JP6207063B2 - 能動型防振装置及び能動型防振方法 - Google Patents

能動型防振装置及び能動型防振方法 Download PDF

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Description

本発明は、能動型防振装置及び能動型防振方法に関するものである。
近年、機械構造物の高速化・軽量化等に伴い、振動抑制の要求が高まっていることから、高い制振効果を期待できる能動型振動制御のニーズが増加している。しかしながら、能動型振動制御には、対象構造物の速度等の状態量を得るためにセンサを用いることによるコストの増大やセンサの設置空間の確保、そしてコロケーションが成立しないことによる制振性能の低下やシステムの不安定化といった問題が存在する。さらに、一般的な能動型振動制御では、対象構造物のモデルを用いて制御系設計を行うため、対象が変わる度に構造解析やシステム同定等の負荷がかかる。
こうした問題を改善するため、疑似DVFB(Direct Velocity FeedBack)制御則によるセルフセンシングかつ制御対象に関してモデルフリーの振動制御手法が提案されている(非特許文献1)。この手法では、まず電磁アクチュエータにセルフセンシング手法を適用し、アクチュエータとアクチュエータの制振対象構造物への取り付け点の相対速度を得る。次に、アクチュエータモデルのみを用いて設計したカルマンフィルタにより、アクチュエータおよびアクチュエータの制振対象構造物への取り付け点の状態量を推定する。そして推定された状態量を用いて、疑似DVFB制御則から制御入力を算出し、アクチュエータにその力を発生させる。疑似DVFB制御則はアクチュエータモデルのみを用いて設計するものなので、以上の手法により、セルフセンシングかつ制御対象に関してモデルフリーの振動抑制が可能となる。
「DVFBに基づくセルフセンシング・モデルフリー振動制御(シミュレーションによる検討)」日本機械学会論文集C編78巻793号
しかしながら、上記従来の能動型振動制御では、アクチュエータのモデル化誤差が存在する実システムにおいて、たとえばアクチュエータの慣性マスの質量やバネ剛性に製造上の個体差(ばらつき)があると、十分な制振効果が得られないという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、製造上の個体差を吸収でき、安定した制御を実現できる能動型防振装置及び能動型防振方法を提供することである。
本発明は、アクチュエータと制振対象構造物との取り付け点の状態量を推定するカルマンフィルタと、当該カルマンフィルタの出力値が入力される線形2次レギュレータと、を備え、アクチュエータと制振対象構造物との取り付け点に、アクチュエータの振動に影響を与えない演算上の、質量mν,剛性kν,減衰係数cνを有する仮想構造物が存在するものとして線形2次レギュレータを設計し、先のカルマンフィルタで推定された状態量を、仮想構造物への取り付け点を含めたアクチュエータの状態量とし、線形2次レギュレータ制御則により算出された制御力をアクチュエータで発生させる。
本発明によれば、モデル化誤差の存在する実システムにおいても、製造上の個体差を吸収でき、セルフセンシングかつ制御対象に関してモデルフリーで、より高く安定した制御を実現できる能動型防振装置及び能動型防振方法を提供することができる。
本発明の一実施の形態で用いられる電磁気アクチュエータの機械的モデルを示す図である。 図1の電気等価回路である。 図1のアクチュエータを示すモデル図である。 本発明に係るLQR制御ロジックを説明するためのアクチュエータの取り付け点に仮想構造物を導入した実施形態を示すモデル図である。 本発明の実施形態に係る制御系を示すブロック図である。 本発明のシミュレーションに用いたアクチュエータと制振対象構造物を示すモデル図である。 本発明のシミュレーションに用いたアクチュエータと仮想構造物と制振対象構造物を示すモデル図である。 仮想構造物を導入した実施例と仮想構造物を導入しない比較例について、アクチュエータのコンプライアンスのシミュレーション結果を示すグラフである。 仮想構造物を導入した実施例と仮想構造物を導入しない比較例について、制振対象構造物のコンプライアンスのシミュレーション結果を示すグラフである。 仮想構造物を導入した実施例について、仮想構造物と制振対象構造物のコンプライアンスのシミュレーション結果を示すグラフである。 