JP6203242B2 - 動脈冷却部材及びその使用方法 - Google Patents

動脈冷却部材及びその使用方法

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Description

本発明は、頸椎の固定と、頸動脈を通って流れる、酸素を受け取った血液の経皮的な冷却による、穏やかな脳低温療法を導入する治療とに関連する技術を統合するものである。
頸椎固定カラーは、外傷が生じた直後に、患者の首、頭部及び背骨を安定させるために、救急救命士のような初期対応者により度々用いられる。一般的に、この処置は、病院に到着する前に患者の外傷の処置を始める手助けとなることから、更なる損傷を防ぐのに有効である。治療方法の1つは、患者の脳の冷却を含んでいる。脳の冷却、すなわち、摂氏1°や2°程度僅かに脳温度を低下させることは、脳損傷に関連する有害な反応に対して神経保護効果を生じる。この穏やかな脳低温療法は、神経興奮性アミノ酸(例えば、アスパラギンやグルタミン)の放出を抑制し、これにより、炎症反応のカスケード効果を妨げる。損傷後に可能な限り早く脳冷却処置がなされれば、神経保護効果が最も明白になる。
初期対応者用のプロトコルには、脳冷却を始めるための効果的な処置が、概して組み込まれていない。例えば、患者の体の鼠径部、頭蓋及び腋下に、冷却パックを施すことは知られている。しかしながら、この種の冷却は、選択的冷却ではなく全身冷却をもたらし、患者の脳温度を低下させる上で、効果的ではない。
(発明の態様)
頸動脈部の冷却用具は、頸椎固定カラーと冷却部材を有している。頸椎固定カラーは、軸方向に所定の長さを有して延在する環状支持構造体、所定の鉛直方向長さを有する2つ以上の頬支持構造部、及び、扉で覆い隠すことができる前方開口部を含んでいる。扉は、圧迫部材を保持可能な体側面と、外側面とを有している。更に、この用具は、前方開口部内に配置され、患者の首前方部と扉上に配置された圧迫部材との間に位置させることで、環状支持構造体に保持可能な冷却部材を含んでいる。
他の実施形態では、冷却部材は、少なくとも部分的に裏地で覆われている。冷却部材は、歪められることで活性化される吸熱材料を含んでいてもよい。別の実施形態では、圧迫部材は、冷却部材の、患者の頸動脈部に対応する位置に圧力をかけるために用いられる、扉の体側面に配置された2つ以上の発泡インサート(foam inserts)を含んでいる。
他の実施形態では、扉と前方開口部とが、第1端部及び第2端部を有している。扉は、前方開口部の第1端部において、ヒンジにより支持構造体の前部に取り付けることができる。同様に、扉の第2端部は、前方開口部の第2端部において、支持構造体の前部に取り付け可能になっている。
別の実施形態では、扉と前方開口部とが、冷却部材の形状と実質的に類似した形状を有している。他の実施形態では、環状支持構造体が後方開口部を有している。
頸椎固定カラーの透視図である。 頸椎固定カラーの上方図である。 頸椎固定カラーの正面図である。 頸椎固定カラー内で用いる冷却部材の平面図である。 活性化した冷却部材により得た温度を経時的に表示したグラフである。 首バンドと共に用いる冷却部材の平面図である。 頸椎固定カラーの背面図である。
頸椎固定カラー10は、外傷の後直ぐに、患者の背骨、首及び頭部を固定させるために使用できる。図1〜3及び図7に示されているように、冷却部材と共に用いられる頸椎固定カラー10は、概略的に、患者の首前方を包む前部16と、患者の首後方を包む後部18とを備えた、環状支持構造体12を含んでいる。前部16と後部18とは、単一材料で形成されていてもよい。他の形態では、前部16と後部18とが、面ファスナーのような継手や連結機構によって、首の片側或いは両側において接続された別個の構成要素であってもよい。環状支持構造体12は、プラスチック、ポリマー、或いは、炭素繊維やポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を含む様々な材料から形成(注入又は射出成形が好ましい)できる。ある実施形態において、環状支持構造体12は、Entec Polymers社が代理店を務めるNOVA Chemicals社により製作される、SCLAIR(登録商標)の2712高密度ポリエチレンからできている。
