JP6239316B2 - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents
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HUDとしては、これまでに数々の形態が開発されている。最も一般的なHUDとしてコントロールユニットから送信される速度情報等をインストゥルメンタル・パネルの表示ユニットからフロントガラスに反射させることにより、運転者がフロントガラスと同じ位置、すなわち、同一視野内で速度情報等を視認できるHUDがある。
HUD用の合わせガラス用中間膜として、例えば、特許文献1には、所定の楔角を有する楔形合わせガラス用中間膜等が提案されており、合わせガラスにおいて計器表示が二重に見えるというHUDの欠点を解決することが提案されている。
特許文献2には、2枚の透明板の間に、ヒドロキシテレフタレートを含む中間層が積層された合わせガラスが開示されている。特許文献2に記載された合わせガラスは、光線が照射されることにより、コントラストが高い画像を表示することができる。しかし、ヒドロキシルテレフタレートを含む中間層を用いて合わせガラスを製造すると、中間層が変色してしまうという問題があった。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、接着力調整剤として、カリウム塩を上記化合物Aと併用したところ、合わせガラス用中間膜の変色を防止することができたが、合わせガラス用中間膜の耐湿性が低下するという問題を見出した。そこで本発明者らは、ポリビニルアセタールと、上記化合物Aと、カリウム塩と、耐湿性向上剤とを用いることで、光線が照射されると、コントラストが高い画像を表示し、変色を抑制しながら、接着性を制御でき、かつ耐湿性に優れる合わせガラス用中間膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
上記化合物Aは、光線が照射されることにより発光する。上記光線は上記化合物Aを励起し発光させることができれば特に限定されず、例えば、紫外線や赤外線等が挙げられる。
上記化合物Aは、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
上記有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基の炭素数が10以下であると、上記化合物Aを合わせガラス用中間膜に容易に分散させることができる。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。また、上記化合物Aのテレフタル酸エステル構造のベンゼン環の水素原子のうち、いずれか一つの水素原子が水酸基に置換されていてもよく、いずれか二つの水素原子が水酸基に置換されていてもよい。
上記化合物Aとしては、例えば、ジエチル−2,5−ジヒドロキシルテレフタレート(Aldrich社製、「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)、2、5−ジヒドロキシテレフタル酸ジメチル等が挙げられる。なかでも、コントラストがより一層高い画像を表示できることから、上記化合物Aは、ジエチル−2,5−ジヒドロキシルテレフタレート(Aldrich社製、「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)であることが好ましい。
上記カリウム塩を含むことにより、発光層とガラスとの接着力を容易に制御することができるだけでなく、上記発光層が変色することも抑制することができる。上記カリウム塩は特に限定されないが、炭素数1〜16の有機酸のカリウム塩であることが好ましく、炭素数1〜16のカルボン酸カリウム塩であることがより好ましく、炭素数1〜8のカルボン酸のカリウム塩であることが更に好ましい。上記炭素数1〜16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。なお、変色とは、合わせガラス用中間膜が2枚のクリアガラス(厚み2.5mm)の間に積層された合わせガラスのYI値が20を超えることを意味する。YI値は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−4100」)を使用して、JIS Z 8722に準拠して、測定することができる。上記YI値は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、上記YI値は、0以上であることが好ましい。
上記発光層の変色をより一層防止できることから、上記発光層中のカリウム元素の含有量は300ppm以下であることが好ましく、250ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることが更に好ましく、150ppm以下であることが更により好ましい。上記発光層の耐湿性が高くなることから、上記発光層中のカリウム元素の含有量は100ppm以下であることが特に好ましい。上記カリウム元素は、カリウム塩に由来するカリウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来するカリウムとして含んでもよい。上記発光層中のカリウム元素の含有量の好ましい下限は30ppm、特により好ましい上限は90ppm、より好ましい下限は40ppm、最も好ましい上限は80ppmである。
本発明の合わせガラス用中間膜の接着性をより一層容易に制御でき、変色をより一層抑制できることから、上記発光層中のマグネシウム元素の含有量は80ppm以下であることが好ましい。上記マグネシウム元素は、マグネシウム塩に由来するマグネシウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来するマグネシウムとして含んでもよい。上記発光層中のマグネシウム元素の含有量の好ましい下限は20ppm、より好ましい上限は75ppm、より好ましい下限は30ppm、更に好ましい上限は70ppmである。なお、上記カリウム元素や上記マグネシウム元素の含有量は、ICP発光分析装置(島津製作所社製、「ICPE−9000」)により測定することができる。
上記発光層に上記化合物Aを含有させ、更に上記発光層とガラスとの接着力を調整するために、接着力調整剤として、カリウム塩を含有させたところ、上記発光層とガラスとの接着力を調整することができる。しかしながら、上記化合物Aとカリウム塩とを含有する発光層を有する合わせガラス用中間膜は、耐湿性が低下してしまう。そのため、上記発光層は、耐湿性向上剤を含有する。
上記耐湿性向上剤として、上記カリウム塩との相溶性に優れる化合物や上記カリウム塩を捕捉する化合物を用いることにより、上記カリウム塩の周辺に水が集まりにくくなり、耐湿性が向上すると考えられる。
上記アニオン性の官能基としては、リン酸(エステル)基、カルボン酸(エステル)基、スルホン酸基等が挙げられる。なかでも耐湿性に優れることから、リン酸(エステル)基であることが好ましい。
上記アニオン性の官能基を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
上記非イオン性の官能基としては、例えば、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
上記非イオン性の官能基を有する化合物としては、接着力調整剤を捕捉する効果に優れることから、クラウンエーテルが好ましい。
上記フェノール構造を有する酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記フェノール構造を有する酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。上記酸化防止剤は一種のみでもよく、二種以上を併用しても良い。
