JP6233834B2 - キノンを検出するための化合物および該化合物を用いたキノンの検出方法 - Google Patents
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Description
従って、キノンを簡便かつ選択的に測定可能な化学発光分析試薬として有用な化合物は、キノンの生体内での役割をより詳細に調査するためにも重要であると考えられる。
[1]式(I):
Aは、α−リポ酸、ジヒドロリポ酸、コーヒー酸、没食子酸または葉酸からカルボン酸基を除いた残基を示し、
Bは、それぞれ置換されていてもよい、ベンゼン環または5−ないし6−員芳香族複素環を示し、
R1は、C1−6アルキル基を示し、および
nは、1〜6の整数を示す。)
で表される化合物(以下、本発明の化合物と称する場合がある);
[2]Aがα−リポ酸またはジヒドロリポ酸からカルボン酸基を除いた残基であり、Bがベンゼン環であり、R1がエチルであり、かつ、nが4である、[1]に記載の化合物;
[3]キノンの検出のために用いる、[1]または[2]に記載の化合物;
[4][1]または[2]に記載の化合物と被検試料とを塩基存在下で混合する工程、および
該混合により放出される化学発光を測定する工程
を含む、被検試料中のキノンの検出方法。
キノンは還元物質により不安定なセミキノンラジカルへと還元され、これが溶存酸素により酸化される過程で、活性酸素であるスーパーオキシドアニオンラジカルが発生する。このスーパーオキシドアニオンラジカルを、本発明の化合物を用いて検出することができる。以下に、キノンの酸化還元サイクルを利用した測定原理を示す。
Aとしては、α−リポ酸またはジヒドロリポ酸からカルボン酸基を除いた残基が好ましい。
Bで示される「それぞれ置換されていてもよい、ベンゼン環または5−ないし6−員芳香族複素環」の「5−ないし6−員芳香族複素環」としては、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし3個含有する5−ないし6−員芳香族複素環、具体的には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。
Bで示される「それぞれ置換されていてもよい、ベンゼン環または5−ないし6−員芳香族複素環」の「ベンゼン環または5−ないし6−員芳香族複素環」は、置換可能な位置に1〜3個の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、ハロゲン(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アミノ基、C1−6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル)、C2−6アルケニル基(例、ビニル、1−プロペン−1−イル、2−プロペン−1−イル、イソプロペニル、2−ブテン−1−イル、4−ペンテン−1−イル、5−へキセン−1−イル)およびC6−14アリール基(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、2−アンスリル)が挙げられ、アミノ基、ハロゲン(特に、塩素)およびC6−14アリール基(特に、フェニル)が好ましい。置換基が2個以上である場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。
Bとしては、置換されていてもよいベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
R1としては、エチルが好ましい。
nは、1〜6の整数を示す。nは、好ましくは4である。
ルミノール誘導体の使用量は、α−リポ酸、ジヒドロリポ酸、コーヒー酸、没食子酸または葉酸1モルに対し、通常0.1モル〜50モル、好ましくは1モル〜3モルである。
縮合反応は、常法に従って、例えば、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、縮合剤を用いて行うことができる。
縮合剤としては、例えば、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)などのトリアジン系縮合剤;ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、WSCなど)、またはその塩酸塩などのカルボジイミド系縮合剤;シアノリン酸ジエチル、アジ化ジフェニルホスホリルなどのリン酸系縮合剤;カルボニルジイミダゾール、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩(HATU)などが挙げられる。
縮合剤の使用量は、α−リポ酸、ジヒドロリポ酸、コーヒー酸、没食子酸または葉酸1モルに対し、通常0.1モル〜50モル、好ましくは1モル〜5モルである。
溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなど)が挙げられる。
反応温度は、例えば、0℃〜100℃、好ましくは30℃〜60℃であり、反応時間は、ルミノール誘導体の種類、反応温度などによって異なり、例えば、1時間〜72時間、好ましくは5時間〜10時間である。
なお、原料化合物であるα−リポ酸、ジヒドロリポ酸、コーヒー酸、没食子酸または葉酸およびルミノール誘導体は、市販品をそのまま使用してもよく、あるいは、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って製造することもできる。
本発明の方法は、式(I)で表される化合物と被検試料とを塩基存在下で混合する工程、および該混合により放出される化学発光を測定する工程を含む。
実施例1:N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール−α−リポ酸(ABEI−LA)の合成