カルマンフィルタ及びLQR制御則による制振制御を実行した場合における制振対象構造物のコンプライアンスのシミュレーション結果を示すグラフである。 カルマンフィルタ及びLQR制御則による制振制御を実行した場合におけるカルマンフィルタにより推定された制振対象構造物のコンプライアンスのシミュレーション結果を示すグラフである。 ロバスト安定性を評価するための制御系において、LQR制御則と疑似DVFB制御則による制振効果を示すグラフである。 本発明を一般の構造物として多自由度系に適用する場合の制振対象構造物の一例を示す斜視図である。 図14に示す有限要素モデルのメッシュ分解図を示す図である。 図14に示す有限要素モデルに本発明を適用した場合の点Pのコンプライアンスのシミュレーション結果を示すグラフである。 図14に示す有限要素モデルに本発明を適用した場合のカルマンフィルタにより推定された点Pのコンプライアンスのシミュレーション結果を示すグラフである。
日本国特許庁の電子出願の仕様制限により、明細書の本文中でテキストデータとして使用できない文字・記号等が存在する。下記式1などに示す、一般的に「xドット」と称される「x」の記号の頭部にドット記号を付した、いわゆる微分記号は、明細書の本文中で使用できない。このため本明細書においては、微分記号としてのxドットには記号「S」を用いるが、イメージデータによって入力した数式においては本来のxドット記号を用いることもある。
本発明の実施形態は、より高いロバスト性を実現するために線形二次ガウシアン制御則(Linear−Quadratic−Gaussian,以下、LQG制御則ともいう。)に基づく、セルフセンシング(センサレス)かつ制御対象に関してモデルフリーの振動制御手法を用いた能動型防振装置によって前述の課題を解決する。本発明の実施形態では、まず制振装置として電磁気アクチュエータを用いることで制御対象の状態量検出に関するセンサレス化を行う。すなわち、電磁気アクチュエータで発生する逆起電圧とマグネットに対するコイルの相対速度とが比例関係にあることを利用し、逆起電圧から制振対象構造物に対するアクチュエータの相対速度を得ることによりセンサレス化を実現させる。次に、アクチュエータモデルのみを用いてカルマンフィルタを設計し、制振対象構造物の取り付け点の状態を含めたアクチュエータの状態量を推定する。最後に、カルマンフィルタにより推定された状態量を用いて、線形二次レギュレータ制御則(Linear−Quadratic−Regulator,以下、LQR制御則ともいう。)により制御入力を算出し、アクチュエータにその力を発生させる。特に本実施形態で用いるLQR制御則は、任意の制御対象を表わす仮想構造物を導入したモデルに対し設計したものであるため、アクチュエータの慣性マスの質量やバネ剛性などの誤差を吸収しつつ、セルフセンシングかつ制御対象に関してモデルフリーの振動抑制が可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、「1.制御系設計」にて本発明の制御ロジックについて説明したのち、「2.1自由度系モデルへの適用」にて、アクチュエータを含めた1自由度系モデルに対し本発明の手法を適用し、シミュレーションによって仮想構造物の導入による影響及び制振効果を確認するとともに、上記従来の疑似DVFB制御則による制振手法との比較を含めたロバスト安定性を評価する。さらに、「3.有限要素モデルへの適用」にて、一般構造物への適用可能性を検証するため、片持ち平板を対象構造物としたFEモデルに対し本発明の手法を適用し、多自由度系モデルにおいても制振効果が得られることを示す。
1.制御系設計
《センサレス化》
電磁気アクチュエータを用いたセンサレス化手法に関する従来研究から、本研究が関連するセンサレス化の原理について簡便に説明する。図1は電磁気アクチュエータの機械的モデルを示し、図2はその電気等価回路を示す。図1に示すように、本例の能動型防振装置は、制振対象構造物1の振動を電磁気アクチュエータ2により抑制するものであり、電磁気アクチュエータ2は、図示する上下方向に振動する慣性マス21と、慣性マス21に対して固定されたコイル22と、制振対象構造物1に設けられたマグネット(永久磁石)23とを備える。ちなみに、図1に示す本例の能動型防振装置は本発明の一例であり、たとえばコイル22が制振対象構造物1側に固定され、マグネット23が慣性マス21側に固定された、コイル22とマグネット23が逆の構成の電磁気アクチュエータなど、種々の電磁気アクチュエータ2にも適用することができる。
