以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
(1)構成
図1は、本実施形態におけるMRI装置1の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置1は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24、傾斜磁場コイル26、送信用あるいは受信用のRFコイル28、制御系30、被検体(患者)Pが乗せられる寝台32等を備える。さらに、制御系30は、静磁場電源40、シムコイル電源42、傾斜磁場増幅ユニット44、RF送信器46、RF受信器48、SAR測定器54、シーケンスコントローラ56、コンピュータ58等を備えている。また、コンピュータ58は、その内部構成として、演算装置60、入力装置70、表示装置80、記憶装置90等を有している。
静磁場用磁石22は静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給される電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24はシムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
傾斜磁場増幅ユニット44は、X軸傾斜磁場増幅ユニット44x、Y軸傾斜磁場増幅ユニット44y、およびZ軸傾斜磁場増幅ユニット44zとで構成されている。なお、図1においては、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向、鉛直方向をY軸方向、これらに直交する方向をX軸方向としている。
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、およびZ軸傾斜磁場コイル26zを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、およびZ軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場増幅ユニット44x、Y軸傾斜磁場増幅ユニット44y、Z軸傾斜磁場増幅ユニット44zに接続されている。
各傾斜磁場増幅ユニット44x、44y、44zから傾斜磁場コイル26x、26y、26zにそれぞれ供給される電流により、X軸、Y軸、およびZ軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。各傾斜磁場は、静磁場に重畳される。なお、スライス方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の直交3軸で構成される座標系を画像座標系と呼ぶものとする。
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルスを生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、RFパルスを送信すると共に被検体Pからの磁気共鳴信号(MR信号)を受信する送受信用全身コイル(WBC:whole body coil)や、寝台32または被検体Pの近傍に設けられる受信専用のコイルなどがある。
RFコイル28で受信したMR信号は、信号ケーブルを介してRF受信器48に供給される。
RF受信器48は、受信したMR信号に対して、各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に出力する。
SAR測定器54は、被検体Pに印加するRFパワーを、たとえば、RF送信器46の出力を検出することによって測定し、測定したRFパワーからSAR実測値を求める。SAR測定器54で測定したSAR実測値は、シーケンスコントローラ56を介してコンピュータ58に送信される。
シーケンスコントローラ56は、コンピュータ58の演算装置60の制御に従って、設定されたパルスシーケンスを含む撮像条件に対応する傾斜磁場Gx、Gy,GzおよびRFパルスを発生させるためのデータ列や制御情報を生成し、これらを各傾斜磁場増幅ユニット44x、44y、44zやRF送信器46に出力する。
また、シーケンスコントローラ56は、これらの傾斜磁場Gx、Gy,GzおよびRFパルスに応答して受信されたMR信号を、生データ(raw data)としてRF受信器48から入力し、演算装置60に出力する。
演算装置60は、MRI装置1全体の制御を行う他、ユーザ操作によって入力装置70に入力された種々の設定情報に基づいて、各種のパルスシーケンスを含む撮像条件の設定や変更を行い、設定あるいは変更された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ56を制御する。
また、演算装置60は、シーケンスコントローラ56から入力した生データに対して、逆フーリエ変換等を含む再構成処理を行って画像データを生成する。すなわち、演算装置60は再構成部として機能する。生成された画像データは表示装置80に表示される。また、表示装置80には、SAR測定器54によって測定されたSAR実測値や、撮像条件、SARのグラフなどが表示される。
コンピュータ58の演算装置60はプロセッサ等を備えて構成され、記憶装置90に保存されるプログラムコードを実行することによって、上述した各機能を実現する。
