JP6219728B2 - Foxp3陽性制御性T細胞とIFN−γ産生IL−10産生T細胞誘導を指標とした、経口免疫寛容物質スクリーニング方法及び経口免疫寛容増強組成物 - Google Patents
Foxp3陽性制御性T細胞とIFN−γ産生IL−10産生T細胞誘導を指標とした、経口免疫寛容物質スクリーニング方法及び経口免疫寛容増強組成物 Download PDFInfo
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Description
食物中のタンパク質が十分に消化されタンパク質が分解されてしまえば、吸収されても免疫反応は起こらない。消化酵素の働きによるタンパク質の分解、粘膜面の粘液による物理的なバリア、タンパク質と結合するIgA抗体の分泌など、経口的に摂取された食物を体内に吸収する過程で、腸管においては様々なバリアが存在する。腸管においてはこれらのバリアにより未消化な食物の体内への侵入を防いでいるものの、実際には未消化なタンパク質も日常的に吸収されている。
現在は、病院で経口負荷試験により決定した範囲内で原因アレルゲンを摂取する、「正しい診断に基づいた必要最低限の原因食物の除去」が指導されている(例えば、非特許文献3参照)。
(1)経口免疫寛容増強物質のスクリーニング方法であって、免疫抑制に関わるFoxp3陽性制御性T細胞とIFN−γ産生IL−10産生T細胞を誘導する被験物質を経口免疫寛容増強物質と評価する工程を含む、スクリーニング方法。
(2)前記評価工程の前に、乳酸菌体、菌体成分又は乳酸菌による豆乳発酵物を被験物質として選定する工程を含む、上記(1)に記載のスクリーニング方法。
(3)前記乳酸菌がペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属の乳酸菌である、上記(2)に記載のスクリーニング方法。
(4)前記評価工程の前に、マウス由来脾臓細胞又はNaiveT細胞と前記被験物質とを接触させ、当該細胞におけるFoxp3陽性制御性T細胞(Treg)及び/又はIFN−γ産生IL−10産生T細胞への分化促進活性を測定する工程を含む、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
(5)乳酸菌体、菌体成分又は乳酸菌による豆乳発酵物中の成分を有効成分として含む、経口免疫寛容増強組成物。
(6)前記乳酸菌がペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属の乳酸菌である、上記(5)に記載の経口免疫寛容増強組成物。
(7)前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス又はペディオコッカス・ペントサセウスである、上記(6)に記載の経口免疫寛容増強組成物。
(8)前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスK478株である、上記(7)に記載の経口免疫寛容増強組成物。
経口免疫寛容の誘導メカニズムや、どのような成分が経口免疫寛容を誘導するかは、未解明な部分が多い。経口免疫寛容に影響する因子として、Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)が知られている。Tregは、抗原特異的に他のT細胞の働きを抑制する。ヒト腸内においては常在細菌がTregを誘導し免疫恒常性を保っている。また、抑制性サイトカイン産生能を持つIFN−γ産生IL−10産生T細胞も免疫抑制に関わっていることが知られている。
本発明のスクリーニング方法においては、経口免疫寛容増強作用を決定する指標の一つとして、候補物質がFoxp3陽性制御性T細胞(Treg)とIFN−γ産生IL−10産生T細胞の分化促進作用を有するか否かについて、その両者の協調について評価される。
ここで、「経口免疫寛容」とは、本明細書で使用する場合、経口的に摂取された抗原に対し免疫応答が抑制される状態(すなわち免疫寛容状態)が誘導されることを意味する。免疫寛容状態は、当業者にとって公知の方法、例えば、免疫寛容において重要な役割を果たすT細胞の反応性等の測定により評価することができる。
