JP6229228B2 - 光制御素子及びこれを用いる量子デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、光の偏光状態を制御する光制御素子及びこれを用いる量子デバイスに関する。
量子力学の原理を応用した量子コンピュータは、従来のコンピュータと比較して、革命的な低エネルギー消費処理、超高速情報処理を実現すると期待されている。量子コンピュータを実現するためには、デバイス、アーキテクチャ、アルゴリズムの各レイヤーで革新が必要である。
デバイスにおいては、2ビットのゲート操作として制御NOT(Controlled NOT)の動作を実現する光制御素子がキーデバイスとして重要視され、種々の研究がなされている。例えば、非特許文献1では、量子ドットを用いて制御NOT動作を行わせる光制御素子が開示されている。
Hyochul Kim et al. A quantum logic gate between a solid-state quantum bit and a photon. Nature Photonics, 2013; DOI: 10.1038/NPHOTON.2013.48
しかしながら、上記従来の光制御素子では、光制御素子が形成された基板平面と直交する方向に出射光が出射され、光制御素子が形成された基板平面と平行な方向には出射光が出射されなかった。
そのため、上記従来の光制御素子では、出射光を光制御素子が形成された基板内で取り扱うことができず、プレーナ回路を構成して素子の集積度を高めることが困難であった。
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、光制御素子が形成された基板平面と略平行な方向に出射光を出射する光制御素子及びこれを用いる量子デバイスを提供することを目的としている。
本発明の一態様は、基板上に形成された光制御素子であって、キャビティ構造を有する
基部と、前記基部の側面に接続され、入射光を前記基部の内部に導く第1光導波路と、前
記基部内の前記入射光の光路上に設けられた量子ドットと、前記基部内を通過した入射光
を反射する反射部と、前記基部の側面に接続され、前記反射部にて反射された入射光を前
記基部の外部に導く第2光導波路とを備え、前記基部は、前記入射光の等位相面内の互い
に垂直な2方向に対し、異方性を有する形状であり、前記第1光導波路に、制御光が入射された後、信号光が入射されることにより、制御NOTゲート素子として機能する
また、本発明の一態様においては、前記制御光は円偏光を有する光であり、前記信号光は直線偏光を有する光である。
また、本発明の一態様においては、前記量子ドットの発光波長を調整する第1調整部を備える。
また、本発明の一態様においては、前記基部の前記キャビティ構造の大きさを調整する第2調整部を備える。
また、本発明の一態様においては、前記第1光導波路と前記第2光導波路とは同一の部材である。
また、本発明の一態様においては、前記量子ドットは、当該量子ドットが保持される凹部を有する支持層によって支持されている。
また、本発明の一態様においては、前記量子ドットは、化学合成量子ドットである。
また、本発明の一態様においては、前記反射部は金素材を含む。
また、本発明の一態様は、上記の光制御素子を用いる量子デバイスである。
本発明によれば、光制御素子が形成された基板平面と略平行な方向に出射光を出射することができる。
本発明の一態様を示す制御NOTゲート素子の構成を説明する図である。 制御NOTゲート素子の動作原理を示す説明図である。 x軸及びy軸の方向に対し、偏光方向H,Vの方向を示した図である。 制御NOTゲート素子における共振状態を実現するための条件制御(チューニング)の方法を示した図である。 制御NOTゲート素子の製造方法の具体例を示す工程図である。 制御NOTゲート素子の製造方法の具体例を示す工程図である。 制御NOTゲート素子の製造方法の具体例を示す工程図である。 制御NOTゲート素子の製造方法の具体例を示す工程図である。 制御NOTゲート素子の内部構造を示す図である。
[1.発光素子の構成]
図面を参照しながら、本発明の一態様を示す制御NOTゲート素子の構成を説明する。
図1は、制御NOTゲート素子100の構成を説明する図である。図1では、シリコン基板上に形成された制御NOTゲート素子100を、基板平面に対して斜め上方からみている。
