JP6209922B2 - (メタ)アクリレート系グラフトポリマー及びその製造方法 - Google Patents
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項1.
(A)α位がハロゲン置換されたアクリレートモノマーから誘導された構成単位、及び、必要に応じて
(B)その他のモノマーから誘導された構成単位
を含有する(メタ)アクリレート系ポリマー
の前記α位を起点として、フリーラジカル重合性モノマーを:
(i) ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)法で;又は
(ii) 前記ハロゲンがヨウ素の場合はATRP法、若しくはヨウ素移動重合法で
グラフト重合させる工程
を含む、(メタ)アクリレート系グラフトポリマーの製造方法。
項2.
α位がハロゲン置換された前記アクリレートモノマーが、下記式(I)〜式(III)のいずれかで表わされる、項1に記載の製造方法
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基若しくは環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(ただし、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)又は−CH2CH(OY1)CH2−基(ただし、Y1は水素原子またはアセチル基)であり、
R1は、炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)
R2は、炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)
R3〜R7は、同一又は異なって、水素若しくはハロゲン原子;炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;置換されていてもよいアリール基;又はOR8基(R8は炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)である。)。
項3.
前記フリーラジカル重合性モノマーが、(メタ)アクリレート類及びスチレン類からなる群より選択される少なくとも一種のフリーラジカル重合性モノマーである、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
ハロゲン置換された前記アクリレートモノマーが、α位が塩素原子又は臭素原子で置換されたアクリレートモノマーである、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5.
(A)α位がグラフトされているアクリレートモノマーから誘導された構成単位、及び、必要に応じて
(B)その他のモノマーから誘導された構成単位
を含有する(メタ)アクリレート系グラフトポリマー。
項6.
項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られうる、項5に記載の(メタ)アクリレート系グラフトポリマー。
本発明の製造方法は、
(A)α位がハロゲン置換されたアクリレートモノマーから誘導された構成単位、及び、必要に応じて
(B)その他のモノマーから誘導された構成単位
を含有する(メタ)アクリレート系ポリマー
の前記α位を起点として、フリーラジカル重合性モノマーを:
(i) ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)法で;又は
(ii) 前記ハロゲンがヨウ素の場合はATRP法、若しくはヨウ素移動重合法で
グラフト重合させる工程
を含む、(メタ)アクリレート系グラフトポリマーの製造方法である。
構成単位(A)は、α位がハロゲン置換されたアクリレートモノマー(a)から誘導される。
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基若しくは環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(ただし、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)又は−CH2CH(OY1)CH2−基(ただし、Y1は水素原子またはアセチル基であり、
R1は、炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)
上記において、脂肪族基はアルキレン基(特に炭素数1〜4、例えば、1又は2)であることが好ましい。芳香族基および環状脂肪族基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。
上記において、R1は、炭素数が好ましくは2〜6である。また、R1は、フッ素原子で置換されていてもよく、パーフルオロアルキル基であってもよい。また、R2の具体的な例として、イソボルニル、ボルニル、フェンシル、アダマンチル、シクロヘキシル及びフェニル等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
R2は、炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)
R2の具体的な例として、イソボルニル、ボルニル、フェンシル、アダマンチル、シクロヘキシル及びフェニル等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
R3〜R7は、同一又は異なって、水素若しくはハロゲン原子;炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;置換されていてもよいアリール基;又はOR8基(R8は炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)である。)