なお、図1及び図2における各記号は、慣性マス21を含むアクチュエータ2の質量m、アクチュエータ2の剛性k、アクチュエータ2の減衰係数c、コイル22(=慣性マス21)の変位x、マグネット23(=制振対象構造物1)の変位x、コイル22に繋げたシャント抵抗の抵抗r、アクチュエータ2で発生する逆起電圧E、アクチュエータ2への入力電圧V、アクチュエータ2に加わる電圧V、シャント抵抗間電圧V、アクチュエータ2を流れる電流I、コイル22のインピーダンスZをそれぞれ表す。シャント抵抗間電圧Vを計測することで電流Iを得る。なお、Zはコイルの抵抗RcおよびインダクタンスLcを用いて表されることもある。
ここで、逆起電圧E(t)と、マグネット23に対するコイル22の相対速度Sxrel(t)(=dxrel/dt)は、逆起電力定数Kを用いると、下記式1のような関係が成り立つ。なお、マグネット23に対するコイル22の相対速度Sxrel(t)は、図1に示す実システムでは制振対象構造物1に対するアクチュエータ2の相対速度に対応する。
Figure 0006207063
逆起電圧E(t)を直接計測し、式1を用いれば相対速度Sxrel(t)が得られるが、入力電圧Vが作用している場合に、逆起電圧E(t)はコイル22内で発生するため直接計測できない。そこで、図2に示したアクチュエータの電気等価回路より次のような関係を導く。
Figure 0006207063
これら式1及び式2より、相対速度Sxrel(t)は、以下のように求めることができる。
Figure 0006207063
このように式3から相対速度Sxrel(t)を得ることにより、相対速度検出に関するセンサレス化が可能になる。すなわち、上記式3においてコイル22のインピーダンスZ、逆起電力定数Kは既知であるから、コイルに流れる電流Iと電圧Vを計測すれば、制振対象構造物1に対するアクチュエータ2の相対速度Sxrelを、加速度センサなど機械的物理量を計測するセンサを設けることなく求めることができる。
《カルマンフィルタ設計》
本例の能動型防振装置では、モデルフリー制御を実現するため、アクチュエータモデルのみを用いたカルマンフィルタを設計し、状態量を推定する。つまり、制振対象構造物のモデルを用いることなく、アクチュエータモデルのみを用いたモデルフリーの制御方法を採用する。これにより制振対象構造物が変わる度に構造解析やシステム同定等をするための負荷が軽減される。
本例のアクチュエータのモデルを図3に示す。同図に示すように、アクチュエータは1自由度系モデルで表され、各記号はそれぞれアクチュエータの質量m,アクチュエータの剛性k,アクチュエータの減衰係数cであり、uは電磁気アクチュエータの発生力、すなわち制御入力を示す。またxはアクチュエータの質量の変位,xは制振対象構造物への取り付け点の変位を表す。推力定数をKとすると式4が成立する。
Figure 0006207063
上述したセンサレス化の手法により相対速度Sxrel(t)が得られるとして、カルマンフィルタを設計する。図3より、アクチュエータの運動方程式は下記式5で表される。
Figure 0006207063
ここで、システム雑音を下記式6とおく。
Figure 0006207063
いま、νを観測雑音、yをセルフセンシングによって得られる観測出力であるアクチュエータとアクチュエータの対象構造物への取り付け点の相対速度とすると、式5と式6より、カルマンフィルタ設計に用いる状態方程式は下記式7のように表される。
Figure 0006207063
ここで、上記式7におけるx,y,A,B,G,C,D,Hは以下のとおりである。
Figure 0006207063
これより、制振対象構造物のアクチュエータの取り付け点の状態を含めたアクチュエータの状態量は、カルマンフィルタにより推定が可能になる。
《LQR制御則》
制振対象構造物に関してモデルフリーの振動抑制を実現させるためのLQR制御則(評価関数に2次形式を用いて線形な状態フィードバックを導き、状態を原点に戻す閉ループ系を構成する制御則)の設計を行う。このとき、上述したカルマンフィルタのモデルを用いて設計することが考えられるが、モデルフリー制御において対象構造物の自由度を考えておらず、式7と式8より、アクチュエータの対象構造物への取り付け点に制御入力が作用しないため、このまま適用すると制御不能になる。