制御NOTゲート素子100は、基部10と、入出射路20と、量子ドット30とを備えている。制御NOTゲート素子100の壁面は、基板と異なる屈折率を有する光反射素材(例えば、金などの金属や各種の誘電体)により覆われている。この光反射素材は、制御NOTゲート素子100の基部10の内部を通過した入射光を反射する反射部となる。
基部10は、キャビティ構造を有する。基部10は、入射光の等位相面内の互いに垂直な2方向(例えば図1のx軸方向とy軸方向)に対し、異方性を有する形状である。
すなわち、基部10は、等位相面内の互いに垂直な2方向において長さ(又は幅)が異なる形状である。図1の例では、基部10は、直方体形状である。上記の2方向は、入射光の等位相面内であって、互いに垂直な方向であれば、任意の方向に設定され得る。
基部10における異方性の程度、すなわち、等位相面内の互いに垂直な2方向における長さの異なりの程度は、入射光との結合の程度に異方性が生じる限りにおいて特に制限はない。基部10の異方性の存在は、制御NOTゲート素子100に制御NOT動作を実現させる。
基部10の3次元方向(光の進行方向を基準とする高さ方向x,幅方向y、奥行方向z)の各サイズは光学シミュレーションによって適正化されることも好ましい。例えば、光制御素子の出力機能を適正化するように、上記の各サイズを設計する。例えば、基部10の高さ方向x、幅方向y、奥行方向zの各サイズは、500nm、2μm、1μmに設計される。この数値は例示に過ぎず、高さ方向x、幅方向y、奥行方向zの大小関係は、目的に応じて任意に設計してよい。
入出射路20は、基部10の側面に接続され、入射光を基部10の内部に導く光導波路である。また、入出射路20は、制御NOTゲート素子100の壁面の光反射素材にて反射された入射光を基部10の外部に導く。
量子ドット30は、3次元の量子井戸構造を形成する原子から構成された数nm〜50nm程度の粒径を有する発光性ナノ粒子である。量子ドット30は、基部10の内部における入射光の光路上に配置される。
量子ドット30として用いられる量子ドットの種類、物性、及び形態は特に限定されない。本実施形態では、量子ドット30として、化学合成量子ドットを用いる。
化学合成量子ドットは、化学反応で微結晶を成長させることにより合成される量子ドットである。化学合成量子ドットは、結晶成長する半導体基板への面方位依存性を持つエピタキシャル量子ドットと異なり、球状で対称性が高いものが実現できる。そのため、化学合成量子ドットを用いれば、円偏光によって特定のスピンの電子だけを効果的に励起することができる。本実施形態において、量子ドット30として用いる化学合成量子ドットの材質は、特に限定されない。例えば、量子ドット30の材質として、PbS、InAs、PbSe等が用いられる。
[2.制御NOTゲート動作の原理]
[2−1.光制御のプロセス]
制御NOTゲート素子100の制御NOT動作においては、制御ビットの光と信号ビットの光とがある。以下、単に「制御ビット」及び「信号ビット」と称する。
制御NOT動作は、制御ビットが|0>のときには信号ビットは変化しないが、制御ビットが|1>の時には、信号ビットに対して|0>と|1>を入れ替えるNOTゲートとして働くものである。
図2は、制御NOTゲート素子100の動作原理を示す説明図である。
本実施形態では、制御ビットは円偏光であり、信号ビットは直線偏光である。円偏光を持つ光(pump光)を入出射路20から入射することによって、特定方向のスピンを持つ電子を量子ドット30の内部に選択的に励起する。選択則により、励起光の光子の円偏光の向きと励起される電子のスピンの向きは一対一に対応する。なお、制御ビットは円偏光でなくともよい。
続いて、入出射路20から入射する光(probe光)の直線偏光方向を信号ビットとして、その反射時の偏光方向を操作する。信号ビットは、図1に示すように、キャビティの異方形状に対して45度傾いた偏光状態の光を用いる。
信号ビットと制御ビットとは、例えば、ピコ秒オーダーの時間間隔を設けて入出射路20に入射する。信号ビットを入射してから長時間(例えばナノ秒オーダーの時間)が経過すると、量子ドット30の励起状態が緩和するからである。
信号ビットと制御ビットとの光源の種類は特に限定されないが、例えばパルスレーザや単一光子光源を用いる。
また、信号ビットの波長は、後述の強結合状態を形成することが可能な波長であれば、特に制限されない。制御ビットの波長は、量子ドット30を励起させることができる波長であれば特に制限されないが、例えば強結合状態を形成する量子ドット30の遷移に関与する準位を直接励起する波長を用いれば、より高い効率で光制御素子を動作させることが可能である。
