以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
(特徴1) ヒートポンプ経路内に設けられており、暖房用熱媒を循環させる第2の循環ポンプをさらに備えることが好ましい。制御装置は、第2の循環ポンプを作動させられない場合に、気温と暖房用熱媒の温度の一方又は双方に基づいて、特定運転を実行することが好ましい。
この構成によると、第2の循環ポンプを作動させられない場合であっても、特定運転を実行することにより、ヒートポンプ経路内及び暖房経路内の暖房用熱媒を循環させることができる。また、第2の循環ポンプのほかに、ヒートポンプ経路内の暖房用熱媒を循環させる目的でポンプを備える必要もないため、暖房装置の構成も比較的簡易になる。従って、上記の暖房装置によると、比較的簡易な構成によって、暖房用熱媒が循環する経路の凍結破損を適切に抑制することができる。
(特徴2) 暖房装置は、暖房経路のうちの暖房機の下流側と、暖房経路のうちの暖房機の上流側とを接続するバイパス路と、バイパス路に設けられて、開度を調整することによって、タンクに供給される暖房用熱媒の流量とバイパス路を通過する暖房用熱媒の流量の割合を変化させる流量調整機構と、をさらに備えることが好ましい。制御装置は、特定運転を実行する場合に、気温と暖房用熱媒の温度の一方又は双方に基づいて流量調整機構の開度を調整することが好ましい。
この構成によると、流量調整機構の開度を変えることにより、特定運転が実行される場合におけるタンクに供給される暖房用熱媒の流量(即ち、ヒートポンプ経路を通過する暖房用熱媒の流量)を変化させることができる。そのため、この構成によると、暖房装置は、特定運転を実行する場合において、ヒートポンプ経路を通過する暖房用熱媒の流量を、気温と暖房用熱媒の温度の一方又は双方に基づいて適切に設定することができる。
(特徴3) 暖房装置は、燃料を燃焼させた熱によって、暖房機の上流側の暖房経路内の暖房用熱媒を加熱する熱源機をさらに備えることが好ましい。制御装置は、特定運転を実行する場合に、気温と暖房用熱媒の温度の一方又は双方に基づいて、熱源機を作動させることが好ましい。
この構成によると、特定運転を実行する場合に熱源機を作動させることによって、ヒートポンプ経路内及び暖房経路内に高温の暖房用熱媒を循環させることができる。暖房用熱媒が循環する経路の凍結破損をより適切に抑制することができる。
(実施例)
図1に示すように、本実施例に係る暖房システム2は、HP(ヒートポンプ)ユニット10と、タンクユニット20と、暖房ユニット40と、制御装置70とを備えている。
HPユニット10は、ヒートポンプ12と、HP循環ポンプ14と、HP往き管16と、HP戻り管18と、タンク上部管80とを備える。なお、本実施例の暖房システム2では、HPユニット10のうち、ヒートポンプ12と、HP循環ポンプ14と、HP往き管16の一部と、HP戻り管18の一部とは屋外に設置されることが想定されている。
ヒートポンプ12は、HP往き管16から供給される暖房用熱媒と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器(図示省略)を備える。本実施例では、暖房用熱媒にエチレングリコール等を含む不凍液を用いている。他の例では、暖房用熱媒に水を用いてもよい。熱交換器は、暖房用熱媒が流れる熱媒管と、冷媒が流れる冷媒管とを備える(図示省略)。熱媒管の両端部は、それぞれ、HP往き管16と、HP戻り管18に接続している。冷媒管内を流れる冷媒には、二酸化炭素、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等のガスを用いることができる。本実施例では、HP往き管16を流れてきた暖房用熱媒は、熱交換器の熱媒管を通過する間に冷媒管内の冷媒(高温高圧)と熱交換を行う(冷媒から熱を受け取る)ことによって加熱される。熱交換を終えた高温の暖房用熱媒は、HP戻り管18へと送り出される。熱媒管内の暖房用熱媒と、冷媒管内の冷媒は、互いに逆方向に流れる(カウンターフロー)ことが、効率よく熱交換を行う上では好ましい。また、ヒートポンプ12は、温度センサ15を備えている。温度センサ15は、外気温を測定する。
HP往き管16は、一端がタンク22(後述)の下部と接続し、他端がヒートポンプ12の熱媒管の入口側と接続する。HP往き管16は、タンク22の下部の暖房用熱媒を、ヒートポンプ12の熱媒管に送り出す。HP往き管16は、HP往き管16を流れる暖房用熱媒の温度を測定する温度センサ39を備える。
HP戻り管18は、一端がヒートポンプ12の熱媒管の出口側と接続し、他端がタンク上部管80の一端及び暖房往き管42の一端と接続する。また、HP戻り管18は、HP戻り管18を流れる暖房用熱媒の温度を測定する温度センサ38を備える。タンク上部管80の他端はタンク22の上部と接続する。タンク上部管80には、タンク上部管80を開閉する開閉弁82が介装されている。