「経口免疫寛容増強」とは、足の腫れ又は下痢を発症したマウス数が対象物質との比較で被験物質より有意に、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、若しくは50%以上抑制又は減少されていることを意味する。
経口免疫寛容増強作用について評価される被験物質は、特定の化学物質又はその混合物に限定されず、細菌、例えば、乳酸菌の培養物、菌体又は菌体成分であってもよい。食品への応用性、安全性の観点から、被験物質としての細菌は乳酸菌であることが好ましく、特にペディオコッカス属(例えば、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス)、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属の乳酸菌であることがより好ましい。
Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)、IFN−γ産生IL−10産生T細胞への分化は、当業者にとって公知の方法、例えば、抗IL−10抗体による抗原抗体反応を利用する方法(酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)等)を介して測定してもよい。
IFN−γ産生IL−10産生T細胞分化促進組成物は、上記スクリーニング方法により得られたIFN−γ産生IL−10産生T細胞分化促進組成物、例えば、乳酸菌体、菌体成分又は乳酸菌を用いた豆乳発酵物中の成分を有効成分とする。乳酸菌とは、例えば、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属の乳酸菌である。ラクトコッカス属の乳酸菌が好ましく、ラクトコッカス・ラクティスがより好ましく、例えば、ラクトコッカス・ラクティスK478株(ラクトコッカス・ラクティスK478株は、K478として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センターに2014年1月9日に受領され、受領番号NITE−AP01786が付与されている。)が挙げられる。
Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)分化促進組成物は、例えば、フラボノイドを有効成分とすることができる。フラボノイドとは、例えば、豆乳中に豊富に含まれるイソフラボン、好ましくは豆乳中に豊富に含まれるゲニステイン又はゲニスチンを挙げることができる。
経口免疫寛容増強作用を示す限り、有効成分である乳酸菌体、菌体成分又は乳酸菌を用いた豆乳発酵物中の成分は、どのような方法で調製されたものでもよい。
本発明の経口免疫寛容増強組成物は、乳酸菌を用いて豆乳を発酵し、発酵物を採取することにより得られる。有効成分である経口免疫寛容増強活性を示す成分が得られる限り、発酵条件や、有効成分である培養物、菌体又は菌体成分の採取方法は特に限定されない。
抑制性サイトカイン産生能を持つIFN−γ産生IL−10産生T細胞も免疫抑制に関わっていることが知られており、経口免疫寛容の作用メカニズムにも本細胞群が関わっていると考えられる。そこで、以下に示す乳酸菌を用いて、IFN−γ産生IL−10産生T細胞誘導促進試験を実施した。
ペディオコッカス・ペントサセウス(K1090株、K1174株、K19株)、ラクトバチルス・ペントーサス(K59株、K335株、K133株)、ラクトコッカス・ラクティス(K478株、K550株、K422株)、ラクトコッカス・ブレビス(K27株、K195株、K1022株)、ペディオコッカス・エタノリデュランス(K303株、K125株、K116株)。
MRS培地に各種乳酸菌を1×107個/mlとなるように接種した。30℃で24〜48時間静置培養した後、遠心濃縮機によって培地を除去して集菌した。非加熱処理菌体に関しては生理食塩水にて菌体を洗浄後、凍結乾燥を行った。加熱処理菌体サンプルに関しては95℃で10分間の煮沸殺菌を行い、凍結乾燥を行った。
(1)脾臓由来細胞懸濁液の調製
