JP6222439B2 - ガラスフィルムの割断方法及びフィルム状ガラスの製造方法 - Google Patents

ガラスフィルムの割断方法及びフィルム状ガラスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガラスフィルムの割断方法及びフィルム状ガラスの製造方法に係り、詳しくは、レーザー加熱を利用したガラスフィルムのフルボディ割断に関する。
周知のように、フラットパネルディスプレイ等のガラス基板に代表される板ガラス製品の製造工程では、大面積の板ガラスから小面積の板ガラスを切り出したり、板ガラスの辺に沿う縁部をトリミングしたりすることが行われる。そのための手法としては、板ガラスを割断することが挙げられる。
板ガラスを割断する手法の1つとしては、図7に示すような、レーザー加熱を利用した割断の方法(以下、レーザー割断法という)が知られている。同図に示すように、この方法は、割断予定線4に沿う方向Xに板ガラスGを移動させながら、レーザー9を割断予定線4に沿ってスポット状に照射すると共に、水等の冷媒10をレーザー9に追随させて噴射する。
そして、レーザー9によって加熱される加熱部6と、加熱部6の一部を冷媒10によって冷却した冷却部7との温度差に起因して作用する熱応力により、板ガラスGの端部に刻設された初期クラック8を割断予定線4に沿って進展させ、割断部11を連続的に形成することで板ガラスGをフルボディ割断する方法である(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−116611号公報
ところで、近年フレキシブルなディスプレイやアプリケーション、部品の素材として厚みが200μm以下の板ガラス、すなわち、ガラスフィルムを採用することが提案されており、板ガラスの薄肉化が推進されている。上記特許文献1に開示された技術は、厚みの大きい板ガラスのみならず、このようなガラスフィルムのフルボディ割断をも、その対象としたものであるが、同文献に開示された技術を用いてガラスフィルムの割断を行う際には、下記のような問題が生じていた。
すなわち、厚みの大きい板ガラスをレーザー割断法により割断する場合には、その厚みの大きさ故に、図8(a)に示すように、板ガラスGの厚み方向Dにおいて、加熱部6と冷却部7との双方を容易に生成し得る。そのため、この加熱部6と冷却部7との温度差に起因して作用する熱応力により、割断部11を厚み方向Dに沿って進展させることで、円滑に板ガラスGの割断を行うことが可能であった。
一方、厚みが200μm以下のガラスフィルムは、その厚みが極めて薄いために、図8(b)に示すように、厚み方向Dに沿って加熱部6と冷却部7との双方を生成するための十分な厚みを有しておらず、加熱部6の生成が不十分となる。そこで、ガラスフィルムGFの割断を行う場合には、図8(c)に示すように、ガラスフィルムGFの表面に沿って生成される加熱部6と冷却部7との温度差に起因して作用する熱応力により、割断部11をC方向に進展させることで、ガラスフィルムGFの割断を行ってきた。
しかしながら、同図に示すように、割断の進行方向Cにおける割断予定線4の終端部Eにおいては、割断予定線4の延長線上にガラスフィルムGFが存在しないため、冷却部7のみを生成することができ、二点鎖線で示す加熱部6を生成することができないという問題があった。その結果、終端部Eにおいて、割断部11を進展させるための所要の熱応力を作用させることができず、ガラスフィルムGFの円滑な割断を行うことが困難であった。
従って、厚みが200μm以下のガラスフィルムをレーザー割断法により割断する場合には、上述のように、従来において用いられてきたガラスフィルムの厚み方向に割断部を進展させる方法と、ガラスフィルムの表面に沿う方向に割断部を進展させる方法とのいずれの方法によるにしても、好適に割断を行うことが難しく、割断面の品位が損なわれるおそれがある。この問題は、厚みが50μm以下のガラスフィルムを割断する場合に、特に顕著となる。