図1の例では、HP循環ポンプ14は、ヒートポンプ12に備えられている。HP循環ポンプ14を動作させることにより、HP往き管16とHP戻り管18とタンク上部管80とを介して、ヒートポンプ12とタンク22との間で暖房用熱媒が循環する。
タンクユニット20は、タンク22と三個の温度センサ24、26、28とを備える。タンク22は、ヒートポンプ12によって加熱された暖房用熱媒を貯える。タンク22の容量は、例えば30Lである。三個の温度センサ24、26、28は、タンク22の高さ方向に沿って下からこの順で設けられている。各温度センサ24、26、28は、それぞれ、タンク22内の暖房用熱媒の温度を測定する。
暖房ユニット40は、暖房往き管42と、暖房戻り管44と、暖房循環ポンプ46と、バーナ48と、暖房機50と、バイパス路60と、混合弁62とを備える。
暖房往き管42は、一端がタンク上部管80の端部及びHP戻り管18の端部と接続し、他端が暖房機50と接続する。暖房往き管42は、タンク22の上部から送り出される暖房用熱媒を、暖房機50に送り出す。暖房往き管42は、さらに、暖房往き管42内を流れる暖房用熱媒の温度を測定する温度センサ52、54、56を備える。
暖房機50は、暖房往き管42から供給される暖房用熱媒からの放熱を利用して暖房を行う。放熱により、暖房用熱媒の温度は低くなる。放熱後の暖房用熱媒は、暖房戻り管44に送り出される。
バーナ48は、都市ガスやLPガス等の燃料を燃焼させ、その燃焼熱によって熱媒往き管42内を流れる暖房用熱媒を加熱する。バーナ48は、暖房往き管42内の暖房用熱媒が、暖房機50で必要とされる温度に満たない場合に動作する補助熱源である。
暖房戻り管44は、一端が暖房機50と接続し、他端がタンク22の下部と接続する。暖房戻り管44は、暖房機50から送り出される放熱後の暖房用熱媒を、タンク22に送り出す。暖房戻り管44は、さらに、暖房戻り管44内を流れる暖房用熱媒(放熱後)の温度を測定する温度センサ58を備える。
暖房循環ポンプ46は、暖房往き管42の途中に設けられている。暖房循環ポンプ46を動作させることにより、暖房往き管42と暖房戻り管44とを介して暖房用熱媒が循環する。
バイパス路60は、暖房往き管42と暖房戻り管44との間に設けられている。バイパス路60は、一端が暖房往き管42と接続し、他端が暖房戻り管44と接続している。バイパス路60を備えることにより、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒の一部又は全部を、タンク22を経由することなく、暖房往き管42に戻すことができる。
また、暖房戻り管44とバイパス路60とが接続する部分には、混合弁62が設けられている。混合弁62の開度を調整することによって、タンク22に戻される暖房用熱媒の流量とバイパス路60を通過する暖房用熱媒の流量の割合を変化させることができる。本実施例では、混合弁62を全閉すると、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒の全量がバイパス路60を通過する。混合弁62を全開すると、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒の全量がタンク22に供給される。
混合弁62の開度を調整することにより、例えば、暖房往き管42を通って暖房機50に送られる暖房用熱媒の温度が高過ぎるときに、暖房戻り管44内の放熱後の暖房用熱媒を、バイパス路60を介して暖房往き管42内の暖房用熱媒に合流させて、暖房機50に送られる暖房用熱媒の温度を低下させることができる。また、例えば、タンク22内に高温の暖房用熱媒が十分に貯められていない状態で暖房運転を行う場合に、暖房戻り管44内の放熱後の暖房用熱媒をタンク22に戻さずに、バイパス路60を介して暖房往き管42内の暖房用熱媒に合流させて、タンク22内の暖房用熱媒の温度の低下を抑制することもできる。
制御装置70は、HPユニット10、タンクユニット20、及び、暖房ユニット40と電気的に接続されており、各ユニット10、20、40の各構成要素の動作を制御する。制御装置70は、蓄熱運転、暖房運転、凍結防止運転等の各種運転を本実施例の暖房システム2に実行させる。
通常電力系統72と融雪電力系統74はいずれも電力会社が提供する。通常電力系統72は、常時利用可能な電力系統である。一方、融雪電力系統74は、寒冷地において、主に冬期(10月〜5月)の間に限って利用可能な特別の電力系統である。なお、融雪電力系統74が利用不可能な期間(6月〜9月)には、電力会社が融雪電力系統74への電力供給を停止する。融雪電力系統74からの電力の利用は、暖房目的のものに限られるという規則が定められている。さらに、融雪電力系統74を利用可能な期間においては、毎日、所定の時間帯(例えば毎日16時〜21時)の間に、電力を遮断する遮断期間を設ける必要があるという規則も定められている。遮断期間は、毎日、所定の時間帯の間(例えば毎日16時〜21時の間)に、合計で2時間設ける必要がある。遮断期間は、利用者が事前に設定しておく。従って、利用者は、例えば、毎日16時〜18時の2時間を遮断期間として設定することができる。また、他の例では、毎日16時〜21時の間に、30分間の遮断期間を断続的に4回設けてもよい。毎日、16時〜21時の間に、合計で2時間の遮断期間を設けることができれば、遮断期間の設定方法は任意とすることができる。
