JP6229228B2 - 光制御素子及びこれを用いる量子デバイス - Google Patents
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Description
そのため、上記従来の光制御素子では、出射光を光制御素子が形成された基板内で取り扱うことができず、プレーナ回路を構成して素子の集積度を高めることが困難であった。
基部と、前記基部の側面に接続され、入射光を前記基部の内部に導く第1光導波路と、前
記基部内の前記入射光の光路上に設けられた量子ドットと、前記基部内を通過した入射光
を反射する反射部と、前記基部の側面に接続され、前記反射部にて反射された入射光を前
記基部の外部に導く第2光導波路とを備え、前記基部は、前記入射光の等位相面内の互い
に垂直な2方向に対し、異方性を有する形状であり、前記第1光導波路に、制御光が入射された後、信号光が入射されることにより、制御NOTゲート素子として機能する。
図面を参照しながら、本発明の一態様を示す制御NOTゲート素子の構成を説明する。
図1は、制御NOTゲート素子100の構成を説明する図である。図1では、シリコン基板上に形成された制御NOTゲート素子100を、基板平面に対して斜め上方からみている。
制御NOTゲート素子100は、基部10と、入出射路20と、量子ドット30とを備えている。制御NOTゲート素子100の壁面は、基板と異なる屈折率を有する光反射素材(例えば、金などの金属や各種の誘電体)により覆われている。この光反射素材は、制御NOTゲート素子100の基部10の内部を通過した入射光を反射する反射部となる。
すなわち、基部10は、等位相面内の互いに垂直な2方向において長さ(又は幅)が異なる形状である。図1の例では、基部10は、直方体形状である。上記の2方向は、入射光の等位相面内であって、互いに垂直な方向であれば、任意の方向に設定され得る。
基部10における異方性の程度、すなわち、等位相面内の互いに垂直な2方向における長さの異なりの程度は、入射光との結合の程度に異方性が生じる限りにおいて特に制限はない。基部10の異方性の存在は、制御NOTゲート素子100に制御NOT動作を実現させる。
量子ドット30として用いられる量子ドットの種類、物性、及び形態は特に限定されない。本実施形態では、量子ドット30として、化学合成量子ドットを用いる。
化学合成量子ドットは、化学反応で微結晶を成長させることにより合成される量子ドットである。化学合成量子ドットは、結晶成長する半導体基板への面方位依存性を持つエピタキシャル量子ドットと異なり、球状で対称性が高いものが実現できる。そのため、化学合成量子ドットを用いれば、円偏光によって特定のスピンの電子だけを効果的に励起することができる。本実施形態において、量子ドット30として用いる化学合成量子ドットの材質は、特に限定されない。例えば、量子ドット30の材質として、PbS、InAs、PbSe等が用いられる。
[2−1.光制御のプロセス]
制御NOTゲート素子100の制御NOT動作においては、制御ビットの光と信号ビットの光とがある。以下、単に「制御ビット」及び「信号ビット」と称する。
制御NOT動作は、制御ビットが|0>のときには信号ビットは変化しないが、制御ビットが|1>の時には、信号ビットに対して|0>と|1>を入れ替えるNOTゲートとして働くものである。
本実施形態では、制御ビットは円偏光であり、信号ビットは直線偏光である。円偏光を持つ光(pump光)を入出射路20から入射することによって、特定方向のスピンを持つ電子を量子ドット30の内部に選択的に励起する。選択則により、励起光の光子の円偏光の向きと励起される電子のスピンの向きは一対一に対応する。なお、制御ビットは円偏光でなくともよい。
続いて、入出射路20から入射する光(probe光)の直線偏光方向を信号ビットとして、その反射時の偏光方向を操作する。信号ビットは、図1に示すように、キャビティの異方形状に対して45度傾いた偏光状態の光を用いる。
信号ビットと制御ビットとの光源の種類は特に限定されないが、例えばパルスレーザや単一光子光源を用いる。
また、信号ビットの波長は、後述の強結合状態を形成することが可能な波長であれば、特に制限されない。制御ビットの波長は、量子ドット30を励起させることができる波長であれば特に制限されないが、例えば強結合状態を形成する量子ドット30の遷移に関与する準位を直接励起する波長を用いれば、より高い効率で光制御素子を動作させることが可能である。