上記事情に鑑みなされた本発明は、厚みが200μm以下のガラスフィルムをレーザー割断法によって円滑に割断し、割断面の品位を向上させることを技術的課題とする。
請求項1に係る発明は、ガラスフィルムに対しレーザーによる加熱及びこれに追随する冷却を行うことにより初期クラックを割断予定線に沿って進展させて前記ガラスフィルムをフルボディ割断するフルボディ割断工程を有するガラスフィルムの割断方法であって、
前記ガラスフィルムの厚みが50μm以下であり、前記ガラスフィルムを支持する支持ガラスの厚みが前記ガラスフィルムの厚みの9倍以下であり、前記支持ガラス上に前記ガラスフィルムを積層することによりガラスフィルム積層体を作製する積層体作製工程を有し、前記積層体作製工程の実行後に、前記フルボディ割断工程を実行することを特徴とするガラスフィルムの割断方法に関する。
請求項2に係る発明は、前記積層体作製工程は、前記支持ガラス上に前記ガラスフィルムを直接面接触させる工程を有し、前記ガラスフィルム及び前記支持ガラスのそれぞれ相互に接触する側の面の表面粗さRaを2.0nm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルムの割断方法に関する。
請求項3に係る発明は、前記支持ガラス上には、無機薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスフィルムの割断方法に関する。
請求項4に係る発明は、前記フルボディ割断工程の実行後に、前記ガラスフィルム積層体を前記ガラスフィルム側が凸となるように湾曲させて割断されたガラスフィルムを剥離する剥離工程を実行することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のガラスフィルムの割断方法に関する。
請求項5に係る発明は、ガラスフィルムに対しレーザーによる加熱及びこれに追随する冷却を行うことにより初期クラックを割断予定線に沿って進展させて前記ガラスフィルムをフルボディ割断するフルボディ割断工程を有するガラスフィルムの割断方法であって、
前記ガラスフィルムの厚みが200μm以下であり、前記ガラスフィルムを支持する支持ガラス上に無機薄膜が形成され、前記ガラスフィルムと前記支持ガラス上に形成された前記無機薄膜とを面接触させることによりガラスフィルム積層体を作製する積層体作製工程を有し、前記積層体作製工程の実行後に、前記フルボディ割断工程を実行することを特徴とするガラスフィルムの割断方法に関する。
請求項6に係る発明は、前記無機薄膜の表面粗さRaが、2.0nm以下であることを特徴とする請求項5に記載のガラスフィルムの割断方法に関する。
請求項7に係る発明は、支持ガラス上に厚み200μm以下のガラスフィルムを積層してガラスフィルム積層体を作製する積層体作製工程と、
前記ガラスフィルム積層体上の前記ガラスフィルムに対しレーザーによる加熱及びこれに追随する冷却を行うことにより初期クラックを割断予定線に沿って進展させて前記ガラスフィルムをフルボディ割断するフルボディ割断工程と、
前記フルボディ割断工程後に前記ガラスフィルム積層体を前記ガラスフィルム側が凸となるように湾曲させつつ前記割断されたガラスフィルムを剥離することを特徴とするフィルム状ガラスの製造方法に関する。
本発明によれば、厚みが200μm以下のガラスフィルムをレーザー割断法によって円滑に割断することができる。また、ガラスフィルムの割断面の品位を向上させることが可能である。
(a)、(b)は本発明の第一実施形態に係るガラスフィルムの割断方法における積層体作製工程を示す斜視図である。 支持ガラスに無機薄膜を形成した斜視図である。 本発明の第一実施形態に係るガラスフィルムの割断方法に用いるガラスフィルムの割断装置を示す斜視図である。 (a)は本発明の第一実施形態に係るガラスフィルムの割断方法におけるフルボディ割断工程を示す平面図であり、(b)は(a)に示すA−Aにおける断面図である。 (a)は本発明の第一実施形態に係るガラスフィルムの割断方法におけるフルボディ割断工程を示す平面図であり、(b)は(a)に示すB点における拡大図である。 本発明の剥離工程の一例を示した図である。 