JP6214510B2 - 化学蓄熱材及び化学蓄熱材形成用組成物 - Google Patents
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Description
このような状況に鑑みて、蓄熱技術の中でも、長時間の蓄熱が可能で、且つ、蓄熱密度が高いことから、熱の輸送を容易にすることができる化学蓄熱材に注目が集まっている。
本実施形態に係る化学蓄熱材は、第2族元素化合物と、シリコーンポリマーと、を含有する。
水和することによって発熱し、水和した後に、逆に脱水することによって吸熱する第2族元素化合物としては、表1に記載した化合物を例示することができる。表1の「蓄熱操作温度」は、示された化合物が発熱反応している際の温度であり、「蓄熱密度」は、示された化合物の単位体積当たりの放出される熱エネルギー量である。
また、化学蓄熱材におけるシリコーンポリマーの含有量は、12〜83質量%であることが好ましい。化学蓄熱材におけるシリコーンポリマーの含有量が、12質量%未満であると、化学蓄熱材が崩壊しやすくなってしまう傾向にあり、83質量%よりも多いと、化学蓄熱材の放出できる熱量が少なくなってしまう傾向にある。
化学蓄熱材は、必要に応じて第2族元素化合物やシリコーンポリマー以外の成分を含有してもよい。
また、化学蓄熱材は、後述する化学蓄熱材形成用組成物を原料にして、任意の形状に成形することが可能である。例えば、化学蓄熱材は熱交換器の熱交換面に形成してもよいし、ペレット状に成形してもよい。化学蓄熱材から放出された熱は、例えば、熱交換器によって外部に移動させて使用することができる。
まず、化学蓄熱材からの放熱が行われる放熱工程においては、化学蓄熱材に水蒸気を接触させる。この際には、化学蓄熱材の含有する酸化カルシウム等の第2族元素化合物のモル量の1.2倍以下のモル量の水(水蒸気)を接触させるのが好ましい。化学蓄熱材に接触した水は、化学蓄熱材に形成された細孔内に浸透して、化学蓄熱材の内部でも良好に熱が発生する。化学蓄熱材に接触させる水が多すぎる場合、化学蓄熱材の形状の維持が難しくなる。化学蓄熱材から発生した熱は、熱交換器の熱媒体等によって回収される。化学蓄熱材に水蒸気を接触させる方法は限定されず、化学蓄熱材への水蒸気の噴霧、化学蓄熱材の液体水への浸漬、化学蓄熱材への液体水の添加(滴下、散布等)のいずれであってもよい。なかでも、化学蓄熱材へ均一に接触させやすいことから、水蒸気の噴霧によって化学蓄熱材に水蒸気を接触させることが好ましい。
本実施形態に係る化学蓄熱材は、多孔質であるので、それ自体が、体積の増大と減少によって生じる形状の歪を吸収することができる。従って、本実施形態に係る化学蓄熱材は、放熱と蓄熱を繰り返しても崩壊し難く、微粉化もされ難い。
本実施形態に係る化学蓄熱材形成用組成物は、第2族元素化合物と、アルコキシシラン、その加水分解物及びその縮合物からなる群より選択される少なくとも一種と、樹脂と、を含有する。本実施形態に係る化学蓄熱材形成用組成物を用いて、上記の化学蓄熱材が形成される。
しかし、化学蓄熱材形成用組成物の含有する第2族元素化合物は、水和した第2族元素化合物を用いることが好ましい。化学蓄熱材形成用組成物に水和した第2族元素化合物を含有させれば、後述する化学蓄熱材の形成における焼成工程において、第2族元素化合物は脱水して体積が減少する。従って、このように、水和した第2族元素化合物を含有させた化学蓄熱材形成用組成物を用いて形成した化学蓄熱材であれば、体積が膨張したとしても歪は生じ難いので、崩壊し難くなる傾向にある。
アルコキシシラン等としては、例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルアルコキシシラン、及びこれらの部分縮合物等を挙げることができる。より具体的には、テトラアルキルシランの部分縮合物としては、MKCシリケートMS51(三菱化学株式会社製テトラアルコキシシランの縮合物)、エチルシリケート40(コルコート株式会社製テトラエトキシシランの縮合物)等を挙げることができる。