図1に示すように、融雪電力系統74はタイマ76を備えている。タイマ76は、融雪電力系統74を利用可能な期間(上記の例における10月〜5月)の間に動作する。融雪電力系統74を利用可能な期間中に、タイマ76が、遮断期間であることを示す場合、ブレーカ(図示省略)によって電力供給が遮断されて、融雪電力系統74が一時的に利用不可能となる(遮断される)。
本実施例では、暖房システム2の各要素のうち、ヒートポンプ12、HP循環ポンプ14、混合弁62、及び、開閉弁82が、融雪電力系統74から電力供給を受けて動作する。そのため、融雪電力系統74の遮断期間が開始すると、ヒートポンプ12、HP循環ポンプ14、混合弁62、及び、開閉弁82は動作できなくなる。なお、その他の要素である制御装置70、暖房循環ポンプ46、バーナ48、及び、暖房機50は、通常電力系統72から電力供給を受けて動作する。そのため、制御装置70、暖房循環ポンプ46、バーナ48、及び、暖房機50は、常時動作可能である。
次いで、本実施例の暖房システム2の動作について説明する。暖房システム2は、融雪電力系統74の利用可能期間と、融雪電力系統74の遮断期間とで、異なる動作を行う。以下、融雪電力系統74の利用可能期間と遮断期間とで場合を分けて説明する。
(融雪電力系統74の利用可能期間中の動作)
融雪電力系統74の利用可能期間中、暖房システム2の制御装置70は、凍結防止運転と、蓄熱運転と、暖房運転とを実行することができる。また、暖房システム2の制御装置70は、融雪電力系統74の遮断期間開始5分前になると、図2に示す遮断直前処理を行う。
融雪電力系統74の利用可能期間中における凍結防止運転は、ヒートポンプ12とタンク22との間で暖房用熱媒を循環させることにより、ヒートポンプ12とHP往き管16とHP戻り管18の凍結破損を防止するための運転である。この際、開閉弁82は開かれている。融雪電力系統74の利用可能期間中に凍結防止運転が指示されると、制御装置70は、ヒートポンプ12及びHP循環ポンプ14を作動させる。HP循環ポンプ14が動作することにより、HP往き管16とHP戻り管18とタンク上部管80とを介して、ヒートポンプ12とタンク22との間で暖房用熱媒が循環する。タンク22内に比較的高温の暖房用熱媒が貯められている場合には、ヒートポンプ12とHP往き管16とHP戻り管18とに比較的高温の暖房用熱媒が供給されるため、ヒートポンプ12とHP往き管16とHP戻り管18の凍結破損が適切に抑制される。
なお、凍結防止運転が指示された際に、タンク22内に高温の暖房用熱媒が貯められていない場合には、制御装置70は、HP循環ポンプ14とともに、ヒートポンプ12を作動させる。即ち、制御装置70は、蓄熱運転を行う。蓄熱運転は、ヒートポンプ12で生成した熱により、タンク22内の暖房用熱媒を加熱する運転である。これにより、HP往き管16からヒートポンプ12に供給される暖房用熱媒は、ヒートポンプ12で生成された熱によって加熱され、HP戻り管18及びタンク上部管80を通ってタンク22上部に戻される。これにより、タンク22に高温の暖房用熱媒が貯められる。タンク22の上部には、高温の暖房用熱媒の層が形成され、下部には、低温の暖房用熱媒の層が形成される。
この蓄熱運転が行われると、タンク22内に比較的高温の暖房用熱媒が貯められるようになり、その結果、ヒートポンプ12とHP往き管16とHP戻り管18とに比較的高温の暖房用熱媒が供給されるようになる。従って、ヒートポンプ12とHP往き管16とHP戻り管18の凍結破損が適切に抑制される。なお、本実施例では、凍結防止運転が指示されていない場合であっても、制御装置70は、蓄熱運転を単独で行ってもよい。