第1の樹脂層の耐湿性が高くなることから、第1の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は300ppm以下であることが好ましい。例えば、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムは、上記接着力調整剤に由来する金属として含んでもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来する金属として含んでもよい。第1の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
上記遮音層は、例えば、上記ポリビニルアセタール100重量部に対して上記可塑剤を50〜80重量部含む層等が挙げられる。上記遮音層はポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルブチラールを含むことがより好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、水酸基量が20〜28モル%の範囲内であることが好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、アセチル基量が8〜30モル%であるポリビニルアセタールA、アセチル基量が0モル%を超え5モル%未満、かつアセタール化度が70〜85モル%であるポリビニルアセタールB、又は、アセチル基量が5モル%以上8モル%未満、かつアセタール化度が65〜80モル%であるポリビニルアセタールCであってもよい。
上記特定の波長の光線を照射するための装置として、例えば、スポット光源(浜松ホトニクス社製、「LC−8」)、キセノン・フラッシュランプ(ヘレウス社製、「CWランプ」)、ブラックライト(井内盛栄堂社製、「キャリーハンド」)等が挙げられる。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
(1)発光層を形成する樹脂組成物
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部に、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料として一般式(1)で表される構造を有する化合物であるジエチル−2,5−ジヒドロキシルテレフタレート(Aldrich社製、「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)0.55重量部と、カリウム塩としてギ酸カリウム0.051重量部と、耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬社製、「プライサーフA208B」)0.13重量部とを加え、発光性の可塑剤溶液を調製した。得られた可塑剤溶液の全量と、重合度が1700であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量0.9モル%、水酸基量30.6モル%、ブチラール化度68.5モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、発光層を形成する樹脂組成物を調製した。
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部と、重合度が2300であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量13モル%、水酸基量23モル%、ブチラール化度64モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、第1の樹脂層を形成する樹脂組成物を調製した。
発光層を形成する樹脂組成物と第1の樹脂層を形成する樹脂組成物とを、押出機を用いて共押出し、2つの発光層によって第1の樹脂層が挟持された合わせガラス用中間膜(縦30cm×横15cm)を得た。各発光層の厚みは、いずれも350μmであり、第1の樹脂層の厚みは、100μmであった。
得られた合わせガラス用中間膜を、縦30cm×横15cmの一対のクリアガラス(厚み2.5mm)の間に積層し、積層体を得た。得られた積層体を、真空ラミネーターにて90℃下、30分保持しつつ真空プレスを行い圧着した。圧着後140℃、14MPaの条件でオートクレーブを用いて20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
表1の組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
実施例、参考例及び比較例で得られた各合わせガラスについて、以下の方法で評価を行った。結果を表1に示した。
暗室下にて、得られた合わせガラスの面に対して垂直方向に10cm離れた位置に配したHigh Powerキセノン光源(朝日分光社製、「REX−250」、照射波長405nm)から合わせガラスの全面へ光を照射し、光を照射した合わせガラスの面から45度の角度で35cm離れた位置に配した輝度計(トプコンテクノハウス社製、「SR−3AR」)によって輝度を測定した。
分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−4100」)を使用して、JIS Z 8722に準拠して、得られた合わせガラス(縦5cm×横5cm)の初期イエローインデックス値(初期YI値)を測定した。
(合わせガラス用中間膜のパンメル値の測定)
得られた合わせガラスを−18℃±0.6℃の温度の環境下に16時間静置し、この合わせガラスの中央部(縦150mm×横150mmの部分)を頭部が0.45kgのハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕し、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を測定し、表2によりパンメル値を求めた。
得られた合わせガラスを50℃、湿度95%RHの環境下に8週間静置した後、合わせガラスの各周辺の中央部分からの白化距離をそれぞれ測定した。合わせガラスの各周辺の中央部分からの白化距離のうち、白化距離の最大値を表1に示した。
Claims (6)
- ポリビニルアセタールと、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料と、カリウム塩と、耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを含む発光層を有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。
- 発光層は、ポリビニルアセタール100重量部に対して0.001〜1重量部のテレフタル酸エステル構造を有する発光材料を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
- 発光層中のカリウム元素の含有量が300ppm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
- 発光層がマグネシウム元素を含み、前記マグネシウム元素の含有量が80ppm以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されていることを特徴とする合わせガラス。
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