JP6210560B2 - トリコデルマ(Trichoderma)属菌を用いた植物病原菌の増殖抑制方法 - Google Patents

トリコデルマ(Trichoderma)属菌を用いた植物病原菌の増殖抑制方法 Download PDF

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Description

この発明は、微生物を用いた植物病原菌の増殖抑制方法に関するものであり、特に、トリコデルマ(Trichoderma)属菌を用いた植物病原菌の増殖抑制方法に関する。
秋田県大館市比内町で採掘される緑色凝灰岩(以下「十和田石」ということがある)は、正式名称は「石英安山岩質浮石質凝灰岩」といい、「グリーンタフ」という名称で知られている。
この凝灰岩は、今から約1,000万年前、日本列島が形作られた頃、海底火山の火山灰が堆積して固まって出来たものである。電子顕微鏡で観察すると、極めて微細な粒子同士が結びついた多孔質構造が認められる。主な構成鉱物は、曹長石、緑泥石、石英のほか、非晶質結晶が30%程度ある珪酸塩鉱物である。
上記十和田石の組成を下記に示す。
Figure 0006210560

十和田石は、青緑色の美しい色彩と滑りにくく保温性・保湿性を有する事から、40年程前より、建築石材や浴室の床材として、砕石場から切り出されて製品化されている。
この製材過程で発生する砕石粒や切り屑は、化成肥料のコア(原体)である増量剤として使われており、また、特許文献1で提案されているように、凝灰岩粒に環境有用微生物を担持させることで、土壌改良資材とする技術が公知になっている。
特許文献1では、平均粒径が、1mm〜20mmである凝灰岩粒に、悪臭等の環境汚染の原因物質を分解し環境保全に資すると言われている、バチルス(Bacillus)属、ニトロソモナス(Nitrosomonas)属、ニトロバクター(Nitrobactor)属、チオバチルス(Thiobacillus)属、及びシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物群から選ばれた一種類以上の微生物を含浸させる発明が提案されている。
特開2006−143974号公報 特開平11−225745号公報 特開2012−95570号公報
今般、十和田石砕石場より発生する加工微細粉を含む排水を集積した溜池に、ポリ塩化アルミニウム凝集剤(PAC)を投入し、微細粉を凝集沈殿、回収後乾燥させた後に得られる、粒径が1μm〜80μmの範囲にある微細粉(通称、十和田石ケーキ)中に、代表的な植物病害真菌であるリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の増殖を抑制する微生物群を発見し採取した。
次に、微生物群の中から、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の増殖を抑制し、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)と拮抗する微生物を特定した。
当該特定した微生物を株式会社テクノスルガ・ラボにて同定した結果、子嚢菌類の一種であるトリコデルマ・アトリビリデ(Trichoderma atroviride)であることが判明した。さらに、この菌株は従来発見されていない特性を持つことから、新規微生物として、平成24年9月7日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託した。(受託番号NITE P−1419)。
上記微生物が発見された十和田石ケーキの化学組成を次に記す。一部の元素にて、微細な違いはあるものの、前述の十和田石の岩石組成とほぼ同じ組成にある。
Figure 0006210560

トリコデルマ(Trichoderma)属菌の単離源及び担持体としては、特許文献2では、芝(ノシバ)根圏から分離した菌株(SKT-1)、及びサラダナ根圏から分離した菌株(SKT-2)が開示されている。
また、特許文献3では、木材、木炭または木炭粉砕物にトリコデルマ(Trichoderma)属菌を担持させる方法が開示されている。
これら以外にもトリコデルマ属菌に関する文献は多々あるが、それらを要約するに、この種は土壌中に一般的で、その他に木材、腐朽木、キノコ、キノコ堆肥、キクイムシの坑道、サンゴなどから分離されるものである。また、トリコデルマ(Trichoderma)属として、花崗岩、大理石、砂岩、片麻岩、石英などの岩石からの分離報告例もある。
しかし、肥料の原体として使用される十和田石ケーキのような、凝灰岩の加工済み乾燥微細粉上から単離された例は過去に無い。
そこで本発明は、トリコデルマ(Trichoderma)属菌を用いて植物性病原菌の増殖を抑制する新規な方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、以下の発明を提案する。
請求項1の発明は、以下の工程を含む植物病原菌の増殖抑制方法である。
(1)植物病原菌の増殖抑制能を有し、受託番号がNITE P−1419であるトリコデルマ(Trichoderma)属に属する微生物を培養する工程
(2)前記培養した微生物を植物土壌に植菌する工程
請求項の発明は、
植物病原菌は、リゾクトニア(Rhizoctonia)属又はフザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌であることを特徴とする請求項記載の植物病原菌の増殖抑制方法である。