図2は、実施形態に係るMRI装置1の機能構成例を示す機能ブロック図である。図2に示されるように、MRI装置1は、SAR実測値取得部61、SAR計画値算出部62、停止後SAR計画値算出部63、補正後SAR計画値算出部64、変更条件算出部65、条件更新部66、変更条件表示部81、SARグラフ表示部82、撮像条件記憶部91の機能ブロックを有する。そのうち、SAR実測値取得部61、SAR計画値算出部62、停止後SAR計画値算出部63、補正後SAR計画値算出部64、変更条件算出部65、条件更新部66は記憶装置90に格納されたプログラムが、プロセッサを有する演算装置60によって実行されることで実現される機能である。
また、変更条件表示部81およびSARグラフ表示部82は、記憶装置90に格納されたプログラムが、プロセッサを有する演算装置60によって実行されることで実現される機能、すなわち、表示用の画像を生成する機能と、生成した画像を表示装置80に表示する機能とを備える。
撮像条件記憶部91は、入力装置70を介して入力された各種の設定情報を装置内部に取り込んで、各種パルスシーケンスを含む撮像条件の設定や変更を行い、設定あるいは変更された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ56を制御する。入力装置70から入力される設定情報には、被検体Pの検査を構成する複数の撮像単位の識別情報や、撮像単位毎の撮像時間、撮像単位の順序(撮像順序)、それぞれの撮像単位に個別に設定された複数の撮像パラメータから構成される撮像条件などがある。これらの情報は条件更新部66によって更新される。
本実施形態における撮像単位とは、T1強調撮像、T2強調撮像、拡散強調撮像等のそれぞれの撮像のことを指す。また、位置決め画像(locator)を得るための撮像やシミング調整のための撮像等も、それぞれが1つの撮像単位となる。撮像単位は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格の階層管理の下では、「シリーズ(Series)」と呼ばれることもある。
また、撮像条件を構成する複数の撮像パラメータには、スライス枚数や、スライス厚、FOV(Field Of View)、繰り返し時間(TR)、フリップ角など、シーケンスを実行するために撮像単位毎に様々なパラメータが設定されている。
SAR実測値取得部61は、SAR測定器54で測定され、シーケンスコントローラ56から入力されるSAR実測値を取得する。
SAR計画値算出部62は、撮像条件記憶部91に格納された撮像条件からSAR計画値を算出する。
停止後SAR計画値算出部63は、キーボードやマウス等からなる入力装置70などから入力された撮像停止要求に応じて撮像が停止した場合、停止時間の長さに応じて、未実施の撮像単位について設定された撮像条件に基づくSAR値を算出する。
補正後SAR計画値算出部64は、SAR計画値算出部62で算出されたSAR値を被検体Pが実際に吸収するRFエネルギーを用いて補正した値を算出する。
本実施形態におけるSARは、平均SARのことを指す。平均SARには、10秒平均SARと、6分平均SARとがある。10秒平均SARは、直近10秒のSAR値を積算し、10秒で割ったものである。同様に、6分平均SARは、直近6分のSAR値を積算し、6分で割ったものである。
変更条件算出部65は、SARが計画値より減少したことにより、撮像条件が緩和された場合、撮像条件の変更可能な範囲を算出する。また、撮像条件の変更可能な範囲の中から、その撮像単位もしくは、全撮像単位を含めた推奨条件を算出する。なお、撮像条件の緩和には、停止時間によって発生する停止時間による緩和と、被検体毎にSARが異なるとによって生じる被検体毎の撮像条件の緩和とがある。それぞれの撮像条件の緩和については後述する。
変更条件表示部81は、算出された変更可能な撮像条件または推奨条件を表示する。変更条件表示部81の表示については後述する。
条件更新部66は、変更条件表示部81に表示された内容に基づき、ユーザが入力装置70を介して入力した情報を取得し、撮像条件記憶部91に格納された撮像条件を、入力された内容で更新する。その後の撮像は、更新後の撮像条件に基づいて実行される。
SARグラフ表示部82は、SAR実測値取得部61、SAR計画値算出部62、停止後SAR計画値算出部63、および補正後SAR計画値算出部64で算出されたそれぞれの値を用いてグラフを作成し、表示する。SARグラフ表示部82で作成され、表示されるグラフについては後述する。
(2)動作
上述したとおり、撮像条件の緩和が発生する条件には、撮像停止と、被検体の違いによるSARの違いがある。それぞれの撮像条件の緩和を、「撮像停止による撮像条件の緩和」と、「被検体毎の撮像条件の緩和」とし、順に第1の実施形態、第2の実施形態として説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態として、停止時間による撮像条件の緩和が発生した場合について説明する。
図3は、実施形態に係るMRI装置1の第1の実施形態の動作の一例を示すフローチャートである。
ST101では、SAR計画値算出部62により、SAR計画値が算出される。SAR計画値は、撮像条件に基づいて予測されたSARの値である。撮像条件からRFパワーを算出し、一般的なRFエネルギー量に基づくSARを求めてもよいし、撮像開始後にSAR実測値取得部61が取得した実測値に基づいて、SAR計画値を算出してもよい。