化学蓄熱材形成用組成物の含有する樹脂としては、上記の役割を果たすものであれば限定されず、天然樹脂と合成樹脂のいずれであってもよく、セルロース等の多糖類、たんぱく質、ポリフェノール、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等から一種を選択して、もしくは複数種を組み合わせて用いることができる。化学蓄熱材形成用組成物の含有する樹脂としては、第2族元素化合物及びアルコキシシラン等との親和性の観点から、水酸基含有樹脂であることが好ましい。水酸基含有樹脂としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、水酸基含有アクリル樹脂、ブチラール樹脂等を挙げることができるが、化学蓄熱材の形状を安定させることができることから、水酸基含有アクリル樹脂又はブチラール樹脂を含有させるのが好ましい。
化学蓄熱材形成用組成物の含有する樹脂としては、体積平均分子量が100〜5,000,000であることが好ましい。化学蓄熱材形成用組成物の含有する樹脂の体積平均分子量は、ポリスチレン標準サンプル基準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定することができる。
なお、化学蓄熱材形成用組成物の含有する樹脂は、後述する化学蓄熱材の形成方法の焼成工程において除去される。
炭素からなる物質としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノファイバー等を挙げることができ、炭化水素としては、パラフィン、オレフィン、シクロアルカン等を挙げることができる。
なお、化学蓄熱材形成用組成物の含有する炭素からなる物質や炭化水素は、後述する化学蓄熱材の形成方法の焼成工程において除去される。
本実施形態に係る化学蓄熱材の形成方法は、塗布工程と、焼成工程と、を含む。
塗布工程では、上記の化学蓄熱材形成用組成物を金属基材表面に塗布する。化学蓄熱材形成用組成物を塗布する金属材料は、特に限定されない。金属材料としては、熱交換器の熱交換面に用いられる金属材料が好ましく、例えば、アルミニウム、銅、鋼材、ステンレス等が挙げられる。塗布工程において、塗布される、化学蓄熱材形成用組成物の量は15,000〜60,000g/m2であることが好ましい。化学蓄熱材形成用組成物の量が、15,000g/m2未満だと、形成される化学蓄熱材から放出できる熱量が少なくなる傾向にあり、60,000g/m2よりも多いと、形成される化学蓄熱材が崩壊しやすくなる傾向にある。
化学蓄熱材形成用組成物は、焼成工程において焼成されることで、樹脂や、炭素からなる物質、炭化水素は気化されて、化学蓄熱材からは除去される。化学蓄熱材は、樹脂や、炭素からなる物質、炭化水素等が除去されることにより形成される細孔を有する。
表2に示す量の、ブチラール樹脂(株式会社クラレ製、商品名「MowitalB20H」)とエチルシリケートの低縮合物(コルコート株式会社製、商品名「エチルシリケート28」)と、有機溶媒(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」、ポリエチレングリコールメチルエーテル)と、を混合し、エチルシリケート樹脂を得た。このエチルシリケート樹脂に、表2に示す量の水酸化カルシウムとカーボンブラック(東海カーボン株式会社製、商品名「カーボンブラック Aqua−Black(登録商標) 162」)を加えて、よく混合し、化学蓄熱材形成用組成物を得た。この化学蓄熱材形成用組成物をペレット状(略球状、直径約2cm)に成形した。この成形した化学蓄熱材形成用組成物を電気炉に入れて1000℃で1時間焼成し、ペレット状の化学蓄熱材を得た。なお、水酸化カルシウムは焼成されることで脱水し、酸化カルシウムに変換される。
化学蓄熱材形成用組成物の成分を表2に示した量に変更した以外は実施例1と同様の工程により、化学蓄熱材形成用組成物及び化学蓄熱材を得た。
化学蓄熱材の含有する、カルシウム原子、ケイ素原子及び酸素原子の合計中における、それぞれの原子の含有量(質量%)を「化学蓄熱材中の原子含有量」として表2に示した。「化学蓄熱材中の原子含有量」は、化学蓄熱材を蛍光X線分析装置(XRF)によって元素分析することで求めた。なお、実施例1〜4の化学蓄熱材は、酸化カルシウム及びシリコーンポリマーのみを含有しているとみなすことができる。表2に示した、化学蓄熱材中の、酸化カルシウム及びシリコーンポリマーの含有量は、「化学蓄熱材中の原子含有量」から、酸化カルシウムの分子量等を用いて求めた。