BALB/cマウス(8−12週齢、雌、日本クレア社生産)をイソフルラン吸入麻酔下に頸椎脱臼して安楽死させた後、脾臓を取り出し、氷冷した10%ウシ胎児血清(FCS、非動化したもの)添加RPMI1640培地(Sigma社製)1mL中でカットし、10%FCS添加RPMI1640(8mL)と400ユニット/ml コラゲナーゼD(Roche社製)(1mL)を加え37℃で1時間撹拌した。得られた細胞懸濁液をセルストレイナー(40μm、BD FALCON社製)で濾過した後、440×gで5分間遠心分離した。
上記のようにして得た細胞と乳酸菌を用い、共培養を行った。96ウェル平底プレート(BD FALCON社製)に脾臓由来細胞を1×106/ウェル、乳酸菌を3μg/ウェルとなるように添加した。3日間培養後に440×gで5分間遠心分離し、上清を除去することで細胞を回収した。リン酸バッファーで各ウェルを洗浄後、Fcブロック(BD Bioscience社製、5μg/mL)を10μL各ウェルに添加した。
5℃で5分間静置後、FACS Washバッファー(10% FCS,10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/ml ポリミキシンB(シグマ社製)、100,000 U/Lペニシリン・100mg/Lストレプトマイシン(シグマ社製)、1mM Sodium Pyruvate(Gibco社製))で洗浄した。
細胞とFITC標識抗CD4抗体(Clone GK1.5、eBioscience社製、20μg/mL)とを反応させ、細胞表面標識を行った。
FACS Washバッファーで洗浄後、Fixation/Permeabilization ComcemtrateとDiluent(eBioscience社製)を用いて固定化した。
Permeabilizationバッファー(eBioscience社製)を用いて洗浄し、PE標識抗IFN−γ抗体(Clone XMG1.2、eBioscience社製、20μg/mL)、APC標識抗IL−10抗体(Clone JES5−16E3、eBioscience社製、20μg/mL)と反応させ細胞内標識を行った。
FACS Washバッファーで洗浄し、同バッファー200μLに懸濁後、FACSCaliburを用いて解析した。結果を図1に示す。
IFN−γ産生IL−10産生T細胞に加え、Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)もまた経口免疫寛容に影響する因子として知られている。Foxp3陽性T細胞を誘導する食品素材を選択するため、Foxp3陽性T細胞を誘導する可能性のあるフラボノイド系化合物(ナリンゲニン、プロシアニン、ECG、ケルセチン、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシチン、ゲニスチン、ダイジン、グリシチン)のTreg誘導活性を評価した。また、芳香環は持つがフラボノイド骨格は持たないグルタミルチロシンも同時に評価した。
各々を10mMになるように、ジメチルスルホキシド(WAKO社製)に懸濁した。次いで、10%FCS添加RPMI1640を用いて100倍に希釈した。これらを終濃度10μMになるよう細胞培養液に添加した。
(1)脾臓由来Naive T細胞懸濁液の調製
BALB/cマウス(8−12週齢、雌、日本クレア社生産)をイソフルラン吸入麻酔下に頸椎脱臼して安楽死させた後、脾臓を取り出し、FCS添加RPMI1640培地1mL中でカットし、FCS添加RPMI1640(8mL)と400ユニット/ml コラゲナーゼD(Roche社製)(1mL)を加え37℃で1時間撹拌した。得られた細胞懸濁液をセルストレイナー(40μm、BD FALCON社製)で濾過した後、440×gで5分間遠心分離した。
MACS runningバッファーにて1回洗浄した後、Fcブロックと反応させた。MACSrunningバッファーにて洗浄後、抗CD62L-FITC抗体と反応させた。
MACSrunningバッファーにて洗浄後、Anti FITC Microbeads(Miltenyi社製)と反応させ自動磁気分離システム(Auto MACS、Miltenyi社製)を用いてポジティブフラクションを分離した。
分離した細胞をFCS添加RPMI1640培地で1回洗浄し、細胞液をトリパンブルー(Gibco社製)で懸濁し、血球計算板を用いて細胞数を計測した。