従来における板ガラスの割断方法を示す斜視図である。 (a)は従来における板ガラスの割断方法を示す断面図である。(b)は従来におけるガラスフィルムの割断方法を示す断面図であり、(c)は従来におけるガラスフィルムの割断方法を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態に係るガラスフィルムの割断方法について、添付の図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、レーザー割断法により一枚のガラスフィルム(マザーガラス)から九枚のフィルム状ガラスに切断する場合について説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の第一実施形態に係るガラスフィルムの割断方法における積層体作製工程を示す斜視図である。本実施形態における積層体作製工程は、支持ガラスGS上にガラスフィルムGFを積層している。
ガラスフィルムGFは、ケイ酸塩ガラスやシリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ガラスフィルムGFにアルカリ成分が含有されていると、表面において陽イオンの脱落が発生し、いわゆるソーダ吹きの現象が生じ、構造的に粗となる。この場合、ガラスフィルムGFを湾曲させて使用していると、経年劣化により粗となった部分から破損する可能性がある。尚、ここで無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分が2000ppm以下のガラスのことである。本発明でのアルカリ成分の含有量は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
ガラスフィルムGFの厚みは、200μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm以下である。これによりガラスフィルムGFの厚みをより薄くして、適切な可撓性を付与することができる。ガラスフィルムGFの厚みは、5μm以上であることが好ましく、これにより、ガラスフィルムGFの強度を確保することができ、支持ガラスGSからガラスフィルムGFを剥離し易くすることができる。
支持ガラスGSは、ガラスフィルムGFと同様、ケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が用いられる。支持ガラスGSについては、ガラスフィルムGFとの30〜380℃における熱膨張係数の差が、5×10−7/℃以内のガラスを使用することが好ましい。これにより、後述するレーザー割断の際に、膨張率の差によるガラスフィルムGFの割れ等が生じ難く、安定したガラスフィルムGFのレーザー割断を実行することができるガラスフィルム積層体とすることが可能となる。支持ガラスGSとガラスフィルムGFとは、同一の組成を有するガラスを使用することが最も好ましい。
支持ガラスGSの厚みは、200μm以上であることが好ましい。支持ガラスGSの厚みが200μm未満であると、支持ガラスGSを単体で取り扱う場合に、強度の面で問題が生じるおそれがある。支持ガラスGSの厚みは、300μm以上であることがより好ましく、400μm以上であることが更に好ましい。支持ガラスGSの厚みは、700μm以下であることが好ましく、500μm未満であることがより好ましい。尚、電子デバイス製造関連処理時に、図示しないセッター上に、ガラスフィルム積層体Sを載置する場合は、支持ガラスGSの厚みは200μm未満(例えば100μm等、ガラスフィルムGFと同一の厚み)でも良い。
ガラスフィルムGF及び支持ガラスGSの相互に接触する側の表面粗さRaは夫々2.0nm以下であることが好ましい。これにより、ガラスフィルムGFと支持ガラスGSと間には適度な密着力が発生する。この密着力は、水素結合に起因して発生しているものと想定されている。この密着力により、本来異なる構成要素であるはずのガラスフィルムGFと支持ガラスGSとが、ガラスフィルム積層体S全体として厚みの大きい一枚の板ガラス(一体もの)であるかのように振舞うようになる。ガラスフィルムGF及び支持ガラスGSの上記表面の表面粗さRaは、夫々1.0nm以下であることが好ましく、0.5nm以下であることがより好ましく、0.2nm以下であることが最も好ましい。
