JP6213365B2 - 吸着材または不溶化材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、食塩電解の原料である塩水を精製する際に発生する塩水マッドを利用した、有害物質の吸着材または汚染土壌や処分場に埋め立てる焼却灰、産業廃棄物などに含まれる有害物質の不溶化材、およびそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、塩水マッドを必要に応じて水洗、乾燥した後、350℃以上の温度で焼成することで得られる固形物からなる汚染物質の吸着材または不溶化材に関するものである。
塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩水の電気分解反応を行なう際、原料となる原塩に含まれるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンなどの不純物を除去する必要がある。これらの不純物を除去するために、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび必要に応じて凝集剤などを加えて、前記不純物を沈殿除去する。この原塩から除去された沈殿物が塩水マッドであり、減量化のためにフィルタープレスなどが行われている。
塩水マッド中には、原塩に含まれる不純物およびこれらの除去に使用する前記添加物に起因する化合物が含まれるが、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムが塩水マッドの主成分であることが知られている。
現状、塩水マッドはセメント用原料(特許文献1参照)や路盤材として再利用されているが、発生する塩水マッドの多くは産業廃棄物として処理されている。塩水マッドは産業廃棄物であるため、専門業者における廃棄物処理に際し、費用負担があること、また、大部分が埋め立て廃棄処理されているため、産業廃棄物を減少させる自然環境保護の面からも、塩水マッドを再利用することが望まれている。
一方、マグネシウムとカルシウムを含む鉱物から有害物質の吸着材または不溶化材を製造できることが知られている。例えば、特許文献2には、ドロマイト中の炭酸マグネシウムが脱炭酸して、かつ、炭酸カルシウムが脱炭酸しない条件下でドロマイトを半焼成させて得られる半焼成ドロマイトが、重金属溶出抑制材に使用できることが記載され、炭酸ガス分圧0.03atm〜1atmの条件下、650℃〜750℃の温度でドロマイトを加熱することが記載されている。
この技術は、炭酸ガス分圧を高めると、炭酸カルシウムの脱炭酸温度が炭酸マグネシウムの脱炭酸温度を大きく上回る現象を利用したものであるが、炭酸ガス分圧などの雰囲気調整が必要などの面で実用化には問題がある。
また、特許文献3には、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムとを主成分として含む鉱物を軽焼して、汚染土壌等からヒ素等の有害重金属が溶出することを抑制する溶出低減材に利用することが記載され、650℃〜1000℃の高温で鉱物を加熱することが記載されている。
しかしながら、この技術において、焼成時に炭酸カルシウムの脱炭酸による酸化カルシウムの生成が避けられず、溶出低減材として使用する場合には、酸化カルシウムに起因して接触した水のpHが11.5以上に高くなる。そのためホウ酸イオンを吸着する効果はほとんど得られない。さらに焼成温度が700℃を超えると酸化カルシウムの生成が顕著になり、接触した水のpHは容易に12を超えるようになる。非特許文献1に記載されているように鉛のような両性金属はpHが12以下では水酸化物となって水に極めて溶解しにくいが、pHがさらに高くなると錯体を形成して水に溶解しやすくなり、pH12以上では溶出が顕著になることが知られている。
さらに、特許文献4には、マグネシウム鉱物を650℃〜1000℃で焼成し、カルシウム成分が酸化物換算で3質量%以下の軽焼マグネシアを部分水和したもの100質量部に対して、炭酸カルシウムを20〜70質量部添加することにより、酸化マグネシウムを単独で使用する場合に比べて少量の添加量で、重金属を不溶化できることが提案されている。
この技術では、カルシウム含有量が少ないマグネシウム鉱物を軽焼することで、酸化カルシウム含有量が少ない軽焼マグネシアを作っておいてから、炭酸カルシウムを別途添加することで、酸化カルシウム含有量が少ない、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの組成物を得るものである。このような工程は酸化カルシウムの含有量を極力少なくするというメリットがあるが、工程が複雑となる問題がある。