R3〜R7の具体的な例として、イソボルニル、ボルニル、フェンシル、アダマンチル、シクロヘキシル及びフェニル等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
構成単位(B)は、α位がハロゲン置換された前記アクリレートモノマーとは異なるモノマー(b)から誘導された構成単位である。
CH2=CA1COOA2
(式中、A1は水素原子またはメチル基、A2はCnH2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基である。)で示されるアクリレート類であってもよい。
(メタ)アクリレート系ポリマーは、グラフト重合工程において、幹ポリマーとして使用される。
幹ポリマーとなる(メタ)アクリレート系ポリマーの前記α位を起点として、フリーラジカル重合性モノマー(c)をATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)法でグラフト重合させる。
PEG(メタ)アクリレートとしては、PEGメタクリレートが特に好ましい。
また、例えば、最終的に得られる(メタ)アクリレートグラフトポリマーに疎水性を付与したい場合、モノマー(c)として、疎水性ポリマーがグラフト重合により形成されるようなモノマーを選択すればよい。そのようなモノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリレート類としては、例えば、下記式(X)で表わされるアルキル(メタ)アクリレート及びフルオロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記において、R11は好ましくは炭素数2〜10のアルキル基又はフルオロアルキル基である。上記式(VIII)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、ステアリルアクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタアクリレート等が挙げられる。
本発明の(メタ)アクリレート系グラフトポリマーは、
(A)α位がグラフトされているアクリレートモノマーから誘導された構成単位、及び、必要に応じて
(B)その他のモノマーから誘導された構成単位
を含有する(メタ)アクリレート系グラフトポリマーである。
重合管にモノマーであるα-クロロアクリル酸パーフルオロブチルエチルエステル[α-Cl(C4)アクリレート]と開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1 mol%(対モノマー)で投入し、Arにて10 分間バブリングした後、真空脱気-Ar 充填の操作を3 回繰り返した。その後Ar 雰囲気下で、60°Cに加熱し、18 時間静置した。反応溶液を大量のメタノールに注ぎ、その後、12000 rpm、 10 分間遠心分離を行うことで上澄み液を除去し、60°C、2 時間減圧乾燥することで白色の固体を得た。なお、α-Cl(C4)アクリレートは重合前に減圧蒸留を行うことで、重合禁止剤等の不純物を除いたものを使用した。得られたポリマーをフッ素系溶剤HCFC225[AK-225(旭硝子)]で希釈することにより1重量%溶液を調製し(ポリマーの溶媒への溶解が困難であった場合は、溶液に適宜超音波を照射して溶解を促進させた)、その後シリコン基板上に展開し、回転数2000 rpm、 30 秒の条件にてスピンコート法により薄膜を製膜した。製膜に使用したシリコン基板はアセトン(試薬特級)に浸漬し、超音波洗浄機で10 分間洗浄後、電子工業用アセトン、HCFC225[AK-225(旭硝子)]を用いて同様に洗浄したものを用いた。製膜後、室温にて2 時間減圧乾燥させた。
含フッ素ポリマー薄膜を調製する際のモノマーをα-Cl(C4)アクリレートとアクリル酸パーフルオロブチルエチルエステル(C4 アクリレート)とすること以外は[製造例1]と同じ方法で含フッ素ポリマー薄膜を調製した。仕込みのモノマー比は、α-Cl(C4)アクリレート : C4 アクリレート = 1 : 10(mol%)とした。
その後、実施例1 と同様の方法で含フッ素ポリマー薄膜上より親水性のポリマーであるPMTAC をグラフトした。
実施例1におけるPMTACをグラフトする前のα-Cl(C4)アクリレートホモポリマー薄膜を比較例1とする。
実施例2におけるPMTACをグラフトする前のα-Cl(C4)アクリレート/C4 アクリレート共重合体薄膜を比較例2とする。
含フッ素ポリマー薄膜を調製する際のモノマーをα-Cl(C4)アクリレートからC4 アクリレートに変更する以外は[実施例1]と同じ方法で含フッ素ポリマー薄膜を調製し、その後、実施例1 と同様の方法で含フッ素ポリマー薄膜上より親水性のポリマーであるPMTACをグラフトさせる操作を行った。
XPS測定は、Phi ESCA 5800 (Physical Electronics, Inc.)を用いた。測定光源には単色化Al Kαを用い、加速電圧14 kV、電流25 mA、光電子放出角45°で測定(表面分析深さ数nm)を行った。
表面改質前である比較例1と表面改質後である実施例1の対水接触角の測定を行った。本試験は、25℃、湿度60%以下の条件にて行い、水滴体積を2 μlとした。装置は、DSA-10 (Kruss Co., Ltd.製)を用いた。