上記のようにして得た細胞にイソフラボン・アグリコン又は配糖体を添加し、培養した。96ウェル平底プレート(BD FALCON社製)に抗CD3e抗体(eBioscience社製、5μg/mL)を50μL/ウェル入れ、37℃で2時間温置した。その後、PBSで2回ウェルを洗浄し、脾臓由来NaiveT細胞5×106/ウェルに対し、IL−6(R&D System社製)を20ng/mL、TGF−β(R&D System社製)を2ng/mL、イソフラボン・アグリコン又は配糖体を5、10、20μM/ウェルとなるように添加し、FCS添加RPMI1640培養液中で2日以上3日未満培養した。
次いで、PMA(シグマ、0.25mg/mL)2μL、イオノマイシン(シグマ社製、1.25mg/mL)4μL、Golgi Stop(BD Bioscience社製)10μLを各ウェルに添加し、4時間培養した。
リン酸バッファーで洗浄後、Fcブロックと反応させた。FACS Washバッファーで洗浄後、Fixation/Permeabilization ComcemtrateとDiluentを用いて固定化した。Permeabilizationバッファーを用いて洗浄し、PE標識抗Foxp3抗体(Clone NRRF−30、eBioscience社製、20μg/mL)、FITC標識抗IL−17A抗体(Clone eBio1787、eBioscience社製、20μg/mL)と反応させ細胞内標識を行った。
FACS Washバッファーで洗浄し、同バッファー200μLに懸濁後、FACSCaliburを用いて解析した。結果を図2に示す。
実施例1において、ペディオコッカス・ペントサセウス及びラクトコッカス・ラクティスがIFN−γ産生IL−10産生T細胞を強く誘導することが明らかとなった。また、実施例2において、フラボノイド骨格を持つ化合物の中でも、ケルセチン、ゲニステインがFoxp3陽性T細胞を強く誘導することが明らかになった。
経口免疫寛容のメカニズムに関わるこれら二つのT細胞の両方を誘導することができれば、経口免疫寛容を効率的に増強することができる。つまり、ケルセチン又はゲニステインが含まれる食品を、実施例1で選抜した乳酸菌で発酵させれば、両者の機能を掛け合わせた機能性食品が生産できる可能性がある。そこで、乳酸菌が生育でき、かつ、Foxp3陽性T細胞(Treg)を誘導するゲニステインを含む食品として豆乳を、また、実施例1で選抜した二つの菌種のうち豆乳の風味を損なわないと考えられるラクトコッカス・ラクティスをそれぞれ選択した。
発酵により機能性が損なわれないかを検証するため、ラクトコッカス・ラクティスのうちK478株を用いて発酵した豆乳発酵物の上清がFoxp3陽性T細胞(Treg)を誘導するかを検証した。
ラクトコッカス・ラクティスK478株グリセロールストック(1x109 cells/mL)を無調整豆乳に対し0.5%植菌した。72時間培養後、10分間煮沸することにより滅菌し、8,000×gで15分間遠心して上澄みを採取した。次いで、上澄みを凍結乾燥し、リン酸バッファーを用いて20mg/mLに調整した。
(1)脾臓由来NaiveT細胞懸濁液の調製
実施例2に示した方法により脾臓由来Naive T細胞懸濁液を調製した。
得られた細胞に豆乳発酵物上清懸濁液を終濃度2mg/mLで添加し、培養した。培養や細胞の固定化、抗体による標識は、実施例2で述べた方法で行った。結果を図3に示す。
豆乳は、10分間煮沸したものを用いた。豆乳発酵物は、豆乳に対し乳酸菌K478株グリセロールストックを0.5%植菌し72時間発酵した。その後、10分間煮沸を行った。
コントロール群には生理食塩水0.2ml/日を、豆乳摂取群、豆乳発酵物摂取群にはそれぞれ豆乳、豆乳発酵物0.2ml/日を試験開始0日目から5日目まで6日間、又は8日目まで9日間摂取させた。
頸椎脱臼して安楽死させた後、小腸を取り出し脂肪、パイエル板を除き、管を開くように切って、FCS添加RPMI1640培地に入れた。リン酸バッファーで小腸を洗浄した後、1cmにカットし、LP FACSバッファー(組成)を用いて37℃1時間撹拌することで上皮細胞を除去した。リン酸バッファーで4、5回洗浄し、FCS添加RPMI1640培地内でさらに細かくカットした。
