JP6222804B2 - プロペラファン - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、ブレード(翼)の前縁部の負圧面側における流れの剥離、ブレードの負圧面における境界層の発達に基づく空力騒音を低減するプロペラファンが開示されている。具体的には、中空のブレードの負圧面の前縁部にブレード内の中空部に連通する複数の小孔を形成し、さらに、負圧面の後縁部にブレード内の中空部に連通する長穴を形成した構造のプロペラファンが開示されている。
このプロペラファンでは、ブレードの後縁部(外周縁部)において発生する翼端渦が長穴に作用することで、ブレードの前縁部において負圧面の流れの一部を小孔からブレード内に吸引する。この吸引作用により、ブレード(翼)の前縁部の負圧面側における流れの剥離、境界層の発達を抑制し、空力騒音の低減を図っている。
しかしながら、特許文献1のプロペラファンでは、翼端渦の発生を抑制することができない。また、特許文献1のプロペラファンでは、そのブレード内部に中空部を形成する必要があるなど、その構造が複雑となるため、プロペラファンの製造コストが高い、という問題もある。
また、上記プロペラファンは、ブレードに孔部を形成した簡素な構成であるため、低コストで製造することが可能である。
また、翼端渦は、ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがって発達して、翼端渦の径寸法が大きくなるため、翼端渦のうち負圧面に向かう流れは、ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがってブレードの径方向内側にずれる。
これに対し、上記プロペラファンでは、孔部の開口をブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがってブレードの径方向内側に張り出させているため、流体が孔部を通して正圧面から負圧面へ流出する位置を、ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがって径方向内側にずらすことができる。
したがって、翼端渦のうち負圧面に向かう流れを、孔部を通して正圧面から負圧面へ流出する流体の流れによって効率よく相殺することができる。
以下、図1〜3を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプロペラファン1は、軸線S周りに回転される円筒状のハブ2と、ハブ2の外周に放射状に設けられる複数のブレード3とを備える。ブレード3は薄板状に形成され、ハブ2の軸線Sに対して傾いた状態でハブ2の外周に支持される(図3参照)。なお、プロペラファン1が射出成型品である場合、ハブ2及び複数のブレード3は一体に形成される。
このプロペラファン1は、ハブ2に接続される動力源によって、ブレード3が軸線S回りの所定の向き(図1の矢印方向)に回転される。これにより、図1の紙面の奥側から手前側(図3において左側から右側)へと、ブレード3の表面に沿って斜めに拡がるように送風される。以下ではブレード3の回転方向の前方(上流)を回転前方F、後方(下流)を回転後方Bと呼ぶ。
ハブ2の軸線Sから同一半径に沿うブレード3の断面形状は、負圧面3A側に膨出するように湾曲した翼形状となっている。さらに、複数のブレード3は、回転前方F側に位置するブレード3の負圧面3Aと回転後方B側に位置するブレード3の正圧面3Bとがハブ2の軸線S方向に間隔をあけて対向するように配される。これにより、回転するブレード3の正圧面3Bによってかきとられる空気(流体)は、前縁4側から回転前方F側に位置するブレード3の負圧面3Aと回転後方B側に位置するブレード3の正圧面3Bとの間に押し込まれることで、図1の紙面の奥側から手前側(図3において左側から右側)へと流される。
詳細に説明すれば、ベルマウス9は、室外機に備えられて室外機内の空気を外部に案内するものである。プロペラファン1は、その軸線S方向下流側の端部がベルマウス9の径方向内側に挿入されるように、室外機内部に配される。これにより、プロペラファン1の空力性能(プロペラファン1の回転により室外機内部(図3においてプロペラファン1の左側)の空気を外部(図3においてプロペラファン1の右側)に排出する性能)が確保される。なお、ブレード3の外周縁6とベルマウス9の内周面とのクリアランスが過度に大きいと、プロペラファン1の空力性能は低下する。
具体的には、ベルマウス9の内側に位置するブレード3の外周縁6の後縁5側部分の長さは、外周縁6の全長の略1/2である。このため、孔部10の後縁5側の端部の位置は、孔部10がベルマウス9の内側に入らないように、外周縁6に沿って前縁4から孔部10の前縁4側の端部に至る距離が外周縁6の全長の略1/2以下となるように設定されるとよい。
また、ブレード3の正圧面3Bに沿って流れる空気にはブレード3の回転に伴う遠心力が作用するため、ブレード3の正圧面3B上を流れる空気の一部は、図2に示すように、ブレード3の径方向外側に向けて流れ、ブレード3の外周縁6に到達する。そして、この空気がブレード3の負圧面3A側に回り込むことで翼端渦Vが発生する。
また、翼端渦Vはブレード3の外周縁6よりも径方向内側において負圧面3Aに向かう流れを有するが、この流れは、孔部10を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出した空気の流れによって相殺することができる。