[試験例1]と同様にα-Cl(C4)アクリレート/C4 アクリレート共重合体薄膜の表面改質前後でのXPS 測定の結果を示す。改質前の薄膜である[比較例2]の測定では、F1s、C1s、O1s に起因したスペクトルがそれぞれ観察でき、ピークの積分比より求めた表面組成比も理論値の値と同値であった。また、C1s のハイレゾリューション測定においても、CF3 基、CF2 基に由来するケミカルシフトピークが観察された。また、表面改質後[実施例2]のXPS 測定プロファイルにおいては、改質前と同様にF1s、C1s、O1s に起因したスペクトルがそれぞれ観察でき、ピークの積分比より求めた表面組成比もフッ素薄膜の理論値の値と同値であった。しかし、表面改質後のサンプルを水和状態[Macromolecules, 43, 454(2010)に記載の方法]で測定したXPS の結果は、F1sのスペクトルが完全に消失し、N1sのピークが観察された。改質後の水和状態での薄膜の表面組成比はC/O/F =84/12/2となり、これは、改質に用いたポリマーであるPMTAC の表面組成比に近い値であった。また、C1s のハイレゾ測定においても、CF3 基、CF2 基の結合由来のケミカルシフトピークが消失していることが確認された。このことより、薄膜表面全体にわたり、PMTAC がグラフトされていることが確認できた。
表面改質後のC4 アクリレート薄膜[比較例3]とα-Cl(C4)アクリレート/C4 アクリレート共重合体薄膜[実施例2]の空気雰囲気下、水雰囲気下での接触角測定を行った。空気雰囲気下における対水接触角の測定条件は実施例1と同様である。水雰囲気下での接触角測定は、ガラス製の容器に水を入れ、水中にて専用治具とマグネットで試料測定面と地面と向かい合わせるように固定し、シリンジにて気泡2μlを測定面に静置することで行った.接触角計で水中における気泡の接触角を測定し、180°から気泡の接触角を引いた値が水雰囲気中での対水接触角である。この方法で接触角を測定することにより水と環境応答した後の表面化学組成が議論できる。
[比較例3]および[実施例2]の空気雰囲気中での対水接触角は、どちらも100°以上を示した。一方、水中における接触角は、比較例3は61°、実施例2では36°と異なる結果が得られた。比較例3の61°という値は、C4 アクリレート薄膜の水雰囲気下での接触角[Macromolecules, 38, 5699(2005)]、[実施例2]の36°という値はMTAC ポリマーブラシ薄膜の水雰囲気下での接触角[Langmuir, 28, 7212(2012)]とほぼ一致することを確認済みである。これらの結果から、C4 アクリレート薄膜表面からPMTAC はグラフトできておらず、α-Cl(C4)アクリレート/C4 アクリレート共重合体薄膜からはPMTAC がグラフトできていることが確認できた。このため、α-Cl(C4)アクリレートのα位のCl を起点としてPMTAC がグラフトしているといえる。
実施例2で用いた幹ポリマー[α-Cl(C4)アクリレート/C4 アクリレート共重合体]について、環境応答性ポリマーとしての利用できる可能性を調べる目的で、温度依存水平力顕微鏡(LFM)測定を行った。結果を図1に示す。この結果から、このベースポリマー薄膜表面のTgはおよそ240K(約−33.2℃)であろうと推定された。したがって、このTgよりも高い温度(例えば常温:以下、常温は断らない限り25℃とする)で使用する場合には、グラフトされた枝ポリマーは動くことができるので、環境応答性を発現しうることが判った。
Claims (3)
- (A)α位がハロゲン置換されたアクリレートモノマーから誘導された構成単位、及び、
必要に応じて
(B)その他のモノマーから誘導された構成単位
を含有する(メタ)アクリレート系ポリマー
の前記α位を起点として、フリーラジカル重合性モノマーを:
(i) ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)法で;又は
(ii) 前記ハロゲンがヨウ素の場合はATRP法、若しくはヨウ素移動重合法で
グラフト重合させる工程
を含む、(メタ)アクリレート系グラフトポリマーの製造方法であって、
α位がハロゲン置換された前記アクリレートモノマーが、下記式(I)〜式(III)のいずれかで表わされる、製造方法
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基若しくは環状脂肪族基、−CH 2 CH 2 N(R 1 )SO 2 −基(ただし、R 1 は炭素数1〜4のアルキル基である。)又は
−CH 2 CH(OY 1 )CH 2 −基(ただし、Y 1 は水素原子またはアセチル基)であり、
R 1 は、炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)
R 2 は、炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)
R 3 〜R 7 は、同一又は異なって、水素若しくはハロゲン原子;炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;置換されていてもよいアリール基;又はOR 8 基(R 8 は炭素数1〜30の、置換されていてもよい、直鎖状又は分岐状の、環状構造を含んでいてもよい、アルキル基若しくはアルケニル基;炭素数4〜20の、置換されていてもよい、水素原子(H)に対する炭素原子(C)の比率C/Hが0.58以上の、環状アルキル基若しくは環状アルケニル基;又は置換されていてもよいアリール基である。)である。)。 - 前記フリーラジカル重合性モノマーが、(メタ)アクリレート類及びスチレン類からなる群より選択される少なくとも一種のフリーラジカル重合性モノマーである、請求項1に記載の製造方法。
- ハロゲン置換された前記アクリレートモノマーが、α位が塩素原子又は臭素原子で置換されたアクリレートモノマーである、請求項1又は2に記載の製造方法。
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