また、凍結防止運転が指示された際に、暖房運転が行われている間には、上記の凍結防止運転とは異なる運転が行われる。暖房運転は、暖房機50を作動させて居室を暖房する運転である。融雪電力系統74の利用可能期間中に、暖房運転が実行されると、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とともに、ヒートポンプ12及びHP循環ポンプ14を作動させる。この際、開閉弁82は開かれる(変形例では、閉じられていてもよい)。これにより、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、HP戻り管18、暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、タンク22、の順に暖房用熱媒が循環する。ヒートポンプ12で加熱された後の暖房用熱媒が、HP戻り管18及び暖房往き管42を経由して暖房機50に供給される。暖房機50は、暖房用熱媒の熱を利用して居室を暖房する。なお、開閉弁82は開かれているが、暖房戻り管44からタンク22下部に暖房用熱媒が流入しているため、HP戻り管18を流れる暖房用熱媒は、ごく一部を除き、タンク上部管80からタンク22上部に戻されることはない。暖房運転を行う間、制御装置70は、暖房機50に供給される暖房用熱媒の温度(即ち、温度センサ56で検出される温度)が所定の設定温度に保たれるように、ヒートポンプ12を作動させる。なお、制御装置70は、暖房機50に供給される暖房用熱媒の温度が十分でない場合には、バーナ48を作動させることができる。また、制御装置70は、暖房機50に供給される暖房用熱媒の温度が十分でない場合には、混合弁62を開いて暖房往き管44を流れる暖房用熱媒のうちの少なくとも一部がバイパス路60を通過するようにして、タンク22に供給される暖房用熱媒の流量の割合を減らすこともできる。また、制御装置70は、暖房機50に供給される暖房用熱媒の温度が高すぎる場合には、混合弁62の開度を小さくして、暖房往き管44を流れる暖房用熱媒のうちタンク22に供給される暖房用熱媒の流量の割合を増やすこともできる。
この暖房運転が行われる場合も、ヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18内に十分に暖房用熱媒を循環させることができる。従って、ヒートポンプ12、HP往き管16及びHP戻り管18の凍結破損を適切に抑制することができる。なお、本実施例では、凍結防止運転が指示されていない場合であっても、制御装置70は、暖房運転を単独で行ってもよい。
図2の遮断直前処理は、融雪電力系統74の遮断後の暖房運転及び凍結防止運転のために、融雪電力系統74の遮断前に開閉弁82及び混合弁62を動作させておく処理である。制御装置70は、融雪電力系統74の遮断期間開始5分前になることを常時監視しており、融雪電力系統74の遮断期間開始5分前になる場合に、図2の遮断直前処理を開始する。まずS10では、制御装置70は、開閉弁82を閉じる。
次いで、S12、S16、S20では、制御装置70は、外気温が、予め定められたいずれの温度範囲に属するのかを判断する。ここで、外気温とは、ヒートポンプ12に備えられている温度センサ15が測定する気温のことを言う。
(I)外気温が−9℃よりも高い場合、制御装置70は、S12でYESと判断し、S14に進む。S14では、制御装置70は、混合弁62を全閉する。これにより、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒の全量がバイパス路60を通過するようになる。即ち、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、及び、HP戻り管18には暖房用熱媒が供給されなくなる。外気温が−9℃よりも高い場合(S12でYESの場合)には、遮断期間中にヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18が凍結破損する可能性が少ないためである。S14を終えると、図2の遮断直前処理が終了する。
(II)外気温が−12℃よりも高く−9℃以下である場合、制御装置70は、S16でYESと判断し、S18に進む。S18では、制御装置70は、混合弁62を小開する。これにより、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒のうちの多くがバイパス路60を通過し、残りの一部がタンク22に供給されるようになる。即ち、一部の暖房用熱媒が、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、及び、HP戻り管18に供給されるようになる。外気温が−12℃よりも高く−9℃以下である場合には、遮断期間中にヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18が凍結破損する可能性があるためである。S18を終えると、図2の遮断直前処理が終了する。
(III)外気温が−15℃よりも高く−12℃以下である場合、制御装置70は、S20でYESと判断し、S22に進む。S22では、制御装置70は、混合弁62を中開する。これにより、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒のうちの多くがタンク22に供給され、残りの一部がバイパス路60を通過するようになる。即ち、多くの暖房用熱媒が、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、及び、HP戻り管18に供給されるようになる。外気温が−15℃よりも高く−12℃以下である場合には、遮断期間中にヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18が凍結破損する可能性が高くなるためである。S22を終えると、図2の遮断直前処理が終了する。