図2(a)に示されるように、制御ビットで量子ドット30の中の電子が励起されている場合、量子ドット30は光を吸収できないため、信号ビットは量子ドット30と相互作用しない。信号ビットは基部10に存在する異方性のために、H偏光とV偏光とが互いに変換されて反射される。
図2(b)に示されるように、制御ビットで量子ドット30の中の電子が励起されていない場合、量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとが共振する。信号ビットは、量子ドット30の発光波長及び基部10のキャビティの共振モードとマッチングすることにより、反射時の偏光変換が抑制され、そのままの偏光状態で反射される。
制御NOTゲート素子100は、信号ビットの制御に、基部10のキャビティと量子ドット30の遷移との強結合状態を用いる。強結合状態とは、基部10のキャビティと量子ドット30の遷移の結合速度が、共振器の減衰速度より大きい場合のことである。
量子ドット30の遷移に共振する波長を持った光子が基部10のキャビティに入ると、量子ドット30に吸収され、量子ドット30の遷移を生じる。励起された状態の量子ドット30は遷移によって同じ波長の光子を放出できる。放出された光子は、再度吸収されることが可能である。
強結合状態では、光子は減衰せずに、吸収と放出とが渾然となった混合状態、所謂ドレスト状態となる。ドレスト状態を経由して反射する場合と、ドレスト状態を経由しないで反射する場合とで、反射係数が異なることを利用するのが、制御NOTゲート素子100の動作原理である。
[2−2.理論的背景]
制御NOTゲート素子100の上記の動作原理は、既にH. Kim et al., Nature photonics. vol.7, p.373 (2013).等の文献によって公知であるが、以下に数式を用いて説明する。
[2−2−1.制御NOT動作]
制御NOTゲート素子100は、量子ドット30の電子状態に対する反射係数の依存性を利用することで、制御NOTゲート動作を実現する。信号ビットは、キャビティの異方形状に対して45度傾いた偏光方向H,Vの光を用いる(図1参照)。図3は、x軸及びy軸の方向に対し、偏光方向H,Vの方向を示した図である。
信号ビットの状態は、基部10を基準としたx軸,y軸の基底によって、(1)式で表される。
Figure 0006229228
制御NOTゲート素子100の壁面の反射において、信号ビットの状態は(2)式のようになる。
Figure 0006229228
rは反射係数である。反射係数rは、信号ビットの光子とキャビティモード(基部10のキャビティモード)とが共振状態にある場合について、ハイゼンベルク−ランジュヴァン運動方程式から計算することができる。
量子ドット30が、図2(a)の状態にあって、電子が励起準位Xを占めている場合は、量子ドット30が存在しない場合と同様であり、反射係数r=−1 となる。したがって、量子ビットは反射によって、ビット・フリップ(|H>→|V>、及び|V>→|H>)をする。
これに対して、量子ドット30が、図2(b)の状態にあって、電子が基底準位にある場合は、反射係数rは異なる。入射光子励起による量子ドット30の中の電子の遷移が基部10と共振する場合には、反射係数rは(3)式のようになる。
Figure 0006229228
パラメータg、κ 、γはそれぞれ、基部10と量子ドット30の遷移との結合の強さ、基部10のエネルギー減衰率、励起子減衰率である。強い結合状態(C>>1)においては、反射係数r→1であり、信号ビットの状態は、反射により不変(|H>→|H>、及び|V>→|V>)となる。
以上のように、信号ビットの状態がビット・フリップするか否かが、量子ドットの電子状態によって決定される。その動作が、制御NOT動作となっている。
[2−2−2.反射係数の計算]
以下、参考のために、反射係数の計算を示す。反射係数は、入出力場演算子の形式を用いて計算される。x軸,y軸を偏光軸とする光子のために、a^とa^とを入力演算子として定義する(例えば、a^は、aの上部に^を設けた記号を別表記したものである)。これらの演算子は、式(4)を通して、H−Vの基底で表すこともできる。
Figure 0006229228
出力演算子b^とb^は、入力演算子と式(5)の関係がある。
Figure 0006229228
