JP6232636B2 - 旋盤のクーラント供給装置 - Google Patents

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Description

本発明は、NC旋盤等のタレット(回転する刃物台)の各工具ステーションへ取り付けられる刃具へクーラントを供給する技術であって、クーラントを高圧で供給し、切り屑を細かく分断すると共に刃具とワークの冷却を行い、加工効率を向上させることができるようにした旋盤のクーラント供給装置に関するものである。
NC旋盤等のタレットを有する工作機械においては、刃具の先端へ向けてクーラントを供給し、加工することで刃先面及びワークの冷却と、切り屑の排出とを行うようにしている。従来のクーラントの供給方式としては、特許文献1及び特許文献2に記載された技術が公知である。
特許文献1に記載された技術は、刃具支持手段としての多層構造でX軸及びZ軸方向にスライドするクロススライドを、スピンドルキャリアに装着された各主軸の周りに複数配置している。そして、この各クロススライドを通じて刃具及びワークにクーラントを供給するために、クーラント供給源側から各クロススライドへ個別に配管を設けると共に、クロススライドに供給流路を多数穿設し、これらを連通接続している。そして、刃具側に取り付けられた配管の先端から刃先面へ向けてクーラントを吐出するようにしている。
また特許文献2に記載された技術は、タレットの外周側面に形成された工具ステーションに対して、タレットの中心軸を貫通してクーラントパイプを配設し、タレットの前面で径方向パイプを介して、タレットの前面に放射状に設けられた多数の流入ポートのうちの選択された流入ポートへクーラントを分配供給するようにしている。流入ポートへ供給されたクーラントは、タレット内の供給流路を介して各工具ステーションに取り付けられた工具の吐出口へ送られ、刃先面へ向けて吐出されるようになっている。
更に、従来にあっては、図2乃至図4に示すタレット式旋盤のクーラント供給装置が公知である。この旋盤は、図2の鎖線で示すように、ベッド上にZ軸方向に対して移動自在に配設されたスライドテーブル1を有し、このスライドテーブル1に対してX軸方向に移動自在な刃物台本体2が取り付けられている。刃物台本体2にはタレットバー3を介してタレット4が取り付けられている。
タレット4は、タレットバー3との間でカップリング結合をしており、前進及び後退することで結合したり、結合を解除したりできるようになっている。結合を解除した場合は、タレット自体が旋回自由になり、工具割出位置の決定がなされる。タレット4の外周側面又は前面には工具ステーションが設けられており、ドリル5Aや中ぐり刃5B、ワークの外周面や端面を研削するチップ5C等が取り付けられている。チップ5Cは、専用のホルダー6により、タレット4の工具ステーションの一つに固定されている。
また、タレット4の背面側には、図3に示すように、各工具ステーションに対応したクーラントの流入ポート7が穿設されている。この流入ポート7は、図4に示すように、タレット4内に設けられたクーラント供給流路8を介して各刃具又はホルダー6のクーラント吐出口6Aへ連通するようになされている。
一方、刃物台本体2には、ピストン9及びそのホルダー10が取り付けられている。ピストン9は、背面側をスプリング11により突出方向へ付勢されており、刃物台本体2のクーラント流路2Aからホルダー10の側面に設けられた流入ポート10Aへ流入したクーラントは、ピストン9の周側面から軸方向流路へ流入し、タレット4の流入ポート7へ流れるようになっている。
なお、図4に示す、従来のピストン9と流入ポート7の寸法関係は、ピストン9の軸方向の流路の内径とタレット4の流入ポート7の内径とは共に12mmであり、ピストン9の先端側の外径寸法は22mmに設定されている。
ところで、図2において、符号12は主軸台、13は主軸台12のチャック、14はチャック13に把持されたワーク、15は心押し台、16はクーラントの供給ポンプ、17はクーラントの供給タンクである。