(IV)外気温が−15℃以下である場合、制御装置70は、S20でNOと判断し、S24に進む。S24では、制御装置70は、混合弁62を全開する。これにより、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒の全量がタンク22に供給されるようになる。即ち、バイパス路60には暖房用熱媒が供給されなくなる。外気温が−15℃以下である場合には、遮断期間中にヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18が凍結破損する可能性が非常に高くなるためである。S24を終えると、図2の遮断直前処理が終了する。
(融雪電力系統74の遮断期間中の動作)
図2の遮断直前処理の終了後、融雪電力系統74の遮断期間が開始される。上記の通り、融雪電力系統74の遮断期間中は、ヒートポンプ12、HP循環ポンプ14、混合弁62、及び、開閉弁82を動作させることができない。従って、融雪電力系統74の遮断期間中において、制御装置70は、暖房運転と、図3に示す凍結防止処理とを実行することができる。
遮断期間中に暖房運転の実行が指示されると、制御装置70は、暖房循環ポンプ46及びバーナ48を動作させる。図2の遮断直前処理で設定された混合弁62の開度(図2のS14、S18、S22、S24参照)に応じて決定される経路内を暖房用熱媒が循環する。遮断期間中の暖房運転では、ヒートポンプ12及びHP循環ポンプ14は作動しない。
(I)混合弁62が全閉されている場合(S14)には、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒の全量がバイパス路60を通過するため、暖房用熱媒は、暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、バイパス路60、の順で循環する。暖房機50には、バーナ48の燃焼熱によって加熱された後の暖房用熱媒が供給される。暖房機50は、暖房用熱媒の熱を利用して居室を暖房する。
(II)混合弁62が小開されている場合(S18)には、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒のうちの多くがバイパス路60を通過し、残りの一部がタンク22に供給される。そのため、暖房用熱媒は、主に暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、バイパス路60、の順で循環するが、暖房用熱媒の一部は、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、及び、HP戻り管18にも供給されるようになる。開閉弁82は閉じられているため(S10)、HP戻り管18内を流れる暖房用熱媒がタンク22に戻されることはない。暖房機50には、バーナ48の燃焼熱によって加熱された後の暖房用熱媒が供給される。
(III)混合弁62が中開されている場合(S22)には、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒のうちの多くがタンク22に供給され、残りの一部がバイパス路60を通過する。そのため、暖房用熱媒は、主に暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、HP戻り管18、の順で循環するが、暖房用熱媒の一部は、バイパス路60を通過するようになる。暖房機50には、バーナ48の燃焼熱によって加熱された後の暖房用熱媒が供給される。
(IV)混合弁62が全開されている場合(S24)には、暖房戻り管44を流れる暖房用熱媒の全量がタンク22に供給される。そのため、暖房用熱媒の全量が、暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、HP戻り管18、の順で循環する。暖房機50には、バーナ48の燃焼熱によって加熱された後の暖房用熱媒が供給される。
図3の凍結防止処理は、融雪電力系統74の遮断期間中に凍結防止運転を実行させるための処理である。制御装置70は、融雪電力系統74の遮断期間が開始されると、図3の凍結防止処理を開始する。
まず、S40、S42、S46では、制御装置70は、外気温が、予め定められたいずれの温度範囲に属するのかを判断する。S40、S42、S46の判断は、図2のS12、S16、S20の判断と同様である。