ガラスフィルム積層体Sの厚みは、250μm以上であることが好ましい。ガラスフィルム積層体S全体の厚みの大きさが十分に確保されることによって、レーザーによって加熱される加熱部と、加熱部の一部を冷却した冷却部との双方を、ガラスフィルム積層体Sの厚み方向において容易に生成し得る。その結果、フルボディ割断工程において、加熱部6と冷却部7との温度差に起因して作用する熱応力により、ガラスフィルムGFに形成される割断部11を厚み方向に沿って進展させることができ、円滑にガラスフィルムGFの割断を行うことが可能となる。
ガラスフィルムGFの厚みが50μm以下の場合については、支持ガラスGSの厚みが、ガラスフィルムGFの厚みの9倍以内、言い換えれば、ガラスフィルム積層体Sの総厚みの10%以上をガラスフィルムGFとすることが好ましい。一例として、ガラスフィルムGFの厚みが50μmの場合については、支持ガラスGSの厚みを450μm以下とすることが好ましい。50μm以下のガラスフィルムGFを使用してガラスフィルム積層体Sを作製した後にガラスフィルムGFに対して後述するレーザー割断を行う場合、ガラスフィルムの厚みが少な過ぎることにより、レーザーの出力の調整が困難なものとなるおそれがある。レーザーの出力が小さい場合は全くガラスフィルムGFが割断されないこともあり、一方、レーザーの出力が強い場合は、支持ガラスGSも同時に割断してしまうことが多く、ガラスフィルムGFのみを割断することが困難となる。そこで、上記の通り支持ガラスGSの厚みを規制することで、厚みが50μm以下であったとしても、ガラスフィルムGFのみを良好に割断することができる。ガラスフィルムGFの厚みが50μm以下の場合について、ガラスフィルム積層体Sの総厚みの50%以下をガラスフィルムGFとすることがより好ましい。これにより、ガラスフィルムGFのみを、良好にレーザー割断することができる。
図1では、ガラスフィルムGFと支持ガラスGSとが略同一の大きさとなっているが、これには限定されない。デバイス製造工程中にて、ガラスフィルムGF端面に打突が生じ、ガラスフィルムGFが破損することを防止するために、支持ガラスGSがガラスフィルムGFよりも一回り大きくてもよい。一方、ガラスフィルムGFを支持ガラスGSから剥離させやすくするため、ガラスフィルムGFの少なくとも一辺を、支持ガラスGSから食み出させても良い。
図2に示す通り、支持ガラスGS上には、無機薄膜IFが形成されていることが好ましい。これにより、後述するレーザー割断時に、レーザーを照射した割断予定線上で、ガラスフィルムGFと支持ガラスGSとが固着することを防止することができ、円滑なフィルム状ガラスの分離を達成することができ、ひいては、フィルム状ガラスの割断端面の品位を向上させることができる。また、無機薄膜IFを支持ガラスGS上に形成すると、レーザー割断時に、ガラスフィルムGFに生じたクラックが、支持ガラスGSに進展することを防止する効果も奏する。
無機薄膜IFとしては、酸化物薄膜、金属薄膜、金属酸化物薄膜等を採用することができ、Ti、Si、Au、Ag、Al、Cr、Cu、Mg、Ti、SiO、SiO、Al、MgO、Y、La、Pr11、Sc、WO、HfO、In、ITO、ZrO、Nd、Ta、CeO2、Nb、TiO、TiO、Ti、NiO、ZnOから選択される1種又は2種以上で形成されていることが好ましい。
支持ガラスGS上に形成される無機薄膜IFの表面粗さRaは、2.0nm以下であることが好ましく、1.0nm以下であることがより好ましく、0.5nm以下であることが更に好ましく、0.2nm以下であることが最も好ましい。支持ガラスGS上に無機薄膜IFを形成する方法としては、公知の方法を使用することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法等を使用することができる。
