JP6213365B2 - 吸着材または不溶化材の製造方法 - Google Patents
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Description
塩水マッド中には、原塩に含まれる不純物およびこれらの除去に使用する前記添加物に起因する化合物が含まれるが、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムが塩水マッドの主成分であることが知られている。
この技術は、炭酸ガス分圧を高めると、炭酸カルシウムの脱炭酸温度が炭酸マグネシウムの脱炭酸温度を大きく上回る現象を利用したものであるが、炭酸ガス分圧などの雰囲気調整が必要などの面で実用化には問題がある。
しかしながら、この技術において、焼成時に炭酸カルシウムの脱炭酸による酸化カルシウムの生成が避けられず、溶出低減材として使用する場合には、酸化カルシウムに起因して接触した水のpHが11.5以上に高くなる。そのためホウ酸イオンを吸着する効果はほとんど得られない。さらに焼成温度が700℃を超えると酸化カルシウムの生成が顕著になり、接触した水のpHは容易に12を超えるようになる。非特許文献1に記載されているように鉛のような両性金属はpHが12以下では水酸化物となって水に極めて溶解しにくいが、pHがさらに高くなると錯体を形成して水に溶解しやすくなり、pH12以上では溶出が顕著になることが知られている。
この技術では、カルシウム含有量が少ないマグネシウム鉱物を軽焼することで、酸化カルシウム含有量が少ない軽焼マグネシアを作っておいてから、炭酸カルシウムを別途添加することで、酸化カルシウム含有量が少ない、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの組成物を得るものである。このような工程は酸化カルシウムの含有量を極力少なくするというメリットがあるが、工程が複雑となる問題がある。
一方、産業廃棄物である塩水マッドは、前述のように水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムを主成分とするものであるが、これを水洗、乾燥および焼成することで、吸着材や不溶化材として使用されることは知られていない。
なお、これらの有害物質は、産業活動に由来するものであっても自然由来のものであっても特に制限はない。
塩水に使用される原塩は、塩の生産国より入手できる公知の原塩が使用でき、原塩の溶解方法も、原塩の層中に水を通過させて飽和水溶液の塩水として取り出す方法など、公知の方法が特に制限なく使用できる。
塩水マッド中の水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの比率は、特に限定されないが、例えば塩田法により海水から採取した塩を精製して発生した塩水マッドの場合では、モル比で1:2〜1:0.2程度のばらつきがある。また、塩田法により製造され、電解に供される塩の多くはマグネシウムとカルシウムのモル比が1:1.5〜1:0.75の範囲に入る。海水中のマグネシウムとカルシウムのモル比が通常1:0.2程度であることに比べて、変化幅が広く、カルシウム分が多くなる傾向がみられるが、海水採取地点や製塩方法の違いによって発生するものと考えられる。
塩水マッドには塩化ナトリウムなどの塩化物が含まれているため、多量の水で洗浄して、これらの塩化物を取り除くことが望ましい。例えば、塩水マッドに対して、1〜100質量倍の水を添加して、撹拌した後、濾過などの固液分離によって洗浄を行なう。なお、これらの塩化物を多く含む濾液は、電解用塩水として再利用することも可能である。
水洗に使用する水の量、水洗する際の温度などの水洗方法は特に限定がなく、公知の方法が制限なく使用でき、必要に応じて繰り返し水洗操作を行なうこともできる。
塩化ナトリウムと塩化カリウムなどの塩化物濃度が1質量%を超えると、焼成工程において、焼成炉を構成する耐熱材を損傷させる恐れがある。
多量の水分を含んだまま焼成炉で焼成を行なうと、焼成炉を損傷させることがあり、これを防止するため、前記水洗により塩化ナトリウムなどの塩化物を取り除いた塩水マッドを乾燥させることが望ましい。乾燥を行なう装置、乾燥条件等は特に限定なく、公知の方法が適用できる。乾燥装置としては、例えば、熱風乾燥機、流動式乾燥機、真空乾燥機など公知の乾燥機が例示されるが、これらの中でも熱風乾燥機を使用することが好ましい。
また、乾燥炉で乾燥する前に、屋外に曝して自然乾燥させても良い。