この図2乃至図4に示す従来技術において、クーラントは供給ポンプ16によりタンク17から汲み上げられ刃物台本体2の内部を通ってホルダー10の流入ポート10Aへ流入し、ピストン9内を通ってタレット4の流入ポート7へ供給される。そして、流路8及びチップホルダー6の流路6Bを通って、吐出口6Aから噴射され、チップ5Cとワーク14とが接触する切削面へ供給され、切り屑の排出とチップ5C及びワークの冷却を行うようにしている。
特開平8−197311号公報 特開平6−31584号公報
ところが、特許文献1に示す技術にあっては、主軸に対応して設けられた複数の各クロススライドに対して、クーラント供給源側から配管を設けたり、各クロススライドのZ軸方向及びX軸方向の動きに対してクーラントを供給できるようにポート接続したりしなければならず、クーラントの供給装置の構成が複雑となる欠点があった。
またこのようなクーラントの供給装置では、クーラントの供給圧力を高圧にすると、各ポートの接続部でクーラントが大量に漏れ出て飛散するので、7MP以下の3MPaまでの供給圧でしかクーラントを供給することができなかった。そのため、切り屑がスパイラル状に連続し、工具に巻き付いてワークの切削面を疵付けたり、工具を損傷させる等の欠点があった。また切り屑が山のように堆積して自動チップコンベアーが切り屑を運ばないので、その処理に困るという問題もあった。なお、切り屑の分断は、クーラントの供給圧力と供給方向で決定される。
特許文献2に示す技術にあっては、タレットの中心軸側から径方向パイプで、選択した工具ステーションの流入ポートへクーラントを分配供給できるので、クーラントの供給装置の構成は比較的簡単である。ところが、クーラントの供給圧力を高くした場合は、径方向パイプが水圧の反力により流入ポートから離れる方向へ押し戻され、その隙間からクーラントが飛散して大量に漏れ出るという欠点があった。そのため、この場合も3MPa程度の圧力でしか供給できず、前記特許文献1と同様の欠点があった。
更に、図2乃至図4に示す従来技術にあっては、図4に示すように、刃物台本体2からホルダー10へ流入するクーラントの圧力が、ピストン9の後端側フランジの端面9Aに作用し、ピストン9をスプリング11の付勢力に抗して退入させようとする方向に働くようになる。そのため、クーラントの供給圧力は、ピストン9を退入させようとする力が少なくともスプリング11の付勢力よりも小さいものでなければならず、やはり特許文献1及び特許文献2の技術と同様に、3MPa程度の低い供給圧力でなければならなかった。
従って、図2乃至図4に示す従来技術の場合も特許文献1及び2と同様に、切り屑がスパイラル状に連続し、工具に巻き付いてワークの切削面を疵付けたり、工具を損傷させる等の欠点と、切り屑が山のように堆積してその処理に困るという問題とがあった。
本発明は、従来の前記問題点に鑑みてこれを改良除去したものであって、クーラントの供給圧力がピストンを突出させる方向へ作用させるようにし、ピストンとタレットの流入ポートとの間のシール性を高め、7MPa以上の高圧でクーラントを供給できるようにした旋盤のクーラント供給装置を提供せんとするものである。
前記課題を解決するために、本発明に係る一の態様の旋盤のクーラント供給装置は、刃物台本体へ取り付けたピストンホルダー内のシリンダー室にピストンを突出退入自在に装着し、ピストンをタレット背面側に設けたクーラントの流入ポートへ接合させてクーラントを工具側へ供給するようにした旋盤において、前記ピストンは、先端側の小径筒状部と後端側の大径筒状部とを有し、前記シリンダー室の前面壁と前記大径筒状部との間に、前記ピストンを退入方向へ付勢するスプリングが配設され、前記シリンダー室の内壁面に、前記ピストンの後退位置を規制するストッパーリングが装着されており、前記タレットは、クーラントが流入する流入ポートと、該流入ポートと前記工具側の流路との間に介在し、該流入ポート及び該工具側の流路よりも大きいクーラント流路とを有し、刃物台本体側からピストンホルダー内へ供給されるクーラントの圧力がピストンの後端面側に作用するように、ピストンホルダーの流入ポートとピストンの位置関係を設定したことを特徴とする。