図3は、本発明に係るガラスフィルムの割断方法に用いるガラスフィルムの割断装置1(以下、単に割断装置1という)を示す斜視図である。割断装置1は、積層体Sを支持し水平面上を移動する図示しない加工台と、加工台に支持された積層体SのガラスフィルムGFにレーザー9を照射するレーザー照射装置2と、レーザー9に追随してガラスフィルムGFに冷媒10を噴射する冷媒噴射ノズル3とを備えている。
加工台は、水平面上を同図に示すX方向と、X方向に直交するY方向とに沿って移動可能となっている。
レーザー照射装置2は、定点に固定されており、加工台がX方向、Y方向に移動するのに伴って、ガラスフィルムGFの第一割断予定線4と、第一割断予定線4と直交する第二割断予定線5とに沿ってレーザー9をスポット状に照射することで、ガラスフィルムGFを加熱して加熱部6を生成する。
冷媒噴射ノズル3は、レーザー照射装置2と同様に定点に固定されており、レーザー9に追随して冷媒10を加熱部6に向かって噴射することで、加熱部6の一部を冷却してガラスフィルムGFに冷却部7を生成する。
以下、上記割断装置1を用いたガラスフィルムの割断方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、図示しない加工台をX方向に移動させる。そして、ガラスフィルムGFの面に沿う方向に生成される加熱部6と冷却部7との温度差に起因して作用する熱応力により、ダイヤモンドカッター等を用いてガラスフィルムGFの端部に刻設した初期クラック8を進展させる。そして、第一割断予定線4に沿って割断部11を連続的に形成することで、第一の方向におけるガラスフィルムGFのフルボディ割断工程を行う。
このとき、第一割断予定線4の終端部Eにおいては、第一割断予定線4の延長線上にガラスフィルムGFが存在しないため、ガラスフィルムGFの面に沿う方向においては、冷却部7のみが生成されることとなり、二点鎖線で示す加熱部6は生成されない。
しかし、ガラスフィルムGFと支持ガラスGSとが積層され、厚みの大きさが十分に確保されていること、及びガラスフィルムGFと支持ガラスGSとが、厚みの大きい一枚の板ガラス(一体もの)のように振舞うことによって、図4(b)に示すように、加熱部6と冷却部7との双方が、積層体Sの厚み方向において容易に生成され得る。その結果、加熱部6と冷却部7との温度差に起因して作用する熱応力により、ガラスフィルムGFに形成される割断部11を同図に示すD方向に沿って進展させることができるため、終端部Eにおいても、円滑にガラスフィルムGFの割断が行われる。
上述のように第一の方向におけるガラスフィルムGFのフルボディ割断工程が完了すると、図5(a)に示すように、図示しない加工台をY方向に移動させ、第二割断予定線5に沿って割断部12を連続的に形成することで、第二の方向におけるガラスフィルムGFのフルボディ割断工程が行われる。尚、第二の方向におけるガラスフィルムGFのフルボディ割断工程は、接触面の表面粗さRaが夫々2.0nm以下の場合に、好適に実行することができる。
このとき、従来においては、第二の方向におけるフルボディ割断工程を行うために、第一の方向におけるフルボディ割断工程時に割断された各ガラスフィルムGFの端部と第二割断予定線5との交点に、逐一初期クラック8を刻設することが必要であった。
しかし、本実施形態に係る方法によれば、上記交点の内、第二割断予定線5の最も始端側に位置する交点にのみ初期クラック8を刻設しておけば、第二の方向におけるフルボディ割断工程を行うことが可能であり、製造効率の観点から非常に有利なものとなることが判明している。この好ましい態様は、以下のような理由によって得られるものと想定されている。
すなわち、ガラスフィルムGFと支持ガラスGSとの間の密着力により、積層されたガラスフィルムGFと支持ガラスGSとがズレにくい。そのため、第一の方向におけるフルボディ割断工程によって形成されるガラスフィルムの割断部11において、割断されたガラスフィルムGF同士の対向する割断面間に形成される隙間が、略存在していないものとみなせる程に小さくなる。これにより、図5(b)に示すように、この隙間を跨いで、割断部12を進展させることが可能となるためと想定される。その結果、第二の方向におけるフルボディ割断工程においても、円滑にガラスフィルムを割断することが可能となる。
