JP6219991B2 - 電解質溶液及び電気化学的な表面改変方法 - Google Patents

電解質溶液及び電気化学的な表面改変方法 Download PDF

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Description

関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、同一出願人による出願であって、本出願と共に出願された「電解質溶液及び電解研磨方法」という発明の名称の出願と関連する。
本発明の溶液及び方法は、非鉄金属部品及び表面を電解研磨する一般的な分野に関する。より具体的には、非鉄金属及び反応性金属、特にチタン及びチタン合金のための電解研磨による表面処理に関し、該処理は、クラック調整及び酸化物除去を含む。
金属のインゴットから仕上済の延伸材へと反応性の金属を加工する際や完成部材の熱間加工を行った後では、金属酸化物の特定の表面層物質(チタン及びチタン合金の場合には、通常αケースと呼ばれる)を除去することが必要である。これらの酸素に富む相は、反応性金属が空気中又は酸素を含む雰囲気下で加熱されると発生する。酸化物層は、金属の材料強度、疲労強度、及び腐食耐性に影響を与える可能性がある。チタン及びチタン合金は反応性金属に属する。反応性金属とは、特定の合金及び酸化性の雰囲気に依存するが、空気又は酸化性の雰囲気下で約480℃(900°F)超で加熱されると、常に酸素と反応して、硬くて脆い酸化物層(TiについてはTiO2、ZrについてはZrO2など)を形成することを意味する。酸化物層は、典型的なミル鍛造又はミル圧延(mill forging or mill rolling)に、鍛接の結果として必要な温度、又は完成部分の鍛造又は高温部分の成形のための加熱の温度まで金属を加熱することによって生じる。反応性金属酸化物及びαケースは脆く、成形時に一連の表面微小クラックを伴うのが通常である。そして、微小クラックは、バルク金属の内部に浸透し、潜在的に未成熟な張力や疲れ破壊の損失を引き起こし、表面を化学的攻撃を更に受けやすくする。従って、酸化物層又はαケース層は、その後行われる任意の熱間加工若しくは冷間加工又は最終部品使用となる前に除去する必要がある。
また、チタン及びチタン合金等の反応性金属を加工することによりインゴットを完成部品に成形する場合、熱処理又は機械的処理によって形成されたクラックを除去することも重要である。上述したように、これらのクラックはαケースよりも深部に浸透し、バルク金属へ浸透する可能性がある。典型的には、反応性金属を、加熱、熱間加工(例えば、鍛造、圧延、引抜き、押出しなど)、冷却、及び更なる熱間加工のための再加熱などを4〜8回行い、インゴッドを仕上げ延伸材へと変える。延伸材は、仕上部品加工の為に再度加熱することもよく行われ、以下を含む技術を用いられるがこれらに限定されない:熱間スピニング成形、リングローリング、超塑性成形、及び密閉型鍛造。熱間加工後に金属を冷却するたびに、表面にクラックが形成され、加工物内部へと拡大していく。従来の加工では、これらのクラックは、研削によって除去していた。これは、機械的な除去と、及び、強酸(典型的にはHF−HNO3)中で化学的なミリング(chemical milling)とを伴う。そして、均一な厚さの層を、又は最深クラックの底部が露出して除去されるまでの量の材料を加工物から除去又はミリングする。こうした深度まで研削又は化学的ミリングすることにより、全てのクラックが除去されたことを保証する。しかし、相当量の時間と労力を費やし、また、コスト的に見ても著しい材料のロスを生じる。これは、クラックは、時として、加工物又は完成部品の厚さ又は直径に対して5%以上の深度で、加工物内部へ拡大するためである。しかしながら、クラックの除去は必須であり、その理由としては、後で行われる熱間加工工程前や完成部品をサービスで使用する前にクラックを除去しないと、クラックは拡大し、加工物又は完成部品を破壊するからである。
化学や製造業において、電気分解は、直流電流(DC)を用いる方法であり、これがなければ自発的に起こるこのない化学反応を誘発する。電解研磨は、電気分解の良く知られた応用であり、金属部品をデバリングしたり、及び光沢平滑表面仕上げした物を生成したりするためのものである。電気研磨される加工物については、電解質溶液槽中に浸漬され、直流電流を受ける。槽中で前記加工物を囲む1種以上の金属導体との陰極接続が行われるなかで、前記加工物は陽極としての状態を維持する。電解研磨は、工程を制御し、且つ相対する2つの反応に依存する。第一の反応は溶解反応であり、該反応中、加工物の表面から金属がイオンの形態で溶液中に移動する。従って、金属はイオンごとに、加工物の表面から除去される。他の反応は酸化反応であり、該反応中、酸化層が加工物の表面上に形成される。酸化薄膜が形成されると、イオン除去反応の進行が制限される。前記薄膜は微小窪み(micro depressions)に対しては最も厚く、微小突起(micro projections)に対しては最も薄い。そして、電気抵抗は酸化薄膜の厚さに比例するという理由から、金属溶解の速度は前記微小突起で最も速くなり、前記微小窪みで最も遅くなる。従って、電解研磨では、対応する微小窪み又は「谷」を攻撃する速度よりも速い速度で、微視的な高点又は「頂」を選択的に除去する。
電解加工(ECM)工程においては、電気分解の別の応用が存在する。ECMにおいては、高電流(しばしば40,000A超、しばしば電流密度150万A/m2超で電流を与える)を電極と金属加工物との間に流して、材料除去を起こす。電気は、負に帯電した電極「ツール」(陰極)から導体加工物(陽極)へ導電流体(電解質)を介して流れる。前記陰極ツールは、所望の機械操作に従った形態をしており、陽極加工物へつながっている。加圧された電解質は、ある設定温度で、機械部位に注入される。前記ツールの加工物への供給速度によって決定される速度で、加工物の材料は除去され、本質的には液体化される。前記ツールと前記加工物とのギャップ距離は、80〜800ミクロン(0.003〜0.030インチ)の範囲で変化する。電子がギャップを通過するとき、加工物上の材料は溶解し、前記ツールは、所望の形態を加工物に対して形成する。電解質流体は、電解質と加工物との間の反応からの工程で形成される金属水酸化物を除去する。フラッシングは必須であり、その理由として、電解加工工程は電解質溶液中に蓄積する金属錯体に対する寛容性が低いからである。一方で、本明細書で開示する電解質溶液を用いた方法では、例え高濃度のチタンが電解質溶液に存在しても、安定性と効果を維持する。
金属電解研磨用の電解質溶液は、通常混合物であり、鉱酸などの濃縮した強酸(水中に完全に溶解)を含有する。本明細書で記述する強酸は、一般的に、水性溶液中でオキソニウムイオン(H3+)よりも強酸であるものとしてカテゴリー化される。電解研磨で良く用いられる強酸の例としては、硫酸、塩酸、過塩素酸、及び硝酸が挙げられ、一方で、弱酸の例としては、カルボン酸グループのものが挙げられる(例えば、ギ酸、酢酸、酪酸、及びクエン酸)。また、加工物表面の過剰なエッチングを避けるべく、溶解エッチング反応を調節する目的で、有機的化合物(例えば、アルコール、アミン、又はカルボン酸)が、時として混合物中で強酸と共に用いられる。例えば、反応調節剤として酢酸を使用することについて記載している米国特許番号6,610,194を参照されたい。
米国特許第6,610,194号明細書
健康上の危険性や使用溶液の廃棄コストを主な理由として、金属仕上げ槽内のこれら強酸の使用を抑えようとするインセンティブが存在している。クエン酸は、これまでステンレススチール片用の不動態化剤として、国防省やASTM規格の両方によって受け入れられてきた。しかし、以前の研究では、ステンレススチールを不動態化するための市販のクエン酸不動態化槽溶液の使用の回避を示し、定量化してきたが、有効な濃度のクエン酸によって強酸濃度を抑えることができる適切な電解質溶液見出すことができなかった。例えば、刊行物「Citric Acid & Pollution Prevention in Passivation & Electropolishing」(2002年)では、ある量のより弱い有機酸(特にクエン酸)で置き換えることによって強鉱酸量を減らすことについて幾つかの利点を記載しており、低コスト、可用性、及び比較的危険の少ない廃棄物であることによる。しかし、最終的には少量の有機酸(クエン酸ではない)を有する主にリン酸及び硫酸の混合物を含む別の電解質を評価している。
概要
通常、αケース除去及びクラック調節は、電解研磨方法で改善されなかった。先行技術の電解研磨において使用される典型的な電解質溶液中に見出される強酸成分は、結果として、水素を金属表面中に移動させ、クラックを更に深くさせうる攻撃的且つ制御の利かないエッチングを引き起こす。強酸成分が存在せず、弱酸及びABFの溶液を用いた、新たな電解研磨槽化学物質の開発において、本発明者は、電解研磨によって、αケース除去及びクラック調節の両者が効果的に改善できたことを発見した。そこで、電解研磨方法による酸化物除去及びクラック調節方法を本明細書において開示する。これらの方法では、これらの方法に適した新規の槽化学物質を用いる。
一実施形態において、開示する水系電解質溶液は、以下の通りである:
約0.1重量%〜約59重量%の濃度範囲のカルボン酸;及び
約0.1重量%〜約25重量%の濃度範囲のフッ化物塩
を含み、実質的に強酸を含まない水系電解質溶液。
一実施形態において、開示する水系電解質溶液は、以下の通りである:
以下を含む水系電解質溶液であって、
約1.665g/L以上約982g/L以下のクエン酸;及び
約2g/L以上約360g/L以下のフッ化物塩としての二フッ化水素アンモニウム
実質的に強酸を含まない該電解質溶液。
一実施形態において、開示する方法は以下の通りである:
非鉄金属加工物の表面を処理する方法であって、以下のステップを含む方法;
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約300g/L以下の濃度範囲のクエン酸;及び
約10g/L以上の濃度範囲の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
約54℃以上になるように前記槽の温度を制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に電流を与えるステップ。
一実施形態において、開示する方法は以下の通りである:
非鉄金属加工物の表面中のクラックを調節する方法であって、以下のステップを含む方法;
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約300g/L以下の濃度のクエン酸;及び
約60g/L以上の濃度の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
槽の温度を約54℃以上になるように制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に約53.8A/m2未満の電流を与えるステップ。
一実施形態において、開示する方法は以下の通りである:
非鉄金属加工物の表面から金属酸化物を除去する方法であって、以下のステップを含む方法;
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約60g/L以下の濃度のクエン酸;及び
約60g/L以上の濃度の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
槽の温度を約54℃以上になるように制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に約53.8A/m2未満の電流を与えるステップ。
一実施形態において、開示する方法は以下の通りである:
チタンまたはチタン合金加工物の表面からアルファケースを除去する方法であって、以下のステップを含む該方法:
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約60g/L以下の濃度のクエン酸;及び
約60g/L以上の濃度の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
前記槽の温度を約54℃以上になるように制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に約53.8A/m2未満の電流を与えるステップ。