a^は、基部10の光子のための消滅演算子である。式(5)は、y偏光の光子の反射係数が1であることを示している。すなわち、y偏光の光子は、基部10に結合せずに反射する。これに対して、x偏光の光子の反射係数は複雑で、量子ドット30と基部10との相互作用に依存する。この詳細は既に知られているように、例えばハイゼンベルク−ランジュヴァン形式を使って導出される。
x偏光の光子の反射係数を導くために、演算子a^を求める。一般に、2つの状態を有する原子に結合する閉じたキャビティモード(基部10のキャビティモード)のためのハミルトン関数は、式(6)のようになる。
Figure 0006229228
s^=|g><+|、w^=|+><+|−|g><g|である。wとwとは、基部10と量子ドット30との共振周波数、gは基部10と量子ドット30との結合強さを示す。ハイゼンベルク−ランジュヴァン運動方程式を得るためにハイゼンベルク−ランジュヴァン形式を適用すると、式(7)を得る。
Figure 0006229228
Γsponは量子ドット30の自然放出率であり、Δ=ω−ω、Δ=ω−ωと定義している。入力場スペクトルの周波数をωと仮定した。(7)式を積分して、(8)式が得られる。
Figure 0006229228
以上の数式を用いて、量子ドット30の電子状態が基底状態|g>である場合と、量子ドット30の電子状態が励起状態Xである場合について反射係数を計算できる。
量子ドット30の電子状態が基底状態|g>の場合には、式(7)に式(8)を代入し、期待値を取ることで式(9)を得る。
Figure 0006229228
入力場が単一光子状態であれば<R^a^>=0である。これは、式(8)から確認できる。結局、単一光子の入力下で、双極子モーメントと平均キャビティ場(基部10の平均キャビティ場)は、式(10)で示される。
Figure 0006229228
γ=ΓSPON/2+1/Tは量子ドット30の均一幅、Tは純粋なディフェージング時間である。平均入力場a^が単一波長であることから、上記の方程式の定常状態の解を得て式(11)に至る。
Figure 0006229228
式(5)の両辺の期待値をとり、式(11)式を代入することで、関係<b^(ω)>=r<a^(ω)>に到達する。その結果、式(12)を得る。
Figure 0006229228
よって、量子ドット30の電子状態が基底状態|g>の場合には、量子ドット30と光場とが基部10と共振し、Δ=Δ=0とすると、反射係数r(ω)は、式(13)になる。これは式(3)と同一である。
Figure 0006229228
これに対して、量子ドット30の電子状態が励起状態Xの場合には、励起状態Xの寿命が他の光学過程と比較して十分長いと仮定する。この場合、全ての時間で<s^>=0であり、式(10)は、式(14)のようになる。
Figure 0006229228
上述と同様にして、単一波長入力場での定常状態の解として式(15)を得る。
Figure 0006229228
式(5)の両辺の期待値をとり、式(15)式を代入して、関係<b^(ω)>=r(ω)<a^(ω)>に到達した結果、式(16)を得る。
Figure 0006229228
よって、量子ドット30の電子状態が励起状態Xの場合には、入力場が基部10と共振し、Δ=0とすると、反射係数r(ω)=−1となる。
[3.共振状態の実現]
量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現するには、量子ドット30と基部10との物理条件を制御する構成を制御NOTゲート素子100が備えることが好ましい。このようにすれば、光制御素子(制御NOTゲート素子100)の製造時には量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現する物理条件が十分には実現されない場合であっても、光制御素子の製造後の任意のタイミングで上記の物理条件を調整することが可能となる。
すなわち、量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現する物理条件は、製造時に十分に実現されていてもよいし、製造時には十分には実現されず、製造後に調整されてもよい。後者の場合、上記物理条件が、製造時にどの程度実現されているかは問わない。
製造後の調整によって、上記物理条件を実現する場合には、設計や製造の誤差マージンを大きくとることが可能となる。