加えて、上述のようにしてフルボディ割断工程を終えたガラスフィルムGF同士を、相互に分離させる場合には、ガラスフィルムGFが円滑に割断されているため、これを良好に行うことができる。
なお、上述のフルボディ割断工程においては、積層されるガラスフィルムGFと支持ガラスGSとの各々において、接触する側の面の温度を250℃未満とすることが好ましい。これらの温度が250℃以上まで上昇してしまうと、フルボディ割断工程を完了した後、ガラスフィルムGFを支持ガラスGSから剥がしにくくなる。これは、両ガラスにおける接触する側の面の温度が上昇することに伴って、ガラスフィルムGFと支持ガラスGSとを密着させる力の源が、水素結合からより強力な密着力を生む共有結合へと変化するためであると想定されている。250°以上まで上昇する場合については、上述の通り、支持ガラスGS上に無機薄膜IFを形成することが好ましい。
上述の通り第1方向と第2方向にガラスフィルムGF割断を行う場合については、支持ガラスGSとガラスフィルムGFとが直接面接触しており、接触面や無機薄膜の表面粗さRaが2.0nm以下であることが好ましいが、X方向又はY方向の何れか一方行のみに割断を行う場合については、接触面や無機薄膜の表面粗さRaは、2.0nmを超えていても良い。加えて、支持ガラスGSとガラスフィルムGFの接着力や支持ガラスGSからのガラスフィルムGFの剥離性を調整するために、無機薄膜IFに替わりに、支持ガラスGS上にアクリル樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂層を、適宜設けても良い。
加えて、上記の各実施形態では、レーザー照射装置2及び冷媒噴射ノズル3を定点に固定し、積層体Sを移動させることで、ガラスフィルムGFに加熱部6と冷却部7とを生成しているが、積層体Sを固定し、レーザー照射装置2及び冷媒噴射ノズル3を移動させることで、ガラスフィルムGFに加熱部6と冷却部7とを生成してもよい。
図6は、剥離工程の一例を示した図である。支持ガラスGSからガラスフィルムGFを剥離する際には、図6に示す通り、ガラスフィルムGF側が凸となるようにガラスフィルム積層体Sを湾曲させることが好ましい。これにより、切断されたフィルム状ガラスFG間に若干の隙間CLを形成することができるため、剥離時にフィルム状ガラスFGの端面が擦れることで品位が劣化することを防止することができる。
フィルム状ガラス間に形成される隙間CLは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましい。これにより、円滑に支持ガラスGSからフィルム状ガラスFGを剥離することができ、フィルム状ガラスの端面の品位を良好なものとすることができる。
ガラスフィルム積層体Sを湾曲させる方法としては、凸曲面を有する定盤FP上に、ガラスフィルム積層体Sを載置し、上方から両側部を押圧することや支持ガラスGS側を吸着することで定盤FPの凸曲面にガラスフィルム積層体Sを沿わせる方法が、一例として挙げられる。
割断されたガラスフィルムGFを支持ガラスGSから剥離することで、最終的に小片に分割されたフィルム状ガラスFGを得ることができる。
厚み50μm以下のガラスフィルムを使用した実施例として、下記に示す条件(実施例3つ、参考例1つ)の下でレーザー割断法により、ガラスフィルムの第一の方向におけるフルボディ割断と第一の方向に直交する第二の方向におけるフルボディ割断とを試み(以下、クロス割断という)、各条件下でのクロス割断の成否を調査した。
使用したガラスフィルム及び支持ガラスは、日本電気硝子株式会社製の無アルカリガラス(製品名:OA−10G)である。そのサイズは縦:300mm、横:300mmであり、厚みは、それぞれ下記の表1のとおりである。ガラスフィルムの表面粗さRaは、オーバーフローダウンドロー法によって成形されたガラスを未研磨で使用するか、若しくは、研磨及びケミカルエッチングを行うにあたって、エッチング液の濃度、液温度、処理時間を調整することで制御した。