このように、クーラントの供給圧力がピストンの後端面側に作用するようにしたから、供給圧力を高める程にピストンが強い力でタレット背面の流入ポートへ押し付けられ、シール性が向上するようになる。そのため、7MPa以上の供給圧力にした場合であってもクーラントの漏れ出る量は少なくなる。
また、この旋盤のクーラント供給装置は、ピストンの中心にはその後端面から前端面に至るクーラント流路が貫通して形成されている。
また、本発明に係る一の態様の旋盤のクーラント供給装置の改造方法は刃物台本体へ取り付けたピストンホルダー内のシリンダー室にピストンを突出退入自在に装着し、ピストンをタレット背面側に設けたクーラントの流入ポートへ接合させてクーラントを工具側へ供給するようにした旋盤において、タレット背面側のクーラント流入口にアダプターピースを嵌合装着し、かつ、刃物台本体側に請求項1に記載のピストン、ピストンホルダー、スプリング、ストッパ−リングを装着することで、既存のNC旋盤に対して7MPa以上の高圧でクーラントを供給可能とする
本発明にあっては、クーラントの供給圧力でピストンを突出動作させ、タレットの流入ポートに強い力で圧接するようにしたから、クーラントの供給圧力を7MPa以上に設定することが可能である。そのため、高圧のクーラントにより、工具刃先の熱を低減させると共に、工具摩滅を著しく低減することができ、これにより高速度の工具送り(フィード)が実現できるという利点がある。しかも、高圧のクーラントにより、切り屑を細かく分断することができ、その排出もスムーズになり、結果として切り屑が工具に巻き付いてワークの切削面を疵付けたり、工具を損傷させる等のことはない。また細かく分断された切り屑のため、容器内の形状に応じて収容されるようになり、その処理は極めて容易となる。それに加えて、チップ自動コンベアを有効に活用することができるという利点もある。
本発明の一実施の形態に係るタレット型旋盤のクーラント供給接続部を示す部分縦断面図である。 従来のタレット型旋盤の全体構成を示す概略図である。 従来のタレット型旋盤のタレットを背面側から見た図面である。 従来のタレット型旋盤のクーラント供給接続部を示す部分縦断面図である。
以下に、本発明の構成を図1に示す一実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。なお、図2乃至図4に示す従来の場合と同一符号は、同一部材である。この実施の形態では、従来のタレット型旋盤に対して、ピストン20とピストンホルダー21とを新規な構造のものと交換し、タレット背面側の流入ポート7に小径化に対応するアダプターピース22を配設するようにしている。
ピストンホルダー21には、ピストン20が軸方向へ突出退入自在に装着されるシリンダー室23が設けられている。このシリンダー室23は径方向の流路24を介して刃物台本体2のクーラント吐出口2Aに連通接続されている。ピストンホルダー21のシリンダー室23に嵌合装着されるピストン20は、先端の小径筒状部25と後端側の大径筒状部26とを有し、シリンダー室23の前面壁と大径筒状部26との間に復帰用のスプリング27が配設されて、常時は退入方向へ付勢されている。
またシリンダー室23の内壁面にはストッパーリング28が装着されており、ピストン20の後退位置を規制するようにしている。ピストン20の中心軸方向位置には、前後端面側へ貫通するクーラントの流路29が穿設されている。また大径筒状部26の外周面には、クーラントがシリンダー室23から漏れ出るのを防止するためのOリング29が装着されている。
ここにおいて、寸法関係の一例を示すと、ピストン20の流路29の直径は4mm、小径筒状部25の外径は8mm、大径筒状部26の外径は13mm、タレット4側の流入ポート7に装着されたアダプターピース22の流路の直径は4mmである。
次に、このように構成されたピストン20及びピストンホルダー21の動作態様を説明する。先ず、タレット4による工具割出位置が決定されて、選択された刃具によるワーク14の切削が開始されるに際し、クーラントの供給が開始される。クーラントの供給は、図2に示す供給ポンプ16をON動作させることにより行われる。タンク17から汲み上げられたクーラントは、刃物台本体2の供給流路を経てその吐出口2Aからピストンホルダー21の径方向流路24へ流入し、シリンダー室23へ供給される。