水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての表面仕上げにおける材料除去の速度を表すデータのグラフであり、該溶液は、適度な低濃度である20g/Lの二フッ化水素アンモニウムを有し、ある温度範囲での高電流密度(1076A/m2)を有する。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであり、該溶液は、適度な低濃度である20g/Lの二フッ化水素アンモニウムを有し、ある温度範囲での高電流密度(1076A/m2)を有する。 水系電解質溶液中の二フッ化水素アンモニウム濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、該溶液は120g/Lクエン酸を含み、該速度は、代表的な低温における特定の電流密度範囲での速度である。 水系電解質溶液中の二フッ化水素アンモニウム濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、該溶液は120g/Lクエン酸を含み、該速度は、代表的な高温における特定の電流密度範囲での速度である。 図2Aに対応する条件の下での二フッ化水素アンモニウムの関数としての表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフである。 図2Bに対応する条件の下での二フッ化水素アンモニウムの関数としての表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフである。 実質的にクエン酸を有さず、温度が85℃での水系電解質溶液における電流密度の関数としての表面仕上げにおける材料除去速度を表すデータのグラフである。 実質的にクエン酸を有さず、温度が85℃での水系電解質溶液における電流密度の関数としての表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフである。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が53.8A/m2であり、温度が21℃であるときの速度を表す。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が53.8A/m2であり、温度が54℃であるときの速度を表す。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が53.8A/m2であり、温度が71℃であるときの速度を表す。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が53.8A/m2であり、温度が85℃であるときの速度を表す。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が10.8A/m2であり、温度が54℃であるときの速度を表す。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が215A/m2であり、温度が54℃であるときの速度を表す。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が538A/m2であり、温度が54℃であるときの速度を表す。 水系電解質溶液中のクエン酸濃度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、幾つかの濃度の二フッ化水素アンモニウムに関するものであり、電流密度が1076A/m2であり、温度が54℃であるときの速度を表す。 電流密度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、水性溶液中温度が85℃であり、クエン酸が120g/Lであり、幾つかの濃度での二フッ化水素アンモニウムに関する速度を表す。 電流密度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、水性溶液中温度が85℃であり、クエン酸が600g/Lであり、幾つかの濃度での二フッ化水素アンモニウムに関する速度を表す。 電流密度の関数としての材料除去の速度を表すデータのグラフであり、水性溶液中温度が85℃であり、クエン酸が780g/Lであり、幾つかの濃度での二フッ化水素アンモニウムに関する速度を表す。 電流密度関数としての表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、図4Eに対応する条件の下での変化を表す。 電流密度関数としての表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、図4Fに対応する条件の下での変化を表す。 電流密度関数としての表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、図4Gに対応する条件の下での変化を表す。 表面仕上げにおける材料の除去された量を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、低温(21℃)であり、高電流密度(538A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、低温(21℃)であり、高電流密度(538A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける材料の除去された量を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、低温(21℃)であり、高電流密度(1076A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、低温(21℃)であり、高電流密度(1076A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける材料の除去された量を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、高温(85℃)であり、高電流密度(1076A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、高温(85℃)であり、高電流密度(1076A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける材料の除去された量を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、代表的な高温(85℃)であり、低電流密度(10.8A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、代表的な高温(85℃)であり、低電流密度(10.8A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける材料の除去された量を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、代表的な高温(85℃)であり、高電流密度(538A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、代表的な高温(85℃)であり、高電流密度(538A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける材料の除去された量を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、代表的な準高温(71℃)であり、中電流密度(215A/m2)でのグラフである。 表面仕上げにおける変化を表すデータのグラフであって、クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムに関する様々な濃度の組合せで、代表的な準高温(71℃)であり、中電流密度(215A/m2)でのグラフである。 加工物の内部へ拡大するクラックを材料の表面から除去するための先行技術の方法において発生する順序を概念的に表す。 加工物の内部へ拡大するクラックを材料の表面において調節するための本明細書中に記載の電解質を用いた方法において発生する順序を概念的に表す。
詳細な説明
本明細書では、反応性金属(チタン及びチタン合金を含むがこれらに限定されない)の表面処理に特に有用である水系電解質溶液について開示する。比較的少量のフッ化物塩及びカルボン酸が水中に溶解しており、溶液が実質的に強酸を有さないように、実質的に強酸(例えば鉱酸)が欠乏している。本発明の電解質溶液は、反応性金属(チタン及びチタン合金を含むがこれらに限定されない)の表面処理用の電解質槽においてのこれまでの試み(典型的には強酸を用い、電解質溶液の水量は絶対最小量に維持する必要があった)からすれば、特筆すべき発展である。
フッ化物塩は、溶液に対してフッ化物イオン源を提供する。そして、フッ化物塩は、二フッ化水素アンモニウム、NH4HF2(時として本明細書中では「ABF」として略される)であってもよいがこれらに限定されない。理論によって拘束されるものではないが、処理すべき反応性金属表面に対するフッ化物イオンの攻撃をカルボン酸が和らげると考えられる。前記カルボン酸はクエン酸でもよいがこれに限定されない。微量の強酸が存在しても良いが、溶液に強酸や鉱酸を意図的に加えることは無い。本明細書で使用される用語「実質的に欠乏している」及び「実質的に有さない」は、強酸の濃度が約3.35g/L以下、好ましくは約1g/L以下、及び更に好ましくは約0.35g/L未満であることを意味するために使用される。
60g/Lのクエン酸及び10g/LのABFを含む54℃の水性溶液槽に工業用純(CP)チタンの試験材(test coupon)を浸漬して、583A/m2で電流を与えた。該溶液に15分曝したミル表面チタンストリップからのクーポンカット(0.52μm表面粗さ)は、均一に平滑であり(0.45μm表面粗さ)、見た目上は反射性であった。そして、少量の42℃BeHNO3(硝酸)を増加的に添加し、表面の変化が検出されない限り調製した試験材は繰り返し加工された。硝酸濃度が3.35g/Lに達するまでは各硝酸添加後の加工によって前記試験材は影響を受けなかった。該濃度のポイントでは、ピッティングやスポーリングを含めた見た目上不均一な外観を試験パネルが示し、範囲が0.65〜2.9μm及びそれ以上の表面粗さを有する試験材の周辺に不規則な攻撃を有していた。硝酸は、ヒドロニウムイオンの解離定数を大きく超えることのない解離定数を有するボーダーラインの強酸であると考えられている。従って、硝酸とくらべて解離定数が同じかそれよりも大きい他の強酸に関しては、強酸濃度が約3.35g/L未満での制御された材料除去及びマイクロ研磨において、同様の電解質溶液であれば同様の効果を有することが予想される。しかし、本明細書に開示する他の電解質溶液は、異なる濃度のクエン酸及びABF並びに異なる比率のクエン酸及びABFの濃度を有しているが、強酸の存在に関する寛容性が低くなる可能性があり、温度及び電流密度等の操作パラメーターのみならず特定の強酸にも依存することが予想される。従って、広い範囲のクエン酸濃度及びABF濃度にわたって、並びに広い範囲の温度及び電流密度内にわたって、材料除去及び表面仕上げ洗練(refinement)用に、水系電解質溶液を効果的に用いるためには、強酸の存在量は、約1g/L以下、好ましくは約0.35g/L以下であるべきである。
ある範囲の化学濃度、電流密度、温度を用いて広範な電解研磨試験をチタン及びチタン合金サンプルに対して行った。具体的には、試験は、「洗浄」ミル産物(米国材料試験協会(ASTM)、又は航空宇宙材料規格(AMS)を満たし、「出荷される」条件の金属としての典型的なミル産物の代表的な物)に対して以下の目的で行った:バルク金属を除去するための様々な溶液及び方法の能力を測定すること;低材料除去速度で、シート金属産物上の表面仕上げを向上させること又は洗練させること;及び/又は、非常に低い材料除去速度で表面仕上げを非常に細かくするべく金属表面をマイクロ洗浄すること。更に、殆どの試験はチタン及びチタン合金に焦点を当てているが、同一の溶液及び方法は、多くの非鉄金属の処理に対して、より普遍的に応用可能であることもテストによって示される。チタン及びチタン合金のほかに良好な結果が得られる金属として、例えば、金、銀、クロム、ジルコニウム、アルミニウム、バナジウム、ニオブ、銅、モリブデン、亜鉛、及びニッケルが含まれるがこれらに限定されない。また、更に言えば、以下の合金等も確実に加工される:チタン−モリブデン、チタン−アルミニウム−バナジウム、チタン−アルミニウム−ニオブ、チタン−ニッケル(Nitinol(登録商標))、チタン−クロム(Ti 17(登録商標))、Waspaloy、及びInconel(登録商標)(ニッケルベースの合金)。