図4は、実施形態に係るMRI装置1におけるSAR計画値について説明する図である。撮像条件記憶部91には、撮像順序を示す撮像単位番号、撮像単位を示す撮像単位ID、撮像時間などが記憶されている。図4は、それぞれの撮像単位毎のSAR計画値を表示する表を示している。図4の表の1段目に示された撮像単位「1000」(撮像単位ID:「locator 3 Axis」)は、たとえば、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ1枚ずつの位置決め用画像を4分間(「Time」欄の「4:00」)撮像することを示している。図4の最右欄は、設定された撮像条件からSAR計画値算出部62により算出された6分平均SARを示しており、撮像単位「1000」では「0.67」(W/kg)である。同様に、2段目の撮像単位「2000」(撮像単位ID:「Shimming」)は、磁場の均一性等を調整するための撮像を3分間(「Time」欄の「3:00」)撮像することを示しており、6分平均SAR計画値は「0.90」である。3段目の撮像単位「3000」(撮像単位ID:「MRA3D TOF」)は、3次元MRA(Magnetic Resonance Angiography)画像を得るために、TOF(Time of Flight)法による撮像を3分間(「Time」欄の「3:00」)撮像することを示しており、6分平均SAR計画値は「1.40」である。4段目の撮像単位「4000」(撮像単位ID:「DWI b 1000」)は、b値が1000の拡散強調撮像を2分間(「Time」欄の「2:00」)撮像することを示しており、6分平均SAR計画値は「1.83」である。5段目と6段目の撮像単位「5000」(撮像単位ID:「T1W AX」)と撮像単位「6000」(撮像単位ID:「T2W AX」)は、アキシャル面のT1強調撮像を3分間(「Time」欄の「3:00」)行い、その後同じくアキシャル面のT2強調撮像を5分間(「Time」欄の「5:00」)行うことを示している。それぞれ、6分平均SAR計画値は「1.25」「0.75」である。
なお、図4に示す「6分平均SAR計画値」は、各位撮像単位の撮像が連続的に行われた場合に、それぞれの撮像単位の終了時刻における6分平均SARの値を示したものである。
ST103では、撮像条件記憶部91に格納された撮像条件に基づいて撮像が実行される。撮像が実行されると、SAR実測値取得部61は実際に測定されたSARを取得する。
ST105では、キーボードやマウスなどから構成される入力装置70から、撮像停止要求が演算装置60に通知され、シーケンスコントローラ56が撮像を停止する。ここで発生する撮像の停止は、あらかじめ検査計画に含まれていない停止であって、どれだけの長さ撮像を停止するのか決まっていない。このような撮像の停止は、先の撮像単位で取得した画像について、画質や撮像箇所の確認や、すでに行った撮像単位を再度実行すべきかを検討するような場合に発生する。
ST107では、停止後SAR計画値算出部63で停止後SAR計画値が算出される。
図5は、実施形態に係るMRI装置1における停止後SAR計画値を説明する図である。図5は、図4で説明した撮像単位が実行され、撮像単位「3000」が完了した後に撮像が停止した例を示している。図5では、撮像単位「3000」の行の下に撮像が停止したことを示す行が追加され、停止時間が「1:00」分経過したことが示されている。このように、停止時間が発生すると、その後のSARは停止時間の長さに従って変動する。図5に矢印で示した撮像単位「4000」と「5000」の6分平均SARは、図4で示された6分平均SARより減少している。たとえば、図4の撮像単位「4000」の6分平均SARは「1.83」であったが、図5では、「1.50」となっている。また、図4の撮像単位「5000」は、6分平均SARが「1.25」であったが、図5では、「1.00」となっている。
このように、停止時間が発生すると、停止時間の直後に実行される未実施の撮像単位のSARが減少する。SARが減少すると、未実施の撮像単位の撮像条件において、SARが上昇するような条件を選択することができるようになる。これを、停止時間による撮像条件の緩和と呼ぶ。
図6は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が1分間停止した場合の停止時間による撮像条件の緩和を説明する図である。図5と同様に、撮像単位「3000」が完了した後、すなわち、撮像開始から10分後に、停止時間が発生している。発生した停止時間は1分間であり、図6のグラフ上に網掛けで表示されている。
図6のグラフにおいて、縦軸は、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフは当初のSAR計画値を示し、1点鎖線で示したグラフは1分間停止後のSAR計画値を示している。図5で説明したとおり、撮像停止時間が発生したことにより、未実施の撮像単位のSAR計画値は減少する。グラフ上に示した矢印Aは、SAR計画値より、停止後のSAR計画値が減少していることを示している。このように、停止によりSARが減少することで、停止直後に実行される撮像単位の撮像条件を、SARが上昇するような高い出力で行うことができる。