図4は、制御NOTゲート素子100における共振状態を実現するための条件制御ないし調整(チューニング)の方法を示した図である。条件制御ないし調整の方法には、例えば、量子ドット30の発光波長を調整する方法と、基部10のキャビティの大きさを調整する方法がある。
図4(a)は、第1金層210を設けた基板200の上部に基部10と入出射路20と量子ドット30とを形成した制御NOTゲート素子100を示している。図4(a)において、制御NOTゲート素子100は、ペルチエ素子300の上に載置されている。図4(a)の構成では、ペルチエ素子300によって制御NOTゲート素子100の温度を制御することにより、量子ドット30の発光波長を調整することができる。なお、制御NOTゲート素子100の温度を制御する構成は、特に限定されるものではなく、加熱、冷却、又は、加熱と冷却との両方を行うものであってよい。
図4(b)は、第1金層210を設けた基板200の上部に基部10と入出射路20と量子ドット30とを形成した制御NOTゲート素子100を示している。図4(b)において、制御NOTゲート素子100に対して、外部磁場Bが印加されている。図4(b)の構成では、外部磁場Bを印加し、その大きさを変化させる構成により、量子ドット30の発光波長を調整することができる。
図4(c)は、金層260を設けた基板200の上部に空間を設けながら、基部10と入出射路20と量子ドット30とを、酸化シリコン層250によって支持されたエアブリッジ構造、を有する制御NOTゲート素子100を示している。
図4(c)においては、共振器部分と基板が絶縁層を挟んで電気的に分離されており、静電的な力によって引力や斥力を発生させることで、エアブリッジ構造を有する制御NOTゲート素子100を図中上下方向に撓ませる。これにより、基部10のキャビティの大きさを調整することができる。
図4(a)〜(c)の制御NOTゲート素子100では、それぞれ、温度、印加磁場の大きさ、制御NOTゲート素子100の撓みなどを調整する。
このとき、制御NOTゲート素子100が制御NOTゲート動作をより適正に実現する条件を確認することによって量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現することができる。
[4.製造方法]
[4−1.一般的な制御NOTゲート素子]
次に、制御NOTゲート素子100の製造方法の具体例を説明する。
まず、図4(a)(b)に示した制御NOTゲート素子100の製造方法を説明する。図5及び図6は、制御NOTゲート素子100の製造方法の具体例を示す工程図である。
まず、基板200が準備される〔図5(a)〕。本実施形態では、基板200としてシリコン基板が用いられる。基板200としては、シリコン基板の他、III−V族半導体が好適に用いられる。
次に、基板200の上に第1金層210が形成される〔図5(b)〕。第1金層210の形成手段としてはスパッタなどが用いられる。
次に、第1金層の上に第2シリコン層220が形成される〔図5(c)〕。第2シリコン層220の形成手段としてはスパッタなどが用いられる。
次に、第2シリコン層220の上の所定の位置に量子ドット30が配置される〔図5(d)〕。
前述の共振状態を実現するには、量子ドット30の位置制御は的確に行われることが好ましい。そのため、第2シリコン層220の上の量子ドット30の配置位置に、量子ドット30(例えば直径5nm)を捉えるための凹部(窪み)を設ける。凹部(窪み)は例えば、SPM(scaning probe microscope)リソグラフィ(局所陽極酸化、及び酸化物の化学的除去)を用いて設けられる。
設けられた凹部(窪み)の上に溶媒に浮いた量子ドット30が通過させられると、凹部(窪み)の位置で量子ドット30が捉えられ、目的となる配置位置に保持される。すなわち、量子ドット30は、量子ドット30が保持される凹部(窪み)を有する第2シリコン層220によって支持される。凹部(窪み)の形状や大きさは限定されない。
なお、周囲を半導体やガラスの層で覆ったコアシェル型の量子ドット30を用いる場合には、周囲を覆われた量子ドット30の直径は大きなサイズ(例えば1μm)になる。この場合は、コアシェル型の量子ドット30のサイズに見合った大きさの窪みが設けられればよい。
次に、第2シリコン層220及び量子ドット30の上に第3シリコン層230が形成される〔図5(e)〕。第3シリコン層230の形成手段としてはスパッタなどが用いられる。第3シリコン層230の形成により、量子ドット30は周囲をシリコン層で覆われた状態となる。
