JP6230579B2 - 快適性向上制御システム - Google Patents
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Description
具体的には、特許文献1に記載の放送装置では、エレベータの利用者が待機する待機空間であるカゴ内に設置したカメラやマイクで、利用者を確認して、利用者の顔の向きから「気まずさ」を判断し、「気まずさ」を緩和する音楽や映像を、音圧レベルを調整して放送するようにしている。
具体的には、特許文献2に記載のエレベータ制御システムでは、カメラ画像から、三人以上の人が乗りかご内にいると判断した場合に、リラックスさせるアナウンスや音楽を再生するようにしている。
また、エレベータの騒音と比較して、エレベータ内に流す音の音圧レベルを騒音よりも高い音圧レベルで流した場合には、今度は、この音が不快感を招く原因を作ることにもなっていた。たとえば、エレベータのカゴ内に人が多い場合、友人同士で乗っているということも考えられる。このような場合、音楽が聞こえるレベルまで高くした音圧レベルの音楽を再生すると、これが会話の阻害なども平気に行うことになる。このようなことが、不快感を招く原因の一つになっているということも考えられる。
図1において、システム100は、対象である閉鎖空間、カゴ10の内部に音を提示可能に設置されている。
システム100は、カゴ10内に設置された暗騒音を検出する音検出装置20と、カゴ10内に音を提示できる位置に設置され、カゴ10の内部に音を提示する音再生手段30と、カゴ10の内部に存在している人を検出する人検出装置40と、カゴ10の内部に光を提示する照明装置60と、カゴ10の内部の照度及び輝度を検出する光検出装置70と、音検出装置20、人検出装置40、及び、光検出装置70からの情報に基づいて音再生手段30及び照明装置60を制御する制御装置50と、を有している。
上述したように、マイクやカメラを利用しての人の検出は、プライバシー保護の観点から好ましくない。そこで、システム100では、カゴ10の壁面に設置されている行き先階スイッチや、駆動部品の1つである巻上機側に設置されているトルク検出装置を人検出装置40として利用している。こうすることで、システム100では、特定のセンシング手段を用いなくても人の有無を検出でき、センシング手段を設置する必要がない分コストの低減が図れる。
また、トルク検出装置を人検出装置40として利用する場合には、カゴ10の昇降動作におけるトルク変動から人の有無を判断すればよい。一般的なエレベータでは、カゴ10の昇降動作において、不要な振動を起こさせないための精密な制御を巻上機側で行っている。そこで、トルク検出装置による微小なトルク変化を重量変化として捉えるなどの制御を利用することで、人の有無が検出できる。
システム100が提示する音は、以下のように決定される。
音の内容を決めるに当たっては、複数の形容詞対を用いて、音に対する印象を複数段階で評価するSD(semantic differential scale method)法による評価結果を用いた。この因子分析した結果からシステム100が提示する音を決定している。生理反応は、エレベータの乗車時間に対応するために、短時間での反応が得られやすい「心拍」の分析を行った。
また、図3に示す評価は、マンションやオフィスなどで一般的にみることが多い、約15人乗りのエレベータを利用し、最小人員構成である男女それぞれ1名ずつの2名乗車の分析結果の一例を示している。女性被験者は20歳代の女子学生、男性被験者は40歳代の一般男性とし、両者に面識はない。女性21名、男性3名を被験者とした。
男女両者の距離を事前に指定することなく、女性を先に乗車させ、男性を後から乗車させている。このときの女性の動く範囲での距離を被験者のパーソナルスペース(図1に示す破線矢印)として実験を行っている。なお、平均的な男女間の間隔(パーソナルスペース)は1.24mであった。これは、エドワード・ホールが提唱した(引用:『かくれた次元』日高敏隆・佐藤信行 共訳、みすず書房、1970年)以下の距離に相当するものである。
近接相とは、知らない人同士が会話をしたり、商談をしたりする場合に用いられる距離とされている。
遠方相とは、公式な商談で用いられる距離とされている。
また、被験者に対する一般的な意見の聴取により、以下のことがわかった。
「あなたはエレベータで他の人と一緒になったとき、「気まずさ」を感じましたか?」という質問内容に対して、「はい」と回答した被験者は86.4%(21人中19人)であった。
(1)音楽(女性のボーカル入り)
(2)音楽(男性のボーカル入り)
(3)従来の環境音楽
(4)実験用に開発したデザイン音(人の主観的及び生理的な評価に基づいて創出された音)