図2及び図3を参照すると、面ファスナー・ストラップ20(図3参照)は、環状支持構造体12の前部16の近位端24上に固定された、相手先の面ファスナー・パッチ(図示省略)に脱着可能に噛合うように、後部18の遠位端22から延びている。
環状支持構造体12の前部16は、頬支持構造部26を含んでいる。この頬支持構造部26は、顎当て14の両側から概ね縦方向に延びており、患者の頬に係る領域を概ね覆うように構成されている。頬支持構造部26は、患者の頭部に重大な回転動作又は水平動作をさせないように使用することができる。頬支持構造部26は、図示されているように、環状支持構造体12の一部として一体的に形成されていてもよく、或いは、別々に形成され、適切な接着剤や連結機構により環状支持構造体12上に固定されていてもよい。他の実施形態(図示省略)において、環状支持構造体12は、頬支持部を含まなくてもよい。
図1を再度参照すると、頸椎固定カラー10は、更に、環状支持構造体12の前部16に、前方開口部28を有している。この前方開口部28は、環状支持構造体12のフレームにより構成される。従来の頸部支持器は、支持器の前部に開口部を有しているかもしれないが、この開口部は、気道が塞がれた場合に患者の気管への通路を確保するために、概ね十分な大きさに構成されているにすぎない。或いは、頸椎固定カラー10の前方開口部28は、患者の頸動脈部を両側とも露出し、気管部のみと向かい合うように、患者の首前方を横切るように設計されている。
図2に示されているように、頸椎固定カラー10は、更に、前方開口部28を覆う扉30を有している。この実施形態では、扉30の第1端部が、前方開口部28の一端又は第1端部やそれらの周辺において、ヒンジ32或いは他の適切な留め機構により、環状支持構造体12のフレームに取り付けられている。図1及び図2に示されているように、1つの実施形態では、2部位構成のヒンジが用いられている。この実施形態において、ヒンジの第1部位34は、環状支持構造体12のフレームの一部として、一体的に形成されている。具体的には、ヒンジの第1部位34が、1つ、好ましくは3つの弾性的に変形可能なフランジ部から成っていてもよい。ヒンジの第2部位36は、扉30の第1端部の一部として、一体的に形成されていてもよい。ヒンジの第2部位36は、フランジ部を変形することにより、ヒンジの第1部位34の内部に嵌合させることができる。一度嵌合させれば、ヒンジの第2部位36は、ヒンジの第1部位34のフランジ内で回転可能となり、これにより、扉30は、環状支持構造体12のフレームに対して開閉可能となる。他の実施形態において、ヒンジ32は、扉30の第1端部と環状支持構造体12のフレームとの間で一体的に形成された、リビングヒンジ(図示省略)であってもよい。
扉30の第2端部は、扉30の第2端部から延びる第2の面ファスナー・ストラップ38(図3参照)と、前方開口部28の第2端部やその近傍において、環状支持構造体12のフレーム上やその周囲に固定された、相手先の面ファスナー・パッチ(図示省略)とにより、前方開口部28の第2端部で環状支持構造体12のフレームに留めることができる。この閉鎖構造は、スナップ・フィット機構、圧入機構、ボタン、ラッチ、接着剤、或いは、他の適切な留め機構によって実現させてもよい。