図7は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が2分間停止した場合の停止時間による撮像条件の緩和を説明する図である。図6と同様に、縦軸は、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフはSAR計画値を示し、1点鎖線で示したグラフは2分間停止後のSAR計画値を示している。停止時間はグラフ上に網掛けで示されている。図6と異なるのは、発生した停止時間が2分間である点である。
図7は、図6の状態からさらに停止時間が1分間経過した状態を示しており、矢印Aで示したSAR計画値と、停止後SAR計画値との差は図6より大きくなっている。したがって、図7から、停止時間が長いほど、その後の撮像条件はより緩和されることがわかる。
図8は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が3分間停止した場合の停止時間による撮像条件の緩和を説明する図である。図6および図7と同様に、縦軸は、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフはSAR計画値を示し、1点鎖線で示したグラフは3分間停止後のSAR計画値を示している。停止時間はグラフ上に網掛けで示されている。図6および図7と異なるのは、発生した停止時間が3分間である点である。
図8は、図7の状態から停止時間がさらに1分間経過した状態を示しており、矢印Aで示したSAR計画値と、停止後SAR計画値との差が、図6および図7と比較してさらに大きくなっている。したがって、図8から、停止時間が長いほど、その後の撮像条件はより緩和されることがわかる。
停止後のSARは上述したとおり、停止時間の長さによって変化するため、撮像が停止している間リアルタイムで変化する。したがって、停止後SAR計画値算出部63は、所定の時間間隔で停止後のSARを算出する。上述の例では1分間隔で停止後SAR計画値が変化することを説明したが、10秒、1秒間隔など、さらに短い間隔で停止後SAR計画値を算出してもよい。
図3のST109では、変更条件算出部65により変更可能な撮像条件または、推奨条件が算出される。
ST109では、変更条件表示部81に変更可能な撮像条件、または推奨条件が一覧で表示される。変更条件表示部81は、たとえば、ポップアップウィンドウのように、SARグラフ表示部82と別画面で表示されてもよいし、SARグラフ表示部82と同じ画面に表示されてもよい。なお、ポップアップ表示によって、SARグラフ表示部82と別画面に表示された場合でも、変更条件表示部81の表示をもとに変更された条件はSARグラフ表示部82に反映される。
図9は、実施形態に係るMRI装置1の変更条件表示部81の第1の表示例を示す図である。図9は、変更条件表示部81をポップアップ表示した例を示している。
図9に示された撮像単位は、図4および図5で示した撮像単位と同じである。図9は、図5で示したように、撮像単位「3000」の後に、停止が発生した場合に表示される変更条件表示部81の例を示している。
図9は撮像単位「4000」から「6000」について表示されており、すでに撮像が完了した撮像単位は表示されない。1つの撮像単位につきに1つの変更可能な撮像条件が示されている。たとえば、撮像単位「4000」の変更可能な撮像条件として「フリップ角」が提示されている。フリップ角は、被検体から共鳴信号を得る際の、核スピン運動の傾きを指しており、核スピン運動はRFパワーの強さによって傾きが変化する。つまり、フリップ角が大きいほど、傾きは大きく、照射されるRFパワーが強いことになる。図9の撮像単位番号「4000」におけるフリップ角の設定範囲は、「120〜180」と表示されている。設定値の欄には、数値を入力するための入力枠と、数値を増減させることができるボタンが表示されており、ユーザはキーボードやマウスといった入力装置70を介して、設定値を設定範囲内で変更することができる。図9では、入力枠に数値が入力された状態で表示されている。このように、図9の例では、現在設定されている数値を入力枠内に表示している。変更条件算出部65は、変更可能範囲と推奨条件とが算出されているので、入力枠に推奨条件を表示してもよい。また、図9で示した数値を増減させることができるボタンには、上向きと下向きの三角形を表示することで増減をあらわされているが、プラスとマイナスの記号などであらわされてもよい。
また、図9には、撮像単位「5000」、「6000」では、変更可能な撮像条件として「繰り返し時間」が提示されている。「繰り返し時間」はRFパルスの照射間隔のことであり、照射間隔が短いほどRFエネルギーは高くなりSARは大きくなり、照射間隔が長いほどRFエネルギーが低くなりSARが小さくなる。撮像単位「5000」では、繰り返し時間の設定範囲として、「2000〜500」が提示され、撮像単位「6000」では、「3000〜2000」が提示されている。
このように、撮像単位の内容によって、変更可能な撮像条件が異なっていてもよい。変更可能な撮像条件は、予めユーザが選択した撮像条件であってもよいし、撮像単位から推奨される撮像条件が自動で選択されてもよい。変更可能な撮像条件は、その撮像単位においてSAR値の上昇に影響を与える代表的な撮像条件が選択される。さらに、変更条件表示部81は、それぞれの撮像単位の特定の撮像条件が緩和されたことをうけて、設定できる最大範囲を算出し、提示する。また、その最大範囲のうち、その撮像単位における最大値を推奨条件と算出してもよいし、未実施の撮像単位すべてを加味したうえで、最大の撮像条件を推奨条件として算出してもよい。