前記特許文献2および特許文献3に記載されたとおり、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムを含有する鉱物を焼成して得られる酸化マグネシウム含有物が、重金属溶出低減材や土壌汚染物質の不溶化材に有用なことは知られているが、いずれも炭酸マグネシウムを脱炭酸させるために、650℃を越える温度で加熱する必要がある。特許文献2では炭酸カルシウムの脱炭酸を抑制するために、炭酸ガス分圧を高めに調整する煩雑な操作が必要となる問題があり、特許文献3の条件では、炭酸カルシウムも同時に脱炭酸されて酸化カルシウムが生成する。また、酸化カルシウムの混入を避け、炭酸カルシウムを添加する場合には、特許文献4のように複雑な工程を経る必要がある。
一方、産業廃棄物である塩水マッドは、前述のように水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムを主成分とするものであるが、これを水洗、乾燥および焼成することで、吸着材や不溶化材として使用されることは知られていない。
特開2002−68791号公報 特開2010−214254号公報 特開2013−31796号公報 特開2010−131535号公報
出雲茂人、田中耕治、鹿児島県機械金属技術指導センター研究報告(1974/昭和49年度 )p72−76
本発明は、上記の状況を鑑み、多くが産業廃棄物として処分されている塩水マッドを再利用するために、塩水マッドを必要に応じて、水洗、乾燥を行なった後、350℃以上の温度で焼成して得られる固形物を利用した吸着材や不溶化材およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、原塩の不純物処理の過程で発生する塩水マッドを、必要に応じて水洗、乾燥を行なった後、350℃以上という比較的低い温度で焼成することにより、フッ化物イオン、ホウ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオンなどの有害物質の吸着材や汚染土壌や処分場に埋め立てる焼却灰、産業廃棄物などに含まれる有害物質の不溶化材として使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の態様における吸着材または不溶化材の製造方法は、化マグネシウムを15質量%以上含む吸着材または不溶化材の製造方法であって、塩水の精製工程で発生する塩水マッドを、350℃〜700℃の温度で焼成する工程を有する吸着材または不溶化材の製造方法である。
第二の態様における吸着剤または不溶化材の製造方法は、フッ化物イオン、ホウ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、クロム酸イオンおよび重クロム酸イオンの少なくとも1つを吸着する第一態様の吸着材または不溶化材の製造方法である。
第三の態様における吸着剤または不溶化材の製造方法は、焼成を水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの存在下に行なう第一態様または第二態様の吸着材または不溶化材の製造方法である。
第四の態様における吸着剤または不溶化材の製造方法は、焼成における加熱温度が350℃〜600℃であり、ホウ酸イオンを吸着する吸着材または不溶化材の製造方法である。着材または不溶化材の製造方法である。
本発明における吸着材および不溶化材は、産業廃棄物である塩水マッドを原料として製造され、従来の天然に存在する鉱物を原料とする場合と比較して、低温で焼成することが可能であり、さらに、産業廃水、温泉水および地下水などにおける有害物質であるフッ化物イオン、ホウ酸イオン、亜ヒ酸イオンおよびヒ酸イオンなどの吸着性能に優れており、また、汚染土壌、土木工事で発生するズリや掘削土砂、処分場に埋め立てる焼却灰、産業廃棄物などに含まれる有害物質の不溶化材としても優れているため、経済的にも有利な方法で有害物質を処理することが可能である。
なお、これらの有害物質は、産業活動に由来するものであっても自然由来のものであっても特に制限はない。
塩水マッドは、電解反応の原料である塩水を精製する際に発生する残渣である。塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩水の電気分解反応を行なう際、原料となる原塩に含まれるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンなどの不純物を除去するために、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを加えて、前記不純物を沈殿除去する必要がある。この原塩から除去された不純物の沈殿物が塩水マッドであり、電解工場では、減量化のためフィルタープレスなどにより水分を減らすことが行われている。