そこで本実施形態では、図4及び図7に示すように、アクチュエータモデルに任意の対象構造物に相当する仮想構造物を導入し、制御系を構成する。図4は、LQR制御ロジックを説明するための、アクチュエータの取り付け点に仮想構造物を導入したモデルを示す図である。同図において、mνは仮想構造物の質量,kνは仮想構造物の剛性,cνは仮想構造物の減衰係数,xνは仮想構造物の変位をそれぞれ表す。ここで、対象とする周波数帯域において仮想構造物の変位xνとアクチュエータの対象構造物への取り付け点の変位xがほぼ等しくなるように、仮想構造物の質量mν、剛性kν、減衰係数cνを設定する。たとえば、仮想構造物の質量mνを十分小さく、剛性kνを十分大きく、減衰係数cνを十分小さくすることで、対象とする周波数帯域において仮想構造物の変位xνとアクチュエータの対象構造物への取り付け点の変位xをほぼ等しくすることができる。図4より、この系の運動方程式は下記式9で表される。
Figure 0006207063
またシステム雑音を下記式10とすると、式9と式10より、本実施形態のLQR制御則の設計に用いる状態方程式は下記式11のようになる。
Figure 0006207063
Figure 0006207063
ここで、式11におけるx,A,B,Bは下記式12のとおりである。
Figure 0006207063
制振対象構造物に関してモデルフリーの振動抑制を実現させるためのLQR制御則の設計を行う場合に、通常であればアクチュエータモデルのみを用いたカルマンフィルタで状態量を推定しても、アクチュエータの制振対象構造物への取り付け点に制御入力を作用できないが、本実施形態のように、アクチュエータの対象構造物への取り付け点に、図4に示す制御演算上の仮想構造物を導入することで、LQR制御則にアクチュエータモデルのみを用いたカルマンフィルタを適用することができることになる。
そして、この仮想構造物の物理パラメータをアクチュエータの振動に影響のない値に設定することで、LQR制御演算が可能で、しかも制振対象構造物の物理パラメータに影響されない、いわゆるモデルフリーの制振制御が実現できることになる。なお、アクチュエータの振動に影響のない仮想構造物の物理パラメータの値とは、対象とする周波数帯域において仮想構造物の変位xνとアクチュエータの対象構造物への取り付け点の変位xがほぼ等しくなる物理パラメータの値であり、具体的には、制御式に入力する仮想構造物の質量mνを十分小さく、剛性kνを十分大きく、減衰係数cνを十分小さくすることである。これについての詳細は後述する。なお、仮想構造物を導入することでアクチュエータの振動特性に影響を及ぼすことがないよう、仮想構造物の共振周波数などの共振特性は、本例の防振対象とする周波数帯域内に存在しないようにすることが好ましい。
《制御系の構成》
本実施形態では、センサレス・モデルフリーであって、且つ広範囲でロバスト安定性を有する制振制御を実現するために、上述したとおりカルマンフィルタを導入するとともに、上述したとおりLQR制御則を導出した。これらを用いて制御系を構成すると図5のようになる。図5は、本発明の実施形態に係る制御系を示すブロック図である。同図において、P(s)は任意の制振対象構造物、zは評価応答で制振対象構造物の変位、yは観測出力で制振対象構造物に対するアクチュエータの相対速度、uはアクチュエータ2からの制御入力、wは外乱入力、KはLQR制御則によって得られた状態フィードバックゲインである。これにより、センサレス・モデルフリーのLQR制御が実現できる。
2.1自由度系モデルへの適用
次に、1自由度系モデルの対象構造物にアクチュエータ2を取り付けたシステムに対し本手法を適用し、仮想構造物の導入による制振効果およびロバスト性との関係をシミュレーションにより評価する。シミュレーションに用いるモデルを図6、制振対象構造物およびアクチュエータの各パラメータを表1に示す。このシミュレーションでは図5に示す制御系を用いるが、上記《センサレス化》の項で説明したセルフセンシング手法の処理は行わず、アクチュエータとアクチュエータの制振対象構造物への取り付け点の相対速度をそのまま観測出力yに用いた。図6において、mは制振対象構造物の質量,kは制振対象構造物の剛性,cは制振対象構造物の減衰係数,xは制振対象構造物の変位をそれぞれ表す。また,wは質量mに作用する外乱である。なお、上述したカルマンフィルタで精度の高い状態量推定を行うためには、アクチュエータの固有振動数は制振対象構造物のそれよりも十分に低くする必要があるため、この条件を満たすようにパラメータを設定した。