シリンダー室23内におけるクーラントの供給圧力は、ピストン20の後端面20Aへ作用し、ピストン20を突出方向(図1の左方向)へ付勢する。そのため、クーラントの供給圧力を上げれば上げる程にピストン20は、その供給圧力に付勢されてより強く突出動作し、タレット4の背面側に設けられた流入ポート7のアダプターピース22の端面へ小径筒状部25の端面が強い力で面接合するようになる。そのため、7MPa以上の高圧でクーラントを供給した場合であっても、ピストン20とタレット4側のアダプターピース22との間からクーラントが大量に漏れ出るということはなくなり、高圧のクーラント供給が可能となる。
このように7MPa以上の高圧でクーラントを供給すると、図1に示すように、チップ5Cがワーク14を切削する部位へ直接高圧のクーラントが供給されるようになり、切り屑を細かく分断することができる。そのため、従来のように切り屑がスパイラル状に連続してチップ5Cに巻き付いてワーク14の切削された面を疵付けたり、工具を損傷させる等のことがなく、切り屑の排出もスムーズになる。それに加えて、切り屑は細かく分断された状態で排出されるので、どのような形状のトレイであっても、そのトレイの収容部の形状に応じて収容されるようになり、従来のスパイラル状の切り屑のように嵩高くならないので、その取扱いも容易である。
また切削する部位へ直接高圧のクーラントを供給するので、チップ5C及びワーク14並びに切り屑の冷却効果に優れており、これらの発熱が抑えられるので、その分だけ切削速度を上げることができ、優れた加工効率が得られる。実験によれば、従来、3MPaで研削していた場合に比較して7MPaで研削すると、30〜50%の加工効率の向上が得られた。また冷却効果に優れるので、チップ5C(刃具)の長寿命化も可能となる。
加工が終了し、ポンプ16をOFF動作させてクーラントの供給を停止させると、ピストン20を押し出す力がなくなり、ピストン20はスプリング27の付勢力により、退入復帰するようになる。
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、ピストン20の各部の大きさ寸法や形状等は適宜の変更が可能である。また本発明は、従来のタレット型旋盤のピストンとピストンホルダーとを交換変更することで、構成することができるという利点もある。当然に、あらたに設計開発して製造することも可能である。
2…刃物台本体
3…タレットバー
4…タレット
5C…チップ
6…チップホルダー
7…タレットのクーラント流入ポート
8…タレット内のクーラント流路
20…ピストン
20A…ピストン後端面
21…ピストンホルダー
22…アダプターピース
23…シリンダー室
25…ピストンの小径筒状部
26…ピストンの大径筒状部
29…軸方向の流路

Claims (2)

  1. 刃物台本体へ取り付けたピストンホルダー内のシリンダー室にピストンを突出退入自在に装着し、ピストンをタレット背面側に設けたクーラントの流入ポートへ接合させてクーラントを工具側へ供給するようにした旋盤において、
    前記ピストンは、先端側の小径筒状部と後端側の大径筒状部とを有し、
    前記シリンダー室の前面壁と前記大径筒状部との間に、前記ピストンを退入方向へ付勢するスプリングが配設され、
    前記シリンダー室の内壁面に、前記ピストンの後退位置を規制するストッパーリングが装着されており、
    前記タレットは、クーラントが流入する流入ポートと、該流入ポートと前記工具側の流路との間に介在し、該流入ポート及び該工具側の流路よりも大きいクーラント流路とを有し、
    刃物台本体側からピストンホルダー内へ供給されるクーラントの圧力がピストンの後端面側に作用するように、ピストンホルダーの流入ポートとピストンの位置関係を設定したことを特徴とする旋盤のクーラント供給装置。
  2. ピストンの中心にはその後端面から前端面に至るクーラント流路が貫通して形成されている請求項1に記載の旋盤のクーラント供給装置。
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