図2(b)に示されるように、制御ビットで量子ドット30の中の電子が励起されていない場合、量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとが共振する。信号ビットは、量子ドット30の発光波長及び基部10のキャビティの共振モードとマッチングすることにより、反射時の偏光変換が抑制され、そのままの偏光状態で反射される。
量子ドット30の遷移に共振する波長を持った光子が基部10のキャビティに入ると、量子ドット30に吸収され、量子ドット30の遷移を生じる。励起された状態の量子ドット30は遷移によって同じ波長の光子を放出できる。放出された光子は、再度吸収されることが可能である。
制御NOTゲート素子100の上記の動作原理は、既にH. Kim et al., Nature photonics. vol.7, p.373 (2013).等の文献によって公知であるが、以下に数式を用いて説明する。
[2−2−1.制御NOT動作]
制御NOTゲート素子100は、量子ドット30の電子状態に対する反射係数の依存性を利用することで、制御NOTゲート動作を実現する。信号ビットは、キャビティの異方形状に対して45度傾いた偏光方向H,Vの光を用いる(図1参照)。図3は、x軸及びy軸の方向に対し、偏光方向H,Vの方向を示した図である。
これに対して、量子ドット30が、図2(b)の状態にあって、電子が基底準位にある場合は、反射係数rは異なる。入射光子励起による量子ドット30の中の電子の遷移が基部10と共振する場合には、反射係数rは(3)式のようになる。
以下、参考のために、反射係数の計算を示す。反射係数は、入出力場演算子の形式を用いて計算される。x軸,y軸を偏光軸とする光子のために、ax^とay^とを入力演算子として定義する(例えば、ax^は、axの上部に^を設けた記号を別表記したものである)。これらの演算子は、式(4)を通して、H−Vの基底で表すこともできる。
量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現するには、量子ドット30と基部10との物理条件を制御する構成を制御NOTゲート素子100が備えることが好ましい。このようにすれば、光制御素子(制御NOTゲート素子100)の製造時には量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現する物理条件が十分には実現されない場合であっても、光制御素子の製造後の任意のタイミングで上記の物理条件を調整することが可能となる。
すなわち、量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現する物理条件は、製造時に十分に実現されていてもよいし、製造時には十分には実現されず、製造後に調整されてもよい。後者の場合、上記物理条件が、製造時にどの程度実現されているかは問わない。
製造後の調整によって、上記物理条件を実現する場合には、設計や製造の誤差マージンを大きくとることが可能となる。
図4は、制御NOTゲート素子100における共振状態を実現するための条件制御ないし調整(チューニング)の方法を示した図である。条件制御ないし調整の方法には、例えば、量子ドット30の発光波長を調整する方法と、基部10のキャビティの大きさを調整する方法がある。
図4(c)においては、共振器部分と基板が絶縁層を挟んで電気的に分離されており、静電的な力によって引力や斥力を発生させることで、エアブリッジ構造を有する制御NOTゲート素子100を図中上下方向に撓ませる。これにより、基部10のキャビティの大きさを調整することができる。
このとき、制御NOTゲート素子100が制御NOTゲート動作をより適正に実現する条件を確認することによって量子ドット30の発光波長と基部10のキャビティとの共振状態を実現することができる。
[4−1.一般的な制御NOTゲート素子]
次に、制御NOTゲート素子100の製造方法の具体例を説明する。
まず、図4(a)(b)に示した制御NOTゲート素子100の製造方法を説明する。図5及び図6は、制御NOTゲート素子100の製造方法の具体例を示す工程図である。