乾燥工程により得られる塩水マッドの水分含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
前記乾燥により、水分含有量が少なくなった塩水マッドを焼成する必要がある。なお、前記水洗および乾燥を行なわないで、塩水マッドを直接焼成してもよい。
焼成装置としては特に限定がなく、公知の装置が適用できる。例えば、撹拌式焼成炉、連続式焼成炉、流動式焼成炉などの公知の焼成炉が例示されるが、これらの中でも連続式焼成炉を使用することが好ましい。
さらに、ホウ酸イオンを吸着する場合には、酸化カルシウムの生成量をさらに抑制し、水に投入した時のpHを11.5以下にする必要があるため、焼成温度は350℃〜600℃であることが好ましい。
焼成時間については特に制限はないが、30分以上であることが好ましく、60分以上であることがさらに好ましい。
また、汚染土壌や埋め立て処分される焼却灰、産業廃棄物に混ぜて用いる場合、粉末状にして、できるだけ均一に混合し、汚染物質との接触を増やすことで効果が高まる。そのために平均粒径は0.1μm〜0.1mmであるのが好ましい。
さらに、土壌等と混合する際に粉末が飛散することを防止するため、粒子形状をより大きくしたり、顆粒状に固めて使用することもできる。塩水マッドやその焼成物は、ドロマイトのような岩石ではないので、粉砕しやすく、また、粉砕にかかるエネルギーも少ないという利点がある。
さらに、焼成塩水マッドに、軽焼酸化マグネシウムを混合した組成物が、有害物質の除去効果の面から好ましい。
前記のとおり、塩水マッドは水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムを主成分とする組成物であり、天然の鉱物にはほとんど存在しない組成を有する。
アルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩を加熱して酸化物を生成する反応では、水酸化物の方が低温で反応が進行し、カルシウム化合物とマグネシウム化合物ではマグネシウム化合物の方がより低温で酸化物を生成することが知られている。
したがって、本発明の吸着材または不溶化材は、塩水マッドを350℃以上の温度で焼成して得られる酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを主成分として含む組成物である。
吸着材または不溶化材として使用する場合、酸化マグネシウムの割合が15質量%以上であることが、吸着または不溶化効果の面で好ましく、さらに好ましくは25質量%以上である。
一方、酸化カルシウムには、酸化マグネシウムのような効果は発現しない。酸化カルシウムは水に溶けるとpHが12以上のアルカリ性を示すのに対し、酸化マグネシウムはpHが10程度であるので、土壌汚染処理に使用する場合でも安全であり、鉛や亜鉛のような両性金属の不溶化効果にも優れている。
本発明者らの検討結果によれば、ホウ酸イオンはpHが9〜11.5で吸着効果が高く、pHが11.5を超えると吸着されなくなるため、ホウ酸イオンを対象とする吸着材の場合、酸化カルシウムが極めて少ない状態、すなわち、塩水マッドを350℃〜600℃で焼成する条件で製造することが好ましい。
汚染水からの有害物質の吸着剤として使用する場合、公知の吸着剤を用いる方法を適用することができる。例えば、ろ過塔などに本発明の吸着剤を充填し、有害物質を含む廃水をろ過塔に供給して、有害物質を吸着材に吸着する方法など挙げられる。
例えば、汚染土壌と本発明の不溶化材との混合は、地盤改良工事に用いられる混合機を用いて行なうことができ、汚染土壌を原位置で改良する機械と、地上で改良する機械のいずれも使用できる。いずれの場合も、本願発明の不溶化材は固形物の状態、あるいは水を添加したスラリー状態で、汚染土壌と混合することができる。
なお、塩水マッドとして、東亞合成株式会社徳島工場で発生した下記塩水マッドを使用した。
塩水マッドの組成(フィルタープレス後の質量割合)
水 16.5質量%
炭酸カルシウム 50.3質量%
水酸化マグネシウム 28.6質量%
塩化ナトリウム 4.1質量%
その他 0.5質量%
上記で水を除いた質量割合
炭酸カルシウム 60.2質量%
水酸化マグネシウム 34.3質量%
塩化ナトリウム 4.9質量%
その他 0.6質量%
2Lのガラス製ビーカーを用いて、1Lの水に、乳鉢ですりつぶした上記組成の塩水マッド200gを添加して、室温(25℃)で30分間撹拌して放置した後、固液分離により固形分を分離した。次いで、分離した固形分の全量を1Lの水に添加して、室温で30分間撹拌して放置した後、固液分離により固形分を分離した。