Figure 0006207063
《仮想構造物の導入による影響》
上述したとおり、仮想構造物を導入したLQR制御則を用いるためには、仮想構造物がシステムの動特性に大きな影響を与えないこと、制振対象構造物と仮想構造物の状態量がほぼ等価であることを満たす必要がある。よって、図7に示すモデルを考え、仮想構造物のパラメータを表2に示すものとしたとき、上記要件が共に満たされているかを確認した。まず、図7に示す仮想構造物を導入したLQR制御則による実施例と、図6に示す仮想構造物を導入しない比較例のアクチュエータと制振対象構造物のコンプライアンス(振動伝達レベル[dB]及び位相[deg])をそれぞれ図8(アクチュエータのコンプライアンス)および図9(制振対象構造物のコンプライアンス)に示す。また、仮想構造物を導入したLQR制御則による実施例の、仮想構造物と対象構造物のコンプライアンス(振動伝達レベル[dB]及び位相[deg])を図10に示す。なお、図8及び図9には、実施例を実線で比較例を点線で示すようにしたが、結果的に両者は重なり合ったものとなった。また図10には仮想構造物を実線で制振対象物を点線で示すようにしたが、これについても結果的に両者は重なり合ったものとなった。
Figure 0006207063
図8および図9の結果より、仮想構造物を導入しない比較例と導入した実施例のアクチュエータと制振対象構造物のコンプライアンス(振動伝達レベル及び位相)は互いに重なりほぼ同じであるため、仮想構造物を導入したことによるシステムの動特性への影響はほとんど無いことが確認できた。また,図10の結果より、両者のコンプライアンス(振動伝達レベル及び位相)が重なりほぼ同じであるため、制振対象構造物と仮想構造物の状態量がほぼ等価であることが確認できた。以上より、仮想構造物がシステムの動特性に大きな影響を与えず、制振対象構造物と仮想構造物の状態量がほぼ等価であることを満足するように、仮想構造物のパラメータを表2に示す値に設定したとき、具体的には、仮想構造物の質量mνが十分小さく、剛性kνが十分大きく、減衰係数cνが十分小さい場合に、仮想構造物を導入したLQR制御則を用いることが可能であるということが確認された。以後、仮想構造物には表2に示したパラメータを用いることとする。
《制振効果の確認》
次に、表3のパラメータを用いてカルマンフィルタ及びLQR制御則による制御系を設計した。このときの制振対象構造物のコンプライアンスを図11に示し、カルマンフィルタにより推定された制振対象構造物のコンプライアンスを図12に示す。図11において、w/o controlの点線はアクチュエータを作動させない場合の振動伝達レベル(dB)を示し、with controlの実線はアクチュエータを作動させた場合の振動伝達レベル(dB)を示す。また図12において、Controlled responseの点線は計算値、estimated controlled responseの実線はカルマンフィルタによる推定値をそれぞれ示す。
図11の結果から、制振対象構造物の固有振動数において十分な制振効果が確認でき、また図12の結果から、カルマンフィルタによる推定精度も高いことが確認できた。なお、表3におけるLQR制御のパラメータであるQ,Rは、LQR制御器を設計する際の2次形式評価関数における制御性能及び制御入力に関する重み行列であり、Q=diag[xの重み xドットの重み xνの重み xνドットの重み]を示すものである。また、表3におけるカルマンフィルタのパラメータであるQN,RNは、システムの入力及び出力に作用する外乱(ノイズ)の大きさに関する指標を示し、NNは、入力及び出力に作用する外乱の相関度を表す指標を示すものである。以下、表4においても同じである。
Figure 0006207063
《ロバスト安定性の評価》
ロバスト安定性評価として、制御系設計に用いるアクチュエータパラメータおよび観測出力に対し、それぞれの誤差が−100%〜+1000%となる範囲で独立に変動を与えたときの安定性を調べ、従来技術の疑似DVFB制御則を適用した場合との比較を行った。この評価を行うため、表4に示すパラメータを用いて制御系の設計を行った。このパラメータは、図13に示すように、LQR制御則と疑似DVFB制御則による制振効果がほぼ同一のものとなるように設定したものである。なお図13において、LQR制御則による制振効果を実線で示し、疑似DVFB制御則による制振効果を点線で示すようにしたが、結果的に両者は重なり合ったものとなった。また図13において一点鎖線はアクチュエータを作動させない場合の振動伝達レベル(dB)を示す。