この発明によれば、トリコデルマ(Trichoderma)属菌を用いて植物性病原菌の増殖を抑制する新規な方法を提供することができる。
(a)、(b)ともに、十和田石の採掘坑道で見られるカビの菌糸を表す図である。 未減菌の十和田石のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察を表した図であって、(a)植菌後の様子、(b)培養1日目の様子、(c)培養2日目の様子、(d)培養3日目の様子、(e)培養4日目の様子。 減菌した十和田石のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察を表した図であって、(a)植菌後の様子、(b)培養1日目の様子、(c)培養2日目の様子、(d)培養3日目の様子、(e)培養4日目の様子。 1/10TSA培地で単離した細菌7株のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察を表した図であって、(a)1株目の様子、(b)2株目の様子、(c)3株目の様子、(d)4~7株目の様子。 TSA培地で単離した細菌2株のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察を表した図であって、(a)1株目の様子、(b)2株目の様子。 1/10TSA培地で単離した真菌4株のうち、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制を示した真菌を観察した図であって、(a)十和田石から単離した状態、(b)リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)を抑制している状態。 1/10TSA培地で単離した真菌4株のうち、3株のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察を表した図であって、(a)1株目の様子、(b)2株目の様子(c)3株目の様子。 (a)HNT−01株のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察を表した図、(b)HNT−01株のコリモナス(Collimonas sp.) D-25に対する抑制観察を表した図、(c)HNT−01株のバチルス・スブチルス(Bacillus subtilis) RB14に対する抑制観察を表した図、(d)HNT−01株のフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対する抑制観察を表した図である。 HNT−01株の28S rDNA-D1/D2塩基配列を用いた分子系統樹である。 HNT−01株のITS-5. 8S rDNA塩基配列を用いた分子系統樹である。 HNT−01株の巨視的観察像を表す図であって、(a)PDA培地上の様子、(b)MA培地上の様子、(c)OA培地上の様子、(d)CMA培地上の様子。 HNT−01株の微視的観察像を表す図である。 同じくHNT−01株の微視的観察像を表す図である。 同じくHNT−01株の微視的観察像を表す図である。 同じくHNT−01株の微視的観察像を表す図である。 HNT−01株の微視的観察像のうち、分生子を表す図である。 HNT−01株の微視的観察像のうち、厚膜胞子を表す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(実験例1)
植物病原菌を抑制する微生物が十和田石に存在することを確認するため、十和田石の植物病原菌リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制実験を行った。
<使用材料及び使用菌株>
未減菌十和田石粉末
リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)
<実験方法>
サンプルA 未滅菌十和田石0.7g、 滅菌水 300μL
サンプルB 滅菌十和田石0.7g、 滅菌水 300μL
サンプルA、Bにリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)を植菌後、室温で2日間静置培養し、各サンプルに滅菌水を3mL添加してボルテックスを用いて攪拌した。攪拌した培養液は、植物病原菌であるリゾクトニアに対する抑制効果として1/10TSA培地を用いて菌数算定を行った。
<菌数算定結果>
サンプルA 2.1×10cfu/mL
サンプルB N.D.
<植物病原菌に対する抑制観察>
前記作製した各サンプルの培養液を10μLTSA培地および1/10TSA培地に植菌し、同時にリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の寒天切片を植菌した。培養は、室温で行い観察を行った。観察は1週間行い、4日目までの観察結果を図2及び図3に示した。
図2、図3で示されるように、十和田石を滅菌せず抑制効果の実験を行なうと、かなり大きな阻止円を形成した(図2)。
目視で確認しても数種類のバクテリアとカビが十和田石には常在しており、阻止円の境界は菌糸生長の阻害のようなものが確認されている為、抗菌活性が強い微生物の存在が示唆された。
(実験例2)
実験例1で、十和田石中に常在する微生物がリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の増殖を抑制していることが示唆されたため、本実験ではその微生物の探索を行った。
<使用材料及び使用培地>
十和田石粉末
PDA培地
1/10TSA培地
TSA培地
<微生物の単離方法>
十和田石粉末を0.1g秤量後、滅菌水もしくは滅菌生理食塩水を1mL添加し、懸濁した。この懸濁液を原液として10−6まで希釈系列を作製し、各寒天培地上に20μLずつ植菌した。
その後、滅菌水を用いた懸濁液は、1/10TSA、TSAコンラージ棒で均一に塗り広げ、24℃又は30℃で4〜7日間培養を行った。
培養後、寒天培地上に生育したシングルコロニーを釣菌し、画線培養を行うことにより簡易の単離を行った。真菌(カビ)においては、成長した菌糸の先端を釣菌し、新しい培地に植菌した。この作業を数回繰り返し、菌の純化を行った。
単離後いくつかの微生物においてリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する生育抑制効果を確認した。
<結果>
1/10TSA培地から細菌7株、真菌4株、TSA培地から細菌2株の計13株の微生物が得られた。PDA培地からは、今のところ菌は単離できていない。それらの微生物をリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制試験を行い、その結果を図4乃至図7に示した。
図4は、1/10TSA培地で単離した細菌7株のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察結果を示したものである。どの細菌もリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対して抑制することはなかった。