また、(3)に関しては、聞いていられるが必要性も感じないとのマイナス意見が多く、(1)及び(2)と同じく、カゴ10には不向きの印象となる結果となった。
この図4から、(4)実験用に開発したデザイン音が被験者に対して快適性を与えられるということがわかった。
(a)ダイナミックレンジは狭くする。大凡70dB前後の範囲内とする。
(b)再生音圧レベルは、設置する閉鎖空間(ここではカゴ10)の暗騒音と同等レベル、もしくは暗騒音−3dB以内とする。
暗騒音は、閉鎖空間内に設けたマイクロホン等で計測した音圧レベルで求めるものとする。また、音圧レベルは、自動的に逐次調整される。
(d)人の声のセンター周波数(代表周波数)を1kHzとし、その周波数から−200Hz、+2kHzの帯域の周波数特性の音圧レベルを他の周波数帯域よりも3dB前後低くする。
(e)一定周期で変化する旋律で構成。
一定周期で変化する旋律は、聞いた人の記憶として定着しやすく、容易に口ずさめるという特性を有している。
ダイナミックレンジが70dBよりも大きい場合、音圧レベルの変動が大きくなり、狭い空間では反射音などが影響し、その結果、人が「騒音」と判断してしまうことになり、不快な心理要因へと移行してしまう。そのため、ダイナミックレンジは70dB前後の範囲内とした。
なお、ダイナミックレンジとは、識別可能な信号の最小値と最大値の比率をいう。
閉鎖空間内において快適性を提供する場合、閉鎖空間の移動で発生する暗騒音(一般的には風切り音や摺動音、空調音)が内部に聞こえる。この暗騒音の伝搬音を騒音の平均値として計測し、音圧レベルをそれと同等レベルもしくは暗騒音よりも−3dB以内として、音の放射を行うようにした。
この程度の音圧レベルとすることにより、快適性を提供する音が騒音になってしまうことにならないようにできる。
なお、暗騒音は、閉鎖空間の内部の床面から1.7m以上の上方で計測することとした。この高さは、カゴ10の乗員(中学生以下を省いた)の平均的な身長高であり、身長高と同等以上の高さで計測すれば、快適音を障害のない上面から乗員に提供することが可能になるからである。
また、閉鎖空間の大きさに応じてマイクロホン等の設置個数を決定すればよく、2個以上設置する場合には、それぞれの音圧から算出した平均音圧を利用して制御すればよい。
再生周波数特性におけるピーク成分は、音の種類に関係なく、人に不快感を与える要因となりえる。よって、ピーク成分の突出量を抑えることは快適性向上につながることになる。そのため、ピーク成分の突出量を5dB以下に抑えるものとした。
公共的な場におけるエレベータなどでは、音声案内等が提示されることがある。そのため、その音声を阻害させないような配慮が必要となる。そこで、人の声のセンター周波数1kHzの−200Hz、+2kHzの周波数帯域の音圧レベルを、他の周波数帯域よりも−3dB以内として、音圧レベルを抑えることにした。
図3に示す結果から裏付けられるように、ボーカル(音声)入りの場合は、趣味の問題や静かなカゴ10内では逆にうるさいと感じる等の意見を受け、カゴ10のような閉鎖空間には不向きの印象となるということがわかった。
また、従来の環境音の場合は、聞いていられるが、必要性も感じないとのマイナス意見が多く、ボーカル(音声)入りと同じく、不向きな結果となった。
逆に、(4)実験用に開発したデザイン音は、聞いている間に口ずさめるような旋律としているために、音楽に注意が向くことで気まずさが和らぐと判断できる結果を得られた。よって、変化の組み合せによる(口ずさめるような)旋律をもつ方が不快感低減などの好印象になるという結果が確認できた。
その後の時間経過により多少の「馴れ」や落ち着きで心拍変動が下がるが、下がり方が各音源で異なっていることがわかる。
心拍変動の低下が一番大きいのは、(4)実験用に開発したデザイン音を提示した場合であり、専用音源の聴取により、時間変化によるストレス低減が早く行われることが確認できた。
そして、(4)実験用に開発したデザイン音の周波数特性は、図6に示すようになる。具体的には、(4)実験用に開発したデザイン音は、上述した(a)〜(e)の仕様を踏まえて創生され、図6に示す周波数特性を有するようになっている。
照明装置60及び光検出装置70はシステム100に必須の構成ではないが、これらをシステム100に備えることによって、閉鎖空間内の人の快適性を更に向上させることができる。音の提示では人の聴覚を介して人の快適性に対する刺激を与えることになるが、照明を利用することにより人の視覚を介して人の快適性に対する刺激を追加的に与えることができる。
また、実験で用いる音源は、(A)従来の環境音、(B)実験用に開発したデザイン音(上記の(4)実験用に開発したデザイン音と同じものである)、(C)音なしの3パターンとした。