上述したように、前方開口部28は、環状支持構造体12の前部16の大部分を実質的に横切って延在している。しかしながら、固定カラー10は、患者の首を支えて、屈曲動作やあごが胸の方へ下がる動作を防ぐのに十分な強度でなければならない。従来の頸部支持器では、この強度が顎当てと支持器底部との間の構成材料によりもたらされていた。しかしながら、大きな前方開口部28、及び、顎当て14とカラー10底部との間の構成材料の欠如は、特に鉛直面における、固定カラー10によりもたらされる強度及び支持力の点で妥協せざるを得ないかもしれない。従って、カラー10を着用している場合でも、患者は頭部を上下に移動させることができるかもしれない。このため、必要とされる支持力を提供し、かつ、患者が上下に頭部を移動するのを顕著に妨げるために、支持部材が環状支持構造体12に組み込まれている。
図1に示されているように、水平方向に突出した縁40は、環状支持構造体12の前部の底端部42から、直角を成して延びている。ある実施形態において、縁40は、環状支持構造体12の一部として一体的に形成されていてもよく、好ましくは、環状支持構造体12のフレームの前部16の全体を横断する態様で延びている。同様に、扉30は、図1に示されているように、扉30の頂端部から患者の体の方へ、直角を成して延びた棚部44を内部に含んでいる。この棚部44は、扉30の一部として一体的に形成されていてもよい。更に、棚部44は、使用中に扉30の一部として棚部44を屈曲可能にする切り欠き46を含んでいてもよい。
扉30が図3に示すように閉じられ、そして、患者が頭部を下へ動かそうとする際に、扉30の底部48は、縁40に接触する。同様に、扉30上の棚部44(図1及び図2参照)は、顎当て14の底部に接触することとなり、下降動作を妨げ、顎当て14とカラー10の底部との間の構成材料として扉30を効果的に利用する。
構造的な支持力を高めるために、更に、側部リブ50a及び50bが、環状支持構造体12の前部に含まれていてもよい。図2及び図3に示すように、側部リブ50a及び50bは、環状支持構造体12の外面に一体的に形成され、頬支持構造部26の頂端下から延びて、縁40に接触している。図3に示すように、側部リブ50bは分離した2片で形成され、扉30上の面ファスナーとの取り合いに配慮して、1つ目が頬支持部26の頂端から延び、2つ目が縁40から上方へ延びている。
頸椎固定カラー10は、冷却部材52と併せて使用することができる。図4に示されている冷却部材52は、前方開口部28の形状と比べて、実質的に類似しているか、わずかに大きい形状を有しているが、別の形状であってもよい。冷却部材52は、加熱活性化接着剤シール又は他の適切なシール機構で端部が閉じられた、体側パネル54と外側パネル(図示省略)とを有している。ある実施形態において、体側パネル54と外側パネルとは、半分に折畳まれて開口端が密封された1枚の材料シート、又は、全ての端部が密封された2枚の材料シートで形成されていてもよい。冷却部材52は、予め冷やされたゲルや、熱吸収力を有する他の材料等の、吸熱反応を示す冷却剤を含んでいてもよい。この吸熱パックの構成要素を、一度、混合その他の方法で活性化させたら、冷却部材52を直ちに利用することが好ましい。
ある実施形態では、患者の首と接触することとなる冷却部材52の少なくとも体側パネル54を覆う裏地を、パネルが有していてもよい。ある実施形態では、裏地が冷却部材52の体側パネル54を大部分覆っている。他の実施形態では、冷却部材52の両方のパネルが裏地で覆われている。裏地は、例えば不織材料の布で作られていてもよく、又、快適さを提供し、皮膚のかぶれ、皮膚の劣化、及び、潜在的な凍傷を防ぐために使用することができる。裏地は、パネルに付着していてもよく、或いは、取り外し可能なものであってもよい。
ある実施形態において、冷却部材のパネルは、片方或いは両方のパネルの大部分を覆うように付着された、不織材料で構成された裏地を含んでいる。パネルは、薄膜材料で構成されていてもよい。一例では、0.007mmの不織裏地が、2.5mmの直鎖状低密度白ポリエチレンフィルム(linear low density white polyethylene film)上に薄く重ねられて、冷却部材52の両方のパネルが形成されている。パネルの水分透過率は、0.41グラム/100平方インチ(645.16cm)/24時間にすることができ、酸素透過率は、9.0cc/100平方インチ(645.16cm)/24時間以下にすることができる。