本発明における塩水マッドとしては、塩水を精製する際の副生物として発生するものであれば、塩水マッドの組成は特に限定なく用いることができるが、水酸化マグネシウムを含有することが必要である。
塩水に使用される原塩は、塩の生産国より入手できる公知の原塩が使用でき、原塩の溶解方法も、原塩の層中に水を通過させて飽和水溶液の塩水として取り出す方法など、公知の方法が特に制限なく使用できる。
また、塩水の精製は、電解反応に悪影響を与える、塩水中に含まれる不純物を取り除くために行なうもので、含まれる不純物の種類に応じて公知の方法が制限なく使用できる。例えば、塩化ナトリウムを主成分とする原塩を精製する場合は、カルシウムイオンに対して炭酸ナトリウム、マグネシウムイオンに対して水酸化ナトリウムを添加することが好ましい。これらの精製により、カルシウムイオンは炭酸カルシウムとなり、マグネシウムイオンは水酸化マグネシウムとなり、沈殿物として取り除くことができる。
前記塩水の精製により、濾過などの方法で分離除去された沈殿物が塩水マッドであり、一般的にはシックナーで沈殿させたスラリー状態であるが、減量化のためフィルタープレスなどを行ない、水分を10〜30質量%含む脱水ケーキにする。なお、沈殿させる際に、必要に応じて、公知の凝集剤などを加えることができる。
本発明における塩水マッドとしては、上記精製方法などにより得られる炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムを主成分として含むものが好ましく使用できる。また、水酸化マグネシウムの割合が15質量%以上のものが好ましい。
塩水マッド中の水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの比率は、特に限定されないが、例えば塩田法により海水から採取した塩を精製して発生した塩水マッドの場合では、モル比で1:2〜1:0.2程度のばらつきがある。また、塩田法により製造され、電解に供される塩の多くはマグネシウムとカルシウムのモル比が1:1.5〜1:0.75の範囲に入る。海水中のマグネシウムとカルシウムのモル比が通常1:0.2程度であることに比べて、変化幅が広く、カルシウム分が多くなる傾向がみられるが、海水採取地点や製塩方法の違いによって発生するものと考えられる。
本発明の吸着材および不溶化材は、前記塩水マッドを必要に応じて水洗および乾燥を行なった後、350℃以上の温度で焼成する焼成工程で処理することで製造することができる。
塩水マッドの水洗
塩水マッドには塩化ナトリウムなどの塩化物が含まれているため、多量の水で洗浄して、これらの塩化物を取り除くことが望ましい。例えば、塩水マッドに対して、1〜100質量倍の水を添加して、撹拌した後、濾過などの固液分離によって洗浄を行なう。なお、これらの塩化物を多く含む濾液は、電解用塩水として再利用することも可能である。
水洗に使用する水の量、水洗する際の温度などの水洗方法は特に限定がなく、公知の方法が制限なく使用でき、必要に応じて繰り返し水洗操作を行なうこともできる。
水洗工程終了後において、塩水マッド中の塩化ナトリウムと塩化カリウムなどの塩化物の含有量は1質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
塩化ナトリウムと塩化カリウムなどの塩化物濃度が1質量%を超えると、焼成工程において、焼成炉を構成する耐熱材を損傷させる恐れがある。
塩水マッドの乾燥
多量の水分を含んだまま焼成炉で焼成を行なうと、焼成炉を損傷させることがあり、これを防止するため、前記水洗により塩化ナトリウムなどの塩化物を取り除いた塩水マッドを乾燥させることが望ましい。乾燥を行なう装置、乾燥条件等は特に限定なく、公知の方法が適用できる。乾燥装置としては、例えば、熱風乾燥機、流動式乾燥機、真空乾燥機など公知の乾燥機が例示されるが、これらの中でも熱風乾燥機を使用することが好ましい。
乾燥条件の制限はないが、乾燥温度は50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、100℃〜300℃であることが最も好ましい。乾燥時間については特に制限はないが、30分以上であることが好ましく、60分以上であることがさらに好ましい。
また、乾燥炉で乾燥する前に、屋外に曝して自然乾燥させても良い。
乾燥工程により得られる塩水マッドの水分含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
塩水マッドの焼成
前記乾燥により、水分含有量が少なくなった塩水マッドを焼成する必要がある。なお、前記水洗および乾燥を行なわないで、塩水マッドを直接焼成してもよい。