(I)外気温が−9℃よりも高い場合、制御装置70は、S40でYESと判断する。この場合、混合弁62は全閉されている(図2のS14参照)。この場合、制御装置70は、遮断期間中に、ヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18の凍結防止のための運転を実行しない(即ち、凍結防止運転を実行しない)。この場合、遮断期間が終了すると(即ち、融雪電力系統74の利用可能期間が開始されると)、図3の処理が終了する。
(II)外気温が−12℃よりも高く−9℃以下である場合、制御装置70は、S42でYESと判断し、S44に進む。この場合、混合弁62は小開されている(図2のS18参照)。S44では、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを、図3の表中の周期Aに従って作動させる(即ち、凍結防止運転を実行する)。周期Aは、暖房運転が実行されているか否かによって変わる。暖房運転が実行されていない場合には、S44では、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを10分間作動させた後、10分間停止させる。一方、暖房運転が同時に実行されている場合には、S44では、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを連続して作動させる。暖房循環ポンプ46とバーナ48とが作動することにより、暖房用熱媒が、主に暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、バイパス路60、の順で循環するが、暖房用熱媒の一部は、タンク22、HP往き管16、及び、HP戻り管18にも供給される。これにより、外気温が−12℃よりも高く−9℃以下である場合において、ヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18の凍結破損が抑制される。遮断期間が終了すると(即ち、融雪電力系統74の利用可能期間が開始されると)、図3の処理が終了する。
(III)外気温が−15℃よりも高く−12℃以下である場合、制御装置70は、S46でYESと判断し、S48に進む。この場合、混合弁62は中開されている(図2のS22参照)。S48では、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを、図3の表中の周期Bに従って作動させる(即ち、凍結防止運転を実行する)。周期Bも、暖房運転が実行されているか否かによって変わる。暖房運転が実行されていない場合には、S48では、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを15分間作動させた後、5分間停止させる。一方、暖房運転が同時に実行されている場合には、S48では、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを連続して作動させる。暖房循環ポンプ46とバーナ48とが作動することにより、暖房用熱媒が、主に暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、HP戻り管18、の順で循環するが、暖房用熱媒の一部は、バイパス路60を通過する。これにより、外気温が−15℃よりも高く−12℃以下である場合においても、ヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18の凍結破損が抑制される。遮断期間が終了すると(即ち、融雪電力系統74の利用可能期間が開始されると)、図3の処理が終了する。
(IV)外気温が−15℃以下である場合、制御装置70は、S46でNOと判断し、S50に進む。この場合、混合弁62は全開されている(図2のS24参照)。S50では、制御装置70は、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを、図3の表中の周期Cに従って作動させる(即ち、凍結防止運転を実行する)。即ち、制御装置70は、暖房運転が実行されているか否かに関わらず、暖房循環ポンプ46とバーナ48とを連続して作動させる。暖房循環ポンプ46とバーナ48とが作動することにより、暖房用熱媒の全量が、暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、HP戻り管18、の順で循環する。これにより、外気温が−15℃以下である場合においても、ヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18の凍結破損が抑制される。遮断期間が終了すると(即ち、融雪電力系統74の利用可能期間が開始されると)、図3の処理が終了する。