Figure 0006207063
表5に、制御の安定性が保たれるパラメータの誤差許容範囲領域を示す。表5の結果から、疑似DVFB制御則よりもLQR制御則を用いた場合の方が、パラメータ変動に対して安定性が高いことが確認できた。特に、慣性マス21を含めたアクチュエータ2の重量mの誤差許容範囲は、疑似DVFB制御の場合には下限が−51%であるのに対して、本例のLQR制御の場合は下限が−84%(=1.6倍)まで拡大した。同様に、アクチュエータ2の剛性kの誤差許容範囲は、疑似DVFB制御の場合には下限が−12%であるのに対して、本例のLQR制御の場合は下限が−25%(=2.1倍)まで拡大した。なお、両制御法とも剛性に対しては安定性が低いことがわかる。
Figure 0006207063
表5に示す誤差許容範囲は制御系が安定する範囲(制御が発散しない範囲)であって、全ての範囲で制振効果が得られている訳ではなく範囲の両端では制振効果が小さいことが確認された。このため、仮に6dBの制振効果が得られるパラメータの誤差許容範囲を検証した。この結果を表6に示す。この表6から、アクチュエータ2の剛性kの誤差許容範囲は、疑似DVFB制御の場合には下限が−12%であるのに対して、本例のLQR制御の場合は下限が−26%(=2.2倍)まで拡大した。同様に、相対速度の誤差許容範囲は、疑似DVFB制御の場合には上限が+14%であるのに対して、本例のLQR制御の場合は上限が+50%(=3.6倍)まで拡大した。
Figure 0006207063
3.有限要素モデルへの適用
有限要素モデルに対し本制御手法を適用する。有限要素モデルの解析にはANSYS14.0を使用した。制振対象構造物は、図14に示すような幅200mm×厚さ20mm×長さ300mmの平板とし、拘束条件は片端固定、要素タイプはSOLID186、メッシュサイズは10mmとした。そして、物性値はヤング率70GPa,ポアソン比0.3,質量密度2680kg/mとした。対象構造物のメッシュ分割図を図15に示す。シミュレーションにおいて、アクチュエータの取り付け点、加振点、応答点を全て図14中の点Pとし、採用モード数を6,全モードのモード減衰比を0.5%とした。なお、このシミュレーションにおいてアクチュエータはy方向にのみ力を発生するものとする。
アクチュエータのパラメータとして表1に示す値を使用し、制御系設計のためのパラメータを表7に示す。このときの点Pのコンプライアンスを図16に示し、カルマンフィルタにより推定された点Pのコンプライアンスを図17に示す。図16において、w/o controlの点線はアクチュエータを作動させない場合の振動伝達レベル(dB)を示し、with controlの実線はアクチュエータを作動させた場合の振動伝達レベル(dB)を示す。また図17において、Controlled responseの点線は計算値、estimated controlled responseの実線はカルマンフィルタによる推定値をそれぞれ示す。図16および図17より、多自由度系を対象とした場合でも、本例の制御手法によって制振効果が得られることを確認できた。
Figure 0006207063
4.結論
以上のとおり、本例のLQG制御則に基づくセルフセンシング・モデルフリー振動制御手法の有効性は、シミュレーションによって確認できた。すなわち、セルフセンシングかつ制振制御対象に関してモデルフリーの振動抑制を実現するために、制振対象構造物のモデルを用いずに、アクチュエータシステムに対するカルマンフィルタおよびLQR制御則を設計し、制御系を構築した。そして、1自由度系に対し本制御手法を適用し、有効な制振効果が得られることを確認した。次に、LQR制御則を用いた場合と疑似DVFB制御則を用いた場合とでロバスト性の比較を行い、LQR制御則のロバスト性の高さを確認した。最後に、FEMにより作成した多自由度系モデルに対し本制御手法を適用し、同様に有効な制振効果が得られることを確認した。
本例によれば、センサレス・モデルフリー・LQR制御手法を用いた能動型防振装置を提供することができる。そして、アクチュエータを含めた1自由度系モデルおよびFEMモデルを対象とした多自由度系モデルの振動抑制に本例の手法を適用することで、モデル化誤差の存在する実システムにおいて、セルフセンシングかつ制御対象に関してモデルフリーで、より高い制振効果を得られることが期待できる。