焼成装置としては特に限定がなく、公知の装置が適用できる。例えば、撹拌式焼成炉、連続式焼成炉、流動式焼成炉などの公知の焼成炉が例示されるが、これらの中でも連続式焼成炉を使用することが好ましい。
焼成温度としては、350℃以上であり、350℃〜700℃であることが好ましい。焼成温度が350℃未満であると、水酸化マグネシウムから酸化マグネシウムへの脱水反応が十分でない恐れがあり、700℃を越えると炭酸カルシウムが脱炭酸して酸化カルシウムに変化する量が増えすぎる恐れがある。
さらに、ホウ酸イオンを吸着する場合には、酸化カルシウムの生成量をさらに抑制し、水に投入した時のpHを11.5以下にする必要があるため、焼成温度は350℃〜600℃であることが好ましい。
焼成時間については特に制限はないが、30分以上であることが好ましく、60分以上であることがさらに好ましい。
前記焼成工程において、水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの存在下に焼成を行なうことが好ましい。吸着材や汚染土壌の不溶化材として使用する場合に、酸化マグネシウムの含有量が増加するためである。
焼成された塩水マッドは、粉砕して細かな固形物とすることが好ましく、特にろ過塔へ充填する場合は、通液抵抗と吸着効率の観点を考慮して大きさを決め、平均粒径は0.1mm〜5mmとすることが好ましい。
また、汚染土壌や埋め立て処分される焼却灰、産業廃棄物に混ぜて用いる場合、粉末状にして、できるだけ均一に混合し、汚染物質との接触を増やすことで効果が高まる。そのために平均粒径は0.1μm〜0.1mmであるのが好ましい。
さらに、土壌等と混合する際に粉末が飛散することを防止するため、粒子形状をより大きくしたり、顆粒状に固めて使用することもできる。塩水マッドやその焼成物は、ドロマイトのような岩石ではないので、粉砕しやすく、また、粉砕にかかるエネルギーも少ないという利点がある。
前記必要に応じて水洗、乾燥を行なった後、350℃以上で焼成して得られる、焼成塩水マッドは、公知の吸着材および不溶化材と同様に取り扱うことができる。
さらに、焼成塩水マッドに、軽焼酸化マグネシウムを混合した組成物が、有害物質の除去効果の面から好ましい。
本発明の焼成塩水マッドは、ドロマイトのような従来の天然の鉱物に由来するマグネシウム、カルシウム含有の吸着材および汚染土壌の不溶化材と比較して、次のような利点がある。
前記のとおり、塩水マッドは水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムを主成分とする組成物であり、天然の鉱物にはほとんど存在しない組成を有する。
アルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩を加熱して酸化物を生成する反応では、水酸化物の方が低温で反応が進行し、カルシウム化合物とマグネシウム化合物ではマグネシウム化合物の方がより低温で酸化物を生成することが知られている。
本発明者らが検討した結果、水酸化マグネシウムは320℃〜400℃で脱水して酸化マグネシウムになるが、炭酸カルシウムの脱炭酸による酸化カルシウムの形成は少なくとも650℃〜750℃でないと起こらないため、両反応の温度差が広いことが判った。すなわち、塩水マッドを構成する組成は、炭酸カルシウムを酸化物にしないで、酸化マグネシウム生成させるのに最適である。
したがって、本発明の吸着材または不溶化材は、塩水マッドを350℃以上の温度で焼成して得られる酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを主成分として含む組成物である。
吸着材または不溶化材として使用する場合、酸化マグネシウムの割合が15質量%以上であることが、吸着または不溶化効果の面で好ましく、さらに好ましくは25質量%以上である。
これに対して、ドロマイトなどマグネシウム化合物とカルシウム化合物を主成分とする天然の鉱物は、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムを含有し、脱炭酸反応の温度が近い成分の混合物であるため、炭酸マグネシウムのみを酸化マグネシウムに脱炭酸させ、一方、炭酸カルシウムは脱炭酸させない条件を選択することは極めて難しい。
本発明の吸着材および不溶化材における有害物質の対象としては、除去効果の面から、フッ化物イオン、ホウ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、クロム酸イオン、重クロム酸イオン、鉛イオンなどが挙げられるが、これらに限定されず、産業廃液、焼却灰、産業廃棄物あるいは汚染土壌中に含まれる有害な陰イオンや金属イオンにも適用可能である。