表面粗さRaの測定には、SII社製走査型プローブ顕微鏡(NanoNaviII/S−image)を使用し、走査エリア:2000nm、走査周波数:0.95Hz、走査データ数X(第一の方向):256、Y(第二の方向):256の条件で測定を行った。そして、支持ガラスとガラスフィルムとの各々において、中央部一点と角部一点との計二点で表面粗さRaを測定し、その平均値を表面粗さRaとした。
ガラスフィルムと支持ガラスは、クリーンルーム内で洗浄、乾燥し、これら各々の接触する側の面には、東レエンジニアリング社製(HS−830)を用いて検査を行い、ガラス上に存在するサイズ1μm以上の異物の数が500個/m以下となるようにした。そして、検査後にガラスフィルムと支持ガラスとを積層し、ガラスフィルム積層体を下記の表1の組み合わせで作製した。
ガラスフィルムのフルボディ割断を行うにあたって、まず、ガラスフィルム積層体を割断用の常盤に吸着させた。その後、ガラスフィルムの端部を、三星ダイヤモンド社製の焼結ダイヤモンド製スクライビングホイール(直径:2.5mm)を用いて初期クラックを刻設した。
ガラスフィルムに照射するレーザーとして、波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを使用した。また、レーザーは、その出力を160Wとし、400mm/secの速さで割断予定線に沿って照射することでガラスフィルム積層体の加熱を行った。そして、レーザーに追随させて水を霧状にして吹き付けることにより冷却を行い、加熱部と冷却部との温度差に起因して作用する熱応力にて初期クラック(割断部)を進展させた。
以上のようにして、縦:300mm、横:300mmのガラスフィルムを第一の方向及び第二の方向との各々において、100mm間隔でフルボディ割断を実施することによりクロス割断を試みた。
表1に各条件下でのクロス割断の成否を示す。
上記の表1に示した結果を考察すれば、本発明の実施例1〜3では支持ガラスの厚みがガラスフィルムの9倍以内であることから、良好にクロス割断を行うことが可能となっている。これは、ガラスフィルムと支持ガラスとの各々において、接触する側の面の表面粗さRaを2.0nm以下としたことにより、積層された両ガラス間に適度な密着力が作用し、両ガラス(積層体)が厚みの大きい一枚の板ガラスのように振舞うことに起因して下記のような効果が得られたためと想定される。
すなわち、レーザーによって加熱される加熱部と、加熱部の一部を冷却した冷却部との双方を、積層体の厚み方向において容易に生成し得る。これにより、フルボディ割断を行う際に、加熱部と冷却部との温度差に起因して作用する熱応力により、ガラスフィルムに形成される割断部を厚み方向に沿って進展させることができ、円滑にガラスフィルムの割断を行うことが可能となったためと想定される。
また、本発明の実施例1〜3においては、第一の方向におけるフルボディ割断を行った後、第二の方向におけるフルボディ割断を行う際に、第一の方向におけるフルボディ割断によって割断された各ガラスフィルムの端部と第二割断予定線との交点に、逐一初期クラックを刻設することなく、割断することができた。
一方、参考例1では、ガラスフィルムだけでなく、支持ガラスごとレーザー割断された。支持ガラスの厚みがガラスフィルムの9倍以上であったため、ガラスフィルムと支持ガラスとの界面を越えて、クラックが支持ガラス内へと進行したことによる。
この結果、本発明に係るガラスフィルムの割断方法によれば、厚みが200μm以下、特に厚みが50μm以下のガラスフィルムを円滑にフルボディ割断することが可能であると推認することができる。
本発明は、ガラスフィルムのレーザー割断に好適に使用することができる。
1 ガラスフィルム割断装置
2 レーザー照射装置
3 冷媒噴射ノズル
4 第一割断予定線
5 第二割断予定線
6 加熱部