変更条件表示部81において、1つの撮像単位の撮像条件が変更されたら、その変更に連動して他の撮像条件の設定範囲が再計算されて表示される。6分平均SAR値は直近の6分間のSAR値の平均であることから、撮像時間が6分未満の撮像単位の場合、6分平均SAR値は前の撮像単位の撮像条件の影響を受ける。したがって、1つの撮像単位について、SAR値が上昇する方向に撮像条件が変更されたら、そのあとに続く撮像単位の設定範囲は、初めに提示されていた条件より狭い範囲に限られる。
また、図6乃至8で説明した停止後のSAR計画値が、停止時間の経過に伴って一定間隔で算出され、SARグラフ表示部82が更新されるのと同様に、撮像条件の緩和も停止時間の経過とともに拡大し、それに伴って、変更可能な撮像条件や推奨条件も変化する。したがって、変更条件算出部65は、停止後SAR計画値算出部63と同様に、所定の間隔で変更可能な撮像条件および推奨条件を算出し、変更条件表示部81の表示はそれに伴って更新される。
このように、変更条件表示部81が、それぞれの撮像単位について変更可能な撮像条件を、一覧化して表示することによって、撮像条件を変更した際の影響を容易に確認することができ、かつ、一定時間が経過する度または撮像条件を変更する度に、変更可能な撮像条件が再計算されるため、撮像単位間の撮像条件の調整を素早く行うことができる。
図10は、実施形態に係るMRI装置1の変更条件表示部81の第2の表示例を示す図である。図10は、図9と同様に、変更条件表示部81をポップアップ表示した例を示している。
図10が図9と異なる点は、設定範囲が提示され、値を入力するのではなく、それぞれの撮像単位について「推奨条件」が提示され、ユーザは「決定」ボタンを押下するだけで条件が変更される点である。提示される「推奨条件」はそれぞれの撮像単位を個別に判断した際の最大値であってもよいし、未実施のすべての撮像単位を考慮したうえでの最大値であってもよい。前者の場合は、図9と同様に1つの撮像単位について提示された条件を「決定」すると、他の撮像単位の推奨条件が再計算されて表示される。後者の場合は、撮像計画全体を考慮した最大値が提示されているため、提示された「推奨条件」に変更する場合は「決定」を押下し、変更しない場合は「決定」を押下しなければよい。また、後者の場合は、すべての撮像単位について「推奨条件」を一度に選択することもかのうであるため、「すべて決定」のボタン(図示せず)を設けて、一度に推奨条件を反映されることもできる。
このように、変更条件表示部81が、推奨条件を提示し、ユーザが承認するか否かを「決定」ボタンを押下するか否かによって選択できるような表示にすることで、図9で示した方法より素早く、簡単に条件を変更することができる。
また、図9と異なり、図10には変更前と比較して推奨条件に変更した場合のSARの増加を示す「SARの変化」を表す列が示されている。ここで表示するSAR値は、たとえば10秒平均SARであってもよいし、個別の撮像単位における単位時間当たりのSAR値で示してもよい。また、図10では、変更前後のSAR値の変化を棒グラフで示しているが、SAR値を表す数値で示してもよいし、変更前後の増加率を示す数値を表示してもよい。「SARの変化」は、個々の撮像単位のSAR値の大きさを表示するものであって、ユーザが一見してその撮像単位について設定された撮像条件によって算出される、SAR値の強さを把握することができる表示である。このような表示をすることによって、視覚的に提示された条件によって増加するSAR値を把握することができる。
上述した表示は、図9で示した変更条件表示部81に表示し、増減ボタンを押下する度に、変更後の「SARの変化」を変化させる表示を行ってもよい。このような表示を行うことで、明示的にユーザがSAR値をどれくらい増加させたかを把握することができる。
図3のST113では、上述した変更条件表示部81により提示された条件をユーザが変更する場合、入力装置70から入力を行う。
ST115では、入力装置70から入力が行われ、撮像条件が変更された場合、条件更新部66が、撮像条件記憶部91に格納されている撮像条件を更新する。
ST117では、変更された撮像条件に基づき、SAR計画値算出部62が変更後のSAR計画値を算出する。
ST119では、変更条件算出部65は、撮像条件の変更に基づき再度変更可能な撮像条件を算出する。
ST121では、SAR計画値算出部62および、変更条件算出部65で新たに算出された数値に基づき、変更条件表示部81およびSARグラフ表示部82が更新される。
ST123では、一定時間経過したかを判断し、一定時間経過していた場合、ST107の停止後SAR計画値の算出が行われ、それに伴い、ST109の変更条件の算出が再度行われ、図9および図10で示したそれぞれの表示は、一定間隔で更新される。このように、上述したユーザが入力装置70を介して入力した内容に基づいて更新される以外に、時間の経過によって、それぞれの値が再算出される。なぜなら、上述したとおり、停止時間による撮像条件の緩和は、停止時間の長さによってリアルタイムで変化し、停止時間の長さによって計画段階より出力の高い条件で撮像が可能になるからである。
以下で、停止時間の長さの違いによって、変更可能な撮像条件が拡大することについて説明する。