α−リポ酸(LA)(29mg,0.14mmol)、N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール(ABEI)(38mg,0.14mmol)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(26mg,0.14mmol)をエタノール/2%ピリジン(100ml)に溶解し、常温で10時間撹拌した。エタノールを減圧留去し、残渣をエタノールで再結晶して、表題化合物を薄黄色結晶(30mg,収率46.8%)として得た。
200mMのNaOH水溶液(50μL)中の500μMのABEI−LA溶液を小試験管に入れ、ルミノメーター(Berthold LB−9507;Berthold Technologies製)にセット後、メナジオンの1、10、20および50μMアセトニトリル溶液(50μL)をインジェクターにより自動注入した。生じる化学発光を180秒間測定した。このとき、ブランク溶液としては、200mMのNaOH水溶液(50μL)にアセトニトリル(50μL)のみを添加したものを用いた。その結果を図2に示す。
メナジオンを添加したABEI−LA溶液では、ブランク溶液と比較して有意に高い化学発光が観察された(図2A)。これは、ABEI−LAのα−リポ酸部位によりメナジオンの酸化還元サイクルが誘起され、これに伴って発生したスーパーオキシドアニオンがABEI−LAのルミノール部位を酸化することにより、化学発光が生じたと考えられる。また、化学発光の強度は、メナジオンの濃度の増加に伴って上昇することが観察された(図2B)。
実施例2と同様にして、実施例2と同一のABEI−LA溶液と、200mMのNaOH水溶液(50μL)中のABEIとLAとの単なる混合物の溶液(ABEIおよびLAはそれぞれ750μM)とに、それぞれメナジオンの50μMアセトニトリル溶液(50μL)を添加して生じる化学発光を測定した。その結果を図3に示す。
ABEI−LA溶液は、ABEIとLAとの単なる混合物の溶液と比較して強い化学発光を与えた。これは、同一分子内に還元部位と化学発光部位とを併せ持つABEI−LAを用いた場合、化学発光検出反応の効率が上昇すると考えられる。
200mMのNaOH水溶液(50μL)中の500μMのABEI−LA溶液を小試験管に入れ、9,10−フェナンスレンキノンの1,5,10μMアセトニトリル溶液(50μL)を添加し、5秒間ボルテックス混合した。小試験管をルミノメーター(Berthold LB−9507;Berthold Technologies製)にセット後、生じた化学発光を300秒間測定した。このとき、ブランク溶液としては、200mMのNaOH水溶液(50μL)にアセトニトリル(50μL)のみを添加したものを用いた。その結果を図4に示す。
9,10−フェナンスレンキノンを添加したABEI−LA溶液では、ブランク溶液と比較して有意に高い化学発光が観察された(図4A)。しかしながら、その化学発光強度は、メナジオンを用いて測定したときよりも低く、また、5μM以上の濃度ではフェナンスレンキノン濃度に応じた発光の増強は見られなかった(図4B)。これは、今回測定を行った条件下では、ABEI−LAは、o−キノン(9,10−フェナンスレンキノン)よりもp−キノン(メナジオン)に対して良好な化学発光検出反応を生じることが示唆される。
実施例2と同様にして、フィロキノン(50μM)、ドキソルビシン(50μM)およびユビキノン(10μM)を用いて化学発光を測定した。その結果を図5に示す。
メナジオンおよび9,10−フェナンスレンキノンと同様に、フィロキノン、ドキソルビシンおよびユビキノンを添加したABEI−LA溶液では、高い化学発光が観察された。
実施例1で合成したABEI−LAのメタノール溶液(7μM)に還元剤としてトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)(0.07mmol)を添加し、室温で5時間反応させた。その反応溶液のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)スペクトルを、JEOL JMS−T100TDを用いて測定した。その結果を図6に示す。ESI−MSスペクトル上に、ABEI−DHLAの[M+H]+に由来する分子イオンピークが検出された。
メナジオンの1、10、20および50μMアセトニトリル溶液(50μL)の代わりにメナジオンの1、20および50μMアセトニトリル溶液(50μL)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、メナジオンの添加によるABEI−DHLAの化学発光を測定した。その結果を図7に示す。
メナジオンを添加したABEI−DHLA溶液では、ブランク溶液と比較して有意に高い化学発光が観察された(図7A)。これは、ABEI−DHLAのジヒドロリポ酸部位によりメナジオンの酸化還元サイクルが誘起され、これに伴って発生したスーパーオキシドアニオンがABEI−DHLAのルミノール部位を酸化することにより、化学発光が生じたと考えられる。また、化学発光の強度は、メナジオンの濃度の増加に伴って上昇することが観察された(図7B)。
Claims (4)
- 式(I):
Aは、α−リポ酸、ジヒドロリポ酸、コーヒー酸または没食子酸からカルボン酸基を除いた残基を示し、
Bは、それぞれ置換されていてもよい、ベンゼン環または5−ないし6−員芳香族複素環を示し、
R1は、C1−6アルキル基を示し、および
nは、1〜6の整数を示す。)
で表される化合物。 - Aがα−リポ酸またはジヒドロリポ酸からカルボン酸基を除いた残基であり、Bがベンゼン環であり、R1がエチルであり、かつ、nが4である、請求項1に記載の化合物。
- キノンの検出のために用いる、請求項1または2に記載の化合物。
- 請求項1または2に記載の化合物と被検試料とを塩基存在下で混合する工程、および
該混合により放出される化学発光を測定する工程
を含む、被検試料中のキノンの検出方法。
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