上記アクチュエータ2が本発明に係る振動検出手段に相当し、上記図7のコントローラが本発明に係る制御手段に相当する。
1…制振対象構造物
2…アクチュエータ
21…慣性マス
22…コイル
23…マグネット

Claims (9)

  1. 慣性マスを含むアクチュエータと、
    前記アクチュエータと制振対象構造物との間の相対振動を検出する振動検出手段と、
    前記振動検出手段により検出される相対振動と前記アクチュエータへの出力値とが入力され、前記アクチュエータと前記制振対象構造物との取り付け点の状態量を推定するカルマンフィルタと、当該カルマンフィルタの出力値が入力される線形2次レギュレータとを含む制御手段と、を備える能動型防振装置において、
    前記制御手段は、
    前記アクチュエータと前記制振対象構造物との取り付け点に、前記アクチュエータの振動に影響を与えない演算上の、質量mν,剛性kν,減衰係数cνを有する仮想構造物が存在するものとして前記線形2次レギュレータを設計し、前記カルマンフィルタで推定された状態量を、仮想構造物への取り付け点を含めたアクチュエータの状態量とし、前記線形2次レギュレータ制御則により算出された制御力をアクチュエータで発生させる能動型防振装置。
  2. 前記仮想構造物の質量mν、剛性kν、減衰係数cνは、対象とする周波数帯域において前記仮想構造物の変位xνと前記アクチュエータの制振対象構造物への取り付け点の変位xがほぼ等しくなるように設定される請求項1に記載の能動型防振装置。
  3. 前記アクチュエータは電磁気アクチュエータからなり、
    前記振動検出手段は、前記電磁気アクチュエータのコイルとマグネットとの間の相対振動を、前記電磁気アクチュエータに加わる電圧と、前記電磁気アクチュエータに流れる電流と、前記コイルのインピーダンスとから検出し、この相対振動を前記アクチュエータと制振対象構造物との間の相対振動として出力する請求項1又は2に記載の能動型防振装置。
  4. 前記仮想構造物の共振周波数は、制振対象とする周波数領域に存在しない請求項1〜3のいずれか一項に記載の能動型防振装置。
  5. 前記仮想構造物の質量mν,剛性kν,減衰係数cνは、前記アクチュエータの振動特性が前記仮想構造物の有無に拘わらず一致する値に設定される請求項1〜4のいずれか一項に記載の能動型防振装置。
  6. 前記仮想構造物の質量mνは、前記アクチュエータの質量m及び前記制振対象構造物の質量mに対して小さい値に設定される請求項1〜5のいずれか一項に記載の能動型防振装置。
  7. 前記仮想構造物の剛性kνは、前記アクチュエータの剛性k及び前記制振対象構造物の剛性kに対して大きい値に設定される請求項1〜6のいずれか一項に記載の能動型防振装置。
  8. 前記仮想構造物の減衰係数cνは、前記アクチュエータの減衰係数c及び前記制振対象構造物の減衰係数cに対して小さい値に設定される請求項1〜7のいずれか一項に記載の能動型防振装置。
  9. 電磁アクチュエータのコイルとマグネットとの間の相対振動を、前記電磁気アクチュエータに加わる電圧と、前記電磁気アクチュエータに流れる電流と、前記コイルのインピーダンスとから検出するアクチュエータのセルフセンシング機能と、
    アクチュエータモデルのみで構築されたカルマンフィルタと、を用いて制振対象構造物への取り付け点を含めたアクチュエータの状態量を推定するステップと、
    前記ステップで推定された状態量を用いて線形2次レギュレータ制御則により算出した制御力をアクチュエータから制振対象構造物に作用させるステップと、を有する能動型防振方法において、
    前記アクチュエータと前記制振対象構造物との取り付け点に、質量mν,剛性kν,減衰係数cνを有する演算上の仮想構造物が存在するものとし、
    この場合のアクチュエータの振動特性が、実際のアクチュエータの振動特性に対して、対象とする周波数帯域において前記仮想構造物の変位xνと前記アクチュエータの制振対象構造物への取り付け点の変位xがほぼ等しくなるような前記質量mν,剛性kν,減衰係数cνの値を用いて前記線形2次レギュレータを設計し、
    前記カルマンフィルタで推定された状態量を、仮想構造物への取り付け点を含めたアクチュエータの状態量とし、前記線形2次レギュレータ制御則により前記制御力を算出する能動型防振方法。
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