図11は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が停止した直後の表示装置80の表示を説明する図である。上部にSARグラフ表示部82を、下部に変更条件表示部81を組み合わせて表示した例を示している。上部に示されたSARグラフ表示部82は、図6乃至図8と同様で、縦軸が、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフはSAR計画値(停止後SAR計画値)を示している。SARグラフ表示部82の上部には、停止時間を示す表示が示されている。図11の例では停止時間が0分であるため、表示は「00:00」となっている。
図11において、停止時刻は撮像が開始してから10分後、3つ目の撮像単位撮像単位「3000」が完了した時点である。撮像が停止した直後に、停止後SAR計画値算出部63が停止後SAR計画値を算出し(図3のST107)、それに基づき、変更条件算出部65により変更可能な撮像条件について、変更可能な範囲と、推奨条件が算出される(図3のST109)。次いで、算出した内容に基づき、変更条件表示部81に表示を行う(図3のST111)。図11は、このように算出された、撮像が停止した直後のSARグラフ表示部82および変更条件表示部81の例を示している。停止時間が0分であっても、計画段階でSAR計画値に余裕を持たせていた場合は、変更可能な撮像条件の設定範囲に一定の範囲が表示される。また、図11SARグラフ表示部82で示されるグラフは、停止時間が0分であるため、停止後SAR計画値はSAR計画値と同じ値となる。
図12は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が1分間停止した場合の表示装置80の表示を説明する図である。図11と同様に、上部にSARグラフ表示部82を、下部に変更条件表示部81を組み合わせて表示した例を示している。上部に示されたSARグラフ表示部82は、図6乃至図8と同様で、縦軸が、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフはSAR計画値を示している。1点鎖線で示されたグラフは、停止後SAR計画値のグラフである。図12に示した例では、停止時間は1分であり、SARグラフ表示部82に網掛けで表示された部分である。SARグラフ表示部82の上部には、停止時間を示す表示が示されている。図12の例では停止時間が1分であるため、表示は「01:00」となっている。
図11では、停止時間が0分であったため、SAR計画値と停止後SAR計画値が同じであったが、図12では、停止後1分が経過しているため、SAR計画値より停止後SAR計画値のほうが減少していることが示されている。この減少に伴って、変更条件表示部81の変更可能な撮像条件の設定範囲が更新される。図12の下部に示された変更条件表示部81において網掛けで表示した、撮像単位「4000」および「5000」の変更可能な撮像条件の設定範囲が、図11で示した数値より大きい値が表示されている。たとえば、図11では、撮像単位「4000」の、変更可能撮像条件はフリップ角であり、設定範囲は「120〜150」(単位は度 °)であった。一方、図12の例では、設定範囲は「120〜160」に上限値が拡大している。
同様に、撮像単位「5000」は変更可能撮像条件が繰り返し時間であり、図11では「2000〜500」(単位はミリ秒 ms)であったが、図12では、「2000〜400」に上限値が拡大している。
図13は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が2分間停止した場合の表示装置80の表示を説明する図である。図12と同様に、上部にSARグラフ表示部82を、下部に変更条件表示部81を組み合わせに表示した例を示している。上部に示されたSARグラフ表示部82は、図6乃至図8と同様で、縦軸が、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフはSAR計画値を示している。1点鎖線で示されたグラフは、停止後SAR計画値のグラフである。図13に示した例では、停止時間は2分であり、SARグラフ表示部82に網掛けで表示された部分である。SARグラフ表示部82の上部には、停止時間を示す表示が示されている。図13の例では停止時間が2分であるため、表示は「02:00」となっている。
図13では、図12よりさらに停止時間が長いため、撮像条件も図12と比較して緩和されている。たとえば、撮像単位「4000」の変更可能撮像条件であるフリップ角の設定可能範囲は、図12では、「120〜160」であったが、図13では「120〜170」に上限値が拡大している。
同様に、撮像単位「5000」は変更可能撮像条件が繰り返し時間であり、図12では「2000〜400」(単位はミリ秒 ms)であったが、図13では、「2000〜300」に上限値が拡大している。