クエン酸及び二フッ化水素アンモニウムを含有する電解質溶液は、両成分が驚異的に薄い濃度でも非鉄金属及び金属合金をエッチングする際に効果があることが示された。該文脈上、エッチングは、実質的に均一な表面除去を含むものとして理解される。更に、表面仕上げにおける改良は、広い範囲のクエン酸の及び二フッ化水素アンモニウムの両濃度にわたって示される。任意の濃度のクエン酸から水での飽和点まで(59重量%、又は約982g/Lの水性溶液、標準温度及び圧力)使用可能である一方で、クエン酸濃度と二フッ化水素アンモニウム濃度との間には相関関係が見られる。該濃度では二フッ化水素アンモニウムの解離によって発生するフッ化物イオンのエッチング効果をクエン酸が充分に軽減し、材料表面のマイクロ研磨が強化される一方で材料除去の速度が著しく小さくなる。エッチング及びマイクロ研磨の両方に関して、幾つかの混合物は、クエン酸濃度が3.6重量%又は約60g/Lの量である溶液であるが、前記量を著しく上回る量のクエン酸の濃度(最大で約36重量%又は約600g/Lまで含む溶液)に匹敵するエッチング速度及び表面マイクロ研磨の結果をチタン上で示した。従って、これらの溶液においては、クエン酸濃度と比べて、ABFの濃度のほうががより直接的にエッチング速度に影響しているのは明らかである。約1重量%又は約15g/L未満という極端に低いクエン酸濃度の溶液で、効果的なエッチング及びマイクロ研磨が示された。しかしながら、最小量のフッ化物イオンしか存在しない場合であっても、ある金属除去を発生させるには充分であることが明らかとなった。
約600g/Lを超える濃度のクエン酸では、エッチング速度は実質的に落ちる。しかし、エッチング速度は落ちるものの、該高濃度のクエン酸で、少なくとも中〜高電流密度の場合においては、表面仕上げの結果は向上する。従って、直流電流を与えると、より希釈したクエン酸の混合物では、表面材料除去の速度を大きくすることができる。その一方で、より濃縮したクエン酸の混合物(最大で、約42重量%又は約780g/Lのレベルの溶液の混合物)では、更に滑らかで光沢のある仕上げとなる。そして、濃縮度が低いクエン酸混合物を用いて仕上げた片と比べると均一で微細な目(grain)であり、腐食効果もない。
本明細書に記載した槽溶液及び方法を用いて、高度に制御された金属除去を達成することが可能である。具体的には、制御レベルが微細であるが為に、バルク金属は、厚みにおいて、0.0001インチの小ささ、並びに0.5000インチの大きさ及び正確さで除去することができる。こうした精密な制御は、クエン酸濃度及びABF濃度の組合せ、温度、並びに電流密度を制御すること、並びに直流電流の期間や周期的な投与を変化させることによって達成することができる。一般的に、除去は、加工物の全表面に対して均一に行うことができる。または、ミル産物又は製造された部品でのある選択された表面に対してのみ選択的に適用することもできる。除去の制御は、幾つかのパラメーターを精度良くチューニングすることによって達成され、該パラメーターとしては、温度、電力密度、電力サイクル、ABF濃度、及びクエン酸濃度が含まれるがこれらに限定されない。
除去速度は温度と共に直接的に変化する。従って、他の全てのパラメーターが一定である場合には、除去は、温度が下がれば遅くなり、温度が高くなれば速くなる。にもかかわらず、予想に反するものではあるが、クエン酸濃度及びABF濃度を特定の好ましい範囲内に維持することによって、高度のマイクロ研磨も高温で達成することができる。
除去速度は、DC電力の投与に依存する。予想に反して、除去速度は、連続的に投与したDC電力とは逆比例の関係である。連続的に投与すると、DC電力密度が上昇すると除去速度が減少する。しかし、DC電力を周期的なものにすることによって、除去速度を早めることができる。従って、有効な材料除去速度が望まれる場合、処理操作中DC電力はOFFからONへと繰り返すサイクルを行う。逆に、除去速度を精度良く制御することが望まれる場合には、DC電力は連続的に与える。
理論によって拘束されるものではないが、金属表面に形成される酸化層の厚さに比例して除去が遅くなり、より高いDC電力を与えると金属表面がより酸化することになる。そして、該酸化が、フッ化物イオンの金属に対する攻撃のバリアとして作用している可能性があると考えられる。従って、DC電力のon及びoffを所記の速度でサイクルさせることで前記酸素バリアを克服することができ、厚みのある酸化物を周期的に表面から剥落することを促進する機構を作り出す。本明細書に記載してあるように、槽温度、投与電圧、並びにクエン酸濃度、及び二フッ化水素アンモニウム濃度の稼動パラメーターを変化させると、電解質は、有用な結果に仕上げる能力を、即ち高度に制御されたバルク金属除去及びマイクロ研磨を、特定の応用に提供する。所与の工程内での稼動条件を変化させることのほかに、稼動パラメーターの組により、金属除去及び表面仕上げに関して精度良くチューニングして制御する能力を変化させたり強化したりすることができる。
例えば、図8A及び9Aは、85℃、300g/Lのクエン酸、及び10g/Lの二フッ化水素アンモニウムの条件で、電流密度が10.8A/m2から538A/m2へ増加するにつれて材料除去速度が増加していることを示している。同時に、図8B及び9Bは、同一条件下で、電流密度が10.8A/m2から538A/m2へ増加したときに、表面仕上げが劣化していることを示している。DC電源をこれら2つの電流密度の間でサイクルさせることによって、全工程の間、いずれか1つの電流密度だけで稼動させる場合よりも良好な結果(net result)を達成することができる。具体的には、単に10.8A/m2で稼動させるのと比べると、特定量の材料を除去するための工程時間を減らすことができる。更に言えば、より低い電流密度での平滑化の効果が原因で、最終生成物の全体の表面仕上げが単に538A/m2で処理して得られる物よりも優れている。従って、2以上の電力設定(電流密度で示される)の間をサイクルすることによって、表面及び正確なバルク金属除去の両方の優れた結果を可能にし、前記工程は、表面強化又はバルク金属除去いずれかのみの個々の工程よりも少ない合計時間しか必要としない。
動作周期(duty cycle)を変化させることに加えて、電気は電解質溶液を通り、加工物を通して投与することができ、DC電源から得られる様々な波形をとり、該波形としては、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:半波整流;、全波整流;、矩形波;、並びに最終的な表面仕上げを犠牲にすることなく、更なる有用な結果及び/又は工程速度強化を生み出す他の中間整流。DCスイッチング速度(50kHz〜1MHzの速度、又は15〜90分の周期という遅さ)は、加工する表面積、加工物の質量、及び加工物の特定の表面条件によっては有用となる可能性がある。更に言えば、DCスイッチング周期自体は、適宜自身の周期を必要としても良い。例えば、非常に粗い初期の表面仕上げを伴う巨大質量の加工物は、最初遅いスイッチングサイクルで、その後、材料が除去されるにつれて周期を増加させることで最も大きな利点を得ることができ、表面仕上げが向上する。
また、ある実施形態において、本明細書に記載した種類の電解槽を試験すると、金属表面において水素濃度を上げることなく電解研磨が行われ、そして幾つかの例では水素濃度を減少させることが明らかになった。材料表面での酸素バリアは、金属マトリックス内への水素の移動がないことに関与している可能性がある。データでは、前記酸素バリアが、金属表面からの水素除去も行っている可能性を示唆している。フッ化物イオン濃度が高くなると除去速度が速くなる結果となるが、しかし、金属マトリックスへ水素が吸着するという未知の影響がある。クエン酸濃度が高くなると、除去速度が遅くなり、電解研磨中高電力密度を必要とする傾向にある。しかし、表面に対して「平滑性」又は「光沢」を追加するように作用もする。
従来技術の溶液と比べると、ABF及びクエン酸の水系電解質溶液を用いることにより、金属生成物の仕上げ及び/又は酸洗に関して、幾つか有利な点が生じる。本開示の電解質溶液は、厳密に制御された仕上げ規格(gauge)を達成することを可能にする。従来の生産機合金平坦生成物(producer alloy flat products)(シート及び板)の仕上げでは、多数の工程を伴い、微細なグラインディング媒体(grinding media)を段々と用いて仕上げた規格に対して研削を行い、典型的にはその後にフッ化水素酸(HF)及び硝酸(HNO3)を含む酸槽中で「リンス酸洗」(rinse pickling)を行い、残留切削材料、グランドイン変形金属(ground−in smeared metal)、及び表面異常を除去する。HF−HNO3酸洗は発熱性であり、従って制御することが難しく、金属が規格を下回る結果となることがよくある。その結果、金属のスクラップ率が更に高くなったり、又は金属が再度目的を果たす数値が更に低くなったりする。前記リンス酸洗を必要とすることもできるが、本開示の電解質溶液を用いることにより、典型的な二次研削及び三次研削を省略することができる。現時点での切削及び酸洗の技術の状態では成しうることができなかった、予め正確に決めた仕上げ規格に到達することができる。更に、本開示の電解質溶液は、処理部分にストレスを導入することはない。比較すると、任意の機械的研削工程では重大な表面ストレスを与えており、材料の反りを引き起こす可能性があり、結果として、典型的な又は顧客から明示された平面度仕様をある程度の確率で材料が満たすことができなくなる。
HF−HNO3酸洗を用いた典型的な工程では、標的材料に水素を与えることがあり、材料の脆化を防ぐためにコストのかかる真空脱気によって除去しなくてはならないことがよくある。典型的なミル産物であるフルサイズシートのTi−6A1−4V、並びにCPチタン、6A1−4Vチタン、及びニッケルベース合金718の試験材に対して、クエン酸及びABFを含む水系電解質槽を用いて行ったテストでは、従来の強酸である酸洗溶液にサンプルを曝した場合と比較して、水素が浸透する結果を抑えることが示された。特に、Ti−6A1−4V及びCPチタンを処理して同一のアルファケースフリーを達成する場合に、強酸酸洗によって通常達成されるクリーンな表面エンド結果は、二フッ化水素アンモニウム及びクエン酸を含む水系電解質溶液組成物、ある範囲の温度、並びに電流密度条件を用いると、加工物の材料に対して水素が負荷されておらず、多くのこれらの稼動条件では、実際のところ、水素は材料から出て行っていることが判明した。全ての金属及び合金に関して、試験を継続して好ましい稼動範囲を洗練させている間、最適ではない可能性のある条件であっても強酸酸洗槽を用いた同一の稼動条件であれば負荷された場合と比べると材料に負荷された水素が少ないという結果が一貫して示された。一般的に、二フッ化水素アンモニウムの濃度が低くなると、電解質溶液に曝された材料からの水素除去が大きくなり、該材料への水素浸透が少なくなる。
高度に制御された金属除去、表面仕上げ、及びマイクロ研磨
構成部品のマイクロ研磨又はマイクロ平滑化、及び特に既に比較的平滑な表面のマイクロ平滑化は、本明細書に記載の溶液及び方法を用いると、手動の又は機械的な研磨と比べると優れた精度で達成することができる。両方とも現在の機械的な方法における問題点であるが、標的加工物又は標的材料において有害な残留ストレスを発生させることなく、そして、加工物において金属を変形させることなく、マイクロ研磨が行われる。更に言えば、ヒトによるばらつきを除外することによって、結果的に得られる研磨レベルは特定のものであり、再現可能なものである。また、既存の方法に比べて、本開示の電解質溶液を用いると、コスト削減も達成できる。
試験では、高濃度のクエン酸、低〜中濃度のABF、高温度、及び高DC電流密度(連続的に又は周期的に与えることができる)で、マイクロ研磨に関する良好な結果が得られた。しかし、DC電力密度は、処理される合金に基づいて調整されるべきものである。アルミニウムを含有するチタン合金(典型的には、ありふれたTi−6A1−4V合金を含むアルファ−ベータ冶金合金)は、40ボルトを超える投与DC電圧で光沢を失う傾向がある。しかし、これらの金属について、約40ボルトの電圧をかけて、及び更に高い電流を与えても(即ち、より高い電力密度を達成するために)材料の光沢を再び実現することが可能である。理論によって拘束されるものではないが、これは、アルファ安定化元素の結果である可能性があり、該元素は、多くのアルファーベータ合金(Ti−6Al−4Vを含む)の場合には、研磨されるというよりは、Al23へ陽極酸化されるアルミニウムである。しかし、更に言えば、チタン−モリブデン(全てベータ相冶金)及び工業用純(CP)チタン(全てアルファ相)は、同様の電圧上限に明らかに拘束されることなくDC電力密度の上昇と共に明るさが増す。特に、他の金属に関して、少なくとも最大150ボルトまでの更に高い電圧を使用することができ、例えば、ニッケルベース合金718に関して、本明細書に開示した電解質溶液を用いた電解研磨、マイクロ研磨、及び表面処理において、有用な結果を生み出すことが見出された。