また、第一実施形態のプロペラファン1は、ブレード3に孔部10を形成した簡素な構成であるため、低コストで製造することが可能である。
次に、本発明の第二実施形態について、図4,5を参照して、第一実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図4,5に示すように、本実施形態のブレード3には、第一実施形態と同様の孔部11が形成されている。すなわち、孔部11は、ブレード3の外周縁6の近傍において正圧面3Bから負圧面3Aまで貫通し、その貫通方向がブレード3の厚さ方向に設定されている。また、孔部11は、ブレード3の外周縁6に沿うように前縁4側から後縁5側に向けて延びる長孔となっている。さらに、孔部11の延在方向の両端部の位置も、第一実施形態の孔部10と同様に設定されている。
ただし、本実施形態では、負圧面3A及び正圧面3Bに対する孔部11の開口位置が、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがってブレード3の径方向内側に変位している。
図5に示すように、翼端渦Vはブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって発達し、翼端渦Vの径寸法が大きくなるため、翼端渦Vのうち負圧面3Aに向かう流れは、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがってブレード3の径方向内側にずれる。これに対し、本実施形態のプロペラファンでは、負圧面3Aに対する孔部11の開口位置が前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって径方向内側に変位するため、空気が孔部11を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出する位置を、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって径方向内側にずらすことができる。したがって、翼端渦Vの大きさが変化しても、翼端渦Vのうち負圧面3Aに向かう流れを、孔部11を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出する空気の流れによって効率よく相殺することが可能となり、翼端渦Vの発生を効率よく抑制できる。
この場合でも、上記第二実施形態の場合と同様に、空気が孔部11を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出する位置を、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって径方向内側にずらすことができるため、翼端渦Vの発生を効率よく抑制できる。
次に、本発明の第三実施形態について、図7,8を参照して、第一実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図7,8に示すように、本実施形態のブレード3には、第一実施形態の孔部10と同様に、ブレード3の外周縁6の近傍において正圧面3Bから負圧面3Aまで貫通する孔部12が形成されている。また、孔部12は、ブレード3の外周縁6に沿うように前縁4側から後縁5側に向けて延びる長孔となっている。さらに、孔部12の延在方向の両端部の位置も、第一実施形態の孔部10と同様に設定されている。
ただし、本実施形態では、孔部12のうちブレード3の径方向内側の内壁面が、正圧面3Bから負圧面3Aに向かうにしたがってブレード3の径方向外側に傾斜する傾斜面12Aとなっている。なお、孔部12のうち傾斜面12Aに対向するブレード3の径方向外側の内壁面(対向面12B)は、ブレード3の厚さ方向に延びている。
本実施形態のガイド部14は、板状に形成され、傾斜面12Aに対応する方向(負圧面3Aから離れるにしたがってブレード3の径方向外側に傾斜する方向)に延びている。なお、図示例では、ガイド部14の延出方向先端が、孔部12のうちブレード3の径方向外側の内壁面(対向面12B)よりもブレード3の径方向内側に位置しているが、例えば対向面12Bと同じ径方向位置に位置してもよい。
なお、図示例では、フィン15の延在方向が、ブレード3の正圧面3Bに沿ってブレード3の径方向外側に向かう空気の流れ方向(図7の矢印方向)に一致しているが、これに限ることはない。また、図示例では、フィン15の突出高さが、ブレード3の径方向外側に向かうにしたがって小さくなっているが、これに限ることはない。さらに、フィン15は、孔部12の延在方向に間隔をあけて複数(図示例では二つ)配列されているが、少なくとも孔部12の延在方向の中途部に一つだけ設けられていればよい。
さらに、リブ16は、前述したフィン15と同様の板状に形成され、フィン15と共に単一の板材をなすように一体に形成されている。そして、リブ16は、孔部12をその延在方向に分割している。図示例では、二つのリブ16によって孔部12が三つに分割されているが、これに限ることはない。
なお、ブレード3が射出成型品である場合、これらガイド部14、フィン15及びリブ16はブレード3に一体に形成することが可能である。
また、傾斜面12Aの負圧面3A側の端部にはガイド部14の延長傾斜面14Aが連なっているため、孔部12から負圧面3A側に流出した空気を、延長傾斜面14Aによってブレード3の外周縁6に向けて流すことができる。