次に、公知のリソグラフィ技術により、第2シリコン層220及び第3シリコン層230が所定の形状にパターニングされる〔図6(f)〕。これにより、プレーナ型の制御NOTゲート素子100における、基部10と入出射路20とが一体形成される。
次に、パターニングされた第2シリコン層220及び第3シリコン層230の上面及び側面に第2金層240〔図6(g)〕が形成される。第2金層240の形成手段としてはスパッタなどが用いられる。
第1金層210及び第2金層240は、制御NOTゲート素子100の外壁を取り囲むミラーとなる。金は、例えば近赤外領域の光を100%に近い反射率で反射する良好なミラー素材である。反射率の比較的高い材質であれば、第1金層210及び第2金層240に代えて、他の材質の層を設けてもよい。
[3−2.エアブリッジ構造で支持された制御NOTゲート素子]
次に、図4(c)に示したエアブリッジ構造を有する制御NOTゲート素子100の製造方法を説明する。図7及び図8は、制御NOTゲート素子100の製造方法の具体例を示す工程図である。
まず、基板200が準備される〔図7(a)〕。本実施形態では、基板200としてシリコン基板が用いられる。基板200としては、シリコン基板の他、III−V族半導体が好適に用いられる。
次に、基板200の上に酸化シリコン層(SiO)250が形成される〔図7(b)〕。酸化シリコン層(SiO)250の形成手段としては熱酸化処理などが用いられる。
次に、酸化シリコン層250の上に第2シリコン層220が形成される〔図7(c)〕。第2シリコン層220の形成手段としてはスパッタなどが用いられる。これにより、基板200は、SOI(Silicon on Insulator)基板となる。
次に、第2シリコン層220の上の所定の位置に量子ドット30が配置される〔図7(d)〕。
量子ドット30の位置制御のために、第2シリコン層220の上の量子ドット30の配置位置に凹部(窪み)が設ける点については、前記[3−1.一般的な制御NOTゲート素子]欄と同様である。
次に、第2シリコン層220及び量子ドット30の上に第3シリコン層230が形成される〔図7(e)〕。第3シリコン層230の形成手段としてはスパッタなどが用いられる。第3シリコン層230の形成により、量子ドット30は周囲をシリコン層で覆われた状態となる。
次に、公知のリソグラフィ技術により、第2シリコン層220及び第3シリコン層230が所定の形状にパターニングされる〔図8(f)〕。これにより、プレーナ型の制御NOTゲート素子100における、基部10と入出射路20とが一体形成される。なお、この段階では、酸化シリコン層250はパターニングしない。
次に、ウェットエッチングを用いた選択エッチングにより、形成した制御NOTゲート素子100の下部の酸化シリコン層250を除去する〔図8(g)〕。このとき、制御NOTゲート素子100に光を入出力する外部の光導波路の下部の酸化シリコン層250の一部は、制御NOTゲート素子100の支持層として残しておく。酸化シリコン層250の一部を残すためには、除去する際にその一部をあらかじめレジストなどで保護しておけばよい。
これにより、エアブリッジ構造を有する制御NOTゲート素子100〔図4(c)参照〕を形成することができる。
次に、矢印の2方向からの金スパッタにより、制御NOTゲート素子100の上部及び側面と基板200の表面とに金層260を形成する〔図8(h)は図8(g)中のA−A’線分での断面を示す〕。これにより、制御NOTゲート素子100は、光の進行方向以外の側面を金層で覆われた構造となる。
上記の説明では、制御NOTゲート素子100を、リソグラフィ技術で製造する例を示したが、制御NOTゲート素子100の材質は半導体に限定されない。リソグラフィ技術を利用可能な素材として、例えば光学ポリマーを用いて制御NOTゲート素子100を製造することができる。
例えば、上記のシリコン層の全て及び基板を光学ポリマーに置き換える態様の他、量子ドット30の上を覆う第3シリコン層230のみを光学ポリマーに置き換える態様(ハイブリッド型)もある。
[5.制御NOTゲート素子の内部構造]
図9は、制御NOTゲート素子100の内部構造を示す図である。図9においては、制御NOTゲート素子100を上部と下部とに分断してその内部構造が視認できるようにしている。