図14は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が3分間停止した場合の表示装置80の表示を説明する図である。図12と同様に、上部にSARグラフ表示部82を、下部に変更条件表示部81を組み合わせに表示した例を示している。上部に示されたSARグラフ表示部82は、図6乃至図8と同様で、縦軸が、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフはSAR計画値を示している。1点鎖線で示されたグラフは、停止後SAR計画値のグラフである。図14に示した例では、停止時間は3分であり、SARグラフ表示部82に網掛けで表示された部分である。SARグラフ表示部82の上部には、停止時間を示す表示が示されている。図14の例では停止時間が3分であるため、表示は「03:00」となっている。
図14では、図13よりさらに停止時間が長いため、撮像条件も図13と比較して緩和されている。たとえば、撮像単位「4000」の変更可能撮像条件であるフリップ角の設定可能範囲は、図13では、「120〜170」であったが、図14では「120〜180」に上限値が拡大している。
同様に、撮像単位「5000」は変更可能撮像条件が繰り返し時間であり、図13では「2000〜300」(単位はミリ秒 ms)であったが、図14では、「2000〜200」に上限値が拡大している。
図11乃至図14の例では、変更条件表示部81に表示された撮像条件を変更しない場合(図3ST113のNo)に、所定の時間(図11乃至図14の例では1分間)が経過した(図3ST123のYes)場合の処理を示している。
以下では、図14で停止時間が3分経過し、変更条件表示部81に表示された撮像条件を変更する場合(図3ST113Yes)の場合について説明する。
図15は、実施形態に係るMRI装置1において撮像が3分間停止した場合の撮像条件を変更した場合の表示装置80の表示を説明する図である。
図15も、図11乃至図14と同様に、上部にSARグラフ表示部82を、下部に変更条件表示部81を組み合わせて表示した例を示している。上部に示されたSARグラフ表示部82は、図6乃至図8と同様で、縦軸が、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。実線で示されたグラフは、すでに撮像が完了した撮像単位について算出されたSAR実測値のグラフである。その後破線で示されたグラフはSAR計画値を示している。1点鎖線で示されたグラフは、停止後SAR計画値のグラフである。停止時間はSARグラフ表示部82に網掛けで表示された部分である。
図15は、下部に示された変更条件表示部81の、撮像単位「4000」の撮像条件を変更する例を示している。撮像単位「4000」変更可能な撮像条件はフリップ角であり、設定範囲は「120〜180」である。図14の例で示されるように、もとの設定は「120」である。この範囲から、ユーザが「150」の設定を選択した場合、次の撮像単位である撮像単位「5000」の設定範囲が、変更条件算出部65によって再計算され、図14で示された「2000〜200」から「2000〜300」に更新される。また、図15の上部に示されたSARグラフ表示部82には、2点鎖線で示された変更後のSAR計画値が表示される。
このように、計画段階であらかじめ設定されていない停止時間が発生した時に、変更可能な撮像条件を一覧で表示することで、SAR上限値以下の範囲で撮像条件を容易に変えることができる。また、撮像が停止したことにより、撮像条件を計画段階より高出力の設定に変更可能な範囲をリアルタイムで更新し、リアルタイムで表示される変更可能な範囲を確認しながら、撮像条件を変更することができるため、画質や出力を最大限高めることができる。さらに、撮像単位毎に、決められた撮像条件のみが提示され、ボタン押下や簡単な入力のみで条件を変えることができるため、時間の短縮にもつながる。
(第2の実施形態)
図16は、実施形態に係るMRI装置1の第2の実施形態の動作の一例を示すフローチャートである。第2の実施形態は、被検体毎の撮像条件の緩和が発生した場合について示している。第1の実施形態の実施形態と同じステップは、第1の実施形態におけるフローチャートを説明する図9と同じ番号で表している。
ST101では、SAR計画値算出部62が、SAR計画値を撮像条件記憶部91に格納された撮像条件に基づいて算出する。
ST151では、計画した撮像を実行する前に被検体Pに対してプレスキャンを行い、SAR計画値を補正するためのSAR実測値を取得する。SAR実測値は、SAR測定器54により測定され、SAR実測値取得部61により取得される。
ST153では、取得したSAR実測値をもとに、補正後SAR計画値算出部64により、SAR計画値を補正した補正後SAR計画値が算出される。
図17は、実施形態に係るMRI装置1のSAR計画値と補正後のSAR計画値について説明する図である。図17(a)はSAR計画値を示し、図17(b)は補正後のSAR計画値を示している。図17(b)で示した補正後SAR計画値は、被検体のRFエネルギー吸収量が予測SAR計画値を算出する際に使用されたRFエネルギー吸収量より約20%少なかった場合の例を示している。たとえば、撮像単位「5000」の6分平均SARは、図17の(a)では「2.00」であったが、図17の(b)では20%低い「1.60」となっている。このように、予測SAR計画値は被検体毎に測定されたSAR実測値によって補正される。
図18は、実施形態に係るMRI装置1の補正後のSAR計画値を説明する図である。縦軸は6分平均SAR値、横軸は時間を示している。図18のグラフにおいて実線で示されたのは、図17(a)のSAR計画値であり、図18のグラフにおいて破線で示されたのは、図17(b)の補正後SAR計画値である。