以上、本実施例の暖房システム2の構成及び運転内容について説明した。本実施例では、暖房システム2は、ヒートポンプ12及びHP循環ポンプ14が利用できない期間である融雪電力系統74の遮断期間中に、外気温に基づいて、開閉弁82を閉じ(図2のS10)、混合弁62を開いた状態(図2のS18、S22、S24)で、暖房循環ポンプ46及びバーナ48を作動して、凍結防止運転を実行する(図3のS44、S48、S50)。暖房システム2は、凍結防止運転を実行することにより、暖房用熱媒の少なくとも一部を、タンク22、HP往き管16、ヒートポンプ12、HP戻り管18、暖房往き管42、暖房機50、暖房戻り管44、の順で循環させることができる。そのため、融雪電力系統74の遮断期間中であっても、凍結防止運転を実行することにより、HP往き管16及びHP戻り管18を含む経路内で暖房用熱媒を循環させることができる。また、HP循環ポンプ14のほかに、HP往き管16及びHP戻り管18内の暖房用熱媒を循環させる目的でポンプを備える必要もないため、暖房システム2の構成も比較的簡易になる。従って、本実施例の暖房システム2によると、比較的簡易な構成によって、暖房用熱媒が循環する経路の凍結破損を適切に抑制することができる。
また、本実施例では、図2の遮断直前処理において、外気温に応じて混合弁62の開度を調整し、遮断期間中に凍結防止運転が実行される場合(図3のS44、S48、S50)においてタンク22に供給される暖房用熱媒の流量(即ち、HP往き管16及びHP戻り管18を通過する暖房用熱媒の流量)を変化させることができる。そのため、この構成によると、暖房システム2は、凍結防止運転を実行する場合において、ヒートポンプ経路を通過する暖房用熱媒の流量を、外気温に応じて適切に設定することができる。
また、本実施例では、遮断期間中に凍結防止運転が実行される場合(図3のS44、S48、S50)に、暖房循環ポンプ46とともにバーナ48が作動する。これにより、循環する暖房用熱媒を高温にすることができる。暖房用熱媒が循環する経路の凍結破損をより適切に抑制することができる。
ここで、実施例の記載と請求項の記載との対応関係を説明しておく。HP往き管16及びHP戻り管18が「ヒートポンプ経路」の一例である。HP循環ポンプ14が「第2の循環ポンプ」の一例である。暖房往き管42及び暖房戻り管44が「暖房経路」の一例である。暖房循環ポンプ46が「第1の循環ポンプ」の一例である。図3のS44、S48、S50で実行される凍結防止運転が「特定運転」の一例である。混合弁62が「流量調整機構」の一例である。バーナ48が「熱源機」の一例である。
以上、各実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
(変形例1) 上記の実施例では、制御装置70は、融雪電力系統74が遮断されている場合に、外気温に基づいて、開閉弁82を閉じ(図2のS10)、混合弁62を開いた状態(図2のS18、S22、S24)で、暖房循環ポンプ46及びバーナ48を作動して、凍結防止運転を実行する(図3のS44、S48、S50)。これに対し、ヒートポンプ12及びHP循環ポンプ14が利用できなくなる原因は、融雪電力系統74の遮断に限られず、ヒートポンプ12及びHP循環ポンプ14の故障等、別の原因であってもよい。その場合でも、制御装置70は、外気温に基づいて、開閉弁82を閉じ、混合弁62を開いた状態で、暖房循環ポンプ46及びバーナ48を作動して、凍結防止運転を実行してもよい。この変形例も「第2の循環ポンプを作動させられない場合」の一例である。
(変形例2) 上記の実施例では、制御装置70は、凍結防止運転を実行する場合、暖房循環ポンプ46とともにバーナ48を作動させている(図3のS44、S48、S50)。これに限られず、制御装置は、凍結防止運転を実行する場合に、バーナ48を作動させずに、暖房循環ポンプ46のみを作動させてもよい。この場合も、ヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18内に暖房用熱媒を供給することができれば、ヒートポンプ12、HP往き管16、及び、HP戻り管18の凍結破損を防止することが可能である。
(変形例3) 暖房システム2は、バイパス路60及び混合弁62を備えていなくてもよい。
(変形例4) 上記の実施例では、制御装置70は、外気温に基づいて、混合弁62の開度、凍結防止運転を実行するか否か、及び、凍結防止運転を実行する場合の運転内容を判断している(図2のS12、S16、S20、図3のS40、S42、S46)。これに代えて、制御装置70は、暖房用熱媒の温度に基づいて、混合弁62の開度、凍結防止運転を実行するか否か、及び、凍結防止運転を実行する場合の運転内容を判断してもよい。また、制御装置70は、外気温と暖房用熱媒の温度の双方に基づいて、これらを判断してもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。