図5は、TSA培地で単離した細菌2株のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察結果を示したものである。どの細菌もリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対して抑制することはなかった。
図6は、1/10TSA培地で単離した真菌4株のうち、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制を示した真菌である。
図7は、1/10TSA培地で単離した真菌4株のうち、3株のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対する抑制観察結果を示したものである。どの真菌もリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)に対して抑制することはなかった。
本実験で十和田石から単離した、計13株(細菌9株及び真菌4株)の内、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の抑制能が観察されたのは、真菌1株であった。それ以外の12株の微生物は、十和田石の採掘場、及び製品の使用状況などから判断して、通常、環境中に生息する雑菌の類であると推測する。
また、過去に、十和田石を原因とする中毒などの事故が発生していないことからも、これらの雑菌が、人体、及び環境中に悪影響を与える微生物とは思われない。
(実験例3)
実験例1で未滅菌十和田石粉末を用いた場合、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)を抑制する微生物の存在が確認され、その糸状菌と思われる抑制微生物の単離が実験例2でできたため、十和田石粉末常在菌のコリモナス(Collimonas sp.) D-25(受託番号NITE P−1104)、バチルス・スブチルス(Bacillus subtilis) RB14、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum) 及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の計4株にに対する抗菌活性試験を行った。
<使用菌株>
リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)
コリモナス(Collimonas sp.) D-25(受託番号 NITE P−1104)
バチルス・スブチルス(Bacillus subtilis) RB14
フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)
<使用培地>
1/10TSA培地
<実験方法>
寒天培地で前培養を行った各微生物を爪楊枝で釣菌し、新しい1/10TSA培地に植菌した。単離が確認された十和田石粉末常在菌(以下「HNT−01株」という」を釣菌し、上記の菌それぞれと対称となるように植菌した。植菌後、室温で10日間培養し、HNT−01株が、各微生物を抑制するか、もしくは抑制されるかを確認した。その結果を図8に示す。
図8は培養10日目の観察結果を示したものである。図8(a)は、HNT−01株とリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)との観察結果を示したものである。実験例1と同じように、大きな阻止円が形成されている。
図8(b)は、HNT−01株とコリモナス(Collimonas sp.) D-25との観察結果を示したものである。コリモナス(Collimonas sp.) D-25はHNT−01株に覆われてはいないが、はっきりとした抑制はしていなかった。コリモナス(Collimonas sp.) D-25の植菌部分(図8(b)右側に薄く菌子が侵入していることが判る。
図8(c)は、HNT−01株とバチルス・スブチルス(Bacillus subtilis) RB14との観察結果を示したものである。HNT−01株がバチルス・スブチルス(Bacillus subtilis) RB14によって抑制され、これ以上菌糸の成長は見られなかった。
図8(d)は、HNT−01株とフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)との観察結果を示したものである。フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の抑制とまではいかないが、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)とHNT−01株が平衡状態にあり、どちらかを覆うというようなことは起こらなかった。
本実験実験から十和田石常在菌であるHNT−01株は、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)を抑制するが、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)は、押し留める程度(拮抗)であることが分かった。
また、バチルス・スブチルス(Bacillus subtilis) RB14はHNT−01株を抑制するが、コリモナス(Collimonas sp.) D-25は抑制せず、逆に覆われはしない程度であることが分かった。
(分離株の同定試験)
十和田石から分離されたHNT−01株の帰属分類を推定するため、以下の同定試験を行った。
<培養条件>
以下の条件でHNT−01株を培養し、供試菌体とした。
・培地 ポテトデキストロース寒天培地(PDA)
2%麦芽寒天培地(MA)
オートミール寒天培地(OA)
コーンミール寒天培地(CMA)
・培養温度 25℃および室温
・培養期間 1週間〜6週間
<28S rDNA-D1/D2およびITS-5. 8S rDNA塩基配列解析>
抽出からサイクルシークエンスまでの操作は各プロトコルに基づく。なお、同定試験においてHNT−01株をSIID11835の番号を付して塩基配列解析を行なった。
・DNA抽出 物理的破壊およびMarmur(1961)の改変法
・PCR PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ)
・サイクルシークエンス BigDye Terminator v3.1 Kit(Applied Biosystems)
・使用プライマー NL1およびNL4
ITS5およびITS4
・シークエンス ABI PRISM 3130xl Genetic Analyzer System(Applied Biosystems)
・配列決定 ChromasPro 1.5(Technelysium Pty Ltd.)
・相同性検索および簡易分子系統解析
ソフトウェア アポロン2.0(テクノスルガ・ラボ)
データベース アポロンDB-FU5.0(テクノスルガ・ラボ)
国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)
Figure 0006210560