この実施形態において、冷却部材52は、約10〜12インチ(約25.4〜30.48cm)の長さであり、約90〜110グラムの尿素、約45〜55グラムのCarbamakool(登録商標)、及び、水を含んでいる。他の実施形態において、冷却部材52は、約10インチ(約25.4cm)の長さであってもよく、約100グラムの尿素、約50グラムのCarbamakool(登録商標)、及び、水を含んでいてもよい。別の実施形態では、冷却部材52(the cooling element 36)は、約11インチ(約27.94cm)の長さであってもよく、約110グラムの尿素、約55グラムのCarbamakool(登録商標)、及び、水を含んでいる。これらの実施形態では、尿素結晶とCarbamakool(登録商標)とが一緒に混合され、冷却部材52のパネル間に密封されている。この実施形態において、冷却部材52は、更に、液体(好ましくは水)で満たされた、破れやすい包み(図示省略)を含んでいる。この液体で満たされた包みも、冷却部材52のパネル間に密封されている。冷却部材52を活性化するために、使用者は、冷却部材52に圧力をかけて包みを破裂させ、尿素とCarbamakool(登録商標)とを湿らせる。その後、使用者は、成分を混合して吸熱反応を開始させるために、冷却部材52を振り混ぜる。
冷却部材内の冷却剤は、活性化中に華氏20°F〜45°F、好ましくは華氏25°F〜35°Fの温度に達し、又、約10〜30分、好ましくは約15〜20分は、その温度を維持することが望ましい。冷却部材52用の適切な冷却剤は、ニューユーク州11735,シャーウッド アヴェニュー ファーミングデール125,Nortech Labs社から入手できる。
患者の皮膚上に直接配置させないようにするような、使用者への指示が伴う従来の冷却パックとは異なり、パネルに薄く重ねられた裏地布を有する冷却部材52は、20〜30分以内の間、使用者が患者の皮膚上に冷却部材52を直接配置することを可能にしている。更に、パネルフィルムに裏地布を薄く重ねること、若しくは付着することは、冷却部材52のズレを防ぎ、患者の首への使用時に頸動脈部から脱落することを防止する。
尿素、Carbamakool(登録商標)及び水の混合により引き起こされる温度の低下は、冷却部材52の外側面上で測定される。換言すれば、患者が接触することとなる温度は、冷却部材52により実現される抜熱量を評価して測定される。しかしながら、裏地布の使用は冷却部材52を隔離するため、冷却部材52の内部容量と、そこに用いられる尿素及びCarbamakool(登録商標)の量とは、患者の頸動脈部からの適切な抜熱を実現する上で重要である。
1ロットの冷却部材52を実施例に係るサンプルA〜Eとして試験を行った。各サンプルは、長さが10インチ(25.4cm)であり、100グラムの尿素と50グラムのCarbamakool(登録商標)を含んでいる。サンプルA〜Eの両パネルは、2.5mmの直鎖状低密度白ポリエチレンフィルム上に、0.007mmの不織裏地が薄く重ねられて構成されている。
パネル内に密封されている、水で満たされた破れやすい包みを破るために、サンプルを押し潰すことで、サンプルを活性化させ、その後、サンプルを10回振り混ぜた。サンプルを折り畳み、16オンス(453.6グラム)のスチロフォーム・カップに入れ込んだ。周囲温度の華氏68.7°Fを記録し、カップの底から約1インチ(2.54cm)の各冷却部材(サンプル)の折り目内に熱電対を設置した。温度記録は、1分に1回記録し、30分後を最後の記録とした。各冷却部材(サンプル)を、2分経過後に再度振り混ぜた。結果を下記の表1に示す。
Figure 0006203242