7 冷却部
GF ガラスフィルム
GS 支持ガラス
S ガラスフィルム積層体
IF 無機薄膜
FG フィルム状ガラス

Claims (8)

  1. ガラスフィルムに対しレーザーによる加熱及びこれに追随する冷却を行うことにより初期クラックを割断予定線に沿って進展させて前記ガラスフィルムをフルボディ割断するフルボディ割断工程を有するガラスフィルムの割断方法であって、
    前記ガラスフィルムの厚みが50μm以下であり、前記ガラスフィルムを支持する支持ガラスの厚みが前記ガラスフィルムの厚みの9倍以下であり、前記支持ガラス上に前記ガラスフィルムを積層することによりガラスフィルム積層体を作製する積層体作製工程を有し、前記積層体作製工程の実行後に、前記フルボディ割断工程を実行することを特徴とするガラスフィルムの割断方法。
  2. 前記積層体作製工程は、前記支持ガラス上に前記ガラスフィルムを直接面接触させる工程を有し、前記ガラスフィルム及び前記支持ガラスのそれぞれ相互に接触する側の面の表面粗さRaを2.0nm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルムの割断方法。
  3. 前記支持ガラス上には、無機薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスフィルムの割断方法。
  4. 前記フルボディ割断工程の実行後に、前記ガラスフィルム積層体を前記ガラスフィルム側が凸となるように湾曲させて割断されたガラスフィルムを剥離する剥離工程を実行することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のガラスフィルムの割断方法。
  5. ガラスフィルムに対しレーザーによる加熱及びこれに追随する冷却を行うことにより初期クラックを割断予定線に沿って進展させて前記ガラスフィルムをフルボディ割断するフルボディ割断工程を有するガラスフィルムの割断方法であって、
    前記ガラスフィルムの厚みが200μm以下であり、前記ガラスフィルムを支持する支持ガラス上に、金属薄膜、金属酸化物薄膜、Si、SiO、SiO から選択される1種又は2種以上の無機薄膜が形成され、前記ガラスフィルムと前記支持ガラス上に形成された前記無機薄膜とを面接触させることによりガラスフィルム積層体を作製する積層体作製工程を有し、前記積層体作製工程の実行後に、前記フルボディ割断工程を実行することを特徴とするガラスフィルムの割断方法。
  6. 前記無機薄膜の表面粗さRaが、2.0nm以下であることを特徴とする請求項5に記載のガラスフィルムの割断方法。
  7. 支持ガラス上に厚み200μm以下のガラスフィルムを積層してガラスフィルム積層体を作製する積層体作製工程と、
    前記ガラスフィルム積層体上の前記ガラスフィルムに対しレーザーによる加熱及びこれに追随する冷却を行うことにより初期クラックを割断予定線に沿って進展させて前記ガラスフィルムをフルボディ割断するフルボディ割断工程と、
    前記フルボディ割断工程後に前記ガラスフィルム積層体を前記ガラスフィルム側が凸となるように湾曲させつつ前記割断されたガラスフィルムを剥離することを特徴とするフィルム状ガラスの製造方法。
  8. ガラスフィルムに対しレーザーによる加熱及びこれに追随する冷却を行うことにより初期クラックを割断予定線に沿って進展させて前記ガラスフィルムをフルボディ割断するフルボディ割断工程を有するガラスフィルムの割断方法であって、
    前記ガラスフィルムの厚みが200μm以下であり、前記ガラスフィルムを支持する支持ガラス上に表面粗さRaが、2.0nm以下である無機薄膜が形成され、前記ガラスフィルムと前記支持ガラス上に形成された前記無機薄膜とを面接触させることによりガラスフィルム積層体を作製する積層体作製工程を有し、前記積層体作製工程の実行後に、前記フルボディ割断工程を実行することを特徴とするガラスフィルムの割断方法。
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