Figure 0006210560


Figure 0006210560

Figure 0006210560

<HNT−01株の巨視的観察>
上記各培養平板において1週間培養後に巨視的観察を行い、コロニーの直径・色調(コロニー表面および裏面)・表面性状・可溶性色素産生の有無等に関して記録した。
観察の結果、培養9日後のHNT−01株の各培養平板には下記表7に示す特徴が認められた。また、各培養平板の巨視的観察像を図11に示す。
Figure 0006210560

<HNT−01株の微視的観察>
HNT−01株の各培養平板の微視的観察像を図12乃至図17に示す。
・栄養菌糸
菌糸は寒天表面上もしくは寒天内に形成され、無色、有隔壁菌糸の形成が認められた。また、栄養菌糸上に球形、亜球形の無色の厚膜胞子が形成される様子が認められた(図17)。
・無性生殖器官
1.分生子柄および分生子形成細胞
分生子柄は栄養菌糸より直立し、規則または不規則的に分岐し、集合して羊毛状の塊(房)を形成するのが認められた(図12、図13)。
分生子形成細胞であるフィアライドはアンプル形で、分生子柄の先端部に形成され、いくつかが集合して、緑色の分生子塊を形成する様子が観察された(図14、図15)。
2.分生子
分生子はフィアロ型分生子で、無色〜緑色、亜球形〜卵形、1細胞、表面は平滑であった(図16)。
・有性生殖器官
約6週間の培養検体において有性生殖器官の形成は確認できなかった。
<考察>
HNT−01株から得られた28S rDNA-D1/D2塩基配列は、アポロンDB-FUに対するBLAST相同性検索の結果、子嚢菌類の一種であるTricoderma atroviride CBS351.93の塩基配列と相同率100%の相同性を示した(表3)。
国際塩基配列データベースに対する相同性検索の結果においては、HNT−01株の28S rDNA-D1/D2塩基配列は子嚢菌類の一種であるTricoderma atrovirideおよびHypocrea atroviridisの複数の塩基配列と相同率100%の相同性を示した(表4)。
相同性検索結果にみられるHypocrea atroviridisとTricoderma atrovirideはテレオモルフ(有性時代)とアナモルフ(anamorph)の関係にあることが知られている(Dodd et al., 2003)。
上記相同性検索で得られた上位の塩基配列をもとに作成した系統樹において、HNT−01株はTricoderma atrovirideおよびHypocrea atroviridisと同一の系統樹を形成した(図9)。
アポロンDB-FUに対するBLAST相同性検索の結果、HNT−01株のITS-5. 8S rDNA塩基配列は、子嚢菌の一種であるTricoderma atrovirideの複数の塩基配列と相同率100%の相同性を示した(表5)。
国際塩基配列データベースに対する相同性検索の結果においては、HNT−01株のITS-5. 8S rDNA塩基配列は、子嚢菌門の一種であるTricoderma atrovirideおよびHypocrea atroviridisの複数の塩基配列と相同率100%の相同性を示した(表6)。
上記相同性検索で得られた上位の塩基配列をもとに作成した系統樹において、HNT−01株はTricoderma atrovirideおよびHypocrea atroviridisと同一の系統樹を形成した(図10)。
コロニー性状および形態観察の結果、HNT−01株は生育が早く、黄緑色から緑色系で羊毛状からビロード状のコロニーを形成(表7、図11)、分生子柄は規則または不規則的に分岐し、成熟したコロニーでは分生子柄が集合して羊毛状の塊(房)を形成している。
また、フィアライドの先端に緑色の分生子塊を形成し、栄養菌糸上に厚膜胞子を形成する等の形態的特徴(図12乃至図17)が観察された。