サンプルA〜Eを、バージニア州23831,チェスター,私書箱2157,Medlogix社製の市販の裏地なしの冷却パック(製造コード10−01)(比較例A〜E)と比較した。多数の裏地なしの市販の冷却パック(code packs)は、尿素と水とから構成されている。比較例A〜Eを、押し潰した後10回振り混ぜて活性化させた。比較例を折り畳み、16オンス(453.6グラム)のスチロフォーム・カップに入れ込んだ。周囲温度の華氏68.7°Fを記録し、カップの底から約1インチ(2.54cm)の各比較例の折り目内に熱電対を設置した。温度記録は、1分に1回記録し、30分後を最後の記録とした。各比較例を、2分経過後に再度振り混ぜた。結果を下記の表2に示す。
Figure 0006203242
各時間の平均温度を比較して、比較例を冷却部材(サンプル)と比較した。結果を下記の表3に示す。
Figure 0006203242
図5に示すように、裏地付きの冷却部材52(系列1に分類)は、驚くことに活性化されて1分以内で華氏31.46°Fの平均温度に達している(図5の時間2分に示されている)。冷却部材は、活性化から4分以内の華氏27.14°Fの平均最低値まで冷え続け、華氏35°F以下を少なくとも30分間維持する。これに対し、裏地無しのMedlogix製の調整冷却パック(図5の系列2)は、活性化から1分以内に所望の平均温度を達成していない。特に、Medlogixの冷却パックは、系列2に示されているように、所望の温度に達することなく、華氏45°Fと50°Fの間の平均値を保っている。
更に、冷却部材52は、頭部及び首の損傷が疑わしくない場合において、痛みの治療や、頸動脈経由で選択的脳冷却処置をするために、冷却カラー10無しで用いることができる。図6に示すこの実施形態において、冷却部材は、冷却部材52と、冷却部材の各端部に取り付けられた左翼部62及び右翼部64とを含む、首バンドの形態として用いることができる。冷却パック52は、活性化され、翼部62、64により、患者の頸動脈部を覆って配置することができ、この際、患者の首を包んで面ファスナー(図示省略)のような適切な取付機構により、首後部で一方を他方に取り付けることができる。
他の実施形態において、冷却部材52は、破ることができる薄膜によって分離された硝酸アンモニウムと水との区画を含む態様の、1つ以上の吸熱パックを有していてもよい。この実施形態では、区画間に圧力差を加えるか、そうでなければ薄膜を破るように、冷却部材52を変形することで、冷却部材52を活性化することができる。
使用の際、頸椎固定カラー10が患者の首まわりに配置され、冷却部材52が活性化されて前方開口部28に配置される。そして、扉30が冷却部材52を覆って閉じられ、扉30と患者の首との間で冷却部材52を保持する。冷却部材52は、患者の首の頸動脈部上に概ね重なり、患者の頸動脈を通って流れる血液から熱を取り出すための、冷却器として機能することとなる。好ましくは、冷却部材52は、個々の患者の首の特徴に倣うことにより、皮膚の接触領域を最大限にして、頸動脈部近辺の首組織からより効率的に熱を取り出す。ある実施形態では、冷却部材52は、扉30の体側面上に固定された圧迫部材56を用いて、患者の首に合わせられる。
特に、図7に示されるように、扉30は、体側面及び外側面(図2参照)を有している。図示のように、体側面は、患者へ向かって延びた四角錐状の、間隔を置いた2つの圧迫部材56を有している。これら圧迫部材56は、ブロック状、筒状、或いは、扉30が閉じられた際に患者の方へ延びる他のあらゆる適切な形状を含む、別の形状に形成されていてもよい。圧迫部材56は、体側面上の、カラー10の使用時に頸動脈領域で最大限皮膚に接触するように冷却部材52に圧力をかける場所に配置されている。圧迫部材56は、扉30の体側面と一体的に形成されていてもよく、又は、接着剤を含む適切な手段で、扉30の体側面に取り付けられていてもよい。或いは、圧迫部材56は、発泡性材料、プラスチック、又は、他の適切な材料で作られていてもよい。ある実施形態において、圧迫部材56は、密度2.8ポンド(1270グラム)の連続気泡ウレタンフォームで作られていてもよい。圧迫部材56は、患者の頸動脈部に加えられる圧力が、患者の気道を妨げないように形成されるべきである。