本明細書に記載の溶液及び方法は、機械にかける部品のデバリングを行うために使用することができ、好ましくは、機械にかける金属構成部品に対するバリを加工することにより行い、特に、機械にかけることが困難な金属(例えばチタン及び及びニッケルベース合金)から部品が作られている場合に行われる。当分野での現状では、機械にかける構成部品のデバリングは、手動操作として通常行われる。従って、ヒューマンエラーや人の手による一貫性の欠如に関連した多くの問題に悩まされている。本開示の溶液を用いた試験が示すところによれば、クエン酸濃度が低いとき(電気化学的なセル中でのクエン酸の抵抗特性が原因ではあるが)デバリングが最も効果的であり、そして、ABFからのフッ化物イオンが高いとき最良であった。また、同様の溶液は、機械にかけた後で表面不純物を除去したり、又は加工物を洗浄したりするために使用することができ、例えば、該溶液でなければ、HF−HNO3槽を用いた強酸酸洗を用いて行ったであろう。
上述したように、非鉄及び特に反応性金属は、広い範囲の希釈クエン酸混合物において効果的な速度の化学的エッチングを示す。このことにより、特定の非鉄金属加工品用に仕上げ工程のカスタマイズをすることが可能となり、該カスタマイズとしては、電解研磨を開始して選択的に尖端領域を減少させる前に、そして更に電流を与えて幾つかの表面金属を除去して反応させる前に、槽中での選択されたデルタイム(dwell time)を含めることができる。
クエン酸ベースの電解質は、従来の電解研磨混合物よりも、粘度がかなり低く、一部その原因としては、電解研磨電解質中で通常用いられる強酸の場合と比べるとクエン酸の解離定数がかなり低いことがあげられる。粘度が更に低いことにより、材料の移動することや電気抵抗を更に低くすることを補助し、その結果、従来の電解研磨よりも低い電圧を用いることができる。最終的に得られる電解研磨仕上げは、用いる電解質の粘度及び抵抗性の影響を実質的に受ける。高い電解研磨電圧(従って、中〜高電流密度)と組み合せた抵抗の高い電解質溶液用いて、最も微細な表面仕上げ(高度のマイクロ研磨)を達成できることが見出された。更に、ある程度導電性が更に高い(高抵抗性が低い)電解質溶液を用いると、高電圧及び高い電流密度であっても微細なマイクロ研磨がなおも達成可能である。
従って、対応する利点は、電解加工にもあてはまるであろう。特に予想されることとして、本明細書に記載の組成物を有する電解質槽は、実質的な環境の利点及びコストの利点を伴いながら、従来の電解加工及び/又は酸洗溶液に代わって効果的に用いることができる。本明細書に開示した電解質溶液は、本質的に強酸を有さないため、危険な廃棄物の廃棄や取り扱いの問題が最小限になる。更に、必要な電流密度は、従来の電解加工で必要とされるものよりもかなり低い。
一般的に、二フッ化水素アンモニウムの濃度が上昇すると、電解質溶液の電気抵抗が下がる傾向にある(即ち、二フッ化水素アンモニウムは、電解質溶液の電気伝導性を増加させる)。一方で、クエン酸が存在すると、又は二フッ化水素アンモニウムの濃度に対するクエン酸の濃度を上昇させると、電気抵抗に対する二フッ化水素アンモニウムの影響を和らげる傾向にある。換言すれば、電解質溶液の電気抵抗を高いレベルに維持してマイクロ研磨を促進するためには、二フッ化水素アンモニウム濃度を低く維持するか、又は更に高濃度の二フッ化水素アンモニウムに対して、更に高濃度のクエン酸と組み合せて用いることが望まれる。従って、二フッ化水素アンモニウムの濃度、並びに二フッ化水素アンモニウム及びクエン酸の相対濃度を変えることにより、電解質溶液の電気抵抗を有用に制御して、加工物の表面のマイクロ研磨の所望のレベルを達成することができる。
従来の電解研磨又は電解加工とは対照的に、本明細書に開示した工程では、加工物(陽極)が陰極に近接することについては精度を必要としない。陰極を加工物から約0.1cm〜約15cmの距離で工程を行うと成功する。陰極と陽極加工物との間の最大距離に関する実際の限界は、主に工業的なものから生じており、槽サイズ、加工物サイズ、及び電解質溶液の電気抵抗が含まれる。電解加工で必要とされるものよりも全体の電流密度が低い、そしてかなり低いことがよくあるため、加工物〜陰極への距離を更に大きくして使用し、それに従って電源の容量を単純に増加させることが可能である。更に、本明細書に開示した更に粘度の低い電解質溶液は、高度に制御されたバルク金属除去、表面仕上げ、及びマイクロ研磨を可能にするため、同一の溶液は、電解加工においても効果的であることが予想される。
金属加工物の電解研磨は、加工物及び少なくとも1つの陰極を電解質溶液槽に曝し、加工物を陽極に接続することにより実行される。電解質溶液は、カルボン酸を約0.1重量%〜約59重量%の範囲の量で含む。また、電解質溶液は、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、シリケートエッチング化合物、及び/又はこれらの組合せから選択されるフッ化物塩を約0.1重量%〜約25重量%の範囲で含むこともできる。加工物に接続された少なくとも1つの陽極と、槽中に浸漬された陰極との間で、電源から電流が与えられ、加工物の表面から金属を除去する。約0.6ミリボルト直流(mVDC)〜約100ボルト直流(VDC)の範囲での電圧で電流を与える。他のカルボン酸(以下のものが含まれるがこれらに限定されない:蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸及びステアリン酸)も使用可能であるが、クエン酸が好ましいカルボン酸である。ABFは、好ましいフッ化物塩である。
電解研磨方法の別態様において、電流は、約0.6VDC〜約150VDCの電圧で与える。約255,000A/m2以下(凡そ24,000アンペア/平方フィート)の電流密度で電流を与えることができる。ここで、分母は加工物の効果的な表面積全体を表す。ニッケルベース合金等の幾つかの非鉄金属に関して、最大で約5,000A/m2(約450 A/ft2)及びそれを含む電流密度を使用することができる。そして、チタン及びチタン合金に関して、約1〜約1100A/m2(約0.1〜100A/ft2)の電流密度が好ましい。電解質溶液を用いた電解研磨工程は、溶液の凝固点と沸点との間で行うことができ、例えば、温度が約2℃〜約98℃、好ましくは約21℃〜約85℃の範囲であってもよい。
実際、約0.0001インチ(0.00254mm)〜約0.01インチ(0.254mm)/分の速度で、金属基材から材料を除去することができる。以下の実施例では、濃度及び稼動条件を変えた場合の電解質の効果を示す。
実施例1:工業用純チタンのエッチング
ある電解質(重量で、約56%の水、約43%のクエン酸(716g/L)、及び約1%の二フッ化水素アンモニウム(15.1g/L)から本質的に成り、185°F(85℃)で稼動する)において、材料の表面仕上げを向上させるために(即ち、ミル−標準仕上げをより平滑にするため)、工業用純チタン板サンプルを処理した。材料は、約160マイクロインチの表面仕上げで開始し、加工後は、表面仕上げでは、90マイクロインチだけ減少させ、最終的な読取値が50マイクロインチになるように減少させ、又は約69%だけ改良した。30分の間だけ工程を行い、結果として、材料の厚さが0.0178インチに減少した。
多くのエンドユーズアプリケーションに関するチタン板生成物の鍵となる特徴であるが、冷間成形性は、生成物の表面仕上げに大きく依存する。本明細書に開示した電気化学的な工程の実施形態を用いると、従来の研削方法及び酸洗方法と比べて、更に低いコストで材料表面仕上げの向上を成しとげることができる。本開示の溶液及び方法の実施形態を用いて得られた仕上げ物は、板生成物の冷間成形性において、従来の方法よりも更に高度に改良されたことを示した。
実施例2:6A1−4V試験材のエッチング
52mm×76mmの測定値を有する6A1−4Vチタン合金シートストック試験材に対して以下の実施例が行われた。電解質については、濃度及び温度を変化させて、水(H2O)、クエン酸(CA)、及び二フッ化水素アンモニウム(ABF)から構成した。結果として得られる知見及び測定値については以下の表1に示した。
Figure 0006219991
実施例3:6A1−4V試験材の電解研磨
52mm×76mmの測定値を有する6A1−4Vチタン合金シートストック試験材に対して以下の実施例が行われた。電解質については、濃度及び温度を変化させて、水(H2O)、クエン酸(CA)、及び二フッ化水素アンモニウム(ABF)から構成した。結果として得られる知見及び測定値については以下の表2に記録した。
Figure 0006219991
更に以下の条件で広範な試験を行った:水系電解質溶液(約0g/L〜約780g/L(約0%〜約47重量%)の範囲のクエン酸と、約0g/L〜約120g/L(約0%〜約8重量%)の範囲の二フッ化水素アンモニウムとを含み、実質的に強酸を有さない(即ち、約1g/L未満又は0.1重量%未満));槽温度 約21℃〜約85℃の範囲;与える電流密度、加工物の表面積に対して約0A/m2〜約1076A/m2の範囲(クエン酸は水中21℃での飽和濃度が780g/Lである点に留意されたい)。150ボルト以上の投与電圧で、少なくとも225,000A/m2の高さの電流密度を使用することができる。試験金属には、工業用純チタン、並びに6A1−4Vチタン及びニッケルベース合金718に対する幾つかのスポット試験が含まれる。これらの結果に基づいて、同様の電解研磨、マイクロ研磨、及び表面処理の結果が、非鉄金属及び合金の前記クラスで得られると予想される。結果については、以下の表及び記載に、並びに図面に対する言及を伴いながらまとめた。特記しない限り、温度については、約21℃、約54℃、約71℃、及び約85℃で、電流密度については、約0A/m2、約10.8A/m2、約52.8A/m2、約215A/m2、約538A/m2、及び約1076A/m2で、試験を行った。微量であったとしても結果に対して有意な影響を及ぼす可能性はないであろうが、いずれの試験溶液に対しても意図的に強酸を添加することはしなかった。
図1A〜1Bは、表面仕上げでの材料除去速度及び変化を示しており、4つの異なる温度で行われ、準低濃度の20g/Lの二フッ化水素アンモニウムと、及び約0g/L〜約780g/Lの濃度のクエン酸とを含む水系電解質溶液を用いて行われ、電流密度1076A/m2で行われた。図1Aは、材料除去速度が、温度とともに、特により低濃度のクエン酸で、直接変化することを示している。槽温度が増加すると、除去速度も増加する。より低い温度である21℃、54℃、及び71℃では、二フッ化水素アンモニウムの材料除去効果を和らげることを開始するのに、180g/Lのクエン酸で充分である。一方で、より高温である85℃では、比較的急速な材料除去は最大約300g/Lのクエン酸の範囲まで継続している。クエン酸の濃度がより高い300g/L以上では、全ての温度で、除去速度が減少している。逆に、図1Bでは、より低いクエン酸濃度で、特に120g/L〜180g/L以下で、最も低い温度を除く全ての温度での表面仕上げが劣化していることを示している。換言すれば、より低いクエン酸濃度での有意な材料除去に寄与するフッ化物イオンは、表面のダメージも生み出す。しかし、充分な濃度でのクエン酸の存在は、明らかに、フッ化物イオンの攻撃に対する有用なバリアとして作用する。しかし、クエン酸濃度が180g/L以上に増加すると、実際に、表面仕上げが向上し、特にクエン酸レベルが600g/Lで向上している。そして、それ以上になると、材料除去速度が有意に減少する。更に、材料除去がなおも発生する約120g/L〜600g/Lでのクエン酸レベルであっても表面仕上げ向上は同時に達成することができる。
所望の材料除去及び表面仕上げの向上を達成するためには、二フッ化水素アンモニウム等のフッ化物イオン源が必要であることが試験により明らかになった。水中でクエン酸のみから本質的に成り、実質的に二フッ化水素アンモニウムが無い電解質溶液では、槽の温度又は電流密度に関係なく、材料除去が実際に得られず、表面仕上げにおける変化も最小限である。クエン酸のみを含む水系電解質においてチタン又の別の反応性金属を処理すると非常に薄く(即ち、約200nm〜約600nmの厚さ)、素早く形成される酸化層で、材料の表面は本質的に陽極酸化されると考えられる。陽極酸化層が形成された後は、投与されたDC電力は材料表面をこれ以上攻撃することはできないので、水を加水分解する。結果として素早く形成される初期の酸素は、別の単独原子の酸素をみつけ、陽極でO2ガスとして放出される。