前記水洗工程で得られた固形分を、通風式乾燥機(ヤマト科学社製 定温乾燥機DX41)を用いて、150℃で2時間乾燥した。
さらに、前記乾燥工程で得られた固形分を、焼成炉(アドバンテック社製 超高速昇温電気炉FUS522PA)を使用して、350℃で2時間焼成した。
なお、ここで吸着試験後の試験液のpHの測定は、酸化カルシウムの生成量の目安であり、pHが高いほど、生成した酸化カルシウムの量が多いことを示す。
焼成温度をそれぞれ600℃、700℃および800℃にした以外は、実施例1と同様に塩水マッドを焼成して、有害物質の吸着試験を行ない、試験液中の有害物質濃度を測定し、焼成塩水マッドの有害物質の吸着量を求めた。また、吸着試験後の試験液のpHを測定した。その結果を表3〜表5に記載した。
焼成温度を300℃にした以外は、実施例1と同様に塩水マッドを焼成して、有害物質の吸着試験を行ない、試験液中の有害物質濃度を測定し、焼成塩水マッドの有害物質の吸着量を求めた。また、吸着試験後の試験液のpHを測定した。その結果を表6に記載した。
粉砕後、乳鉢ですりつぶした、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムの比率が1:1のドロマイト200gを500℃で2時間焼成したものを用いて、実施例1と同様に有害物質の吸着試験を行ない、試験液中の有害物質濃度を測定し、焼成塩水マッドの有害物質の吸着量を求めた。また、吸着試験後の試験液のpHを測定した。その結果を表7に記載した。
これは、実施例3および実施例4では、吸着試験後の試験液のpHが11.5以上であり、焼成温度が高いほど、生成する酸化カルシウムの量が増加してpHの数値が高くなったものと推測する。
また、表7に示す従来技術であるドロマイトの500℃の焼成では、有害物質の吸着量が少なく、実用的な吸着材とはいえない。
汚染土壌での不溶化材の試験
目開き2mmの篩を通過した園芸用真砂土1kgに、フッ化ナトリウム水溶液をフッ素換算で200mg加えて撹拌し、室温で一週間養生したものを模擬汚染土壌Eとした。この模擬汚染土壌について、以下に記載した方法でフッ素溶出濃度を測定したところ、環境基準を超える1.2mg/Lであった。同様にホウ酸水溶液、亜ヒ酸ナトリウム水溶液を真砂土に対してそれぞれ加え、模擬汚染土壌F、Gを作成し、土壌汚染物質の不溶化性能評価に用いた(表8)。
これら模擬汚染土壌50gに不溶化材を加えないもの(無添加)、および実施例5(焼成温度:350℃)、実施例6(焼成温度:600℃)、比較例3(焼成温度:300℃)、比較例4(ドロマイト焼成温度:500℃)で、対応する実施例1、実施例2、比較例1および比較例2と同じ条件で調整した各不溶化材2.5gを加えて撹拌混合したものを作成し、室温で一週間養生した。養生後、1Lのポリ瓶にサンプルを入れ、さらにイオン交換水500gを加えて、振とう機により6時間振とうした後、静置し上澄みを孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して分析用検体を得た。これを前記と同じ方法で、各有害物質濃度を定量した。試験液に溶出した対象有害物質の濃度を表9にまとめた。
Claims (4)
- 酸化マグネシウムを15質量%以上含む吸着材または不溶化材の製造方法であって、塩水の精製工程で発生する塩水マッドを、350℃〜700℃の温度で焼成する工程を有する吸着材または不溶化材の製造方法。
- フッ化物イオン、ホウ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、クロム酸イオンおよび重クロム酸イオンの少なくとも1つを吸着する吸着剤または不溶化材である請求項1に記載の吸着材または不溶化材の製造方法。
- 前記焼成を水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの存在下に行なう請求項1または請求項2に記載の吸着材または不溶化材の製造方法。
- 前記焼成における加熱温度が350℃〜600℃であり、ホウ酸イオンを吸着する吸着剤または不溶化材である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸着材または不溶化材の製造方法。
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