図7に示されているように、患者の首によりよくフィットするように、環状支持構造体12の体側面に発泡層58が裏打ちされている。この発泡層は、連続又は独立気泡フォームや、他の適切な材料で形成できる。この実施形態において、環状支持構造体12及び発泡層58は、付加的な医療処置の必要がある場合に、患者の首後部への通路を提供するために、後部18に後方矩形開口部60を有している。他の実施形態では、本発明の後部18には開口部が存在しない。
更に、動脈血酸素飽和度、心拍数、血圧及び血液温度といった、1つ以上の血液循環パラメータを監視するために、患者の頸動脈三角の1つの近辺に配置されるセンサー(図示省略)を、頸椎固定カラーに組み込むことも考えられる。このセンサーを患者の皮膚に直接接触する配置とするために、冷却部材の一部を作り変えるか、置き換えることも必要となる。センサーにより収集した情報を記録するために、カラーの内部又は外部ないしどこか他の場所に、記録装置(図示省略)を設置することができる。体温を含む様々な身体パラメータを監視するために、或いは、固定カラー自体の状態を監視するために、他のセンサーをカラー内の適切な他の場所に設置することができる。例えば、サーモクロミック片のような温度測定手段を、カラーや冷却部材の温度監視のために使用してもよい。
同じ頸椎固定カラーの後部の外側面に、表示器(図示省略)を設置してもよい。この表示器は、センサーにより収集された血液循環データに加えて、カラー内に設置される他のセンサーにより収集される他のデータを監視するために使用できる。更に、1つ以上のセンサーから外部装置へデータを送信するために、通信ポート(図示省略)をカラーに形成することができる。
頸椎固定カラーは、頭部の外傷、心臓発作、虚血性発作、頭痛、てんかん、熱射病、震盪、或いは、類似した症状を患った患者を含む、外傷患者の治療のための新しいプロトコルを可能にする。このプロトコルが、救急救命士により、又は病院で、或いは、アスレチックトレーナーその他の者による、住宅(home)での使用のために、用いられることが想定される。この治療は、患者の頸椎の回転及び圧縮を制限することを容易とする、患者の首周りの頸椎固定カラーの取り付けと、頸動脈経由で選択的脳冷却処置をするための、カラーと冷却部材との供用とに集約される。このプロトコルは、患者の頸動脈の血管拡張を招くことで、身体の全身冷却を引き起こすことなく、中核脳の選択的冷却及び軽微な低体温症を誘引する。皮膚に低温が加えられた場合に、身体の毛細血管が収縮反応するのに対して、身体のより太い血管には拡張反応が現れ、冷却を増進した血液の頸動脈から脳への循環が促される。
このプロトコルは、患者に必要なカラー10の大きさの決定を含んでいる。利用可能な大きさとして、慣習的な襟無し(no neck)、ショートサイズ、レギュラーサイズ、そしてトールサイズの頸椎固定カラーが含まれる。カラー10を患者に装着した後、扉30を開く。次に、液体で満たされた包みを破り、冷却部材52を約15〜20秒振り混ぜることで、冷却部材52を活性化させる。そして、冷却部材52を、環状支持構造体12のフレームの前方開口部28内に配置し、扉30を閉めることで、患者の首に当接させる。冷却部材52は、患者の首の前方部を介して、少なくとも患者の頸動脈部の1つと経皮的に熱伝達状態であり、従って、1つ以上の頸動脈から患者の首の前方部を介して冷却部材へ熱が伝わり始め、全身の低体温症を引き起こすことなく、患者の脳の温度を低下させることとなる。
冷却部材52は、おおよそ20分でかつ30分以内の間、その位置に留めることが好ましく、その時間で、1つ目の冷却部材を取り除き、新しい冷却部材を活性化させて上述の如くカラー内に配置するとよい。必要であれば、このプロトコルを繰り返す。