図2A〜2B、及び2C〜2Dは、120g/Lの濃度のクエン酸約0g/L〜約120g/Lの濃度の二フッ化水素アンモニウムを含む水系電解質溶液を用いたときの表面仕上げにおける材料除去速度、及び変化をそれぞれ示している。図2A及び2Cは、代表的な低温度である21℃でのデータを示す。そして、図2B及び2Cは、代表的な高温度である71℃でのデータを示す。図2A〜2Bが示すところによれば、材料除去は、二フッ化水素アンモニウム濃度、及び温度と強力に相関しているが、電流密度による影響は最小限である。一般的には、より高い材料速度は、二フッ化水素アンモニウム濃度及び温度のうちの1つ又は両方が上昇することによって得られる。図2C〜2Dは、材料除去がある程度の表面劣化を伴うことを示している。しかし、驚くべきことに、温度が上昇し、そして、材料除去速度が上昇するにつれ、表面仕上げの劣化の程度は減少する。図2Cにあるように、低温である21℃では、電流密度を挙げると表面劣化効果は軽減され、最も高い電流密度では、表面仕上げがある程度向上することも証明された。図2Dにあるように、より高い温度である71℃で、表面仕上げにおける変化については、電流密度の変化に伴う有意な変化は見られなかった。
図2E〜2Fは、水中で二フッ化水素アンモニウムから本質的に成り、クエン酸を意図的に添加しない水系電解質溶液を用いて、高温85℃で稼動したときの、電流密度の関数としての表面仕上げにおける材料除去速度、及び変化をそれぞれ示す。高い材料除去速度は、ABFのみの電解質を用いて達成することは可能であるが、こうした材料除去は表面仕上げを犠牲にしており、並程度で電解質溶液によって有意に劣化することがよくある。にも関わらず、特定の稼動条件(図には示さない)では、表面仕上げにおいて最小限の劣化又は最も穏やかな変化を達成した。例えば、ABFのみの電解質溶液からの表面仕上げの向上は、10g/LのABF溶液、21℃、及び215〜538A/m2、並びに54〜71℃、及び1076A/m2で、20g/LのABF溶液、21℃、及び215〜1076A/m2で、並びに60g/LのABF溶液、21℃、及び538〜1076A/m2で達成された。
理論によって拘束されるものではないが、材料除去速度に最小限しか影響を与えずに電流密度の上昇によって表面仕上げを向上させる能力に関する可能な説明としては、電流の機能1つとして、材料の表面に酸化層を自然に生じさせることにある。この過剰な酸素は、クエン酸と組み合せて、材料表面への攻撃に対する有用なバリアとして作用すると考えられる。従って、電流密度が増加するにつれて、陽極で酸素の濃度が高くなり、そして、次第に、大きな輸送バリアとして作用している可能性が考えられる。或いは、「頂」と「谷」のシリーズとしての材料の表面形態という最も単純な観点からすれば、クエン酸及び酸素は谷に居座り、表面形態の頂のみをフッ化物イオンに曝すと予想される。クエン酸及び酸素バリアの強度が増加すると(即ち、より高濃度のクエン酸及びより高い電流密度)、表面の最も高い頂の所だけが、化学的な攻撃が可能となる。こうした理論の下、低い電流密度、及び低いクエン酸濃度では、表面平滑化に関して最低限の可能な工程を提供するものと予想され、一方で、高い電流密度、及び高いクエン酸濃度では、表面平滑化に関して最も能力のある工程を提供すると予想される。こうした理論が正しいかどうかに関わらず、データは明らかに上記分析と一致した結果を生み出している。
酸素(電流によって生じる)、及びクエン酸が除去工程に対するミクローバリアとして明らかに作用することを理解すれば、ABF濃度、及び温度については、材料除去、及びマイクロ研磨結果を制御する目的で使用に対して最も従順に従う可能性がある変数であることが明らかになる。従って、本明細書に記載した工程において、電流密度は、明らかに酸素を生み出すものとして主に作用するのであって、材料除去全体を増加させるための重要な因子となることは殆どない。むしろ、材料除去は、明らかに、フッ化物イオンによって殆ど専ら誘起され、該材料除去活性は、温度の熱力学的な影響によってある程度支配される。総合すると、制御変数としての電流密度は、驚くべきことではあるが、明らかにその重要性は比較的マイナーなものである。そして、フッ化物イオンの存在は、電流密度の影響を上回るものである。
図3A〜3Dでは、代表的な電流密度53.8A/m2において、温度に直接関連して材料除去速度が変化することができ、その結果として、クエン酸、二フッ化水素アンモニウム、及び水に関する同一の混合物に関して、より高温においては、材料除去がさら増大することを表している。同様の傾向が全ての電流密度(0A/m2〜1076A/m2)で観察された。
図4A〜4Dでは、代表的な温度54℃において、電流密度に対して材料除去の速度が比較的一定であり、その結果、任意の与えられた槽温度でのクエン酸及び二フッ化水素アンモニウムの同一の混合物に関していうと、材料除去の速度は、電流密度における変化に対して比較的影響を受けにくいことを表している。同様の傾向が全ての温度(21℃〜85℃)で観察された。そして、これらの傾向は、21℃未満(ただし、溶液の凝固点超)、及び81℃超(ただし、溶液の沸点未満)でも維持されると考えられる。ほぼ全ての温度及び電流条件において起こることではあるが、クエン酸濃度が一定のレベル(典型的には600g/L〜780g/L)を超えると、ABF濃度に関係なく、材料除去の速度は有意に減少する。従って、あるレベルの材料除去を達成するための能力を維持するために、加工物を成形することが望まれる場合に、一般的に、クエン酸濃度は、600g/L未満に維持すべきである。
図4E〜4Gは、代表的な高温度85℃で、及び3つの異なる濃度のクエン酸で、材料除去速度に対する電流密度の影響を表している。そして、図4H〜4Jは、同一の条件群の下での表面仕上げに対する電流密度の影響を表している。度合いが低いながらも図4F及び4Gでもそうではあるが、図4Eは、二フッ化水素アンモニウムが最も高い濃度のときに電解質溶液の材料除去能力が最も大きくなり、高い温度でかなり顕著となることを示している。図4Eは120g/Lのクエン酸でのデータしか示していないが、本質的には、クエン酸濃度が、60g/L、120g/L、及び300g/Lで同一の材料除去速度が見られる点に留意されたい。しかし、図4Fに示すように、600g/Lのクエン酸では、該濃度において、明らかに、大規模な攻撃から表面がある程度保護されており、更に低い濃度のクエン酸と比べると材料除去速度が落ちている。図4Gに示すように、780g/Lでは、除去速度は更に減少する。二フッ化水素アンモニウム及びクエン酸の濃度に関係なく、材料除去は、明らかに電流密度の影響を殆ど受けない。
図4Hは、高温、且つ中程度のクエン酸濃度では、ほぼ全ての二フッ化水素アンモニウム濃度、及び電流密度において、中程度の表面仕上げの劣化が起こっていることを示している。しかし、図4E及び4Hを共に参照すると、1つの工程条件が傑出している。クエン酸濃度が120g/L、低いレベルである10g/Lの二フッ化水素アンモニウム、そして、高電流密度である1076A/m2では、材料除去が抑制され、表面仕上げ結果において有意に向上している。これは、以下の点で上述した理論の更なる証拠となる可能性がある。上昇した電流密度が充分過剰な酸素を材料表面で産生し、表面形態における「谷」を充満させ、その結果、二フッ化水素アンモニウムの解離によって生じるフッ化物イオンによって好適に「頂」が攻撃される。こうした効果は、可能なクエン酸のマイクロバリア効果と組み合せて、図4I(600g/Lのクエン酸)、及び図4J(780g/Lのクエン酸)においてさらに強調して見られる。該図において、表面仕上げにおける劣化の減少、及び幾つかの場合における表面仕上げの向上が、更に高い濃度のクエン酸、及び更に高い電流密度単独で示され、更に高い濃度のクエン酸、及び更に高い電流密度の組合せでは更に顕著に示される。例えば、600g/L〜780g/Lのクエン酸の範囲において、二フッ化水素アンモニウムが10g/L及び20g/Lのときに、表面仕上げが有意に向上している。
しかし、120g/L〜600g/L、及び更に〜780g/Lのクエン酸の範囲において、最も高い濃度である120g/L二フッ化水素アンモニウム、及び更に高い電流密度では、表面仕上げは著しく悪化しているのが見られることから、こうした効果は明らかに限定的なものである。少なくともクエン酸濃度が600g/L〜780g/Lの範囲において、60g/Lの二フッ化水素アンモニウムでは同様の結果が得られた。
以下の表3A〜3C、及び4A〜4Cに示されるように、シート品の仕上げに関する工程条件(最小限の材料除去を必要とし、中〜高度の表面仕上げ向上が望まれる条件であって、また、マイクロ研磨に関しては、仮想的には材料除去が全く必要ではなく、非常に優れた表面仕上げ向上が望まれる条件)では、広い範囲の電解質混合物、温度、電流密度にわたって達成できる。広い範囲の温度及び電流密度にわたって、本質的に材料除去がゼロで、且つ中〜高度の表面向上を達成することが出来たとしても、表3A〜3C及び4A〜4Cでは、水及びクエン酸から本質的になり実質的に二フッ化水素アンモニウムが無い電解質を含まない。理由としては、これらの条件については、図1A−1Cに関連して別途議論したためである。同様に、表3A〜3C及び4A〜4Cは、水及び二フッ化水素アンモニウムから本質的になり、実質的にクエン酸が無い電解質を含まない。理由としては、これらの条件については、図2A−2Dに関連して別途議論したためである。表3A〜3Cは、表面仕上げの精度レベルで分離され、ABF濃度の昇順で纏められている。表4A〜4Cは、クエン酸濃度レベルで分離され、ABF濃度の昇順で纏められている。
表3A〜3Cでは、幾つかの傾向がデータから現れている。第一に、低い、又はゼロに近い材料除去、及び向上した表面仕上げが、以下の範囲全体にわたって得られている:クエン酸濃度(60g/L〜780g/L)、二フッ化水素アンモニウム濃度(10g/L〜120g/L)、温度(21℃〜85℃)、電流密度(10.8A/m2〜1076A/m2)。従って、クエン酸及びABFの水性溶液であって、実質的に強酸が欠乏した該溶液では、以下の濃度において、最小限の材料ロスで微細な表面仕上げを生み出すことができる:60g/Lのクエン酸、及び10g/LのABFという低濃度;、並びに780g/Lのクエン酸、及び120g/LのABFという高濃度;、並びにこれらの間での幾つかの組合せ。
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一般的に、表3Aに示すように、最も高度な表面仕上げ向上(即ち、表面粗さにおける30%超の減少)は、更に高度な電流密度である538〜1076A/m2で、そして、中〜更に高濃度のクエン酸である120〜780g/Lで、そして、一般的には更に低いABF濃度である10〜20g/Lで得られた。ABF濃度が更に低い濃度であるとき、即ち10〜20g/Lの範囲であるときは、更に高濃度であるクエン酸濃度600〜780g/Lにおいて、更に高温である71〜85℃で、更に良好な表面仕上げを生成する傾向がある。一方で、中程度のクエン酸濃度である120〜300g/Lにおいて、更に中度な温度である54℃で、微細な表面仕上げを生成した。にもかかわらず、有意な表面仕上げ向上は以下の条件でも得られた:低濃度のABF、中濃度のクエン酸、及び高温度条件(10g/LのABF、120g/Lのクエン酸、85℃);、並びに低濃度のABF、中濃度のクエン酸、及び低温度条件(20g/LのABF、180g/Lのクエン酸、54℃)。ABF濃度が更に高いとき、即ち60〜120g/Lの範囲のとき、更に高濃度であるクエン酸濃度600〜780g/L、及び更に高い電流密度において、更に低い温度である21〜54℃で、更に良好な表面仕上げを生成する傾向がある。また、図4Hに示すように、低ABF濃度である10g/L、及び高ABF濃度である120g/Lの両方に関して、更に低い電流密度である10.8〜53.8A/m2、高いクエン酸濃度である780g/L、及び高温である71〜85℃で有意な表面仕上げの洗練(向上)を達成することができた。
Figure 0006219991
表3Bに示すように、一般的には、最高度ではないが高度の表面仕上げ向上が(即ち、表面粗さにおいて約15%〜約30%の減少)以下の条件で得られた:更に低いABF濃度である10〜20g/L;、及び中〜更に高温の54〜85℃;、及び以下の電流密度に限られないが、その多くは、更に高い電流密度である538〜1076A/m2。典型的には、これらの結果は、高いクエン酸濃度である600〜780g/Lで達成された。例えば、10〜20g/LのABF濃度においては、通常は、更に高い電流密度、及び高いクエン酸濃度で微細な結果を生み出した。その一方で、微細な結果は以下の条件を用いても得ることができた:更に低いクエン酸濃度である60〜300g/L:、低電流密度である10.8A/m2、及び高温である85℃;、並びに低い電流密度である53.8A/m2、及び中温である54℃。表面仕上げにおける高度な向上は、高レベルの120g/LのABFでも達成され、高温且つ低電流密度(71〜85℃、且つ10.8〜53.8A/m2)、及び低温且つ高電流密度(21℃且つ1076A/m2)の両方で達成され、高いクエン酸濃度である780g/Lの全ての場合において得られた。この点からすれば、高濃度のクエン酸を有する溶液に関して、更に高い電流密度且つ更に低い温度を用いて、又は更に低い電流密度且つ更に高い温度を用いて同様の表面仕上げ結果が達成できるという点で、明らかに温度と電流密度の間には幾つかの相補的な活性がある。また、図4H−4Jも参照されたい。これらの図では、高電流密度と組み合せた高温条件では、最良の表面仕上げ向上を生み出す傾向があることを示している。