それらを400ユニット/ml コラゲナーゼD(Roche社製)、50μg/ml DNaseI、10% FCS含有の100,000U/Lペニシリン・100mg/Lストレプトマイシン(シグマ社製)、HEPES(20mM)添加RPMI1640培地(SIGMA社製)で処理した。パーコール(GE Healthcare社製)による密度勾配処理により小腸粘膜固有層中の免疫細胞を得た。
細胞とFcブロックを反応させ洗浄した後、FITC標識抗CD4抗体とを反応させ、細胞表面標識を行った。FACS Washバッファーで洗浄後、Fixation/Permeabilization ComcemtrateとDiluentを用いて固定化した。
Permeabilizationバッファーを用いて洗浄し、PE標識抗IFN−γ抗体、APC標識抗IL−10抗体と反応させ細胞内標識を行った。FACS Washバッファーで洗浄し、同バッファー200μLに懸濁後、FACSCaliburを用いて解析した。
結果を図4に示す。
5週齢のBALB/cマウス(雌、日本クレア社生産)に対して、ラクトコッカス・ラクティスK478株によって発酵した豆乳発酵物の連続強制経口投与を行い、経口免疫寛容増強効果を調べた。オボアルブミン(OVA、シグマ社製)感作を行い、アレルギーを誘導することで、豆乳発酵物摂取が遅延型過敏反応、血清中OVA特異的抗体価、脾臓細胞の抗原特異的サイトカイン産生に及ぼす影響を調べた。
試験は、下記の方法に従い行った。
豆乳は、10分間煮沸したものを用いた。豆乳発酵物は、豆乳に対し乳酸菌ラクトコッカス・ラクティスK478株グリセロールストックを0.5%植菌し、72時間発酵した。その後10分間煮沸を行った。加えて、選抜菌であるラクトコッカス・ラクティスK478株以外に、ラクトバチルス・プランタラムK162株を用いて、ラクトコッカス・ラクティスK478株と同様に豆乳発酵物を作製した。
コントロール群には生理食塩水0.2ml/日を、豆乳摂取群、豆乳発酵物摂取群にはそれぞれ豆乳、豆乳発酵物0.2ml/日を試験開始0日目から22日目まで21日間摂取させた。
経口免疫寛容誘導群、豆乳投与群、ラクトコッカス・ラクティスK478株による豆乳発酵物投与群(K478豆乳発酵物投与群)、ラクトバチルス・プランタラムK162株による豆乳発酵物投与群(K162豆乳発酵物投与群)には、14日目にOVA20mg/0.2ml生理食塩水を投与し、経口免疫寛容を誘導した。未処理対照群、アレルギー誘導対照群には生理食塩水を0.2ml投与した。
試験開始28日目にアレルギーを誘導するためにOVA(シグマ社製)300μg、Complete Freund’s Adjuvant 100μlを背面皮下に投与した。
背面皮下免疫から14日後(試験開始42日目)にOVA50μgを足の裏の背面皮下に投与し、24時間後に腫れの大きさを測定することで、遅延型過敏反応を調べた。
この結果を図5に示す。なお、有意差検定は、t検定により行った。
遅延型過敏反応の測定後、イソフルラン麻酔下で採血を行った。1,500rpmで30分間遠心を行い、血清を得た。血清中のOVA特異的IgG量、OVA特異的IgE量をエンザイムイムノアッセイにより測定した。詳しくは、抗マウスIgG抗体、抗マウスIgE抗体(eBioscience社製)を1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8.2)に500倍希釈で添加し、96ウェルプレートに50μl/ウェルでコーティングした。その後、血清サンプルを2倍−50,000倍希釈し、プレート上に50μlずつ分注し、1時間インキュベートした。
洗浄後、ビオチン標識OVAを1%BSA添加0.05%Tween含有リン酸緩衝液で2μg/mlとなるように溶解し、プレート上に50μlずつ分注した。ビオチン標識OVAは、シグマ社製のOVAと、同仁化学研究所製のビオチン化キットを用いて作製した。1時間インキュベートした後に洗浄を行い、ストレプトアビジンで標識したペルオキシダーゼ酵素(Vector社製)を加え、ビオチンと結合させた。
発色は、TMB基質溶液(Moss/コスモバイオ社製)を1ウェルあたり50μL加え、室温で20分間反応させることで行った。反応を0.5N塩酸で停止し、マイクロプレートリーダー(TECAN社製)で、450nmにおける吸光度を測定し、生理食塩水摂取群に対する相対値でOVA特異的IgG、IgE量を定量化した。