これらの特徴は子嚢菌門のアナモルフ菌類であるトリコデルマ(Tricoderma)属の特徴と良く一致し、28S rDNA-D1/D2およびITS-5. 8S rDNA塩基配列解析の結果より、HNT−01株の帰属が推定されるトリコデルマ・アトロビリデ(Tricoderma atroviride)の特徴に類似していると考えられる。
一方、ヒポクレア(Hypocrea)属の特徴となる有性生殖器官の形成は観察されなかった。
以上から、HNT−01株はトリコデルマ・アトロビリデ(Tricoderma atroviride)に属すると推定される。
そして、HNT−01株を新規微生物として、平成24年9月7日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託した(受託番号NITE P−1419)。
本発明で得られたHNT−01株のように、肥料の原体として使用される十和田石ケーキや、凝灰岩の加工済み乾燥微細粉上から単離された例は過去に無い。
また、実験例1において、十和田石ケーキを滅菌しない状態で、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の増殖が抑制された事と、採掘場の環境から、空中を浮遊するトリコデルマ(Tricoderma)属菌が、たまたま乾燥途上の十和田石ケーキに付着したとは考えらないことから、HNT−01株は、十和田石が切り出され、加工される過程で発生する微細粉排水中や、その排水を沈殿、回収、及び乾燥される工程の中でその生活環を保ち、最終製品である乾燥十和田石ケーキ上にて、厚膜胞子を形成していたものと考えられる。
十和田石の採掘坑道は、地下10m付近にあり、湿度は90%近くあるが、気温は年間を通じて約10℃とカビの生育には低温である。そのような環境にも関わらず、図1のように、坑道内では複数のカビの菌糸が発見されることがある。菌糸の生育は、付近に木屑、或いは鉱物油等が飛散している場所で顕著であるが、何れの有機物も周囲を覆う十和田石の岩盤からすると極少であり、菌糸も、木屑や油が無い十和田石の岩盤上であっても、旺盛に生育する様を観察することが出来る。
尚、十和田石が切り出されて以降、HNT−01株が生活環を保てるような炭素源は殆ど存在しない為、HNT−01株は、坑道内にある木屑や機械油等の微量の有機物を栄養源とする一方で、無機鉱物である十和田石上あっても生活環の維持が出来る、「低温、及び貧栄養環境耐性微生物」である可能性が強く示唆される。
このように、肥料の原体(コア)として使用されている緑色凝灰岩の乾燥微細粉上で、生活環を持ち、尚且つ低温耐性も有していたことからも、トリコデルマ属菌は、実用化に成功した例が極めて少ない微生物であるが、HNT−01株は、低コストで適応用途の広い、新型微生物による植物防除剤の開発を進めることが出来るものと期待される。

Claims (2)

  1. 以下の工程を含む植物病原菌の増殖抑制方法。
    (1)植物病原菌の増殖抑制能を有し、受託番号がNITE P−1419であるトリコデルマ(Trichoderma)属に属する微生物を培養する工程
    (2)前記培養した微生物を植物土壌に植菌する工程
  2. 植物病原菌は、リゾクトニア(Rhizoctonia)属又はフザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌である請求項1記載の植物病原菌の増殖抑制方法。
JP2014540656A 2012-10-10 2012-10-10 トリコデルマ(Trichoderma)属菌を用いた植物病原菌の増殖抑制方法 Expired - Fee Related JP6210560B2 (ja)

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