Figure 0006219991
表3Cに示すように、一般的に、最も中度なレベルの表面仕上げ向上(即ち、表面粗さにおいて約15%未満の減少)は、以下の条件で得られた:更に低いABF濃度である10〜20g/L;、及び更に高温である71〜85℃;、及び、その多くは、電流密度10.8〜1076A/m2全体で得られた。典型的には、これらの結果は、高いクエン酸濃度である600〜780g/Lで達成された。こうした傾向に対する特筆すべき1つの例外として、中〜高度の表面仕上げ向上が以下の条件でも得られたことが挙げられる:10〜120g/Lの範囲の全ABF濃度;、低〜中のクエン酸濃度である60〜300g/L;、低温である21℃;、及び高電流密度である1076A/m2
Figure 0006219991
表4Aに示すように、低クエン酸濃度である60〜180g/Lでは、表面仕上げの向上は、明らかに一様に高い電流密度を必要としている。典型的には、最良の表面仕上げ向上は、低ABF濃度である10〜20g/L、及び中〜高温である54〜85℃で得られた。低度及び中度の表面仕上げ向上は、ABF濃度で10〜60g/L、及び低温である21℃で達成された。
Figure 0006219991
表4Bに示すように、中クエン酸濃度である300〜600g/Lでは、一般的に、表面仕上げの有意な向上には、更に高い電流密度である538〜1076A/m2を必要とし、主に低いABF濃度である10〜20g/LのABFで生じる。最低濃度であるABF濃度10g/Lにおいては、更に高い温度である54〜85℃で最良の結果を達成しており、その一方で、ABF濃度20g/Lにおいては、21〜85℃の範囲で、良好な結果が達成される。更に高いABF濃度の60〜120g/Lにおいて、表面仕上げの向上は、更に低い温度である21℃でより典型的に生じる。
Figure 0006219991
表4A及び4Bと表4Cを比べると、仮想的に材料ロスが無い、又は最小限となる表面向上を得るための殆どの工程条件は、高クエン酸濃度である780g/Lで発生していることがわかる。図4Cに示すように、高いクエン酸濃度である780g/Lにおいて、有意な表面仕上げ向上は以下の条件で得られた:10.8〜1076A/m2の範囲のほぼ全ての電流密度;、低〜高温である21〜85℃;、並びに低ABF濃度である10〜20g/LのABF、及び高ABF濃度である120g/LのABFの両方。
図5A及び5Bは、代表的な低温である21℃、及び代表的な高電流密度である538A/m2での表面仕上げにおける材料除去速度及び変化を示す。図5Bから分かるように、表面仕上げ劣化は、ABF濃度60g/L未満に関して、クエン酸濃度600g/L未満の全てで中程度であった。そして、実際に、表面仕上げは、ABF濃度が10〜120g/Lの全ての範囲に関して、高クエン酸濃度である600g/L超で、及び具体的には780g/Lで向上した。更に、図5Aは、これらの工程条件での材料除去の速度が比較的低いことを示している。従って、こうした範囲の組成物、温度、及び電流密度で稼動させることが最小限の表面劣化で最も適度に制御された材料除去、又はおそらく最も適当な表面仕上げ向上を達成させるために望ましいであろうが、大規模な材料除去では特に効果がないであろう。
同様に、図6A及び6Bは、代表的な低温である21℃、及び代表的な高電流密度である1076A/m2での表面仕上げにおける材料除去速度及び変化を示す。図6Bから分かるように、ABF濃度が10g/L超120g/L未満の場合に関して、クエン酸濃度が600g/L未満の全てにおいて、小〜中程度の表面仕上げ向上が達成されている。そして、表面仕上げは、クエン酸濃度が600g/L以上で最も有意に向上している。更に、図6Aでは、クエン酸が300g/L付近、且つABFが120g/L付近での組成物を除き、こうした工程条件での材料除去の速度が比較的低いことが示されている。ここで、材料除去速度は、有意な表面劣化を起こすことなく、更に高くなっている。従って、こうした範囲の組成物、温度、及び電流密度で稼動させることが最小限の表面劣化で最も適度に制御された材料除去、又はおそらく最も適当な表面仕上げ向上を達成させるために望ましいであろうが、大規模な材料除去では特に効果がないであろう。
図7A及び7Bは、特定条件下で、制御された材料除去及び表面仕上げ向上が同時に達成できることを示している。特に、図7Aは、高温である85℃及び高電流密度である1076A/m2で電解質溶液に加工物を曝したときに、ABF濃度が約10g/Lで、全てのクエン酸濃度にわたって、一貫した適度な材料除去速度を示している。同じ条件で、図7Bでは、60g/L以上のクエン酸濃度の全ての場合で表面仕上げにおける実質的な改良を示している。更に高いABF濃度である20g/L〜120g/LのABFであっても、表面仕上げが実質的に劣化することなく、ABF濃度に直接関係して材料除去を得ることができる。しかし、最も高いクエン酸濃度である600g/L以上のクエン酸では、材料除去速度は有意に減少した。
幾つかの範囲の稼動条件が特定され、該条件では、表面仕上げを中程度に劣化させ、通常は、粗さを約50%未満上昇させる間に、制御された材料除去を達成することができる。図8A〜8B、9A〜9B、及び10A〜10Bは、こうしたカテゴリにおける例示的な稼動条件を示す。
図8Aは、高温(85℃)且つ低電流密度(10.8A/m2)条件で、約60g/L〜約300g/Lの範囲のクエン酸濃度に関して、全てのABF濃度において、かなり一定の材料除去の速度を達成できており、ABF濃度に直接関係して更に大きい材料除去速度が得られていることを示している。図8Bは、特定のクエン酸及びABF濃度に殆ど関係なく、これらクエン酸、及びABF濃度範囲に関して、表面仕上げの劣化が一貫して中程度であることを示している。クエン酸濃度が600g/L以上では、電解質溶液の材料除去能力が大幅に低下し、又は停止さえしてしまう。また、ABF濃度が60g/Lの場合を除いて、表面仕上げ劣化を和らげ、僅かながら表面仕上げを向上させる傾向さえ見られる。図9A及び9Bでは、高温(85℃)及び高電流密度(538A/m2)条件で、非常に類似した結果を示している。そして、図10A及び10Bでは、幾分更に低い温度である71℃、及び中程度の電流密度である215A/m2であっても、同様の結果に近づくことができることを示している。
本明細書に開示した試験データに基づいて明らかに言えるのは、温度、及び電流密度を制御することにより、同一の水系電解質溶液槽は、複数の工程を含む方法において使用可能であるということであり、該方法では、最初に中程度の制御された量の材料を比較的低い電流密度で除去し、温度を維持するか、又は僅かに低くしながら、その後、電流密度を高レベルまで上げることによって表面を修復することを含む。例えば、300g/Lのクエン酸、及び120g/LのABFを有する溶液を使用して、適度な材料除去速度が、表面仕上げの劣化が30%未満としながら、温度85℃、及び電流密度53.8A/m2(図3D参照)で得ることができる。そして、その後、材料の除去をより少なくしつつ、同一の温度、及び電流密度1076A/m2(図7A及び7B参照)で表面向上を得ることができる。
温度や電流密度のほかにクエン酸濃度を変化させることによって、複数の工程の方法に関する条件の更に多くの組合せが見出される。これは、クエン酸濃度が600g/L以上上昇すると生ずる強力な材料除去緩和効果が原因となっている。例えば、図8A、及び8Bを参照すると、120g/LのABFを含む電解質溶液を温度85℃、及び電流密度10.8A/m2で用いると、第一の加工ステップにおいて、クエン酸濃度が300g/Lの濃度で、中程度の表面劣化を伴う攻撃的な材料除去を達成することができる。そして、その後、第二の加工ステップにおいて、クエン酸濃度を780g/Lまで単純に上昇させるだけで、表面仕上げを有意に向上させながら、材料除去を仮想的にストップさせることができる。図9A、及び9Bの高温、更に高い電流密度条件を用いて、又は、図10A及び10Bの中程度に高温、中程度の電流密度条件を用いて、同様の結果を得ることができる。
非常に低濃度の二フッ化水素アンモニウムは、材料除去、及びマイクロ研磨の両方において有効であることが見出された。図1Aに示すように、材料除去速度は、上昇した温度において最も大きくなる。従って、更に低濃度の二フッ化水素アンモニウムでは、更に高温(例えば85℃以上)で更に効果的になることが予想される。クエン酸濃度、及び二フッ化水素アンモニウム濃度を両方とも2g/L有する1つの例示的な電解質溶液では、材料除去、及び表面仕上げ変化が観察された。285A/m2では、0.008mm/hrの材料除去速度が記録され、対応する表面仕上げ変化(劣化)の−156%であった。0A/m2では、0.0035mm/hrの材料除去速度が記録され、対応する表面仕上げ変換の−187%であった。
同様に、2g/LのABFの水性溶液で、クエン酸を含まない溶液において、271A/m2の電流を与えて加工したとき、0.004 mm/hrの材料除去速度が記録され、対応する表面仕上げ変化(劣化)の−162%であった。0A/m2で、0.0028mm/hrの材料除去速度が記録され、対応する表面仕上げ変化の−168%であった。
効果を有するのに必要となる最低量のABFを使用することが好ましいが、有意に120g/Lを超える濃度(二フッ化水素アンモニウム濃度で、240g/L〜360g/Lの高さの濃度を含み、更には水中飽和を超える濃度も含む)を使用することができる。温度を67℃に固定し、及び10.8A/m2〜255,000A/m2の範囲の電流密度で、ABFを増加しながら179.9g/Lのクエン酸溶液に添加することによって、高濃度のABFでの電解質溶液の効果の試験を行った。該溶液は比較的電気抵抗が低いため、ABF濃度を更に高くすると、溶液中の導電性が更に高くなる(特に更に高いレベルの電流密度において)と予想された。また、温度は室温を超えて上昇し、電解質の抵抗を減少させる。CPチタン、及びニッケルベース合金718の両サンプルを電解質に曝し、そして、ABFを添加している間、バルク材料除去、及びマイクロ研磨を続けた。ABFは、電解質中での飽和点以上まで添加した。これらのパラメーターの下でのABFの飽和点(温度及び圧力とともに変化する)は、約240g/L〜約360g/Lの間であった。表5中のデータは、ABF濃度が水中飽和濃度以上で、電解質溶液が、バルク金属除去、及びマイクロ研磨の両方に関して効果があったことを示している。
比較的高電流密度(255,000A/m2に近いものを含む)でのマイクロ研磨、及びバルク金属除去に関して、電解質溶液の効果を決定するために試験を実施した。文言上、抵抗値の低い電解質は、高電流密度を許容することができる点を理解されたい。クエン酸濃度とABF濃度との特定の組合せは、特に低い抵抗値を示す。例えば、約71℃〜85℃の範囲の温度において、高電流密度で、約180g/Lのクエン酸を含む電解質溶液の試験を行った。工業用純(CP)チタン、及びニッケルベースの合金718のサンプルを、10.8A/m2〜255,000A/m2までの範囲で電流密度を次第に上昇させながら、該電解質溶液に曝した。表5のデータは、試験が行われた全ての電流密度範囲(255,000A/m2を含めて)で、バルク材料除去、及びマイクロ研磨が達成されたことを示している。チタン及びチタン合金の加工と比べると、更に高い電流密度、特に約5000A/m2が、ニッケルベース合金の加工においては有用である可能性がある。
約40ボルト以下という比較的低い電圧を用いてCPチタンが効果的に加工される一方で、更に高い電圧を用いることもできる。1つの例示的な試験において、85.6℃で、64.7VDCの電圧、及び53,160A/m2の電流密度を与えて、約180g/Lのクエン酸、及び約120g/LのABFを含む水系電解質溶液槽中でCPチタンを加工した。これらの条件の下、表面プロフィルメータ粗さ(surface profilometer roughness)を37.8%向上させながら5mm/hrのバルク金属除去速度を達成した。その結果、均一で視覚的に光沢を持ち、反射性の外観を有する表面となった。同一の化学電解質は、電圧を150VDCまで上げ、電流密度を5,067A/m2まで下げた後でも、バルク金属除去に関するCPチタンサンプルへの影響を維持していた。しかし、これらの条件の下、金属除去速度は、0.3mm/hrまで降下し、仕上がりが、サテンのような外観(satin appearance)へと僅かに劣化した。