以上のように、負圧面3A側においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れにより、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に追い出すことができる。
さらに、本実施形態のプロペラファンによれば、負圧面3A側においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れにより、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に追い出すことができる。したがって、回転前方F側に位置するブレード3において発生した翼端渦Vが、回転後方B側に位置するブレード3に衝突することを防止できる。したがって、翼端渦Vの衝突による空力騒音を低減できる。
この構成によれば、孔部12においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れを強めることができるため、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に効率よく追い出すことが可能となる。
この構成によれば、ブレード3の前縁4側における孔部12の貫通方向の傾斜角度が大きく設定されていることで、翼端渦Vが発達する前に、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に効率よく追い出すことが可能となる。
また、図9,10に示す構成では、負圧面3Aに対する孔部12の開口位置が、孔部12の前縁4側の端部から後縁5側の端部に向かうにしたがってブレード3の径方向内側に変位するように設定されているため、第二実施形態と同様に、翼端渦Vの発達を効率よく抑制できる効果も奏する。
また、第三実施形態のプロペラファンに備えるフィン15やリブ16は、図1,2に示す第一実施形態の構成、図4,5に示す第二実施形態の構成、図6に示す第二実施形態の変形例の構成、及び、上述した図9,10に示す構成のいずれにも適用可能である。このように適用した場合でも、フィン15の遠心作用によって孔部12から負圧面3A側に流出した流体をブレード3の外周縁に向けて流すことができ、このブレード3の径方向外側に向かう流体の流れにより、翼端渦Vをブレード3の外周縁から径方向外側に追い出す効果を奏する。
例えば、ブレード3の外周縁6近傍に形成される孔部10,11,12はブレード3の前縁4側から後縁5側に向けて延びる長孔に限らず、例えばブレード3の前縁4側から後縁5側に向けて配列される複数の小孔であってもよい。この構成では、長孔の場合と比較してブレード3の強度低下を抑えることができる。
Claims (7)
- 軸線回りに回転されるハブと、
該ハブに放射状に設けられて、正圧面及び負圧面を有し、前記ハブとともに回転することで負圧面側から正圧面側へ前記軸線方向に流体を送る複数のブレードと、を備え、
前記ブレードに、正圧面から負圧面まで貫通し、前記ブレードの外周縁に沿うように前縁側から後縁側に向かって延びる長孔が形成され、
前記ブレードの径方向における前記長孔の幅寸法が、前縁側から後縁側に向かうにしたがって前記ブレードの径方向内側に張り出すように大きくなることを特徴とするプロペラファン。 - 軸線回りに回転されるハブと、
該ハブに放射状に設けられて、正圧面及び負圧面を有し、前記ハブとともに回転することで負圧面側から正圧面側へ前記軸線方向に流体を送る複数のブレードと、を備え、
前記ブレードに、正圧面から負圧面まで貫通し、前記ブレードの外周縁に沿うように前縁側から後縁側に向かって延びる長孔が形成され、
前記ブレードが、前記長孔の径方向外側において前記負圧面から突出し、前記長孔の径方向外側の端部から前記ブレードの外周縁まで延在するフィンを備えることを特徴とするプロペラファン。 - 前記負圧面に対する前記長孔の開口位置が、前記ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがって前記ブレードの径方向内側に変位することを特徴とする請求項2に記載のプロペラファン。
- 前記ブレードの径方向における前記長孔の幅寸法が、前縁側から後縁側に向かうにしたがって前記ブレードの径方向内側に張り出すように大きくなることを特徴とする請求項2に記載のプロペラファン。
- 前記長孔のうち前記ブレードの径方向内側の内壁面が、前記正圧面から前記負圧面に向かうにしたがって前記ブレードの径方向外側に傾斜する傾斜面であり、前記長孔のうち前記ブレードの径方向外側の内壁面が、ブレードの厚さ方向に延びて前記正圧面に垂直な面又は前記正圧面から前記負圧面に向かうにしたがって前記ブレードの径方向外側に傾斜する傾斜面であるることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロペラファン。
- 前記ブレードが、前記長孔の径方向内側において前記負圧面から突出するガイド部を備え、
前記ガイド部が、前記長孔の径方向内側の前記傾斜面に連なり、前記負圧面から離れるにしたがって、径方向外側に延びる延長傾斜面を有することを特徴とする請求項5に記載のプロペラファン。 - 前記ブレードが、前記長孔の径方向外側において前記負圧面から突出し、前記長孔の径方向外側の端部から前記ブレードの外周縁まで延在するフィンを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロペラファン。
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