電気炉にて焼成した直後の化学蓄熱材の形状(表2の「焼成後」)、及び、焼成後に化学蓄熱材の含有する酸化カルシウムのモル当量以上の水を霧吹きでかけて発熱させた後の化学蓄熱材の形状(表2の「発熱後」)について、目視にて評価した。ペレットの形状を保ち、ひび割れも生じない場合には「A」、微細なひび割れが生じるが、ペレットの形状を保っていた場合には「B」、著しい割れが生じた場合や、粉体状になってしまった場合には「C」とした。結果を表2に示す。比較例1に係る化学蓄熱材は、発熱後に形状が崩れペレットの形状を維持することができなかった。従って、表2においては、比較例1に係る化学蓄熱材の発熱後の形状評価を「評価不可」とした。
実施例のペレット状の化学蓄熱材について、発熱量を測定した。発熱量の測定は下記の手順で行った。
まず、断熱材によって覆われた容器に所定量の水を入れ、その水に実施例の化学蓄熱材を所定量(例えば5g)投入した。容器中の水はマグネチックスターラーによって攪拌し、その温度の上昇をシース型熱電対によって追跡した。そして、実施例の化学蓄熱材が投入された水の、シース型熱電対によって測定される温度は大きく上昇した。なお、化学蓄熱材の発熱量Q(単位:J)は、下記の式(1)によって求めることができる。式(1)中のΔTは、化学蓄熱材の投入後の水の最高温度から、化学蓄熱材を投入する直前の水の温度を差し引いた値(単位:K)である。また、Wは、カップ内の水の質量(単位:g)であり、Cpは水の比熱(J/g・K)である。
[数1]
Q=ΔT×W×Cp ・・・(1)
これらの結果から、第2族元素化合物と、アルコキシシラン、その加水分解物及びその縮合物からなる群より選択される少なくとも一種と、樹脂と、を含有する化学蓄熱材形成用組成物を用いて形成された化学蓄熱材は、第2族元素化合物からなる粒子同士が結着することで、微粉化され難いことが確認された。
なお、第2族元素化合物と、アルコキシシラン、その加水分解物及びその縮合物からなる群より選択される少なくとも一種と、樹脂と、を含有する化学蓄熱材形成用組成物を用いて形成された化学蓄熱材は、上記のように粒子同士が結着していることから、粘土鉱物を含有するペレット状の化学蓄熱材(例えば、上記の特許文献1に記載された化学蓄熱材)に比べて、ペレットの内部まで水が浸漬しやすいと考えられる。内部まで水が浸漬しやすい、実施例の化学蓄熱材は、発熱性能(上記の「発熱性能評価」において、水の温度を上昇させる能力)が高いと予想される。
Claims (9)
- 第2族元素化合物と、
アルコキシシラン、その加水分解物及びその縮合物からなる群より選択される少なくとも一種が縮合したシリコーンポリマーと、を含有する化学蓄熱材。 - 前記第2族元素化合物として、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を含有する請求項1に記載の化学蓄熱材。
- 前記第2族元素化合物は、酸化カルシウムであり、
化学蓄熱材の含有する、カルシウム原子、ケイ素原子及び酸素原子の合計中において、カルシウム原子の含有量は12〜65質量%であり、ケイ素原子の含有量は6〜39質量%であり、酸素原子の含有量は29〜49質量%である請求項1に記載の化学蓄熱材。 - 第2族元素化合物と、
アルコキシシラン、その加水分解物及びその縮合物からなる群より選択される少なくとも一種と、
樹脂と、を含有する化学蓄熱材形成用組成物。 - 更に、炭素からなる物質及び炭化水素のうち少なくとも一方を含有する請求項4に記載の化学蓄熱材形成用組成物。
- 前記樹脂として、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、水酸基含有アクリル樹脂及びブチラール樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含有する請求項4又は5に記載の化学蓄熱材形成用組成物。
- 前記第2族元素化合物として、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を含有する請求項4から6のいずれかに記載の化学蓄熱材形成用組成物。
- 前記アルコキシシランは、トリエトキシシランである請求項4から7のいずれかに記載の化学蓄熱材形成用組成物。
- 請求項4から8のいずれかに記載の化学蓄熱材形成用組成物を金属基材表面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後に、前記金属基材表面の化学蓄熱材形成用組成物を680℃〜1200℃で30〜120分間焼成する焼成工程と、を含む化学蓄熱材の形成方法。
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