これらから、快適性に関する評価を「安心な−不安な」の形容詞の一対比較で評価して行なったものである。
図7に示すように、(A)従来の環境音を提示する場合、「安心な」領域は色温度が高く照度が中間的な領域に限定されているということが確認できた。
図8に示すように、(B)実験用に開発したデザイン音を提示する場合、「安心な」領域は色温度が低い領域でも照度が高い領域で確認できた。具体的には、(B)実験用に開発したデザイン音を提示する場合においては、色温度が3000K〜4500K、照度が200lx〜400lxの範囲が「安心な」領域であり、色温度が5000K〜6000K、照度が100lx〜300lxの範囲が「安心な」領域であった。
図9に示すように、(C)音なしの場合、「安心な」領域は色温度が高く照度も高い領域に限定されているということが確認できた。
音の提示をしない場合、照明をかなり明るく、又は強く光らせないと不安要素を低減できないこともわかった。
このように、(B)実験用に開発したデザイン音の提示により、聴感的な不快感を低減することになり、色温度の制御範囲を広げられるという要素を含んでいることが確認できた。つまり、(B)実験用に開発したデザイン音の提示により、目がくらむほどの明るさや輝度も必要ないということになり、照明装置60との連動によっては、快適性の更なる向上を図ることができるということも確認できた。
図10は、システム100の動作の流れを説明するフローチャートである。図10に基づいて、システム100の動作について説明する。また、ここでは、カゴ10に人が乗車する場合を例にシステム100の動作を説明する。さらに、照明装置60及び光検出装置70を備えている場合についてのシステム100の動作について説明する。
次に、制御装置50は、創生するデザイン音の仕様を自動調整する(ステップS105)。具体的には、制御装置50は、上記(a)〜(d)を自動的に実行し、それらを(e)の旋律に組み合わせて、カゴ10内に提示するデザイン音を創生する。
次に、制御装置50は、提示する光の調光を実行する(ステップS107)。
そして、制御装置50は、創生したデザイン音を光の提示とともにカゴ10内に発生させる(ステップS108)。
また、システム100に照明装置60及び光検出装置70を備えるようにすれば、実験用に開発したデザイン音の提示とともに光の提示により、閉鎖空間内に存在する人の快適性を向上できる。
Claims (8)
- 2人以上の人間が存在可能な閉鎖空間内に2人以上の人間が存在しているとき、人間の主観的及び生理的な音質評価結果に基づいて創生した音を前記閉鎖空間に提示する制御装置を備え、
前記音は、
ダイナミックレンジを70dB以内、
再生音圧レベルを前記閉鎖空間の暗騒音と同等又は暗騒音−3dB以内、
再生周波数特性におけるピーク成分をベース周波数特性からの突出量が5dB以下、
人の声の代表周波数1kHzから−200Hz、+2kHzの帯域の周波数特性の音圧レベルを他の周波数帯域よりも3dB前後低く、
一定周期で変化する旋律を有するように創生される
快適性向上制御システム。 - 前記閉鎖空間に2人以上の人間が存在することを検知する人検出装置を備え、
前記制御装置は、
前記人検出装置からの情報に基づいて前記閉鎖空間に2人以上の人間が存在していると判断したときに前記音を前記閉鎖空間に提示する
請求項1に記載の快適性向上制御システム。 - 前記人検出装置は、
前記閉鎖空間の移動を促すスイッチで構成されている
請求項2に記載の快適性向上制御システム。 - 前記人検出装置は、
前記閉鎖空間を移動させる駆動部品のトルクを検出するトルク検出装置で構成されている
請求項2に記載の快適性向上制御システム。 - 前記人検出装置は、
前記閉鎖空間の重量、温度、又は、湿度を検出する測定器で構成されている
請求項2に記載の快適性向上制御システム。 - 前記閉鎖空間の暗騒音を計測する音検出装置を備え、
前記音検出装置は、
前記閉鎖空間の底面から1.7m以上の高さ位置に2個以上設置されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載の快適性向上制御システム。 - 前記閉鎖空間に前記を提示する音再生手段を備え、
前記音再生手段は、
前記閉鎖空間の底面から1.7m以上の高さ位置に設置されている
請求項1〜6のいずれか一項に記載の快適性向上制御システム。 - 前記閉鎖空間に光を提示する調光可能な照明装置を備え、
前記照明装置は、
色温度が3000K〜4500K、照度が200lx〜400lx
色温度が5000K〜6000K、照度が100lx〜300lxの範囲で調光される
請求項1〜7のいずれか一項に記載の快適性向上制御システム。
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