幾つかの金属、及び合金に関して、電圧を更に高くすると、バルク材料除去、及び表面仕上げ向上のうちの一方又は両方を達成する際に、同等の効果又は更なる効果を得ることができる。特に、特定の金属(ニッケルベース合金(例えば、Waspaloy及びニッケル合金718)、18k金、純クロム、Nitinol合金が含まれるがこれらに限定されない)は、更に速度の速いバルク金属除去、及び/又は更に良好な表面仕上げ向上に関して、更に高い電圧での加工による利益を明らかに得る。ニッケル合金718に対する比較的高い電圧での1つの例示的な実験では、約180g/Lのクエン酸、及び約120g/LのABFを含む水系電解質中において、86.7℃で、150VDCの電圧、及び4,934A/m2の電流密度を用いて加工された試験片は、結果として、バルク金属除去速度が僅か0.09mm/hrではあったが、均一な表面仕上げを33.8%(表面プロフィルメータ測定に基づく)向上させた。
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電解質溶液において蓄積した溶解金属の効果を評価するために、寸法が6.6cm×13.2cm×約3.3メートルである21Ti−6A1−4Vの長方形の棒のバッチを約1135リットルの槽で連続的に加工した。該加工では、典型的なミル産物形態での高度に制御された金属除去を示した。21を超える長方形の棒片(全体量で、70.9kgの材料)が棒から除去され、電解質溶液中に懸濁している。最初、棒は、溶液中で溶解金属が0g/Lの状態で加工を開始し、最終的に、棒は、60g/Lを超える溶解金属量で加工された。加工の開始から加工の終了まで、金属の表面状態、又は金属除去速度に対して有害な効果は検出されなかった。そして、電解質溶液中に溶解金属量が増加することの結果として、任意の稼動パラメータにおいて有意な変更は必要とされなかった。これは、溶液中のチタン濃度が12g/Lであっても、実質的に溶液の効果が低くなるという、HF/HNO3でチタンを酸洗して生じる結果とは対照的である。同様に、電解質溶液において高レベルで溶解した金属によって電解加工が妨害される。理由としては、金属粒子が陰極と陽極加工物との間のギャップを妨害する可能性があるからである。固形物が導電性である場合には、ショートを引き起こす可能性すらある。
クラックの調節及び酸化物層の除去
本明細書で開示する水系電解質溶液は、表面のクラックの底部を調節または丸めるために使用することができ、これにより、鋭くとがったクラックの先端を除外することができる。該先端は、金属の表面において様々な深さで形成されるものである。そして、反応性金属のファミリーの中で最も有害たる物として、以下の物が挙げられるがこれらに限定されない:チタン及びチタン合金、ニッケル基合金、ジルコニウムなど。これらの金属は、酸素を含む雰囲気下で上昇した温度からの冷却が行われた時点でクラックを形成する。例えば、こうした表面クラックは、以下にあげる処理からの冷却時に生じる可能性があるが、これらに限定されない:熱を伴う処理(例えば、鍛造、圧延、超塑性成形など)、溶接、及び加熱処理。更には、水系電解質溶液は、比較的ロスを生じることがほとんどなく、これらのクラックを調節することができる。丸められた又は調整されたクラックの先端は、その後の金属熱処理に適する。その理由として、こうしたクラックは、その後の熱間加工において治癒を行うことができるからである。一方で、典型的な金属冷却クラックは、完全に除去しないと、次の処理で伝播し(runs)、金属が割離するか、または割れる。
図11は、クラックを除去するための従来の処理方法を説明している。ここで、該処理方法では、機械的除去(典型的には、材料の均一層全体を研削又は機械的に除去する)を行い、クラックの最深表面の底部を露出させることを伴う。概念的に示す通り、こうした処理では、材料を実質的にロスする結果となる。一方で、図12で示すクラック調節処理では、電解質溶液を用いており、これに組み合せる形で、底部においてクラックを広げ、クラックの先端を丸くさせるための電流を与えている。その結果、加工物に対して更なる熱処理操作を行ったり、サービス提供した際に、クラックが伝播することはないであろう。
従って、クラック先端の調節や除去のための好ましい処理条件としては、水素ピックアップを最小限又は排除しつつも迅速な除去速度を生じる条件である。後述するが、通常これらの条件は、カルボン酸(例えばクエン酸)濃度が低く、フッ化物イオン濃度が高く(例えば、二フッ化水素アンモニウムの形態で)、そして温度が高いときに得られる。効果的で大規模な除去は、全ての電力密度で行うことができる。しかし、良好な結果を達成できるのは、電力密度が低い場合である。そして、材料に添加される水素量を最小限にするために、前記処理が許容できる限りのOFF動作を有するように電力サイクルを調節する。
これらの処理パラメータの範囲で加工を行うことにより、水系電解質溶液のクラック調節能力は、現在の処理方法(最深部のクラック底部が周囲の金属とともに研削(ground flush)まで、金属表面は均一に又は局所的に、そして機械的に除去(研削又は機械的研磨)される。)と比べると、全体として有意な金属収率の向上をもたらす。また、現在の機械的除去と比べた場合、処理及び消耗品に係るコストは、本明細書に記載した電解質溶液及び方法を用いると有意に低くなる。
水系電解質溶液で得られる別の重要な処理の利点としては、反応性金属の酸化物層(又は、チタン及びチタン合金の場合にはαケース)を除去できることである。他の反応性金属の酸化物層と同様に、αケースは酸素に富む相であり、チタン及びチタン合金が加熱空気や加熱酸素に曝されるときに生じる。αケースは脆く、表面に一連の微小クラックを生じさせ下記を含む性能を低下させる傾向にある:金属部品の強度、疲労特性、及び腐食耐性。チタン及びチタン合金は、反応性金属に属する。これが意味するところとして、チタン及びチタン合金は酸素と反応し、脆くて硬い酸化物層(TiについてはTiO2,ZrについてはZrO2など)を形成する。このことは、空気又は酸化性の雰囲気下で、自然に酸化物層が形成される温度以上で加熱されたときには常に生じ、特定の合金または酸化性雰囲気に依存する。上述したように、酸化物層またはαケース酸化層は、ミル鍛造又はミル圧延(mill forging or mill rolling)必要な温度、溶接の結果として必要な温度、又は完成部分の鍛造又は高温部分の成形のための加熱の温度まで金属を加熱することによって生じる可能性がある。αケースは脆く、バルク金属内部に浸透する微小クラックで満ちており、潜在的は、未成熟な張力又は疲労破壊を生じたり、及び表面に対して化学的攻撃を更に受けやすくする。
従って、αケース層は、続いて行われる熱間加工若しくは冷間加工、又は最終部品サービスとなる前に除去する必要がある。本明細書に記載した水系電解質溶液及びこれらの溶液を用いた処理は、αケースを除去し、全く影響を受けないベースメタルを曝す。αケース除去は、チタン及びチタン合金の処理において非常に困難な問題である。その理由として、αケースは、攻撃に対する耐性が極端に高く、従来の知見では、電気化学的処理の前に、幾つかの機械的処理を介する必要があった。
こうした困難性は、初期の試験で明らかとなった。該試験では、チタンのαケースに対して、電気化学処理に対する前処理として、最初グリッドブラストを行い、及び/又は軽く研削を行う。一旦摩滅すると、残った酸化物層は最も容易にDC電力サイクルONで除去され、その後、単純なスクラブブラシによる摩滅を行い、そして、DC電力サイクルをOFFにする。その後、サイクル処理を数回繰り返す。スクラブブラシによる摩滅に代わるものとして、高圧高容量ポンプシステムがあることに留意されたい。一旦αケース層が除去されると、電気化学的エッチングからの材料除去速度は上昇する。しかし、こうした多段階処理サイクルは非常に運用にコストがかかり、生み出す収益も低い。
これら困難な点を克服するために、酸化物層又はαケース層を有する加工物は、水系電解質溶液の槽中で処理する。ここで該溶液は、低濃度のカルボン酸(例えばクエン酸)、高濃度のフッ化物イオン(例えば、二フッ化水素アンモニウム)を含み、高温であり、及び好ましくは電力密度が低い。クエン酸濃度が低いこと、二フッ化水素アンモニウム濃度が高いこと、及び温度が高いことにより、材料の除去速度を最大化する。そして、電力を周期的に与えた場合、除去速度は、電流密度に対する感受性が比較的低いため、より低い電力密度を用いて、材料表面に水素が浸透するのを少なくする。
要するに、本明細書に開示したように、水系電解質溶液及び該溶液を用いた方法では、制御され且つ繰り返し可能な態様で、酸化物層の除去及びチタンαケースを反応性金属表面から除去することを可能にする。これは、現在のHF−HNO3酸洗とは対照的である。該酸洗では、強力な発熱反応であり、チタンの場合には、反応中触媒として進化チタン(evolved titanium)を用いており、これにより酸濃度及び反応速度が継続的に変化し、繰り返し行うことが困難となり、正確な表面金属除去が殆ど不可能となる。更には、開示した水系電解質溶液及び方法は、有害な水素をバルク金属に浸透させない。実際、開示した方法は、水素をバルク金属から除去するような態様で行うことができる。対照的に、現在の方法では、まさにその特性によって、有害な水素をバルク金属の中に導入してしまい、水素を取り除くために脱気工程というコストの係る更なる工程が必要となる。
水系電解質溶液は、環境にも優しく、有害な廃棄物も生じない。一方で、現在の処理方法では、環境に負荷がかかり、有害なフッ化水素酸(HF)や硝酸(HNO3)が生じ、極端に取り扱いが難しい。また、非常に厳密に許可されたプログラムの下でしか使用することができない。結果として、水系電解質溶液を用いた処理は、重要な空気調節設備なしで行うことができる。また、現在のHF−HNO3処理で使用するのに必要とされる有害な化学物質の防護ギアのオペレーターも必要ない。
クラック調節及びαケース除去について、更なる加工ステップが続くため、表面仕上げは特に重要ではなく、表面仕上げを向上させる必要がないかもしれない。しかし、それでも、材料の表面は厳密に劣化させず、材料にピット、又は他の深い欠陥を生じさせないことが望ましい。
図3D、4E−4J、7A、8A、9A及び10Aを見て分かることとして、ABF濃度及び温度を最大にすると(即ち、グラフに示すようにABF濃度が120g/L、温度が85℃)、最も高い材料除去速度が得られた。一方で、クエン酸濃度は300g/L以下に維持されていた。また、図4E〜4Gを含む幾つかの図で強調されているが、クエン酸は、材料表面上でのフッ化物イオンの攻撃を和らげる傾向にあるため、クエン酸濃度が0g/Lに近づくにつれ、材料の除去速度が上方に鋭く上昇する傾向が見られた。しかし、クエン酸条件がゼロの近くでは、図4H、7B、8B、9B、及び10Bが示すように、表面のピット及び深刻な表面仕上げの劣化が生じる結果となる可能性がある。
従って、クラック調節のために水系電解質溶液を用いる際には、深刻な表面劣化は回避することが好ましいが、最も深刻なフッ化物イオンの攻撃の効力を和らげるために、少なくとも少量のクエン酸(例えば、1g/L〜10g/L)を用いるべきである。しかし、αケースの除去を目的として水系電解質溶液を用いる際には、深刻な表面劣化は特段有害でもないので、深刻なピットを生じない程度にフッ化物イオンの攻撃を許容することができる。従って、クエン酸の濃度はゼロの近くまで減らすことができる。
クラック調節及びαケース除去の両方の環境下では、脆弱化を防ぐために、材料に水素を導入することを回避することが望まれる。図1A−1C、2A−2B、及び4E−4Gに特に見られるように、材料の除去速度は電流密度に対して比較的感受性が低いため、そして、電流密度が高くなると材料に水素が導入される傾向が生じるため、効果のある電流密度のうち最も低い密度で稼動させることが好ましい。
本発明の例示的な実施形態に関連して記述してきたが、添付した特許請求の範囲で規定された本発明の思想及び範囲から離れることなく、具体的に記載されていない付加、削除、改変、及び置換を行うことができ、そして、本発明は特定の開示された実施形態に限定されるものではないということを当業者は理解するであろう。
一側面において、本願発明は以下の発明を包含する。
(発明1)
約0.1重量%〜約59重量%の濃度範囲のカルボン酸;及び
約0.1重量%〜約25重量%の濃度範囲のフッ化物塩
を含み、実質的に強酸を含まない水系電解質溶液。
(発明2)
発明1に記載の電解質溶液であって、前記フッ化物塩がアルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、シリケートエッチング化合物、及びこれらの組合せからなる群から選択される該電解質溶液。
