記載のロケットエンジン。
  9. 液体のHANベースの単元推進薬を分解するための、請求項1から6までのいずれか1項のリアクタまたは請求項7または8のロケットエンジンの使用。
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