この結果を、図6に示す。なお、有意差検定は、t検定により行った。
経口免疫寛容の増強により食物アレルギーの発症が強く抑制されることを、食物アレルギーモデルで確認した。
ラクトコッカス・ラクティスK478株により発酵した豆乳発酵物を実施例5と同様に作製した。試験開始0日目から20日目まで豆乳発酵物を0.2ml投与した。未処理(アレルギー非誘導)対照群、アレルギー誘導/非発症群、アレルギー誘導/発症群、アレルギー誘導/経口免疫寛容誘導/発症群、アレルギー誘導/K478豆乳発酵物投与+経口免疫寛容誘導/発症群で試験を実施し、K478豆乳発酵物投与群以外は、生理食塩水を0.2ml投与した。
経口免疫寛容の誘導は、試験開始14日目にアレルギー誘導/経口免疫寛容誘導/発症群、アレルギー誘導/K478豆乳発酵物投与+経口免疫寛容誘導/発症群に対し、OVA10mg/0.2ml生理食塩水を投与することで行った。その他の群には、0.2mlの生理食塩水を投与した。
試験開始22日目と36日目にOVA(シグマ社製)10μg/0.1ml生理食塩水、水酸化アルミニウムゲル(和光純薬工業社製)0.1mlを混合し、腹腔内に0.2mlを投与した。
試験開始50日目、52日目、54日目、56日目、58日目、60日目、に1回あたりOVA50mg/250μL生理食塩水を経口投与し、発症を行った。63日目にイソフルラン麻酔下で頸椎脱臼後、小腸粘膜固有層中のマスト細胞のpopulation解析を行った。
試験開始60日目のOVA経口投与の1時間後に下痢の観察を行った。結果を図7に示す。
経口免疫寛容の誘導により下痢の発症が抑制していたが、K478豆乳発酵物投与群で最も下痢の発症が抑制されていることが確認された。
試験開始から63日目のマウスの小腸を採取し、小腸免疫固有層中の細胞を調整した。方法は、実施例4で述べた手法で行った。得られた細胞懸濁液をリン酸バッファーで洗浄後、Fcブロックと反応させた。FACS Washバッファーで洗浄後、抗PE標識抗CD117(ckit)抗体(Clone 288、eBioscience社製、20μg/mL)抗FITC標識抗FcεR抗体(Clone MAR−1、eBioscience社製、20μg/mL)と反応させ細胞表面標識を行った。
FACS Washバッファーで洗浄し、同バッファー200μLに懸濁後、FACSCaliburを用いて解析した。
結果を図8に示す。なお、有意差検定は、t検定により行った。
Claims (7)
- 経口免疫寛容増強物質のスクリーニング方法であって、免疫抑制に関わるFoxp3陽性制御性T細胞及びIFN−γ産生IL−10産生T細胞を誘導する、乳酸菌による豆乳発酵物由来の被験物質を経口免疫寛容増強物質と評価する工程を含む、スクリーニング方法。
- 前記評価工程の前に、乳酸菌体、菌体成分又は乳酸菌による豆乳発酵物を被験物質として選定する工程を含む、請求項2に記載のスクリーニング方法。
- 前記乳酸菌がペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属の乳酸菌である、請求項2に記載のスクリーニング方法。
- 前記評価工程の前に、マウス由来脾臓細胞又はNaiveT細胞と前記被験物質とを接触させ、当該細胞におけるFoxp3陽性制御性T細胞(Treg)又はIFN−γ産生IL−10産生T細胞への分化促進活性を測定する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
- ラクトコッカス・ラクティス又はペディオコッカス・ペントサセウスによる豆乳発酵物中の成分を有効成分として含む、経口免疫寛容増強組成物。
- 前記ラクトコッカス・ラクティスがラクトコッカス・ラクティスK478株である、請求項5に記載の経口免疫寛容増強組成物。
- ラクトコッカス・ラクティス又はペディオコッカス・ペントサセウスによる豆乳発酵物中の成分を有効成分として含む、Foxp3陽性制御性T細胞及びIFN−γ産生IL−10産生T細胞の誘導剤。
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