前述の共振状態を実現するには、量子ドット30の位置制御は的確に行われることが好ましい。そのため、第2シリコン層220の上の量子ドット30の配置位置に、量子ドット30(例えば直径5nm)を捉えるための凹部(窪み)を設ける。凹部(窪み)は例えば、SPM(scaning probe microscope)リソグラフィ(局所陽極酸化、及び酸化物の化学的除去)を用いて設けられる。
次に、図4(c)に示したエアブリッジ構造を有する制御NOTゲート素子100の製造方法を説明する。図7及び図8は、制御NOTゲート素子100の製造方法の具体例を示す工程図である。
量子ドット30の位置制御のために、第2シリコン層220の上の量子ドット30の配置位置に凹部(窪み)が設ける点については、前記[3−1.一般的な制御NOTゲート素子]欄と同様である。
これにより、エアブリッジ構造を有する制御NOTゲート素子100〔図4(c)参照〕を形成することができる。
例えば、上記のシリコン層の全て及び基板を光学ポリマーに置き換える態様の他、量子ドット30の上を覆う第3シリコン層230のみを光学ポリマーに置き換える態様(ハイブリッド型)もある。
図9は、制御NOTゲート素子100の内部構造を示す図である。図9においては、制御NOTゲート素子100を上部と下部とに分断してその内部構造が視認できるようにしている。
図9の量子ドット30は、半導体やガラスの層で覆ったコアシェル型とすることで、発光の効率を上げるとともに、ブリンキングを抑制している。シェルの厚さは適宜調整される。コアシェル型の量子ドットは、サイズが大きいので(例えば1μm)、基板上に配置する際のハンドリングがより容易となる。また、量子ドット30の耐光性を向上(光による劣化を抑制)させることもできる。
[6.補足]
制御NOTゲート素子100は、量子コンピュータ(固定量子計算機)や量子通信機器などの量子デバイスに好適に用いられる。例えば、単一の光子を発する発光素子と制御NOTゲート素子100とを組み合わせることにより、ドイチェ−ジェサの量子計算光回路を実現することが可能となる。
なお、本発明においては、入射光が通る光導波路と出射光が通る光導波路とは異なる構成であってもよい。例えば、図1のx,y,z軸に対して、斜めの方向を向く導波路を用いて反射を利用する構成とすれば、2本の光導波路によって、入射光が通る光導波路と出射光が通る光導波路とを実現できる。2本の光導波路を採用すれば、回路設計の自由度が向上する。
Claims (9)
- 基板上に形成された光制御素子であって、
キャビティ構造を有する基部と、
前記基部の側面に接続され、入射光を前記基部の内部に導く第1光導波路と、
前記基部内の前記入射光の光路上に設けられた量子ドットと、
前記基部内を通過した入射光を反射する反射部と、
前記基部の側面に接続され、前記反射部にて反射された入射光を前記基部の外部に導く第2光導波路とを備え、
前記基部は、前記入射光の等位相面内の互いに垂直な2方向に対し、異方性を有する形状であり、
前記第1光導波路に、制御光が入射された後、信号光が入射されることにより、制御NOTゲート素子として機能する光制御素子。 - 前記制御光は円偏光を有する光であり、前記信号光は直線偏光を有する光である請求項1に記載の光制御素子。
- 前記量子ドットの発光波長を調整する第1調整部を備える請求項1または2に記載の光制御素子。
- 前記基部の前記キャビティ構造の大きさを調整する第2調整部を備える請求項1または2のいずれか1項に記載の光制御素子。
- 前記第1光導波路と前記第2光導波路とは同一の部材である請求項1から4のいずれか1項に記載の光制御素子。
- 前記量子ドットは、当該量子ドットが保持される凹部を有する支持層によって支持されている請求項1から5のいずれか1項に記載の光制御素子。
- 前記量子ドットは、化学合成量子ドットである請求項1から6のいずれか1項に記載の光制御素子。
- 前記反射部は金素材を含む請求項1から7のいずれか1項に記載の光制御素子。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載の光制御素子を用いる量子デバイス。
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