更に、このプロトコルには、1つ以上のセンサーを介して、固定カラーにより伝えられる、患者の血液循環動作に関する1つ以上のパラメータの監視を含んでいてもよい。監視パラメータとして、酸素飽和度、脈拍数、血圧或いは血液温度を含んでいてもよい。更に、冷却部材の温度性能を監視するためにセンサーを利用してもよい。その上、プロトコルに係るクレームには、患者の頸動脈三角を覆うカラーの開口部から、冷却部材を一時的に別の場所に移して、手動によって患者の脈拍数を測定することを含んでいる。
限定された複数の実施形態に関連して、本発明について記述してきたが、更に多くの変形形態が、この発明の全体的な教旨及び範囲に従って、当業者に容易に明らかになる。例えば、患者の首のより広い部位から抜熱するために、冷却部材を頸椎固定カラーの前部及び後部の両方に配置してもよい。一般的に両側の頸動脈部の冷却が好ましいが、他の用途のために他方の頸動脈部を露出させておき、一方の頸動脈部だけを冷やすように、冷却部材を作ってもよい。
10:頸椎固定カラー、12:環状支持構造体、20、38:面ファスナー・ストラップ、26:頬支持構造部、28:前方開口部、30:扉、32:ヒンジ、52:冷却部材、54:体側パネル、56:圧迫部材、58:発泡層

Claims (14)

  1. 冷却部材であって、
    体側面で取り付けられる体側パネルと、
    該体側パネルと共に第1及び第2の端部を形成する外側パネルと、
    前記体側パネルと前記外側パネルとの間に配置される冷却剤とを含み、
    該冷却剤は、前記体側パネルの前記体側面での測定で、周囲温度での活性化後1分以内に華氏20°F〜35°Fの温度をもたらすものであり、
    前記冷却剤は、水、尿素及び吸熱材料を含み、
    更に、前記第1及び第2の端部に取り付けられ、患者の回りを包むように形成されたバンドを含み、
    該バンドは、前記第1の端部から延びる第1の翼部と、前記第2の端部から延びる第2の翼部とを含み、前記第1及び第2の翼部が互いに取り付けられることを特徴とする冷却部材。
  2. 少なくとも前記第1の翼部は、取付機構を含むことを特徴とする請求項記載の冷却部材。
  3. 前記取付機構が、面ファスナーであることを特徴とする請求項記載の冷却部材。
  4. 前記冷却剤は、質量で前記吸熱材料よりも多くの量の尿素を含むことを特徴とする請求項1記載の冷却部材。
  5. 前記冷却剤は、前記吸熱材料を少なくとも45グラム含むことを特徴とする請求項1記載の冷却部材。
  6. 前記冷却剤は、前記尿素を少なくとも90グラム含むことを特徴とする請求項1記載の冷却部材。
  7. 前記冷却剤は、90〜110グラムの尿素と、45〜55グラムの吸熱材料とを含むことを特徴とする請求項記載の冷却部材。
  8. 前記冷却剤は、100グラムの尿素と50グラムの吸熱材料とを含むことを特徴とする請求項記載の冷却部材。
  9. 前記冷却剤は、110グラムの尿素と55グラムの吸熱材料とを含むことを特徴とする請求項記載の冷却部材。
  10. 前記冷却剤は、前記温度を15分〜30分の間維持可能であることを特徴とする請求項1記載の冷却部材。
  11. 前記体側パネルは、前記体側面に裏地が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の冷却部材。
  12. 前記裏地が、不織材料で構成されていることを特徴とする請求項11記載の冷却部材。
  13. 前記裏地は、前記体側パネルの前記体側面と前記外側パネルの外側面とを覆うことを特徴とする請求項12記載の冷却部材。
  14. 前記体側パネルは、前記裏地が付着されていることを特徴とする請求項11記載の冷却部材。
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