本発明の吸着材および汚染土壌の不溶化材における酸化マグネシウムには、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、クロム酸イオンなどのオキソ酸イオン、およびフッ化物イオンなどの陰イオンを吸着不溶化すると共に、弱アルカリ性を保持することで多くの金属イオンを水に不溶な水酸化物にすることが知られている。
一方、酸化カルシウムには、酸化マグネシウムのような効果は発現しない。酸化カルシウムは水に溶けるとpHが12以上のアルカリ性を示すのに対し、酸化マグネシウムはpHが10程度であるので、土壌汚染処理に使用する場合でも安全であり、鉛や亜鉛のような両性金属の不溶化効果にも優れている。
したがって、本発明の吸着材および汚染土壌の不溶化材におけるカルシウム分は、酸化カルシウムと比べて弱アルカリ性である炭酸カルシウムとして存在させることが望ましい。
本発明者らの検討結果によれば、ホウ酸イオンはpHが9〜11.5で吸着効果が高く、pHが11.5を超えると吸着されなくなるため、ホウ酸イオンを対象とする吸着材の場合、酸化カルシウムが極めて少ない状態、すなわち、塩水マッドを350℃〜600℃で焼成する条件で製造することが好ましい。
本発明の吸着材および不溶化材は、産業廃水、地下水などの汚染水からの有害物質の吸着剤、汚染土壌、焼却灰、産業廃棄物等の有害物質の不溶化剤などに使用可能である。
汚染水からの有害物質の吸着剤として使用する場合、公知の吸着剤を用いる方法を適用することができる。例えば、ろ過塔などに本発明の吸着剤を充填し、有害物質を含む廃水をろ過塔に供給して、有害物質を吸着材に吸着する方法など挙げられる。
また、汚染土壌などに含まれる有害物質の不溶化材として使用する場合、公知の方法を適用することができる。
例えば、汚染土壌と本発明の不溶化材との混合は、地盤改良工事に用いられる混合機を用いて行なうことができ、汚染土壌を原位置で改良する機械と、地上で改良する機械のいずれも使用できる。いずれの場合も、本願発明の不溶化材は固形物の状態、あるいは水を添加したスラリー状態で、汚染土壌と混合することができる。
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明する。
なお、塩水マッドとして、東亞合成株式会社徳島工場で発生した下記塩水マッドを使用した。
塩水マッドの組成(フィルタープレス後の質量割合)
水 16.5質量%
炭酸カルシウム 50.3質量%
水酸化マグネシウム 28.6質量%
塩化ナトリウム 4.1質量%
その他 0.5質量%
上記で水を除いた質量割合
炭酸カルシウム 60.2質量%
水酸化マグネシウム 34.3質量%
塩化ナトリウム 4.9質量%
その他 0.6質量%
<実施例1>
2Lのガラス製ビーカーを用いて、1Lの水に、乳鉢ですりつぶした上記組成の塩水マッド200gを添加して、室温(25℃)で30分間撹拌して放置した後、固液分離により固形分を分離した。次いで、分離した固形分の全量を1Lの水に添加して、室温で30分間撹拌して放置した後、固液分離により固形分を分離した。
前記水洗工程で得られた固形分を、通風式乾燥機(ヤマト科学社製 定温乾燥機DX41)を用いて、150℃で2時間乾燥した。
上記水洗乾燥後の塩水マッドを硝酸に溶解して、ICP発光分析装置(Spectro社製、CIROS−120)で分析した結果、塩水マッド中の塩化ナトリウム含有量は0.08質量%であった。
さらに、前記乾燥工程で得られた固形分を、焼成炉(アドバンテック社製 超高速昇温電気炉FUS522PA)を使用して、350℃で2時間焼成した。
表1に示すA〜Dの有害物質をそれぞれ含む試験液(A〜D)50mLに、前記焼成した塩水マッド0.1gを添加した後、液温40℃で24時間撹拌した。撹拌終了後、焼成塩水マッドと試験液を濾別して、試験液中の有害物質濃度をICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP7600)で測定し、フッ素については、イオンクロマトグラフィー(カラム;IonPacTM AS12A(DIONEX社製、φ4mm×200mm)で測定し、焼成塩水マッドの有害物質の吸着量を求めた。また、吸着試験後の試験液のpHを測定した。その結果を表2に記載した。
なお、ここで吸着試験後の試験液のpHの測定は、酸化カルシウムの生成量の目安であり、pHが高いほど、生成した酸化カルシウムの量が多いことを示す。
<実施例2>〜<実施例4>
焼成温度をそれぞれ600℃、700℃および800℃にした以外は、実施例1と同様に塩水マッドを焼成して、有害物質の吸着試験を行ない、試験液中の有害物質濃度を測定し、焼成塩水マッドの有害物質の吸着量を求めた。また、吸着試験後の試験液のpHを測定した。その結果を表3〜表5に記載した。