図9の量子ドット30は、半導体やガラスの層で覆ったコアシェル型とすることで、発光の効率を上げるとともに、ブリンキングを抑制している。シェルの厚さは適宜調整される。コアシェル型の量子ドットは、サイズが大きいので(例えば1μm)、基板上に配置する際のハンドリングがより容易となる。また、量子ドット30の耐光性を向上(光による劣化を抑制)させることもできる。
[6.補足]
上記の制御NOTゲート素子100によれば、制御NOTゲート素子100が形成された基板平面と略平行な方向に出射光が出射される。そのため、出射光を形成された基板内で取り扱うことができ、プレーナ回路を構成して素子の集積度を高めることがより容易となる。
制御NOTゲート素子100は、量子コンピュータ(固定量子計算機)や量子通信機器などの量子デバイスに好適に用いられる。例えば、単一の光子を発する発光素子と制御NOTゲート素子100とを組み合わせることにより、ドイチェ−ジェサの量子計算光回路を実現することが可能となる。
また、本実施形態の制御NOTゲート素子100では、入射光と出射光とが同じ光導波路(入出射路20)を通るため、制御NOTゲート素子100とその他の素子や回路とを接続するのがより容易となる。
なお、本発明においては、入射光が通る光導波路と出射光が通る光導波路とは異なる構成であってもよい。例えば、図1のx,y,z軸に対して、斜めの方向を向く導波路を用いて反射を利用する構成とすれば、2本の光導波路によって、入射光が通る光導波路と出射光が通る光導波路とを実現できる。2本の光導波路を採用すれば、回路設計の自由度が向上する。
上記の説明では、基部10は、直方体形状のものとして説明したが、基部10は、入射光の等位相面内の互いに垂直な2方向に対し、異方性を有する形状であれば任意の形状であってよく限定されない。例えば、基部10を楕円柱、三角形柱、多角形柱、蒲鉾型、ラグビーボール型、ソーセージ型の形状に構成してもよい。基部10は、入射光の等位相面内の互いに垂直な2方向において、その長さが異なる形状であれば、直線や曲線で構成された任意の形状であってよい。基部10を複雑な形状とする場合には、前述した光学ポリマーの使用も好ましい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。なお、当然ながら、上述した実施の形態及び複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態及び変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
10…基部, 20…入出射路, 30…量子ドット, 100…制御NOTゲート素子

Claims (9)

  1. 基板上に形成された光制御素子であって、
    キャビティ構造を有する基部と、
    前記基部の側面に接続され、入射光を前記基部の内部に導く第1光導波路と、
    前記基部内の前記入射光の光路上に設けられた量子ドットと、
    前記基部内を通過した入射光を反射する反射部と、
    前記基部の側面に接続され、前記反射部にて反射された入射光を前記基部の外部に導く第2光導波路とを備え、
    前記基部は、前記入射光の等位相面内の互いに垂直な2方向に対し、異方性を有する形状であり、
    前記第1光導波路に、制御光が入射された後、信号光が入射されることにより、制御NOTゲート素子として機能する光制御素子。
  2. 前記制御光は円偏光を有する光であり、前記信号光は直線偏光を有する光である請求項に記載の光制御素子。
  3. 前記量子ドットの発光波長を調整する第1調整部を備える請求項1または2に記載の光制御素子。
  4. 前記基部の前記キャビティ構造の大きさを調整する第2調整部を備える請求項1または2のいずれか1項に記載の光制御素子。
  5. 前記第1光導波路と前記第2光導波路とは同一の部材である請求項1からのいずれか1項に記載の光制御素子。
  6. 前記量子ドットは、当該量子ドットが保持される凹部を有する支持層によって支持されている請求項1からのいずれか1項に記載の光制御素子。
  7. 前記量子ドットは、化学合成量子ドットである請求項1からのいずれか1項に記載の光制御素子。
  8. 前記反射部は金素材を含む請求項1からのいずれか1項に記載の光制御素子。
  9. 請求項1からのいずれか1項に記載の光制御素子を用いる量子デバイス。
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