(発明3)
発明2に記載の電解質溶液であって、前記フッ化物塩が二フッ化水素アンモニウムである該電解質溶液。
(発明4)
発明1に記載の電解質溶液であって、前記カルボン酸がクエン酸である該電解質溶液。
(発明5)
以下を含む水系電解質溶液であって、
約1.665g/L以上約982g/L以下のクエン酸;及び
約2g/L以上約360g/L以下のフッ化物塩としての二フッ化水素アンモニウム
実質的に強酸を含まない該電解質溶液。
(発明6)
非鉄金属加工物の表面を処理する方法であって、以下のステップを含む方法;
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約300g/L以下の濃度範囲のクエン酸;及び
約10g/L以上の濃度範囲の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
約54℃以上になるように前記槽の温度を制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に電流を与えるステップ。
(発明7)
発明6に記載の方法であって、前記槽の温度を約71℃以上に制御する該方法。
(発明8)
発明6に記載の方法であって、前記槽内に与えた電流が約538A/m 2 以下である該方法。
(発明9)
発明8に記載の方法であって、前記槽内に与えた電流が約53.8A/m 2 以下である該方法。
(発明10)
発明6に記載の方法であって、前記クエン酸濃度が約60g/L未満である方法。
(発明11)
発明6に記載の方法であって、前記二フッ化水素アンモニウム濃度が約60g/L以上である該方法。
(発明12)
非鉄金属加工物の表面中のクラックを調節する方法であって、以下のステップを含む方法;
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約600g/L以下の濃度のクエン酸;及び
約60g/L以上の濃度の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
槽の温度を約54℃以上になるように制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に約53.8A/m 2 未満の電流を与えるステップ。
(発明13)
非鉄金属加工物の表面から金属酸化物を除去する方法であって、以下のステップを含む方法;
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約60g/L以下の濃度のクエン酸;及び
約60g/L以上の濃度の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
槽の温度を約54℃以上になるように制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に約53.8A/m 2 未満の電流を与えるステップ。
(発明14)
チタンまたはチタン合金加工物の表面からアルファケースを除去する方法であって、以下のステップを含む該方法:
前記表面を水系電解質溶液槽に曝すステップ
(ここで、前記水系電解質溶液は:
約60g/L以下の濃度のクエン酸;及び
約60g/L以上の濃度の二フッ化水素アンモニウムを含み;並びに
強酸が約3.35g/L以下である);
前記槽の温度を約54℃以上になるように制御するステップ;
DC電源の陽極に前記加工物を接続し、且つ前記DC電源の陰極を前記槽内に浸漬するステップ;並びに
前記槽に約53.8A/m 2 未満の電流を与えるステップ。


Claims (45)

  1. 非鉄金属加工物を処理するための方法であって、前記加工物は表面にクラックが形成され、以下を含む方法:
    所定の期間、非鉄金属加工物の表面を、水系電解質溶液槽に曝すことであって、前記槽はフッ化物塩と1.0g/L超の酸とを含み、1.0g/L以下の強酸を有する、該曝すこと;
    前記非鉄金属加工物をDC電源の第一電極に接続すること;
    前記DC電源の第二電極を、前記槽に電通するように設置すること;
    前記槽に電流を与えること;及び
    第一のクラックの形状を変化させることであって、前記変化は、加工物から物質を除去することによってなされ、前記除去は、前記クラックの頂部を広げ、前記クラックの底部を丸めるような態様でなされる、該変化させること。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記電流は、前記所定の期間の実質的にすべての期間中、前記槽に与えられる、該方法。
  3. 請求項2に記載の方法であって、前記第一電極は、前記所定の期間のうちの一部の期間、アノードである、該方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、前記非鉄金属が反応性金属である、該方法。
  5. 請求項4に記載の方法であって、前記反応性金属が、チタン、チタン合金、及びニッケルベース合金からなる群から選択される、該方法。
  6. 請求項1に記載の方法であって、前記弱酸がカルボン酸である、該方法。
  7. 請求項6に記載の方法であって、前記カルボン酸が、酢酸、酪酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、クエン酸、エナント酸、蟻酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ペラルゴン酸、プロピオン酸、ステアリン酸、吉草酸、及びこれらの組合せから成る群から選択される、該方法。
  8. 請求項7に記載の方法であって、前記カルボン酸がクエン酸である、該方法。
  9. 請求項1に記載の方法であって、前記フッ化物塩が、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、シリケートエッチング化合物、及びこれらの組合せから成る群から選択される、該方法。
  10. 請求項9に記載の方法であって、前記フッ化物塩が、シリケートエッチング化合物から選択される、該方法。
  11. 請求項9に記載の方法であって、前記フッ化物塩がアルカリ金属フッ化物から選択される、該方法。
  12. 請求項9に記載の方法であって、前記フッ化物塩がアルカリ土類金属フッ化物から選択される、該方法。
  13. 請求項1に記載の方法であって、フッ化物塩が二フッ化水素アンモニウムである、該方法。
  14. 請求項1に記載の方法であって、前記弱酸の濃度が982g/L未満である、該方法。
  15. 請求項14に記載の方法であって、前記弱酸の濃度が590g/L未満である、該方法。
  16. 請求項15に記載の方法であって、前記弱酸の濃度が300g/L未満である、該方法。
  17. 請求項16に記載の方法であって、前記弱酸の濃度が60g/L未満である、該方法。
  18. 請求項に記載の方法であって、前記弱酸の濃度が1.665g/L超である、該方法。
  19. 請求項1に記載の方法であって、前記フッ化物塩の濃度が360g/L未満である、該方法。
  20. 請求項19に記載の方法であって、前記フッ化物塩の濃度が250g/L未満である、該方法。
  21. 請求項1に記載の方法であって、前記フッ化物塩の濃度が1g/L超である、該方法。
  22. 請求項21に記載の方法であって、前記フッ化物塩の濃度が10g/L超である、該方法。
  23. 請求項1に記載の方法であって、前記槽の温度を2℃〜98℃に制御することを更に含む、該方法。
  24. 請求項23に記載の方法であって、前記槽の温度が85℃以下に制御される、該方法。
  25. 請求項15に記載の方法であって、前記槽内に与えた電流が255,000A/m2以下である、該方法。
  26. 請求項25に記載の方法であって、前記槽内に与えた電流が5,000A/m2以下である、該方法。
  27. 請求項26に記載の方法であって、前記槽内に与えた電流が53.8A/m2以下である、該方法。
  28. 非鉄金属加工物の表面上の酸化物層を処理するための方法であって、前記酸化物は、クラックの表面において含まれ、前記クラックは、加工物の表面において形成され、以下を含む該方法:
    所定の期間、金属酸化物を有する非鉄金属加工物の表面を、水系電解質溶液槽に曝すことであって、前記水系電解質溶液槽は、フッ化物塩と1.0g/L超の酸とを含み、1.0g/L以下の強酸を有する、該曝すこと;
    前記加工物をDC電源の第一電極に接続すること、及びDC電源の第二電極を前記槽に接続すること;
    DC電流を前記槽に前記所定の期間のうちの少なくとも一部の期間与えること;並びに
    前記酸化物層のうち少なくとも一部を前記クラックの表面から除去することであって、DC電流を前記槽に与える作用を通して除去すること。
  29. 請求項28に記載の方法であって、前記第一電極が、前記所定の期間の少なくとも一部の時点においてアノードである、該方法。
  30. 請求項28に記載の方法であって、前記非鉄金属が反応性金属である、該方法。
  31. 請求項30に記載の方法であって、前記反応性金属が、チタン、チタン合金、及びニッケルベース合金からなる群から選択される、該方法。
  32. 請求項28に記載の方法であって、前記弱酸がカルボン酸である、該方法。
  33. 請求項28に記載の方法であって、前記フッ化物塩が、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、シリケートエッチング化合物、及びこれらの組合せから成る群から選択される、該方法。
  34. 非鉄金属加工物の表面からアルファケースを除去するための方法であって、前記アルファケースは、クラックの表面から含まれ、前記クラックは前記加工物の表面において形成され、以下を含む方法:
    アルファケースを有するチタン又はチタン合金加工物の表面を水系電解質溶液槽に曝すことであって、水系電解質溶液槽は、フッ化物塩と1.0g/L超の酸とを含み、1.0g/Lの強酸を有する、該曝すこと;
    前記加工物をDC電源の第一電極に接続すること、及び、前記DC電源の第二電極を前記槽に接続すること;
    前記槽に電流を与えること;並びに
    アルファケースの少なくとも一部を、前記クラックの表面から除去することであって、前記槽に電流を与える作用を通して除去すること。
  35. 請求項34に記載の方法であって、前記電流は、前記槽に所定の期間与えられる、該方法。
  36. 請求項34に記載の方法であって、前記第二電極は、前記所定の期間のうち少なくとも一部の期間、カソードである、該方法。
  37. 請求項34に記載の方法であって、前記弱酸がカルボン酸である、該方法。
  38. 請求項34に記載の方法であって、前記フッ化物塩が、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、シリケートエッチング化合物、及びこれらの組合せから成る群から選択される、該方法。
  39. 非鉄金属加工物の表面を処理するための方法であって、前記加工物は表面にクラックが形成され、以下を含む該方法:
    所定の期間、非鉄金属加工物の表面を、水系電解質溶液槽に曝すことであって、前記槽は、フッ化物塩と1.0g/L超の酸とを含み、1.0g/L以下の強酸を有する、該曝すこと;
    前記非鉄金属加工物をDC電源の第一電極に接続すること;
    前記DC電源の第二電極を、前記槽に電通するように設置すること;
    前記槽に電流を与えること;及び
    前記クラックの形を変化させつつも前記クラックを保持している間、前記加工物の表面から物質を除去すること。
  40. 請求項39に記載の方法であって、前記槽に前記電流を与えている期間のうち少なくとも一部の期間、前記第一電極がアノードである、該方法。
  41. 請求項40に記載の方法であって、前記非鉄金属加工物が前記槽に曝されている期間のうちの大半の期間、前記槽に電流を与える、該方法。
  42. 請求項39に記載の方法であって、前記非鉄金属が反応性金属である、該方法。
  43. 請求項42に記載の方法であって、前記反応性金属が、チタン、チタン合金、及びニッケルベース合金からなる群から選択される、該方法。
  44. 請求項39に記載の方法であって、前記弱酸がカルボン酸である、該方法。
  45. 請求項39に記載の方法であって、前記フッ化物塩が、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、シリケートエッチング化合物、及びこれらの組合せから成る群から選択される、該方法。
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