図18の矢印Aが示すように、破線で示した補正後SAR計画値は、実線で示したSAR計画値のグラフよりSARが低くいことがわかる。このように、実測値に基づく補正後のSAR計画値のほうが、予測SAR計画値より低くなる場合、それぞれの撮像単位の撮像条件を計画時より高出力条件で実施することができるようになる。このことを、被検体毎の撮像条件の緩和という。
このように、被検体によってSARが異なることによって撮像条件が緩和された場合、計画した撮像を実行する前に、それぞれの撮像単位における撮像条件を見直し、最適な条件で撮像を行うことが可能となる。
図16のST109乃至ST121のステップは、第1の実施形態と同じである。すなわち、ST109では、変更条件算出部65が、変更可能な撮像条件および推奨条件を算出され、ST111では、変更条件表示部81に変更条件算出部65で算出された数値が表示される。その後、ST113で撮像条件が変更される場合は、ST115で条件更新部66が撮像条件記憶部91の撮像条件を入力された内容で更新し、ST117では、SAR計画値算出部62が変更後の撮像条件でSAR計画値を算出され、ST119では、変更条件算出部65が変更可能な撮像条件および推奨条件を再算出し、ST121ではそれらの変更をもとに変更条件表示部81の表示が更新される。
なお、ST117におけるSAR計画値の算出は、第2の実施形態においては、補正後SAR計画値算出部64が行ってもよい。また、一旦SAR実測値取得部61により補正値が取得されたら、SAR計画値算出部62が補正値を使用して、SAR計画値を算出してもよい。
図19乃至図20は、第2の実施形態における変更条件表示部81による撮像条件の提示や、それに基づいて撮像条件を変更した場合について説明している。
図19は、実施形態に係るMRI装置1において補正後のSAR計画値算出後の表示装置80の表示を説明する図である。縦軸は、6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。図19は、補正後SAR計画値算出部64が補正後のSAR計画値を算出した場合(図16のST153)の変更条件表示部81の表示を示している。図19の上部に示されたSARグラフ表示部82に、実線で示されたグラフは、SAR計画値のグラフであり、破線で示されたグラフは、補正後SAR計画値算出部64で算出された値に基づき表示されたグラフである。
図19において網掛けで表示された箇所は、被検体毎の撮像条件の緩和により、撮像条件が変更可能となった箇所である。たとえば、撮像単位「1000」の変更可能な撮像条件は、フリップ角であり、設定範囲が「80〜150」であることが示されている。
図20は、実施形態に係るMRI装置1において撮像条件を変更した場合の表示装置80の表示を説明する図である。図20は、図19に示された変更可能な撮像条件のうち、撮像単位「4000」の撮像条件を変更する場合の例を説明している。図19と同様に、縦軸は6分平均SAR(W/kg)を、横軸は時間(分)を示している。図20の上部に示されたSARグラフ表示部82に、実線で示されたグラフは補正後SAR計画値のグラフであり、破線で示されたグラフは、撮像条件が変更され、SAR計画値算出部62で再度算出された値に基づき表示されたグラフである。
図20の例では、図20から数値が変更された箇所を網掛けで表示している。図20の例では、撮像単位「4000」変更可能な撮像条件はフリップ角であり、設定範囲は「120〜175」である。図20では、設定値を最大値である「175」に変更した場合に、変更条件算出部65により撮像単位「5000」と「6000」の設定範囲が再計算されて、範囲が縮小された例が示されている。このように、先に実行される撮像単位の撮像条件について、変更条件表示部81に示された最大値を選択すると、その後に実行される撮像単位の変更可能な撮像条件の設定範囲は狭くなる。同様に、後に実行される撮像単位について撮像条件を変更した場合も、前に実行される撮像単位の変更可能な撮像条件の設定範囲は狭くなる。
図16のST155では、撮像条件をさらに変更するかが判断される。撮像条件の変更を続けて行う場合は、ST115にもどり、上記のステップを繰り返す。一方、撮像条件の変更をやめる場合は、上記ステップにより更新された撮像条件で撮像を実行することができる。
上述したように、被検体毎にSARが異なることから撮像条件が緩和された場合に、変更可能な撮像条件を一覧で表示し、簡単に撮像条件を変更できるため、ユーザの負担は少なくなる。また、短時間で撮像条件を変更できることから、検査時間の短縮にもつながる。
なお、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせることもできる。たとえば、第2の実施形態で、補正後のSAR計画値に基づき撮像条件の見直しを行っている間も、第1の実施形態で示した停止時間による撮像条件の緩和は発生している。また、第1の実施形態は撮像中の実施形態であるが、第2の実施形態は撮像開始前の実施形態である。したがって、第2の実施形態に基づく処理により、SAR計画値を補正後のSAR計画値で撮像条件を補正した後、撮像を開始し、撮像停止が発生した場合は、第1の実施形態に基づく処理により、停止後のSAR計画値を算出し、撮像条件を変更することもできる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。