<比較例1>
焼成温度を300℃にした以外は、実施例1と同様に塩水マッドを焼成して、有害物質の吸着試験を行ない、試験液中の有害物質濃度を測定し、焼成塩水マッドの有害物質の吸着量を求めた。また、吸着試験後の試験液のpHを測定した。その結果を表6に記載した。
<比較例2>
粉砕後、乳鉢ですりつぶした、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムの比率が1:1のドロマイト200gを500℃で2時間焼成したものを用いて、実施例1と同様に有害物質の吸着試験を行ない、試験液中の有害物質濃度を測定し、焼成塩水マッドの有害物質の吸着量を求めた。また、吸着試験後の試験液のpHを測定した。その結果を表7に記載した。
表2〜表6からわかるように、表6の比較例1(焼成温度:300℃)と比べて、350℃以上で焼成した実施例1〜実施例4では、いずれの有害物質の吸着量が多い。なお、ホウ酸イオンについては、700℃以上の焼成温度(実施例3および実施例4)では、実施例1および実施例2と比べて吸着量が低下している。
これは、実施例3および実施例4では、吸着試験後の試験液のpHが11.5以上であり、焼成温度が高いほど、生成する酸化カルシウムの量が増加してpHの数値が高くなったものと推測する。
また、表7に示す従来技術であるドロマイトの500℃の焼成では、有害物質の吸着量が少なく、実用的な吸着材とはいえない。
Figure 0006213365
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<実施例5>
汚染土壌での不溶化材の試験
目開き2mmの篩を通過した園芸用真砂土1kgに、フッ化ナトリウム水溶液をフッ素換算で200mg加えて撹拌し、室温で一週間養生したものを模擬汚染土壌Eとした。この模擬汚染土壌について、以下に記載した方法でフッ素溶出濃度を測定したところ、環境基準を超える1.2mg/Lであった。同様にホウ酸水溶液、亜ヒ酸ナトリウム水溶液を真砂土に対してそれぞれ加え、模擬汚染土壌F、Gを作成し、土壌汚染物質の不溶化性能評価に用いた(表8)。
これら模擬汚染土壌50gに不溶化材を加えないもの(無添加)、および実施例5(焼成温度:350℃)、実施例6(焼成温度:600℃)、比較例3(焼成温度:300℃)、比較例4(ドロマイト焼成温度:500℃)で、対応する実施例1、実施例2、比較例1および比較例2と同じ条件で調整した各不溶化材2.5gを加えて撹拌混合したものを作成し、室温で一週間養生した。養生後、1Lのポリ瓶にサンプルを入れ、さらにイオン交換水500gを加えて、振とう機により6時間振とうした後、静置し上澄みを孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して分析用検体を得た。これを前記と同じ方法で、各有害物質濃度を定量した。試験液に溶出した対象有害物質の濃度を表9にまとめた。
Figure 0006213365
Figure 0006213365
本発明における吸着材および不溶化材は、産業廃棄物である塩水マッドを原料として製造され、産業廃水、温泉水および地下水などにおける有害物質であるフッ化物イオン、ホウ酸イオン、亜ヒ酸イオンおよびヒ酸イオンなどの吸着材として、および、汚染土壌、土木工事で発生するズリや掘削土砂、処分場に埋め立てる焼却灰、産業廃棄物などに含まれる有害物質の不溶化材として利用可能である。

Claims (4)

  1. 化マグネシウムを15質量%以上含む吸着材または不溶化材の製造方法であって、塩水の精製工程で発生する塩水マッドを、350℃〜700℃の温度で焼成する工程を有する吸着材または不溶化材の製造方法
  2. フッ化物イオン、ホウ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、クロム酸イオンおよび重クロム酸イオンの少なくとも1つを吸着する吸着剤または不溶化材である請求項1に記載の吸着材または不溶化材の製造方法
  3. 前記焼成を水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの存在下に行なう請求項1または請求項2に記載の吸着材または不溶化材の製造方法。
  4. 前記焼成における加熱温度が350℃〜600℃であり、ホウ酸イオンを吸着する吸着剤または不溶化材である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸着材または不溶化材の製造方法
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